説明

破砕機

【課題】振動フィーダの篩部材への細粒分の堆積を抑えて目詰まりを抑制することができる破砕機を提供する。
【解決手段】被破砕物を破砕する破砕機において、ジョークラッシャ30と、ジョークラッシャ30で破砕された破砕物を機外へ搬出するコンベヤ40と、被破砕物を粒度選別してジョークラッシャ30に供給する振動フィーダ20とを備え、振動フィーダ20は、ジョークラッシャ30で破砕すべき設定の破砕対象粒度以上の被破砕物を選別、搬送するとともに、破砕対象粒度より小さい細粒分を被破砕物から除去する主篩部材25と、主篩部材25の上部を覆うように取り付けられ、上記破砕対象粒度より大きな設定の圧密誘因粒度以上の被破砕物を選別、搬送する補助篩部材24とを備えており、主篩部材25を介する供給経路、及び補助篩部材24を介する供給経路の二つの経路に分けて被破砕物をジョークラッシャ30に供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩石等の被破砕物を破砕するジョークラッシャを備えた破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
ジョークラッシャは、対向設置された固定歯と動歯の間のV字状の破砕室に岩石等の被破砕物を投入し、固定歯に対する動歯の揺動運動によって被破砕物を破砕する形式の破砕装置である。このジョークラッシャに被破砕物を供給する装置としては、ジョークラッシャに供給すると却って破砕効率を低下させるような粒径の小さな細粒分(ズリ等)を篩い落として予め被破砕物から除いておく篩部材(グリズリバー等)付きの振動フィーダを用いることが多い。この篩部材付きの振動フィーダにおいては、投入された被破砕物が篩部材上を通過する際に粒径の小さな細粒分が篩部材の間隙から落下し、篩部材を通過しない破砕対象粒径以上の被破砕物が細粒分と分離されてジョークラッシャに供給される(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−243428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被破砕物に含まれる細粒分は含水率が高く高粘性である場合があり、これが篩部材に付着成長して堆積し、著しい場合には堆積した細粒分によって篩部材の目が塞がれてしまうことがあった。
【0005】
そこで本発明は、振動フィーダの篩部材への細粒分の堆積を抑えて目詰まりを抑制することができる破砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明は、被破砕物を破砕する破砕機において、ジョークラッシャと、前記ジョークラッシャで破砕された破砕物を機外へ搬出するコンベヤと、被破砕物を粒度選別して前記ジョークラッシャに供給する振動フィーダとを備え、前記振動フィーダは、フィーダ本体と、前記フィーダを加振する加振機と、前記フィーダ本体の内部に取り付けられ、前記ジョークラッシャで破砕すべき設定の破砕対象粒度以上の被破砕物を選別、搬送するとともに、前記破砕対象粒度より小さい細粒分を被破砕物から除去する主篩部材と、前記主篩部材の上部を覆うように前記フィーダ本体の内部に取り付けられ、前記破砕対象粒度より大きな設定の圧密誘因粒度以上の被破砕物を選別、搬送する補助篩部材とを備えており、前記主篩部材を介する供給経路、及び前記補助篩部材を介する供給経路の二つの経路に分けて被破砕物を前記ジョークラッシャに供給することを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記主篩部材の上面から前記補助篩部材の下面までの高さ寸法が、前記補助篩部材の目開き寸法の倍以上であることを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記補助篩部材は上下方向に長い断面形状をしていて、その下端部が前記主篩部材まで延びていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、補助篩部材で大塊を他の被破砕物と分けてジョークラッシャに供給することにより、破砕対象となる被破砕物を細粒分と分けてジョークラッシャに供給する主篩部材上に細粒分を押し固める大塊が落下しないようにすることができるので、振動フィーダの篩部材への細粒分の堆積を抑えて目詰まりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る破砕機の全体構造を表す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る破砕機の全体構造を表す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る破砕機に備えられたジョークラッシャの内部構造を表す側断面図で、図3は作業状態をそれぞれ表している。
【図4】本発明の第1実施形態に係る破砕機に備えられたジョークラッシャの内部構造を表す側断面図で、図4は動歯が退避した状態をそれぞれ表している。
【図5】本発明の第1実施形態に係る破砕機に備えられた振動フィーダの側面図で、フィーダ本体における紙面直交方向の手前側の壁面を図示省略して内部構造を表す図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る破砕機に備えられた主篩部材及び補助篩部材の目開き寸法及び高低差寸法を説明するための図であって、図5中のVI−VI線によるグリズリバーの断面図に相当する図である。
【図7】被破砕物のモデル図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る破砕機に備えられた篩部材の平面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る破砕機に備えられた篩部材の断面図で、図6に対応する図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る破砕機に備えられた篩部材の断面図で、図6に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0012】
図1は本発明の第1実施形態に係る破砕機の全体構造を表す側面図、図2はその平面図である。以下の説明において、図1中の右左を破砕機の前後とする。
【0013】
図1及び図2に示した破砕機は、例えばビル解体時に搬出されるコンクリート塊や道路補修時に排出されるアスファルト塊等の建設現場で発生する大小様々な建設廃材、産業廃棄物、若しくは岩石採掘現場や切羽で採掘される岩石・自然石等を破砕対象とし、これらを被破砕物として受け入れて破砕するものである。本実施形態の破砕機は、走行体1とこの走行体1に搭載した破砕機能構成部2とを備えており、走行体1によって自力走行することができるようになっている。但し、このような自走式の破砕機に限らず、牽引走行可能な破砕機や定置式の破砕機にも本発明は適用可能である。
【0014】
走行体1は、左右の走行装置3、及び走行装置3の上部に設けた本体フレーム4で構成されている。走行装置3は、トラックフレーム5、トラックフレーム5の両端に設けた従動輪6及び駆動輪7、従動輪6及び駆動輪7に掛け回した履帯8、並びに駆動輪7の軸に出力軸が連結された走行用駆動装置9を備えている。本体フレーム4はトラックフレーム5上に設けられており、前後にほぼ水平に延在している。
【0015】
破砕機能構成部2は、破砕対象(被破砕物)を受け入れるホッパ10、ホッパ10に受け入れた被破砕物を粒度選別し後段工程に供給する振動フィーダ20、振動フィーダ20から供給された被破砕物を破砕する破砕装置であるジョークラッシャ30、ジョークラッシャ30で破砕した破砕物等を機外に搬出するコンベヤ40、及び機体各所に搭載した作動装置の動力源等を内蔵した動力装置(パワーユニット)50を備えている。
【0016】
ホッパ10は、上方に向かって拡開した枠状の部材であり、本体フレーム4の後方部分の上部に設けた支持部材11に対して支持ポスト12,13を介して固定されている。図2に示したように、このホッパ10は、振動フィーダ20の上部の左右両側部及び後部を囲う一方で、振動フィーダ20の前部、すなわちジョークラッシャ30との対向部を開放している。
【0017】
振動フィーダ20は、本実施形態ではグリズリフィーダであり、ホッパ10の下方でジョークラッシャ30の後方に位置していて、その枠型の本体(フィーダ本体)21がホッパ10とは別個にスプリング22を介して支持部材11に支持されている。フィーダ本体21の内部には、投入される被破砕物を受け止めるパンデッキ23が後半部分に、被破砕物を粒度選別する櫛歯状の篩部材(グリズリ)24,25(図2では篩部材24のみ図示)が前半部分に設けられている。そしてフィーダ本体21の下部には、このフィーダ本体21を振動させる加振機(フィーダ用駆動装置)26が固定されている。また、篩部材24a,24bの下方には、篩部材24a,24bで篩い落とされた細粒分をコンベヤ40上に導くシュート29が設けられている。
【0018】
ジョークラッシャ30は、ホッパ10及び振動フィーダ20の前方に位置し、本体フレーム4の前後方向中央部に支持されている。詳細は後で図3等を用いて説明するが、このジョークラッシャ30には、互いの間の空間(破砕室)が下方に向かって縮径するよう対向配置した一対の固定歯及び動歯を備えている。動歯のスイングジョーは上端部がフライホイール(図示せず)に連結されており、フライホイールにジョークラッシャ用駆動装置(図示せず)の回転動力が伝達されると、フライホイールの回転運動が動歯の揺動運動に変換され、これにより固定歯に対して概略前後方向に動歯が揺動するようになっている。
【0019】
また、ジョークラッシャ30の周囲にはメンテナンスフロア60が設けられている。メンテナンスフロア60は、本体フレーム4の上部に設けられていて、ジョークラッシャ30の左右両側の前後に延びる部分と、ジョークラッシャ30及び動力装置50の間の左右の延びる部分とを有しており、平面視で開口を後方に向けたコの字状に展開されている。このメンテナンスフロア60は、そのジョークラッシャ30の左右に位置する部分の後端部が振動フィーダ20の近傍まで延在していて、振動フィーダ20の前部の左右に臨んでいる。ホッパ10の左右の壁面の前部は前方に向かって高さを減じるように上縁部が斜めに形成されており、作業者がメンテナンスフロア60と篩部材24との間を用意に行き来する際にホッパ10が障害とならないようになっている。メンテナンスフロア60上の縁部には柵61が設置されている。なお、機体の左右の側部の少なくとも一方には、メンテナンスフロア60に上がるための梯子62が設けられている。この梯子62は、履帯8の上方からメンテナンスフロア60まで立ち上がっている。
【0020】
コンベヤ40は、本体フレーム4等に吊り下げられたコンベアフレーム41、コンベアフレーム41の両端に設けた従動輪及び駆動輪(ともに図示せず)、従動輪及び駆動輪に掛け回したコンベアベルト44、及び駆動輪を回転駆動させるコンベヤ用駆動装置(図示せず)等を備えている。コンベヤ用駆動装置によって駆動輪が回転駆動されると、従動輪との間に掛け回されたコンベアベルト44が循環駆動する。このコンベヤ40は、左右のトラックフレーム5の間でシュート29及びジョークラッシャ30の下方位置(履帯8の後端部付近)から前方に延び、動力装置50の下方位置(履帯8の前端部付近)で屈曲して斜めに立ち上がり、その傾斜角度を保ったまま動力装置50の前端下部付近を通って機体の全高付近まで延在している。
【0021】
コンベヤ40の上方には、排出する破砕物中の鉄筋等の磁性異物を除去する磁選機45が備えられている。この磁選機45は、動力装置50の前部に設けたアーム部材46から吊り下げられており、駆動輪及び従動輪(ともに図示せず)と、これら駆動輪及び従動輪巻き回されてコンベヤ40の延在方向と直交する方向(左右方向)に循環駆動する磁選機ベルト49と、駆動輪及び従動輪の間の磁選機ベルト49に覆われた空間に設けられた磁力発生手段(図示せず)とを備えている。
【0022】
動力装置50は、本体フレーム4の前側部分の上部に支持されており、ジョークラッシャ30よりも前方側に位置している。特に図示していないが、この動力装置50内には、本破砕機の動力源となるエンジンや、エンジンによって駆動される油圧ポンプ、油圧ポンプから吐出された圧油の流通方向や流量を制御して対応の油圧アクチュエータに供給する制御弁装置等が備えられている。
【0023】
図3及び図4はジョークラッシャ30の内部構造を表す側断面図で、図3は作業状態、図4は動歯が退避した状態をそれぞれ表している。
【0024】
図3及び図4において、ジョークラッシャ30は、本体フレーム4に固定したクラッシャフレーム31、クラッシャフレーム31に固定した固定歯32、固定歯に対して揺動する動歯33、及び動歯33の下部側を支持するトグルプレート34を備えている。
【0025】
固定歯32は、クラッシャフレーム31に固定された支持部材35と、この支持部材35の前面(動歯33側)に固定された固定歯板32aとを備えている。また動歯33は、クラッシャフレーム31にフライホイール(図示せず)の偏心軸36を介して揺動自在に取り付けたスイングジョー37、及びこのスイングジョー37の固定歯32との対向面に固定された可動歯板33aを備えている。そして固定歯32と動歯33は互いの歯板32a,33aが向かい合うように対向配置され、両歯板32a,33a間に下方に向かって縮径するV字状の破砕室38が形成される。この破砕室38に供給された被破砕物は動歯33の揺動運動により固定歯32及び動歯33によって噛み砕かれるようにして破砕される。ジョークラッシャ30から排出される破砕物の粒度は、破砕室38の排出間口、つまり固定歯板32aと可動歯板33aとの間の最小間隙(下端部間隙)により規定される。図3及び図4では図示していないが、クラッシャフレーム31にはチークプレート(図示せず)が交換可能に取り付けられ、このチークプレート41aが破砕室38の左右の側壁を構成する。
【0026】
また、動歯33の破砕室38と反対側(図3中右側)の空間には、例えば破砕室38で異物の噛み込み等が起こる等して過負荷が生じた場合にトグルプレート34等の部材を過大な荷重から保護する過負荷保護装置70が設置されている。この過負荷保護装置70は、スイングジョー37に作用する破砕反力が設定範囲を超えた場合、図3の作業状態から図4のように縮退し過大な破砕反力を逃がすジャッキ71を備えている。
【0027】
ジャッキ71はクラッシャフレーム31に固定されており、ジャッキ71のロッド72の先端部とスイングジョー37の前面下部にはそれぞれトグルシート73,74が設けられている。トグルシート73,74には、それらの間に介設されたトグルプレート34の両端が当接しており、油圧シリンダ75(図4参照、図3では図示省略)によってスイングジョー37の下端部がジャッキ71側に付勢されることでトグルプレート34がトグルシート73,74間に挟み込まれて保持される。油圧シリンダ75の両端は、ジャッキ71の下部とスイングジョー37の前面下端部近傍部分に回動可能に連結されている。なお、本実施形態では、油圧シリンダ75によってスイングジョー37をジャッキ71側に付勢する構成を採ったが、油圧シリンダ75に代えてスプリングによってスイングジョー37をジャッキ71側に付勢する構成としても良い。
【0028】
図5は上記振動フィーダ20の側面図であり、フィーダ本体21における紙面直交方向の手前側の壁面を図示省略して内部構造を表してある。
【0029】
振動フィーダ20は、上記フィーダ本体21、スプリング22、パンデッキ23、篩部材24,25及び加振機26が備えられている。
【0030】
フィーダ本体21は、左右の側壁21a(図5では右の側壁を図示省略)、左右の側壁21aの内側に渡されたビーム21b、篩部材24,25の下方に位置するように左右の側壁21a間に設けたシュート部21c、篩部材25の先端下部からジョークラッシャ30の入口に向かって延びるガイド部21dを備えている。シュート部21cは、投入された被破砕物のうち篩部材24,25を通過した細粒分を前述したシュート29に導くガイドの役割を果たすものである。このシュート部21cは、上部開口21aaを上方の篩部材24,25に向けた姿勢でフィーダ本体21に取り付けられており、その下部開口21abに向かって前後方向及び左右方向に縮径している。シュート部21cの下部開口21abは上記シュート29に接続している。
【0031】
パンデッキ23は、投入される被破砕物を受け止める受け部材の役割を果たす板状の部材であって、主面(最も広い面)を上に向けた状態でフィーダ本体21の上記ビーム21b上に支持されていて、フィーダ本体21の左右の側壁21aの後半部分の内法空間を塞ぐように当該側壁21aに固定されている。
【0032】
篩部材25は、ジョークラッシャ30で破砕すべき破砕対象粒度(設定値)以上の被破砕物を選別・搬送するとともに、破砕対象粒度より小さい細粒分を被破砕物から除去する役割を果たすものであって、フィーダ本体21の内部に取り付けられている。これ以降、篩部材25を単独で表記する場合は「主篩部材25」と適宜記載する。また、篩部材24は、主篩部材25による破砕対象粒度より大きな圧密誘因粒度(設定値)以上の被破砕物を選別・搬送し、主篩部材25上に落下させる被破砕物と分離する役割を果たすもので、主篩部材25の上部を覆うようにフィーダ本体21の内部に取り付けられている。これ以降、篩部材24を単独で表記する場合は適宜「補助篩部材24」と記載する。
【0033】
補助篩部材24は、パンデッキ23側の後部篩部材24a、及びジョークラッシャ30側の前部篩部材24bからなっている。これら後部篩部材24a及び前部篩部材24bは、同様に構成されていて、左右の側壁21aの内側に渡されたビーム状の基部24c、及び基部24cの前部に取り付けられて前方に延在する複数のグリズリバー24dを備えている。グリズリバー24dは、機体幅方向に列設されている(図2も参照)。前部篩部材24bは後部篩部材24aに対して低く配置されていて、両者は前方に向かう下り階段状に配置されており、後部篩部材24aの先端部は平面視で前部篩部材24bの基部24cにラップしている。本実施形態では、補助篩部材24を前後2段の篩部材24a,24bで形成した場合を例示しているが、前後に3段以上、或いは1段で構成とすることもできる。
【0034】
主篩部材25も、補助篩部材24と同じく、パンデッキ23側の後部篩部材25a、及びジョークラッシャ30側の前部篩部材25bからなっている。これら後部篩部材25a及び前部篩部材25bも、左右の側壁21aの内側に渡されたビーム状の基部25c、及び基部25cの前部に取り付けられて前方に延在する複数のグリズリバー25dを備えている。グリズリバー25dは、機体幅方向に列設されている。前部篩部材25bは後部篩部材25aに対して低く配置されていて、両者は前方のジョークラッシャ30に向かう下り階段状に配置されている。平面視において、後部篩部材25aの先端部は前部篩部材25bの基部25cに、前部篩部材25bの先端部はフィーダ本体21の上記ガイド部21dにラップしている。本実施形態では、主篩部材25を前後2段の篩部材25a,25bで形成した場合を例示しているが、前後に3段以上、或いは1段で構成とすることもできる。また、主篩部材25の後部篩部材25a及び前部篩部材25bは、それぞれ補助篩部材24の後部篩部材24a及び前部篩部材24bの上方に位置しており、後部篩部材24a,25aの上面の高低差寸法、及び前部篩部材24b,25bの上面の高低差寸法は同一であるが、差をつけても良い。
【0035】
ここで、主篩部材25による「破砕対象粒度」とは、これ以上の大きさでは破砕物製品として扱えず、ジョークラッシャ30で破砕処理すべき寸法をいい、ジョークラッシャ30の能力や処理量、最終的に求められる破砕物製品の粒度によって変動し得る設定値である。また、補助篩部材24による「圧密誘因粒度」とは、破砕対象粒度より大きな粒径であって、これを超える大きさの大塊が主篩部材25上に落下すると主篩部材25に付着した細粒分を押し固め、細粒分の圧密を引き起こす粒度をいい、設計に応じて変動し得る設定値である。破砕対象粒度を超える大きさの被破砕物は、圧密誘因粒度を超える大きさの被破砕物を含め、ジョークラッシャ30による破砕処理の対象物である。
【0036】
ここで、図6は主篩部材25及び補助篩部材24の目開き寸法及び高低差寸法を説明するための図であって、図5中のVI−VI線によるグリズリバーの断面図に相当する図である。厳密には、グリズリバー24d,25dの全数のうちの一部を抜き出して表した部分断面図に相当する。
【0037】
図6において、主篩部材25のグリズリバー25dの目開き寸法すなわち左右方向に隣接するグリズリバー25dの間の間隙寸法をG1、補助篩部材24のグリズリバー24dの目開き寸法すなわち左右方向に隣接するグリズリバー24dの間の間隙寸法をG2、主篩部材25の上面から補助篩部材24の下面までの高さ寸法をHとする。G1,G2,Hの間には、次の関係がある。
【0038】
G1<G2
H>2×G2
すなわち、補助篩部材24の目開き寸法G2は、主篩部材25の目開き寸法G1よりも大きく、例えばG1の1.5倍から3倍程度である。また、高さ寸法Hは、補助篩部材24の目開き寸法G2の倍以上である。
【0039】
G1<G2とした理由は、主篩部材25と補助篩部材24による選別粒度の違い、すなわち前述した圧密誘因粒度が破砕対象粒度よりも大きいからであるが、H>2×G2とした理由は次の通りである。
【0040】
例えば、図7のように、被破砕物100の高さ寸法をh、幅寸法をw、厚さ寸法をd(d≦w≦h)とした場合、被破砕物100が、高さ寸法h、幅寸法w、厚さ寸法dにあまり差のない岩石(標準的な岩石と呼ぶ)である場合と、高さ寸法hに対して厚さ寸法dが小さい岩石(偏平な岩石と呼ぶ)である場合を比較する。この場合、仮に標準的な岩石と偏平な岩石の厚さ寸法dが等しく、かつ、両者の厚さ寸法dが破砕対象粒度よりも大きく圧密誘因粒度よりも小さいとしたとき、当然ながら偏平な岩石の方が高さ寸法hは高くなる。そのため、補助篩部材24を通過した際、主篩部材25上に載った状態で補助篩部材24から抜け切らず、主篩部材25と補助篩部材24との間に引っ掛かり易いのは偏平な岩石の方である。したがって、補助篩部材24を通過した偏平な岩石が主篩部材25と補助篩部材24との間に引っ掛かり難いように寸法Hを設定することが好ましい。
【0041】
岩石の「偏平」は、高さ寸法h、幅寸法w、厚さ寸法dの間に、h≧1.8w、厚さ≦0.8wの条件を満たすことと定義される場合がある。この場合、偏平な岩石の高さ寸法hは、その厚さ寸法dの倍以上になる。そして、偏平な岩石を被破砕物100とした場合に、被破砕物100が補助篩部材24をぎりぎり通過する(d≒G2)とき、主篩部材25の上面から補助篩部材24の下面までの高さHが被破砕物100の高さ寸法hより大きければ、理論上、被破砕物100は補助篩部材24から抜け切るため、主篩部材25と補助篩部材24との間に引っ掛かり難い。整理すると、H>h>2×d≒G2との関係が成立し、H>G2との条件が導き出される。例えば、主篩部材25と補助篩部材24の目開き寸法G1,G2、主篩部材25の上面から補助篩部材24の下面までの高さ寸法Hを、1.5×G1≦G2≦3×G1、H=2×G2という条件下で設定した場合、高さ寸法Hを主篩部材25の目開き寸法G1で定義するなら、3×G1≦H≦6×G1となる。
【0042】
次に、上記構成の本実施形態の破砕機の動作を説明する。
【0043】
油圧ショベル等により被破砕物を投入すると、投入された被破砕物はホッパ10によって振動フィーダ20上に導かれる。加振機26によってフィーダ本体21とともに加振されるパンデッキ23上の被破砕物は振動によって前方に搬送される。被破砕物が補助篩部材24上を移動する際に、補助篩部材24の選別粒度(圧密誘因粒度)よりも小さな被破砕物は補助篩部材24の隙間から落下して大塊と分離され、補助篩部材24を通過した被破砕物のうち主篩部材25の選別粒度(破砕対象粒度)よりも小さな細粒分(ズリや土砂等)はさらに補助篩部材24の隙間から落下し、被破砕物と分離されてシュート29を介してコンベヤ40上の後端付近に導かれる。一方、圧密誘因粒度よりも粒径の大きな被破砕物(大塊)、及びそれよりも粒径は小さいが破砕対象粒度よりも粒径の大きな被破砕物は、それぞれ補助篩部材24、主篩部材25上を前方に移動してともにジョークラッシャ30に供給される。補助篩部材24及び主篩部材25からジョークラッシャ30に供給された被破砕物は、固定歯32と動歯33との出口隙間に応じた所定の粒度に破砕処理される。ジョークラッシャ30から排出された破砕物はコンベヤ40上に導かれ、シュート29を介して導かれた細粒分と合流し、コンベヤ40によって前方(図1中右側)に搬送されて機外に排出される。
【0044】
なお、コンベヤ40による搬出の途中、破砕物等に鉄筋等の磁性異物が混入している場合には、磁性異物が磁選機45によって吸着除去される。磁選機45においては、コンベヤ40上の破砕物等に対して磁選機ベルト49越しに作用させる磁力発生手段からの磁力によって磁性異物を磁選機ベルト49に吸着し、循環駆動する磁選機ベルト49によってコンベヤ40の側方に磁性異物を搬送し落下させる。
【0045】
また、本実施形態では主篩部材25を通過した細粒分をコンベヤ40上に導いて破砕物と合流させる場合を例示したが、シュート29の下部に機体側方に延びるサイドコンベヤを取り付ける場合があり、この場合には、細粒分は破砕物とは別に機体側方に排出される。
【0046】
ところで、被破砕物に含まれる細粒分は含水率が高く高粘性である場合があり、上記のような被破砕物の選別作業中、高粘性の細粒分が篩部材に付着成長して堆積し、著しい場合には堆積した細粒分によって篩部材の目が塞がれてしまうことがあった。
【0047】
本願発明者等は、この土砂の堆積の原因が、細粒分の粘性に加え、細粒分が篩部材からなかなか落下せずに留まっている間に後続の被破砕物に含まれる大塊に押し固められることによって細粒分が圧密することにあることを知見した。
【0048】
そこで、本実施形態では、前述したように主篩部材25を介する供給経路、及び補助篩部材24を介する供給経路の二つの経路に分けて被破砕物をジョークラッシャ30に供給する構成としている。これにより、主篩部材25上には圧密誘因粒度を超えるような大きな大塊が落下してこないので、仮に高粘性の細粒分が主篩部材25のグリズリバー25dに付着してなかなか落下しないような状態にあっても大塊により押し固められることが基本的にないので、細粒分の圧密を抑制することができる。また、補助篩部材24は、目開き寸法が大きく、主篩部材25に比べて目詰まりが生じ難い。したがって、振動フィーダ30の主篩部材25、補助篩部材24への細粒分の堆積を抑制することができ、ひいては主篩部材25、補助篩部材24の目詰まりを抑制することができる。
【0049】
図8は本発明の第2実施形態に係る破砕機に備えられた篩部材の平面図、図9は篩部材の断面図で、先の図6に対応する図である。
【0050】
第1実施形態では、主篩部材25、補助篩部材24をいずれもグリズリバー25d,24dで構成した場合を例示したが、いわゆるフィンガースクリーンや格子状の篩部材、多数の選別穴が穿設された篩部材等、他の種の篩部材を用いることも可能である。本実施形態は、そのうちのフィンガースクリーンを適用した場合を例示した実施形態である。
【0051】
すなわち、図8に示した篩部材25’はフィンガースクリーンであって上記基部25cの前面に前方に延びる複数のフィンガーバー25d’を左右に列設して設けたものである。本実施形態では、図9に示したように、この篩部材25d’を主篩部材として補助篩部材24の下方に設置している。また、主篩部材としてではなく、篩部材25’を補助篩部材として用いても良いし、主篩部材及び補助篩部材をフィンガースクリーンにすることも考えられる。その他の構成は、両篩部材24,25’の目開き寸法G1,G2や高さ寸法Hの設定等も含め、第1実施形態と同様である。
【0052】
本実施形態においても、第1実施形態とほぼ同様の効果が得られる。
【0053】
図10は本発明の第3実施形態に係る破砕機に備えられた篩部材の断面図で、先の図6に対応する図である。
【0054】
本実施形態は、上下方向に長い断面形状の板状の部材で補助篩部材24’のグリズリバー24d’を構成し、その下端部が主篩部材25の下面あたりの高さになるようにグリズリバー24d’を下方に(主篩部材25まで)延ばした構成である。言い換えれば、隣接する補助篩部材24”の間に少なくとも1本の主篩部材25が配置されている構成である。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0055】
本実施形態においても、第1実施形態とほぼ同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0056】
20 振動フィーダ
21 フィーダ本体
24 補助篩部材
24’ 補助篩部材
25 主篩部材
25’ 篩部材(主篩部材、補助篩部材)
26 加振機
30 ジョークラッシャ
40 コンベヤ
100 被破砕物
H 主篩部材の上面から補助篩部材の下面までの高さ寸法
G1 主篩部材の目開き寸法
G2 補助篩部材の目開き寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被破砕物を破砕する破砕機において、
ジョークラッシャと、
前記ジョークラッシャで破砕された破砕物を機外へ搬出するコンベヤと、
被破砕物を粒度選別して前記ジョークラッシャに供給する振動フィーダとを備え、
前記振動フィーダは、
フィーダ本体と、
前記フィーダを加振する加振機と、
前記フィーダ本体の内部に取り付けられ、前記ジョークラッシャで破砕すべき設定の破砕対象粒度以上の被破砕物を選別、搬送するとともに、前記破砕対象粒度より小さい細粒分を被破砕物から除去する主篩部材と、
前記主篩部材の上部を覆うように前記フィーダ本体の内部に取り付けられ、前記破砕対象粒度より大きな設定の圧密誘因粒度以上の被破砕物を選別、搬送する補助篩部材とを備えており、
前記主篩部材を介する供給経路、及び前記補助篩部材を介する供給経路の二つの経路に分けて被破砕物を前記ジョークラッシャに供給する
ことを特徴とする破砕機。
【請求項2】
前記主篩部材の上面から前記補助篩部材の下面までの高さ寸法が、前記補助篩部材の目開き寸法の倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の破砕機。
【請求項3】
前記補助篩部材は上下方向に長い断面形状をしていて、その下端部が前記主篩部材まで延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−206015(P2012−206015A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73639(P2011−73639)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】