硝子板穴あけ方法、光学窓作製方法、イメージセンサモジュール及び硝子板穴あけ装置
【課題】 硝子板に微小な穴あけをする際に、穴の周縁にギザギザが形成されないようにする。
【解決手段】 硝子板1の一方の側に配置されたノズル3から、形成する穴10より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして溶出液2を噴射し、一方の側の面101に当てて衝撃するとともに、他方の側に配置されたノズル5から溶出液2を噴射して他方の側の面102に当てて衝撃する。衝撃圧力は、5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力である。一方の側の面101に対して保護層4の穴用開口40を通して溶出液2を噴射し、他方の側の面102に対しては均一に噴射して硝子板1の厚さを削減することで穴10を貫通させる。
【解決手段】 硝子板1の一方の側に配置されたノズル3から、形成する穴10より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして溶出液2を噴射し、一方の側の面101に当てて衝撃するとともに、他方の側に配置されたノズル5から溶出液2を噴射して他方の側の面102に当てて衝撃する。衝撃圧力は、5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力である。一方の側の面101に対して保護層4の穴用開口40を通して溶出液2を噴射し、他方の側の面102に対しては均一に噴射して硝子板1の厚さを削減することで穴10を貫通させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、硝子板に微細な貫通穴を形成する穴あけ技術に関するものであり、特に、イメージセンサモジュール等で用いられる光学窓の作製に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、切断、エッチング等の各種加工が硝子板に対して行われている。このうち、精密な光学機器などに用いられる光学窓の作製においては、硝子板に微細な穴あけ加工をすることが必要となっている。例えば、携帯電話やデジタルカメラに搭載されているイメージセンサモジュールでは、センサ素子の入射側に光学窓を設け、光学窓の窓穴を通して光を入射させて撮像するようになっている。この光学窓は硝子製であり、窓穴は、センサ素子の入射面の大きさより少し大きい。センサ素子としてはCCDが一般的であるが、微細加工技術の向上を背景とした高集積度化により、高解像度化(高画素数化)にもかかわらずセンサ素子は非常に小さいものになってきており、従って窓穴も非常に小さくなってきている。これは、携帯電話等の機器の小型化、コンパクト化の要請に沿うものでもある。
【特許文献1】特開平61−86729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような硝子板への穴あけ加工については、例えば特開昭61−86729号公報に開示されているように、サンドブラスト法が採用されている。上述したような光学窓の作製においても、サンドブラスト法を採用することが可能であるが、サンドブラスト法によると、形成した穴の周縁にギザギザ(凹凸)が形成されてしまう。このようなギザギザは、携帯電話等の製品に搭載した場合に見栄えが悪い。また、ギザギザによって光が散乱される等、光学特性に影響を与えることもあり得る。
本願の発明は、このような課題を考慮して為されたものであり、イメージセンサモジュール用の光学窓を作製する場合のように硝子板に微小な穴あけをする際に用いられる方法及び装置であって、穴の周縁にギザギザが形成されない優れた方法及び装置を提供する技術的意義を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、硝子板の厚さを均一に削減するとともに当該硝子板に微小な穴を形成する硝子板穴あけ方法であって、
硝子板の一方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を、形成する穴より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射し、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するとともに、
硝子板の他方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を噴射し、噴射された溶出液を硝子板の他方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃することで貫通穴を形成する方法であり、
硝子板の一方の側の面に対しては、形成する穴のパターンで溶出液の噴射を行うとともに、
硝子板の他方の側の面に対しては、形成する穴のパターンによらずに溶出液を均一に噴射して硝子板の表面を均一に削減することで穴を貫通させるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記硝子板の一方の側の面に、前記溶出液に対して耐性を持つとともに前記穴のパターンの穴用開口を有する保護層を形成し、一方の側の面に対してはこの窓用開口を通して前記溶出液を噴射するという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項2の構成において、前記穴用開口をフォトリソグラフィにより設けるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1乃至3いずれかの構成において、前記溶出液の噴射は、内部で前記溶出液に圧縮気体を混合して噴射する二流体ノズルにより行われるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項1乃至4いずれかの構成において、前記他方の側の面に対しては、前記ノズルを複数均等に配置して最大粗さが0.5μm以下の平坦性が得られるよう前記削減が行われるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、硝子板に窓穴を設けた構造の光学窓を作製する方法であって、
硝子板の一方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を、形成する窓穴より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射し、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するとともに、
硝子板の他方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を噴射し、噴射された溶出液を硝子板の他方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃することで貫通穴を形成する方法であり、
硝子板の一方の側の面に対しては、形成する窓穴のパターンで溶出液の噴射を行うとともに、
硝子板の他方の側の面に対しては、形成する窓穴のパターンによらずに溶出液を均一に噴射して硝子板の表面を均一に削減することで窓穴を貫通させるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、前記請求項6の構成において、前記硝子板の一方の面に、前記溶出液に対して耐性を持つとともに前記窓穴のパターンの窓穴用開口を有する保護層を形成し、一方の面に対してはこの窓用開口を通して溶出液を噴射するという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項8記載の発明は、前記請求項7の構成において、前記保護層は、遮光層でもあるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項9記載の発明は、前記請求項8の構成において、前記保護層は、クロム又はクロム化合物より成る膜であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項10記載の発明は、前記請求項9の構成において、前記保護層は、前記硝子板に近い順に、酸化クロム膜と、純クロム膜とを積層したものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項11記載の発明は、前記請求項7乃至10いずれかの構成において、前記窓穴用開口をフォトリソグラフィにより設けるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項12記載の発明は、前記請求項6乃至11いずれかの構成において、前記溶出液の噴射は、内部で前記溶出液に圧縮気体を混合して噴射する二流体ノズルにより行われるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項13記載の発明は、前記請求項6乃至12いずれかの構成において、前記他方の面に対しては、前記ノズルを複数均等に配置して最大粗さが0.5μm以下の平坦性が得られるよう削減が行われるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項14記載の発明は、センサ素子を含むモジュール本体と、センサ素子の入射側に設けられた硝子製の光学窓とから成るイメージセンサモジュールであって、
光学窓は、硝子板に窓穴を設けたものであり、
窓穴は、硝子板の材料を溶出させることが可能な溶出液を直径20μm以上400μm以下の粒状にしてノズルから噴射し、噴射された溶出液を板材の所定箇所に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃し、当該箇所に対する粒状の溶出液による衝撃を継続することで形成されたものであり、
硝子板の一方の面には、溶出液に対して耐性を持つ保護層が形成されており、この保護層には、窓穴用開口が設けられており、
窓穴は、保護層が設けられた側から窓穴用開口を通して溶出液を噴射するとともに、保護層が設けられていない側から溶出液を噴射して硝子板の厚さを減らすことで貫通されたものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項15記載の発明は、前記請求項14の構成において、前記保護層は、モジュール本体に光が入射するのを遮蔽する遮光層でもあるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項16記載の発明は、前記請求項15の構成において、前記保護層は、クロム又はクロム化合物より成る膜であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項17記載の発明は、前記請求項16の構成において、前記保護層は、前記硝子板に近い順に、酸化クロム膜と、純クロム膜とを積層したものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項18記載の発明は、硝子板の厚さを均一に削減しながら当該硝子板に微小な穴を形成する硝子板穴あけ装置であって、
硝子板の一方の側に配置された第一のノズルと、
硝子板の他方の側に配置された第二のノズルと、
第一第二のノズルに溶出液を供給し、各ノズルから噴射させる溶出液供給系と、
硝子板を所定位置に保持する保持機構と
を備えており、
第一のノズルは、形成する穴より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射し、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するものであり、
第二のノズルは、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するものであり、
保持機構は、第一のノズルが硝子板の一方の面の穴あけ箇所を臨む状態が維持されるよう硝子板を保持するものであり、
第二のノズルを硝子板に対して相対的に移動させて、第二のノズルから噴射される溶出液により他方の面が均一に削減されるようにする移動機構が設けられているという構成を有する。
【発明の効果】
【0005】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、サンドブラストのような粒状の固体(砂)をぶつけて削るという物理的作用のみによる方法ではなく、溶出液による溶かし出しという化学的作用を利用するので、形成された穴の周縁にギザギザが形成されることはなく、滑らかな美しい周縁の穴が得られる。また、一方の側から穴あけのパターンで衝撃を行い、他方の側から均一な衝撃を行うため、硝子板の厚さを全体に薄くしつつ穴あけを行うことができる。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、硝子板の一方の側の面に形成された保護層の窓用開口を通して溶出液を噴射するので、ノズルからの溶出液の噴射形状を所定のものにする必要がなく、容易に穴あけを行うことができるという効果が得られる。
また、請求項3記載の発明によれば、上記効果に加え、穴用開口をフォトリソグラフィにより設けるので、微小な穴を高い寸法精度で設けるのに適したものとなる。
また、請求項6記載の発明によれば、サンドブラストのような粒状の固体(砂)をぶつけて削るという物理的作用のみによる方法ではなく、溶出液による溶かし出しという化学的作用を利用するので、形成された穴の周縁にギザギザが形成されることはなく、滑らかな美しい周縁の穴が得られる。また、一方の側から穴あけのパターンで衝撃を行い、他方の側から均一な衝撃を行うため、硝子板の厚さを全体に薄くしつつ穴あけを行うことができる。このため、薄型の電子機器や光学機器に好適に搭載される光学窓が得られる。
また、請求項7記載の発明によれば、上記効果に加え、硝子板の一方の側の面に形成された保護層の窓用開口を通して溶出液を噴射するので、ノズルからの溶出液の噴射形状を所定のものにする必要がなく、容易に穴あけを行うことができるという効果が得られる。
また、請求項8記載の発明によれば、上記効果に加え、保護層は、遮光層でもあるので、窓穴以外の部分では遮光される光学窓が得られ、その際にも遮光層を別途設ける工程は不要である。
また、請求項10記載の発明によれば、上記効果に加え、保護層が酸化クロム膜と純クロム膜とを積層したものであるので、酸化クロム膜により低反射効果が得られる上、純クロム膜に対するレジストの付着性が良いので、フォトリソグラフィが容易に行えるという効果が得られる。
また、請求項11記載の発明によれば、上記効果に加え、穴用開口をフォトリソグラフィにより設けるので、微小な穴を高い寸法精度で設けるのに適したものとなる。
また、請求項14記載の発明によれば、光学窓の窓穴の周縁にギザギザがなく、滑らかな美しい周縁の窓穴となっているので、見栄えの良いモジュールが提供される。また、光学窓が薄くなっているので、モジュール全体もコンパクトになり、薄型の電子機器や光学機器に好適に搭載することができる。
また、請求項18記載の発明によれば、周縁にギザギザが形成されず、滑らかな美しい周縁の穴を得ることができる。また、一方の側から穴あけのパターンで衝撃を行い、同時に他方の側から均一な衝撃を行うことができるため、硝子板の厚さを全体に薄くしつつ同時に穴あけを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について説明する。
まず、硝子板穴あけ方法の発明の実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る硝子板穴あけ方法を示した正面概略図である。
図1に示す方法は、硝子より成る板状の対象物(硝子板)1に微小な穴10をあける方法である。穴10としては、直径が500μm〜5mm程度の円形の穴10をあける場合、この方法は好適に採用され得る。
【0007】
この方法の大きな特徴点は、硝子を溶出することが可能な溶出液2で硝子板1の表面を衝撃し、これによって穴あけを行う点である。この方法は、溶出液2が硝子を溶かし出すという化学的作用と、溶出液2が硝子板1を衝撃するという物理的作用の両方を利用している。実施形態の方法のもう一つの大きな特徴点は、硝子板1の一方の側の面101に対しては溶出液2により穴あけのパターンで衝撃し(以下、パターン衝撃)、他方の側の面102に対して均一に溶出液2により衝撃して厚さを削減し(以下、均一衝撃)、これらを併せて行うことで貫通穴を形成する点である。
【0008】
パターン衝撃の際には、溶出液2を小さな粒状にし、この粒状の溶出液2で硝子板1の表面を衝撃する。粒の大きさは、形成する穴10よりも小さいことが好ましく、20μm〜400μmの範囲であることが好ましい。溶出液2の粒径が20μmよりも小さいと、重さが軽いために充分な衝撃圧力が得られなくなる可能性がある。また、粒径が400μよりも大きいと、衝撃圧力が大きくなり過ぎて、形成する穴10の寸法精度が低下する問題があり、また微小な穴あけができなくなる可能性がある。また、後述するノズルについても、そのように大きな粒径で溶出液2を噴射させることが可能なノズルを選定ないし製作することが難しくなる。
【0009】
この実施形態の方法では、硼珪酸硝子板その他の各種硝子板を穴あけすることができる。硝子板1の材料に応じて、その材料を溶出させることができる溶出液2を適宜選定する。溶出液2としては、フッ酸のような酸(無機酸又は有機酸)を所定の濃度に希釈したものが使用される。濃度は、後述するように、形成する穴10の形状に応じて変更されるが、例えばフッ酸の場合、純水等を希釈液として使用し、3〜30%程度の濃度とされる。
【0010】
パターン衝撃、均一衝撃いずれ力おいても、衝撃圧力は、5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の範囲であることが好ましい。5×10−2N/cm2よりも小さいと、あまりにも圧力が小さいため、穴あけに長時間を要するか若しくは穴あけができない問題が生ずる。圧力が20×10−2N/cm2より大きいと、形成する穴10の寸法形状を所定のものにするのが難しくなるし、そのような高い圧力で上記粒径の粒状の溶出液2を当てること自体、技術的に難しい。
【0011】
パターン衝撃においては、第一のノズル3を使用して溶出液2を粒状にする。この際、第一のノズル3からの溶出液2の噴射形状を考慮し、硝子板1の一方の側の面101を保護層4で覆い、保護層4に穴あけのための開口(穴用開口)40を設ける。パターン衝撃のためには、穴10をあけるよう定められた所定箇所(以下、穴あけ箇所)にのみ集中的に且つ穴あけのパターンで粒状の溶出液2を当てる必要がある。一方、この実施形態で用いられる第一のノズル3は、噴射される溶出液2が図1(1)に示すように広がるタイプのものであるので、穴あけ箇所以外には溶出液2が付着しないよう保護層4で覆うにしている。そして、保護層4の穴あけ箇所の位置に穴用開口40を設け、穴用開口40を通して溶出液2を当てるようにしている。
【0012】
保護層4としては、溶出液2に対して侵されない耐性(対薬品性)があることが必要である。即ち、溶出液2と反応したり溶出液2により溶かし出されたりして削られることが無い材質であることが必要である。具体的には、溶出液2がフッ酸のような酸である場合、クロムのような耐酸性を有する金属や、ポリプロピレン(PP)樹脂のような耐酸性を有する樹脂が使用される。
【0013】
保護層4の厚さは、穴あけ加工が終了するまで硝子板1の表面が露出しない厚さとされる。即ち、溶出液2により削られる場合でも、穴あけ加工が終了するまでは充分な厚さで残留する厚さとされる。前述したクロムやポリプロピレン樹脂の場合には削られる心配は無いので、ある程度薄くて良い。尚、溶出液2による物理的衝撃に耐え得る点(機械的強度)も考慮に入れられる。一例を示すと、保護層4がクロムより成る場合、厚さは1000オングストローム〜3000オングストローム程度である。ポリプロピレン樹脂より成る場合、厚さは30μm〜100μm程度である。
【0014】
穴用開口40の形成の仕方としては、保護層4の材質にもよるが、フォトリソグラフィ法により事後的に行うか、パンチング等により予め行うかである。保護層4がクロムのような金属製である場合、フォトリソグラフィにより行われる場合が多く、図1はこの場合を示している。例えば、スパッタリングによりクロム膜を前述した厚さで作成し、フォトリソグラフィ法により穴用開口40を形成する。即ち、硝子板1にレジストを塗布した後、穴用開口40の形状としたマスクを通して露光し、その後、現像を行って穴用開口40の形状のレジストパターンを得る。そして、レジストパターンを通してクロム膜をエッチングし、穴用開口40を形成する。尚、レジスト自体が保護層4として使用され得る(レジストの材料が溶出液2に対して対薬品性を持つ)場合もあり、この場合は、露光及び現像のみにより穴用開口40が形成される。フォトリソグラフィ法によると、穴用開口40を精度よく形成することができるので、位置精度や寸法精度の点で精度の高い穴あけを行うことができる。
【0015】
また、保護層4がポリプロピレン樹脂のような樹脂製の場合、予め穴用開口40を設けた樹脂フィルムを貼り付けて保護層4を形成する場合が多い。上述した程度の厚さの樹脂フィルムを用い、これに対してパンチングで穴あけして穴用開口40とする。そして、穴用開口40が所定の位置になるように硝子板1に貼り付けする。貼り付けは、硝子板1に樹脂フィルムを密着させて加熱するラミネート法によると簡便であり、好適である。尚、樹脂フィルムへの穴あけは、レーザーにより行われる場合もある。
【0016】
このようにして穴用開口40を保護層4に形成した後、穴あけ工程が行われる。穴あけ工程では、図1(1)〜(3)に示すように、硝子板1の両側にノズル3,5が配置される。一方の側に配置された第一のノズル3は、パターン衝撃を行うためのものであり、他方の側に配置されたノズルは均一衝撃を行うためのものである。パターン衝撃を行う第一のノズル3は少なくとも一つあれば足りるが、この実施形態では、複数の穴あけを同時に行うため、第一のノズル3が複数配置されている。また、他方の側の第二のノズル5は複数均等に配置されている。「均等に」とは、他方の側の面102内における溶出液2の供給量が均一になるようにという意味であり、例えば第二のノズル5が三つ以上の場合、各ノズル5が等間隔をおいて配置されているという意味である。
【0017】
次に、図1に示す方法により使用される第一のノズル3について説明する。図2は、図1の方法に使用される第一のノズル3の正面断面概略図である。
上述したように、本実施形態の方法は、直径20μm〜400μm程度の粒径の粒状の溶出液2を当てて5×10−2N/cm2〜20×10−2N/cm2程度の圧力で衝撃するところに特徴点がある。このように溶出液2を粒状に噴射して衝撃するためには、図2に示すような二流体ノズルを用いると好適である。即ち、図2に示す第一のノズル3は、ノズル本体31と、管接続ユニット32と、固定リング33等から構成されている。
【0018】
管接続ユニット32は、右側に圧縮空気供給管の接続部(以下、空気接続部)34を備えており、左側に溶出液供給管の接続部(以下、液接続部)35を備えている。空気接続部34は、圧縮空気の管を嵌め込む凹部である。液接続部35は、溶出液2の供給管を嵌め込む凹部である。
空気接続部34からは、管接続ユニット32の中央部まで横に延びるようにして空気導入孔340が形成されている。空気導入孔340の先端部の下側には、下側に突出するようにして空気噴射筒36が形成されている。
管接続ユニット32には、下面中央部に凹部(以下、主凹部)37が形成されている。空気噴射筒36は、この主凹部37において下方に突出している。空気噴射筒36は、空気導入孔340と主凹部37内を連通させている。
【0019】
一方、液接続部35から管接続ユニット32の中央部まで横方向に延びるようにして液導入孔350が形成されている。液導入孔350は、空気導入孔340よりも少し低い位置で横方向に延びている。液導入孔350は、主凹部37の側壁に達しており、液接続部35と主凹部37とを連通させている。
ノズル本体31は、上下方向に貫通路を有する筒状の部材である。ノズル本体31は、下端が管接続ユニット32の主凹部37に嵌め込まれた状態で設けられている。図2に示すように、ノズル本体31の上端と主凹部37とは、空気噴射筒36を取り囲む空間(以下、主空間)30を形成している。
【0020】
図2に示すように、ノズル本体31の貫通路は、上端で少し広がっている。空気噴射筒36の下端は、この貫通路の広がった部分に位置する。空気噴射筒36の下端は、ノズル本体31には接触しておらず、離間している。
固定リング33は、管接続ユニット32の主凹部37とノズル本体31との間に挿し込まれるようにして設けられている。固定リング33は、ネジ止めによりノズル本体31を管接続ユニット32に固定するものである。主凹部37の側面とノズル本体31の外周面には、ねじ切りされた箇所があり、固定リング33はこの両者に噛み合うようネジ込まれている。
【0021】
図2に示す第一のノズル3において、圧縮空気供給管及び溶出液供給管がそれぞれ接続され、圧縮空気及び溶出液2がそれぞれ供給される。供給された圧縮空気は、空気導入孔340から空気噴射筒36に導入され、空気噴射口340から主空間30に噴射される。溶出液2は、液導入孔350から主空間30に導入されて流入する。流入した溶出液2は、主空間30に充満した後、ノズル本体31の貫通路に流入して下降し、貫通路の上端開口(以下、噴射口)310から噴射される。この際、空気噴射筒36から噴射される圧縮空気が溶出液2に勢いよく混入し、溶出液2を下方に向けて押し下げながら分散させ、溶出液2とともに噴射口310から噴射される。この結果、噴射口310から噴射される溶出液2は、小さな粒状の状態(霧状又はミスト状)となる。圧縮空気の圧力、溶出液2の供給圧力、空気噴射筒36の上端開口の寸法、主空間30の断面積、ノズル本体31の貫通路の断面積、噴射口310の寸法形状等のパラメータを適宜選定することで、所望の粒径の溶出液2を所望の圧力で噴射させることができる。尚、上述したような第一のノズル3は自作しても良いが、市販のものを使用しても良い。例えば、株式会社いけうち製の二流体スプレーノズルVVEAシリーズの中から適宜選んで使用することができる。
【0022】
次に、第二のノズル5について説明する。図3は、図1の方法に使用される第二のノズル5の斜視概略図である。
図3に示すように、第二のノズル5は、噴射口51を有する管状の部材である。図5に示すように、第二のノズル5は複数配置されており、水平な方向に互いに平行に延びるよう配置されている。
噴射口51は、各第二のノズル5において上部に設けられており、上方に向けて溶出液2を噴射するようになっている。噴射口51は、各第二のノズル5において複数設けられており、管の延びる方向(垂直方向)に均等間隔をおいて設けられている。各第二のノズル5は、溶出液供給管52に接続されている。
【0023】
第二のノズル5には、不図示の移動機構が付設されている。移動機構は、複数の第二のノズル5を一体に水平方向に移動させるものである。移動機構による移動は、一定の方向への所定のストロークの前進及び後退(前後運動)である。本実施形態では、第二のノズル5の移動方向は、ノズル5が延びる方向に対して垂直な水平方向となっている。尚、第一のノズル3には、このような移動機構は設けられておらず、第一のノズル3は一定の位置を保持する。
【0024】
次に、穴あけ工程について以下にまとめて説明する。
上述したように硝子板1に保護層4及び穴用開口40を形成した硝子板1を水平な姿勢で保持し、その上側に第一のノズル3を位置させ、その下側に第二のノズル5を位置させる。第一のノズル3は、噴射口310が真下を向く姿勢であり、第二のノズル5は噴射口51が真上を向く姿勢である。硝子板1は、穴用開口40が第一のノズル3の噴射口310の直下の位置に位置するよう配置される。尚、各第一のノズル3は、硝子板1の各穴用開口40と同じ間隔となるよう予め位置が調整される。
【0025】
上記状態で、上記のように噴射口310,51から溶出液2を噴射させる。この際、第一のノズル3から噴射された溶出液2は、保護層4の穴用開口40を通過して硝子板1の一方の側の面101に達し、一方の側の面101を衝撃しつつ溶かし出す。第二のノズル5から噴射された溶出液2は、図1(1)に示すように広がり、硝子板1の他方の側の面102を均一に衝撃しつつ他方の側の面102を溶かし出す。この際、移動機構は、第二のノズル5を所定のストロークで前後運動させる。
【0026】
一方の側の面101では、穴用開口40を通して溶出液2が次々に流入してくるので、硝子板1の表面では、新鮮な(硝子が溶け込んでいない)溶出液2に置換される。硝子が溶け込んだ溶出液2は、流入する溶出液2の衝撃圧力により次々に弾き出される。この結果、硝子板1の表面が削られ、孔が形成される(図1(2))。この際、溶出液2による溶かし出し作用は、横方向(溶出液2の入射方向に対して垂直な方向)にも多少生じる。従って、図1(2)に示すように、孔は横方向にも多少広がっていく。他方の側の面102においても基本的に同様であるが、他方の側の面102では、溶出液2が均一に衝撃するので、均一に表面が削られ、少しずつ厚さが減少していく。
【0027】
このようにして両側からの溶出液2による衝撃を続けると、図1(3)に示すように、貫通穴10が形成され、穴あけが完了する。図1(3)に示すように、形成される穴10は、一方の側の面101の縁がテーパ面となっている。テーパ面の下側は、硝子板1の二つの面101,102に垂直な面(以下、垂直面)となっている。尚、この実施形態では、穴用開口40は円形である。したがって、面101,102の方向で見た穴10の断面形状も円形である。
【0028】
この硝子板穴あけ方法は、後に詳述するように、サンドブラストのような粒状の固体(砂)をぶつけて削るという物理的作用のみによる方法ではなく、溶出液2による溶かし出しという化学的作用を利用しているので、形成された穴10の周縁にギザギザが形成されることはなく、滑らかな美しい周縁の穴10が得られる。尚、本実施形態の方法は、溶出液2による衝撃という物理的作用も併用している。この物理的作用には、上述したように、硝子板1の表面において溶出液2を効率良く置換する作用の他、衝撃により削り出しを行う作用も含まれている。即ち、溶出液2が触れることで若干溶解して軟化した硝子が、溶出液2による衝撃により物理的に弾き出される作用もある。また、実施形態の方法では、一方の側から穴あけのパターンで衝撃を行いつつ、他方の側から均一な衝撃を行っている。このため、硝子板1の厚さを全体に薄くしつつ同時に穴あけを行うことができる。
【0029】
尚、上記方法において、溶出液2には界面活性剤が添加されることがある。界面活性剤の添加は、硝子板1の表面での溶出液の移動を促進させて溶出液の置換をより促進するためである。界面活性剤としては、例えばフッ素系のものが使用される。界面活性剤は、希釈液を含む溶出液の全量に対して0.1〜0.5%の重量比で添加される。
【0030】
上述したように、第二のノズル5から溶出液2の噴射は、硝子板1の厚さを削減するものであるが、この際、ノズル5の構成や配置等を適宜選定することで、削減後の表面の平坦性を高くすることができる。以下、この点について説明する。
図4は、硝子板1の表面の平坦性を高めるための第二のノズル51について示した平面概略図である。図4に示すように、各噴射口51は、第二のノズル5の管の延びる方向に対して斜めの45度の方向に細長い。従って、各噴射口51から噴射される溶出液2は、図5に示すように、この斜めの方向に長い錐状(ないしはラッパ状)に広がるようになっている。
【0031】
図4の下側には、第二のノズル5の各噴射口51から溶出液2が噴射される様子を示す。二点鎖線は、硝子板1の他方の側の面102上での溶出液2の広がりの輪郭である。図4の上側には、ノズル5の長さ方向(ノズル5の移動方向に垂直な水平方向)で見た面102における溶出液2の供給量の分布を示す。
【0032】
第二のノズル5が移動機構500によって移動しながら溶出液2を噴射する際、硝子板1の他方の側の面102の各点は、いずれかの噴射口51から噴射された溶出液2の供給を受ける。この際、隣り合う二つの噴射口51の丁度中間の点が通過する他方の側の面102上の点Pは、その隣り合う二つの噴射口51から溶出液2の供給を受けることになる。この場合、この点Pは、推状の溶出液2の広がりの端部に位置するので、図4の上側に示すように、一つの噴射口51から受け取る溶出液2の量は、他の点の1/2程度であり、上下両隣の噴射口51で一つ分の溶出液2の供給を受ける。従って、ノズル5の長さ方向において、硝子板1の他方の側の面102の各点での溶出液2の供給量は均一である。
【0033】
上記のように、硝子板1の他方の側の面102の各点は、各噴射口51から均一な溶出液2の供給を受けるので、衝撃による溶かし出しも均一となり、均一に表面が削減される。この結果、図1(5)に示すように穴あけが完了した際、硝子板1の他方の側の面102は、平坦性が極めて高いものとなる。尚、図5に示すような断面形状に溶出液2が広がる場合だけではなく、楕円状、円状、方形状(正方形、長方形)、菱形状、平行四辺形状等の断面形状で溶出液2が広がる場合もあり得る。
【0034】
上述した他方の側の面102に対する均一衝撃において、各噴射口51からの溶出液2の広がりは、図3及び図4に示すように、他方の側の面102において重ならないようにすることが望ましい。溶出液2の広がりが重なってしまうと、重なった部分で溶出液2に散乱が生じたり、乱流が生じたりする。散乱や乱流が生ずると、他方の側の面102を均一に衝撃することができなくなり、平坦性が低下する恐れがある。したがって、重ならないようにすることが望ましい。
【0035】
上述したようにノズル5の構成や配置を適宜設定することで、穴あけ完了後の他方の側の面102について最大粗さ0.5μm程度の平坦性を確保することができる。尚、一方の側の面101については、穴あけを開始する前(保護層4を形成する前)に、他方の側の面102と同様の処理により厚さを削減しながら予め平坦化することもできる。
【0036】
上述した硝子板穴あけ方法において、形成する穴10の断面形状は、溶出液2の濃度や衝撃圧力を適宜設定することで調整することができる。以下、この点について説明する、図5は、穴の断面形状の調整について示した概略図である。上述したように、実施形態の穴あけ加工は、化学的作用と物理的作用とを併用するものである。ここで、化学的作用は、溶出液2による溶かし出しであるから、方向性はなく、均等に(等方的に)生ずる。一方、前述したように、物理的作用は、溶出液2による硝子表面の衝撃であるから、衝撃の向きに生ずる。図5において、化学的作用による硝子の溶かし出しの速度をVcとし、物理的作用による硝子の削り出しの速度をVpとする。Vc及びVpは、単位時間当たりにどれだけの厚さの溶かし出し又は削り出しが進むかという速度である。
【0037】
図5に示すように、化学的作用である溶かし出しは等方的に進むから、Vcは、穴あけの過程で形成される凹部においてほぼ均一に分布する。一方、物理的作用による削り出しは、溶出液2の噴射の向きにのみ実質的に生ずるから、Vpは凹部の底の部分において最も高く、他の部分において実質的にゼロである。
ここで、Vc≫Vpである場合、即ち、Vcに比べてVpが非常に小さくてVpが実質的にゼロであるとみなせる場合、化学的作用である溶かし出しのみが実質的に作用し、穴あけは等方的に進行する。この場合は、図5(a)に示すように、得られる穴10は、断面台形状の形状となり、壁面の角度は硝子板1の厚さ方向に対して45度となる。
一方、Vc≫Vpとはみなせない場合、穴あけは等方的には進行せず、凹部の底においてより高い速度で進行する。この場合、Vc≪Vpとすると、即ち、化学的作用が無視できる程度に物理的作用が大きくなるようにすると、形成される穴10の断面すると、図5(b)に示すように断面方形となる。
【0038】
このように、Vcに対するVpの大きさを調整することで穴10の断面形状の調整が行える。ここで、Vcに大きく影響を与えるのは溶出液2の溶出成分の濃度である。一方、Vpは溶出液2による衝撃圧力によって決まる。衝撃圧力を大きくすると、Vpは当然に高くなるが、表面での溶出液2の置換速度も同時に高くなるので、Vcも高くなる。但し、置換速度の増加に比べて衝撃圧力の増加の影響の方が大きいので、Vcに対してVpが大きくなり、この結果、上記のように断面方形の穴10を得ることができる。また、衝撃圧力を高くするとともに、溶出液2の濃度を下げると、Vcに対してVpをより大きくすることができるので、そのような調整方法が採られることもある。いずれにしても、必要な断面形状が得られる溶出液2の濃度及び衝撃圧力を予め実験的に算出し、その条件を再現しながら穴あけを行うようにする。
【0039】
次に、形成する穴10の開口の形状と穴用開口40の大きさとの関係について説明する。図6は、形成すべき穴10の開口の形状と穴用開口40の大きさについて示した概略図である。
上述したように、実施形態の硝子板穴あけ方法では、保護層4に設けた穴用開口40を通して溶出液2を供給して穴あけを行う。この場合、穴用開口40の大きさは、形成される穴10の形状のうち溶出液2の入射側の開口(以下、単に入射側開口)の大きさとの関係で適宜決定される。以下、入射側開口の直径をR、穴用開口40の直径をφ、硝子板1の厚さをTとする。
【0040】
図5(a)に示すように、Vc≫Vpとして穴あけが等方的に進む状態を維持しながら厚さTだけ穴あけをすると、入射側開口では、横方向にやはりTの距離だけ溶出が進行することになる。この結果、穴あけ完了時には、入射側開口の直径はφ+2Tということになる。従って、図6に示すように、入射側開口の大きさをRとしたい場合には、穴用開口40の大きさφは、φ=R−2Tとしておけば良いことになる。尚、出射側開口の大きさは、穴用開口40と同じ大きさになる。
【0041】
次に、光学窓作製方法の発明の実施形態について説明する。
図7は、光学窓作製方法の発明の実施形態を示した概略図である。図7に示す方法は、上述した硝子板穴あけ方法の構成を光学窓作製に応用したものである。光学窓は、硝子板1に窓穴100を設けた構成である。
実施形態の方法は、一枚の硝子板1から多数の光学窓を作製する方法となっている。即ち、一枚の硝子板1の所定の位置に窓穴100を形成し、その後、硝子板1を分断することで多数の光学窓を得る製法となっている。
【0042】
まず、図7(1)に示すように、硝子板1を用意し、その一方の側の面に保護層を形成する。この保護層は、穴あけの際に硝子板1を保護するものであるとともに、所定の光学作用を為す層ともなっている。この実施形態では、保護層は遮光作用を為すものとなっており、保護層はクロム系の材料で形成される。より具体的には、保護層は、図7(1)に示すように、酸化クロム膜401と純クロム膜402とを積層した層となっている。酸化クロム膜401や純クロム膜402は、スパッタリングによって形成できる。
【0043】
次に、図7(2)に示すように、フォトリソグラフィ法により保護層に対してパターン形成を行う。このパターンは、形成する窓穴100のパターンと同じである。純クロム膜402の上にレジスト403を塗布し、不図示のマスクを通して光照射してレジストを露光する。そして、現像を行うと、レジスト403のパターンが形成される。このレジスト403をマスクにして純クロム膜402及び酸化クロム膜401のエッチングを行うと、図7(2)に示すように、純クロム膜402及び酸化クロム膜401のパターンが得られる。これにより、窓穴用開口405が形成される。
【0044】
次に、穴あけ工程を行う。即ち、ノズル3,5により硝子板1の両側から溶出液2を噴射する(図7(3))。一方の側の面101では、窓穴用開口405のパターンで削減が進み、他方の側の面102では均一に削減が進む。所定時間噴射を行うと、穴が貫通し、窓穴100が形成される。穴あけが完了した後、レジスト403を除去する(図7(4))。その後、硝子板1を所定の箇所で分断すると、各々光学窓が完成する。尚、穴あけ工程の後には、洗浄工程が必要に応じて行われる。
【0045】
図8は、図7に示す方法により作成された光学窓の断面概略図である。図8に示すように、光学窓は、硝子板1の厚さ方向が光軸Aの方向となり、光軸Aが窓穴100の中央を貫く位置に配置されることが想定されている。
光学窓は、図8に示すように、窓穴100の一方の側の面101における縁がテーパ面103となっている。このテーパ面103の光軸Aに対する成す角は45度となっている。テーパ面103に続く面104は、光軸に沿った面(沿軸面)となっている。テーパ面103と沿軸面104とから成る窓穴100の断面形状は、図5(a)に示す断面形状の穴と図5(b)に示す断面形状の穴とつなげた形状に相当している。
【0046】
図8に示す断面形状の窓穴100は、第一のノズル3による一方の側の面101の削減を適宜制御することで達成される。即ち、最初は、Vc≫Vpとして削減を等方的に進行させ、その後、Vc≪Vpとして異方的に(厚さ方向への削減のみが進行するように)削減を行うことで、図8に示す断面形状が得られる。
窓穴用開口405が形成された保護層400は、遮光層として残留している。尚、保護層400を構成する酸化クロム膜は、低反射特性を有しており、遮光しつつもギラツキを生じさせないという効果がある。また、純クロム膜は、レジストの付着性が高いため、上記のようにフォトリソグラフィによって窓穴用開口405を形成する場合、好適である。膜厚について一例を示すと、酸化クロム膜、純クロム膜とも、1500オングストローム程度の厚さで良い。
【0047】
次に、イメージセンサモジュールの発明の第一の実施形態について説明する。図9は、実施形態に係るイメージセンサモジュールの正面断面概略図である。
図9に示すイメージセンサモジュールは、センサ素子8と、センサ素子81の入射側に設けられた硝子製の光学窓82とを備えている。センサ素子81としては、CMOS又はCCD等が使用される。
【0048】
モジュールは、セラミック製の基板83と、基板83を覆う筐体84とを備えている。筐体84は上面に開口を有し、光学窓82はこの開口に嵌め込まれた状態で設けられている。基板83上には、回路ユニット88が設けられ、センサ素子81は回路ユニット88の上に搭載されている。回路ユニット88は、センサ素子81からの信号を処理する信号処理回路を含んでいる。その他、基板83上にはコンデンサや抵抗等の不図示の周辺部品が実装されている。基板83は、モジュールの小型化等の観点から、多層配線を備えた多層基板とされることが多い。
【0049】
光学窓82には、マイクロレンズ86が嵌め込まれている。マイクロレンズ86は、ある程度大きな画角の撮像が行えるようセンサ素子81に光を取り込むためのものである。マイクロレンズ86としては、プラスチック製の非球面レンズが好適に使用できる。なお、光学窓82の入射側には、透明な蓋板が設け、マイクロレンズ86が露出しないようにする場合もある。また、光学窓82の出射側には、赤外線カットフィルタ89が設けられている。赤外線カットフィルタ89は、同様に筐体84に設けられた開口に嵌め込まされている。
【0050】
光学窓82は、硝子板を穴あけ加工することで作製されたものとなっている。この穴あけ加工は、前述した硝子板穴あけ方法の実施形態及び光学窓作製方法の実施形態におけるものと同様である。穴あけの際に設けた保護層は、遮光層85として残留している。遮光層85は、前述したように酸化クロム膜と純クロム膜とを積層したものである。
図9に示すように、光学窓82の窓穴820は、入射側の縁がテーパ面823となっている。そして、テーパ面823より出射側は、光軸Aに沿った沿軸面824となっている。尚、テーパ面823及び沿軸面824とも、光軸Aに垂直な方向の断面形状は、円形である。また、光軸Aに対してテーパ面823が成す角度は、45度程度となっている。
【0051】
図9に示すイメージセンサモジュールでは、光学窓82の窓穴820に入射した光は、マイクロレンズ86を透過してセンサ素子81に達する。そして、センサ素子81で光電変換され、その出力信号が回路ユニット88内の信号処理回路で処理され、イメージ信号として出力される。
このような光学窓は、従来のサンドブラスト法により作製された光学窓と比較すると、顕著な構造上の差異を有する。以下、この点を説明する。
【0052】
図10は、実施形態のイメージセンサモジュールにおける光学窓82の構造上の特徴点を示す概略図である。参考のため、従来のサンドブラスト法により作製された光学窓82の構造を併せて示す。図10(A)が従来のサンドブラスト法により作製された光学窓82で、(B)が実施形態のイメージセンサモジュールにおける光学窓82である。
図10(A)に拡大して示すように、従来の光学窓82は、サンドブラスト法により穴あけされているため、窓穴820の周縁821又は壁面822にギザギザが形成されており、見栄えが良くない。一方、図10(B)に拡大して示すように、実施形態の光学窓82では、窓穴820の周縁821や壁面(テーパ面及び沿軸面)にはギザギザは形成されておらず、滑らかな面となっている。
【0053】
また、図10(A)に拡大して示すように、従来の光学窓82では、表面にはマイクロクラック800が形成されている。マイクロクラック800は、硝子の表面に形成される微細な傷、割れ目等である。
マイクロクラック800は、元来、硝子特有のものであり、硝子の製造工程の関係で避けられないものである。硝子は、マイクロクラック800があるために一般的に他の材料に比べて強度的に弱いとされている。従来の光学窓82は、サンドブラスト法によるため、縁面823にも多くのマイクロクラック800が存在した状態である。固体粒子により表面が傷つけられるため、穴あけ前よりもさらに多くのマイクロクラック800が存在することもあり得る。従来の光学窓82では、見栄えの他、このようなマイクロクラック800により強度的に弱い欠点もある。
【0054】
一方、実施形態の光学窓82は、マイクロクラックは全く形成されていない。これは、溶出液2により穴あけを行ったものであるためである。溶出液2は、硝子の表面を溶かし出すものであるから、マイクロクラックが存在する表面層が穴あけの過程で除去され、マイクロクラックの無い表面が露出した状態となる。このため、強度の面でも好適なものとなっている。
尚、光学窓82を作製する際、保護層を残留させずに除去してしまう場合もある。残留させる場合も、前述した遮光層85以外に、赤外線カット層として残留させる場合もある。
【0055】
次に、イメージセンサモジュールの発明の第二の実施形態について説明する。
図11は、第二の実施形態のイメージセンサモジュールの正面断面概略図である。図11に示すモジュールは、同様にセンサ素子81と、センサ素子81の入射側に設けられた硝子製の光学窓82とを備えている。
このモジュールは、センサ素子8の入射側に四つの樹脂レンズ871〜874を備えている。樹脂レンズ871〜874は、アクリル樹脂のような光透過性の高い光学樹脂を使用して製作したレンズである。各樹脂レンズ871〜874は、光軸Aに沿って積層されている。樹脂レンズを入射側から第一乃至第四樹脂レンズと呼ぶと、第一樹脂レンズ871及び第三樹脂レンズ873は平凸レンズであり、第二樹脂レンズ872及び第四樹脂レンズ874は平凹レンズとなっている。
【0056】
そして、第二樹脂レンズ872と第三樹脂レンズ873の間、第四樹脂レンズ874とセンサ素子81との間にはそれぞれ光学窓82が配設されている。各光学窓82は、前述したものと同様である。尚、第一樹脂レンズ871と第二樹脂レンズ872の間、第三樹脂レンズ873と第四樹脂レンズ874の間には、仕切用の硝子パネル90が配設されている。
この実施形態のように、複数の樹脂レンズ871〜874を用いた構成では光学窓82も複数配設される場合があるが、この場合も、上述した光学窓82を用いることで、見栄えの良いモジュールとすることができる。
【0057】
次に、硝子板穴あけ装置の発明の実施形態について説明する。
図12及び図13は、実施形態に係る硝子板穴あけ装置を示した概略図であり、図12は正面概略図、図13は側面概略図である。図12及び図13に示す装置は、図1に示す実施形態の硝子板穴あけ方法及び光学窓作製方法に用いられる装置となっている。
図12及び図13に示す装置は、硝子を溶出することが可能な溶出液2を直径20μm〜400μmの粒状にして噴射する第一のノズル3と、同じく硝子を溶出することが可能な溶出液2を噴射する第二のノズル5と、第二のノズル5を移動させる移動機構500と、第一のノズル3及び第二のノズル5に溶出液2を供給する溶出液供給系20と、噴射された溶出液2が硝子板1の所定箇所に当たるよう硝子板1を保持する保持機構11とを備えている。
【0058】
第一第二のノズル3,5の構成及び配置は、前述したのと同様である。装置は、内部で穴あけ加工を行う処理チャンバー6を備えており、第一第二のノズル3,5は処理チャンバー6内に配置されている。保持機構11には、処理チャンバー6内への硝子板1を搬入し、穴あけ後に硝子板1を処理チャンバー6から搬出する搬送機構が兼用されている。
処理チャンバー6は、硝子板1を搬入する搬入口61と、穴あけ後に硝子板1を搬出する搬出口62とを備えている。搬入口61及び搬出口62は、封鎖ゲート63で開閉されるようになっている。尚、開閉は、封鎖ゲート63を上下方向に移動させることで行われる。
【0059】
搬送機構は、図12に示すように硝子板1を水平な姿勢にしつつ水平方向に搬送する機構となっている。搬送機構は、水平な搬送ラインに沿って配置された多数の搬送コロ12によって構成されている。搬送ラインは、搬入口61及び搬出口62を通して設定されており、硝子板1は、搬入口61から搬入されて穴あけが行われた後、搬出口62から搬出されるようになっている。尚、図13に示すように、搬送コロ12は、硝子板1を両端部において支持しながら搬送するものとなっている。
【0060】
また、処理チャンバー6の内壁面や、処理チャンバー6内の各部材の表面は、溶出液2に対して耐薬品性の構成となっている。例えば溶出液2がフッ酸である場合、内壁面や各部材の表面はテフロン(デュポン社の登録商標)のようなフッ素樹脂をコーティングして覆った構成とされる。尚、搬入口61や搬出口62を開閉する封鎖ゲート63は、溶出液2が漏出しないよう液密に封鎖を行うようになっている。
【0061】
各第一のノズル3は、ノズルホルダー66によって保持されている。図10は、図12及び図13に示すノズルホルダー66の平面概略図である。本実施形態の装置は、任意の位置で穴あけができるよう、水平面内の任意の位置に第一のノズル3を位置させることができるようになっている。
より具体的に説明すると、ノズルホルダー66は、ガイドレール状の部材であり、長さ方向の任意の位置に第一のノズル3を位置させることができ、その位置で第一のノズル3を固定することができるようになっている。ノズルホルダー66は、複数設けられており、水平面内に平行に並べられている。
【0062】
ノズルホルダー66の上側には、ホルダーレール661が設けられている。ホルダーレール661も、ガイドレール状の部材である。ホルダーレール661も、水平面内に平行に並べられて複数設けられている。ホルダーレール661の延びる方向は、各ノズルホルダー66の延びる方向に対して垂直でる。即ち、図10に示すように、各ノズルホルダー66と各ホルダーレール661は、直角格子状に交差した状態で配置されている。
各ノズルホルダー66は、ホルダーレール661の下面に取り付けられている。各ノズルホルダー66は、ホルダーレール661の延びる方向に位置調節が可能で、各ノズルホルダー66を任意の位置で固定できるようになっている。
【0063】
溶出液供給系20は、溶出液2を溜めた液溜め22と、液溜め22から溶出液供給管21を介して各第一のノズル3に溶出液2を送る送液ポンプ23と、調圧用バルブ24などから構成されている。尚、溶出液2に界面活性剤が添加される場合、液溜め内に予め添加しておくか、溶出液供給管21に界面活性剤の混合器が設けられる。
装置は、第一のノズル3に圧縮空気を供給する圧縮空気供給系200を備えている。圧縮空気供給系200は、不図示のボンベにつながる圧縮空気供給管201や圧縮空気供給管201上に設けられれた開閉バルブ202、調圧用バブル203等から構成されている。溶出液供給管21や圧縮空気供給管201は、処理チャンバー6の器壁を液密に貫通している。
【0064】
尚、溶出液供給管21と各第一のノズル3、及び圧縮空気供給管201と各第一のノズル3とは、それぞれフレキシブルチューブ25,204でつながれている。これは、各第一のノズル3の位置が変更されるためである。第二のノズル5に溶出液2を供給する管についても、第二のノズル5が移動機構500によって移動するため、フレキシブルチューブが採用されている。
また、図12及び図13に示すように、処理チャンバー6の底部は漏斗状になっており、最下部には、排出口64が設けられている。排出口64には、使用済みの溶出液2を排出する排出管65が接続されている。硝子板1の表面の材料が溶け込んだ溶出液2は、処理チャンバー6の底部に落下し、排出口64及び排出管65を通って排出されるようになっている。
【0065】
次に、上記装置の動作について説明する。
保持機構11は、硝子板1を処理チャンバー内に搬入し、所定位置で停止させる。この位置は、硝子板1の各穴あけ位置が各第一のノズル3の直下の位置となる位置である。この状態で、溶出液供給系20及び圧縮空気供給系200を動作させ、穴あけを開始する。この際、移動機構500を動作させ、第二のノズル5を所定のストロークで前後移動させる。移動の方向は、水平な方向であれば良く、硝子板1の搬送方向や、搬送方向に垂直な水平方向の場合がある。図には、搬送方向に移動する例が示されている。
上述したように、溶出液2による両側からの衝撃を所定時間行うと、穴あけが完了する。その後、硝子板1は処理チャンバーから保持機構11によって搬出される。
【0066】
上述した硝子板穴あけ方法の実施形態では、上述の通り保護層を設けこれに穴用開口をして穴あけを行ったが、保護層を設けないで穴あけすることも可能である。溶出液2の粒が広がらないもので、穴あけする箇所にのみ溶出液2を当てることが可能なノズルを使用するようにすれば、保護層を設けないで穴あけすることも可能である。この場合、硝子板1の一方の側の面101を溶かし出した溶出液2が表面で穴あけ箇所の周囲に流れてしまわないように少しずつ穴あけを行うようにすれば良い。
また、硝子板1の下方に第一のノズル3を配置し、下方から上方に向けて溶出液2の粒を噴射して穴あけを行うようにすれば、穴あけ箇所にのみ溶出液2を当てることは容易である。この場合、第二のノズル5は、硝子板1の上方に配置されて上から溶出液2を噴射することになる。
尚、第二のノズル5は、連続した流れとして溶出液2を噴射して硝子板1を衝撃するものとなっているが、第一のノズル3のように粒の状態で(ミスト状に)溶出液2を噴射するようなものでも実施できる場合がある。
【0067】
上述した各実施形態において、硝子板1は水平な姿勢であったが、硝子板1を垂直な姿勢にして穴あけを行うことも可能である。この場合、例えば第一のノズル3を左側に設け、第二のノズル5を右側に設け、左右から溶出液2を噴射して穴あけが行われる。
尚、第二のノズル5の移動方は前後運動のような往復運動である必要はなく、一つの向きへの移動のみで穴あけが完了する場合もある。
【0068】
また、移動機構500は、第二のノズル5を移動させるものであったが、移動は硝子板1に対する相対的なもので足り、第二のノズル5を静止させ、硝子板1を移動させても良い。この場合、第一のノズル3は、穴あけ箇所を臨む位置を保持しないことになるが、特に問題はなく、第一のノズル3をより多く(狭い間隔で)設けるようにすれば、一方の側の面101からの削減の速度の低下が問題となることもない。
尚、硝子板1を移動させる構成の場合、硝子板1の搬送機構を移動機構に兼用することもあり得る。
【0069】
各実施形態において、第一のノズル3としては、上記二流体ノズル以外のものでも良く、また二流体ノズルを使用する場合でも、空気以外の気体(例えば、窒素のような不活性ガス)を使用して溶出液2を噴射しても良い。
光学窓作製方法の発明やイメージセンサモジュールの発明においては、光学窓はレンズを保持する機能を持つものに限られない。レンズを保持する機能はなく、単に光を取り込むための窓として機能するものであっても良い。また、ピンホールカメラにおけるもののように光の入射を規制するための光学窓や、一種の絞りとして機能する光学窓についてっも、同様に実施することができる。
また、本願発明の硝子板穴あけ方法及び硝子板穴あけ装置は、前述した光学窓の作製以外の用途にも使用され得る。例えば、硝子製のディスク基板の中心穴あけ等にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施形態に係る硝子板穴あけ方法を示した正面概略図である。
【図2】図1の方法に使用される第一のノズル3の正面断面概略図である。
【図3】図1の方法に使用される第二のノズル5の斜視概略図である。
【図4】硝子板1の表面の平坦性を高めるための第二のノズル51について示した平面概略図である。
【図5】穴の断面形状の調整について示した概略図である。
【図6】形成すべき穴10の開口の形状と穴用開口40の大きさについて示した概略図である。
【図7】光学窓作製方法の発明の実施形態を示した概略図である。
【図8】図7に示す方法により作成された光学窓の断面概略図である。
【図9】実施形態に係るイメージセンサモジュールの正面断面概略図である。
【図10】実施形態のイメージセンサモジュールにおける光学窓82の構造上の特徴点を示す概略図である。
【図11】第二の実施形態のイメージセンサモジュールの正面断面概略図である。
【図12】実施形態に係る硝子板穴あけ装置を示した正面概略図である。
【図13】実施形態に係る硝子板穴あけ装置を示した側面概略図である。
【符号の説明】
【0071】
1 硝子板
10 穴
101 一方の側の面
102 他方の側の面
11 保持機構
2 溶出液
20 溶出液供給系
200 圧縮空気供給系
3 第一のノズル
4 保護層
40 穴用開口
400 保護層
401 酸化クロム膜
402 純クロム膜
5 第二のノズル
500 移動機構
81 センサ素子
82 光学窓
820 窓穴
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、硝子板に微細な貫通穴を形成する穴あけ技術に関するものであり、特に、イメージセンサモジュール等で用いられる光学窓の作製に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、切断、エッチング等の各種加工が硝子板に対して行われている。このうち、精密な光学機器などに用いられる光学窓の作製においては、硝子板に微細な穴あけ加工をすることが必要となっている。例えば、携帯電話やデジタルカメラに搭載されているイメージセンサモジュールでは、センサ素子の入射側に光学窓を設け、光学窓の窓穴を通して光を入射させて撮像するようになっている。この光学窓は硝子製であり、窓穴は、センサ素子の入射面の大きさより少し大きい。センサ素子としてはCCDが一般的であるが、微細加工技術の向上を背景とした高集積度化により、高解像度化(高画素数化)にもかかわらずセンサ素子は非常に小さいものになってきており、従って窓穴も非常に小さくなってきている。これは、携帯電話等の機器の小型化、コンパクト化の要請に沿うものでもある。
【特許文献1】特開平61−86729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような硝子板への穴あけ加工については、例えば特開昭61−86729号公報に開示されているように、サンドブラスト法が採用されている。上述したような光学窓の作製においても、サンドブラスト法を採用することが可能であるが、サンドブラスト法によると、形成した穴の周縁にギザギザ(凹凸)が形成されてしまう。このようなギザギザは、携帯電話等の製品に搭載した場合に見栄えが悪い。また、ギザギザによって光が散乱される等、光学特性に影響を与えることもあり得る。
本願の発明は、このような課題を考慮して為されたものであり、イメージセンサモジュール用の光学窓を作製する場合のように硝子板に微小な穴あけをする際に用いられる方法及び装置であって、穴の周縁にギザギザが形成されない優れた方法及び装置を提供する技術的意義を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、硝子板の厚さを均一に削減するとともに当該硝子板に微小な穴を形成する硝子板穴あけ方法であって、
硝子板の一方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を、形成する穴より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射し、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するとともに、
硝子板の他方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を噴射し、噴射された溶出液を硝子板の他方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃することで貫通穴を形成する方法であり、
硝子板の一方の側の面に対しては、形成する穴のパターンで溶出液の噴射を行うとともに、
硝子板の他方の側の面に対しては、形成する穴のパターンによらずに溶出液を均一に噴射して硝子板の表面を均一に削減することで穴を貫通させるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記硝子板の一方の側の面に、前記溶出液に対して耐性を持つとともに前記穴のパターンの穴用開口を有する保護層を形成し、一方の側の面に対してはこの窓用開口を通して前記溶出液を噴射するという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項2の構成において、前記穴用開口をフォトリソグラフィにより設けるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1乃至3いずれかの構成において、前記溶出液の噴射は、内部で前記溶出液に圧縮気体を混合して噴射する二流体ノズルにより行われるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項1乃至4いずれかの構成において、前記他方の側の面に対しては、前記ノズルを複数均等に配置して最大粗さが0.5μm以下の平坦性が得られるよう前記削減が行われるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、硝子板に窓穴を設けた構造の光学窓を作製する方法であって、
硝子板の一方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を、形成する窓穴より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射し、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するとともに、
硝子板の他方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を噴射し、噴射された溶出液を硝子板の他方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃することで貫通穴を形成する方法であり、
硝子板の一方の側の面に対しては、形成する窓穴のパターンで溶出液の噴射を行うとともに、
硝子板の他方の側の面に対しては、形成する窓穴のパターンによらずに溶出液を均一に噴射して硝子板の表面を均一に削減することで窓穴を貫通させるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、前記請求項6の構成において、前記硝子板の一方の面に、前記溶出液に対して耐性を持つとともに前記窓穴のパターンの窓穴用開口を有する保護層を形成し、一方の面に対してはこの窓用開口を通して溶出液を噴射するという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項8記載の発明は、前記請求項7の構成において、前記保護層は、遮光層でもあるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項9記載の発明は、前記請求項8の構成において、前記保護層は、クロム又はクロム化合物より成る膜であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項10記載の発明は、前記請求項9の構成において、前記保護層は、前記硝子板に近い順に、酸化クロム膜と、純クロム膜とを積層したものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項11記載の発明は、前記請求項7乃至10いずれかの構成において、前記窓穴用開口をフォトリソグラフィにより設けるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項12記載の発明は、前記請求項6乃至11いずれかの構成において、前記溶出液の噴射は、内部で前記溶出液に圧縮気体を混合して噴射する二流体ノズルにより行われるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項13記載の発明は、前記請求項6乃至12いずれかの構成において、前記他方の面に対しては、前記ノズルを複数均等に配置して最大粗さが0.5μm以下の平坦性が得られるよう削減が行われるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項14記載の発明は、センサ素子を含むモジュール本体と、センサ素子の入射側に設けられた硝子製の光学窓とから成るイメージセンサモジュールであって、
光学窓は、硝子板に窓穴を設けたものであり、
窓穴は、硝子板の材料を溶出させることが可能な溶出液を直径20μm以上400μm以下の粒状にしてノズルから噴射し、噴射された溶出液を板材の所定箇所に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃し、当該箇所に対する粒状の溶出液による衝撃を継続することで形成されたものであり、
硝子板の一方の面には、溶出液に対して耐性を持つ保護層が形成されており、この保護層には、窓穴用開口が設けられており、
窓穴は、保護層が設けられた側から窓穴用開口を通して溶出液を噴射するとともに、保護層が設けられていない側から溶出液を噴射して硝子板の厚さを減らすことで貫通されたものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項15記載の発明は、前記請求項14の構成において、前記保護層は、モジュール本体に光が入射するのを遮蔽する遮光層でもあるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項16記載の発明は、前記請求項15の構成において、前記保護層は、クロム又はクロム化合物より成る膜であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項17記載の発明は、前記請求項16の構成において、前記保護層は、前記硝子板に近い順に、酸化クロム膜と、純クロム膜とを積層したものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項18記載の発明は、硝子板の厚さを均一に削減しながら当該硝子板に微小な穴を形成する硝子板穴あけ装置であって、
硝子板の一方の側に配置された第一のノズルと、
硝子板の他方の側に配置された第二のノズルと、
第一第二のノズルに溶出液を供給し、各ノズルから噴射させる溶出液供給系と、
硝子板を所定位置に保持する保持機構と
を備えており、
第一のノズルは、形成する穴より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射し、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するものであり、
第二のノズルは、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するものであり、
保持機構は、第一のノズルが硝子板の一方の面の穴あけ箇所を臨む状態が維持されるよう硝子板を保持するものであり、
第二のノズルを硝子板に対して相対的に移動させて、第二のノズルから噴射される溶出液により他方の面が均一に削減されるようにする移動機構が設けられているという構成を有する。
【発明の効果】
【0005】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、サンドブラストのような粒状の固体(砂)をぶつけて削るという物理的作用のみによる方法ではなく、溶出液による溶かし出しという化学的作用を利用するので、形成された穴の周縁にギザギザが形成されることはなく、滑らかな美しい周縁の穴が得られる。また、一方の側から穴あけのパターンで衝撃を行い、他方の側から均一な衝撃を行うため、硝子板の厚さを全体に薄くしつつ穴あけを行うことができる。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、硝子板の一方の側の面に形成された保護層の窓用開口を通して溶出液を噴射するので、ノズルからの溶出液の噴射形状を所定のものにする必要がなく、容易に穴あけを行うことができるという効果が得られる。
また、請求項3記載の発明によれば、上記効果に加え、穴用開口をフォトリソグラフィにより設けるので、微小な穴を高い寸法精度で設けるのに適したものとなる。
また、請求項6記載の発明によれば、サンドブラストのような粒状の固体(砂)をぶつけて削るという物理的作用のみによる方法ではなく、溶出液による溶かし出しという化学的作用を利用するので、形成された穴の周縁にギザギザが形成されることはなく、滑らかな美しい周縁の穴が得られる。また、一方の側から穴あけのパターンで衝撃を行い、他方の側から均一な衝撃を行うため、硝子板の厚さを全体に薄くしつつ穴あけを行うことができる。このため、薄型の電子機器や光学機器に好適に搭載される光学窓が得られる。
また、請求項7記載の発明によれば、上記効果に加え、硝子板の一方の側の面に形成された保護層の窓用開口を通して溶出液を噴射するので、ノズルからの溶出液の噴射形状を所定のものにする必要がなく、容易に穴あけを行うことができるという効果が得られる。
また、請求項8記載の発明によれば、上記効果に加え、保護層は、遮光層でもあるので、窓穴以外の部分では遮光される光学窓が得られ、その際にも遮光層を別途設ける工程は不要である。
また、請求項10記載の発明によれば、上記効果に加え、保護層が酸化クロム膜と純クロム膜とを積層したものであるので、酸化クロム膜により低反射効果が得られる上、純クロム膜に対するレジストの付着性が良いので、フォトリソグラフィが容易に行えるという効果が得られる。
また、請求項11記載の発明によれば、上記効果に加え、穴用開口をフォトリソグラフィにより設けるので、微小な穴を高い寸法精度で設けるのに適したものとなる。
また、請求項14記載の発明によれば、光学窓の窓穴の周縁にギザギザがなく、滑らかな美しい周縁の窓穴となっているので、見栄えの良いモジュールが提供される。また、光学窓が薄くなっているので、モジュール全体もコンパクトになり、薄型の電子機器や光学機器に好適に搭載することができる。
また、請求項18記載の発明によれば、周縁にギザギザが形成されず、滑らかな美しい周縁の穴を得ることができる。また、一方の側から穴あけのパターンで衝撃を行い、同時に他方の側から均一な衝撃を行うことができるため、硝子板の厚さを全体に薄くしつつ同時に穴あけを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について説明する。
まず、硝子板穴あけ方法の発明の実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る硝子板穴あけ方法を示した正面概略図である。
図1に示す方法は、硝子より成る板状の対象物(硝子板)1に微小な穴10をあける方法である。穴10としては、直径が500μm〜5mm程度の円形の穴10をあける場合、この方法は好適に採用され得る。
【0007】
この方法の大きな特徴点は、硝子を溶出することが可能な溶出液2で硝子板1の表面を衝撃し、これによって穴あけを行う点である。この方法は、溶出液2が硝子を溶かし出すという化学的作用と、溶出液2が硝子板1を衝撃するという物理的作用の両方を利用している。実施形態の方法のもう一つの大きな特徴点は、硝子板1の一方の側の面101に対しては溶出液2により穴あけのパターンで衝撃し(以下、パターン衝撃)、他方の側の面102に対して均一に溶出液2により衝撃して厚さを削減し(以下、均一衝撃)、これらを併せて行うことで貫通穴を形成する点である。
【0008】
パターン衝撃の際には、溶出液2を小さな粒状にし、この粒状の溶出液2で硝子板1の表面を衝撃する。粒の大きさは、形成する穴10よりも小さいことが好ましく、20μm〜400μmの範囲であることが好ましい。溶出液2の粒径が20μmよりも小さいと、重さが軽いために充分な衝撃圧力が得られなくなる可能性がある。また、粒径が400μよりも大きいと、衝撃圧力が大きくなり過ぎて、形成する穴10の寸法精度が低下する問題があり、また微小な穴あけができなくなる可能性がある。また、後述するノズルについても、そのように大きな粒径で溶出液2を噴射させることが可能なノズルを選定ないし製作することが難しくなる。
【0009】
この実施形態の方法では、硼珪酸硝子板その他の各種硝子板を穴あけすることができる。硝子板1の材料に応じて、その材料を溶出させることができる溶出液2を適宜選定する。溶出液2としては、フッ酸のような酸(無機酸又は有機酸)を所定の濃度に希釈したものが使用される。濃度は、後述するように、形成する穴10の形状に応じて変更されるが、例えばフッ酸の場合、純水等を希釈液として使用し、3〜30%程度の濃度とされる。
【0010】
パターン衝撃、均一衝撃いずれ力おいても、衝撃圧力は、5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の範囲であることが好ましい。5×10−2N/cm2よりも小さいと、あまりにも圧力が小さいため、穴あけに長時間を要するか若しくは穴あけができない問題が生ずる。圧力が20×10−2N/cm2より大きいと、形成する穴10の寸法形状を所定のものにするのが難しくなるし、そのような高い圧力で上記粒径の粒状の溶出液2を当てること自体、技術的に難しい。
【0011】
パターン衝撃においては、第一のノズル3を使用して溶出液2を粒状にする。この際、第一のノズル3からの溶出液2の噴射形状を考慮し、硝子板1の一方の側の面101を保護層4で覆い、保護層4に穴あけのための開口(穴用開口)40を設ける。パターン衝撃のためには、穴10をあけるよう定められた所定箇所(以下、穴あけ箇所)にのみ集中的に且つ穴あけのパターンで粒状の溶出液2を当てる必要がある。一方、この実施形態で用いられる第一のノズル3は、噴射される溶出液2が図1(1)に示すように広がるタイプのものであるので、穴あけ箇所以外には溶出液2が付着しないよう保護層4で覆うにしている。そして、保護層4の穴あけ箇所の位置に穴用開口40を設け、穴用開口40を通して溶出液2を当てるようにしている。
【0012】
保護層4としては、溶出液2に対して侵されない耐性(対薬品性)があることが必要である。即ち、溶出液2と反応したり溶出液2により溶かし出されたりして削られることが無い材質であることが必要である。具体的には、溶出液2がフッ酸のような酸である場合、クロムのような耐酸性を有する金属や、ポリプロピレン(PP)樹脂のような耐酸性を有する樹脂が使用される。
【0013】
保護層4の厚さは、穴あけ加工が終了するまで硝子板1の表面が露出しない厚さとされる。即ち、溶出液2により削られる場合でも、穴あけ加工が終了するまでは充分な厚さで残留する厚さとされる。前述したクロムやポリプロピレン樹脂の場合には削られる心配は無いので、ある程度薄くて良い。尚、溶出液2による物理的衝撃に耐え得る点(機械的強度)も考慮に入れられる。一例を示すと、保護層4がクロムより成る場合、厚さは1000オングストローム〜3000オングストローム程度である。ポリプロピレン樹脂より成る場合、厚さは30μm〜100μm程度である。
【0014】
穴用開口40の形成の仕方としては、保護層4の材質にもよるが、フォトリソグラフィ法により事後的に行うか、パンチング等により予め行うかである。保護層4がクロムのような金属製である場合、フォトリソグラフィにより行われる場合が多く、図1はこの場合を示している。例えば、スパッタリングによりクロム膜を前述した厚さで作成し、フォトリソグラフィ法により穴用開口40を形成する。即ち、硝子板1にレジストを塗布した後、穴用開口40の形状としたマスクを通して露光し、その後、現像を行って穴用開口40の形状のレジストパターンを得る。そして、レジストパターンを通してクロム膜をエッチングし、穴用開口40を形成する。尚、レジスト自体が保護層4として使用され得る(レジストの材料が溶出液2に対して対薬品性を持つ)場合もあり、この場合は、露光及び現像のみにより穴用開口40が形成される。フォトリソグラフィ法によると、穴用開口40を精度よく形成することができるので、位置精度や寸法精度の点で精度の高い穴あけを行うことができる。
【0015】
また、保護層4がポリプロピレン樹脂のような樹脂製の場合、予め穴用開口40を設けた樹脂フィルムを貼り付けて保護層4を形成する場合が多い。上述した程度の厚さの樹脂フィルムを用い、これに対してパンチングで穴あけして穴用開口40とする。そして、穴用開口40が所定の位置になるように硝子板1に貼り付けする。貼り付けは、硝子板1に樹脂フィルムを密着させて加熱するラミネート法によると簡便であり、好適である。尚、樹脂フィルムへの穴あけは、レーザーにより行われる場合もある。
【0016】
このようにして穴用開口40を保護層4に形成した後、穴あけ工程が行われる。穴あけ工程では、図1(1)〜(3)に示すように、硝子板1の両側にノズル3,5が配置される。一方の側に配置された第一のノズル3は、パターン衝撃を行うためのものであり、他方の側に配置されたノズルは均一衝撃を行うためのものである。パターン衝撃を行う第一のノズル3は少なくとも一つあれば足りるが、この実施形態では、複数の穴あけを同時に行うため、第一のノズル3が複数配置されている。また、他方の側の第二のノズル5は複数均等に配置されている。「均等に」とは、他方の側の面102内における溶出液2の供給量が均一になるようにという意味であり、例えば第二のノズル5が三つ以上の場合、各ノズル5が等間隔をおいて配置されているという意味である。
【0017】
次に、図1に示す方法により使用される第一のノズル3について説明する。図2は、図1の方法に使用される第一のノズル3の正面断面概略図である。
上述したように、本実施形態の方法は、直径20μm〜400μm程度の粒径の粒状の溶出液2を当てて5×10−2N/cm2〜20×10−2N/cm2程度の圧力で衝撃するところに特徴点がある。このように溶出液2を粒状に噴射して衝撃するためには、図2に示すような二流体ノズルを用いると好適である。即ち、図2に示す第一のノズル3は、ノズル本体31と、管接続ユニット32と、固定リング33等から構成されている。
【0018】
管接続ユニット32は、右側に圧縮空気供給管の接続部(以下、空気接続部)34を備えており、左側に溶出液供給管の接続部(以下、液接続部)35を備えている。空気接続部34は、圧縮空気の管を嵌め込む凹部である。液接続部35は、溶出液2の供給管を嵌め込む凹部である。
空気接続部34からは、管接続ユニット32の中央部まで横に延びるようにして空気導入孔340が形成されている。空気導入孔340の先端部の下側には、下側に突出するようにして空気噴射筒36が形成されている。
管接続ユニット32には、下面中央部に凹部(以下、主凹部)37が形成されている。空気噴射筒36は、この主凹部37において下方に突出している。空気噴射筒36は、空気導入孔340と主凹部37内を連通させている。
【0019】
一方、液接続部35から管接続ユニット32の中央部まで横方向に延びるようにして液導入孔350が形成されている。液導入孔350は、空気導入孔340よりも少し低い位置で横方向に延びている。液導入孔350は、主凹部37の側壁に達しており、液接続部35と主凹部37とを連通させている。
ノズル本体31は、上下方向に貫通路を有する筒状の部材である。ノズル本体31は、下端が管接続ユニット32の主凹部37に嵌め込まれた状態で設けられている。図2に示すように、ノズル本体31の上端と主凹部37とは、空気噴射筒36を取り囲む空間(以下、主空間)30を形成している。
【0020】
図2に示すように、ノズル本体31の貫通路は、上端で少し広がっている。空気噴射筒36の下端は、この貫通路の広がった部分に位置する。空気噴射筒36の下端は、ノズル本体31には接触しておらず、離間している。
固定リング33は、管接続ユニット32の主凹部37とノズル本体31との間に挿し込まれるようにして設けられている。固定リング33は、ネジ止めによりノズル本体31を管接続ユニット32に固定するものである。主凹部37の側面とノズル本体31の外周面には、ねじ切りされた箇所があり、固定リング33はこの両者に噛み合うようネジ込まれている。
【0021】
図2に示す第一のノズル3において、圧縮空気供給管及び溶出液供給管がそれぞれ接続され、圧縮空気及び溶出液2がそれぞれ供給される。供給された圧縮空気は、空気導入孔340から空気噴射筒36に導入され、空気噴射口340から主空間30に噴射される。溶出液2は、液導入孔350から主空間30に導入されて流入する。流入した溶出液2は、主空間30に充満した後、ノズル本体31の貫通路に流入して下降し、貫通路の上端開口(以下、噴射口)310から噴射される。この際、空気噴射筒36から噴射される圧縮空気が溶出液2に勢いよく混入し、溶出液2を下方に向けて押し下げながら分散させ、溶出液2とともに噴射口310から噴射される。この結果、噴射口310から噴射される溶出液2は、小さな粒状の状態(霧状又はミスト状)となる。圧縮空気の圧力、溶出液2の供給圧力、空気噴射筒36の上端開口の寸法、主空間30の断面積、ノズル本体31の貫通路の断面積、噴射口310の寸法形状等のパラメータを適宜選定することで、所望の粒径の溶出液2を所望の圧力で噴射させることができる。尚、上述したような第一のノズル3は自作しても良いが、市販のものを使用しても良い。例えば、株式会社いけうち製の二流体スプレーノズルVVEAシリーズの中から適宜選んで使用することができる。
【0022】
次に、第二のノズル5について説明する。図3は、図1の方法に使用される第二のノズル5の斜視概略図である。
図3に示すように、第二のノズル5は、噴射口51を有する管状の部材である。図5に示すように、第二のノズル5は複数配置されており、水平な方向に互いに平行に延びるよう配置されている。
噴射口51は、各第二のノズル5において上部に設けられており、上方に向けて溶出液2を噴射するようになっている。噴射口51は、各第二のノズル5において複数設けられており、管の延びる方向(垂直方向)に均等間隔をおいて設けられている。各第二のノズル5は、溶出液供給管52に接続されている。
【0023】
第二のノズル5には、不図示の移動機構が付設されている。移動機構は、複数の第二のノズル5を一体に水平方向に移動させるものである。移動機構による移動は、一定の方向への所定のストロークの前進及び後退(前後運動)である。本実施形態では、第二のノズル5の移動方向は、ノズル5が延びる方向に対して垂直な水平方向となっている。尚、第一のノズル3には、このような移動機構は設けられておらず、第一のノズル3は一定の位置を保持する。
【0024】
次に、穴あけ工程について以下にまとめて説明する。
上述したように硝子板1に保護層4及び穴用開口40を形成した硝子板1を水平な姿勢で保持し、その上側に第一のノズル3を位置させ、その下側に第二のノズル5を位置させる。第一のノズル3は、噴射口310が真下を向く姿勢であり、第二のノズル5は噴射口51が真上を向く姿勢である。硝子板1は、穴用開口40が第一のノズル3の噴射口310の直下の位置に位置するよう配置される。尚、各第一のノズル3は、硝子板1の各穴用開口40と同じ間隔となるよう予め位置が調整される。
【0025】
上記状態で、上記のように噴射口310,51から溶出液2を噴射させる。この際、第一のノズル3から噴射された溶出液2は、保護層4の穴用開口40を通過して硝子板1の一方の側の面101に達し、一方の側の面101を衝撃しつつ溶かし出す。第二のノズル5から噴射された溶出液2は、図1(1)に示すように広がり、硝子板1の他方の側の面102を均一に衝撃しつつ他方の側の面102を溶かし出す。この際、移動機構は、第二のノズル5を所定のストロークで前後運動させる。
【0026】
一方の側の面101では、穴用開口40を通して溶出液2が次々に流入してくるので、硝子板1の表面では、新鮮な(硝子が溶け込んでいない)溶出液2に置換される。硝子が溶け込んだ溶出液2は、流入する溶出液2の衝撃圧力により次々に弾き出される。この結果、硝子板1の表面が削られ、孔が形成される(図1(2))。この際、溶出液2による溶かし出し作用は、横方向(溶出液2の入射方向に対して垂直な方向)にも多少生じる。従って、図1(2)に示すように、孔は横方向にも多少広がっていく。他方の側の面102においても基本的に同様であるが、他方の側の面102では、溶出液2が均一に衝撃するので、均一に表面が削られ、少しずつ厚さが減少していく。
【0027】
このようにして両側からの溶出液2による衝撃を続けると、図1(3)に示すように、貫通穴10が形成され、穴あけが完了する。図1(3)に示すように、形成される穴10は、一方の側の面101の縁がテーパ面となっている。テーパ面の下側は、硝子板1の二つの面101,102に垂直な面(以下、垂直面)となっている。尚、この実施形態では、穴用開口40は円形である。したがって、面101,102の方向で見た穴10の断面形状も円形である。
【0028】
この硝子板穴あけ方法は、後に詳述するように、サンドブラストのような粒状の固体(砂)をぶつけて削るという物理的作用のみによる方法ではなく、溶出液2による溶かし出しという化学的作用を利用しているので、形成された穴10の周縁にギザギザが形成されることはなく、滑らかな美しい周縁の穴10が得られる。尚、本実施形態の方法は、溶出液2による衝撃という物理的作用も併用している。この物理的作用には、上述したように、硝子板1の表面において溶出液2を効率良く置換する作用の他、衝撃により削り出しを行う作用も含まれている。即ち、溶出液2が触れることで若干溶解して軟化した硝子が、溶出液2による衝撃により物理的に弾き出される作用もある。また、実施形態の方法では、一方の側から穴あけのパターンで衝撃を行いつつ、他方の側から均一な衝撃を行っている。このため、硝子板1の厚さを全体に薄くしつつ同時に穴あけを行うことができる。
【0029】
尚、上記方法において、溶出液2には界面活性剤が添加されることがある。界面活性剤の添加は、硝子板1の表面での溶出液の移動を促進させて溶出液の置換をより促進するためである。界面活性剤としては、例えばフッ素系のものが使用される。界面活性剤は、希釈液を含む溶出液の全量に対して0.1〜0.5%の重量比で添加される。
【0030】
上述したように、第二のノズル5から溶出液2の噴射は、硝子板1の厚さを削減するものであるが、この際、ノズル5の構成や配置等を適宜選定することで、削減後の表面の平坦性を高くすることができる。以下、この点について説明する。
図4は、硝子板1の表面の平坦性を高めるための第二のノズル51について示した平面概略図である。図4に示すように、各噴射口51は、第二のノズル5の管の延びる方向に対して斜めの45度の方向に細長い。従って、各噴射口51から噴射される溶出液2は、図5に示すように、この斜めの方向に長い錐状(ないしはラッパ状)に広がるようになっている。
【0031】
図4の下側には、第二のノズル5の各噴射口51から溶出液2が噴射される様子を示す。二点鎖線は、硝子板1の他方の側の面102上での溶出液2の広がりの輪郭である。図4の上側には、ノズル5の長さ方向(ノズル5の移動方向に垂直な水平方向)で見た面102における溶出液2の供給量の分布を示す。
【0032】
第二のノズル5が移動機構500によって移動しながら溶出液2を噴射する際、硝子板1の他方の側の面102の各点は、いずれかの噴射口51から噴射された溶出液2の供給を受ける。この際、隣り合う二つの噴射口51の丁度中間の点が通過する他方の側の面102上の点Pは、その隣り合う二つの噴射口51から溶出液2の供給を受けることになる。この場合、この点Pは、推状の溶出液2の広がりの端部に位置するので、図4の上側に示すように、一つの噴射口51から受け取る溶出液2の量は、他の点の1/2程度であり、上下両隣の噴射口51で一つ分の溶出液2の供給を受ける。従って、ノズル5の長さ方向において、硝子板1の他方の側の面102の各点での溶出液2の供給量は均一である。
【0033】
上記のように、硝子板1の他方の側の面102の各点は、各噴射口51から均一な溶出液2の供給を受けるので、衝撃による溶かし出しも均一となり、均一に表面が削減される。この結果、図1(5)に示すように穴あけが完了した際、硝子板1の他方の側の面102は、平坦性が極めて高いものとなる。尚、図5に示すような断面形状に溶出液2が広がる場合だけではなく、楕円状、円状、方形状(正方形、長方形)、菱形状、平行四辺形状等の断面形状で溶出液2が広がる場合もあり得る。
【0034】
上述した他方の側の面102に対する均一衝撃において、各噴射口51からの溶出液2の広がりは、図3及び図4に示すように、他方の側の面102において重ならないようにすることが望ましい。溶出液2の広がりが重なってしまうと、重なった部分で溶出液2に散乱が生じたり、乱流が生じたりする。散乱や乱流が生ずると、他方の側の面102を均一に衝撃することができなくなり、平坦性が低下する恐れがある。したがって、重ならないようにすることが望ましい。
【0035】
上述したようにノズル5の構成や配置を適宜設定することで、穴あけ完了後の他方の側の面102について最大粗さ0.5μm程度の平坦性を確保することができる。尚、一方の側の面101については、穴あけを開始する前(保護層4を形成する前)に、他方の側の面102と同様の処理により厚さを削減しながら予め平坦化することもできる。
【0036】
上述した硝子板穴あけ方法において、形成する穴10の断面形状は、溶出液2の濃度や衝撃圧力を適宜設定することで調整することができる。以下、この点について説明する、図5は、穴の断面形状の調整について示した概略図である。上述したように、実施形態の穴あけ加工は、化学的作用と物理的作用とを併用するものである。ここで、化学的作用は、溶出液2による溶かし出しであるから、方向性はなく、均等に(等方的に)生ずる。一方、前述したように、物理的作用は、溶出液2による硝子表面の衝撃であるから、衝撃の向きに生ずる。図5において、化学的作用による硝子の溶かし出しの速度をVcとし、物理的作用による硝子の削り出しの速度をVpとする。Vc及びVpは、単位時間当たりにどれだけの厚さの溶かし出し又は削り出しが進むかという速度である。
【0037】
図5に示すように、化学的作用である溶かし出しは等方的に進むから、Vcは、穴あけの過程で形成される凹部においてほぼ均一に分布する。一方、物理的作用による削り出しは、溶出液2の噴射の向きにのみ実質的に生ずるから、Vpは凹部の底の部分において最も高く、他の部分において実質的にゼロである。
ここで、Vc≫Vpである場合、即ち、Vcに比べてVpが非常に小さくてVpが実質的にゼロであるとみなせる場合、化学的作用である溶かし出しのみが実質的に作用し、穴あけは等方的に進行する。この場合は、図5(a)に示すように、得られる穴10は、断面台形状の形状となり、壁面の角度は硝子板1の厚さ方向に対して45度となる。
一方、Vc≫Vpとはみなせない場合、穴あけは等方的には進行せず、凹部の底においてより高い速度で進行する。この場合、Vc≪Vpとすると、即ち、化学的作用が無視できる程度に物理的作用が大きくなるようにすると、形成される穴10の断面すると、図5(b)に示すように断面方形となる。
【0038】
このように、Vcに対するVpの大きさを調整することで穴10の断面形状の調整が行える。ここで、Vcに大きく影響を与えるのは溶出液2の溶出成分の濃度である。一方、Vpは溶出液2による衝撃圧力によって決まる。衝撃圧力を大きくすると、Vpは当然に高くなるが、表面での溶出液2の置換速度も同時に高くなるので、Vcも高くなる。但し、置換速度の増加に比べて衝撃圧力の増加の影響の方が大きいので、Vcに対してVpが大きくなり、この結果、上記のように断面方形の穴10を得ることができる。また、衝撃圧力を高くするとともに、溶出液2の濃度を下げると、Vcに対してVpをより大きくすることができるので、そのような調整方法が採られることもある。いずれにしても、必要な断面形状が得られる溶出液2の濃度及び衝撃圧力を予め実験的に算出し、その条件を再現しながら穴あけを行うようにする。
【0039】
次に、形成する穴10の開口の形状と穴用開口40の大きさとの関係について説明する。図6は、形成すべき穴10の開口の形状と穴用開口40の大きさについて示した概略図である。
上述したように、実施形態の硝子板穴あけ方法では、保護層4に設けた穴用開口40を通して溶出液2を供給して穴あけを行う。この場合、穴用開口40の大きさは、形成される穴10の形状のうち溶出液2の入射側の開口(以下、単に入射側開口)の大きさとの関係で適宜決定される。以下、入射側開口の直径をR、穴用開口40の直径をφ、硝子板1の厚さをTとする。
【0040】
図5(a)に示すように、Vc≫Vpとして穴あけが等方的に進む状態を維持しながら厚さTだけ穴あけをすると、入射側開口では、横方向にやはりTの距離だけ溶出が進行することになる。この結果、穴あけ完了時には、入射側開口の直径はφ+2Tということになる。従って、図6に示すように、入射側開口の大きさをRとしたい場合には、穴用開口40の大きさφは、φ=R−2Tとしておけば良いことになる。尚、出射側開口の大きさは、穴用開口40と同じ大きさになる。
【0041】
次に、光学窓作製方法の発明の実施形態について説明する。
図7は、光学窓作製方法の発明の実施形態を示した概略図である。図7に示す方法は、上述した硝子板穴あけ方法の構成を光学窓作製に応用したものである。光学窓は、硝子板1に窓穴100を設けた構成である。
実施形態の方法は、一枚の硝子板1から多数の光学窓を作製する方法となっている。即ち、一枚の硝子板1の所定の位置に窓穴100を形成し、その後、硝子板1を分断することで多数の光学窓を得る製法となっている。
【0042】
まず、図7(1)に示すように、硝子板1を用意し、その一方の側の面に保護層を形成する。この保護層は、穴あけの際に硝子板1を保護するものであるとともに、所定の光学作用を為す層ともなっている。この実施形態では、保護層は遮光作用を為すものとなっており、保護層はクロム系の材料で形成される。より具体的には、保護層は、図7(1)に示すように、酸化クロム膜401と純クロム膜402とを積層した層となっている。酸化クロム膜401や純クロム膜402は、スパッタリングによって形成できる。
【0043】
次に、図7(2)に示すように、フォトリソグラフィ法により保護層に対してパターン形成を行う。このパターンは、形成する窓穴100のパターンと同じである。純クロム膜402の上にレジスト403を塗布し、不図示のマスクを通して光照射してレジストを露光する。そして、現像を行うと、レジスト403のパターンが形成される。このレジスト403をマスクにして純クロム膜402及び酸化クロム膜401のエッチングを行うと、図7(2)に示すように、純クロム膜402及び酸化クロム膜401のパターンが得られる。これにより、窓穴用開口405が形成される。
【0044】
次に、穴あけ工程を行う。即ち、ノズル3,5により硝子板1の両側から溶出液2を噴射する(図7(3))。一方の側の面101では、窓穴用開口405のパターンで削減が進み、他方の側の面102では均一に削減が進む。所定時間噴射を行うと、穴が貫通し、窓穴100が形成される。穴あけが完了した後、レジスト403を除去する(図7(4))。その後、硝子板1を所定の箇所で分断すると、各々光学窓が完成する。尚、穴あけ工程の後には、洗浄工程が必要に応じて行われる。
【0045】
図8は、図7に示す方法により作成された光学窓の断面概略図である。図8に示すように、光学窓は、硝子板1の厚さ方向が光軸Aの方向となり、光軸Aが窓穴100の中央を貫く位置に配置されることが想定されている。
光学窓は、図8に示すように、窓穴100の一方の側の面101における縁がテーパ面103となっている。このテーパ面103の光軸Aに対する成す角は45度となっている。テーパ面103に続く面104は、光軸に沿った面(沿軸面)となっている。テーパ面103と沿軸面104とから成る窓穴100の断面形状は、図5(a)に示す断面形状の穴と図5(b)に示す断面形状の穴とつなげた形状に相当している。
【0046】
図8に示す断面形状の窓穴100は、第一のノズル3による一方の側の面101の削減を適宜制御することで達成される。即ち、最初は、Vc≫Vpとして削減を等方的に進行させ、その後、Vc≪Vpとして異方的に(厚さ方向への削減のみが進行するように)削減を行うことで、図8に示す断面形状が得られる。
窓穴用開口405が形成された保護層400は、遮光層として残留している。尚、保護層400を構成する酸化クロム膜は、低反射特性を有しており、遮光しつつもギラツキを生じさせないという効果がある。また、純クロム膜は、レジストの付着性が高いため、上記のようにフォトリソグラフィによって窓穴用開口405を形成する場合、好適である。膜厚について一例を示すと、酸化クロム膜、純クロム膜とも、1500オングストローム程度の厚さで良い。
【0047】
次に、イメージセンサモジュールの発明の第一の実施形態について説明する。図9は、実施形態に係るイメージセンサモジュールの正面断面概略図である。
図9に示すイメージセンサモジュールは、センサ素子8と、センサ素子81の入射側に設けられた硝子製の光学窓82とを備えている。センサ素子81としては、CMOS又はCCD等が使用される。
【0048】
モジュールは、セラミック製の基板83と、基板83を覆う筐体84とを備えている。筐体84は上面に開口を有し、光学窓82はこの開口に嵌め込まれた状態で設けられている。基板83上には、回路ユニット88が設けられ、センサ素子81は回路ユニット88の上に搭載されている。回路ユニット88は、センサ素子81からの信号を処理する信号処理回路を含んでいる。その他、基板83上にはコンデンサや抵抗等の不図示の周辺部品が実装されている。基板83は、モジュールの小型化等の観点から、多層配線を備えた多層基板とされることが多い。
【0049】
光学窓82には、マイクロレンズ86が嵌め込まれている。マイクロレンズ86は、ある程度大きな画角の撮像が行えるようセンサ素子81に光を取り込むためのものである。マイクロレンズ86としては、プラスチック製の非球面レンズが好適に使用できる。なお、光学窓82の入射側には、透明な蓋板が設け、マイクロレンズ86が露出しないようにする場合もある。また、光学窓82の出射側には、赤外線カットフィルタ89が設けられている。赤外線カットフィルタ89は、同様に筐体84に設けられた開口に嵌め込まされている。
【0050】
光学窓82は、硝子板を穴あけ加工することで作製されたものとなっている。この穴あけ加工は、前述した硝子板穴あけ方法の実施形態及び光学窓作製方法の実施形態におけるものと同様である。穴あけの際に設けた保護層は、遮光層85として残留している。遮光層85は、前述したように酸化クロム膜と純クロム膜とを積層したものである。
図9に示すように、光学窓82の窓穴820は、入射側の縁がテーパ面823となっている。そして、テーパ面823より出射側は、光軸Aに沿った沿軸面824となっている。尚、テーパ面823及び沿軸面824とも、光軸Aに垂直な方向の断面形状は、円形である。また、光軸Aに対してテーパ面823が成す角度は、45度程度となっている。
【0051】
図9に示すイメージセンサモジュールでは、光学窓82の窓穴820に入射した光は、マイクロレンズ86を透過してセンサ素子81に達する。そして、センサ素子81で光電変換され、その出力信号が回路ユニット88内の信号処理回路で処理され、イメージ信号として出力される。
このような光学窓は、従来のサンドブラスト法により作製された光学窓と比較すると、顕著な構造上の差異を有する。以下、この点を説明する。
【0052】
図10は、実施形態のイメージセンサモジュールにおける光学窓82の構造上の特徴点を示す概略図である。参考のため、従来のサンドブラスト法により作製された光学窓82の構造を併せて示す。図10(A)が従来のサンドブラスト法により作製された光学窓82で、(B)が実施形態のイメージセンサモジュールにおける光学窓82である。
図10(A)に拡大して示すように、従来の光学窓82は、サンドブラスト法により穴あけされているため、窓穴820の周縁821又は壁面822にギザギザが形成されており、見栄えが良くない。一方、図10(B)に拡大して示すように、実施形態の光学窓82では、窓穴820の周縁821や壁面(テーパ面及び沿軸面)にはギザギザは形成されておらず、滑らかな面となっている。
【0053】
また、図10(A)に拡大して示すように、従来の光学窓82では、表面にはマイクロクラック800が形成されている。マイクロクラック800は、硝子の表面に形成される微細な傷、割れ目等である。
マイクロクラック800は、元来、硝子特有のものであり、硝子の製造工程の関係で避けられないものである。硝子は、マイクロクラック800があるために一般的に他の材料に比べて強度的に弱いとされている。従来の光学窓82は、サンドブラスト法によるため、縁面823にも多くのマイクロクラック800が存在した状態である。固体粒子により表面が傷つけられるため、穴あけ前よりもさらに多くのマイクロクラック800が存在することもあり得る。従来の光学窓82では、見栄えの他、このようなマイクロクラック800により強度的に弱い欠点もある。
【0054】
一方、実施形態の光学窓82は、マイクロクラックは全く形成されていない。これは、溶出液2により穴あけを行ったものであるためである。溶出液2は、硝子の表面を溶かし出すものであるから、マイクロクラックが存在する表面層が穴あけの過程で除去され、マイクロクラックの無い表面が露出した状態となる。このため、強度の面でも好適なものとなっている。
尚、光学窓82を作製する際、保護層を残留させずに除去してしまう場合もある。残留させる場合も、前述した遮光層85以外に、赤外線カット層として残留させる場合もある。
【0055】
次に、イメージセンサモジュールの発明の第二の実施形態について説明する。
図11は、第二の実施形態のイメージセンサモジュールの正面断面概略図である。図11に示すモジュールは、同様にセンサ素子81と、センサ素子81の入射側に設けられた硝子製の光学窓82とを備えている。
このモジュールは、センサ素子8の入射側に四つの樹脂レンズ871〜874を備えている。樹脂レンズ871〜874は、アクリル樹脂のような光透過性の高い光学樹脂を使用して製作したレンズである。各樹脂レンズ871〜874は、光軸Aに沿って積層されている。樹脂レンズを入射側から第一乃至第四樹脂レンズと呼ぶと、第一樹脂レンズ871及び第三樹脂レンズ873は平凸レンズであり、第二樹脂レンズ872及び第四樹脂レンズ874は平凹レンズとなっている。
【0056】
そして、第二樹脂レンズ872と第三樹脂レンズ873の間、第四樹脂レンズ874とセンサ素子81との間にはそれぞれ光学窓82が配設されている。各光学窓82は、前述したものと同様である。尚、第一樹脂レンズ871と第二樹脂レンズ872の間、第三樹脂レンズ873と第四樹脂レンズ874の間には、仕切用の硝子パネル90が配設されている。
この実施形態のように、複数の樹脂レンズ871〜874を用いた構成では光学窓82も複数配設される場合があるが、この場合も、上述した光学窓82を用いることで、見栄えの良いモジュールとすることができる。
【0057】
次に、硝子板穴あけ装置の発明の実施形態について説明する。
図12及び図13は、実施形態に係る硝子板穴あけ装置を示した概略図であり、図12は正面概略図、図13は側面概略図である。図12及び図13に示す装置は、図1に示す実施形態の硝子板穴あけ方法及び光学窓作製方法に用いられる装置となっている。
図12及び図13に示す装置は、硝子を溶出することが可能な溶出液2を直径20μm〜400μmの粒状にして噴射する第一のノズル3と、同じく硝子を溶出することが可能な溶出液2を噴射する第二のノズル5と、第二のノズル5を移動させる移動機構500と、第一のノズル3及び第二のノズル5に溶出液2を供給する溶出液供給系20と、噴射された溶出液2が硝子板1の所定箇所に当たるよう硝子板1を保持する保持機構11とを備えている。
【0058】
第一第二のノズル3,5の構成及び配置は、前述したのと同様である。装置は、内部で穴あけ加工を行う処理チャンバー6を備えており、第一第二のノズル3,5は処理チャンバー6内に配置されている。保持機構11には、処理チャンバー6内への硝子板1を搬入し、穴あけ後に硝子板1を処理チャンバー6から搬出する搬送機構が兼用されている。
処理チャンバー6は、硝子板1を搬入する搬入口61と、穴あけ後に硝子板1を搬出する搬出口62とを備えている。搬入口61及び搬出口62は、封鎖ゲート63で開閉されるようになっている。尚、開閉は、封鎖ゲート63を上下方向に移動させることで行われる。
【0059】
搬送機構は、図12に示すように硝子板1を水平な姿勢にしつつ水平方向に搬送する機構となっている。搬送機構は、水平な搬送ラインに沿って配置された多数の搬送コロ12によって構成されている。搬送ラインは、搬入口61及び搬出口62を通して設定されており、硝子板1は、搬入口61から搬入されて穴あけが行われた後、搬出口62から搬出されるようになっている。尚、図13に示すように、搬送コロ12は、硝子板1を両端部において支持しながら搬送するものとなっている。
【0060】
また、処理チャンバー6の内壁面や、処理チャンバー6内の各部材の表面は、溶出液2に対して耐薬品性の構成となっている。例えば溶出液2がフッ酸である場合、内壁面や各部材の表面はテフロン(デュポン社の登録商標)のようなフッ素樹脂をコーティングして覆った構成とされる。尚、搬入口61や搬出口62を開閉する封鎖ゲート63は、溶出液2が漏出しないよう液密に封鎖を行うようになっている。
【0061】
各第一のノズル3は、ノズルホルダー66によって保持されている。図10は、図12及び図13に示すノズルホルダー66の平面概略図である。本実施形態の装置は、任意の位置で穴あけができるよう、水平面内の任意の位置に第一のノズル3を位置させることができるようになっている。
より具体的に説明すると、ノズルホルダー66は、ガイドレール状の部材であり、長さ方向の任意の位置に第一のノズル3を位置させることができ、その位置で第一のノズル3を固定することができるようになっている。ノズルホルダー66は、複数設けられており、水平面内に平行に並べられている。
【0062】
ノズルホルダー66の上側には、ホルダーレール661が設けられている。ホルダーレール661も、ガイドレール状の部材である。ホルダーレール661も、水平面内に平行に並べられて複数設けられている。ホルダーレール661の延びる方向は、各ノズルホルダー66の延びる方向に対して垂直でる。即ち、図10に示すように、各ノズルホルダー66と各ホルダーレール661は、直角格子状に交差した状態で配置されている。
各ノズルホルダー66は、ホルダーレール661の下面に取り付けられている。各ノズルホルダー66は、ホルダーレール661の延びる方向に位置調節が可能で、各ノズルホルダー66を任意の位置で固定できるようになっている。
【0063】
溶出液供給系20は、溶出液2を溜めた液溜め22と、液溜め22から溶出液供給管21を介して各第一のノズル3に溶出液2を送る送液ポンプ23と、調圧用バルブ24などから構成されている。尚、溶出液2に界面活性剤が添加される場合、液溜め内に予め添加しておくか、溶出液供給管21に界面活性剤の混合器が設けられる。
装置は、第一のノズル3に圧縮空気を供給する圧縮空気供給系200を備えている。圧縮空気供給系200は、不図示のボンベにつながる圧縮空気供給管201や圧縮空気供給管201上に設けられれた開閉バルブ202、調圧用バブル203等から構成されている。溶出液供給管21や圧縮空気供給管201は、処理チャンバー6の器壁を液密に貫通している。
【0064】
尚、溶出液供給管21と各第一のノズル3、及び圧縮空気供給管201と各第一のノズル3とは、それぞれフレキシブルチューブ25,204でつながれている。これは、各第一のノズル3の位置が変更されるためである。第二のノズル5に溶出液2を供給する管についても、第二のノズル5が移動機構500によって移動するため、フレキシブルチューブが採用されている。
また、図12及び図13に示すように、処理チャンバー6の底部は漏斗状になっており、最下部には、排出口64が設けられている。排出口64には、使用済みの溶出液2を排出する排出管65が接続されている。硝子板1の表面の材料が溶け込んだ溶出液2は、処理チャンバー6の底部に落下し、排出口64及び排出管65を通って排出されるようになっている。
【0065】
次に、上記装置の動作について説明する。
保持機構11は、硝子板1を処理チャンバー内に搬入し、所定位置で停止させる。この位置は、硝子板1の各穴あけ位置が各第一のノズル3の直下の位置となる位置である。この状態で、溶出液供給系20及び圧縮空気供給系200を動作させ、穴あけを開始する。この際、移動機構500を動作させ、第二のノズル5を所定のストロークで前後移動させる。移動の方向は、水平な方向であれば良く、硝子板1の搬送方向や、搬送方向に垂直な水平方向の場合がある。図には、搬送方向に移動する例が示されている。
上述したように、溶出液2による両側からの衝撃を所定時間行うと、穴あけが完了する。その後、硝子板1は処理チャンバーから保持機構11によって搬出される。
【0066】
上述した硝子板穴あけ方法の実施形態では、上述の通り保護層を設けこれに穴用開口をして穴あけを行ったが、保護層を設けないで穴あけすることも可能である。溶出液2の粒が広がらないもので、穴あけする箇所にのみ溶出液2を当てることが可能なノズルを使用するようにすれば、保護層を設けないで穴あけすることも可能である。この場合、硝子板1の一方の側の面101を溶かし出した溶出液2が表面で穴あけ箇所の周囲に流れてしまわないように少しずつ穴あけを行うようにすれば良い。
また、硝子板1の下方に第一のノズル3を配置し、下方から上方に向けて溶出液2の粒を噴射して穴あけを行うようにすれば、穴あけ箇所にのみ溶出液2を当てることは容易である。この場合、第二のノズル5は、硝子板1の上方に配置されて上から溶出液2を噴射することになる。
尚、第二のノズル5は、連続した流れとして溶出液2を噴射して硝子板1を衝撃するものとなっているが、第一のノズル3のように粒の状態で(ミスト状に)溶出液2を噴射するようなものでも実施できる場合がある。
【0067】
上述した各実施形態において、硝子板1は水平な姿勢であったが、硝子板1を垂直な姿勢にして穴あけを行うことも可能である。この場合、例えば第一のノズル3を左側に設け、第二のノズル5を右側に設け、左右から溶出液2を噴射して穴あけが行われる。
尚、第二のノズル5の移動方は前後運動のような往復運動である必要はなく、一つの向きへの移動のみで穴あけが完了する場合もある。
【0068】
また、移動機構500は、第二のノズル5を移動させるものであったが、移動は硝子板1に対する相対的なもので足り、第二のノズル5を静止させ、硝子板1を移動させても良い。この場合、第一のノズル3は、穴あけ箇所を臨む位置を保持しないことになるが、特に問題はなく、第一のノズル3をより多く(狭い間隔で)設けるようにすれば、一方の側の面101からの削減の速度の低下が問題となることもない。
尚、硝子板1を移動させる構成の場合、硝子板1の搬送機構を移動機構に兼用することもあり得る。
【0069】
各実施形態において、第一のノズル3としては、上記二流体ノズル以外のものでも良く、また二流体ノズルを使用する場合でも、空気以外の気体(例えば、窒素のような不活性ガス)を使用して溶出液2を噴射しても良い。
光学窓作製方法の発明やイメージセンサモジュールの発明においては、光学窓はレンズを保持する機能を持つものに限られない。レンズを保持する機能はなく、単に光を取り込むための窓として機能するものであっても良い。また、ピンホールカメラにおけるもののように光の入射を規制するための光学窓や、一種の絞りとして機能する光学窓についてっも、同様に実施することができる。
また、本願発明の硝子板穴あけ方法及び硝子板穴あけ装置は、前述した光学窓の作製以外の用途にも使用され得る。例えば、硝子製のディスク基板の中心穴あけ等にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施形態に係る硝子板穴あけ方法を示した正面概略図である。
【図2】図1の方法に使用される第一のノズル3の正面断面概略図である。
【図3】図1の方法に使用される第二のノズル5の斜視概略図である。
【図4】硝子板1の表面の平坦性を高めるための第二のノズル51について示した平面概略図である。
【図5】穴の断面形状の調整について示した概略図である。
【図6】形成すべき穴10の開口の形状と穴用開口40の大きさについて示した概略図である。
【図7】光学窓作製方法の発明の実施形態を示した概略図である。
【図8】図7に示す方法により作成された光学窓の断面概略図である。
【図9】実施形態に係るイメージセンサモジュールの正面断面概略図である。
【図10】実施形態のイメージセンサモジュールにおける光学窓82の構造上の特徴点を示す概略図である。
【図11】第二の実施形態のイメージセンサモジュールの正面断面概略図である。
【図12】実施形態に係る硝子板穴あけ装置を示した正面概略図である。
【図13】実施形態に係る硝子板穴あけ装置を示した側面概略図である。
【符号の説明】
【0071】
1 硝子板
10 穴
101 一方の側の面
102 他方の側の面
11 保持機構
2 溶出液
20 溶出液供給系
200 圧縮空気供給系
3 第一のノズル
4 保護層
40 穴用開口
400 保護層
401 酸化クロム膜
402 純クロム膜
5 第二のノズル
500 移動機構
81 センサ素子
82 光学窓
820 窓穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝子板の厚さを均一に削減するとともに当該硝子板に微小な穴を形成する硝子板穴あけ方法であって、
硝子板の一方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を、形成する穴より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射し、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するとともに、
硝子板の他方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を噴射し、噴射された溶出液を硝子板の他方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃することで貫通穴を形成する方法であり、
硝子板の一方の側の面に対しては、形成する穴のパターンで溶出液の噴射を行うとともに、
硝子板の他方の側の面に対しては、形成する穴のパターンによらずに溶出液を均一に噴射して硝子板の表面を均一に削減することで穴を貫通させることを特徴とする硝子板穴あけ方法。
【請求項2】
前記硝子板の一方の側の面に、前記溶出液に対して耐性を持つとともに前記穴のパターンの穴用開口を有する保護層を形成し、一方の側の面に対してはこの窓用開口を通して前記溶出液を噴射することを特徴とする請求項1記載の硝子板穴あけ方法。
【請求項3】
前記穴用開口をフォトリソグラフィにより設けることを特徴とする請求項2記載の硝子板穴あけ方法。
【請求項4】
前記溶出液の噴射は、内部で前記溶出液に圧縮気体を混合して噴射する二流体ノズルにより行われることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の硝子板穴あけ方法。
【請求項5】
前記他方の側の面に対しては、前記ノズルを複数均等に配置して最大粗さが0.5μm以下の平坦性が得られるよう前記削減が行われることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の硝子板穴あけ方法。
【請求項6】
硝子板に窓穴を設けた構造の光学窓を作製する方法であって、
硝子板の一方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を、形成する窓穴より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射し、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するとともに、
硝子板の他方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を噴射し、噴射された溶出液を硝子板の他方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃することで貫通穴を形成する方法であり、
硝子板の一方の側の面に対しては、形成する窓穴のパターンで溶出液の噴射を行うとともに、
硝子板の他方の側の面に対しては、形成する窓穴のパターンによらずに溶出液を均一に噴射して硝子板の表面を均一に削減することで窓穴を貫通させることを特徴とする光学窓作製方法。
【請求項7】
前記硝子板の一方の面に、前記溶出液に対して耐性を持つとともに前記窓穴のパターンの窓穴用開口を有する保護層を形成し、一方の面に対してはこの窓用開口を通して溶出液を噴射することを特徴とする請求項6記載の光学窓の作製方法。
【請求項8】
前記保護層は、遮光層でもあることを特徴とする請求項7記載の光学窓作製方法。
【請求項9】
前記保護層は、クロム又はクロム化合物より成る膜であることを特徴とする請求項8記載の光学窓作製方法。
【請求項10】
前記保護層は、前記硝子板に近い順に、酸化クロム膜と、純クロム膜とを積層したものであることを特徴とする請求項9記載の光学窓作製方法。
【請求項11】
前記窓穴用開口をフォトリソグラフィにより設けることを特徴とする請求項7乃至10いずれかに記載の光学窓作製方法。
【請求項12】
前記溶出液の噴射は、内部で前記溶出液に圧縮気体を混合して噴射する二流体ノズルにより行われることを特徴とする請求項6乃至11いずれかに記載の光学窓作製方法。
【請求項13】
前記他方の面に対しては、前記ノズルを複数均等に配置して最大粗さが0.5μm以下の平坦性が得られるよう削減が行われることを特徴とする請求項6乃至12いずれかに記載の光学窓作製方法。
【請求項14】
センサ素子を含むモジュール本体と、センサ素子の入射側に設けられた硝子製の光学窓とから成るイメージセンサモジュールであって、
光学窓は、硝子板に窓穴を設けたものであり、
窓穴は、硝子板の材料を溶出させることが可能な溶出液を直径20μm以上400μm以下の粒状にしてノズルから噴射し、噴射された溶出液を板材の所定箇所に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃し、当該箇所に対する粒状の溶出液による衝撃を継続することで形成されたものであり、
硝子板の一方の側の面には、溶出液に対して耐性を持つ保護層が形成されており、この保護層には、窓穴用開口が設けられており、
窓穴は、保護層が設けられた側から窓穴用開口を通して溶出液を噴射するとともに、保護層が設けられていない側から溶出液を噴射して硝子板の厚さを減らすことで貫通されたものであることを特徴とするイメージセンサモジュール。
【請求項15】
前記保護層は、モジュール本体に光が入射するのを遮蔽する遮光層でもあることを特徴とする請求項14記載のイメージセンサモジュール。
【請求項16】
前記保護層は、クロム又はクロム化合物より成る膜であることを特徴とする請求項15記載のイメージセンサモジュール。
【請求項17】
前記保護層は、前記硝子板に近い順に、酸化クロム膜と、純クロム膜とを積層したものであることを特徴とする請求項16記載のイメージセンサモジュール。
【請求項18】
前記保護層が設けられていない側の面は、最大粗さが0.5μm以下の平坦性を有していることを特徴とする請求項14乃至17いずれかに記載のイメージセンサモジュール。
【請求項19】
硝子板の厚さを均一に削減しながら当該硝子板に微小な穴を形成する硝子板穴あけ装置であって、
硝子板の一方の側に配置された第一のノズルと、
硝子板の他方の側に配置された第二のノズルと、
第一第二のノズルに溶出液を供給し、各ノズルから噴射させる溶出液供給系と、
硝子板を所定位置に保持する保持機構と
を備えており、
第一のノズルは、形成する穴より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射し、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するものであり、
第二のノズルは、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するものであり、
保持機構は、第一のノズルが硝子板の一方の面の穴あけ箇所を臨む状態が維持されるよう硝子板を保持するものであり、
第二のノズルを硝子板に対して相対的に移動させて、第二のノズルから噴射される溶出液により他方の面が均一に削減されるようにする移動機構が設けられていることを特徴とする硝子板穴あけ装置。
【請求項1】
硝子板の厚さを均一に削減するとともに当該硝子板に微小な穴を形成する硝子板穴あけ方法であって、
硝子板の一方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を、形成する穴より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射し、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するとともに、
硝子板の他方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を噴射し、噴射された溶出液を硝子板の他方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃することで貫通穴を形成する方法であり、
硝子板の一方の側の面に対しては、形成する穴のパターンで溶出液の噴射を行うとともに、
硝子板の他方の側の面に対しては、形成する穴のパターンによらずに溶出液を均一に噴射して硝子板の表面を均一に削減することで穴を貫通させることを特徴とする硝子板穴あけ方法。
【請求項2】
前記硝子板の一方の側の面に、前記溶出液に対して耐性を持つとともに前記穴のパターンの穴用開口を有する保護層を形成し、一方の側の面に対してはこの窓用開口を通して前記溶出液を噴射することを特徴とする請求項1記載の硝子板穴あけ方法。
【請求項3】
前記穴用開口をフォトリソグラフィにより設けることを特徴とする請求項2記載の硝子板穴あけ方法。
【請求項4】
前記溶出液の噴射は、内部で前記溶出液に圧縮気体を混合して噴射する二流体ノズルにより行われることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の硝子板穴あけ方法。
【請求項5】
前記他方の側の面に対しては、前記ノズルを複数均等に配置して最大粗さが0.5μm以下の平坦性が得られるよう前記削減が行われることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の硝子板穴あけ方法。
【請求項6】
硝子板に窓穴を設けた構造の光学窓を作製する方法であって、
硝子板の一方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を、形成する窓穴より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射し、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するとともに、
硝子板の他方の側に配置されたノズルから、硝子板の材料を溶出することが可能な溶出液を噴射し、噴射された溶出液を硝子板の他方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃することで貫通穴を形成する方法であり、
硝子板の一方の側の面に対しては、形成する窓穴のパターンで溶出液の噴射を行うとともに、
硝子板の他方の側の面に対しては、形成する窓穴のパターンによらずに溶出液を均一に噴射して硝子板の表面を均一に削減することで窓穴を貫通させることを特徴とする光学窓作製方法。
【請求項7】
前記硝子板の一方の面に、前記溶出液に対して耐性を持つとともに前記窓穴のパターンの窓穴用開口を有する保護層を形成し、一方の面に対してはこの窓用開口を通して溶出液を噴射することを特徴とする請求項6記載の光学窓の作製方法。
【請求項8】
前記保護層は、遮光層でもあることを特徴とする請求項7記載の光学窓作製方法。
【請求項9】
前記保護層は、クロム又はクロム化合物より成る膜であることを特徴とする請求項8記載の光学窓作製方法。
【請求項10】
前記保護層は、前記硝子板に近い順に、酸化クロム膜と、純クロム膜とを積層したものであることを特徴とする請求項9記載の光学窓作製方法。
【請求項11】
前記窓穴用開口をフォトリソグラフィにより設けることを特徴とする請求項7乃至10いずれかに記載の光学窓作製方法。
【請求項12】
前記溶出液の噴射は、内部で前記溶出液に圧縮気体を混合して噴射する二流体ノズルにより行われることを特徴とする請求項6乃至11いずれかに記載の光学窓作製方法。
【請求項13】
前記他方の面に対しては、前記ノズルを複数均等に配置して最大粗さが0.5μm以下の平坦性が得られるよう削減が行われることを特徴とする請求項6乃至12いずれかに記載の光学窓作製方法。
【請求項14】
センサ素子を含むモジュール本体と、センサ素子の入射側に設けられた硝子製の光学窓とから成るイメージセンサモジュールであって、
光学窓は、硝子板に窓穴を設けたものであり、
窓穴は、硝子板の材料を溶出させることが可能な溶出液を直径20μm以上400μm以下の粒状にしてノズルから噴射し、噴射された溶出液を板材の所定箇所に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃し、当該箇所に対する粒状の溶出液による衝撃を継続することで形成されたものであり、
硝子板の一方の側の面には、溶出液に対して耐性を持つ保護層が形成されており、この保護層には、窓穴用開口が設けられており、
窓穴は、保護層が設けられた側から窓穴用開口を通して溶出液を噴射するとともに、保護層が設けられていない側から溶出液を噴射して硝子板の厚さを減らすことで貫通されたものであることを特徴とするイメージセンサモジュール。
【請求項15】
前記保護層は、モジュール本体に光が入射するのを遮蔽する遮光層でもあることを特徴とする請求項14記載のイメージセンサモジュール。
【請求項16】
前記保護層は、クロム又はクロム化合物より成る膜であることを特徴とする請求項15記載のイメージセンサモジュール。
【請求項17】
前記保護層は、前記硝子板に近い順に、酸化クロム膜と、純クロム膜とを積層したものであることを特徴とする請求項16記載のイメージセンサモジュール。
【請求項18】
前記保護層が設けられていない側の面は、最大粗さが0.5μm以下の平坦性を有していることを特徴とする請求項14乃至17いずれかに記載のイメージセンサモジュール。
【請求項19】
硝子板の厚さを均一に削減しながら当該硝子板に微小な穴を形成する硝子板穴あけ装置であって、
硝子板の一方の側に配置された第一のノズルと、
硝子板の他方の側に配置された第二のノズルと、
第一第二のノズルに溶出液を供給し、各ノズルから噴射させる溶出液供給系と、
硝子板を所定位置に保持する保持機構と
を備えており、
第一のノズルは、形成する穴より小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射し、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するものであり、
第二のノズルは、噴射された溶出液を硝子板の一方の側の面に当てて5×10−2N/cm2以上20×10−2N/cm2以下の圧力で衝撃するものであり、
保持機構は、第一のノズルが硝子板の一方の面の穴あけ箇所を臨む状態が維持されるよう硝子板を保持するものであり、
第二のノズルを硝子板に対して相対的に移動させて、第二のノズルから噴射される溶出液により他方の面が均一に削減されるようにする移動機構が設けられていることを特徴とする硝子板穴あけ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−256130(P2009−256130A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106243(P2008−106243)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(395016578)株式会社テスコム (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(395016578)株式会社テスコム (12)
【Fターム(参考)】
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