説明

硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤、その製造方法及び炭化水素の脱硫方法

【課題】炭化水素を含む成分中の硫黄成分を、室温〜250℃の広範な温度範囲において有効に使用出来、硫黄含有成分の吸着容量が大きく、且つ低濃度まで効率よく除去し得る硫黄含有成分除去用吸着剤の提供。
【解決手段】IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライト、あるいはさらに前記金属成分の化合物の少なくとも1成分を担持させた後、細孔径が10〜10,000Åのアルミナを含む成形体に、さらに前記金属成分化合物の少なくとも1成分を担持させ、これを300〜700℃において焼成する炭化水素を含む成分から硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤およびその製造方法、並びに炭化水素を含む成分を、上記記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の層を通過させ、硫黄成分を除去することからなる炭化水素を含む成分の精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤、その製造方法、該吸着剤を用いた炭化水素を含む成分の精製方法及び燃料電池用水素の製造方法に関し、さらに詳しくは、炭化水素含有ガスまたは液体中の硫黄成分を、常温〜比較的低温度において、低濃度まで効率よく除去し得る、非再生型の硫黄化合物除去用吸着剤、及び上記吸着剤を用いて炭化水素含有成分から硫黄化合物を除去する炭化水素精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス(メタン)、LPGや都市ガス、灯油などを改質して燃料電池用水素を製造する場合、主として貴金属を活性成分とする改質触媒が用いられる。これらの改質触媒は硫黄含有成分により被毒し、失活し易い。この改質触媒の被毒を抑制するためには、原料炭化水素中の硫黄成分を0.01ppm以下に低減させることが必要である。また、プロピレンやブテンなどを石油化学製品の原料として使用する場合、やはり触媒の被毒を防ぐため及び悪臭を防ぐには硫黄分を0.01ppm以下に低減させることが要求される。
燃料用LPG中には、LPG中のメチルメルカプタンや硫化カルボニル(COS)などに加えて、一般に着臭剤として添加されたジメチルサルファイド(DMS)、t−ブチルメルカプタン(TBM)、メチルエチルサルファイドなどが含まれているが、このようなLPGなど燃料ガス中の硫黄分を吸着除去するために各種吸着剤が知られている。しかしながら、これらの吸着剤は、一般に吸着容量が小さく、また150〜300℃程度の温度においては高い脱硫性能を示すものがあるが、常温での脱硫性能については必ずしも充分に満足し得るものではないのが実状であった。特に硫化水素、硫化カルボニル、メチルメルカプタンなどの低分子の硫黄化合物に対する吸着性能が低いものが多かった。
【0003】
例えば、疎水性ゼオライトにAg,Cu、Zn、Fe、Co、Niなどをイオン交換により担持させた脱硫剤(例えば特許文献1参照)や、Y型ゼオライト、β型ゼオライト又はX型ゼオライトにAg又はCuを担持した脱硫剤(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、これらの脱硫剤は、メルカプタン類やサルファイド類を室温において効率的に吸着除去し得るものの、硫化カルボニルをほとんど吸着しないことがわかった。
また、銅−亜鉛系脱硫剤が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この脱硫剤においては、150℃以上の温度ではCOSを含む各種硫黄化合物を吸着除去できるが、100℃以下の低い温度では、硫黄化合物に対する吸着性能が低い。さらに、アルミナなどの多孔質物質に銅を担持した脱硫剤が開示されている(例えば、特許文献4参照)。この脱硫剤は100℃以下の温度でも使用できるとしているが、その吸着性能については十分に満足し得るものではない。
【0004】
また、合成X型ゼオライト粉末、カオリン型粘土及び固体反応性シリカの混合焼成物であるX型バインダレスゼオライトが提案(例えば特許文献5)されている。しかし、このX型バインダーレスゼオライトも炭化水素系ガス、特に燃料電池用原料ガス中に含まれる微量硫黄化合物の除去用吸着剤として用いた場合、その吸着性能は満足すべきものではない。
【0005】
燃料電池用原料ガスである炭化水素系ガスをNi−Mo系等の触媒の存在下に水素と共に接触させて、有機硫黄化合物を水素添加分解により硫化水素に転換した後、酸化亜鉛等に吸着させて除去する方法が提案(例えば特許文献6)されている。しかしこの場合、脱硫工程への水素の供給または電極から排出された水素リッチガスのリサイクルが必要であるため脱硫設備が複雑になり、また水素添加分解反応及び硫化水素吸着反応の反応温度がいずれも350〜400℃と高いのでエネルギーの損失が大きく、小型のものとしては取り扱いにくい。
【0006】
地球温暖化防止対策として、発電効率の高い、環境汚染のない水素を燃料とする燃料電池が注目を浴びている。これは需要地に燃料電池による発電所を設けることにより、送電ロスを大幅に削減出来ると共に、環境汚染がほとんどない発電所とすることが出来る。一方、民生用として病院や事務所等に使用する出力500KW以下の分散型燃料電池がある。これらは電池本体の設置場所がビルの地下室や建物の近接地等になるので、都市ガスあるいはLPGなど入手が容易で取り扱いやすい原料を使用出来、さらに燃料水素ガス製造設備は可能な限り小型なものが求められており、常温で使用でき、しかもコンパクトな装置で実用できる脱硫方法が求められている。本発明の硫黄含有成分除去用成形吸着剤はこの様な要望に対応して開発されたものである。
【0007】
【特許文献1】特開2001−286753号公報
【特許文献2】特開2001−305123号公報
【特許文献3】特開平2−302496号公報
【特許文献4】特開2001−123188号公報
【特許文献5】特開平4−198011号公報
【特許文献6】特開平2−307803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況下で、炭化水素を含む成分中の硫黄成分を、室温〜250℃の広範な温度範囲において有効に使用出来、硫黄含有成分の吸着容量が大きく、且つ低濃度まで効率よく除去し得る硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤、及びその製造方法及び上記吸着剤を用いて脱硫処理する方法及び脱硫処理した炭化水素を含む成分から、燃料電池用水素を効果的に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、担体の1成分として用いるゼオライトが、予めIB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトと、これと特定のアルミナを含む成形体に、前記金属成分の少なくとも1成分を担持させた吸着剤が広範囲な温度範囲においても硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤として優れたものであり、これを用いて脱硫処理した炭化水素は、硫黄含有成分が極めて少ないので、高品質の燃料、各種の石油化学成分として有効であるばかりでなく、炭化水素を原料とする水素改質触媒に対して毒性が少なく、長時間の改質処理することが可能となり、極めて良質の燃料電池用水素が効果的に得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
本発明は、
[1] IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトと、細孔径が10〜10,000Åのアルミナを含む成形体に、さらに前記金属成分化合物の少なくとも1成分を担持させたことを特徴とする、炭化水素を含む成分から硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤、
【0011】
[2] IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトに、さらに前記金属成分化合物の少なくとも1成分を担持させた後、細孔径が10〜10,000Åのアルミナを含む成形体とすることを特徴とする、炭化水素を含む成分から硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤、
【0012】
[3] ゼオライトが、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトA、及びそれらの混合物の少なくとも1成分で構成された群から選択されたものである上記[1]または[2]に記載の固体成形吸着剤、
[4] IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトに対する金属成分の担持量が金属酸化物換算で5重量%以上をイオン交換した上記[1]〜[3]のいずれかに記載の固体成形吸着剤、
【0013】
[5] IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトまたは該イオン交換したゼオライトにさらに前記金属成分化合物の少なくとも1成分を担持させたゼオライトと、細孔径が10〜10,000ÅのアルミナにIB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分を坦持したアルミナを成形体とすることにより、ゼオライトおよびアルミナの合計に対して、金属成分(酸化物換算)として8〜60重量%担持させた固体成形吸着剤、
[6] IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトとアルミナの配合比が、ゼオライトとアルミナの合計量に対して、アルミナの配合比が少なくとも50重量%である上記[1]〜[5]のいずれかに記載の固体成形吸着剤、
【0014】
[7] IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトまたは該イオン交換したゼオライトまたはさらに前記金属成分化合物の少なくとも1成分を担持させたゼオライトおよびアルミナとからなる成形体に、さらに該金属成分化合物を担持し、これを300〜700℃において焼成することを特徴とする硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の製造方法、
[8] IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトおよびアルミナを成形体とし、これに金属成分化合物を含浸(スプレーして含浸させることも含む)、焼成する上記[7]に記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の製造方法、
[9] IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライト、アルミナおよび該金属成分化合物を成形体とし、焼成する上記[7]または[8]に記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の製造方法、
[10] 金属成分化合物が、有機酸塩または錯体化合物である上記[7]〜[9]のいずれかに記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の製造方法、
[11] 金属成分化合物が、酸化物、水酸化物、硝酸塩または炭酸塩である上記[7]〜[9]のいずれかに記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の製造方法、
[12] 焼成温度300〜700℃、時間30分〜3時間焼成を行って活性化する上記[7]〜[11]のいずれか1項に記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の製造方法、
【0015】
[13] 炭化水素を含む成分を、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の層を通過させ、硫黄成分を除去することからなる炭化水素を含む成分の精製方法、
[14] 炭化水素を含む成分が、水素を含むことのある、気体状の炭化水素、不飽和炭化水素または液状の炭化水素からなる炭化水素である上記[13]に記載の炭化水素を含む成分の精製方法、
【0016】
[15] 炭化水素を含む成分と固体成形吸着剤の接触は、温度−10〜60℃、圧力0.1mPa〜10mPa、空間速度1000〜13000h-1で処理することからなる上記[13]または[14]に記載の炭化水素を含む成分の精製方法、
【0017】
[16] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤を用いて、水素を含むことのあるガス状炭化水素を含むストリームを、ガス空間速度(GHSV)500h-1〜10000h-1で脱硫処理した後、該脱硫処理済み炭化水素を含むストリームを、部分酸化触媒、オートサーマル改質触媒、または水蒸気改質触媒と接触させることを特徴とする燃料電池用水素の製造方法、および
[17] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤を用いて、水素を含むことのある液状炭化水素を含むストリームを、処理圧力 0.1mPa〜10mPa、液空間速度(LHSV)0.5h-1〜150h-1で脱硫処理した後、該脱硫処理済み炭化水素を含むストリームを、部分酸化触媒、オートサーマル改質触媒、または水蒸気改質触媒と接触させることを特徴とする燃料電池用水素の製造方法、を開発することにより上記の課題を解決した。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水素を含むことのある、気体状の飽和炭化水素、不飽和炭化水素または液状の炭化水素からなる炭化水素中の硫黄含有成分を、室温〜約250℃の温度においても低濃度まで効率よく除去し得る、吸着容量の大きい、吸着法では除去が難しいとされている低分子硫黄含有成分さえも効率よく除去出来る非再生型固体成形吸着剤、その製造方法、該吸着剤を用いて炭化水素を含む成分の脱硫処理及び該吸着剤を用いて脱硫処理した炭化水素含有ガスから、燃料電池用水素を効果的に製造する方法を提供できた。
【0019】
本発明の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤は、成形体であるため取扱が容易であり、また脱硫処理も高温高圧でも使用可能であるが、常温常圧においても行うことが出来るだけでなく、脱硫能力が大きく、この脱硫処理に長時間処理することが可能である上、脱硫処理済み炭化水素は硫黄含有成分が極度に少なく貴金属触媒等に対する毒性を殆ど有していないため、改質触媒の劣化が小さく、長時間の改質処理することが可能であるなど極めて優れた性能を有している。このため規模の大小に拘わらず使用することが出来るので、燃料電池用水素の供給用として、あるいは硫黄成分の存在が好ましくない炭化水素成分を供給する方法に利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本願発明は、固体成形吸着剤、その吸着剤の製造方法、及びその吸着剤を用いた炭化水素類の脱硫精製方法を含むものである。
本発明の硫黄化合物吸着剤は、 IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属元素の少なくとも1成分からなる金属成分でイオン交換したゼオライトと細孔径が10〜10,000Åのアルミナとからなる成形体に、さらに前記金属成分を含む化合物の少なくとも1つを担持させた吸着剤であって、水素を含むことがある炭化水素を含む成分から硫黄含有成分を除去するための非再生固体吸着剤である。
【0021】
イオン交換したゼオライトの1つの成分である IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属元素としては、IB族の金属元素として銅、銀が、IIB族の金属元素として亜鉛が、VIA族の金属元素としてモリブデンが、VIIA族の金属元素としてマンガンがおよびVIII族の金属元素としてニッケル、コバルトなどを挙げることができる。
これらの金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトにおいては、イオン交換後における前記金属種の含有量は、金属成分の酸化物に換算して、少なくとも5重量%、好ましくは10重量%以上担持したゼオライトが好ましい。このイオン交換金属担持量が5重量%未満では、あとで含浸または混合により十分な量の金属成分を担持させたとしても脱硫性能が十分に発揮されないおそれがある。この金属成分のイオン交換は、金属成分を含む水溶液にゼオライトを含浸するなどの通常の方法によって行うことが出来る
【0022】
本発明のイオン交換に使用するゼオライトは、細孔質でコーナーを共有するAlO四面体及びSiO四面体で形成される酸化物3次元構造を有している結晶アルミノシリケート組成物である。ゼオライトは均一な寸法の細孔入口を有していること、かなり大きなイオン交換容量を有していること、そして永続的なゼオライト結晶構造を構成するいずれの原子も大幅に変位させることなくその結晶の内部空隙全体に分散されている吸着相を可逆的に脱着することができるという特徴を有している。本発明で用いることができるゼオライトは約5から約100オングストロームの細孔入口を有するものである。
【0023】
一般的に、ゼオライトは以下の実験式で示される組成を有している。
/nO:Al:bSiO、ここでMはn価の電荷を有する陽イオンであり、bは約2から約500までの範囲の値を有している。好ましいゼオライトはSiO:Al比率が約2:1から約6:1までの範囲のものであり、及び/又はゼオライトX、ホージャライト、ゼオライトY、ゼオライトA、モルデン沸石、そしてフェリエライトの結晶構造を有しているものである。特に好ましいゼオライトはゼオライトX、Y及びA及びそれらの混合物である。
【0024】
これらのゼオライトの調製法はこの技術において公知であり、各成分の反応供給源で構成される反応混合物を形成し、ゼオライトを形成するためにその混合物に水熱反応を行うことを含むものである。特に、ゼオライトYの合成法は米国特許出願第3,130,007号と米国特許出願第4,503,023号に開示されており、ゼオライトXの合成法は米国特許出願第2,883,244号と米国特許出願第3,862,900号に開示されている。
【0025】
ゼオライト、特にゼオライトX及びYの合成法は良く知られているが、以下に完全を期して簡単に説明する。Mの反応供給源は塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物又は水酸化物化合物などである。アルミニウム供給源はベーマイト・アルミナ、ガンマ・アルミナ、及び、アルミン酸ナトリウム若しくはテトラエチルアンモニウム・アルミン酸塩などの可溶性アルミン酸塩を含むものである。最後に、ケイ素供給源はシリカ、シリカ・ヒドロゾル、ケイ酸を含むものである。
【0026】
反応供給源は酸化物のモル比が:SiO/Al=8〜12M2/nO/Al=2.5〜4HO/M2/nO=120〜180である混合物とされ、次にその混合物を反応させてゼオライトを形成する。
【0027】
合成された状態で、ゼオライトは孔路及び/又は細孔に「M」金属を含んでいる。これら金属陽イオンの機能はゼオライト格子の負の電荷との平衡を取ることである。これらの陽イオンは結晶のフレームワークの一部ではないので、それらは交換可能であり、交換サイトを占めると言われている。この量は通常当量で表現される。本発明において使用するゼオライトは、少なくとも5重量%、好ましくは10重量%以上の所定の金属元素でイオン交換したゼオライトである。
【0028】
ゼオライト内に最初に存在している金属陽イオンは交換可能であるので、本発明においてはIB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属元素のイオンあるいはそれらの混合イオンと交換することができる。れらのイオンは合成吸着剤調製の前、あるいは調製中にアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの混合物と完全に交換しておく必要がある。
さらに、必要に応じてIB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属元素のイオンとイオン交換したゼオライトはさらにこれらの金属化合物を担持させるため、これら金属化合物の水溶液を含浸、または加熱しながらスプレーするなどの方法により金属化合物を担持させても良い。
【0029】
上記固体成形吸着剤の担体としての他の必要成分はアルミナである。本発明で使用するアルミナは細孔径10〜10,000Å、好ましくは10〜3,000Åの範囲の細孔径を有するアルミナである。
【0030】
これらのアルミナは、好ましくは例えば高温ガス又は固体熱媒体の炭化水素を含む成分中のハイドラーギライトのアルミナ三水和物などのアルミナ水酸化物の急速脱水によって得られたものである。脱水は高熱ガスあるいは固体熱媒体を用いる適切な装置において達成することができる。一般的に、高熱ガスによる加熱あるいはそれとの接触は非常に短い時間で、好ましくは、1秒以下から4ないし5秒の範囲である。通常、これらのガスの温度は400℃から1,000℃までの間で変動する。この工程は、一般的にはフラッシュか焼によって製造出来るが、しかしながら、その他のか焼方法を用いたものであっても良い。このアルミナは脱硫処理の際に、炭化水素類の異性化やオレフィン類のオリゴマー化の発生を防止するためアルカリ金属などにより活性を落としておくことが好ましい。
【0031】
本発明で使用するために適したアルミナは0.1から300μm、好ましくは1から100μm、より好ましくは1から20μmの細粒子径粒子である。場合によっては、1から10μmまでの範囲の粒子径のアルミナを用いるのが望ましい。アルミナはイオン交換したゼオライトと混合する前に、望ましい粒子サイズにすり潰してもよい。本発明に使用するアルミナは、好ましくは200℃から1000℃までの範囲の温度で、約5から12%までの範囲のLOI(強熱減量)を有している。
【0032】
アルミナの1つの供給源はバイヤー法を用いてボーキサイトから派生されるアルミナ水和物の1つの形態であるギブサイトである。しかしながら、十分にか焼すれば、アルファ・アルミナ型一水化物、擬ベーマイト(pseidobehmite)、あるいはアルミナ三水和物を用いることができる。粘土やアルミナ・アルコキシドを含めアルミナのその他の供給源も用いることができる。
【0033】
イオン交換したゼオライトあるいはイオン交換したゼオライトに金属化合物を担持したゼオライトと細孔径が10〜10,000Åのアルミナを混合して成形体とする際に、成形体の強度が不十分な場合には担体の性能を損なわない範囲で水溶性高分子、クレー等の粘結助剤を配合して成形しても良い。水溶性高分子としてはポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、寒天、澱粉などを全量に対して1〜数%、クレーの場合には5〜20重量%程度を配合することで十分である。
なおイオン交換したゼオライトあるいはイオン交換したゼオライトに金属化合物を担持したゼオライトと細孔径が10〜10,000Åのアルミナを混合して成形体とする際に、金属成分の化合物の粉末または水溶液を混合して固体成形体とすることも出来る。この場合はそのままで硫黄含有成分除去用吸着剤としても良いし、さらに金属成分の化合物を担持させても良い。
【0034】
上記の手段で成形された、イオン交換したゼオライトあるいはイオン交換したゼオライトに金属化合物を担持したゼオライトおよび細孔径が10〜10,000Åのアルミナを含む成形体は、乾燥した後、軽く仮焼、たとえば200〜350℃程度に焼成して成形体の硬度を高めた後金属成分を担持させる。また金属成分を混合した場合はそのままあるいはさらに金属成分を担持させる。
【0035】
この場合は、イオン交換したゼオライトあるいはイオン交換したゼオライトに金属化合物を担持したゼオライトとアルミナを混合した成形体に金属化合物の水溶液を含浸させ乾燥するか、水溶液または懸濁液をスプレーしながら乾燥させるか、あるいは溶液と共に転動乾燥する方法である。
金属成分化合物としては、IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属元素の蟻酸、酢酸、クエン酸等の有機酸塩、キレート化合物などの有機錯体化合物、硝酸塩、炭酸塩等の無機酸塩、酸化物、水酸化物などを挙げることができる。触媒毒となる成分を含む硫酸塩などは貴金属改質触媒等に悪作用を及ぼす可能性があるので避けた方が好ましい。
【0036】
金属成分の化合物としては、IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分を含むことが必要であり、含浸、スプレーなどに用いる形態としては水溶液、あるいは懸濁液の形が好ましい。有機溶剤に溶解したものであっても同様なものはできるが、発火や環境汚染の危険があるので水媒体系のものが好ましい形態である。
金属成分の担持量としては、イオン交換した金属イオン及び担持した金属化合物の合計が、金属酸化物としてゼオライトおよびアルミナの合計量(金属化合物を含まないゼオライトとアルミナの合計、「担体」ということもある。)の8〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは13〜40重量%である。
【0037】
金属成分を担持した成形体を得たら、それらを必要に応じ約150〜300℃までの周囲温度で約30分間から約5時間焼結乾燥する。
乾燥した金属成分担持成形体は、約300℃から約700℃、好ましくは350〜500℃の温度で約30分〜約3時間加熱することで活性化させる。但し700℃を超える温度ではゼオライト結晶の崩れが激しくなるため、できれば600℃以下好ましくは500℃以下の温度とすることが好ましい。
【0038】
3つの成分の相対的な量は規定した範囲で変えることができる。通常、担体中のアルミナ含有量は、少なくとも50重量%、好ましくは50〜98重量%、より好ましくは65〜95重量%である。アルミナの含有量が50重量%未満の場合には成形性が低下し、成形体の製造が困難となる。
【0039】
さらに吸着剤中の金属成分を、イオン交換した金属イオン及び担持した金属化合物の合計が、金属酸化物に換算して担体の8〜60重量%となるように担持する。
なお前述したように、金属化合物として、仮に担体の8〜60重量%担持されたとしても、イオン交換したゼオライトを使用しないとき、またはその使用量が少ないときは低分子硫黄含有成分の吸着量容量が低下して、十分な吸着量が保持出来ず、低濃度まで効率よく吸着出来ないので好ましくない。
また、イオン交換したゼオライトを使用したときであっても、担持した金属成分量が全体として不足しているとき、または全く担持がないときは、硫黄含有成分の全除去量が低下して吸着剤のライフが短くなる。
【0040】
本発明の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤は、種々の炭化水素を含む成分から汚染物質を除去するために用いることができる。処理できる炭化水素を含む成分としては、水素を含有しても良い、ガス状炭化水素および軽質の液状炭化水素(例えばガソリン、ナフサ、灯油、軽油)などである。特に好ましいものは脂肪族の炭素数1〜6までの飽和及び/又は不飽和炭化水素またはこれに水素を含む含むものなどである。メタン、エタン、プロパン、ブタンなどのパラフィン系炭化水素、エチレン、プロピレン、及びブチレンなどのオレフィン系炭化水素は特にこの吸着剤を用いて好適に処理することができる。これらの炭化水素を含む成分は、硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤で処理することによりメルカプタン、硫化カルボニル、その他の硫黄(S−)含有有機化合物の何れも除去できる。
【0041】
炭化水素を含むストリームは、以下に述べる吸着条件で硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤と接触させることによって脱硫、精製される。接触はバッチ方式あるいは連続プロセスで実行することができ、連続プロセスが望ましい。吸着剤は固定床、移動床あるいは流動床のいずれに適用してもよいが、固定床が好ましい。固定床が用いられる場合、原料炭化水素を含むストリームは昇流、降流のいずれの方向でもパスさせることができるが、一般的にはガスまたは液体原料の場合、昇流が好ましい。移動床が用いられる場合、原料炭化水素を含むストリームは並流、向流のいずれでもよい。さらに、固定床が用いられる場合、多重床を用いることができ、1つ又は複数の反応容器内に入れることができる。
【0042】
吸着条件(脱硫条件)は、大気温としての−10〜60℃位までの温度で十分な性能を発揮するが、温度が約250℃位までは問題がなく使用可能であり、圧力としては大気圧程度から約1.01×104kPa(100気圧)までの範囲の圧力、そして炭化水素を含む成分は液体あるいはガスのいずれかにであって良く、これにより適切な接触時間が選択されることになる。
液体原料の場合、時間基準の液空間速度(LHSV)で表現した接触時間は約0.5h-1から約10h-1までの範囲であり、ガスストリームの場合、時間基準のガス空間速度(GHSV)は約500h-1から約13000h-1までの範囲ないで行うことが好ましい。
【0043】
この様にして脱硫処理された炭化水素を含む成分は、殆ど完全に近い状態まで硫黄含有成分が除去されているため、硫黄成分を嫌う各種の反応原料として、また改質触媒に対して毒性が少なく、長時間の改質処理することが可能となるので、極めて良質の燃料電池用水素が効果的に得られることになる。
脱硫処理済みの炭化水素を含む成分は、部分酸化触媒、オートサーマル改質触媒、または水蒸気改質触媒等により水素改質をした後、得られた水素を燃料電池用燃料として使用出来る。この場合にも硫黄含有成分を含まないため、燃料電池に悪影響を与えることはない。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するために開示されるものである。なお、これらの実施例は説明のためだけに開示されるものであって、特許請求の範囲に示される発明の範囲を制限するものではない。
【0045】
[吸着剤の調整方法]
(イオン交換ゼオライトの調製)
ゼオライトとして、所定量の13Xケーキにその重量の倍のイオン交換水を加えスラリーとする。これとは別に所定量の硝酸銀を300〜400倍の脱イオン水に溶解させ、金属成分として銀を担持させるときは硝酸銀水溶液(他の金属成分、例えば銅であれば硝酸銅、他の金属であれば好ましくはその水溶性金属塩)を準備し、攪拌中の13Xスラリーを入れたビーカーに非常にゆっくり前記硝酸銀水溶液を加えていくとともに攪拌する。硝酸銀水溶液(他の金属塩においても同様)を加え終わった後、攪拌を数時間継続しイオン交換を完了する。該懸濁液を濾過し、イオン交換樹脂にて脱イオンした温水にてイオン交換済みゼオライトケーキを充分水洗して、洗浄液中に溶解している硝酸イオンが検知されなくなるまで続ける。
得られたイオン交換ゼオライト(以下「IE−MS」と略記する。)中のAgO/[NaO+AgO]の比を蛍光X線装置にて測定する。
【0046】
(アルミナへのNa分の担持(Na−AAの調整))
細孔分布が10Å〜3,000Åのドライベースの活性アルミナ(以下「AA」と略記する。)重量100gあたり酢酸ナトリウム水溶液をNaO分として0.018モルから0.08モルまでの担持量となるよう含浸し、加熱ベルトを用いて60℃〜80℃で3時間乾燥してNa−AAを準備する。
【0047】
(IE−MSとAAの混合ビーズ成形)
前記IE−MSパウダーとAA又はNa−AAパウダーをドライ重量ベースで所用の割合に混合、十分に均一混合とする。回転パン装置により該混合パウダーを所定の粒度分布(1.2mm〜2.4mm[8×14mesh]または2.4〜4.7mm[4×8mesh]に入るよう適宜、所定量の水分を加え粒体、好ましくは球体に成形する。得られた球状の成形体を加熱ベルトを用いて60℃〜80℃で3時間乾燥する。
【0048】
(IE−MS+AA混合ビーズ成形含浸焼成)
IE−MS+AA(又は、Na+AA)の混合ビーズ成形で得られた球状成形体に所定量の硝酸銀水溶液を含浸させた後、該球状成形体を加熱ベルトを用いて60℃〜80℃で乾燥する。最後に450℃でオーブン又は回転炉にて1時間、乾燥・焼成により活性化し所定のMS+AAハイブリッド吸着剤(以下「ハイブリッド吸着剤」という。)を得る。
【0049】
[吸着テスト]
(気相系吸着実験装置並びに実験の概要)
充填カラム:3.6cm(直径)×10.0cm(長さ)の吸着実験装置に硫黄化合物として、COS=3ppm−v:DMS=3ppm−v:TBM=3ppm−v:MeOH=3ppm−vのそれぞれを含む液化石油ガス:C= 98vol%(以下「調整液化石油ガス」という)を、吸着剤の性能を比較するために同一の条件:GHSV=7200h-1、L/V=20cm/sec、常圧、25℃にて吸着塔に通気し、定期的に吸着塔出口の液化石油ガス中の硫黄化合物濃度を採取し分析した。
【0050】
吸着塔からの硫黄化合物の破過の判定は、測定硫黄化合物濃度が0.5ppm−v以上と分析された時点で破過と判定し、吸着テストを終了した。吸着テスト開始から破過時点までに吸着したハイブリッド吸着剤単位重量当たりの硫黄化合物吸着量(wt%)を次式にて算出した。尚、硫黄化合物の分析手法は、JIS−K 2541−6:2003(酸化分解・紫外蛍光法)である。
Σi[(通気ガス容積流量){Si(入口)―Si(出口)}Mwi/22.4]×(開始から破過までの時間)/(吸着塔への吸着剤充填量)×100
S(入口):硫黄化合物i成分の吸着塔入口濃度(vol−frac.)
S(出口):硫黄化合物i成分の吸着塔出口濃度(vol−frac.)
【0051】
(実施例1)
前記した吸着剤の調整方法により銅−ハイブリッド吸着剤を製造した。ゼオライト(MS):AAの配合割合(ドライ重量ベース)は、1:11、MS部のイオン交換率は、10.0wt%であり、吸着剤全体として担持した酸化銅(金属酸化物換算)の比率は、36.0wt%(ドライベース)、サイズ1,2〜2.4mmの該ハイブリッド吸着剤を充填カラムに充填し、調整液化石油ガスを通気しテストを開始した。 結果、硫黄化合物の破過時間は、340時間であった。
【0052】
(実施例2)
前記した吸着剤の調整方法により銀置換IE−MSを製造した後、AAを配合しIE−MSとAAの混合ビーズを調製した。次いで硝酸銀水溶液を含浸させてサイズ1.2〜2.4mmの銀−ハイブリッド吸着剤を製造した。MS:AAの配合割合(ドライ重量ベース)は、1:2.3、MS部のイオン交換率は、29.0wt%であり、吸着剤全体として担持した酸化銀(金属酸化物換算)の比率は36.1wt%(ドライベース)である。該剤を充填カラムに充填し、調整液化石油ガスを通気しテストを開始した。 結果、硫黄化合物の破過時間は、247時間であった。
【0053】
(実施例3)
前記した吸着剤の調整方法により亜鉛−ハイブリッド吸着剤を製造した。ゼオライト(MS):AAの配合割合(ドライ重量ベース)は1:11、MS部のイオン交換率は10.0wt%であり、吸着剤全体として担持した酸化亜鉛(金属酸化物換算)の比率は、36.1wt%(ドライベース)、サイズ1,2〜2.4mmの該ハイブリッド吸着剤を充填カラムに充填し、調整液化石油ガスを通気しテストを開始した。 結果、硫黄化合物の破過時間は、85時間であった。
【0054】
(実施例4)
実施例1のイオン交換方法において、イオン交換種、交換量は同じであるが[IEMS+AA]含浸成形品時の担持金属種でサイズを2.4〜4.7mmの銅―ハイブリッド吸着剤とした。該ハイブリッド吸着剤は、MS:AAの配合割合(ドライ重量ベース)は、1:11、MS部のイオン交換率は、10.0wt%であり、吸着剤全体として担持した酸化銅の合計(金属酸化物換算)の比率は36.0wt%であった(ドライベース)。該ハイブリッド吸着剤を充填カラムに充填し、調整液化石油ガスを通気しテストを開始した。結果、硫黄化合物の破過時間は、212.5時間であった。
【0055】
(実施例5)
実施例2のイオン交換方法において、イオン交換種、交換量は同じであるが[IEMS+AA]含浸成形品時の担持金属種でサイズを2.4〜4.7mmの銀−ハイブリッド吸着剤とした。該ハイブリッド吸着剤のMS:AAの配合割合(ドライ重量ベース)は、1:2.3、MS部のイオン交換率は、24.0wt%であり吸着剤全体として担持した酸化銀(金属酸化物換算)の比率は、36.1wt%であった(ドライベース)。該剤を充填カラムに充填し、調整液化石油ガスを通気しテストを開始した。 結果、硫黄化合物の破過時間は、123.5時間であった。
【0056】
(実施例6)
実施例3のイオン交換方法において、イオン交換種、交換量は同じであるが[IEMS+AA]含浸成形品時の担持金属種でサイズを2.4〜4.7mmの亜鉛―ハイブリッド吸着剤とした。該ハイブリッド吸着剤は、MS:AAの配合割合(ドライ重量ベース)は、1:11、MS部のイオン交換率は、10.0wt%であり、吸着剤全体として担持した酸化亜鉛の合計(金属酸化物換算)の比率は36.1、wt%であった(ドライベース)。該ハイブリッド吸着剤を充填カラムに充填し、調整液化石油ガスを通気しテストを開始した。結果、硫黄化合物の破過時間は、29.8時間であった。
【0057】
(実施例7)
実施例1のMSへのイオン交換方法において、イオン交換種、交換量は同じであるが[IEMS+AA]含浸成形品時の担持金属種、担持量は、Agイオン、10.0wt%。 ハイブリッド吸着剤全体として担持した酸化金属(金属酸化物換算)の比率は36.0wt%であった。 調整液化石油ガスを通気しテストを開始した結果、硫黄化合物の破過時間は、289時間であった。
【0058】
(実施例8)
実施例2のMSへのイオン交換方法において、イオン交換種、交換量は同じであるが[IEMS+AA]含浸成形品時の担持金属種、担持量は、Cuイオン、29.0wt%。 ハイブリッド吸着剤全体として担持した酸化金属(金属酸化物換算)の比率は36.1wt%であった。 調整液化石油ガスを通気しテストを開始した結果、硫黄化合物の破過時間は、271.7時間であった。
【0059】
(比較例1)
前記した吸着剤の調整方法により、MS部は酢酸銀によりイオン交換しただけで、IEMS+AAの成形ビーズの金属担持を行うことなく吸着剤を製造した。該吸着剤のMS:AAは、1:2.6であり酸化銀(金属酸化物換算)の比率は、26.0wt%であった(ドライベース)。調整液化石油ガスを通気しテストを開始した。結果、硫黄化合物の破過時間は、15.1時間であった。
【0060】
(比較例2)
前記した吸着剤の調整方法において、MS部はイオン交換せずMS+AAの混合・成形ビーズを製造した。MS:AAは、4:1である。その後、酸化銅水溶液を含浸し、乾燥・焼成した。担持した酸化銅(金属酸化物換算)の比率は、26.0wt%であった(ドライベース)調整液化石油ガスを通気しテストを開始した。結果、硫黄化合物の破過時間は、71時間であった。
【0061】
[液相系吸着実験装置並びに実験の概要]
充填カラム:3.6cm(直径)×10.0cm(長さ)を持つ吸着実験装置にハイブリッド吸着剤を充填し、これに硫黄化合物をそれぞれCOS=4.10ppm−wt:DMS=4.23ppm−wt:TBM=6.15ppm−wt:MeOH=3.27ppm−wt含む15atm、常温条件下の液化石油ガス(調整液化石油ガス)をLHSV=60h-1、L/V=10cm/minにて吸着塔に通油し定期的に吸着塔出口の液化石油ガス中の硫黄化合物濃度を採取し分析した。
【0062】
吸着塔からの硫黄化合物の破過の判定は、測定硫黄化合物濃度が0.5ppm−wt以上と分析された時点で破過と判定し、吸着テストを終了した。吸着テスト開始から破過時点までに吸着した吸着剤単位重量当たりの硫黄化合物吸着量(wt%)を次式にて算出した。尚、硫黄化合物の分析手法は、JIS−K 2541−6:2003(酸化分解・紫外蛍光法)である。
Σi[(通油液化石油ガス質量流量){Si(入口)―Si(出口)}×(開始から破過までの時間)/(吸着塔への吸着剤充填量)×100
Si(入口):硫黄化合物i成分の吸着塔入口濃度(wt−frac.)
Si(出口):硫黄化合物i成分の吸着塔出口濃度(wt−frac.)
【0063】
(実施例9)
実施例1にて調整したハイブリッド吸着剤を用いて液相系吸着実験を実施した。結果、硫黄化合物の破過時間は、76時間であった。
【0064】
(実施例10)
実施例2にて調整したハイブリッド吸着剤を用いて液相系吸着実験を実施した。結果、硫黄化合物の破過時間は、64.1時間であった。
【0065】
(実施例11)
実施例3にて調整したハイブリッド吸着剤を用いて液相系吸着実験を実施した。結果、硫黄化合物の破過時間は、28.5時間であった。
【0066】
(実施例12)
実施例4にて調整したハイブリッド吸着剤を用いて液相系吸着実験を実施した。結果、硫黄化合物の破過時間は、34.2時間であった。
【0067】
(実施例13)
実施例5にて調整したハイブリッド吸着剤を用いて液相系吸着実験を実施した。結果、硫黄化合物の破過時間は、34.5時間であった。
【0068】
(実施例14)
実施例6にて調整したハイブリッド吸着剤を用いて液相系吸着実験を実施した。結果、硫黄化合物の破過時間は、11.4時間であった。
【0069】
(比較例3)
比較例1にて調製した吸着剤を用いて液相系吸着実験を実施した。結果、硫黄化合物の破過時間は、3.4時間であった。
【0070】
(比較例4)
比較例2にて調製した吸着剤を用いて液相系吸着実験を実施した。結果、硫黄化合物の破過時間は、34.9時間であった。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、気体状の飽和炭化水素、不飽和炭化水素または液状の炭化水素からなる炭化水素中の硫黄含有成分を、室温〜約250℃の温度においても低濃度まで効率よく除去し得る、吸着容量の大きい、吸着法では除去が難しいとされている低分子硫黄含有成分さえも効率よく除去出来る非再生型固体成形吸着剤、その製造方法、該吸着剤を用いて炭化水素を含む成分の脱硫処理及び該吸着剤を用いて脱硫処理した炭化水素含有ガスから、燃料電池用水素を効果的に製造する方法である。
この結果、燃料電池用の水素を効率よく製造できることになり、需要地に燃料電池による発電所を設けて送電ロスを大幅に削減出来ると共に、環境汚染がほとんどない発電所とすることが出来る。また民生用として病院や事務所等に使用する出力500KW以下の分散型燃料電池においても、都市ガスあるいはLPGなど入手が容易で取り扱いやすい原料を使用出来、常温で使用でき、しかもコンパクトな装置で実用できる脱硫が可能となるためこれらの用途に対して広く使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトと、細孔径が10〜10,000Åのアルミナを含む成形体に、さらに前記金属成分化合物の少なくとも1成分を担持させたことを特徴とする、炭化水素を含む成分から硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤。
【請求項2】
IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトに、さらに前記金属成分の化合物の少なくとも1成分を担持させた後、細孔径が10〜10,000Åのアルミナを含む成形体とすることを特徴とする、炭化水素を含む成分から硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤。
【請求項3】
ゼオライトが、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトA、及びそれらの混合物の少なくとも1成分で構成された群から選択されたものである請求項1または2に記載の固体成形吸着剤。
【請求項4】
IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトに対する金属成分の担持量が金属酸化物換算で5重量%以上をイオン交換した請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体成形吸着剤。
【請求項5】
IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトまたは該イオン交換したゼオライトにさらに前記金属成分化合物の少なくとも1成分を担持させたゼオライトと、細孔径が10〜10,000ÅのアルミナにIB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分を坦持したアルミナを成形体とすることにより、ゼオライトおよびアルミナの合計に対して、金属成分(酸化物換算)として8〜60重量%担持させた固体成形吸着剤。
【請求項6】
IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトとアルミナの配合比が、ゼオライトとアルミナの合計量に対して、アルミナの配合比が少なくとも50重量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体成形吸着剤。
【請求項7】
IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトまたは該イオン交換したゼオライトまたはさらに前記金属成分の化合物の少なくとも1成分を担持させたゼオライトおよびアルミナとからなる成形体に、さらに該金属成分の化合物を担持し、これを300〜700℃において焼成することを特徴とする硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の製造方法。
【請求項8】
IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライトおよびアルミナを成形体とし、これに金属成分化合物を含浸(スプレーして含浸させることも含む)、焼成する請求項7に記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の製造方法。
【請求項9】
IB、IIB、VIA、VIIAおよびVIII族の元素からなる金属成分の少なくとも1成分でイオン交換したゼオライト、アルミナおよび該金属成分化合物を成形体とし、焼成する請求項7または8に記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の製造方法。
【請求項10】
金属成分化合物が、有機酸塩または錯体化合物である請求項7〜9のいずれか1項に記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の製造方法。
【請求項11】
金属成分化合物が、酸化物、水酸化物、硝酸塩または炭酸塩である請求項7〜9のいずれか1項に記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の製造方法。
【請求項12】
焼成温度300〜700℃、時間30分〜3時間焼成を行って活性化する請求項7〜11のいずれか1項に記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の製造方法。
【請求項13】
炭化水素を含む成分を、請求項1〜6のいずれか1項に記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤の層を通過させ、硫黄成分を除去することからなる炭化水素を含む成分の精製方法。
【請求項14】
炭化水素を含む成分が、水素を含むことのある、気体状の炭化水素、不飽和炭化水素または液状の炭化水素からなる炭化水素である請求項13に記載の炭化水素を含む成分の精製方法。
【請求項15】
炭化水素を含む成分と固体成形吸着剤の接触は、温度−10〜60℃、圧力0.1mPa〜10mPa、空間速度1000〜13000h-1で処理することからなる請求項13または14に記載の炭化水素を含む成分の精製方法。
【請求項16】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤を用いて、水素を含むことのあるガス状炭化水素を含むストリームを、ガス空間速度(GHSV)500h-1〜10000h-1で脱硫処理した後、該脱硫処理済み炭化水素を含むストリームを、部分酸化触媒、オートサーマル改質触媒、または水蒸気改質触媒と接触させることを特徴とする燃料電池用水素の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の硫黄含有成分除去用固体成形吸着剤を用いて、水素を含むことのある液状炭化水素を含むストリームを、処理圧力 0.1mPa〜10mPa、液空間速度(LHSV)0.5h-1〜150h-1で脱硫処理した後、該脱硫処理済み炭化水素を含むストリームを、部分酸化触媒、オートサーマル改質触媒、または水蒸気改質触媒と接触させることを特徴とする燃料電池用水素の製造方法。

【公開番号】特開2007−222702(P2007−222702A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43393(P2006−43393)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(390016090)ユニオン昭和株式会社 (9)
【Fターム(参考)】