説明

硬化ゴムへの金属の接着性と金属の接着保持性を向上させるアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン接着剤

アミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(アミノAMS)、及び/または、メルカプトシランまたはブロックメルカプトシランを含むアミノco−AMS化合物は、めっき金属ワイヤまたはめっきされていない金属ワイヤのゴムストックへの接着性を向上させる優れた接着剤である。アミノAMS及び/またはアミノ/メルカプタンco−AMS接着剤は、全ての種類のゴムについて使用でき、コバルト、樹脂、高濃度の硫黄など(これらに限定されない)の、特別な接着性添加剤をゴム加硫物に添加する必要がない。特に、ワイヤをゴムへ結合させる接着剤としてのアミノAMS及び/またはアミノ/メルカプタンco−AMS化合物の使用は、強化材の接着性能を向上させ、時間の経過による分解、特に熱老化及び/又は熱−酸化老化の、特に水存在下での腐食に対して耐性を有する、十分な結合を得ることができる。また、アミノAMS及び/またはアミノ/メルカプタンco−AMS化合物を含有する加硫ゴム組成物は、埋め込まれた被覆されていないスチールの、湿度老化後の接着性を、アミノアルコキシ変性シルセスキオキサンを含有しない加硫ゴム組成物と比べて、向上させた。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
この発明は、ゴム組成物と、ゴムストック中に埋め込まれたスチールのワイヤ及びケーブルのような金属補強コードとの、接着性及び接着保持性を改善することを目的とする。金属または繊維によって補強された、このようなストックの平坦なシートまたはストリップは、タイヤ、タイヤのリトレッド用の修繕ストック、コンベアベルト、ホースなどの製造においてプライまたは他の部材として利用され、当該技術分野では、ゴムスキムストックと呼ばれている。スキムは、補強フィラメントまたはコードの上の、ゴムの比較的薄い層またはコーティングのことを指す。他の例として、モーターマウントやゴルフクラブのシャフトなど、より厚いゴムを金属上に結合させることもできる。
【0002】
最新技術のゴム製品の製造において、特にスチールベルトを配したバイアス及びラジアルタイヤの製造において、スチールワイヤまたはスチールケーブルでゴムスキムストック材料を補強することは通常の技術となっている。金属補強ゴムのより重要な使用法の1つとして、ベルトとしての使用が挙げられ、これらのベルトの1以上がトレッドストックの真下において実質周方向に配向して配されて、膨張やそれに続く荷重の間もタイヤの品質と形状を維持している。金属補強ゴムスキムストックが使用される他の領域としては、タイヤのボディプライ、ビードまたはチェーファーが挙げられる。
【0003】
加硫可能なゴムとスチール補強コードの間の接着を促進する方法としては、公知の方法が存在する。多様な金属塩または複合体または他の添加剤が、金属に対するコーティングとして、またはゴム組成物中の一成分として使用されてきた。例えば、スチール補強コードは、一般的に、ブラス、亜鉛または青銅のような金属でめっきされ、加硫ゴムへの接着性を促進及び保持するように設計されている。また、それをゴム配合物内の接着促進剤と組み合わせることも一般的である。例えば、このような接着促進剤としては、コバルト塩添加剤、HRH系(ヘキサメチレンテトラミン、レゾルシノール、水和したシリカ)、シランなどが挙げられる。特に、タイヤ工業において、ワイヤのゴムスキムストックへの接着は、ブラスめっきスチールワイヤと、高濃度の硫黄、樹脂及びコバルト塩を含有する特定の処方のゴムとの使用により何年間も実現されてきた。しかしながら、ゴム内へ接着促進剤を組み込むこと、またはワイヤのコーティングとして接着促進剤を組み込むことで、加硫組成物の作用特性と性能に変化が生じ得、特に、熱及び熱酸化による老化への耐性が実質的に変化し得る。さらに、組成物中にこれらの化合物を組み合わせるとコストがかさみ、また、これら化合物中の金属は時折希少であることもある。これらの系においては、補強材の接着性能は時折十分ではなく、得られる結合力は時間経過とともに減少していき、熱老化及び/または熱酸化老化への耐性に乏しく、特に水の存在下で腐食し易いものであった。
【0004】
最重要課題として、初期及び老化後の接着性の両方を改善する努力が続けられる中で、アルコキシオルガノシロキサンの化学特性が注目されてきた。近年、我々は、アミノシラン、メルカプトシラン、またはこれらの混合物を含む化合物を、硬化前にゴム組成物に組み合わせることによって、加硫可能なゴム組成物と、めっきされたまたはめっきされていない(例えばブライト)スチールとの間の、金属の接着性及び金属の接着保持性が改善され、かつ、熱及び湿度老化を改善できることを発見した。(例えば、米国特許第7,201,944号)。
【0005】
しかしながら、他方で、アルコキシオルガノシラン混合物のアルコール溶液を金属めっきされたワイヤコードへ塗布して、薄膜を熱処理すると、接着剤溶液は、湿度硬化に関して、その使用可能な期間が限られてしまう、という問題が生じる。薄層それ自体は水に不溶であるため、溶媒として使用される揮発性有機化合物(VOC)のアルコールの揮発により、環境問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,201,944号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、いまだ、ワイヤを処理して、硬化中にゴムストックのワイヤへの接着を促進するコーティングをもたらす方法を提供することが望まれている。また、めっきされていない、または金属めっきされたワイヤに対する接着性コーティングの提供にも需要がある。さらに、全ての種類のゴムに使用でき、ゴム加硫物に特別な接着添加剤(コバルト、樹脂、及び高濃度の硫黄(ただし、これらに限定されない))を添加する必要のない、接着促進剤の提供にも需要がある。特に、補強材の接着性能を向上させて、時間経過に伴う分解、特に熱老化及び/または熱酸化老化、特には水存在下での腐食に耐性を有する、十分な結合を実現させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
参照してその開示の全体を取り込む、2006年3月23日に出願された「低揮発性有機化合物(VOC)排出量のシリカ補強ゴムの配合」という名称の我々の米国特許出願第11/387,569号において、我々は、従来、ゴムの配合に使用されてきたアルコキシシラン含有のシリカカップリング剤及び/またはシリカ分散剤と比べて、発生するアルコールを減じることができるアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)化合物及びコ−アルコキシ変性シルセスキオキサン(co−AMS)化合物の調製を開示した。プラント内での環境条件をさらに向上させることに加えて、AMS及びco−AMS化合物の使用時に生成するアルコールの量が減ることで、ゴム補強性の向上、ポリマー−充填剤相互作用の向上及び配合物の粘度の低減といった(これらに限定されない)向上した特性を1つ以上有し、湿潤または雪上トラクションが向上し、転がり抵抗が低く、反発弾性が向上し、ヒステリシスが低減されているタイヤを提供する加硫ゴム配合物がもたらされる。
【0009】
ここで、予想外なことに、アミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(アミノAMS)、及び/またはアミノco−AMS化合物(メルカプトシラン及び/またはブロックメルカプトシランを含有していてもよい)は、ワイヤのゴムストックへの接着に際して、めっきの有無にかかわらず、金属ワイヤの被覆に優れた接着剤であることが分かった。さらに、予想外なことに、アミノco−AMS化合物を含む加硫ゴム組成物が、アミノco−AMSを含有しない加硫ゴム組成物と比較して、湿度老化後も、めっきされていないスチールに対する接着性が高いことが発見された。
【0010】
特に適した構成において、アミノAMSは、アミノ/メルカプタンco−AMSを含有する。本開示において使用される「アミノ/メルカプタンco−AMS」との用語は、他に設定がない限りにおいて、アミノ/ブロックメルカプタンco−AMSを含むものとする。「アミノAMS」との用語は、他の分子、特にはゴムと反応可能な基(これに限定されない)を有するものを含み得るアミノco−AMSも包含する。このような基としては、特に限定はされないが、アクリレート、メタクリレート、アミノ、ビニル、メルカプト、硫黄及びスルフィド基等が挙げられる。
【0011】
さらに、アミノAMS及び/またはアミノ/メルカプタンco−AMS接着剤が、すべての種類のゴムに使用でき、ゴム加硫物に特別な接着添加剤(コバルト、樹脂、及び高濃度の硫黄(ただし、これらに限定されない))を使用することを必要としないことが判明した。特に、予想外なことに、アミノAMS及び/またはアミノco−AMS化合物の、ワイヤのゴムへの結合のための接着剤としての使用により、補強材の接着性能が向上し、時間経過での分解に対する耐性、特には熱老化及び/または熱酸化老化に対する耐性、特には水存在下での腐食への耐性を有する、十分な結合が得られることが判明した。
【0012】
本発明は、アミノAMS化合物及び/またはアミノco−AMS化合物を含む接着剤及び/または接着剤溶液を調製する方法、及び接着剤自体を提供する。本発明はさらに、加硫可能なゴムストック中に埋め込まれたスチールを含み、アミノAMS及び/またはアミノco−AMS化合物を含む接着剤のコーティングを含む、ゴム複合体を提供する。さらに、加硫ゴム複合体を含み、金属接着性と金属接着保持性が改善された空気入りタイヤ用の構造部材と、前記構造部材を具える空気入りタイヤを提供する。
【0013】
また、本発明は、めっきされていないスチールが埋め込まれており、かつアミノアルコキシ変性シルセスキオキサンを含む加硫ゴム組成物を提供する。特に、該加硫ゴム組成物は、アミノアルコキシ変性シルセスキオキサンを含有しない加硫ゴム組成物を比べて、湿度老化後のスチールとの接着性が向上していた。本発明は、さらに、加硫ゴム組成物とスチール(特に限定されないが、例えばスチールコード)を含む構成材を具える空気入りタイヤを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
硬化中のゴムのスチールへの接着性を向上させるスチール被覆用接着剤は、アミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロックメルカプタンco−AMS、及びこれらの弱酸で中和された固体またはその水性溶液、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含み、式:
【化1】

[式中、w、x、y及びzはモル分率を示し、zはゼロではなく、w、xまたはyのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつw+x+y+z=1.00であり;
、R、R及びRのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつRZからなる群より選択され(ここで、ZはNH、HNR及びNRからなる群より選ばれる)、
残りのR、R、R及びRは同一であるか、異なっており、(i)Hまたは1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基、(iv)RX(ここで、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン、エポキシド、アミノ基、ビニル基、アクリレート、メタクリレートからなる群より選ばれ、aは1〜約8である)、(v)RYRX(ここで、YはO、S、NH及びNRよりなる群より選ばれる)からなる群から選択され、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキレン基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキレン基、及び単結合からなる群より選ばれ、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基及び7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群より選ばれる]で表わされるアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)を含む。
【0015】
接着剤を構成するアミノアルコキシ変性シルセスキオキサンの混合物は、反応性アルコキシシリル基を有する、開放状かご構造または梯子様構造のアミノアルコキシ変性シルセスキオキサンから実質的になり、閉鎖状かご構造化された多面体オルガノシルセスキオキサンを実質的に含まない。理論に拘束されるものではないが、各分子中の、1以上のRシラン原子、Rシラン原子及びRシラン原子は、アルコキシ(OR)基を有するシランに結合するものと考えられる。本発明の接着剤におけるアミノAMS構造とは対照的に、多面体オリゴマー状シルセスキオキサン(POSS)等の閉鎖状かご構造は、実質的にSi−OR(アルコキシシラン)結合を含まず、Si−O−Si結合のみを含む。
【0016】
アミノアルコキシ変性シルセスキオキサン接着剤のR、R、R及びR基のうち、少なくとも1つは、エラストマーに結合可能な基を含む。このような基としては、アクリレート、メタクリレート、アミノ、ビニル、メルカプト、硫黄及びスルフィド基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態においては、接着性アミノアルコキシ変性シルセスキオキサンのR、R、R及びR基のうち、少なくとも1つが、メルカプトアルキル基、ブロックメルカプト基及び約2〜約8個の硫黄原子を含有する有機基等(これらに限定されない)であってもよい。硬化中のスチールへのゴムの接着性を高める、スチールワイヤ被覆用の接着剤としての使用に特に適した実施形態においては、アミノAMSは、アミノ/メルカプタンco−AMSを含有する。
【0017】
本発明の接着剤の好適な実施形態において、アミノアルコキシ変性シルセスキオキサンは、弱酸で中和された水性溶液であり、そのpHは約6.5〜約4.0、より好ましくは約6.0〜約5.0である。弱酸のpKは、約3.5〜約6.5であることが好ましい。例えば、弱酸としては、酢酸、アスコルビン酸、イタコン酸、乳酸、リンゴ酸、ナフタル酸、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸等、及びそれらの混合物等の弱酸のカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
また、接着剤は、水、アルコール、炭化水素、クロロカーボン、エステル、エーテル及びこれらの混合物のような、アミノAMSの溶剤を含むアミノAMS溶液を含むことができ、この溶液は、約0.01%〜約98%のアミノAMSを含有する。非限定的な例として、溶剤は、水、エタノール、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、アセトン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトニトリル及びこれらの混合物を、独立して含有することができる。
【0019】
上述の、硬化中のスチールへのゴムの接着性を高めるためのスチール被覆用の接着剤の製造方法は、(a)反応混合物として、(i)水、(ii)水に対する溶剤、(iii)加水分解及び縮合触媒、(iv)任意的な弱酸、(v)アミノトリアルコキシシラン、及び(vi)メルカプロアルキルトリアルコキシシラン、ブロックメルカプトアルキルトリアルコキシシラン、及びこれらの混合物からなる群からの任意の選択物、を組み合わせる工程;(b)反応混合物を約0.5時間〜約200時間反応させて、アミノアルコキシシラン変性シルセスキオキサンを生成させる工程;(c)反応混合物からアミノアルコキシシラン変性シルセスキオキサンを回収する工程、及び(d)溶媒中に約0.01%〜約98%のアミノAMSを含む、アミノAMSの接着性の溶剤溶液を形成する工程、を含むことができる。
【0020】
接着性アミノAMSに対する溶剤としては、水、アルコール、炭化水素、クロロカーボン、エステル、エーテル、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、好適な溶媒としては、水、エタノール、ヘキサン、トルエン、トトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、アセトン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトニトリル及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適には、接着剤溶液は、約0.01%〜約98%のアミノAMSを含み、より好適には、約0.02%〜約50%、約0.02%〜約20%、約0.5%〜約5%、約0.1%〜約2%、または約0.2%〜約1%のアミノAMSを含む。
【0021】
接着剤溶液として使用する、好適なアミノAMSとアミノ/メルカプタンco−AMS化合物の製造方法は、2007年12月31日に出願された、我々の米国仮特許出願第61/017,932号及び第61/018,213号、及び下記の実施例に開示されている。しかしながら、これらの例は、発明を限定するものではない。この開示の教示から、化合物の他の製造方法は、当業者にとって明らかとなるであろう。
【0022】
簡潔に言うと、一般的、かつ、非限定的な例において、本発明の接着剤は、アミノトリアルコキシシランを、加水分解及び縮合触媒存在下で、水性アルコール溶液中で加水分解及び縮合させることで製造された、アミノAMSから製造することができる。反応は、実質的に全ての反応物がアミノAMSまたはアミノco−AMS化合物に変換されるのに十分な時間行われる。反応物の最終製品への転化率は、反応物の濃度により制御できる。反応物の濃度が高いほど、反応時間は短くなる。反応温度は、溶剤の沸点より低い温度でさえあれば、それほど重要ではなく、但し、反応用の圧力容器を使用すれは、より高温の使用も可能となる。例えば、室温(約25℃)〜約60℃〜約100℃の反応温度で、ほぼ同当量のアミノAMS製品が得られる。そして、生成物のアミノAMSは、最初にアミンと触媒の中和を行った後、溶剤の蒸留により、反応混合物から取り除かれる。水による溶媒交換により、安定した水性濃縮溶液が得られる。
【0023】
全反応物がアミノAMS製品へと変換されるまでの時間は、最初の反応物の濃度と、任意に追加された反応物及び/または反応中の温度によって変化する。しかしながら、追加の反応物を使用しない場合、該時間は、約0.5時間〜約200時間、特には0.75時間から約120時間、または約1時間〜約72時間の範囲内とすることができる。
【0024】
加水分解及び縮合触媒は、強酸、強塩基、強有機酸、強有機塩基、固体強カチオン樹脂、及びこれらの混合物とすることができる。接着剤として使用するアミノAMS化合物の製造に使用する、好適な加水分解及び縮合触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、トルエンスルホン酸等の強酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の強塩基、及び、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]ノナ−5−エン)、イミダゾール、グアニジン等の強有機酸または強有機塩基、及びこれらの混合物が知られているが、これらに限定されるものではない。また、加水分解及び縮合触媒としては、2007年12月31日に出願された我々の米国仮特許出願第61/017,932号に記載される樹脂を使用したアミノAMS化合物の製造方法に特に開示されているような、好適な固体の強カチオン樹脂が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
強酸、強有機酸または固体強カチオン樹脂を、加水分解及び縮合触媒として使用する場合、反応混合物に弱酸性緩衝液を添加することが好ましい。アミノAMSの調製中に、反応混合物中の弱酸性緩衝液を用いて、アミン官能基を中和するので、強酸が加水分解及び縮合触媒として機能し得る。また、弱酸緩衝液(AMS触媒ではない)は、安定化剤としても働くので、水中のアミン塩が更に縮合して不溶性のゲル構造体を生成することがない。弱酸緩衝液は、約3.5〜約6.5のpKを有する。例えば、好適な弱酸緩衝液としては、酢酸、アスコルビン酸、イタコン酸、乳酸、リンゴ酸、ナフタル酸、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、及びこれらの混合物等の弱いカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。反応混合物中の弱酸緩衝液の量は、アミンに対する酸の当量して、約0.5〜約2モル当量の範囲内とすることができる。
【0026】
さらに、塩酸を使用して調製されたアミノ/メルカプト官能化co−AMSの水性溶液の使用により、スチールコードのゴムへの良好な接着性が見られるが、長期使用を妨げうる顕著な副反応が生じ得る。第一の副反応は、低速のゲル生成であるが、これは、接着剤を蒸留水で希釈する際に、pHが6.2以上になると生じる。この問題を解決するために、上記の酢酸等の弱酸緩衝液を使用して、希釈及び経時変化でのpHの上昇を防ぐことができる。時折みられる第二の副反応は、少し濁ったAMSの生成であり、上記のアミン等の強塩基または強有機塩基を酸の代わりに触媒として使用した場合に生じる。生成した溶液の濁りは、塩基で触媒されたco−AMS製品に少量の水素化ホウ素ナトリウムを加えることで解消し得る。その結果として、アミノ/メルカプトco−AMSの透明な水性で安定な溶液を生成させることができる。しかしながら、本発明は、水素化ホウ素ナトリウムの使用に限定されるものではなく、当業者に知られる、S−S単結合を解離させてSH結合を生成させる他の還元剤も、本方法に適したものとなろう。
【0027】
下記に例示する一実施例において、加水分解及び縮合触媒は、固体の強カチオン性加水分解及び縮合触媒を含む。アミノAMS化合物を生成する本方法においては、弱酸緩衝液を反応混合物中で使用して、アミノAMSの調製の間、アミン官能基を中和するので、固体の強カチオン性樹脂は、加水分解及び縮合触媒として機能することができる。弱酸緩衝液(AMS触媒ではない)は、安定化剤としても働くことができるので、水中のアミン塩がさらに縮合して、不溶性のゲル状構造体を生成することがない。本方法においては、固体の強カチオン触媒は、ろ過等により、沈殿物として容易に反応混合物から回収することができ、次の反応に再利用することができる。本方法の使用の利点は、回収したアミノAMS製品が、強酸触媒の残渣を含まないか、実質的に含まないことである。本方法は、さらに触媒のリサイクルのために、反応混合物から固体の強カチオン触媒を回収する工程を含むことができる。
【0028】
アミノAMSの生成に使用される固体の強カチオン性加水分解及び縮合触媒の好適なものとしては、市販の、不溶性重合体材料に結合したスルホン酸基を有するカチオン交換樹脂が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、これらの固体樹脂は、かなり低いpKa(<1.0)を呈する強カチオン交換剤である、Hカウンターイオンを含む。非限定的な実施例として、このようなカチオン交換樹脂は、約1パーセントから約8パーセントのジビニルベンゼンで架橋したポリスチレンをスルホン化(スルホン酸での処理)することによって調製できる。好適な市販の強カチオン交換樹脂の例としては、Amberlite IR-120、Amberlyst A-15、Purolite C-100、及び any of the Dowex(登録商標)50WXシリーズ樹脂の全てのHイオン型が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの樹脂は、通常は約400メッシュから約50メッシュの粒径を有するゲルビーズである。粒径は、本発明の本方法においては、さほど重要ではない。ポリマーストリップ、ポリマーメンブレン等(ただし、これらに限定されない)の他の種類の強カチオン用の固体担体についても言及し、これらも本発明の範囲内である。固体の強カチオン触媒は、アミノAMS接着剤またはアミノco−AMS接着剤を抽出した後、反応混合物からろ過等で単純に分離できるように、反応槽の底に沈殿(または沈下)するような、物理的形態であることが好ましい。
【0029】
一般的に、アミノco−AMS化合物を含む好適な接着剤は、アミノトリアルコキシシランを、例えば、メルカプトアルキル官能基を導入するためにメルカプトアルキルトリアルコキシシランと、または、ブロックメルカプトアルキル官能基を導入するためにブロックメルカプトアルキルトリアルコキシシランと、共加水分解及び共縮合させることで製造できる。他の形態においては、上記で引用する米国特許出願第11/387,569号に開示されるように、ブロック化剤は、縮合反応後のSH基を有するアミノAMS接着剤に結合させることができる。
【0030】
好適なアミノトリアルコキシシラン反応物の例としては、3−[N−(トリメトキシシリル)−プロピル]−エチレンジアミン、3−[N−(トリエトキシシリル)−プロピル]−エチレンジアミン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な硫黄含有トリアルコキシシランの例としては、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン、ブロックメルカプトアルキルトリアルコキシシラン、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、3−チオアシルプロピルトリアルコキシシラン、3−チオオクタノイルプロピルトリアルコキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本開示において使用される「ブロックメルカプトアルキルトリアルコキシシラン」との用語は、シリカ反応性メルカプトシラン部には影響を与えず、分子のメルカプト部分をブロックする(即ち、メルカプトの水素原子が、他の基(以降「ブロック基」と称する)で置換される)ブロック部を有する、メルカプトシランシリカカップリング剤として定義される。好適なブロックメルカプトシランとしては、米国特許第6,127,468号;第6,204,339号;6,528,673号;6,635,700号;6,649,684号;6,683,135号で開示されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、開示されている例については、これらの開示を参照して本明細書に取り込む。本開示の目的では、シリカ反応性「メルカプトシラン部」を、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランの分子量と等量の分子量と定義することである。脱ブロック化剤は、ゴムの配合中またはゴムの配合後(例えば、硬化中などの製造工程後段)に、シリカ−シラン反応の後で、加えることができ、メルカプトシランの硫黄原子を迅速にゴムに結合させることができる。脱ブロック化剤は、脱ブロック化を要するいかなる混合段階であっても、配合プロセスの間であれば、いつでも単独の成分として添加することができる。脱ブロック化剤の例は、当業者に周知である。
【0032】
本発明に係る接着剤においては、アミノAMS及び/またはアミノ/メルカプタンco−AMSは、2006年3月23日に出願された米国特許出願第11/387,569号に記載されているもの等のいかなるAMS及び/またはco−AMSとも組み合わせることができる。
【0033】
アミノAMSまたはアミノco−AMS接着剤のそれぞれの特徴は、反応性アルコキシシリル基の存在量が低レベルであり、製品の加水分解によって放出されるアルコール量がごく少量なことである。即ち、製品を実質全体的に酸加水分解で処理する際、zのアルコキシシリル基が、約0.05重量%〜約10重量%のアルコールしか生成しない。好適には、生成するアルコールの量は、約0.5重量%から約8重量%であり、さらに好適には、生成するアルコールの量は、約1重量%から約6重量%である。
【0034】
最終的なアミノAMS接着剤またはアミノco−AMS接着剤製品の、それぞれの反応性アミノアルコキシシリル残基の量は、Rubber Chemistry & Technology 75, 215 (2001)で発行された方法によって、製品から回収し得るアルコールの量によって計測することができる。端的にいうと、製品の試料を、シロキサン加水分解試薬(0.2N トルエンスルホン酸/0.24N 水/15% n−ブタノール/85% トルエン)を用いた全量酸加水分解によって処理する。この試薬は、エトキシシラン(EtOSi)残基またはメトキシシラン(MeOSi)残基と定量的に反応し、これにより、エタノールまたはメタノールの実質全量が解放され、ヘッドスペース/ガスクロマトグラフィー技術によって、計測され、試料の重量に対するパーセンテージで表示される。
【0035】
アミノAMS及び/またはアミノco−AMS製品は、ゴムに対する、優れた金属接着性と金属接着保持性を有する構造部材に使用する接着剤として、特に有用である。本発明は、加硫可能なゴムストックに埋め込まれたスチールを含むゴム複合体を包含し、前記スチールは、上記の方法に従って調製された、アミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロックメルカプタンco−AMS、及びこれらの混合物からなる群より選択されたアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)を含む接着剤のコーティングを有する。
【0036】
他の実施形態においては、加硫可能なゴムストックは、約0.5phrから約20phrのアミノAMS及び/またはアミノco−AMSを含むことができ、アミノAMS及び/またはアミノco−AMSは、配合の間に、特に、ベルトスキムストックに使用されるようなゴムストック(ただし、限定されない)に加えられる。次に、被覆されていない(接着剤を有さない)スチールを、ストック内に埋めこむことができる。下記の実施例に例示するように、このようなゴムストックは、アミノアルコキシ変性シルセスキオキサンを含有しない加硫ゴム組成物と比較して湿度老化の後の金属への接着性が向上していた。
【0037】
本発明の実施において、従来のスチールはいずれも使用できる。非限定的な例としては、低、中、及び高カーボングレードのスチールが挙げられる。低カーボンスチールが特に好ましい。ゴム複合体にスチールワイヤコードを使用する場合、ワイヤコードとしては、めっきされていないスチールコード、ブラスめっきスチールコード、亜鉛めっきスチールコード、青銅めっきスチールコード、少なくとも一部がブライトスチールであるめっきスチールコード、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。スチールワイヤコードは、ゴム工業の分野の通常の知識を有する者によく知られる通常の方法で、加硫可能なゴムストックに埋設することができる。特に、本発明の接着剤を使用する場合、金属のゴムへの接着を促進する特別な添加剤が必要とされないことが判明した。そのため、複合体に使用するゴムは、スチールへの接着性を促進する金属塩、錯体のような添加剤を実質的に含まないことが可能で、任意選択的にレゾルシノールを含まないことも可能である。
【0038】
金属製補強材を埋め込まれた空気入りタイヤに好適なゴムは、このようなタイヤの作製に適したゴムスキムストックとすることができる。しかしながら、本発明は、スキムストックに限定されるものではない。合成及び天然ゴムの両方を、本発明の加硫可能なゴム組成物中に使用してもよい。これらのゴムは、エラストマーと称してもよく、特に限定されるものではないが、天然または合成のポリ(イソプレン)(天然のポリイソプレンが好ましい)、ポリブタジエン及び共役ジエン単量体と1種以上のモノオレフィン単量体との共重合体等のエラストマー状のジエン重合体が挙げられる。好適なポリブタジエンゴムは、エラストマー状であり、約1〜3%の1,2−ビニル含量、約96〜98%のcis−1,4含量を有する。約12%以下の1,2−含量を有する他のブタジエンゴムも、他の成分の量を適宜調整するのに適しており、実質的には、いかなる高ビニルのエラストマー状ポリブタジエンも使用することができる。共重合体は、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン−(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,2−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン、及び前記ジエンの混合物から得られる。
【0039】
モノオレフィンの単量体としては、スチレン、アルファ−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等、及びこれらの混合物のようなビニル芳香族モノマーが挙げられる。共重合体は、共重合体の総重量に対して50重量%以下のモノオレフィンを含有していてもよい。好適な共重合体は、共役ジエン、特にはブタジエン、及びビニル芳香族炭化水素、特にはスチレンの共重合体である。好適には、ゴム配合物は、約35重量%以下、より好適には15〜25重量%のスチレンブタジエンランダム共重合体を含むことができる。
【0040】
上記の共役ジエンの共重合体と、その調製方法は、ゴム業界及び重合体業界においてよく知られている。重合体及び共重合体の多くは市販されている。本発明の実施は、上記に記載されるいかなるゴムにも限定されず、またいかなるゴムも除外しない。
【0041】
本発明の実施において使用されるゴム重合体は、100重量部の天然ゴムを含有していてもよく、また100重量部の合成ゴムを含有していてもよく、また、例えば75重量部の天然ゴムと25重量部のポリブタジエンのような天然ゴムと合成ゴムの混合物でもよい。しかしながら、重合体の種類は本発明の実施に際して限定されるものではない。
【0042】
接着剤を被覆したワイヤコードを含む、加硫可能なゴム組成物は、次いで通常のタイヤ製造技術に従って加工できる。同様に、タイヤは、標準的なゴム硬化技術を使って、最終的に製造される。ゴムの配合と、従来より使用されている添加剤についてのさらなる説明のためには、StevensのThe Compounding and Vulcanization of Rubber, Rubber Technology, Second Edition (1973 Van Nostrand Reibold Company)を参照でき、その開示を参照して本明細書に取り込む。補強されたゴム配合物は、約0.1から10phrの公知の加硫剤を使用して、従来からの方法で硬化できる。好適な加硫剤の一般的な開示としては、Kirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, 3rd ed., Wiley Interscience, N. Y. 1982, Vol. 20, pp. 365 to 468、特にはVulcanization Agents and Auxiliary Materials, pp. 390 to 402, 又は Vulcanization by A. Y. Coran, Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Second Edition (1989 John Wiley & Sons, Inc.) を参照することができ、両者の開示を参照して本明細書に取り込む。加硫剤は単独でも、組み合わせても使用できる。好適には、ゴム配合物は、硫黄で硬化される。硬化または架橋された重合体は、本開示の目的のために、加硫物とも称する。
【0043】
本発明の接着剤組成剤は、タイヤのトレッドストックへの利用を含めて、構造部材を形成するために利用される。空気入りタイヤは、米国特許第5,866,171号、5,876,527号、5,931,211号及び5,971,046号に開示された構造に従って、製造でき、それらの開示を参照して本明細書に取り込む。接着剤組成物は、特に限定されるものではないが、サブトレッド、サイドウォール、ボディプライスキム、ビードフィラーサイドウォール、エペックス、チェーファー、サイドウォールインサート、ワイヤーコート、インナーライナー等の他のエラストマー状のタイヤ部品の形成にも使用できる。
【実施例】
【0044】
下記の実施例は、硬化ゴムに対する金属の接着性及び接着保持性を向上させるアミノAMSおよびアミノco−AMS接着剤を含む、代表的なアミノAMSとアミノco−AMS製品の製造方法を例示するものである。しかしながら、実施例は、特に限定的なものではなく、他のアミノAMS及びアミノco−AMS製品及び接着剤を、記載の方法で調製してもよい。さらに、この方法は例示に過ぎず、他の反応物を用いた製品を製造する方法は、本願の明細書及び請求項に記載の発明の範囲から離れることなく、当業者によって選択し得る。
【0045】
<実施例1:3−アミノプロピルAMS塩酸塩の調製>
1Lのフラスコに、300mLの純エタノール、24.42gの3−アミノプロピルトリエトキシシラン(110ミリモル)、21.6mLの12N塩酸(259ミリモルの酸と900ミリモルの水)、及び16.6mLの水(920ミリモル)を加えた。溶液は、撹拌によりすぐに濁ったが、室温で3日間静置することで、粘稠な半結晶性の物質が生成した。デカンテーションにより溶媒を除き、窒素パージにより、残りの溶媒を除き、真空乾燥をすることで、16.28gの白色結晶の塩酸塩を得た。理論上の収量(TY)は、16.13gであった。固体は、約120mLの蒸留水に容易に溶解して、149.69gの透明な溶液が生成し、該溶液は、全部で約10.8%の固体を含み、密度は1.035g/mLであった。この溶液は、計算上のAMS濃度が、シリコーンで0.761Nであった。pHは約1.0であった。水酸化ナトリウム標準液による滴定により、この溶液は0.0045Nの遊離塩酸を有することが示された。
【0046】
<実施例2:3−メルカプトプロピル及び3−アミノプロピルのco−AMS塩酸塩を45:55の割合で含むco−AMSの調製>
アルコキシシラン成分を23.35gの3−アミノプロピルトリエトキシシラン(105.2ミリモル)及び16.27gの3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(84.6ミリモル)とした点を除き、実施例1と同様の手順を用いた。初期に濁った溶液が生成し、18時間たっても変化はなかった。この溶液を窒素パージしながら50℃〜60℃に加熱することで、溶媒のほとんどを除去し、白色のワックス状の固体を得たが、この固体は、真空乾燥下でも特に変化しなかった。約100mLの水を加えることで、少し濁った溶液が生成し、少量の固体(0.56g)が取り除かれた。130.72gの溶液は、さらに静置しても変化しなかった。この溶液の密度は1.061g/mLで、co−AMSの計算上の濃度は1.44Nであった。これは、総固体量が19.4%であることを示す。滴定により、0.800Nの遊離塩酸が存在することが示された。
【0047】
<実施例3:3−オクタノイルチオ−1−プロピル及び3−アミノプロピルのco−AMS塩酸塩を31:69の割合で含むco−AMSの調製>
アルコキシシラン成分を28.6gの3−アミノプロピルトリエトキシシラン(129.2ミリモル)及び21.44gの3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン(NXTTM)(58.8ミリモル)とした点を除き、実施例1と同様の手順を用いた。初期に濁った溶液が生成し、18時間たっても変化はなかった。この溶液を窒素パージしながら50℃〜60℃に加熱することで、溶媒のほとんどが除去され、白色のワックス状の固体が得られ、これを真空乾燥することで33.68gの白色結晶粉が得られた。撹拌可能な混合物を生成させるのに、約200mLの水を添加する必要があった。一晩の撹拌により少し濁った液体溶液が得られた。285.9gの溶液は、さらに静置しても変化せず、この溶液の密度は1.029g/mLで、co−AMSの計算上の濃度は0.47Nであった。これは、製品の理論上の収量に基づいて、総固体量が8.19%であることを示す。滴定により、0.022Nの遊離塩酸が存在することが示された。
【0048】
<実施例4:AMS及びco−AMS化合物の、ゴムへのワイヤ接着のための適用>
浸漬法を採用して、市販のブラスめっきまたは亜鉛めっきスチールワイヤコードを、実施例1及び2で調製されたAMS及びco−AMS溶液で被覆した。7本のワイヤからなる長さ360mmのワイヤコードを数本、AMSまたはco−AMS溶液で途中まで満たされた、直径10mm、高さ380mmの試験用チューブにそれぞれ配置した。浸漬時間は5分間を目標とした;しかしながら、実施例1〜3に示したように、溶液中に存在する遊離塩酸の量により、浸漬時間は30秒未満としたが、これは、水素の発泡及び発生により、ワイヤ上を酸が攻撃していたことが判明したためである。この浸漬の後、全てのワイヤコードをチューブより取り出し、余分な溶液は清浄な布で拭き取り、ワイヤコードを清浄なアルミニウムトレイ内に置いた。被覆されたワイヤコードを入れたトレイを100℃の乾熱機内で20分間乾燥させ、試験用パッドの調製の前に、残った水分を全て除去した。
【0049】
試験用パッド調製に使用されたスチールコードスキム配合物は、表1に示すように、高濃度の硫黄、樹脂およびコバルトを含有する試験用ベルトスキム配合物である。
【0050】
【表1】

レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂
** コバルトボロ−ネオデカノエート
*** ヘキサメトキシメチルメラミン
【0051】
前記のスキムストックの処方は、本発明の実施の評価を可能とするためのみに提示するものである。本発明は、この特定の処方に限定されるものではない。さらに、本発明では、下記により完全に詳細を説明するように、コバルト、高濃度硫黄、及び樹脂(これらに限定されない)のようなゴム結合性材料を含有しないスキムストックにも使用できる。
【0052】
ブラスめっきスチールワイヤコードは、63%の銅と37%の亜鉛からなるコーティングを具えていた。亜鉛めっきスチールワイヤコードは、100%亜鉛からなるコーティングを具えていた。上記に示したように、試験に使用しためっきスチールコードの具体的な構造は、2本のワイヤのストランドが7本のストランドで囲繞され、さらに7本のストランドが1本のストランドで束ねられたものである。この配置または形式は、一般的には7/2+1(7 over 2 plus 1)スチールコード形式と称されている。この形式のブラスめっき及び/または亜鉛めっきワイヤコードは、本発明を限定するものではなく、他の形式のブラス−または亜鉛−めっきスチールコードも適用可能である。
【0053】
スキムゴム配合物は、AMSで被覆若しくはco−AMSで被覆したブラスめっきワイヤコード(それぞれ試料3及び5)、またはAMSで被覆若しくはco−AMSで被覆した亜鉛めっきワイヤコード(それぞれ試料2及び4)、またはコントロールとしての未処理のブラスまたは亜鉛めっきワイヤコード(それぞれ試料1及び2)の周りで成形し、次に、試験用パッドを149℃で40分間硬化させた。
【0054】
試験には、深さ4.0mm、幅39mm、長さ200mmのキャビティを有するクリッカー機を用いて、標準的な方法により調製されたT−接着パッドを使用した。成形用の溝幅は、1又は1.5mmとした。試験用パッドは、それが導入された成形型で直接形成した。パッドの形成の間、成形型は室温に置いた。35mm×191mmに予め切り取られたマイラーフィルムを、成形型の各キャビティに設置した。スチールコード試料を、成形型のキャビティの9つの溝のそれぞれに配置した。ワイヤ位置固定用のばねのコイルの間に試料を挟み、キャビティの底部にまっすぐに配置されるように引っ張った。予め切り取られたゴムスキム配合物片をキャビティに配置する前に、ゴム片の一方の側からポリエチレンフィルムを取り除いた。配合物をキャビティ中に軽く押しつけた。次いで、残りのプラスチックフィルムを除いた。約305mm×305mmの支持用織物シート(正方形の織布)をパッド上に配置し、パッドの上に軽く押しつけた。形成の後、パッドを2時間以内で硬化させた。
【0055】
試料用パッドを硬化させるために、成形型と、硬化押圧盤の中央に置かれた組立品との上に、トッププレートを配置した。硬化後、各パッドからマイラーフィルムを剥がし、試験用パッドを成形型から取り出した後、少なくとも24時間室温で平衡化させた。例示したT−接着パッドの調製方法は、本発明の特徴を限定するものではなく、特に制限なく、このようなパッドを調製するための他の公知の方法をいずれも使用できる。
【0056】
コードのゴムへの接着性(CRA)を、埋め込まれたワイヤコード試料のそれぞれについて評価した。モデル1130インストロン・ユニバーサル・テスターで、クロスヘッド速度25.4cm/分、110℃の条件で、引き抜き力を計測した。T−接着パッドは、試験の前に、110℃のオーブンで20分間の予熱を行った。加硫ゴムスキムストックから金属製補強材を引き離す、または取り外すのに必要な力は、kg/cmで表示され、次いで、金属製補強材の表面上に残存するゴムスキムストックの割合が得られる。金属製補強材の表面上に残存するゴムスキムストックの量は、目視試験で決定し、%ゴム被覆率の形で報告する。特に、引き抜き後の3つのワイヤコードのそれぞれの上に残存するゴムの被覆率は、次の被覆率ランキングで視覚的にランク付けした。
【0057】
被覆率ランキング
100% A
75%〜100% B
50%〜75% C
25%〜50% D
0%〜25% E
【0058】
試験の結果を表2に示す。コードのゴムへの接着性(CRA)の試験及び観察の結果は、AMS処理またはco−AMS処理を行ったブラスめっきワイヤコード(試料3及び5)にかかる引き抜き力は、未処理ブラスめっきワイヤコード(試料1)のそれの約50%〜約30%であった。理論に拘束されるものではないが、ゴムのブラスめっきワイヤコードへの接着性は、大部分機械的であり、ブラスめっき上に形成された硫化銅によりワイヤが浸食され、ワイヤ表面が粗面となり、ゴムがその凹凸に流れ込み、浸出することで、コードとの物理的結合が生じるので、この発見は、それほど意外なものではない。同じく、理論に拘束されるものではないが、ブラスめっきワイヤのAMSまたはco−AMS接着剤によるコーティングが、コード表面をAMSで覆ってしまい、ゴムとコードの接触を阻害し、前記の物理的結合を妨害したと考えられる。また、実施例1〜2からの希釈されていないAMS溶液は、乾燥させたときに、コードの個々のワイヤの間に目に見えて厚いコーティングを生じ、これもまた、成形中にゴムスキムストックがワイヤ周辺に浸透し、被覆するのを妨害した。ゴムのブラスめっきワイヤコードへの接着性の減少は、被覆率ランキングの結果にも反映され、未処理のブラスめっきコントロールが、引き抜きにおいて、最も高い残存ゴム被覆率を示した。
【0059】
未処理のブラスめっきワイヤコードとは対照的に、未処理の亜鉛めっき(コントロール)ワイヤコードは、それほどゴム表面ストックへの接着性を示さないが、これは、ワイヤコード表面上の、凹凸への浸透が形成されないからである。コントロール試料2によって示されるように、未処理の亜鉛めっきワイヤコードに必要とされる引き抜き力は、ゼロに近い値となり、コードに吸着したゴムの残存は、0〜25%(被覆率ランキングE)であった。しかしながら、意外なことに、AMSまたはco−AMS接着剤溶液(それぞれ試料4及び6)で塗装した亜鉛めっきワイヤにおいては、未処理の亜鉛めっきワイヤコード(試料2)と比較して、引き抜き力が約660%増加していた。
【0060】
【表2】

【0061】
<実施例5:DBUを触媒とした、アミノ/メルカプトco−AMSの調製>
塩酸を用いて調製されたアミノ/メルカプト官能化co−AMSの水性溶液を使用すると、スチールコードのゴムへの接着性が良好なものとなるが、長期使用を阻害する副反応が生じ得る。第1の副反応は、低速のゲル生成であるが、これは、接着剤を蒸留水で希釈する際に、pHが6.2以上となると生じる。この問題を解決するために、酢酸緩衝液を使用し、希釈及び経時変化でのpHの上昇を防いだ。第2の副反応は、少し濁ったAMSの生成であり、酸の代わりにアミンを触媒として使用する際に生じる。作製した溶液の濁りは、アミンで触媒されたco−AMS製品に少量の水素化ホウ素ナトリウムを加えることで解消した。その結果、アミノ/メルカプトco−AMSの透明な水性で安定な溶液が形成された。しかしながら、本発明は、水素化ウ素ナトリウムの使用に限定されるものではなく、当業者に知られる、S−S単結合を解離させてSH結合を生成させる他の適当な還元剤も、本方法に適したものとなろう。
【0062】
実施例5及び実施例6は、酢酸緩衝液と、水素化ホウ素ナトリウムの使用について実証している。
【0063】
500mLの三角フラスコに34.21g(155ミリモル)の3−アミノプロピルトリエトキシシラン、12.25g(62ミリモル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(28.8モル%)及び241.65g(308mL)の純エタノールを加えた。次いで、この混合物に、30.1g(1.66モル)の水に溶解させた3.86g(25ミリモル)の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)触媒を加えた。得られた透明の溶液は、30分以内に少し濁った。24時間後、濁りの微増はあったものの、層分離は生じなかった。生成物の理論上の収量は、24.97gであった。
【0064】
このco−AMS溶液(試料A、152.2g)の約半量を、4.51gの酢酸ナトリウムと4.1gの酢酸から調製した、250mLの酢酸ナトリウム/酢酸水性緩衝液に添加した。添加により、pHは、約3.0から9.0まで変化した。2.12gの酢酸を加え、pHを5.7に調製した。0.72gの酢酸を追加して、最終的なpHを5.0とした。この溶液を約80℃まで加熱することで、エタノールを除去し、総容積を209mL(AMS 5.9重量%水溶液)まで減少させた。同様に、残りの約半分のco−AMS溶液(試料B)も、2.58gの酢酸を追加した同じ酢酸緩衝液で中和し、pHを5.8とした。濁りは、ろ過、または水素化ホウ素ナトリウムで除去することはできなかった。試料A及びBの両方を、pHに顕著な変化が生じないよう、0.75重量%と同程度に少量の蒸留水(pH7.2)で希釈した。希釈した溶液は、静置しても、その透明性または粘度に変化は生じなかった。
【0065】
<実施例6:DBUを触媒とし、水素化ホウ素ナトリウムを添加した、アミノ/メルカプトco−AMSの調製>
500mLの三角フラスコに32.98g(149ミリモル)の3−アミノプロピルトリエトキシシラン、12.73g(65ミリモル)の3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(30.2モル%)及び241.68g(308mL)の純エタノールを加えた。次いで、この混合物に、32.15g(1.77モル)の水に溶解させた3.79g(25ミリモル)のDBU触媒と、10gの水に溶解させた0.20gの水素化ホウ素ナトリウムを加えた。透明な溶液を66時間撹拌したが、溶液に濁りは生じなかった。この溶液の半量(165.9g)を、実施例5に記載した酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液に4.47gの酢酸を追加した溶液に加え、実施例5に示したように、加熱してエタノールを除去することにより、得られた透明の溶液を濃縮し、5.9重量%、pH5.9の安定した水性のアミノ/メルカプトco−AMSを21.3g得た。濃縮手順の間、pHは4.8まで低下した(溶液C)。残りも同様に処理して、pH5.5、6.6重量%の溶液を得、183.3gまで減少させたとき、pHは5.0であった(溶液D)。試料C及びDは、いずれも、蒸留水で希釈しても透明なままであり、濁りもゲルも生じなかった。
【0066】
<実施例7:40.3% アミノ/メルカプトco−AMS水性溶液の調製>
5.3g(23.9ミリモル)の3−[N−(トリメトキシシリル)−プロピル]−エチレンジアミン、3.97g(20.2ミリモル)の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)を、38gの純エタノール、5.74g(315.7ミリモル)の水及び0.40g(2.60ミリモル)のDBU触媒の入った500mLの三角フラスコに添加して、co−AMSを調製した。透明の溶液を17時間室温で静置した後、59gの水と3.92g(65.7ミリモル)の酢酸を添加した。pHの測定値は6.2であった。1時間、窒素パージしながら70℃〜80℃で加熱することで、エタノールを除去した。総量50.31gの溶液が得られた。54.56gの水で希釈し、pH6.2、濃度5.6%のアミノ/メルカプトco−AMS溶液を得た。co−AMS理論上の収量は5.87gであった。この溶液は、水で所望の濃度まで希釈することにより、接着性の試験に利用した。
【0067】
<実施例8:熱及び湿度老化の有無における、ゴムの亜鉛めっきスチールワイヤコードへの接着剤としてのアミノ/メルカプトco−AMSの試験>
浸漬法(実施例4に記載)を使用して、7本のワイヤからなる長さ360mmのワイヤコードを数本、溶液で途中まで満たされた、直径10mm、高さ380mmの試験用チューブにそれぞれ配置して、実施例7で調製したアミノ/メルカプトco−AMSで亜鉛めっきワイヤコードを被覆した。5分間の浸漬の後、全てのワイヤコードをチューブより取り出し、空気乾燥させ、清浄なアルミニウムトレイ内に置いた。アミノ/メルカプトco−AMSで被覆されたワイヤコードを入れたトレイを、100℃から160℃の熱風乾燥機内で20分間乾燥させ、残った水分を全て除去し、フィルム形成を促進させるために、co−AMSを格子状に再配置した。
【0068】
下記の表3に列挙された試料は、実施例7に従って調製された試料であり、使用した蒸留水(使用した場合)の体積及びアミノ/メルカプトco−AMS(AM-AMS)の体積も列挙されている。試験用パッドは、実施例4に従って製造したスキムゴム配合物を用い、アミノ/メルカプトco−AMSで被覆された亜鉛めっきスチールワイヤコード(試料7〜12)、被覆されていない亜鉛めっきコントロールワイヤコード、及び被覆されていないブラスめっきコントロールワイヤコードを用いてそれぞれ調製した。149℃で40分間処理してパッドを硬化させた。
【0069】
硬化した試験用パッドのいくつかを、温度45℃、相対湿度95%の条件下で14日間曝露して、アミノ/メルカプトco−AMSで被覆されたワイヤコードのゴムへの接着性の熱及び水分による老化の影響を調査した。
【0070】
3本のワイヤコードの、それぞれの引き抜き力及び被覆率ランキングは、表3に列挙した通りである。
【0071】
コードのゴムへの接着性(CRA)試験の結果及び観察結果によると、老化させていない(成形したばかりの)co−AMS被覆亜鉛コードの引き抜き力は、固形分が2.8%以下の全ての溶液に関して、被覆されていないブラスめっきワイヤコードの約33〜約46倍であった。最も強い引き抜き力を呈したのは、相対湿度95%、45℃の条件で14日間置かれた後の、アミノ/メルカプトco−AMS被覆亜鉛コードであった。これらの希釈液では、接着性の平均低下は、たった25%であった。対照的に、相対湿度95%、50℃の条件で14日間置かれた後の、未被覆のブラスめっきコードにおいて、63%の接着力の低下がみられた。試料7(5.6%溶液より調製した試料)の目視観察では、成形中のスキムストックの浸透が妨げられる、コード間の接着剤層が見られた。
【0072】
【表3】

* 相対湿度
【0073】
<実施例9:有機カルボン酸で中和された水性溶液としての、40.3%アミノ/メルカプトco−AMSの調製>
5.3g(23.9ミリモル)の3−[N−(トリメトキシシリル)−プロピル]−エチレンジアミン、3.97g(20.2ミリモル)の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)を、38gの純エタノール、5.74g(315.7ミリモル)の水及び0.40g(2.60ミリモル)のDBU触媒の入った500mLの三角フラスコに添加して、co−AMSを調製した。この溶液の遊離したメタノールの量を計測することにより、出発物質のシロキサンにおいて、潜在的に存在するアルコールのほぼすべてが、反応の最初の5〜30分間で遊離することが分かった。透明な溶液を15〜24時間室温で静置した後、59gの水と、等量(65.7ミリモル)の有機カルボン酸を、下記の表4に示した、5種の試料(試料13〜17)のそれぞれに添加した。pHの測定値は6.5より低かった。エタノール及び副生物のメタノールを、1時間、窒素パージしながら70℃〜80℃で加熱して除去した。これを水で希釈して、pH6.5未満の5.6%アミノ/メルカプトAMS溶液を調製し、VOCを含まない溶液を得た。アミノ/メルカプトco−AMSの予測される収量は、5.87gであり、これをもとに、調製した溶液の濃度を計算し、次に使用する浸漬溶液調製のための蒸留水での希釈率に利用した。これらの溶液は、水で所望の濃度まで希釈することにより、接着性の試験に利用した(表5を参照のこと)。
【0074】
表4は、反応混合物及び生成したアミノ/メルカプトco−AMSの5.6%水性溶液中の溶解度に加え、試料番号、使用した有機カルボン酸の種類と重量を示している。
【0075】
【表4】

【0076】
<実施例10:アミノ/メルカプトAMSの、ゴムの亜鉛めっきスチールワイヤコードへの接着剤としての試験>
実施例4に記載の浸漬法を使用し、7本のワイヤからなる長さ360mmのワイヤコードを数本、溶液で途中まで満たされた、直径10mm、高さ380mmの試験用チューブにそれぞれ配置して、実施例9で調製したアミノ/メルカプトAMSで亜鉛めっきワイヤコードを被覆した。5分間の浸漬の後、全てのワイヤコードをチューブより取り出し、余分な液の拭き取り等をせずに空気乾燥させ、清浄なアルミニウムトレイ内に置いた。アミノ/メルカプトco−AMSで被覆されたワイヤコードを入れたトレイを、100℃〜160℃の熱風乾燥機内で10〜20分間乾燥させ、残った水分を全て除去し、co−AMSを再配置し、フィルムを形成しやすくした。
【0077】
試験用パッドは、実施例4の試験用スキムゴム配合物、アミノ/メルカプトAMSで被覆された亜鉛めっきスチールワイヤコード及び被覆されていないブラスめっきコントロールワイヤコードを用いて調製した。149℃で40分間、パッドを硬化した。
【0078】
調製した試験用パッドのいくつかを、温度45℃、相対湿度95℃に曝露し、アミノ/メルカプトco−AMS(AM−AMS)で被覆されたワイヤコードのゴムへの接着性の熱及び水分による老化の影響を調査した。
【0079】
表5は、試験用パッドに埋め込まれたアミノ/メルカプトAMS被覆亜鉛めっきスチールワイヤコードの5つの試験例(18A,B〜22A,B)のCRA試験の結果を示しており、これらの試験において、アミノ/メルカプトAMS処理溶液は、水で予め希釈して、1.4%の固体(A)または0.7%の固体(B)をそれぞれ含むようにした。アミノ/メルカプトAMS溶液を中和した有機カルボン酸の種類、及び得られた溶液のpHとともに、各試料のアミノ/メルカプトAMS中のメルカプトプロピル部分の量のパーセンテージも表示する。
【0080】
CRA試験の結果と観察結果は、アミノ/メルカプトAMS被覆亜鉛めっきワイヤコードにかかる引き抜き力が、全ての種類の溶液について、未処理の亜鉛めっきワイヤコードの約33〜約46倍であったことを示している。予測した通り、未処理の亜鉛めっきワイヤコードにかかる引き抜き力は、未処理のブラスめっきワイヤコードのコントロールのそれを100%とすると、約6%にすぎなかった。最も強い引き抜き力は、湿度95%、温度50℃の条件で14日間老化させた後のアミノ/メルカプトAMS被覆亜鉛めっきワイヤコードで観測された。例示された希釈液において、平均引き抜き力は25%ほど増加し、必要な力は、老化後の未処理のブラスめっきワイヤコードより56%高いものとなった。対照的に、同様の老化条件で、未処理のブラスめっきコードにおいては、老化前のブラスめっきコントロールと比較して、引き抜き力は60%減少していた。
【0081】
全てのケースにおいて、AM−AMS処理亜鉛めっきコード試料の老化後の接着力(引き抜き力)は、未処理の亜鉛めっきコントロール試料の老化後と比較して、56%大きな値となった。さらに、試料19,20及び22は、AM−AMS接着剤の水性溶液がより希釈される程、成形後の接着性が顕著に向上したことを示した。
【0082】
処理済み試料の被覆率ランキングは、老化前後にかかわらず、上記の観測された引き抜き力を裏付けるものである。
【0083】
<実施例11:有機カルボン酸で中和する強カチオン性樹脂触媒によるアミノ/メルカプトco−AMSの調製。特には、Dowex 50WX2-10OE 強カチオン性樹脂触媒を使用した、30モル%のメルカプトプロピルシランでのco−AMSの調製>
強カチオン性樹脂触媒を用いて、アミノアルキレンシラン、メルカプトプロピルシラン、及び弱カルボン酸を含有するco−AMSを調製した。co−AMS製品は、ろ過により不溶性カチオン性樹脂を除いた、アルコール−水溶液として得た。メルカプトアルキレンシランを、アミノアルキレンシランを有するco−AMSとして使用する場合は、希釈水溶液を、金属の被覆のために、及び、ゴムへの接着剤として使用した。反応後、回収した強カチオン性樹脂触媒は、次の合成反応で再使用可能であった。
【0084】
250mLの三角フラスコに、15.76g(71.0ミリモル)の3−[N−(トリメトキシシリル)−プロピル]−エチレンジアミン、5.97g(30.4ミリモル)の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、77.95g(101.9mL)の純エタノール、8.68g(65.1ミリモル)の酢酸(1.07当量/アミン)及び11.97g(664ミリモル)の蒸留水を加えた。この溶液に、水で洗浄後に乾燥させたDowex 50WX2-100E (酸7.07ミリモル)強カチオン性ポリスチレン樹脂(TGAで15.9%の水分を含む、2%ジビニルベンゼンで架橋したもの、100メッシュの抽出粒子)1.75gを加えた。
【0085】
【表5】

【0086】
24時間撹拌した後の溶液は透明なままであり、中度焼結ガラスフィルターを通したろ過により、Dowex樹脂を分離した。24.00g(塩に基づいて102%)の粘着性で粘稠なオイルを乾燥させた後、加熱と窒素パージによって溶媒を蒸発させ、アセテートとしての生成物を回収した。回収したDowex樹脂は、総重量で1.89gであり、樹脂の総回収量に対して、22.1%の水を含んでいた。アミノ/メルカプトco−AMSの潜在的なアルコール濃度は、約3%と計測された。
【0087】
総量50mLの23.3重量%co−AMS水溶液を調製した。この溶液は、pH6.0に調製された状態で、透明かつ安定であった。この溶液を、ブラスめっきスチールワイヤ上に接着性コーティングを形成するための希釈溶液調製用の濃縮物として使用した。
【0088】
<実施例12:Dowex 50WX2-100E 強カチオン性樹脂触媒を使用した、33モル%のメルカプトプロピルシランを有するアミノ/メルカプトco−AMSの調製>
2リットルの三角フラスコに、116.08g(522.0ミリモル)の3−[N−(トリメトキシシリル)−プロピル]−エチレンジアミン、49.93g(254.3ミリモル)の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、400.93g(508.1mL)の純エタノール、129.64g(1.062モル)の安息香酸(1.02当量/アミン)及び18.32g(酸74.01ミリモル)の水洗後に乾燥させたDowex 50WX2-100E 強カチオン性ポリスチレン樹脂(2%のジビニルベンゼンで架橋したもの、100メッシュ粒子)を加えた。
【0089】
この懸濁液に、118.09g(6.55モル)の蒸留水を加えて24時間撹拌したところ、懸濁した触媒由来の若干の濁りを有する、透明な溶液となった。Dowex樹脂を、中度焼結ガラスフィルターを通したろ過により分離した。窒素パージしながら、70℃〜85℃に加熱して溶媒を蒸発させ、次いで60℃、0.1mmHgの条件での真空乾燥を行い、安息香酸塩として生成物を得た。
【0090】
ガラス状生成物の重量は、245.15gであった。1.3%の過剰な安息香酸と微量の水の存在があったため、安息香酸塩の真の収量は、239.8gであった。回収したDowex樹脂は、その総重量が20.56gであり、樹脂の総回収量に対して、22.1%の水を含んでいた。この回収した触媒は、次の調製に使用した。生成物について、潜在的なアルコールを計測したところ、1.38%の使用可能なエタノールが検出された。約0.1gの生成物を含有する25mLの水性溶液のpHは5.08であった。
【0091】
この調製液(EX1)を、実施例15及び16で、ベルトスキムゴムストックの調製における配合添加剤として使用した。
【0092】
<実施例13:カーボンブラック(CB)で支持されたアミノ/メルカプトco−AMSの調製>
生成物からDowex樹脂をろ過した後、241.94gのN326カーボンブラックを400mLのエタノールに懸濁させた液を加えた以外は、実施例12と同様にして、アミノ/メルカプトco−AMSを調製した。次いで、生成物を上記のように乾燥させ、約50%のCBに担持されたアミノ/メルカプトco−AMS生成物を得た。pHは5.82であり、潜在的なアルコールは1.42%であった。
【0093】
この調製液(EX2)を、実施例16で、ベルトスキムゴムストックの調製における配合添加剤として使用した。
【0094】
<実施例14:アミノ/ブロックメルカプトco−AMSの調製>
90.53g(248.3ミリモル)のS−(オクタノイル)メルカプトプロピルトリエトキシシラン(NXTTM)を3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの代わりに使用した以外は、実施例12と同様にして、アミノ/メルカプトco−AMSを調製した。総量729.49gのガラス状生成物を得、上記の方法で計測した生成物のpHは6.03、潜在的なエタノールの含量は0.43%であった。
【0095】
この調製液(EX3)を、実施例16で、ベルトスキムゴムストックの調製における配合添加剤として使用した。
【0096】
<実施例15:添加剤としてアミノ/メルカプトco−AMSを使用した、被覆されていない亜鉛めっきスチールワイヤコードが埋め込まれた、ベルトスキムストック用のゴム配合物の調製及び特性>
実施例12のEX1とラベルされたアミノ/メルカプトco−AMSを、シリカ(8.0phrまたは6.0phr)と組み合わせたカーボンブラック(30phr)を補強性充填剤として含有するゴム組成物中への添加剤として使用して、EX4、EX5、EX6及びEX7とラベルされた、ベルトスキムゴム配合物を表6に示すように調製した。使用したシリカは、CiptaneTM LP、または有機的に変性されたシリカ(AgilonTM 400, PPG Industries, Pittsburgh, PA)である。
【0097】
ゴムストックの物理的特性を、標準的な試験方法で計測し、表7に示した。
【0098】
実施例4に示したように、被覆されていない亜鉛めっきスチールワイヤコードをベルトスキムストックから調製した試験用パッド内に埋め込んだ。調製した試験用パッドのうちのいくつかを、温度167°F、相対湿度95%の条件下で2日間曝露し、熱及び水分による老化が、未処理のワイヤコードの、実施例12のアミノ/メルカプトco−AMSを含有するゴムへの接着性に与える影響を調査した。
【0099】
湿度で老化させた試験試料EX5及びEX7の硬化ゴム接着性(CRA)を、老化させていないコントロール試料EX4及びEX6のCRAと、それぞれ比較した。驚くべきことに、2日間の湿度老化の後、EX5及びEX7のCRAが向上していた。EX4とEX6が示すように、実施例12のアミノメルカプトco−AMS(EX1)を含有しないベルトスキムゴムにおいて、CRAは通常、老化により低下することから、この結果は、驚くべきものである。
【0100】
【表6】

【0101】
【表7】

【0102】
<実施例16:添加剤としてアミノ/メルカプトco−AMSを使用した、被覆されていない亜鉛めっきスチールワイヤコードが埋め込まれた、ベルトスキムストック用のゴム配合物の調製及び特性>
実施例12(EX1)、実施例13(EX2)及び実施例14(EX3)のアミノ/メルカプトco−AMSを、シリカ(8.0phr)と組み合わせたカーボンブラック(30phr)を補強性充填剤として含有するゴム組成物中への添加剤として使用して、EX8、EX9、EX10及びEX11(コントロール、アミノメルカプトco−AMSを含まない)とラベルされたベルトスキムゴム配合物を表8に示すように調製した。ゴムストックの物理的特性を表9に示す通り、標準的な試験方法で測定した。
【0103】
実施例4に示したように、被覆されていない亜鉛めっきスチールワイヤコードをベルトスキムストックから調製された試験用パッド内に埋め込んだ。調製した試験用パッドのうちのいくつかを、温度167°F、相対湿度95%の条件下で2日間曝露し、熱及び水分による老化が、未処理のワイヤコードの、アミノ/メルカプトco−AMSを含有するゴムへの接着性に与える影響を調査した。
【0104】
湿度で老化させた試験試料の硬化ゴム接着性(CRA)を、対応する老化させていないコントロール試料のCRAと比較した。試験例EX8、EX9及びEX10の湿度老化後の接着性の低下は、非常に緩やかなものであった。しかしながら、コントロールストック(EX11)の接着性試験の平均力は、初期接着性の25%に低下していた。
【0105】
【表8】

【0106】
【表9】

【0107】
本文において、本発明は、好適な実施例を参照して開示されているが、開示された形式に限定されないものと理解されるべきである。逆に、本発明は、請求項で示された範囲内における、あらゆる変形例及び代替形式をも包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化中のゴムのスチールへの接着性を向上させるスチール被覆用接着剤であって、
前記接着剤は、アミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロックメルカプタンco−AMS、及びこれらの弱酸で中和された固体またはその水性溶液、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含み、式:
【化1】

[式中、w、x、y及びzはモル分率を示し、zはゼロではなく、w、xまたはyのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつw+x+y+z=1.00であり;
、R、R及びRのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつRZからなる群より選択され(ここで、ZはNH、HNR及びNRからなる群より選ばれる)、
残りのR、R、R及びRは同一であるか、異なっており、(i)Hまたは1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基、(iv)RX(ここで、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン、エポキシド、アミノ基、ビニル基、アクリレート、メタクリレートからなる群より選ばれ、aは1〜約8である)、(v)RYRX(ここで、YはO、S、NH及びNRよりなる群より選ばれる)からなる群から選択され、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキレン基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキレン基、及び単結合からなる群より選ばれ、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基及び7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群より選ばれる]で表わされるアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)を含む、接着剤。
【請求項2】
前記接着剤が、約6.5〜約4.0のpHを有する弱酸で中和した水性溶液中にある、請求項1記載の接着剤。
【請求項3】
アミノAMSが、水、アルコール、炭化水素、クロロカーボン、エステル、エーテル、及びこれらの混合物からなる群より選択された、アミノAMS用の溶剤を含む溶液中にあり、前記溶液が約0.01%〜約98%のアミノAMSを含む、請求項1記載の接着剤。
【請求項4】
加硫可能なゴムストック中に埋め込まれたスチール含むゴム複合体であって、
前記スチールは、アミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロックメルカプタンco−AMS及びこれらの混合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含み、式:
【化2】

[式中、w、x、y及びzはモル分率を示し、zはゼロではなく、w、xまたはyのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつw+x+y+z=1.00であり;
、R、R及びRのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつRZからなる群より選択され(ここで、ZはNH、HNR及びNRからなる群より選ばれる)、
残りのR、R、R及びRは同一であるか、異なっており、(i)Hまたは1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基、(iv)RX(ここで、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン、エポキシド、アミノ基、ビニル基、アクリレート、メタクリレートからなる群より選ばれ、aは1〜約8である)、(v)RYRX(ここで、YはO、S、NH及びNRよりなる群より選ばれる)からなる群から選択され、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキレン基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキレン基、及び単結合からなる群より選ばれ、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基及び7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群より選ばれる]で表わされるアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)の溶液を含む接着剤のコーティングを具える、ゴム複合体。
【請求項5】
スチールワイヤコードを含み、向上した金属接着性及び金属接着持続性を有する加硫ゴム複合体を含む、空気入りタイヤ用の構造部材であり、
前記の向上は、スチールワイヤコード上の接着剤コーティングを包含し、
前記接着剤は、アミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロックメルカプタンco−AMS、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含み、式:
【化3】

[式中、w、x、y及びzはモル分率を示し、zはゼロではなく、w、xまたはyのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつw+x+y+z=1.00であり;
、R、R及びRのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつRZからなる群より選択され(ここで、ZはNH、HNR及びNRからなる群より選ばれる)、
残りのR、R、R及びRは同一であるか、異なっており、(i)Hまたは1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基、(iv)RX(ここで、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン、エポキシド、アミノ基、ビニル基、アクリレート、メタクリレートからなる群より選ばれ、aは1〜約8である)、(v)RYRX(ここで、YはO、S、NH及びNRよりなる群より選ばれる)からなる群から選択され、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキレン基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキレン基、及び単結合からなる群より選ばれ、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基及び7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群より選ばれる]で表わされるアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)を含む、構造部材。
【請求項6】
前記スチールワイヤコードが、めっきされていないスチールコード、ブラスめっきスチールコード、亜鉛めっきスチールコード、青銅めっきスチールコード、少なくとも一部がブライトスチールであるめっきスチールコード、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項5記載の構造部材。
【請求項7】
スチールワイヤコードを含み、向上した金属接着性及び金属接着持続性を有する加硫ゴム複合体を含む構造部材を具える、空気入りタイヤであって、
前記の向上は、スチールワイヤコード上の接着剤コーティングを包含し、
前記接着剤は、アミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロックメルカプタンco−AMS、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含み、式:
【化4】

[式中、w、x、y及びzはモル分率を示し、zはゼロではなく、w、xまたはyのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつw+x+y+z=1.00であり;
、R、R及びRのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつRZからなる群より選択され(ここで、ZはNH、HNR及びNRからなる群より選ばれる)、
残りのR、R、R及びRは同一であるか、異なっており、(i)Hまたは1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基、(iv)RX(ここで、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン、エポキシド、アミノ基、ビニル基、アクリレート、メタクリレートからなる群より選ばれ、aは1〜約8である)、(v)RYRX(ここで、YはO、S、NH及びNRよりなる群より選ばれる)からなる群から選択され、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキレン基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキレン基、及び単結合からなる群より選ばれ、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基及び7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群より選ばれる]で表わされるアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)を含む、空気入りタイヤ。
【請求項8】
硬化中のゴムのスチールへの接着性を向上させるスチール被覆用接着剤の製造方法であって、
前記接着剤は、アミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロックメルカプタンco−AMS、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含むアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)を含み、
ここで、w、x、y及びzはモル分率を示し、zはゼロではなく、w、xまたはyのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつw+x+y+z=1.00であり;
、R、R及びRのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつRZからなる群より選択され(ここで、ZはNH、HNR及びNRからなる群より選ばれる)、
残りのR、R、R及びRは同一であるか、異なっており、(i)Hまたは1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基、(iv)RX(ここで、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン、エポキシド、アミノ基、ビニル基、アクリレート、メタクリレートからなる群より選ばれ、aは1〜約8である)、(v)RYRX(ここで、YはO、S、NH及びNRよりなる群より選ばれる)からなる群から選択され、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキレン基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキレン基、及び単結合からなる群より選ばれ、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基及び7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群より選ばれ、
前記方法は、
(a)反応混合物として、
(i)水、
(ii)水に対する溶剤、
(iii)加水分解及び縮合触媒、
(iv)任意の弱酸、
(v)アミノトリアルコキシシラン、及び
(vi)メルカプトアルキルトリアルコキシシラン、ブロックメルカプトアルキルトリアルコキシシラン及びこれらの混合物からなる群からの任意の選択物、を組み合わせる工程;
(b)反応混合物を約0.5時間〜約200時間反応させて、アミノアルコキシシラン変性シルセスキオキサンを生成させる工程;
(c)アミノアルコキシシラン変性シルセスキオキサンを反応混合物から回収する工程;及び
(d)約0.01%〜約98%のアミノAMSを含有する、アミノAMSの溶剤溶液を形成する工程、
を含む方法。
【請求項9】
前記反応混合物が、アミノトリアルコキシシランと、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン、ブロックメルカプトアルキルトリアルコキシシラン、及びこれらの混合物からなる群より選ばれた選択物とを含有する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記の加水分解及び縮合触媒が、強酸、強塩基、強有機酸、強有機塩基、固体強カチオン性樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項22記載の方法。
【請求項11】
スチールが埋め込まれた加硫ゴム組成物であって、
また、前記組成物は、アミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロックメルカプタンco−AMS、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含み、式:
【化5】

[式中、w、x、y及びzはモル分率を示し、zはゼロではなく、w、xまたはyのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつw+x+y+z=1.00であり;
、R、R及びRのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつRZからなる群より選択され(ここで、ZはNH、HNR及びNRからなる群より選ばれる)、
残りのR、R、R及びRは同一であるか、異なっており、(i)Hまたは1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基、(iv)RX(ここで、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン、エポキシド、アミノ基、ビニル基、アクリレート、メタクリレートからなる群より選ばれ、aは1〜約8である)、(v)RYRX(ここで、YはO、S、NH及びNRよりなる群より選ばれる)からなる群から選択され、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキレン基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキレン基、及び単結合からなる群より選ばれ、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基及び7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群より選ばれる]で表わされるアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)を含む、加硫ゴム組成物。
【請求項12】
被覆されていないスチールが埋め込まれており、湿度老化後に向上した金属接着性及び金属接着保持性を呈する加硫ゴム組成物を含む構造部材を具える、空気入りタイヤであって、
前記加硫ゴム組成物が、アミノAMS、アミノ/メルカプタンco−AMS、アミノ/ブロックメルカプタンco−AMS、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含み、式:
【化6】

[式中、w、x、y及びzはモル分率を示し、zはゼロではなく、w、xまたはyのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつw+x+y+z=1.00であり;
、R、R及びRのうち少なくとも1つは必ず存在し、かつRZからなる群より選択され(ここで、ZはNH、HNR及びNRからなる群より選ばれる)、
残りのR、R、R及びRは同一であるか、異なっており、(i)Hまたは1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、(ii)3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基、(iii)7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基、(iv)RX(ここで、XはCl、Br、SH、S、NR、OR、COH、SCOR、CO、OH、オレフィン、エポキシド、アミノ基、ビニル基、アクリレート、メタクリレートからなる群より選ばれ、aは1〜約8である)、(v)RYRX(ここで、YはO、S、NH及びNRよりなる群より選ばれる)、からなる群から選択され、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキレン基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキレン基、及び単結合からなる群より選ばれ、
及びRは、1〜約20の炭素原子を有するアルキル基、3〜約20の炭素原子を有するシクロアルキル基及び7〜約20の炭素原子を有するアルキルアリール基からなる群より選ばれる]で表わされるアミノアルコキシ変性シルセスキオキサン(AMS)を含む、空気入りタイヤ。

【公表番号】特表2012−514116(P2012−514116A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544559(P2011−544559)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/069587
【国際公開番号】WO2010/078251
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】