説明

硬化可能な反応性樹脂系

二成分系材料として加工することができ、樹脂成分(A)、硬化剤(B)ならびに樹脂成分(A)中に分散されたポリマー粒子(C)を含有する、硬化可能な反応性樹脂系が記載されており、この場合ポリマー粒子(C)は、反応性樹脂系中に25質量%を上廻り50質量%までの割合で含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化可能な反応性樹脂系および独立請求項の上位概念に記載の前記反応性樹脂系の使用に関する。
【0002】
従来技術
化学反応によって硬化する樹脂を基礎とする系は、工業的構造部材および構成成分の製造の際に大きな役を演じる。この種の反応性樹脂系を絶縁材の目的に使用する場合には、前記の反応性樹脂系は、通常、高い充填剤含量を有する。高い充填剤含量は、硬化された反応性樹脂系の高い熱的安定性および機械的安定性を生じる。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10345139号明細書A1の記載から、エポキシ樹脂を基礎とする、この種の反応性樹脂系は、公知である。前記の反応性樹脂系は、90質量%までの充填物含量を有する。高い充填物含量は、前記ドイツ連邦共和国特許出願公開明細書中に記載された系では実現不可能である。それというのも、前記系は、それ以外に注型材料の粘度または加工可能性に対する不利な作用を生じるからである。勿論、高い充填剤含量は、材料の流動能または延伸能に対して負荷を生じる。
【0004】
発明の開示
本発明は、同時に良好な破断時の伸びの際に高い熱的安定性を有し、それにも拘わらず良好に加工することができる、硬化可能な反応性樹脂系を準備するという課題を基礎とする。
【0005】
本発明の基礎となる課題は、本発明によれば、反応性樹脂系を準備することによって解決され、この場合この反応性樹脂系は、中間成分系として使用可能であり、および反応性樹脂の樹脂成分中に分散されたポリマー粒子の高い割合を有する。反応性樹脂系は、加工中に良好な流動能を有し、硬化された状態で高い熱的安定性および電気的絶縁能を有する。
【0006】
従属請求項に記載された手段によれば、本発明による反応性樹脂系の好ましい他の形成も可能である。
【0007】
即ち、反応性樹脂系は、ポリマー粒子として特に表面変性されたシリコーンエラストマー粒子を有し、反応性樹脂系の樹脂マトリックスに対する良好な結合を保証する。シリコーンエラストマー粒子を使用する特殊な利点は、このシリコーンエラストマー粒子の添加が概して前記系のガラス転移温度に対する僅かな影響を有するにすぎないが、しかし、同時に熱的安定性または電気的絶縁破壊の強さ(elektrische Durchschlagfestigkeit)は、上昇される。更に、シリコーンエラストマー粒子は、揮発性でないのが好ましい。
【0008】
1つの特に好ましい実施態様において、反応性樹脂系は、樹脂成分としてエポキシドを、場合によってはビスフェノールA、ビスフェノールBおよび/またはビスフェノールFとの混合物で有する。生じる樹脂系は、高い架橋度、ひいては機械的安定性を硬化された状態で有する。
【0009】
実施例
本発明による反応性樹脂系は、3つの基本成分、即ち樹脂成分A、硬化剤Bおよび樹脂成分A中に分散されているポリマー粒子Cを有する。更に、充填剤Dならびに通常に添加剤、例えば消泡剤、沈降抑制剤および付着助剤が含有されていてよい。
【0010】
樹脂成分Aとして、原則的に多数のモノマーの架橋可能な化合物、またはこの種の化合物の混合物を使用することができる。特に好ましいのは、少なくとも1つのエポキシ官能基を有する化合物を、場合によってはエポキシ官能基を有するかまたは有しない別の化合物との混合物で使用することである。即ち、例えばジエポキシド、トリエポキシドまたはテトラエポキシドが適しており、この場合には、次に記載された、商業的に入手可能な化合物が例示的に記載されている。環状脂肪族の特に環状エポキシ化されたジエポキシド、例えば(I)および(VI)は、特に好適であることが判明した。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
樹脂成分Aは、1つ以上の化合物(I)〜(VII)ならびに他の樹脂成分を含むことができる。他の選択可能な方法によるか、または付加的に、例えばビスフェノールA、ビスフェノールBおよび/またはビスフェノールFを基礎とする樹脂成分、PURまたはシアネートエステルは、単独で使用されてもよいし、互いの混合物または適当なエポキシ樹脂成分との混合物で使用されてもよい。
【0014】
更に、樹脂成分Aとしてノボラックエポキシ樹脂、殊に次の組成のクレゾールノボラックエポキシ樹脂を使用する可能性が存在する:
【化3】

【0015】
樹脂成分Aは、反応性樹脂系中に5〜65質量%、特に10〜50質量%、殊に15〜40質量%含有されている。
【0016】
反応性樹脂系が中間生成物系として加工可能であることを保証するために、さらに硬化剤Bが設けられている。このために、例えば無水物、例えばヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPSA)、ヘキサヒドロメチルフタル酸無水物(MHHPSA)、メチルナディク酸無水物(MNSA)または相応するアミンが適している。
【0017】
更に、反応性樹脂系は、樹脂成分A中に分散されたポリマー粒子Cを第3の成分として含有する。これは、殊にポリシロキサン含有ポリマーであり、この場合成分Cは、特に樹脂成分A中の1つ以上のシリコーンの分散液を表わす。好ましくは、シリコーン粒子は、10nm〜100μmの粒径を有するシリコーン樹脂粒子またはシリコーンエラストマー粒子の形で使用される。シリコーン粒子は、原則的に化学的に変性された表面を、例えばPMMAからなるポリマー層の形で有するが(所謂、コアシェル粒子);しかし、表面官能化されたシリコーン粒子は、本発明の基礎となる課題の設定に良好に適していることが判明した。他の選択可能な方法によれば、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)からなるシリコーンブロックコポリマーまたはエラストマー粒子が同様に適している。
【0018】
反応性樹脂系は、例えば25質量%を上廻り50質量%まで、特に25質量%を上廻り40質量%まで、殊に25質量%を上廻り30質量%までのポリマー粒子Cを含有する。
【0019】
反応性樹脂系は、特に僅かな割合の鉱物性充填剤Dを含有し、この鉱物性充填剤の適当な選択は、硬化された状態での反応性樹脂系の萎縮を減少させることができ、および熱的安定性または反応性樹脂系の亀裂強度を硬化された状態で上昇させる。充填剤Dは、例えばナノ粒子の形で形成されており、この場合ナノ粒子は、1つの粒子画分であり、この粒子画分の平均粒度分布d50は、ナノメートル範囲内で移動する。充填剤材料としては、例えば酸化アルミニウム、白亜、炭化珪素、窒化硼素、カーボンブラックまたはタルクが適している。特に、充填剤Dは、石英粉または石英素材またはこれらの混合物からなる粒子を有する。
【0020】
反応性樹脂系中の全体の充填剤の割合は、例えば10質量%未満、特に7質量%未満、殊に5質量%未満である。反応性樹脂系は、鉱物性充填剤を省略して実施されてもよい。
【0021】
本発明による反応性樹脂系は、含浸樹脂ならびに注型材料として使用されてよい。例えば、電気的コイルを含浸するための含浸樹脂としての加工の場合、相応するコイルは、回転運動され、液状の含浸樹脂中に浸漬されるか、または液状含浸樹脂は、回転するコイル上に滴下される。含浸されたコイルは、例えば熱的に硬化されるか、またはUV支持された架橋により硬化される。
【0022】
反応性樹脂系を注型材料として使用する場合には、1つの成形部材への注型は、よりいっそう高い温度で行なわれる。反応性樹脂系は、相応する加熱の際に、不利な幾何学的形状、例えば300μm未満の直径を有する注型間隙に注型の際に流し込むことができるように僅かな粘度および高い毛管作用を有する。
【0023】
次に、反応性樹脂系またはその組成(質量%で)および生じる特性プロフィールの実施例は、硬化された状態で例示的に実施される。
【0024】
組成:
【表1】

【0025】
上記の組成は、次の特性プロフィールを生じる:
【表2】

【0026】
反応性樹脂系は、熱安定性のために硬化された状態でなかんずく、少なくとも一時的に160〜220℃の温度に晒される構造部材に適している。
【0027】
即ち、本発明による反応性樹脂系は、注型材料として、例えば高電圧アクチュエーターまたは類似の電気的構造部材もしくは電子的構造部材の注型に使用されることができる。更に、電気的コイルは、反応性樹脂系で含浸されてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二成分系材料として加工することができ、樹脂成分(A)、硬化剤(B)ならびに樹脂成分(A)中に分散されたポリマー粒子(C)を含有する、硬化可能な反応性樹脂系、殊に注型材料、ラミネート樹脂または含浸樹脂であって、ポリマー粒子(C)が反応性樹脂系中に25質量%を上廻り50質量%までの割合で含有されている、前記の硬化可能な反応性樹脂系、殊に注型材料、ラミネート樹脂または含浸樹脂。
【請求項2】
ポリマー粒子(C)が表面変性されている、請求項1記載の反応性樹脂系。
【請求項3】
ポリマー粒子(C)がコアシェル粒子として形成されている、請求項1または2記載の反応性樹脂系。
【請求項4】
樹脂成分(A)中に分散されたポリマー粒子(C)がシリコーンエラストマー粒子である、請求項1から3までのいずれか1項記載の反応性樹脂系。
【請求項5】
シリコーンエラストマー粒子が10nm〜100μmの粒径を有する、請求項4記載の反応性樹脂系。
【請求項6】
樹脂成分(A)がエポキシ樹脂を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の反応性樹脂系。
【請求項7】
エポキシ樹脂が一官能価ないし多官能価のエポキシドを基礎とする樹脂である、請求項6記載の反応性樹脂系。
【請求項8】
樹脂成分(A)がビスフェノールA、ビスフェノールBおよび/またはビスフェノールFを基礎とする樹脂を含有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の反応性樹脂系。
【請求項9】
電気的コイルを含浸するための請求項1から8までのいずれか1項に記載の反応性樹脂系の使用。
【請求項10】
高電圧アクチュエーターを注型するための請求項1から8までのいずれか1項に記載の反応性樹脂系の使用。

【公表番号】特表2011−511854(P2011−511854A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542549(P2010−542549)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066204
【国際公開番号】WO2009/089957
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】