説明

硬化性組成物、インク組成物及びインクジェット記録方法

【課題】放射線の照射に対して高感度で硬化し、高強度な皮膜形成が可能な硬化性組成物、放射線の照射に対して高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができ、被記録媒体への密着性が優れ、特にインクジェット記録用に好適なインク組成物、及び、該インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】(A)アダマンタン骨格を有するビニルエーテル化合物、(B)放射線の照射により酸を発生する化合物、及び、好ましくは、さらに、(C)前記(A)成分とは構造の異なるカチオン重合性化合物、を含有する硬化性組成物である。(A)アダマンタン骨格を有するビニルエーテル化合物においては、アダマンタン骨格の3級炭素に1つ又は2つのビニルオキシ基が直接結合している態様が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、塗料、及び接着剤、等に好適に用いられる硬化性組成物、該硬化性組成物を含みインクジェット記録用として好適に用いられるインク組成物、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。なかでも、インクジェット方式は、安価な装置で実施可能であり、且つ、必要とされる画像部のみにインクを射出して被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
インクジェット方式によれば、普通紙のみならずプラスチックシート、金属板など非吸水性の被記録媒体にも印字可能であるが、印字する際の高速化及び高画質化が重要な課題となっており、印字後の液滴の乾燥、硬化に要する時間が、印刷物の生産性や印字画像の鮮鋭度に大きく影響する性質を有している。
【0003】
インクジェット方式の一つとして、放射線の照射により、硬化可能なインクジェット記録用インクを用いた記録方式がある。この方法によれば、インク射出後直ちに又は一定の時間後に放射線照射し、インク液滴を硬化させることで、印字の生産性が向上し、鮮鋭な画像を形成することができる。
紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インクの高感度化を達成することにより、放射線に対し高い硬化性が付与され、インクジェット記録の生産性向上、消費電力低減、放射線発生器への負荷軽減による高寿命化、不充分硬化に基づく低分子物質の揮発発生の防止など、多くの利益が生じる。また、高感度化は、特にインクジェット記録用インクにより形成された画像の強度を向上させることになる。
【0004】
このような放射線、例えば、紫外線による硬化型インクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い被記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつあり、ラジカル重合を利用したインクジェット用紫外線硬化型インク組成物が開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。また、インクジェット記録方法にて通常直接記録することが困難な支持体に対しても、滲みがなく、高感度で、被記録媒体への密着性が高い画像が記録可能で、かつ皮膚刺激性や感作性の少ない安全性が高いインクジェット記録用インクを提供すること等を目的として、特定のラジカル重合型アクリレート化合物群からなる重合性化合物と色材とを含有する組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。これらのラジカル重合型インクは、硬化速度に優れ、滲みのない画像を形成しうるものの、硬化時の体積収縮により、被記録媒体との密着性が低下するという問題を有していた。
【0005】
このため、被記録媒体への密着性を向上させる目的で、紫外線硬化時の収縮率が小さいカチオン重合型インク組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。但し、これらカチオン重合型インクは、経時で発生した酸に基づく反応により、保存時の安定性が充分ではなく、実用化には大きな障害となっていた。このため、保存安定性を改良する試みとして、塩基性化合物や熱塩基発生剤を添加する技術が提案されている(例えば、特許文献5参照。)が、塩基性化合物が露光により発生した酸の機能を阻害するためにインクの硬化感度が低下するという新たな問題が発生することがわかった。また、硬化感度を向上する施策としては、オキセタン環を有する化合物とオキシラン環を有する化合物を併用することによる改良が提案されている(例えば、特許文献6、7)。但し、インクジェット記録に必要な組成物の物性や吐出適性が充分ではなく、実用上の障害となっていた。
【0006】
以上のように、UV硬化型のインク組成物などに適用でき、放射線の照射に対する高感度と高強度な皮膜形成性を有する硬化性組成物は、未だ提供されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平3−216379号公報
【特許文献2】特開平5−214280号公報
【特許文献3】特開2003−192944公報
【特許文献4】特開平9−183928号公報
【特許文献5】特開2003−341217公報
【特許文献6】特開平5−223820号公報
【特許文献7】特開2002−188025公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、放射線の照射に対して高感度で硬化し、高強度な皮膜形成が可能な硬化性組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、放射線の照射に対して高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができ、被記録媒体への密着性が優れ、特にインクジェット記録用に好適なインク組成物、及び、該インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討の結果、アダマンタン骨格を有する化合物を用いることにより前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の構成は以下の通りである。
<1> (A)アダマンタン骨格を有するビニルエーテル化合物、及び、(B)放射線の照射により酸を発生する化合物、を含有する硬化性組成物。
<2> さらに、(C)前記(A)成分とは構造の異なるカチオン重合性化合物を含有する<1>記載の硬化性組成物。
<3> <1>又は<2>に記載の硬化性組成物を含むことを特徴とするインク組成物。
<4> さらに、着色剤を含有する<3>に記載のインク組成物。
<5> インクジェット記録用である<3>又は<4>に記載のインク組成物。
<6> (a)被記録媒体上に、<5>に記載のインク組成物を吐出する工程、及び(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【0009】
本発明の硬化性組成物は、UV硬化型インク等のインク組成物、塗料、接着剤等の他、レジスト、カラーフィルター、光ディスクなどの光造形材料として有用である。
特に、本発明の硬化性組成物は、インクジェット用インク組成物として好適に用いることができ、かかるインク組成物は、紫外線等の放射線により高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができることから、被記録媒体への密着性にも優れたインク組成物である。更には、保存安定性をも発揮しうる。
また、インクジェット記録方法を適用することで、非吸収性の被記録媒体上にインク組成物を射出した場合においても、高感度で硬化し、強度の高い画像部領域をデジタルデータに基づき直接形成しうる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、放射線の照射に対して高感度で硬化し、高強度な皮膜形成が可能な硬化性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、放射線の照射に対して高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができ、被記録媒体への密着性が優れ、特にインクジェット記録用に好適なインク組成物、及び該インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、(A)アダマンタン骨格を有するビニルエーテル化合物(以下、適宜「特定ビニルエーテル化合物」と称する。)、(B)放射線の照射により酸を発生する化合物、及び、好ましくは、さらに(C)前記(A)成分とは構造の異なるカチオン重合性化合物を含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の硬化性組成物は、放射線の照射により硬化可能な組成物である。
本発明で言う「放射線」とは、その照射により組成物中において開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点からは、紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。従って、本発明の硬化性組成物としては、放射線として、紫外線を照射することにより硬化可能な硬化性組成物であることが好ましい。
【0013】
本発明の硬化性組成物の特に好適な態様は、当該硬化性組成物を含んでなるインク組成物である。以下では、本発明の硬化性組成物の説明として、インク組成物(本発明のインク組成物)の構成を例として説明を行うが、当然のことながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
〔(A)アダマンタン骨格を有するビニルエーテル化合物(特定ビニルエーテル化合物)〕
本発明に係る(A)特定ビニルエーテル化合物について説明する。
(A)特定ビニルエーテル化合物は、アダマンタン骨格を含む部分構造と、少なくとも1つのビニルエーテル構造とを分子内に有する化合物である。
本発明に好適な(A)特定ビニルエーテル化合物として、下記一般式(I)で表される化合物を挙げることができる。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(I)において、R〜R16はそれぞれ独立に水素原子または一価の有機基を表し、これらのうち少なくとも1つはビニルオキシ基(−O−CH=CH)またはビニルオキシ基を置換基として有する1価の有機基である。
即ち、(A)特定ビニルエーテル化合物は上記一般式(I)の少なくとも1つがビニルオキシ基(−O−CH=CH)またはビニルオキシ基を置換基として有する一価の有機基となることにより、アダマンタン骨格を含む部分構造とビニルオキシ基(−O−CH=CH)によりビニルエーテル構造を有する化合物となる。
(A)特定ビニルエーテル化合物に含まれるビニルオキシ基は少なくとも1つあればよいが、好ましくは1分子中に1〜4含まれることが好ましく、1又は2含まれることがより好ましく、1つ又は2つのビニルオキシ基がアダマンタン骨格の3級炭素に直接結合している態様が最も好ましい。
【0017】
一般式(I)において、R〜R16で表される一価の有機基としては、ビニルオキシ基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、炭素数6〜10のアリールオキシ基などが挙げられる。
〜R16で表される1価の有機基には、ビニルエーテル基や、それ以外の有機基を置換基として有していてもよく、導入可能な好ましい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0018】
一般式(I)において、R〜Rの少なくとも1つは1価の有機基であることが好ましく、この位置のいずれかに、アダマンタン骨格に直接、或いは、所定の連結基を介してビニルオキシ基を有することが好ましい態様である。R〜Rで表される好ましい有機基としては、ビニルオキシ基、ビニルオキシ基を有する有機基に加えて、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基が挙げられ、ビニルエーテル基または炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、ここでアルキル基の場合は更にビニルオキシ基で置換されていることが好ましい。即ち、アダマンタン骨格のR〜Rのいずれかの位置に、直接、又は、炭素数1〜4のアルキレン基を介してビニルオキシ基が結合されてビニルエーテル構造を形成している態様がより好ましく、このいずれかの位置にビニルオキシ基が直接結合している態様が更に好ましい。
また、R〜Rのうち1つ又は2つが1価の有機基であり、2つ又は3つが水素原子である構造を有するものが好ましく、R〜Rのうち1つが、ビニルオキシ基或いはビニルオキシ基を含む1価の有機基であり、残余の3つが水素原子であるものがより好ましい。
【0019】
一般式(I)においては、R〜R16のすべてが水素原子であることが好ましいが、R〜R16が1価の有機基である場合は、炭素数1〜4のアルキル基、又は、アシルオキシ基であることが好ましい。
〜R16が1価の有機基である場合は、さらにビニルオキシ基以外の有機基で置換されていても良く、好ましい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(I)で表される化合物のより好ましい態様として、前記一般式(I)におけるR〜R16のすべてが水素原子である、下記一般式(II)で表される構造の化合物が挙げられる。
【0020】
【化2】

【0021】
一般式(II)中、R〜Rは一般式(I)におけるのと同義であり、好ましい態様もまた同様である。一般式(II)においては、R〜Rの少なくとも1つがビニルオキシ基を含むものであり、R〜Rのうち1つ又は2つがビニルオキシ基またはビニルオキシメチル基であり、残余が水素原子であることが好ましい。
【0022】
以下、本発明に係る特定ビニルエーテル化合物の代表的な具体例〔例示化合物(A−1)〜(A−10)〕を挙げるが、本発明はこれらの具体例に何ら限定されるものではない。
【0023】
【化3】

【0024】
上記のように、ビニルオキシ基は、アダマンタン骨格に直接結合していてもよく〔例えば、(A−1)〜(A−3)、(A−6),(A−7),(A−9)及び(A−10)〕、アルキレン基やオキシアルキレン基を介して結合してもよいが〔例えば、(A−4),(A−5)、(A−8)〕、組成物の硬化性の観点からは、直接結合しているものが好ましい。
上記例示化合物のなかでも、製造適性や原材料入手が容易であるという観点から、(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−9)が好ましく、(A−1)、(A−2)がより好ましい。
【0025】
(A)特定ビニルエーテル化合物は、J.Am.Chem.Soc.124巻8号1590〜1591頁(2002年)や、J.Org.Chem.68巻13号5225〜5227頁(2003年)等の文献に記載の公知の合成方法にて調整可能であるが、合成方法はこれらに限定されるものではない。
【0026】
(A)特定ビニルエーテル化合物の含有量は、本発明の硬化性組成物を構成する全固形分に対し、1〜70質量%が好ましく、2〜50質量%がより好ましく、5〜40質量%が更に好ましい。
【0027】
〔(C)(A)成分とは構造の異なるカチオン重合性化合物〕
本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記(A)特定ビニルエーテル化合物に加えて、以下に詳述する(A)とは構造の異なる(C)カチオン重合性化合物〔以下、適宜、(C)他のカチオン重合性化合物と称する〕を併用することが好ましい。
本発明おいては、硬化性組成物の硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点から、(A)特定ビニルエーテル化合物とともに、以下に説明するような、エポキシ化合物及びオキセタン化合物から選ばれる少なくとも1種の(C)他のカチオン重合性化合物を併用することが好ましく、なかでも、本願の前記(A)特定ビニルエーテル化合物とともに、オキセタン化合物、エポキシ化合物のごとき開環重合する構造を有する重合性化合物を含むことが、硬化膜の収縮抑制の観点からより好ましい。
【0028】
本発明に併用しうる(C)他のカチオン重合性化合物は、後述する、放射線の照射により酸を発生する化合物から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。
カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、オキセタン化合物、及び、本発明における(A)特定ビニルエーテル化合物とは構造の異なる、即ち、分子内にアダマンタン骨格を有しない、ビニルエーテル化合物などが挙げられる。
【0029】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、及び、芳香族エポキシドなどが挙げられる。
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0030】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0031】
本発明に用いることのできる単官能及び多官能のエポキシ化合物を詳しく例示する。
単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0032】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0033】
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0034】
ビニルエーテル化合物としては、分子内にアダマンタン骨格を有しない化合物であって、ビニルエーテル基を分子内に1以上有するもの、具体的には、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0035】
以下に、単官能ビニルエーテルと多官能ビニルエーテルを詳しく例示する。
単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0036】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0037】
本発明に併用できるオキセタン化合物としては、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。本発明の硬化性組成物に併用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、インク組成物等に適用した場合において、硬化後の組成物と被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0038】
本発明に併用される分子内に1〜2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(1)〜(3)で示される化合物等が挙げられる。
【0039】
【化4】

【0040】
上記式(1)〜(3)中、Ra1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、エチル基が好ましい。フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
a2は、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられ、芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が、アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。また、Ra2は置換基を有していてもよく、置換基としては、1〜6のアルキル基、フッ素原子が挙げられる。
【0041】
a3は、線状又は分枝状アルキレン基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基又はカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0042】
【化5】

【0043】
a3が上記多価基である場合、Ra4は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。
a5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32、又は、C(CH32を表す。
a6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又は、アリール基を表し、nは0〜2,000の整数である。Ra7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。下記式中、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基であり、mは0〜100の整数である。
【0044】
【化6】

【0045】
式(1)で表される化合物として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(OXT−212:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)が挙げられる。式(2)で表される化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(OXT−121:東亞合成(株)が挙げられる。また、式(3)で表される化合物としては、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221:東亞合成(株))が挙げられる。
【0046】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0047】
【化7】

【0048】
式(4)において、Ra1は、前記式(1)におけるのと同義である。また、多価連結基であるRa9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0049】
【化8】

【0050】
上記Aにおいて、Ra10はメチル基、エチル基又はプロピル基を表す。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
【0051】
また、本発明に好適に使用しうるオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0052】
【化9】

【0053】
式(5)において、Ra1及びRa8は前記式におけるのと同義である。Ra11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0054】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落番号〔0021〕ないし〔0084〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
特開2004−91556号公報に記載されたオキセタン化合物も本発明に併用することができる。当該化合物は、同公報の段落番号[0022]ないし[0058]に詳細に記載されている。
本発明に併用される他のオキセタン化合物のなかでも、組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
【0055】
なかでも、(C)他のカチオン重合性化合物として、エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物を併用することが硬化時の収縮性や硬化速度の観点から好ましく、脂環式エポキシ化合物とオキセタン化合物を併用することがより好ましい。
本発明において(A)特定ビニルエーテル化合物と(C)他のカチオン重合性化合物が併用される際の、(A)特定ビニルエーテル化合物と(C)他のカチオン重合性化合物との含有比としては、質量比で、10:1〜10:100が好ましく、10:3〜10:80がより好ましく、10:5〜10:60がさらに好ましい。
また、硬化性組成物中の重合性化合物の総量、即ち、(A)特定ビニルエーテル化合物及び(C)他のカチオン重合性化合物の総量は、硬化性や硬化後の膜物性の観点から、30〜100質量%の範囲であることが好ましく、50〜95質量%の範囲であることがより好ましい。
【0056】
〔(B)放射線の照射により酸を発生する化合物〕
本発明の硬化性組成物は、放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」とも称する。)を含有する。本発明においては、放射線の照射により発生した酸により、前記した重合性化合物の重合反応が生起し、硬化する。
本発明のインク組成物に用いることのできる光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を適宜選択して使用することができる。
【0057】
このような光酸発生剤としては、放射線の照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。
【0058】
また、その他の本発明に用いられる活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal etal,Polymer,21,423(1980)等に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、同 Re 27,992号、特開平3−140140号等に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker etal,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen etal,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055 号、同4,069,056号等に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello etal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、同第339,049号、同第410,201号、特開平2−150848号、特開平2−296514号等に記載のヨードニウム塩、
【0059】
J.V.Crivello etal,Polymer J.17,73 (1985)、J.V.Crivello etal.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt etal,J.PolymerSci.,PolymerChem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello etal,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivelloetal,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivelloetal,J.PolymerSci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第3,902,114号、同4,933,377号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号、特開平7−28237号、同8−27102号等に記載のスルホニウム塩、
【0060】
J.V.Crivello etal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello etal,J.PolymerSci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)等に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen etal,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、米国特許第3,905,815号、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号等に記載の有機ハロゲン化合物、K.Meier et al,J.Rad.Curing,13(4),26(1986)、T.P.Gill et al,Inorg.Chem.,19,3007(1980)、D.Astruc,Acc.Chem.Res.,19(12),377(1986)、特開平2−161445号等に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、
【0061】
S.Hayase etal,J.Polymer Sci.,25,753(1987)、E.Reichmanis etal,J.Pholymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,23,1(1985)、Q.Q.Zhu etal,J.Photochem.,36,85,39,317(1987)、B.Amit etal,Tetrahedron Lett.,(24)2205(1973)、D.H.R.Barton etal,J.Chem.Soc.,3571(1965)、P.M.Collins et al,J.Chem.Soc.,Perkin I,1695(1975)、M.Rudinstein etal,Tetrahedron Lett.,(17),1445(1975)、J.W.Walker etal,J.Am.Chem.Soc.,110,7170(1988)、S.C.Busman etal,J.Imaging Technol.,11(4),191(1985)、H.M.Houlihan etal,Macormolecules,21,2001(1988)、P.M.Collins etal,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,532(1972)、S.Hayase etal,Macromolecules,18,1799(1985)、E.Reichmanis etal,J.Electrochem.Soc.,Solid State Sci.Technol.,130(6)、F.M.Houlihan etal,Macromolcules,21,2001(1988)、 欧州特許第0290,750号、同046,083号、同156,535号、同271,851号、同0,388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号等に記載のO−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、
【0062】
M.TUNOOKA etal,Polymer Preprints Japan,35(8)、G.Berner etal,J.Rad.Curing,13(4)、W.J.Mijs etal,Coating Technol.,55(697),45(1983),Akzo、H.Adachi etal,Polymer Preprints,Japan,37(3)、欧州特許第0199,672号、同84515号、同044,115号、同第618,564号、同0101,122号、米国特許第4,371,605号、同4,431,774号、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特開平3−140109号等に記載のイミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61−166544号、特開平2−71270号等に記載のジスルホン化合物、特開平3−103854号、同3−103856号、同4−210960号等に記載のジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0063】
また、これらの光により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、M.E.Woodhouse et al,J.Am.Chem.Soc.,104,5586(1982)、S.P.Pappas et al,J.Imaging Sci.,30(5),218(1986)、S.Kondo etal,Makromol.Chem.,Rapid Commun.,9,625(1988)、Y.Yamada etal,Makromol.Chem.,152,153,163(1972)、J.V.Crivello et al,J.PolymerSci.,Polymer Chem.Ed.,17,3845(1979)、米国特許第3,849,137号、独国特許第3,914,407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。たとえば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0064】
さらにV.N.R.Pillai,Synthesis,(1),1(1980)、A.Abad etal,Tetrahedron Lett.,(47)4555(1971)、D.H.R.Barton et al,J.Chem.Soc.,(C),329(1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0065】
本発明に用いることができる光酸発生剤として好ましい化合物として、下記式(b1)、(b2)、(b3)で表される化合物を挙げることができる。
【0066】
【化10】

【0067】
式(b1)において、R201、R202及びR203は、各々独立に有機基を表す。
-は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4-、PF6-、SbF6-や以下に示す基などが挙げられ、好ましくはBF4-、PF6-、SbF6等のフッ素原子を有するアニオンである。
【0068】
【化11】

【0069】
なお、式(b1)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、式(b1)で表される化合物のR201〜R203のうち少なくともひとつが、式(b1)で表される他の化合物におけるR201〜R203の少なくともひとつと直接、又は、連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0070】
更に好ましい(b1)成分として、以下に説明する化合物(b1−1)、(b1−2)、及び(b1−3)を挙げることができる。
【0071】
化合物(b1−1)は、上記式(b1)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
【0072】
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201
〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
【0073】
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物等を挙げることができる。
【0074】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
【0075】
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基としては、炭素数1〜15の直鎖又は分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基としては、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0076】
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐状アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐、環状のアルコキシ基又はハロゲン原子であり、最も好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子である。置換基は、3つのR201〜R203のうち、いずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0077】
次に、化合物(b1−2)について説明する。
化合物(b1−2)は、式(b1)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、より好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0078】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができ、直鎖、分岐2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基がより好ましい。
【0079】
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができ、環状2−オキソアルキル基がより好ましい。
【0080】
201〜R203の直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基としては、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜10)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0081】
化合物(b1−3)とは、以下の式(b1−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0082】
【化12】

【0083】
式(b1−3)に於いて、R1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
x及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成してもよい。
Zc-は、非求核性アニオンを表し、式(b1)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0084】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
【0085】
1c〜R7cのシクロアルキル基として、好ましくは、炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
【0086】
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
【0087】
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
【0088】
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが直鎖状若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1cからR5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、溶剤溶解性がより向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制されるので好ましい。
【0089】
x及びRyとしてのアルキル基、シクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。
x及びRyは、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
2−オキソアルキル基は、R1c〜R5cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
【0090】
x、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基、シクロアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基、シクロアルキル基である。
【0091】
式(b2)、(b3)中、R204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。X-は、非求核性アニオンを表し、式(b1)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0092】
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0093】
使用してもよい活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物として、更に、下記式(b4)、(b5)、(b6)で表される化合物を挙げることができる。
【0094】
【化13】

【0095】
式(b4)〜(b6)中、Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。
206、R207及びR208は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール
基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0096】
光酸発生剤のなかでも好ましいものとしては、式(b1)〜(b3)で表される化合物を挙げることができる。これらの光酸発生剤の中でも、スルホニウム塩構造を有するものが好ましく、トリアリールスルホニウム塩構造を有するものがより好ましく、トリ(クロロフェニル)スルホニウム塩構造を有するものが特に好ましい。トリ(クロロフェニル)スルホニウム塩構造を有する光酸発生剤としては、例えば、光酸発生剤の好ましい化合物例として以下に列挙される、化合物例(b−37)〜(b−40)が挙げられる。
本発明に用いることのできる(B)光酸発生剤の好ましい化合物例〔(b−1)〜(b−96)〕を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
【化14】

【0098】
【化15】

【0099】
【化16】

【0100】
【化17】

【0101】
【化18】

【0102】
【化19】

【0103】
【化20】

【0104】
【化21】

【0105】
【化22】

【0106】
【化23】

【0107】
また、特開2002−122994号公報、段落番号〔0037〕乃至〔0063〕に例示されるオニウム塩化合物、スルホネート系化合物も本発明に好適に使用しうる。
【0108】
(B)光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
インク組成物中の(B)光酸発生剤の含有量は、インク組成物の全固形分換算で、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜8質量%である。
【0109】
〔着色剤〕
本発明の硬化性組成物には、上記(A)〜(C)成分に加え、硬化性組成物の用途に応じて、着色剤を含有することができる。
本発明に用いることのできる着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の任意の公知の着色剤から選択して使用することができる。
本発明の硬化性組成物を、以下に詳述するインク組成物又はインクジェット記録用インク組成物に使用する場合、着色剤を併用することで、有色のインク組成物となる。
本発明の硬化性組成物に用いる着色剤としては、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能しない着色剤を選択して用いることが好ましい。これは、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないためである。
以下、着色剤として用い得る各成分について説明する。
【0110】
<顔料>
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料を適宜選択して用いることができる。さらに、表面処理顔料などの加工顔料を使用することもできる。
例えば、顔料を、分散媒としての不溶性の樹脂等に分散させた顔料−樹脂複合体、顔料表面を樹脂で被覆したもの、或いは、顔料表面に樹脂をグラフト化して導入したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色した着色樹脂粒子も顔料と同様に用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0111】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー120の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0112】
赤或いはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0113】
青或いはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0114】
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
【0115】
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
【0116】
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0117】
顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、Noveon社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0118】
インク組成物において、顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分であるカチオン重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明の硬化性組成物が適用されるインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、速やかに硬化させることが必要であるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、画像の耐溶剤性が劣化したり、画像の不均一性、表面のべとつきなどを生じる件があるためである。このような観点から、分散媒としては、カチオン重合性化合物を用いること、なかでも、(C)他のカチオン重合性化合物として、最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択して用いること、が分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0119】
顔料の平均粒径は、0.02〜0.9μmの範囲とすることが好ましく、0.05〜0.8μmとするのが更に好ましく、より好ましくは、0.06〜0.6μmの範囲である。
顔料粒子の平均粒径を上記好ましい範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、本発明の硬化性組成物をインク組成物に適用した場合、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができ、これをインクジェット記録用インクとして用いた場合に、ヘッドノズルの詰まりを効果的に抑制しうる。
【0120】
<染料>
本発明において着色剤として用いることのできる染料は、油溶性のものが好ましい。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解する色素の質量)が1g以下であるものを意味し、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下である。従って、所謂、水に不溶性の油溶性染料が好ましく用いられる。
【0121】
本発明に用いることのできる染料は、インク組成物に必要量溶解させるために上記記載の染料母核に対して油溶化基を導入することも好ましい。
油溶化基としては、長鎖、分岐アルキル基、長鎖、分岐アルコキシ基、長鎖、分岐アルキルチオ基、長鎖、分岐アルキルスルホニル基、長鎖、分岐アシルオキシ基、長鎖、分岐アルコキシカルボニル基、長鎖、分岐アシル基、長鎖、分岐アシルアミノ基長鎖、分岐アルキルスルホニルアミノ基、長鎖、分岐アルキルアミノスルホニル基及びこれら長鎖、分岐置換基を含むアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニル基、アリールアミノスルホニル基、アリールスルホニルアミノ基等が挙げられる。
また、カルボン酸、スルホン酸を有する水溶性染料に対して、長鎖、分岐アルコール、アミン、フェノール、アニリン誘導体を用いて油溶化基であるアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基に変換することにより染料を得てもよい。
【0122】
前記油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い油溶性染料を用いることにより、インク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、インク組成物の保存安定性が良くなる。
また、退色、特にオゾンなどの酸化性物質に対する耐性や硬化特性を向上させるために、酸化電位が貴である(高い)ことが望ましい。このため、本発明で用いる油溶性染料として、酸化電位が1.0V(vs SCE)以上であるものが好ましく用いられる。酸化電位は高いほうが好ましく、酸化電位が1.1V(vsSCE)以上のものがより好ましく、1.15V(vs SCE)以上のものが特に好ましい。
【0123】
イエロー色の染料としては、特開2004−250483号公報の記載の一般式(Y−I)で表される構造の化合物が好ましい。
特に好ましい染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)で表される染料であり、具体例として特開2004−250483号公報の段落番号[0060]から[0071]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(Y−I)の油溶性染料はイエローのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0124】
マゼンタ色の染料としては、特開2002−114930号公報に記載の一般式(3)、(4)で表される構造の化合物が好ましく、具体例としては、特開2002−114930号公報の段落[0054]〜[0073]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]から[0122]に記載されている一般式(M−1)〜(M−2)で表されるアゾ染料であり、具体例として特開2002−121414号公報の段落番号[0123]から[0132]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(3)、(4)、(M−1)〜(M−2)の油溶性染料はマゼンタのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0125】
シアン色の染料としては、特開2001−181547号公報に記載の式(I)〜(IV)で表される染料、特開2002−121414号公報の段落番号[0063]から[0078]に記載されている一般式(IV−1)〜(IV−4)で表される染料が好ましいものとして挙げられ、具体例として特開2001−181547号公報の段落番号[0052]から[0066]、特開2002−121414号公報の段落番号[0079]から[0081]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]から[0196]に記載されている一般式(C−I)、(C−II)で表されるフタロシアニン染料であり、更に一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が好ましい。この具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]から[0201]に記載の化合物が挙げられる。尚、前記式(I)〜(IV)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)、(C−II)の油溶性染料はシアンのみでなく、ブラックインクやグリーンインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0126】
−酸化電位−
本発明における染料の酸化電位の値(Eox)は、当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP.Delahay著“New Instrumental Methods in Electrochemistry”(1954年,Interscience Publishers社刊)や、A.J.Bard他著“Electrochemical Methods”(1980年、John Wiley & Sons社刊)、藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
具体的に酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10-2〜1×10-6モル/リットル溶解して、サイクリックボルタンメトリーや直流ポーラログラフィー装置により、作用極として炭素(GC)を、対極として回転白金電極を用いて酸化側(貴側)に掃引したときの酸化波を直線で近似して、この直線と残余電流・電位直線との交点と、直線と飽和電流直線との交点(又はピーク電位値を通る縦軸に平行な直線との交点)と、により作られる線分の中間電位値をSCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。また、用いる支持電解質や溶媒は、被験試料の酸化電位や溶解性により適当なものを選ぶことができる。用いることができる支持電解質や溶媒については藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)101〜118ページに記載がある。
【0127】
これらの着色剤は組成物中、固形分換算で1〜30質量%添加されることが好ましく、2〜25質量%がより好ましい。
【0128】
〔その他の成分〕
本発明の硬化性組成物には、上記(A)〜(C)成分及び着色剤に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、硬化性組成物の用途に応じて所望により、種々の添加剤を併用することができる。
以下、必要に応じて本発明に用いることのできる種々の添加剤について述べる。
〔紫外線吸収剤〕
本発明においては、硬化性組成物により形成される硬化物、例えば、インク画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0129】
〔増感剤〕
本発明には、(B)光酸発生剤の酸発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、必要に応じ、増感剤を添加してもよい。増感剤としては、光酸発生剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものであれば、何れでもよい。好ましくは、アントラセン、9,10−ジアルコキシアントラセン、ピレン、ペリレンなどの芳香族多縮環化合物、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーケトンなどの芳香族ケトン化合物、フェノチアジン、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物が挙げられる。添加量は目的に応じて適宜選択されるが、(B)光酸発生剤に対し0.01〜10モル%で用いることが好ましく、0.1〜5モル%がより好ましい。
【0130】
〔酸化防止剤〕
硬化性組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。
酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0131】
〔褪色防止剤〕
本発明の硬化性組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。
有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。
金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0132】
〔導電性塩類〕
本発明には、吐出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0133】
〔溶剤〕
本発明の硬化性組成物には、有機溶剤を添加することができる。例えば、本発明の硬化性組成物をインク組成物に適用する場合、インク画像と被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、硬化性組成物の用途に応じて、硬化体の耐溶剤性や品質の均一性、物性に問題を生じない範囲での添加が有効である。例えば、硬化性のインク組成物においては、インク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0134】
〔高分子化合物〕
本発明には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。
高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0135】
〔界面活性剤〕
本発明の硬化性組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0136】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0137】
本発明の硬化性組成物は、前記構成としたので、放射線の照射に対して高感度で硬化し、高強度な皮膜形成が可能である。また、重合性化合物として、(A)特定ビニルエーテル化合物と(C)他のカチオン重合性化合物とを組み合わせて用いることにより、高感度で、表面にべとつきのない硬化被膜が形成されるとともに、硬化時の体積収縮が抑制される。このため、微細な画像を形成しうるUV硬化型のインク組成物に好適に使用しうる。また、形成された硬化膜は比較的ガラス転移温度が高い、高強度の膜となるために、塗料、接着剤、レジスト、カラーフィルター、光ディスクなどの光造形材料など、種々の用途に好適に使用しうる。
【0138】
[インク組成物]
本発明のインク組成物は、(A)アダマンタン骨格を有するビニルエーテル化合物、(B)放射線の照射により酸を発生する化合物、及び、好ましい併用成分である(B)(A)成分とは構造の異なるカチオン重合性化合物を含有する前記本発明の硬化性組成物を含むことを特徴とする。
−インク組成物の好ましい態様−
本発明の硬化性組成物が適用されるインク組成物(本発明のインク組成物)は、上述のように、(A)特定ビニルエーテル化合物、(B)光酸発生剤、所望により添加される(C)他のカチオン重合性化合物、着色剤、及び、他の添加剤を含有するものである。
これらの成分は、インク組成物全体の質量に対して、着色剤が好ましくは1〜30質量%、より好ましくは、2〜25質量%、(A)特定ビニルエーテル化合物及び(C)他のカチオン重合性化合物を含む全重合性化合物が、好ましくは1〜97質量%、より好ましくは、30〜95質量%である。(B)放射線の照射により酸を発生する化合物が、全重合性化合物に対して、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは、0.1〜20質量%になるように含有することが適当である。
前述のように、硬化性の観点からは、重合性化合物として重合性モノマーを50〜95質量%含み、溶剤を含まないか、或いは極微量(好ましくは、5質量%以下)含有する態様が好ましい。
【0139】
本発明のインク組成物をインクジェット記録用インクとして使用する場合には、吐出性を考慮し、吐出時の温度(例えば、40〜80℃、好ましくは25〜30℃)において、粘度が、好ましくは7〜30mPa・sであり、より好ましくは7〜20mPa・sである。例えば、本発明のインク組成物の室温(25〜30℃)における粘度は、好ましくは35〜500mPa・s、より好ましくは35〜200mPa・sである。
本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となる。更にインク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0140】
本発明のインク組成物の表面張力は、好ましくは20〜30mN/m、より好ましくは23〜28mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点はで30mN/m以下が好ましい。
【0141】
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用インクとして好適に用いられる。インクジェット記録用インクとして用いる場合には、インク組成物をインクジェットプリンターにより被記録媒体に射出し、その後、射出されたインク組成物に放射線を照射して硬化して記録を行う。
【0142】
このインクにより得られた印刷物は、画像部が紫外線などの放射線照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、インクによる画像形成以外にも、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)の形成など、種々の用途に使用しうる。
【0143】
〔インクジェット記録方法〕
本発明のインク組成物が好適に適用されるインクジェット記録方法(本発明のインクジェット記録方法)について、以下説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、上記した本発明のインク組成物を、被記録媒体(支持体、記録材料等)上にインク組成物をインクジェット記録装置により吐出する工程、及び、吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする。硬化したインク組成物は、被記録媒体上に画像を形成する。
【0144】
本発明のインクジェット記録方法に適用しる被記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料あるいは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等を挙げることができる。その他、被記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も被記録媒体として使用可能である。
また、本発明のインク組成物は、硬化時の熱収縮が少なく、基材(被記録媒体)との密着性に優れるため、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいフィルム、例えば、熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムなどにおいても、高精細な画像を形成しうるという利点を有する。
【0145】
本発明のインクジェット記録方法に適用される活性放射線としては、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外光線、電子線などが挙げられる。活性放射線のピーク波長は、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。また、活性放射線の出力は、2,000mJ/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは、10〜2,000mJ/cm2であり、さらに好ましくは、20〜1,000mJ/cm2であり、特に好ましくは、50〜800mJ/cm2である。
特に、本発明のインクジェット記録方法では、放射線照射が、発光波長ピークが350〜420nmであり、かつ、前記被記録媒体表面での最高照度が10〜1,000mW/cm2となる紫外線を発生する発光ダイオード、蛍光管、水銀ランプから照射されることが好ましい。
【0146】
本発明のインクジェット記録方法によれば、表面の濡れ性が異なる様々な支持体(被記録媒体)に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質を向上させることができる。なお、本発明により、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインクから順に重ねることにより、下部のインクまで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、臭気の低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
【0147】
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して、通常インク組成物又はインクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、延いては、は画質劣化を引き起こす。従って、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、温度の制御幅は、設定温度の±5℃、好ましくは設定温度の±2℃、より好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0148】
(インクジェット記録装置)
本発明に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、市販のインクジェット記録装置が使用できる。即ち、本発明においては、市販のインクジェット記録装置を用いて被記録媒体へ記録することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1〜100pl、好ましくは、8〜30plのマルチサイズドットを例えば、320×320〜4000×4000dpi、好ましくは、400×400〜1600×1600dpi、より好ましくは、720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0149】
上述したように、放射線硬化型インクは、吐出されるインクを一定温度にすることが望ましいことから、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱および加温を行うことができる。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンクおよびインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0150】
〔吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させることにより、前記インク組成物が硬化してなる疎水性画像を支持体上に形成する工程〕
支持体の表面上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。このとき、インク組成物中に、重合開始剤(光開始剤)とともに、増感色素が存在すると、系中の増感色素が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度な硬化反応を達成できる。
【0151】
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nm、好ましくは、300〜450nm、より好ましくは、350〜420nmであることが適当である。また、本発明では、重合開始系は、低出力の活性放射線であっても充分な感度を有するものである。従って、活性放射線の出力は、例えば、2,000mJ/cm2以下、好ましくは、10〜2,000mJ/cm2、より好ましくは、20〜1,000mJ/cm2、さらに好ましくは、50〜800mJ/cm2の照射エネルギーであることが適当である。また、活性放射線は、露光面照度が、例えば、10〜2,000mW/cm2、好ましくは、20〜1,000mW/cm2で照射されることが適当である。
【0152】
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェットには、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
【0153】
本発明においては、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、特に好ましくは50〜800mW/cm2である。
【0154】
本発明においては、インク組成物は、このような活性放射線に、例えば、0.01〜120秒、好ましくは、0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法としては、特開昭60−132767号公報に開示される内容が適用できる。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(例えば、0.01〜0.5秒、好ましくは、0.01〜0.3秒、より好ましくは、0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。WO99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。
【実施例】
【0155】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例における形態に限定されるものではない。なお、以下の実施例は各色のUVインクジェット記録用インクに係るものである。また、以下の説明においては、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
【0156】
〔実施例1〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、シアン色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(シアン色インク組成物)
・(A)特定ビニルエーテル化合物(A−2) 10.0部
・(C)セロキサイド3000 50.0部
(ダイセル化学工業社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)POX 90.0部
(東亞合成社製 3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン)
・Irgalite Blue GLVO 5.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製、顔料)
・Solsperse 32000(Noveon社製、分散剤) 3.0部
・(B)UVI−6992 10.0部
(Dow Chemical社製スルホニウム塩光酸発生剤)
【0157】
(インク組成物の評価)
得られた実施例1のシアン色インク組成物を、ピエゾ型インクジェットヘッド(東芝テック製のCA3ヘッド)を有するインクジェット記録装置を用いて、ポリ塩化ビニル製のシート上に記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、ノズル部分が常に45℃±3℃となるよう、温度制御を行った(100%被覆画像を印刷)。インク組成物を吐出後、鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下に40m/minの速度で通過させることにより照射を行って、インク組成物を硬化させ、印刷物を得た。印刷物のインク層の平均膜厚は約12μmであった。
このとき、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0158】
<硬化感度>
硬化における露光エネルギーを光量積算計(EIT社製UV PowerMAP)により測定した。この数値が小さいほど、高感度で硬化すると評価する。その結果、実施例1のインク組成物は、シート上での紫外線の積算露光量は約130mJ/cmであり、高感度で硬化していることが確認された。
【0159】
<硬化性>
硬化性は、このインク組成物による印刷物を、シート上での紫外線の積算露光量約400mJ/cmで硬化を行い、硬化後の画像部を触診により評価した。硬化性は、硬化膜表面の粘着性の有無で評価する。
その結果、硬化後の硬化膜の粘着性は完全に消失しており、実施例1のインク組成物は硬化性に優れることを確認した。
【0160】
<硬化膜と被記録媒体との接着性>
硬化膜と被記録媒体との接着性はクロスハッチテスト(EN ISO2409)により評価し、ASTM法による表記5B〜1Bで表す。5Bが最も接着性に優れ、3B以上で実用上問題のないレベルであると評価する。
その結果、実施例1のインク組成物は、高い接着性を有し、その値は、ASTM法による表記で4Bを示した。
【0161】
<硬化膜の柔軟性>
硬化膜の柔軟性は、室温(約25℃)において、長さ6cm、幅2cmの印刷物をポリ塩化ビニル製のシートとともに延伸し、画像が破断するまでの伸張率を測定し、下記基準により評価した。
A:伸張率が200%以上(サンプルが18cm以上まで伸びた)
B:伸張率が150%以上、200%未満(サンプルが15cm以上18cm未満まで伸びた)
C:伸張率が100%以上、150%未満(サンプルが12cm以上15cm未満まで伸びた)
D:伸張率が100%未満(サンプルが12cm未満で破断)
【0162】
<吐出安定性>
得られたインク組成物を40℃で6週間保存後、上記のピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体への記録を行い、常温で2時間連続印字したときの、ドット抜けおよびインクの飛び散りの有無を目視にて観察し、下記基準により評価した。
○:ドット抜けまたはインクの飛び散りが発生しないか、発生が5回以下
△:ドット抜けまたはインクの飛び散りが6〜20回発生
×:ドット抜けまたはインクの飛び散りが21回以上発生
【0163】
<耐ブロッキング性>
105mm×148mmの印刷物の印刷面に、印刷をおこなっていないポリ塩化ビニル製のシートを対面させ、密着させ、室温(約25℃)にて、72時間、4kgの荷重を加えた。その後、両シートを剥離し、印刷をおこなっていないシートへのインクの付着を観測し、下記基準により評価した。
○:インクの付着が観測されない
△:わずかにインクの付着が観測される
×:印刷をおこなっていないシートにインクが付着
【0164】
〔実施例2〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、マゼンタ色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
【0165】
(マゼンタ色インク組成物)
・(A)特定ビニルエーテル化合物(A−2) 10.0部
・(C)セロキサイド3000 10.0部
(ダイセル化学工業社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)EHOX 50.0部
(東亞合成社製 3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン)
・Cinquasia Mazenta RT−355D 5.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製、顔料)
・Solsperse 32000(Noveon社製、分散剤) 3.0部
・(B)UVI−6992 10.0部
(Dow Chemical社製スルホニウム塩光酸発生剤)
【0166】
得られた実施例2のマゼンタ色インク組成物を、ポリ塩化ビニル製のシート上に実施例1と同様に吐出し、硬化を行った。このインク組成物による印刷物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0167】
〔実施例3〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、マゼンタ色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(マゼンタ色インク組成物)
・(A)特定ビニルエーテル化合物(A−1) 10.0部
・(A)特定ビニルエーテル化合物(A−2) 10.0部
・(C)セロキサイド3000 40.0部
(ダイセル化学工業社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)UVR6105 5.0部
(ユニオンカーバイド社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)DOX 80.0部
(東亞合成社製 ビス(1−エチル(3−オキセタニル))メチルエーテル)
・Cinquasia Mazenta RT−355D 5.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製、顔料)
・Solsperse 32000(Noveon社製、分散剤) 3.0部
・(B)スルホニウム塩(b−39) 5.0部
(Dow Chemical社製スルホニウム塩光酸発生剤)
・Byk 307(BYK Chemie社製、消泡剤) 0.1部
【0168】
得られた実施例3のマゼンタ色インク組成物を、ポリ塩化ビニル製のシート上に実施例1と同様に吐出し、硬化を行った。このインク組成物による印刷物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0169】
〔実施例4〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、マゼンタ色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(マゼンタ色インク組成物)
・(A)特定ビニルエーテル化合物(A−1) 15.0部
・(C)セロキサイド3000 40.0部
(ダイセル化学工業社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)UVR6105 5.0部
(ユニオンカーバイド社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)DOX 80.0部
(東亞合成社製 ビス(1−エチル(3−オキセタニル))メチルエーテル)
・Cinquasia Mazenta RT−355D 5.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製、顔料)
・Solsperse 32000(Noveon社製、分散剤) 3.0部
・(B)CPI−100P 5.0部
(サンアプロ社製スルホニウム塩光酸発生剤)
・Byk 307(BYK Chemie社製、消泡剤) 0.1部
【0170】
得られた実施例4のマゼンタ色インク組成物を、ポリ塩化ビニル製のシート上に実施例1と同様に吐出し、硬化を行った。このインク組成物による印刷物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0171】
〔実施例5〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、黒色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(黒色インク組成物)
・(A)特定ビニルエーテル化合物(A−2) 10.0部
・(C)セロキサイド3000 10.0部
(ダイセル化学工業社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)EHOX 50.0部
(東亞合成社製 3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン)
・Microlith Black C−K 5.5部
(Ciba Specialty Chemicals社製、顔料)
・Solsperse 32000(Noveon社製、分散剤) 3.0部
・(B)UVI−6992 10.0部
(Dow Chemical社製スルホニウム塩光酸発生剤)
【0172】
得られた実施例5の黒色インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に実施例1と同様に吐出し、硬化を行った。このインク組成物による印刷物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0173】
〔実施例6〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、イエロー色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(イエロー色インク組成物)
・(A)特定ビニルエーテル化合物(A−1) 20.0部
・(C)セロキサイド3000 40.0部
(ダイセル化学工業社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)UVR6105 5.0部
(ユニオンカーバイド社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)DOX 80.0部
(東亞合成社製 ビス(1−エチル(3−オキセタニル))メチルエーテル)
・Cromophtal Yellow LA 5.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製、顔料)
・Solsperse 32000(Noveon社製、分散剤) 3.0部
・(B)UVI−6992 10.0部
(Dow Chemical社製スルホニウム塩光酸発生剤)
【0174】
得られた実施例6のイエロー色インクを、ポリ塩化ビニル製のシート上に実施例1と同様に吐出し、硬化を行った。このインクによる印刷物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0175】
〔実施例7〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、白色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(白色インク組成物)
・(A)特定ビニルエーテル化合物(A−1) 20.0部
・(C)セロキサイド3000 40.0部
(ダイセル化学工業社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)UVR6105 5.0部
(ユニオンカーバイド社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)DOX 80.0部
(東亞合成社製 ビス(1−エチル(3−オキセタニル))メチルエーテル)
・Solsperse 41000(Noveon社製、分散剤) 3.5部
・MICROLITH WHITE R−A 16.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製、顔料)
・(B)UVI−6992 10.0部
(Dow Chemical社製スルホニウム塩光酸発生剤)
【0176】
得られた実施例7の白色インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に実施例1と同様に吐出し、硬化を行った。このインクによる印刷物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0177】
〔比較例1〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、シアン色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(シアン色インク組成物)
・Rapi−Cure DVE−3 10.0部
(ISP Europe社製、比較ビニルエーテル化合物)
・(C)セロキサイド3000 50.0部
(ダイセル化学工業社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)POX 90.0部
(東亞合成社製 3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン)
・Irgalite Blue GLVO 5.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製、顔料)
・Solsperse 32000(Noveon社製、分散剤) 3.0部
・(B)UVI−6992 10.0部
(Dow Chemical社製スルホニウム塩光酸発生剤)
【0178】
得られた比較例1のシアン色インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に実施例1と同様に吐出し、硬化を行った。このインク組成物による印刷物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0179】
〔比較例2〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、シアン色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(シアン色インク組成物)
・4−ビニロキシブタノール 10.0部
(東京化成工業社製、比較ビニルエーテル化合物)
・(C)セロキサイド3000 50.0部
(ダイセル化学工業社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)POX 90.0部
(東亞合成社製 3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン)
・Irgalite Blue GLVO 5.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製、顔料)
・Solsperse 32000(Noveon社製、分散剤) 3.0部
・(B)UVI−6992 10.0部
(Dow Chemical社製スルホニウム塩光酸発生剤)
【0180】
得られた比較例2のシアン色インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に実施例1と同様に吐出し、硬化を行った。このインクによる印刷物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0181】
〔比較例3〕
以下の成分を、高速水冷式攪拌機により撹拌し、シアン色のUVインクジェット用インク組成物を得た。
(シアン色インク組成物)
・(C)セロキサイド3000 60.0部
(ダイセル化学工業社製脂環式エポキシモノマー)
・(C)POX 90.0部
(東亞合成社製 3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン)
・Irgalite Blue GLVO 5.0部
(Ciba Specialty Chemicals社製、顔料)
・Solsperse 32000(Noveon社製、分散剤) 3.0部
・(B)UVI−6992 10.0部
(Dow Chemical社製スルホニウム塩光酸発生剤)
【0182】
得られた比較例3のシアン色インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に実施例1と同様に吐出し、硬化を行った。このインク組成物による印刷物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0183】
【表1】

【0184】
表1に明らかなように、本発明の硬化性組成物を適用してなるインク組成物は、高感度で硬化すると共に基材との接着性、形成された硬化膜の耐ブロッキング性、柔軟性に優れており、インクジェット記録用インクとして用いた場合でも吐出安定性に優れていることがわかる。
他方、(A)特定ビニルエーテル化合物に代えて、アダマンタン骨格を有しない2官能の比較ビニルエーテル化合物を用いた比較例1では、感度、接着性、膜の柔軟性、耐ブロッキング性のいずれも実施例に比べ、劣るものであった。また、(A)特定ビニルエーテル化合物を含まず、アダマンタン骨格を有しない単官能の比較ビニルエーテル化合物を含有する比較例2では、硬化感度に劣り、硬化膜の表面がべとつくなどの問題があり、重合性化合物としてエポキシ化合物とオキセタン化合物のみを含む比較例3は、膜の柔軟性、基材との接着性が大きく劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アダマンタン骨格を有するビニルエーテル化合物、及び、
(B)放射線の照射により酸を発生する化合物、を含有する硬化性組成物。
【請求項2】
さらに、(C)前記(A)成分とは構造の異なるカチオン重合性化合物を含有する請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物を含むインク組成物。
【請求項4】
着色剤をさらに含有する請求項3に記載のインク組成物。
【請求項5】
インクジェット記録用である請求項3又は請求項4に記載のインク組成物。
【請求項6】
(a)被記録媒体上に、請求項5に記載のインク組成物を吐出する工程、及び(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2010−1345(P2010−1345A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160130(P2008−160130)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】