説明

硬化性組成物

【課題】酸素による重合阻害が少ないため、酸素遮断下で重合させることの困難な歯科用として好適に使用できる、表面未重合量が低減され且つ表面硬度が向上した硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(a)CH2C(R1)COOR2(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は鎖長が炭素数8〜24の長さである長鎖炭化水素基を示す。)で示される長鎖(メタ)アクリレート系単量体0.1〜10質量%を含有するラジカル重合性単量体100質量部;(b)水0.5〜10質量部;(c)界面活性剤0.1〜10質量部;及び(d)有効量のラジカル重合開始剤;を含有することを特徴とする硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物に関する。更に詳しくは、酸素遮断材の塗布などによる酸素遮断層を設けることなく硬化時の酸素の影響を低減させた新規な硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬化性組成物は、重合性単量体と重合開始剤を基本的に含む材料である。硬化性組成物がラジカル重合性である場合、重合工程を空気中で行うと、硬化した組成物の空気に露出した表面に未重合層が生じる。これは、硬化性組成物の空気に露出した表面では空気中の酸素が硬化性組成物と結合して過酸化物ラジカルとなり、重合の進行を停止するからである。
【0003】
従来、表面に未重合層を有しない硬化性組成物を提供するためには、窒素雰囲気下や水中での硬化、酸素遮断材を用いて酸素遮断層を設けるなどして、空気との接触を断ち、硬化性組成物をラジカル重合させる方法が行われてきた(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
(メタ)アクリレート系重合性単量体をラジカル重合で硬化させる方法は、歯科の分野で広く利用されており、このような方法を使用したものとしては、歯科用セメント、歯科用接着材(ボンディング材)、コンポジットレジン、レジン歯科材料表面の滑沢性付与材、歯牙のマニキュア等が挙げられる。これらの歯科用修復物が硬化体表面に未重合層を有していると、表面硬度や着色性の低下が引き起こされる。また、表面に未重合層があると硬化体の研磨・研削を行う際に未重合層が研磨バーに絡みつくために、その研磨性は低下する。
【0005】
このような材料を用いた歯科治療は直接口腔内で硬化させて使用することが多く、水中や窒素雰因気下で硬化させることによって、未重合を減少させる方法であると、硬化性組成物を一旦口腔内から取り出すことが必要となり、口腔内で形成した形状が変形してしまう。酸素遮断層を形成するのが困難な症例は多くあり、また、ボンディング材などの粘性の低い材料には酸素遮断材を利用することができない。
【0006】
このため、酸素遮断層を設けることなく硬化時の酸素の影響を低減させる技術が求められていた。こうした中、界面活性剤および水を配合させた硬化性組成物により、表面未重合を低減する方法が開発された(特許文献3〜5参照)。この方法によれば、ラジカル重合性単量体成分が硬化する際に界面活性剤と水の層が表面に形成され、この界面活性剤と水よりなる層が内部への酸素の侵入を阻害すると推測される作用により、表面の重合性を大きく向上させることができ、その表面未重合量を著しく低減させることができる。
【0007】
【特許文献1】特開2000−128723号公報
【特許文献2】特開2004−284969号公報
【特許文献3】特開2006−291168号公報
【特許文献4】特開2007−008972号公報
【特許文献5】特開2007−063332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記界面活性剤および水を配合させた硬化性組成物によっても、硬化性組成物を酸素雰囲気下や水中で硬化させたり、酸素遮断材を圧接した状態で硬化させる等の、酸素をほぼ完全に遮断させた状態で硬化反応を進行させる場合と比較すると、その表面の未重合を完全に抑制することは困難であり、さらに改善の余地があった。特に、こうした極僅かな表面未重合の発生でも、硬化体の表面硬度には大きく影響し、該硬化体を耐傷性等において今一歩満足できないものにしていた。
【0009】
こうした背景にあって、本発明は、酸素の存在する環境下で、酸素遮断材を用いなくても、表面未重合を極めて高度に抑制でき、硬化体の表面硬度についても良好に改善されたものになる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行なった。その結果、少量の水と界面活性剤と共に、特定の重合性単量体を用いた場合に、上記の課題が大きく改善できることを見出し、さらに検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、(a)下記式(1)
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは鎖長が炭素数8〜24の長さである長鎖炭化水素基を示す。)
で示される長鎖(メタ)アクリレート系単量体0.1〜10質量%を含有するラジカル重合性単量体100質量部(b)水0.5〜10質量部、(c)界面活性剤0.1〜10質量部、及び(d)有効量のラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬化性組成物は、酸素が存在する環境下で、酸素遮断材を用いるなどの特別の手段を用いなくても、表面未重合の発生を極めて硬度に抑制することができる。しかも、硬化体表面の表面硬度についても、大きく向上させることができ、耐傷性やその他の機械的強度に優れた硬化体を与えることができ、極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の硬化性組成物は、(a)下記式(1)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは鎖長が炭素数8〜24である長鎖炭化水素基を示す。)
で示される長鎖(メタ)アクリレート系単量体0.1〜10質量%を含有するラジカル重合性単量体100質量部(b)水0.5〜10質量部、(c)界面活性剤0.1〜10質量部、及び(d)有効量のラジカル重合開始剤を必須成分として含んでなる。
【0018】
この硬化性組成物では、重合開始剤の作用によりラジカル重合性単量体成分が重合し硬化するが、水及び界面活性剤が配合されているため、上記硬化に際してこれら両成分の層が表面に形成され、この界面活性剤と水とよりなる表面層の作用により酸素の内部への侵入が阻害され、表面未重合が低減される。ここで、上記界面活性剤と水よりなる表面層において、界面活性剤の各分子は疎水性部分を硬化性組成物の内部側に向けて並列していると考えられる。これに対して、前記一般式(1)で示される長鎖(メタ)アクリレート系単量体も、Rの炭素数8〜24の長鎖炭化水素基の部分が、疎水性が強い分子構造であるため、このR部分が、上記並列する界面活性剤の疎水性部分と親和し、この間に、(メタ)アクリロイル基の部分を硬化性組成物の内部側に向けて入り込んで並び、2分子膜のような構造が形成されると推定される。しかして、このようにして硬化性組成物の表面付近には、前記一般式(1)で示される長鎖(メタ)アクリレート系単量体が、(メタ)アクリロイル基の部分を硬化性組成物の内部側に向けた規則的な並びで密集するため、該表面付近では係る長鎖(メタ)アクリレート系単量体が濃密に重合する。その結果、本発明では、表面未重合量が減少するだけでなく、硬化体の表面硬度の向上も大きく改善されるものになると考えている。
【0019】
本発明において、上記一般式(1)で示される長鎖(メタ)アクリレート単量体は、該一般式を満足する公知の化合物が制限なく使用できる。Rは、鎖長が炭素数8〜24の長さである長鎖炭化水素基である。ここで、該長鎖炭化水素基は、通常、飽和脂肪族炭化水素基が適用されるが、不飽和脂肪族炭化水素基も該不飽和結合が非重合性のものであるならば適用可能である。また、これらの長鎖炭化水素基は、上記脂肪族炭化水素基の鎖の途中または末端に、フェニレン基やフェニル基等の芳香族炭化水素基やシクロアルキレン基やシクロアルキル基の脂環族炭化水素基が存在していても良い。同様に、鎖の途中に、エステル結合またはエーテル結合が介在していても良い。
【0020】
こうした長鎖炭化水素基の鎖長は、炭素数8〜24の長さであることが必要である。このような長鎖であることにより、この部分が疎水性部分となり、界面活性剤の疎水性基との親和性が増し、前記したような優れた効果が発揮されるものになる。硬化体の表面硬度をより優れたものにする観点からは、この鎖長は、炭素数10〜20の長さであることが、より好ましい。
【0021】
なお、上記長鎖炭化水素基は、直鎖だけでなく分岐鎖であっても良いが、こうした分岐鎖状の炭化水素基において鎖長とは、(メタ)アクリレート基への結合端から、その長さが最も長くなる鎖(主鎖)の末端までの長さをいう。ただし、上記のように鎖の途中に芳香族炭化水素基や脂環族炭化水素基が存在する場合は、大回りせず、結合手同士間の最短の炭素数を数えるものとする。
【0022】
こうした長鎖(メタ)アクリレート系単量体を具体的に例示すると、
n‐オクチル(メタ)アクリレート、n‐ノニル(メタ)アクリレート、n‐デシル(メタ)アクリレート、n‐ラウリル(メタ)アクリレート、n‐トリデシル(メタ)アクリレート、n‐ミリスチル(メタ)アクリレート、n‐ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n‐ステアリル(メタ)アクリレート、n‐エイコシル(メタ)アクリレート、n‐ドコシル(メタ)アクリレート、n‐テトラコシル(メタ)アクリレート、イソラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、下記式(a)〜(e)で示される(メタ)クリレート等が挙げられる。
【0023】
【化3】

【0024】
上記化合物の中でも特に、前記したようにRとして鎖長が炭素数10〜20の長さの長鎖炭化水素基、特に、長鎖アルキル基を有するものが好ましく、この中で、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ミリスチル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖状のものが最も好ましい。
【0025】
本発明において、上記長鎖(メタ)アクリレート系単量体の配合量は、(a)ラジカル重合性単量体成分中において、0.1〜10質量%である。この配合量が、上記範囲より少ない場合、硬化体の表面硬度を向上させる効果が十分でなくなり、他方、上記範囲より多くなると、硬化体の機械的強度が低下する。こうした効果の良好さを勘案すると、この長鎖(メタ)アクリレート系単量体のより好適な配合量は、(a)ラジカル重合性単量体成分中において、0.5〜5質量%である。
【0026】
本発明の硬化性組成物において、(a)ラジカル重合性単量体成分として使用する前記長鎖(メタ)アクリレート系単量体以外のラジカル重合性単量体は、種々の硬化性組成物において使用されている公知のものが特に制限なく使用できる。硬化性組成物が歯科用途である場合、(メタ)アクリル系の重合性単量体を使用するのが一般的である。
【0027】
代表的な(メタ)アクリル系重合性単量体を例示すれば、下記(I)〜(IV)に示されるものが挙げられる。
【0028】
(I)単官能性単量体
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、プロピオニルオキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;あるいはアクリル酸、メタクリル酸、p−メタクリロイルオキシ安息香酸、N−2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル−N−フェニルグリシン、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、及びその無水物、6−メタクリロイルオキシヘキサメチレンマロン酸、10−メタクリロイルオキシデカメチレンマロン酸、2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、10−メタクリロイルオキシデカメチレンジハイドロジェンフォスフェート、2−ヒドロキシエチルハイドロジェンフェニルフォスフォネート等の酸性基含有重合性単量体。
【0029】
(II)二官能性単量体
(i)芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパンおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
【0030】
(ii)脂肪族化合物系のもの
モノエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量400のポリエチレングリコールのジメタクリレート、平均分子量600のポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ノナメチレンジオールメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト;無水アクリル酸、無水メタクリル酸、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル、ジ(2−メタクリロイルオキシプロピル)フォスフェート等の酸性基含有重合性単量体。
【0031】
(III)三官能性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
【0032】
(IV)四官能性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加から得られるジアダクト等。
【0033】
これらのラジカル重合性単量体は単独で用いることもあるが、2種類以上を混合して使用することもできる。なお、硬化性組成物が歯科用途である場合、前記(メタ)アクリル系重合性単量体に加えて、しばしば重合の容易さ、粘度の調節、あるいはその他の物性の調節のために、上記(メタ)アクリル系重合性単量体以外の他の重合性単量体を混合して重合することも可能である。他の重合性単量体を例示すると、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル類;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレンあるいはα−メチルスチレン誘導体;ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物等を挙げることができる。これら他の重合性単量体は単独でまたは二種以上を一緒に使用することができる。
【0034】
前記したように本発明の硬化性組成物では、(b)水を配合させる。こうした水の配合量は、多いほど表面未重合の抑制効果は高くなるが、一定量を超えると改善効果は緩やかになり飽和し、一方で配合量が少ない方が機械的強度や硬化性等の物性に与える影響は小さい。これらを考察して、本発明において、水の配合量は、前記ラジカル重合性単量体100質量部に対して0.5〜10質量部である。さらに、係る水の配合量は、0.5〜5質量部であるのが好ましく、1〜3質量部であるのが特に好ましい。
【0035】
さらに、本発明の硬化性組成物では、(c)界面活性剤が配合される。こうした界面活性剤としては、イオン型界面活性剤、非イオン型界面活性剤のいずれであってもよく、好ましくは界面活性剤のHLB(親水親油バランス)が10以上である化合物が好ましい。より好ましくはHLBが25以上の化合物であり、特に好ましくはHLBが30以上の化合物である。HLBの上限も特に限定されるものではないが、一般的には50以下である。
【0036】
界面活性剤を具体的に例示すると、アニオン性活性剤としては、デシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルコール硫酸エステルの金属塩類、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムなどの脂肪族カルボン酸金属塩類、ラウリルアルコールとエチレンオキサイドの付加物を硫酸化したラウリルエーテル硫酸エステルナトリウムなどの高級アルキルエーテル硫酸エステルの金属塩類、スルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸ジエステル類、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩類などを挙げることができる。
【0037】
カチオン性界面活性剤としては、ドデシルアンモニウムクロリドなどのアルキルアミン塩類及びトリメチルドデシルアンモニウムブロミドなどの4級アンモニウム塩類などを挙げることができる。
【0038】
両性イオン界面活性剤としては、ドデシルジメチルアミンオキシドなどのアルキルジメチルアミンオキシド類、ドデシルカルボキシベタインなどのアルキルカルボキシベタイン類、ドデシルスルホベタインなどのアルキルスルホベタイン類、ラウラミドプロピルアミンオキシドなどのアミドアミノ酸塩などが挙げられる。
【0039】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、脂肪酸ポリオキシエチレンラウリルエステルなどの脂肪酸ポリオキシエチレンエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエステルなどのポリオキシエチレンソルビタンエステル類などが挙げられる。
【0040】
これらの中でも表面未重合の発生を高度に抑制し、硬化体の表面硬度をより優れたものにする観点からは、アニオン性界面活性剤を使用するのが好ましい。界面活性剤はそれぞれ単独で使用するだけでなく、必要に応じて複数の種類を組み合わせて併用することもできる。保存安定性の観点からは、さらにノニオン性界面活性剤を組み合わせて使用するのがより好ましい。アニオン系界面活性剤が配合されている系では、低温での保存安定性が低いという問題がある。ラジカル重合性単量体と重合開始剤とが配合された系では、保存中に重合硬化が促進されてしまうことがあり、このため、冷蔵保存(例えば0〜10℃)しておき、使用時に室温に戻して重合硬化を行うことがある。このような場合、アニオン系界面活性剤が配合されているとこれが析出してしまい結果、膜の生成能力が低下することがある。そこでノニオン性界面活性剤を添加することで冷蔵保存に際してのアニオン性界面活性剤の析出を有効に防止することができる。ノニオン性界面活性剤と混合する場合においてその含有量は、アニオン性界面活性剤との合計量を100%として、90質量%以下、好ましくは10〜60質量%の範囲であるのが好ましい。
【0041】
本発明における(c)界面活性剤は、(a)ラジカル重合性単量体成分100質量部に対して0.1〜10質量部である。配合量が多いほど、表面未重合の抑制効果は高くなるが、一定量を超えると改善効果は緩やかになり飽和し、一方で配合量が少ない方が機械的強度や硬化性等の物性に与える影響は小さい。これらを勘案すると、界面活性剤の配合量は、ラジカル重合性単量体成分100質量部に対して0.5〜5質量部であるのがより好ましく、1〜3質量部であるのが特に好ましい。
【0042】
本発明の硬化性組成物には、前記(a)ラジカル重合性単量体成分を重合させるための(d)ラジカル重合開始剤が配合される。当該重合開始剤としては、用いるラジカル重合性単量体を重合、硬化させることができるものであれば何ら制限なく使用可能であり、公知の重合開始剤が使用可能である。歯科分野で用いられる重合開始剤としては、化学重合開始剤(常温レドックス開始剤)、光重合開始剤、熱重合開始剤等があるが、口腔内で硬化させることを考慮すると、化学重合開始剤及び/又は光重合開始剤が好ましい。
【0043】
化学重合開始剤は、2成分以上からなり、使用直前に全成分が混合されることにより室温近辺で重合活性種を生じる重合開始剤である。このような化学重合開始剤としては、アミン化合物/有機過酸化物系のものが代表的である。
【0044】
該アミン化合物を具体的に例示すると、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエタノール−p−トルイジンなどの芳香族アミン化合物が例示される。
【0045】
代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ジアリールパーオキサイドなどが挙げられる。
【0046】
有機過酸化物を具体的に例示すると、ケトンパーオキサイド類としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。
【0047】
パーオキシケタール類としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
【0048】
ハイドロパーオキサイド類としては、P−メタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t―ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0049】
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3等が挙げられる。
【0050】
ジアシルパーオキサイド類としては、イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、スクシニックアシッドパーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド類が挙げられる。
【0051】
パーオキシカーボネート類としては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0052】
パーオキシエステル類としては、α,α−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート等が挙げられる。
【0053】
また、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等も好適な有機過酸化物として使用できる。
【0054】
使用する有機過酸化物は、適宜選択して使用すればよく、単独又は2種以上を組み合わせて用いても何等構わないが、中でもハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシエステル類及びジアシルパーオキサイド類が重合活性の点から特に好ましい。さらにこの中でも、硬化性組成物としたときの保存安定性の点から10時間半減期温度が60℃以上の有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0055】
該有機過酸化物と該アミン化合物からなる開始剤系にさらに、ベンゼンスルフィン酸やp−トルエンスルフィン酸及びその塩などのスルフィン酸を加えた系、5−ブチルバルビツール酸などのバルビツール酸系開始剤を配合しても何ら問題なく使用できる。
【0056】
また、アリールボレート化合物が酸により分解してラジカルを生じることを利用した、アリールボレート化合物/酸性化合物系の重合開始剤を用いることもできる。
【0057】
アリールボレート化合物は、分子中に少なくとも1個のホウ素−アリール結合を有する化合物であれば特に限定されず公知の化合物が使用できるが、その中でも、保存安定性を考慮すると、1分子中に3個または4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物を用いることが好ましく、さらには取り扱いや合成・入手の容易さから4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物がより好ましい。
【0058】
1分子中に3個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物として、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリス(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−フルオロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリス(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(ただし、いずれの化合物においてもアルキルはn−ブチル、n−オクチル又はn−ドデシルのいずれかを示す)の、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩又はブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
【0059】
1分子中に4個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物として、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素〔ただし、いずれの化合物においてもアルキルはn−ブチル、n−オクチル又はn−ドデシルのいずれかを示す〕の、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩又はブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
【0060】
上記で例示した各種のアリールボレート化合物は2種以上を併用しても良い。
【0061】
また、上記のアリールボレート化合物と併用される酸性化合物としては、酸性基含有ラジカル重合性単量体が好適に使用でき、1分子中に少なくとも1つの酸性基、又は当該酸性基の2つが脱水縮合した酸無水物構造、あるいは酸性基のヒドロキシル基がハロゲンに置換された酸ハロゲン化物基と、少なくとも1つのラジカル重合性不飽和基とを有す化合物であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。ここで酸性基とは、該基を有すラジカル重合性単量体の水溶液又は水懸濁液が酸性を呈す基を示す。当該酸性基としては、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)2}等、並びにこれらの基が酸無水物や酸ハロゲン化物等となったものが例示される。このような酸性基含有ラジカル重合性単量体の具体例としては、前記本発明におけるラジカル重合性単量体において例示した通りである。
【0062】
上述したアリールボレート化合物/酸性化合物系の重合開始剤に、更に有機過酸化物及び/又は遷移金属化合物を組み合わせて用いることも好適である。有機過酸化物としては前記した通りである。遷移金属化合物としては+IV価及び/又は+V価のバナジウム化合物が好適である。該+IV価及び/又は+V価のバナジウム化合物を具体的に例示すると、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)、等のバナジウム化合物が挙げられる。
【0063】
光重合開始剤としては2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド誘導体、ジアセチル、アセチルベンゾイル、ベンジル、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、4,4'−ジメトキシベンジル、4,4'−オキシベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン等のα−ジケトン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル;2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン誘導体;ベンゾフェノン、p,p'−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p'−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体が挙げられる。
【0064】
上記光重合開始剤の中でも、重合活性の良さ、生体への為害性の少なさ等の点からα−ジケトン類が好ましい。またα−ジケトンを用いる場合には、第3級アミン化合物と組み合わせて用いることが好ましい。α−ジケトンと組み合わせて用いることのできる第3級アミン化合物としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルベン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等が挙げられる。
【0065】
上記の各重合開始剤はそれぞれ単独で併用されるだけでなく、必要に応じて複数の種類を組み合わせて併用することもできる。
【0066】
本発明において、上記重合開始剤の配合量は、前記ラジカル重合性単量体を重合し、本発明の硬化性組成物を硬化させる量であれば特に限定されず、用いた重合開始剤の種類やラジカル重合性単量体成分の組成に応じて、公知の配合量を適宜選択すればよい。一般的には、ラジカル重合性単量体成分100質量部に対して、重合開始剤が0.01〜30質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部である。但し、前記酸性基含有ラジカル重合性単量体のように、ラジカル重合性の化合物を重合開始剤の一成分として用いる場合には、該化合物以外の重合開始剤を構成する成分の量を上記範囲とすることが好ましい。
【0067】
また、本発明においては、上述した(a)〜(d)成分に加えて、(e)親水性有機溶媒を配合することができ、これにより硬化時の酸素の影響をより低減することができる。即ち、親水性有機溶媒は、界面活性剤が配合される場合には該成分について、これらが硬化体表面に形成された水層中に均一に分布することを促進すると考えられ、この効果により、表面未重合の抑制効果が一層に向上するものと推測される。
【0068】
さらに、前記(a)長鎖(メタ)アクリレート系単量体を含有するラジカル重合性単量体成分と(b)水成分を含有する、本発明の硬化性組成物では、前記冷蔵保存(例えば0〜10℃)した場合に、保存期間が長期に及ぶと、水相が相分離し始め、均質な硬化性能が発揮されなくなる問題が発生することがあった。こうした状況にあって、上記の如くに、硬化性組成物に親水性有機溶媒を配合すると、この水相の相分離が高度に抑制されるようになり好適である。
【0069】
本発明において親水性有機溶媒は、静電的相互作用や水素結合などによって水分子と弱い結合を作る官能基を有する有機溶媒で、通常は、25℃における誘電率が10以上の有機溶媒が使用され、特に誘電率が15〜40のものが好ましい。具体的には水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基等の親水基を含む有機溶媒で、公知のものが特に制限なく使用できる。
【0070】
通常は、入手のしやすさ、臭い、環境に対する安全性から、アルコール類、ケトン類が好ましい。例示すると、アルコール類;メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert‐ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール等が挙げられる。ケトン類;アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0071】
これら親水性有機溶媒は単独でまたは二種以上を一緒に使用することができる。
【0072】
本発明において、上記親水性有機溶媒の配合量はラジカル重合性単量体100質量部当り、0.1〜10質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部の範囲とするのがよい。配合量が多いほど、表面未重合を抑制する効果が向上するが、一方で配合量が少ない方が硬化体の物性に与える影響が小さい。
【0073】
また、本発明においては、上述した(a)〜(d)成分、さらには好適な態様として配合可能な(e)成分に加えて、(f)水溶性ポリマーを配合することができ、これにより硬化時の酸素の影響をより低減することができる。即ち、水溶性ポリマーは、水に溶解し、界面活性剤とともに、硬化体表面に形成された水層中に分布し、表面未重合の抑制効果が一層に向上するものと思われる。
【0074】
尚、本発明における水溶性ポリマーとは、23℃における水に対する溶解度が1g/L以上、好ましくはであるポリマーを言う。
【0075】
このような水溶性ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、セルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ゼラチン、アルキルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、アクリル−スチレン共重合体、ウレタン系樹脂塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。このうち、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等を用いるのが、安価で入手が容易である観点から特に好ましい。これら水溶性ポリマーは単独でまたは二種以上を一緒に使用することができる。
【0076】
また、上記の水溶性ポリマーは、水に対する溶解度が上記範囲にあるものであれば特に制限されないが、分子量が大きくなりすぎると、硬化性組成物の粘度が高くなりすぎて操作性が低下する場合がある。従って、ポリスチレン換算での重量平均分子量が、1000〜500,000、好適には3000〜100,000のものが好適である。
【0077】
本発明において、上記水溶性ポリマーの配合量はラジカル重合性単量体100質量部当り、0.000001〜10質量部、特に好ましくは0.0001〜1質量部、最も好ましくは0.0005〜0.5質量部の範囲とするのがよい。配合量が多いほど、硬化体表面での水と界面活性剤の層に分散され表面未重合を抑制させる効果が向上するが、一方で配合量が少ない方が硬化体の物性に与える影響が小さい。
【0078】
本発明の硬化性組成物は歯科用途として、そのままで各種レジン系歯科材料表面の滑沢性付与、歯牙のマニキュアおよび変色歯の補修等の目的で使用される表面滑沢材や接着材として用いることが出来る。さらに、フィラーと組み合わることにより、より広範な用途に用いることができる。例えば、有機フィラーと組み合わせた場合には、義歯の補修材料、裏層用の材料、治療経過途中に一旦患者を帰してから治療を再開するまでの数日間、窩洞に充填される仮封材及び暫間的なクラウン、並びにブリッジの作製材料等として用いることが出来る。一方、無機フィラーと組み合わせた場合には、コンポジットレジン、硬質レジン、インレー、アンレー、クラウン等、歯科用修復材料として用いることが出来る。
【0079】
組み合わせるフィラーを具体的に例示すれば、有機フィラーとしてポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは一種または二種以上の混合物として用いることができる。
【0080】
無機フィラーとしては石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等が挙げられる。さらに無機フィラーの内、カチオン溶出性フィラーとしては、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等の水酸化物、酸化亜鉛、ケイ酸塩ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等の酸化物が挙げられる。これらもまた、一種または二種以上を混合して用いても何等差し支えない。
【0081】
これら無機フィラーに重合性単量体を予め添加し、ペースト状にした後、重合させ、粉砕して得られる粒状の有機−無機複合フィラーを用いる場合もある。
【0082】
上記したフィラーの粒径は特に限定されず、一般的に歯科用材料として使用されている0.01μm〜100μmの平均粒子径のフィラーが目的に応じて適宜使用できる。また、フィラーの屈折率も特に限定されず、一般的な歯科用フィラーが有する1.4〜1.7の範囲のものが制限なく使用できる。
【0083】
さらに、上記したフィラーの中でもとりわけ球状の無機フィラーを用いると、得られる硬化体の表面滑沢性が増し、優れた修復材料となり得る。
【0084】
上記した無機フィラーは、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することが、重合性単量体とのなじみをよくし、機械的強度や耐水性を向上させる上で望ましい。表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
【0085】
これらのフィラーの割合は、使用目的に応じて、重合性単量体と混合した時の粘度(操作性)や硬化体の機械的物性を考慮して適宜決定すればよいが、一般的には、重合性単量体100質量部に対して50〜1500質量部、好ましくは70〜1000質量部の範囲で用いられる。
【0086】
本発明の硬化性組成物には、さらに歯牙や歯肉の色調に合わせるため、顔料、蛍光顔料等の着色材料を配合したり、紫外線に対する変色防止のため紫外線吸収剤を添加したりしてもよい。また、保存安定性を向上させるために、重合禁止剤を配合することも好ましい。
【0087】
本発明の硬化性組成物は、上記(a)ラジカル重合性単量体成分、(b)水、(c)界面活性剤、(d)重合開始剤、及び必要に応じて配合される(e)親水性有機溶媒、(f)水溶性ポリマーやフィラーなどの任意成分が使用時に均一に混合されたものとなる。ここで均一とは、全成分が交互に溶解した状態のみならず、ラジカル重合性単量体成分中に水が乳濁した状態や、フィラーのような不溶性成分が分散した状態であってもよく、肉眼で相分離等が確認できない程度の均一さでよい。また、保存安定性などを考慮して、使用直前まで2つ以上に分割しておいてもよい。
【0088】
本発明の硬化性組成物は、公知の方法に従って製造されたものでよく、特に制限されるものではない。また、本発明の硬化性組成物は、歯科用途のみならず一般工業にも利用できる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に示すが、本発明はこれら実施例によって何等制限されるものではない。
【0090】
尚、実施例および比較例で使用した化合物とその略称、並びに調製された硬化性組成物の評価方法を以下に示す。
【0091】
[長鎖アルキルメタクリレート]
L;n−ラウリルメタクリレート
S;n−ステアリルメタクリレート
M;n−ミリスチルメタクリレート
O;n−オクチルメタクリレート
iso−S;イソステアリルメタクリレート
[アルキルメタクリレート]
NB;n−ブチルメタクリレート
EH;2−エチルへキシルメタクリレート
[ラジカル重合性単量体]
HD;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート
HPr;プロピオニルオキシエチルメタクリレート
Bis−GMA;2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル)プロパン
3G;トリエチレングリコールジメタクリレート
14G;分子量600のポリエチレングリコールのジメタクリレート
HEMA;ヒドロキシエチルメタクリレート
PM;2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェートとビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェートの混合物
MAC−10;11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカンボン酸
D−2.6E;2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン
[界面活性剤]
(アニオン性界面活性剤)
SLS;ラウリル硫酸ナトリウム
SDS;デシル硫酸ナトリウム
(ノニオン性界面活性剤)
POEL4;ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル
POEO7;ポリオキシエチレン(7)オレイルエーテル
[水溶性ポリマー]
PVA1000;ポリビニルアルコール(部分ケン化、平均重合度1000 重量平均分子量50000)
PAA;ポリアクリル酸(重量平均分子量5000)
[親水性有機溶媒]
EtOH;エタノール(25℃における誘電率25)
アセトン(25℃における誘電率21)
[重合開始剤]
(有機過酸化物)
BPO;ベンゾイルパーオキサイド
パーオクタH;1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド
(アミン化合物)
DMPT;N,N−ジメチル−p−トルイジン
DEPT;N,N−ジエタノール−p−トルイジン
DMBE;ジメチル安息香酸エチル
(α−ジケトン)
CQ;カンファーキノン
(アリールボレート化合物)
PhBTEOA;テトラフェニルホウ素トリエタノールアミン塩
(バナジウム化合物)
VOAA;酸化バナジウム(IV)アセチルアセトナート
[フィラー]
3Si−Zr;不定形シリカ−ジルコニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物(平均粒径:3μm)
0.3Si−Ti;球状シリカ−チタニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物(平均粒径:0.3μm)
PEMA;ポリエチルメタクリレート(平均粒径:30μm)
〔表面未重合量測定方法〕
直径50mm、厚さ1mmの孔を有するポリアセタール製の型に、歯科用硬化性組成物を填入し、37℃湿潤条件下恒温槽中で15分間放置するか(実施例23及び比較例8以外)、もしくは可視光線照射器(トクヤマ社製、パワーライト)により光照射を30秒間行い(実施例23及び比較例8)硬化させた。その後、エタノールで未重合層を除去した。最初に填入した重量からエタノールで未重合部分を除去した後の硬化体の重量を引いたものを未重合量とし、表面積当りの重さとして求めた。
【0092】
〔硬度測定方法〕
直径5mm、厚さ2mmの円形の孔を有するポリアセタール製の型に、硬化性組成物を填入し、37℃湿潤条件下恒温槽中で15分間放置し硬化させるか、もしくは可視光線照射器(トクヤマ社製、パワーライト)により光照射を30秒間行い硬化させた後、表面の未重合層を除去せずに、硬度計(松沢精機社製、MICRO HARDNESS TESTER)を用いて硬化体のヌープ硬度(Hk)もしくはビッカース硬度(Hv)を測定した。
【0093】
〔保存安定性試験〕
4℃の冷蔵庫に1週間保存した後、サンプルからの界面活性剤の析出を調べて、以下の2段階で評価した。
【0094】
○:界面活性剤が析出していない
×:界面活性剤が析出している
また、4℃の冷蔵庫に4週間保存した後、サンプルの相分離を調べて、以下の2段階で評価した。
【0095】
○:相分離しない
×:相分離している
<実施例1>
ラジカル重合性単量体として、HDを用い、以下の処方により、2成分をそれぞれ調製した。
【0096】
第1液の処方:
L(長鎖アルキルメタクリレート); 1.5質量部
HD(ラジカル重合性単量); 98.5質量部
水; 3質量部
SLS(アニオン性界面活性剤); 1.5質量部
BPO(有機過酸化物); 3質量部
第2液の処方:
L(長鎖アルキルメタクリレート); 1.5質量部
HD(ラジカル重合性単量); 98.5質量部
水; 3質量部
SLS(アニオン性界面活性剤); 1.5質量部
DMPT(アミン化合物); 1.5質量部
上記のような組成を有する第1液と第2液とを質量比で107.5:106となるように計りとって混合して硬化させ評価を行った。その結果、表面未重合量は4μg/mm、硬化体の硬度は5であった。
【0097】
<実施例2〜5>
用いる長鎖アルキルメタクリレートの種類を、表1に記載するように変化させた以外は、実施例1と同様にして試料を調製し、表面未重合量及び硬度の評価を行った。結果を併せて表1に示した。
【0098】
<比較例1、2>
表1に示したように、NB及びEHを加えた水、SLSを含むラジカル重合性単量体HDを、BPOとDMPTからなる重合開始剤を用いて硬化させた。その結果、表面未重合量はそれぞれ12μg/mm、10μg/mmであった。また、硬化体の硬度は低すぎて測定不能であった。
【0099】
【表1】

【0100】
<実施例6〜10、比較例3〜7>
表2に示す組成となるよう、水、界面活性剤、長鎖アルキルメタクリレートの配合量を変化させた以外は実施例1と同様にして硬化体を作製し評価した。表面未重合量及び硬度の評価結果を、前記実施例1の結果と併せて表2に示した。
【0101】
【表2】

【0102】
<実施例11>
ラジカル重合性単量体として、HPrとHDとの50:50(質量比)の混合物を用い、以下の処方により、2部材をそれぞれ調製した。
【0103】
第1成分(液材)の処方:
L(長鎖アルキルメタクリレート); 1.5質量部
HPr/HD(ラジカル重合性単量体); 98.5質量部
水; 3質量部
SLS(アニオン性界面活性剤); 1.5質量部
DMPT(アミン化合物); 1.5質量部
第2成分(粉材)の処方:
PEMA(有機樹脂成分); 150質量部
BPO(有機過酸化物); 3質量部
上記のような組成を有する第1成分と第2成分とを混合し、表3に示す組成の硬化性組成物を調製し作製した硬化体を評価した。その結果、表面未重合量は8μg/mm、硬化体の硬度は6であった。
【0104】
<実施例12>
表3に示す組成となるよう、界面活性剤の種類を変化させた以外は実施例11と同様にして硬化体を作製し評価した。結果を表3に示した。
【0105】
<実施例13>
ラジカル重合性単量体として、HPrとHDとの50:50(質量比)の混合物を用い、以下の処方により、2部材をそれぞれ調製した。
【0106】
第1成分(液材)の処方:
L(長鎖アルキルメタクリレート); 1.5質量部
HPr/HD(ラジカル重合性単量体); 98.5質量部
水; 3質量部
SLS(アニオン性界面活性剤); 1.5質量部
POEL4(ノニオン性界面活性剤); 1.5重量部
DMPT(アミン化合物); 1.5質量部
第2成分(粉材)の処方:
PEMA(有機樹脂成分); 150質量部
BPO(有機過酸化物); 3質量部
上記のような組成を有する第1成分と第2成分とを混合し、表3に示す組成の硬化性組成物を調製し作製した硬化体を評価した。その結果、表面未重合量は6μg/mm、硬化体の硬度は7であった。また、保存安定性試験において界面活性剤の析出は見られなかった。
【0107】
<実施例14〜16>
表3に示す組成となるよう、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の種類を変化させた以外は実施例13と同様にして硬化体を作製し評価した。結果を表3に示した。
【0108】
【表3】

【0109】
<実施例17>
ラジカル重合性単量体として、HPrとHDとの50:50(質量比)の混合物を用い、以下の処方により、2部材をそれぞれ調製した。
【0110】
第1成分(液材)の処方:
L(長鎖アルキルメタクリレート); 1.5質量部
HPr/HD(ラジカル重合性単量体); 98.5質量部
水; 3質量部
SLS(アニオン性界面活性剤); 1.5質量部
POEL4(ノニオン性界面活性剤); 1.5重量部
EtOH(親水性有機溶媒); 2重量部
DMPT(アミン化合物); 1.5質量部
第2成分(粉材)の処方:
PEMA(有機樹脂成分); 150質量部
BPO(有機過酸化物); 3質量部
上記のような組成を有する第1成分と第2成分とを混合し、表4に示す組成の硬化性組成物を調製し作製した硬化体を評価した。その結果、表面未重合量は5μg/mm、硬化体の硬度は8であった。また、保存安定性試験において相分離は見られなかった。
<実施例18〜20>
表4に示す組成となるよう、アニオン性界面活性剤、親水性有機溶媒の種類を変化させた以外は実施例17と同様にして硬化体を作製し評価した。結果を表4に示した。
【0111】
【表4】

【0112】
<実施例21>
ラジカル重合性単量体として、HPrとHDとの50:50(質量比)の混合物を用い、以下の処方により、2部材をそれぞれ調製した。
【0113】
第1成分(液材)の処方:
L(長鎖アルキルメタクリレート); 1.5質量部
HPr/HD(ラジカル重合性単量体); 98.5質量部
水; 3質量部
SLS(アニオン性界面活性剤); 1.5質量部
POEL4(ノニオン性界面活性剤); 1.5重量部
EtOH(親水性有機溶媒); 2質量部
PVA1000(水溶性ポリマー); 0.0001重量部
DMPT(アミン化合物); 1.5質量部
第2成分(粉材)の処方:
PEMA(有機樹脂成分); 150質量部
BPO(有機過酸化物); 3質量部
上記のような組成を有する第1成分と第2成分とを混合し、表5に示す組成の硬化性組成物を調製し作製した硬化体を評価した。その結果、表面未重合量は3μg/mm、硬化体の硬度は9であった。
<実施例22>
表5に示す組成となるよう、水溶性ポリマーの種類を変化させた以外は実施例21と同様にして硬化体を作製し評価した。結果を表5に示した。
【0114】
【表5】

【0115】
<実施例23>
遮光下、表6に示す組成の可視光硬化性組成物を調整し、これを可視光照射器により硬化させて硬化体を得、その表面未重合量及び硬度を評価した。結果を併せて表6に示した。
【0116】
<実施例24、25、比較例8〜10>
表6に示す組成となるようにA、Bの二つに分けて組成物を調整し、これらを混合して硬化体を得、その表面未重合量及び硬度を評価した。結果を併せて表6に示した。
【0117】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは鎖長が炭素数8〜24の長さである長鎖炭化水素基を示す。)
で示される長鎖(メタ)アクリレート系単量体0.1〜10質量%を含有するラジカル重合性単量体100質量部(b)水0.5〜10質量部、(c)界面活性剤0.1〜10質量部、及び(d)有効量のラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
一般式(1)で示される(メタ)アクリレート系単量体において、Rが長鎖アルキル基である請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
界面活性剤が、アニオン性界面活性剤である請求項1または請求項2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
さらに(e)親水性有機溶媒を0.1〜10質量部を含有していることを特徴とする請求項1〜3記載の硬化性組成物。
【請求項5】
さらに(f)水溶性ポリマーを0.000001〜10質量部を含有していることを特徴とする請求項1〜4記載の硬化性組成物。
【請求項6】
少なくともその表面の一部を、酸素を含む雰囲気に開放した状態で硬化させるものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
歯科用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2008−285645(P2008−285645A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309891(P2007−309891)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】