説明

磁気アイソレータ

【課題】 一様な外乱磁界の影響を除去しつつ、磁気アイソレータの小型化を図る。
【解決手段】 設置基板1上に設けられた第1の絶縁層2及び第2の絶縁層4と、第1の絶縁層2上に配置された第1の磁気抵抗効果素子3a、第2の磁気抵抗効果素子3b、第3の磁気抵抗効果素子3c及び第4の磁気抵抗効果素子3dと、第2の絶縁層2上に配置され、各磁気抵抗効果素子に対向して設けられた信号入力導体5aと、信号入力折返し導体5bとを信号入力接続線5cを介してミアンダライン状に接続されるよう構成された信号入力線5とを備え、信号入力線5に信号電流が通電されることにより第1の磁気抵抗効果素子3a及び第2の磁気抵抗効果素子3bに印加される磁界の方向と、第3の磁気抵抗効果素子3c及び第4の磁気抵抗効果素子3dに印加される磁界の方向とが、互いに逆方向となるように信号入力線5が構成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミアンダライン状に接続された信号入力線導体とブリッジ接続された磁気抵抗効果素子を備え、入力信号を出力信号に非接触で変換する磁気結合型のアイソレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触で絶縁を介して入力信号を出力信号に変換するアイソレータとしては、光式のフォトカプラがある。しかしながら伝送速度に限界があり、また構成部品の制限から小型化、ワンチップ化に向かないといった欠点があった。
【0003】
一方、磁気結合型のアイソレータとしては、入力に薄膜コイルを用い、出力に磁気抵抗効果素子や薄膜コイルを利用したものが提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−164259号公報 (図1)
【特許文献2】特表2001−521160号公報 (図1)
【特許文献3】特開2008−203238号公報 (図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気結合型のアイソレータとしては、上記特許文献1に開示されているように、信号入力線として渦巻状の薄膜コイルを利用したものがある。しかし、出力側である磁気抵抗効果素子の各ハーフブリッジに逆方向の磁界を付与するためには、周回したコイルの両サイドのみを利用することから、磁気抵抗効果素子に対向しない、つまり不用なコイル部分が増大し、ひいては磁気アイソレータの表面積が増大することになり、小型化に不利という問題点があった。また、入力側と出力側の間に導電層を有しているが、低導電率材で、絶縁破壊電圧は向上するものの、電界シールドとしての機能は不十分であるという問題点があった。
【0006】
また、上記特許文献2に開示されているように、入力側と出力側の間に電界シールドとしての導電層を有しているものもあるが、スリットを設置するなどの渦電流を抑制する機能を有しておらず、渦電流の発生により出力に誤差生じるという問題点があった。
【0007】
また、上記特許文献3は磁気アイソレータではなく電流センサの従来例ではあるが、磁気抵抗効果素子の上方及び下方に被測定導体が配置された電流検知デバイスが開示されている。しかしながら、上方及び下方の被測定導体を接続するため、信号入力線は螺旋形状となっており、このまま本発明の磁気アイソレータに適用しても、十分な小型化は見込めないという問題点があった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、入力信号線の形状をミアンダライン状とすることで、一様な外乱磁界の影響を除去しつつ、磁気アイソレータの小型化を図ることを目的としている。さらに、スリットを付した電界シールドを設置することで、出力の誤差要因となる電気的なノイズを低減し、出力精度の向上を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明に係る磁気アイソレータの一局面では、設置基板と、前記設置基板上に設けられた第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上に配置され、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に増加する磁気抵抗効果特性を有する第1及び第4の磁気抵抗効果素子と、前記第1の絶縁層上に配置され、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に減少する磁気抵抗効果特性を有する第2及び第3の磁気抵抗効果素子と、前記第1の絶縁層上に配置され、前記第1から前記第4の磁気抵抗効果素子を接続することにより、前記第1及び前記第2の磁気抵抗効果素子による第1のハーフブリッジ回路、及び前記第3及び前記第4の磁気抵抗効果素子による第2のハーフブリッジ回路からなるブリッジ回路を構成する接続電流線と、前記設置基板上に設けられた第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層上に配置され、前記各磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体と、前記各信号入力導体間に設けられた信号入力折返し導体とを交互にかつ直列に信号入力接続線を介してミアンダライン状に接続されるよう構成された信号入力線とを備え、前記信号入力線に信号電流が通電されることにより前記第1及び前記第2の磁気抵抗効果素子に印加される第1の磁界の方向と、前記第3及び前記第4の磁気抵抗効果素子に印加される第2の磁界の方向とが、互いに逆方向となるように前記信号入力線が構成されたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明に係る磁気アイソレータの別の局面では、設置基板と、前記設置基板上に設けられた第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上に配置され、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に増加する磁気抵抗効果特性を有する第1及び第4の磁気抵抗効果素子と、前記第1の絶縁層上に配置され、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に減少する磁気抵抗効果特性を有する第2及び第3の磁気抵抗効果素子と、前記第1の絶縁層上に配置され、前記第1から前記第4の磁気抵抗効果素子を接続することにより、前記第1及び前記第2の磁気抵抗効果素子による第1のハーフブリッジ回路、及び前記第3及び前記第4の磁気抵抗効果素子による第2のハーフブリッジ回路からなるブリッジ回路を構成する接続電流線と、前記設置基板上に設けられた第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層上に配置され、前記第1及び前記第2の磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体と、前記各信号入力導体間に設けられた信号入力折返し導体とを交互にかつ直列に信号入力接続線を介してミアンダライン状に接続されるよう構成された第1の信号入力支線と、前記設置基板上に設けられた第2の絶縁層上に配置され、前記第3及び前記第4の磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体と、前記各信号入力導体間に設けられた信号入力折返し導体とを交互にかつ直列に信号入力接続線を介してミアンダライン状に接続されるよう構成された第2の信号入力支線と、前記設置基板上に設けられた第2の絶縁層上に配置され、前記第1の信号入力支線と前記第2の信号入力支線とを並列に接続して構成される信号入力線とを備え、前記信号入力線に信号電流が通電されることにより前記第1及び前記第2の磁気抵抗効果素子に印加される第1の磁界の方向と、前記第3及び前記第4の磁気抵抗効果素子に印加される第2の磁界の方向とが、互いに逆方向となるように前記信号入力線が構成されたことを特徴とする。
【0011】
さらに、この発明に係る磁気アイソレータの別の局面では、設置基板と、前記設置基板上に設けられた第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上に配置され、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に増加する磁気抵抗効果特性を有する複数の第1の磁気抵抗効果素子及び複数の第4の磁気抵抗効果素子と、前記第1の絶縁層上に配置され、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に減少する磁気抵抗効果特性を有する複数の第2の磁気抵抗効果素子及び複数の第3の磁気抵抗効果素子と、前記第1の絶縁層上に配置され、前記複数の第1から前記複数の第4の磁気抵抗効果素子を接続することにより、前記複数の第1の磁気抵抗効果素子及び前記複数の第2の磁気抵抗効果素子による第1のハーフブリッジ回路、及び前記複数の第3及び前記複数の第4の磁気抵抗効果素子による第2のハーフブリッジ回路からなるブリッジ回路を構成する接続電流線と、前記設置基板上に設けられた第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層上に配置され、前記各磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体を信号入力接続線を介してミアンダライン状に接続されるよう構成された信号入力線とを備え、前記信号入力線に信号電流が通電されることにより前記第1及び前記第2の磁気抵抗効果素子に印加される第1の磁界の方向と、前記第3及び前記第4の磁気抵抗効果素子に印加される第2の磁界の方向とが、互いに逆方向となるように前記信号入力線が構成され、前記複数の第1の磁気抵抗効果素子に対向して設けられた信号入力導体はそれぞれ並列に接続され、前記複数の第2の磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体は並列に接続され、前記複数の第3の磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体は並列に接続され、前記複数の第4の磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体は並列に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記のような構成としたため、本発明に係る磁気アイソレータは、一様な外乱磁界の印加よる出力信号への悪影響を除去しつつ、その小型化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータを示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータの一部の断面構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータの入力信号検出部を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータの入力信号検出部を示す構成概略図である。
【図5】外部磁界無しの場合と外部磁界を印加した場合における強磁性体内の磁化の向きと強磁性体に流れる電流の向きを示す説明図である。
【図6】磁化の向きと電流の向きとがなす角度θに対する強磁性体の抵抗値の変化を示す特性図である。
【図7】バーバーポール電極構造を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータの一部の拡大断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータの一部の拡大平面図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータの電界シールド層を示す平面図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータの電界シールド層を示す平面図である。
【図12】本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータの変形例を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータの一部の拡大断面図である。
【図14】本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータと磁気アイソレータ回路部の概略構成図である。
【図15】本発明の実施の形態2に係る磁気アイソレータを示す平面図である。
【図16】本発明の実施の形態2に係る磁気アイソレータの一部の断面構造を示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態3に係る磁気アイソレータを示す平面図である。
【図18】本発明の実施の形態3に係る磁気アイソレータの一部の断面構造を示す断面図である。
【図19】本発明の実施の形態3に係る磁気アイソレータの変形例を示す断面図である。
【図20】本発明の実施の形態3に係る磁気アイソレータの別の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータを示す平面図であり、設置基板1上に、複数の磁気抵抗効果素子3a〜3d及び接続電流線3eから構成されるブリッジ回路3からなる入力信号検出部を含む層と、複数の信号入力導体5aと信号入力折返し導体5bと信号入力接続線5cとから構成される信号入力線5からなる信号入力部を含む層とが積層されて形成されている。図2はその一部の断面構造を示す断面図で、設置基板の主面上には第1の絶縁層2が積層されており、その主面上に入力信号検出部が形成されている。第1の絶縁層2の上にはさらに第2の絶縁層4が積層されており、その主面上に信号入力部が形成されている。第1の絶縁層2及び第2の絶縁層4は、設置基板1とブリッジ回路3との間及びブリッジ回路3と信号入力線5との間の電気的絶縁を確保する役割を有しているため、材料としては例えばシリコン窒化膜やシリコン酸化膜、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料が選択される。それぞれ耐電圧等の異なる仕様を有するため、印加される入力信号や予期されるサージ電圧等の非定常な場合も踏まえて、各種材料を選択する必要がある。設置基板1は、後工程で作製される磁気抵抗効果素子や絶縁層などを均一、かつ緻密に設置するためにフラットな面を有するものがよく、一般的にはシリコン基板やガラス基板が使用される。
【0015】
図3は上記入力信号検出部を示す平面図であり、図において、入力信号検出部は、設置基板1の中心線によって2つの領域に分けられ、それぞれの領域の上に設けられた第1の絶縁層2上に磁気抵抗効果素子3a、3b、磁気抵抗効果素子3c、3dが線対称に等しく配置される。4つの磁気抵抗効果素子(第1から第4の磁気抵抗効果素子)3a〜3dは、ここでは設置基板1の中心線に対して相互に平行方向に配置された異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)である。図3には斜め線で簡略的に示したが、第1の磁気抵抗効果素子3a、第4の磁気抵抗効果素子3dは、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に増加する磁気抵抗効果特性を有するように、また、第2の磁気抵抗効果素子3b、第3の磁気抵抗効果素子3cは、互いに逆方向の磁界に応じて抵抗値が共に減少する磁気抵抗効果特性を有するように、磁気抵抗効果素子上にはバーバーポール電極構造が形成されている。なお、4つの磁気抵抗効果素子3a〜3dでは、それぞれ直列接続された3本の磁気抵抗効果素子を同一平面内でクランク形状に形成し、磁界を受ける線路長を長くすることで、磁界の変化を検知しやすくしているが、1本の磁気抵抗効果素子で構成されていても良い。4つの磁気抵抗効果素子3a〜3dは中心線に対して線対称に構成したが、これに限るものではなく、中心線上に設けられた中心点に対して点対称に構成してもよい。
【0016】
接続電流線3eは、4つの磁気抵抗効果素子3a〜3d間を接続することにより、ブリッジ回路3を構成するものである。なお、便宜上図2の断面図には接続電流線3eは表示されていない。図4は本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータの入力信号検出部を示す構成概略図であり、図4において、4つの磁気抵抗効果素子3a〜3d間をそれぞれ接続電流線3eで接続することにより、磁気抵抗効果素子3a,3bの直列接続からなるハーフブリッジ回路(第1のハーフブリッジ回路)、および磁気抵抗効果素子3c,3dの直列接続からなるハーフブリッジ回路(第2のハーフブリッジ回路)の並列接続からなるブリッジ回路3を構成するものである。図3及び図4において、接続エリア(第1の接続エリア)21aは、ブリッジ回路3の磁気抵抗効果素子3a,3c間の接続電流線3eに接続され、接続エリア(第2の接続エリア)21bは、ブリッジ回路3の磁気抵抗効果素子3b,3d間の接続電流線3eに接続され、接続エリア21a,21bからブリッジ回路3に電圧が供給されるものである。接続エリア(第3の接続エリア)21cは、ブリッジ回路3の磁気抵抗効果素子3a,3b間の接続電流線3eに接続され、接続エリア(第4の接続エリア)21dは、ブリッジ回路3の磁気抵抗効果素子3c,3d間の接続電流線3eに接続され、接続エリア21c,21dからブリッジ回路3からの電圧が検出されるものである。各接続エリアは中心線近傍に配置されているが、4つの磁気抵抗効果素子3a〜3dの外側に配置されていても構わない。
【0017】
第1の絶縁層2の上に設けられた第2の絶縁層4の主面上には、複数の信号入力導体5aと信号入力折返し導体5bと信号入力接続線5cとから構成される信号入力線5が配置される。なお、便宜上図2の断面図には信号入力接続線5cは表示されていない。図2に示されるように、信号入力導体5aは磁気抵抗効果素子3aのそれぞれに対向して配置されている。図2には磁気抵抗効果素子3aを含む断面図しか示されていないが、他の磁気抵抗効果素子3b〜3dについても同様である。信号入力導体に流れる電流により発生する磁界を効率よく磁気抵抗効果素子に付与するためである。隣り合う信号入力導体5aの間には信号入力折返し導体5bが配置されている。各信号入力導体5aに流れる電流により発生する磁界を一定方向に揃えるためである。図1に示されるように、信号入力線5は複数の信号入力導体5aと複数の信号入力折返し導体5bとを交互にかつ直列に信号入力接続線5cを介してミアンダライン状に接続されるように構成されている。なお、本明細書内では、「ミアンダライン状に接続」とは、同一平面内でクランク形状に接続されていることを意味するものとする。信号入力導体5a、信号入力折返し導体5b及び信号入力接続線5cには、例えば低抵抗材料であるアルミニウム、銅又は金等が選択される。
【0018】
次に動作について説明する。まず、磁気抵抗効果素子の基本的な作用について説明する。磁気抵抗効果素子は、強磁性体の磁化の向きと、この強磁性体に流れる電流の向きとの
間の角度によって強磁性体の抵抗値が変化することを利用したものである。
【0019】
図5(a)は外部磁界無しの場合における強磁性体内の磁化の向きと強磁性体に流れる電流の向きを示す説明図、図5(b)は外部磁界を印加した場合における強磁性体内の磁化の向きと強磁性体に流れる電流の向きを示す説明図、図6は磁化の向きと電流の向きとがなす角度θに対する強磁性体の抵抗値の変化を示す特性図である。図5(a),(b)から分かるように、強磁性体内の磁化の向きは外部磁界の強さや向きによって影響を受ける。したがって、強磁性体の抵抗値から外部磁界を求めることが可能となる。
【0020】
また、図6から分かるように、磁化の向きの変化に対して抵抗値が最も変化するのは、角度θが45度の時である。さらに、角度θが45度の時に、角度θの変化に対して抵抗値が最も直線的に変化する。したがって、磁気抵抗効果素子を用いて磁界を検出する場合には、外部磁界が0の時に角度θが45度になるように工夫される。この方法には、バーバーポール電極構造を用いる方法がある。
【0021】
図7はバーバーポール電極構造を示す説明図であり、図において、アルミニウム電極11は、磁気抵抗効果素子の軸方向に対して45度傾けて設けられたものである。図7から分かるように、バーバーポール電極は、磁気抵抗効果素子の表面を流れる電流の向きを45度傾けるために設けられたものである。各々のアルミニウム電極11内では電位が等しく、電流はアルミニウム電極11に垂直に流れる。強磁性体を軸方向に磁化すると、外部磁界が0の時に磁化の向きと電流の向きとがなす角度θを45度にすることができる。
【0022】
図3に示した入力信号検出部では、3本の磁気抵抗効果素子3aにアルミニウム電極11を電流の向きに対して−45度傾けて設け、また、同様に3本の磁気抵抗効果素子3dにアルミニウム電極11を電流の向きに対して−45度傾けて設け、さらに、3本の磁気抵抗効果素子3bにアルミニウム電極11を電流の向きに対して+45度傾けて設け、さらに、同様に3本の磁気抵抗効果素子3cにアルミニウム電極11を電流の向きに対して+45度傾けて設けたものである。このように、バーバーポール電極構造を形成することにより、例えば、図3において、磁気抵抗効果素子3a,3bには、紙面左側より中心線の向きに外部磁界が加わり、また、磁気抵抗効果素子3c,3dには、紙面右側より中心線の向きに外部磁界が加わった場合に、磁気抵抗効果素子3a,3dでは、共に外部磁界の増加に応じて抵抗値が増加すると共に、外部磁界の減少に応じて抵抗値が減少する磁気抵抗効果特性を有するように、また、磁気抵抗効果素子3b,3cでは、逆に外部磁界の増加に応じて抵抗値が減少すると共に、外部磁界の減少に応じて抵抗値が増加する磁気抵抗効果特性を有するように構成することができる。ここではアルミニウムを電極の材料として用いているが、他の抵抗率の低い金属材料を用いてもよい。また、磁気抵抗効果素子は、例えば半導体微細加工技術により作製されるものであり、強磁性体のニッケル、鉄等を主成分とする薄膜があるがこれに限定されるものではない。
【0023】
次に磁気アイソレータの動作について説明する。図8は図2から磁気抵抗効果素子3aと信号入力導体5aとを取り出した断面図であるが、信号入力線5に信号が入力されると、信号入力導体5aの近傍には、図8の破線に示すように例えば左回転の磁界が、入力された信号、つまりは入力された電流の大きさに応じて発生するので、磁気抵抗効果素子3aには右方向の磁界が付与され、その方向は実線矢印方向となる。例えば図3において磁気抵抗効果素子3a、3bには、紙面左側より中心線の向きに磁界が加わり、また、磁気抵抗効果素子3c、3dには、紙面右側より中心線の向きに磁界が加わる構成となるように信号入力線5を配置する。
【0024】
具体的な信号入力線5の配置模式図を、図1の磁気アイソレータに示す。信号入力線5を構成する信号入力導体5a、信号入力折り返し導体5bを破線にて示している。実際には、信号入力導体5aは、各磁気抵抗効果素子に対向して設置されるが、図1ではわかりやすく各磁気抵抗効果素子に対してズラして示した。信号入力線5は、例えば、接続エリア22a側から入力信号である電流を印加し、各信号入力導体を経由し、途中で分岐または合流することなく、接続エリア22bに至る構成である。ここでは、接続エリア22a側から入力し接続エリア22bで出力するものとしたが、これに限るものではなく、接続エリア22b側から入力し接続エリア22aへ出力しても構わない。
【0025】
図9に、図1における各磁気抵抗効果素子と信号入力導体5a及び信号入力折り返し導体5bの位置関係を示す磁気アイソレータの一部の拡大平面図を示す。このように実際には、信号入力導体5aは、磁気抵抗効果素子3aに対向して設置され、信号入力折り返し導体5bは、2本の磁気抵抗効果素子5aの間を通るように設置される。磁気抵抗効果素子3a、3dでは、共に磁界の増加に応じて抵抗値が増加すると共に、磁界の減少に応じて抵抗値が減少する磁気抵抗効果特性を有するように、また、磁気抵抗効果素子3b、3cでは、逆の磁界の増加に応じて抵抗値が減少すると共に、磁界の減少に応じて抵抗値が増加する磁気抵抗効果特性を有するように構成されている。よって、信号入力線5に流れる電流の増加に応じて磁気抵抗効果素子3a、3dの抵抗値が増加すると共に、磁気抵抗効果素子3b、3cの抵抗値が減少し、信号入力線5に流れる電流の減少に応じて磁気抵抗効果素子3a、3dの抵抗値が減少すると共に、磁気抵抗効果素子3b、3cの抵抗値が増加する。このような各磁気抵抗効果素子の抵抗値の増減によりブリッジ回路3の平衡が崩れ、その結果として入力信号検出部の接続エリア21cと接続エリア21dとの間において、信号入力線5に流れる電流の増減に応じた出力電圧が発生する。
【0026】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気アイソレータは、信号入力線に入力信号として通電された電流を磁界に変換し、絶縁層を介して磁気抵抗効果素子に付与し、出力信号としてブリッジ回路の出力電圧に変換することにより、非接触で絶縁を介した入力信号から出力信号への変換を可能としている。
【0027】
さらに図2を参照して、ブリッジ回路3と信号入力線5との間の第2の絶縁層4の内部には、導電性を有する第1の電界シールド層6が設けられている。第1の電界シールド層6は、磁気アイソレータとしての性能を低下させる外部からのノイズ、特にここでは信号入力線5からブリッジ回路3の各磁気抵抗効果素子に印加される電界ノイズを除去あるいは低減させるためのものであり、接地電位に接続されている。第1の電界シールド層6の材料としては、例えば銅、アルミニウム等の導電性材料であれば良い。
【0028】
本実施の形態においては、この第1の電界シールド層6は、図10に示されるように磁気抵抗効果素子3aの感磁方向に沿う形でスリット6aを備えている。スリット6aがないと、入力信号が交流の場合において、第1の電界シールド層6に広範囲にわたって渦電流が誘起され、この渦電流により発生する磁界は外乱磁界となり、さらにはこの渦電流により発熱も生じるため、磁気アイソレータとしての性能低下につながる。スリット6aが存在すると、図10に示されるように、発生する渦電流6bは小さく分解され、また横長となるため渦電流により発生する磁界の方向は感磁方向ではなく不感方向となるため、磁気アイソレータとしての性能に与える悪影響は小さくできる。
【0029】
第1の電界シールド層6は、複数の電界シールド層で構成されていても良い。上述したように、スリットを備えた電界シールド層であれば、渦電流による性能低下を抑制できるが、スリットの占有面積が増加すると電磁ノイズ抑制効果は低下する恐れがある。このような場合、例えば図11に示されるように、第1の電界シールド層を2層で構成し、各層のスリットは互いに対向しないように設置すればよい。このようにすれば、各層に設けられたスリットが互いに補完しあい、電磁ノイズ抑制効果はさらに改善される。
【0030】
さらに図2を参照して、第2の絶縁層4の上方には、外部からの湿気や酸化剤、腐食剤の侵入を遮断し、内部構造の劣化を防止するための保護層7が設けられている。保護層7のさらに上面には磁気シールド層8が設けられている。磁気シールド層8は、主に外部からの磁界ノイズが磁気抵抗効果素子3a〜3dに印加されないよう、磁界ノイズを低減するために設置するもので、高透磁率の磁性材料で、例えば鉄など強磁性体の金属があるが、これに限定されるものではない。また、磁気シールド層8の設置場所も保護層7に限定されるものではなく、さらに下層に設置しても良い。
【0031】
本実施の形態によれば、設置基板1上に構成された第1の絶縁層2上に配置した4つの磁気抵抗効果素子3a〜3dで、第1のハーフブリッジ回路と第2のハーフブリッジ回路からブリッジ回路3が構成され、それぞれのハーフブリッジ回路に信号入力導体5aに起因する逆方向の磁界が付与される構造としているため、一様な外乱磁界に対してはブリッジ回路3の平衡が崩れることはなく、一様な外乱磁界の印加による出力信号への悪影響が除去される効果がある。また、各磁気抵抗効果素子に対向して、信号入力線5をミアンダライン状に設置した構成にしたため、磁気アイソレータが小型となる効果がある。
【0032】
図12は本発明の実施の形態1に係る磁気アイソレータの変形例を示す断面図である。図2に示された磁気アイソレータとの相違は、第1の絶縁層2と設置基板1との間に第3の絶縁層9が設けられ、第3の絶縁層9の主面上に、補償電流導体10aと補償電流折返し導体10bとそれらを相互に接続している補償電流接続線10cとから構成される補償電流線10が配置され、ブリッジ回路3と補償電流線10との間の第1の絶縁層2の内部には、導電性を有する第2の電界シールド層12が設けられている点であり、その他の構成要素は図2と同じであるので説明を省略する。
【0033】
設置基板1上に積層された第3の絶縁層9は、設置基板1と補償電流線10との間の電気的絶縁を確保する役割を有しているため、材料としては例えばシリコン窒化膜やシリコン酸化膜、あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料が選択される。それぞれ耐電圧等の異なる仕様を有するため、印加される入力信号や予期されるサージ電圧等の非定常な場合も踏まえて、各種材料を選択する必要がある。
【0034】
第3の絶縁層9の主面上には、複数の補償電流導体10aと補償電流折返し導体10bと補償電流接続線10cとから構成される補償電流線10が配置される。なお、便宜上図12の断面図には補償電流接続線10cは表示されていない。図12に示されるように、補償電流導体10aは信号入力導体5aに対向して配置されている。対向する信号入力導体5aが磁気抵抗効果素子3aに付与する磁界を効率的に打ち消すためである。隣り合う補償電流導体10aの間には補償電流折返し導体10bが配置されている。各補償電流導体10aに流れる電流により発生する補償磁界を一定方向に揃えるためである。補償電流線10は複数の補償電流導体10aと複数の補償電流折返し導体10bとを交互にかつ直列に補償電流接続線10cを介して、信号入力線5と同様に、ミアンダライン状に接続されるように構成されている。補償電流導体10a、補償電流折返し導体10b及び補償電流接続線10cには、例えば低抵抗材料であるアルミニウム、銅又は金等が選択される。
【0035】
補償電流線10に補償電流が通電されると、補償電流導体10aの近傍には、図13の破線に示す補償磁界方向のように例えば左回転の磁界が、入力された補償電流の大きさに応じて発生するので、磁気抵抗効果素子3aには左方向の磁界が付与され、その方向は破線矢印方向となる。補償電流線10を配置した磁気アイソレータ23と磁気アイソレータ回路部24の概略構成を図14に示す。信号入力線5に流れる電流の大きさに応じてブリッジ回路3の平衡が崩れる。このとき、磁気アイソレータ回路部24に設置された増幅回路部25では、入力信号検出部の接続エリア21cと接続エリア21dとの間において検出される出力電圧に基づいて、磁気抵抗効果素子3a〜3d近傍に発生する磁界を打ち消すような補償電流を補償電流線10に供給する。具体的には接続エリア21cと接続エリア21dとの間の出力電圧が0になるように、補償電流の大きさを調整する。補償電流導体10aは、その補償電流の大きさに応じて4つの磁気抵抗効果素子3a〜3d近傍に発生する磁界、すなわち信号入力導体5aに流れる電流の大きさに応じた磁界を相殺するような磁界を、図13においては、破線矢印方向に発生する。
【0036】
したがって、信号入力線5に流れる電流の大きさに応じたブリッジ回路3の平衡の崩れを、磁気アイソレータ回路部から供給される補償電流により修復することができる。ゆえに、磁気アイソレータ回路部から供給した補償電流の大きさにより、信号入力線5に流れる電流の大きさ、または信号入力線5に流れる電流の大きさに相関のある値として検出することができる。
【0037】
このように本変形例では、図2に示される構成に加えて補償電流線10を付加する構成、すなわち各磁気抵抗効果素子の近傍に発生した入力磁界を打ち消すような補償磁界を付与する磁気平衡式(クローズドループ)の構成とした。このような構成としたため、温度ドリフトを縮小し、線形応答性を向上する効果が得られ、広帯域化や高速応答化といった効果も見込める。
【0038】
さらに図12を参照して、ブリッジ回路3と補償電流線10との間の第1の絶縁層2の内部には、導電性を有する第2の電界シールド層12が設けられている。第2の電界シールド層12は、磁気アイソレータとしての性能を低下させる外部からのノイズ、特にここでは補償電流線10からブリッジ回路3の各磁気抵抗効果素子に印加される電界ノイズを除去あるいは低減させるためのものであり、接地電位に接続されている。第2の電界シールド層12の材料としては、例えば銅、アルミニウム等の導電性材料であれば良い。
【0039】
第1の電界シールド層6の場合と同様に、第2の電界シールド層12も、図10に示されるように磁気抵抗効果素子3aの感磁方向に沿う形でスリット6aを備えている。さらに同様に、図11に示されるように、第2の電界シールド層12を2層で構成し、各層のスリットは互いに対向しないように設置することも可能である。これらの効果については、第1の電界シールド層6の場合と同じなので説明を省略する。
【0040】
各絶縁層および保護層はすべて同一の素材ではなく、複数の素材を使い分けてもよく、絶縁性、耐圧の効果を上げるために積層化してもよい。磁気アイソレータの内部構造は、例えば半導体微細加工技術により一貫して作製されるのが望ましく、各層の作製には、スパッタリング、CVD等の技術が利用される。これらの技術によれば、非常に寸法精度が高く、小型な磁気アイソレータが作製できる。
【0041】
<実施の形態2>
図15は本発明の実施の形態2に係る磁気アイソレータを示す平面図であり、設置基板1上に、複数の磁気抵抗効果素子3a〜3d及び接続電流線3eから構成されるブリッジ回路3からなる入力信号検出部を含む層と、複数の信号入力導体5aと信号入力折返し導体5bと信号入力接続線5cとから構成される信号入力線5からなる信号入力部を含む層とが積層されて形成されている。図16はその一部の断面構造を示す断面図で、設置基板の主面上には第1の絶縁層2が積層されており、その主面上に入力信号検出部が形成されている。第1の絶縁層2の上にはさらに第2の絶縁層4が積層されており、その主面上に信号入力部が形成されている。ブリッジ回路3と信号入力線5との間の第2の絶縁層4の内部には、導電性を有する第1の電界シールド層6が設けられている。さらに、第2の絶縁層4の上方には保護層7が設けられている。保護層7のさらに上面には磁気シールド層8が設けられている。設置基板1、ブリッジ回路3、信号入力線5、第1の電界シールド層6、保護層7、磁気シールド層8及び各絶縁層の役割及び材料については実施の形態1と同様なので、その説明を省略する。
【0042】
図16を参照して、第1の絶縁層2の上に設けられた第2の絶縁層4の主面上には、複数の信号入力導体5aと信号入力折返し導体5bと信号入力接続線5cとを含む信号入力線5が配置される。なお、便宜上図16の断面図には信号入力接続線5cは表示されていない。信号入力導体5aは磁気抵抗効果素子3aに対向して配置されている。信号入力導体に流れる電流により発生する磁界を効率よく磁気抵抗効果素子に付与するためである。図16には磁気抵抗効果素子3aを含む断面図しか示されていないが、他の磁気抵抗効果素子3b〜3dについても同様である。隣り合う信号入力導体5aの間には信号入力折返し導体5bが配置されている。各信号入力導体5aに流れる電流により発生する磁界を一定方向に揃えるためである。
【0043】
実施の形態1との相違点は、信号入力線5の構成を、第1の信号入力支線51と第2の号入力支線52の並列接続構成とした点である。すなわち、図15において、接続エリア22aから伸びる信号入力接続線5cは第1の分岐点5dにおいて紙面の左右に分岐している。分岐点5dから左方向に伸びた信号入力接続線5cは、中心線から左の領域に存在する複数の信号入力導体5aと信号入力折返し導体5bとを交互にかつ直列にミアンダライン状に接続することにより第1の信号入力支線51を構成し、第2の分岐点5eに至っている。分岐点5dから右方向に伸びた信号入力接続線5cは、中心線から右の領域に存在する複数の信号入力導体5aと信号入力折返し導体5bとを交互にかつ直列にミアンダライン状に接続することにより第2の信号入力支線52を構成し、第2の分岐点5eに至っている。第2の分岐点5eに合流した信号入力接続線5cは接続エリア22bに接続されている。
【0044】
入力信号として接続エリア22aから接続エリア22bに電流を通電した場合、接続エリア22aから信号入力線5に流入した電流は、第1の分岐点5dにおいて、第1の信号入力支線51と第2の信号入力支線52とに分流され、その後第2の分岐点5eにおいて合流し接続エリア22bから流出する。すなわち、実施の形態1の場合と比較して、信号入力導体5aにおける電流密度を低減させることができる。信号入力導体5aの電流密度が増大すると、信号入力導体5aにおける発熱量が増大し、出力信号の応答精度の劣化に至ることもあるが、本実施の形態の構成によれば電流密度の増大を抑制することができ、出力信号の応答精度の劣化を防止できるという効果が得られる。
【0045】
図16の断面図に示されるように、信号入力導体5aの幅を拡大することにより、信号入力導体5a断面積を信号入力折返し導体5bの断面積よりも大きくすることも可能である。この場合も、信号入力導体5aにおける電流密度を低減させることができるので、出力信号の応答精度の劣化を防止できるという効果が得られる。
【0046】
なお、本実施の形態の説明においては、信号入力線5の構成を、第1の信号入力支線51と第2の信号入力支線52の2つ信号入力支線の並列接続構成としたが、3つ以上の信号入力支線の並列接続構成としても、本発明の効果が発揮されることは言うまでもない。また、実施の形態1と同様に、補償電流線10を付加し各磁気抵抗効果素子の近傍に発生した入力磁界を打ち消すような補償磁界を付与する磁気平衡式(クローズドループ)の構成とすることも可能である。これらの構成の役割、効果等については、実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0047】
<実施の形態3>
図17は本発明の実施の形態3に係る磁気アイソレータを示す平面図であり、設置基板1上に、複数の磁気抵抗効果素子3a〜3d及び接続電流線3eから構成されるブリッジ回路3からなる入力信号検出部を含む層と、複数の信号入力導体5aと信号入力接続線5cとから構成される信号入力線5からなる信号入力部を含む層とが積層されて形成されている。図18はその一部の断面構造を示す断面図で、設置基板の主面上には第1の絶縁層2が積層されており、その主面上に入力信号検出部が形成されている。第1の絶縁層2の上にはさらに第2の絶縁層4が積層されており、その主面上に信号入力部が形成されている。ブリッジ回路3と信号入力線5との間の第2の絶縁層4の内部には、導電性を有する第1の電界シールド層6が設けられている。さらに、第2の絶縁層4の上方には保護層7が設けられている。保護層7のさらに上面には磁気シールド層8が設けられている。設置基板1、ブリッジ回路3、信号入力線5、第1の電界シールド層6、保護層7、磁気シールド層8及び各絶縁層の役割及び材料については実施の形態1と同様なので、その説明を省略する。
【0048】
図18を参照して、第1の絶縁層2の上に設けられた第2の絶縁層4の主面上には、複数の信号入力導体5aと信号入力接続線5cとから構成される信号入力線5が配置される。なお、便宜上図18の断面図には信号入力接続線5cは表示されていない。信号入力導体5aは磁気抵抗効果素子3a及び磁気抵抗効果素子3cのそれぞれに対向して配置されている。信号入力導体に流れる電流により発生する磁界を効率よく磁気抵抗効果素子に付与するためである。図18には磁気抵抗効果素子3a及び磁気抵抗効果素子3cを含む断面図しか示されていないが、他の磁気抵抗効果素子3b、3dについても同様である。
【0049】
実施の形態1との相違点は、信号入力線5の構成を、3本の第1の磁気抵抗効果素子3aに対向してそれぞれ設けられた信号入力導体5aを並列に接続し、3本の第2の磁気抵抗効果素子3cに対向してそれぞれ設けられた信号入力導体5aを並列に接続し、3本の第3の磁気抵抗効果素子3bに対向してそれぞれ設けられた信号入力導体5aを並列に接続し、3本の第4の磁気抵抗効果素子3dに対向してそれぞれ設けられた信号入力導体5aを並列に接続し、これら4つの並列接続された信号入力導体5aを信号入力接続線5cによりミアンダライン状に接続する構成とし、信号入力折返し導体5bを省いた点である。
【0050】
すなわち、図17において、接続エリア22aから伸びる信号入力接続線5cは紙面の左方向に伸び、第1の分岐点5fに至る。第1の分岐点5fにおいて3つに分岐した信号入力接続線5cは、それぞれ第1の磁気抵抗効果素子3aに対向した3本の信号入力導体5aと、さらにその先の第3の磁気抵抗効果素子3cに対向した3本の信号入力導体5aとをミアンダライン状に接続し、第2の分岐点5gに至る。第2の分岐点5gから伸びる信号入力接続線5cは紙面の右方向に伸び、第3の分岐点5hに至る。第3の分岐点5hにおいて3つに分岐した信号入力接続線5cは、それぞれ第2の磁気抵抗効果素子3bに対向した3本の信号入力導体5aと、さらにその先の第4の磁気抵抗効果素子3dに対向した3本の信号入力導体5aをミアンダライン状に接続し、第4の分岐点5kに至る。第4の分岐点5kから左方向に伸びた信号入力接続線5cは、接続エリア22bに接続されている。
【0051】
このように、各磁気抵抗効果素子に対向する3本の信号入力導体5aを並列に接続したことにより、各信号入力導体5aに流れる電流により発生する磁界を一定方向に揃えることができるため、信号入力折返し導体5bを省くことができ、磁気アイソレータを小型化することができる。また、入力信号として接続エリア22aから接続エリア22bに電流を通電した場合、接続エリア22aから信号入力線5に流入した電流は、第1の分岐点5f及び第3の分岐点5hにおいて、各信号入力導体5aに分流するため、信号入力導体5aにおける電流密度を低減させることができる。
【0052】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、補償電流線10を付加し各磁気抵抗効果素子の近傍に発生した入力磁界を打ち消すような補償磁界を付与する磁気平衡式(クローズドループ)の構成とすることも可能である。図19は実施の形態3に係る磁気アイソレータの変形例を示す断面図で、第1の絶縁層2と設置基板1との間に第3の絶縁層9が設けられ、第3の絶縁層9の主面上の信号入力導体5aに対応した位置に、補償電流導体10aが配置されている。さらには、ブリッジ回路3と補償電流線10との間の第1の絶縁層2の内部に導電性を有する第2の電界シールド層12を設けるような構成とすることも可能である。これらの構成の役割、効果等については、実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0053】
本実施の形態の説明においては、第1の分岐点5fにおいて3つに分岐した信号入力接続線5cを、一旦第2の分岐点5gにおいて合成させ、第3の分岐点5hにおいて再び分岐させているが、第2の分岐点5g及び第3の分岐点5hを省略し、分岐したまま第3の磁気抵抗効果素子3cに対向した3本の信号入力導体5aと第2の磁気抵抗効果素子3bに対向した3本の信号入力導体5aとを接続しても良い。また、図17においては、信号入力線5を中心線に対して線対称に配置したものであったが、これに限るものではなく、図20の実施の形態3に係る磁気アイソレータの別の変形例を示す平面図に示されるように、信号入力線5を中心点に対して点対称に配置しても構わない。
【0054】
なお、実施の形態1から3の説明においては、磁気抵抗効果素子はバーバーポール電極を付与しリニア化した異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)を利用したが、これに限るものではなく、例えばスピンバルブ型の巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)やトンネル磁気抵抗効果素子(TMR素子)を用いても構わない。また、これらの実施の形態の説明においては、ブリッジ回路3の上方に信号入力線5を配置し、ブリッジ回路3の下方に補償電流線10を配置する構成としたが、これに限るものではない。すなわち、ブリッジ回路3の下方に信号入力線5を配置する構成、ブリッジ回路3の上方に補償電流線10を配置する構成又はそれらの組み合わせであっても、本発明の効果が発揮されることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
この発明に係る磁気アイソレータは、電気的絶縁を必要とする2つの回路間の信号伝達に適用することにより、その回路を含む機器の性能向上に寄与することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 設置基板
2 第1の絶縁層
3 ブリッジ回路
3a 第1の磁気抵抗効果素子
3b 第2の磁気抵抗効果素子
3c 第3の磁気抵抗効果素子
3d 第4の磁気抵抗効果素子
3e 接続電流線
4 第2の絶縁層
5 信号入力線
5a 信号入力導体
5b 信号入力折返し導体
5c 信号入力接続線
5d 第1の分岐点
5e 第2の分岐点
5f 第1の分岐点
5g 第2の分岐点
5h 第3の分岐点
5k 第4の分岐点
51 第1の信号入力支線
52 第2の信号入力支線
6 第1の電界シールド層
6a スリット
6b 渦電流
7 保護層
8 磁気シールド層
9 第3の絶縁層
10 補償電流線
10a 補償電流導体
10b 補償電流折返し導体
10c 補償電流接続線
11 アルミニウム電極
12 第2の電界シールド層
21a 接続エリア
21b 接続エリア
21c 接続エリア
21d 接続エリア
22a 接続エリア
22b 接続エリア
23 磁気アイソレータ
24 磁気アイソレータ回路部
25 増幅回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置基板と、
前記設置基板上に設けられた第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に配置され、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に増加する磁気抵抗効果特性を有する第1及び第4の磁気抵抗効果素子と、
前記第1の絶縁層上に配置され、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に減少する磁気抵抗効果特性を有する第2及び第3の磁気抵抗効果素子と、
前記第1の絶縁層上に配置され、前記第1から前記第4の磁気抵抗効果素子を接続することにより、前記第1及び前記第2の磁気抵抗効果素子による第1のハーフブリッジ回路、及び前記第3及び前記第4の磁気抵抗効果素子による第2のハーフブリッジ回路からなるブリッジ回路を構成する接続電流線と、
前記設置基板上に設けられた第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層上に配置され、前記各磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体と、前記各信号入力導体間に設けられた信号入力折返し導体とを交互にかつ直列に信号入力接続線を介してミアンダライン状に接続されるよう構成された信号入力線とを備え、
前記信号入力線に信号電流が通電されることにより前記第1及び前記第2の磁気抵抗効果素子に印加される第1の磁界の方向と、前記第3及び前記第4の磁気抵抗効果素子に印加される第2の磁界の方向とが、互いに逆方向となるように前記信号入力線が構成されたことを特徴とする磁気アイソレータ。
【請求項2】
設置基板と、
前記設置基板上に設けられた第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に配置され、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に増加する磁気抵抗効果特性を有する第1及び第4の磁気抵抗効果素子と、
前記第1の絶縁層上に配置され、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に減少する磁気抵抗効果特性を有する第2及び第3の磁気抵抗効果素子と、
前記第1の絶縁層上に配置され、前記第1から前記第4の磁気抵抗効果素子を接続することにより、前記第1及び前記第2の磁気抵抗効果素子による第1のハーフブリッジ回路、及び前記第3及び前記第4の磁気抵抗効果素子による第2のハーフブリッジ回路からなるブリッジ回路を構成する接続電流線と、
前記設置基板上に設けられた第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層上に配置され、前記第1及び前記第2の磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体と、前記各信号入力導体間に設けられた信号入力折返し導体とを交互にかつ直列に信号入力接続線を介してミアンダライン状に接続されるよう構成された第1の信号入力支線と、
前記設置基板上に設けられた第2の絶縁層上に配置され、前記第3及び前記第4の磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体と、前記各信号入力導体間に設けられた信号入力折返し導体とを交互にかつ直列に信号入力接続線を介してミアンダライン状に接続されるよう構成された第2の信号入力支線と、
前記設置基板上に設けられた第2の絶縁層上に配置され、前記第1の信号入力支線と前記第2の信号入力支線とを並列に接続して構成される信号入力線とを備え、
前記信号入力線に信号電流が通電されることにより前記第1及び前記第2の磁気抵抗効果素子に印加される第1の磁界の方向と、前記第3及び前記第4の磁気抵抗効果素子に印加される第2の磁界の方向とが、互いに逆方向となるように前記信号入力線が構成されたことを特徴とする磁気アイソレータ。
【請求項3】
設置基板と、
前記設置基板上に設けられた第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に配置され、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に増加する磁気抵抗効果特性を有する複数の第1の磁気抵抗効果素子及び複数の第4の磁気抵抗効果素子と、
前記第1の絶縁層上に配置され、互いに逆方向の磁界の増加に応じて抵抗値が共に減少する磁気抵抗効果特性を有する複数の第2の磁気抵抗効果素子及び複数の第3の磁気抵抗効果素子と、
前記第1の絶縁層上に配置され、前記複数の第1から前記複数の第4の磁気抵抗効果素子を接続することにより、前記複数の第1の磁気抵抗効果素子及び前記複数の第2の磁気抵抗効果素子による第1のハーフブリッジ回路、及び前記複数の第3及び前記複数の第4の磁気抵抗効果素子による第2のハーフブリッジ回路からなるブリッジ回路を構成する接続電流線と、
前記設置基板上に設けられた第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層上に配置され、前記各磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体を信号入力接続線を介してミアンダライン状に接続されるよう構成された信号入力線とを備え、
前記信号入力線に信号電流が通電されることにより前記第1及び前記第2の磁気抵抗効果素子に印加される第1の磁界の方向と、前記第3及び前記第4の磁気抵抗効果素子に印加される第2の磁界の方向とが、互いに逆方向となるように前記信号入力線が構成され、
前記複数の第1の磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体は並列に接続され、前記複数の第2の磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体は並列に接続され、前記複数の第3の磁気抵抗効果素子に対向してそれぞれ設けられた信号入力導体は並列に接続され、前記複数の第4の磁気抵抗効果素子に対向して設けられた信号入力導体はそれぞれ並列に接続されていることを特徴とする磁気アイソレータ。
【請求項4】
前記各磁気抵抗効果素子と前記信号入力線との間に、スリットを有する第1の電界シールド層を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の磁気アイソレータ。
【請求項5】
前記第1の電界シールド層は2層で構成され、各層のスリットは互いに対向しないように設置されていることを特徴とする請求項4に記載の磁気アイソレータ。
【請求項6】
前記設置基板上に設けられた第3の絶縁層と、
前記第3の絶縁層上に配置され、前記信号入力導体に対向して設けられた補償電流導体を補償電流接続線を介して接続し、前記信号入力線に対向するように構成された補償電流線を備え、前記各補償電流線はそれぞれ対向する前記信号入力導体がそれぞれ対向する前記磁気抵抗効果素子に付与する磁界を打ち消す方向に補償磁界を発生するように前記補償電流線が構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の磁気アイソレータ。
【請求項7】
前記各磁気抵抗効果素子と前記補償電流線との間に、スリットを有する第2の電界シールド層を設けたことを特徴とする請求項6に記載の磁気アイソレータ。
【請求項8】
前記第2の電界シールド層は2層で構成され、各層のスリットは互いに対向しないように設置されていることを特徴とする請求項7に記載の磁気アイソレータ。
【請求項9】
磁気シールド層を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の磁気アイソレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−105060(P2012−105060A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251815(P2010−251815)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】