説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】 感度分布データと画像データのデータサイズが異なっていても、常に正確な感度補正を可能とする。
【解決手段】 第1のRF受信コイルと第2のRF受信コイルとを備えて、被検体からのエコー信号を計測する計測制御手段と、第2のRF受信コイルで受信したエコー信号から被検体の診断画像を取得する演算処理手段と、を備え、演算処理手段は、2つのRF受信コイルの感度画像を用いて第2のRF受信コイルの感度分布を求め、感度分布を用いて診断画像の輝度分布を補正する感度補正演算を行い、計測制御手段は、2つのRF受信コイルの感度画像が診断画像の画像サイズよりも小さい画像サイズとなるように、該2つのRF受信コイルの感度画像用のエコー信号を計測し、演算処理手段は、感度分布の画像サイズを診断画像の画像サイズより大きくして、感度補正演算を行う

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、「NMR」という)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する核磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)装置における、RF受信コイルの感度補正に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号(エコー信号)を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮像においては、エコー信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたエコー信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
このようなMRI装置において、被検体から放出されるエコー信号は高周波磁場であり、この高周波磁場は被検体を取り巻く高周波アンテナの一種であるRF受信コイルによって検出される。RF受信コイルは、広い領域に亘って高感度であり、しかもエコー信号を高いS/N比で検出できることが要求される。例えば、鞍型コイルやスロッテドチューブレゾネータ(以下、STRと略記する)、マルチプルエレメントレゾネータ(以下、MERという。バードケージレゾネータとも呼ばれる)、ソレノイドコイルなどが使われている。また、脊椎用や局所用には円形のコイルなども使われる。
【0004】
MERについては、例えば(特許文献1)及び(特許文献2)で詳細な構成が開示されており、これらRF受信コイルの構造はその感度分布データが画像上で極力均一になるように検討されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−95234号公報
【特許文献2】特開昭60−132547号公報
【特許文献3】特開2002-315731号公報
【特許文献4】特開2000-268204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、RF受信コイルにおいては、受信したエコー信号のS/N比とその感度領域の広さは、一般にトレードオフの関係がある。つまり、受信したエコー信号のS/N比を向上させるためには感度領域を狭くする必要があり、感度領域を広くすると受信したエコー信号のS/N比が低下する。そのため、RF受信コイルの感度領域を無制限に拡げることはできない。従って、実用的なRF受信コイルでは、感度領域の広さが画像領域に比べて必ずしも充分でなく、感度分布が画像上で均一には設計されていない場合がある。この傾向は、頸部や、脊椎、頭部用コイルで特に顕著である。このような場合、得られた画像において、低感度領域がディスプレイ上で暗くなって輝度不均一が生じてしまい、画像情報が充分に表示されない。
【0007】
このようなRF受信コイルの感度分布の不均一を補正する方法として、RF受信コイルの感度分布データを、画像データ取得のための本計測の前に、予め取得しておき、これを使って均一な輝度分布になるように画像データを補正する方法が知られている(特許文献3)。
【0008】
この方法では、まず人体等価ファントムを撮像することによりRF受信コイルの感度分布データ(以下参照データという)I0(x、z)を得る。この参照データは、画像空間(例えばx、z平面とする)の関数として与えられる。そして、このRF受信コイルで取得された元画像データI(x、z)を、このRF受信コイルの感度分布データに対応する参照データI0(x、z)を用いて、感度補正後の画像データI'(x、z)を求める。即ち、

I'(x、z) = I(x、z)/I0(x、z) (1)

と演算することにより、画像データの輝度不均一は補正され、補正後の画像データはほぼ均一の輝度を持つことになる。
【0009】
全体の撮像時間を短くするためには、参照データの取得時間は可能な限り短いことが望まれ、その一つの方法として、画像データより小さいサイズで感度分布データを取得し、それを画像データと同じサイズに拡大して参照データとする。しかし、静磁場不均一などにより、参照データを単純に拡大し、そのまま感度補正すると十分な効果が得られない場合がある。
【0010】
そこで、本発明は、感度分布データと画像データのデータサイズが異なっていても、常に正確な感度補正が可能なMRI装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のMRI装置は以下のように構成される。即ち、
第1のRF受信コイルと第2のRF受信コイルとを備えて、被検体からのエコー信号を計測する計測制御手段と、第2のRF受信コイルで受信したエコー信号から被検体の診断画像を取得する演算処理手段と、を備え、演算処理手段は、2つのRF受信コイルの感度画像を用いて第2のRF受信コイルの感度分布を求め、感度分布を用いて診断画像の輝度分布を補正する感度補正演算を行い、計測制御手段は、2つのRF受信コイルの感度画像が診断画像の画像サイズよりも小さい画像サイズとなるように、該2つのRF受信コイルの感度画像用のエコー信号を計測し、演算処理手段は、感度分布の画像サイズを診断画像の画像サイズより大きくして、感度補正演算を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のMRI装置によれば、感度分布データと画像データのデータサイズが異なっていても、常に正確な感度補正を行うことができる。その結果、感度分布データの取得時間を短縮でき、検査のトータル時間も短くすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のMRI装置の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
最初に、本発明のMRI装置の一例の概略を図1に基づいて説明する。図1は本発明のMRI装置の一例の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、図1に示すように、静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7と、シーケンサ4と、中央処理装置(CPU)8と、を備えて構成される。
【0015】
静磁場発生系2は、被検体1の周りの空間にその体軸方向または体軸と直交する方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検体1の周りに永久磁石方式または常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生手段(図示せず)が配置されている。
【0016】
傾斜磁場発生系 (傾斜磁場発生手段) 3は、X,Y,Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイル9を駆動する傾斜磁場電源10とから成り、後述のシ−ケンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X,Y,Zの3軸方向の傾斜磁場を被検体1に印加する。より具体的には、X、Y、Zのいずれかの1方向にスライス選択傾斜磁場パルス(Gs)を印加して被検体1に対するスライス面を設定し、残り2つの方向に位相エンコード傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード(又は、読み出し)傾斜磁場パルス(Gf)を印加して、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。
【0017】
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるためにRFパルスを照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(RF送信コイル)14aとから成る。高周波発振器11から出力された高周波パルスをシーケンサ4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置されたRF送信コイル14aに供給することにより、電磁波(RFパルス)が被検体1に照射される。
【0018】
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル(RF受信コイル)14bと増幅器15と直交位相検波器16と、A/D変換器17とから成る。本発明のMRI装置は、RF受信コイル14aとして、広い範囲に亘ってほぼ均一な感度領域を有する全身用RF受信コイルと、頭や頸椎、膝等の被検体の特定部位の撮像に好適なRF受信コイルと、表面コイルやそれをアレイ状に配列して成るアレイコイル等の局所コイルを備え、それらの内の好適な1以上のRF受信コイルが選択されて撮像が行われる。RF送信コイル14aから照射された電磁波によって誘起される被検体1の応答の電磁波(NMR信号)が被検体1に近接して配置されたRF受信コイル14bで検出され、増幅器15で増幅された後、シーケンサ4からの指令によるタイミングで直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、信号処理系7に送られる。
【0019】
シーケンサ4は、高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)と傾斜磁場パルスをある所定のシーケンスで繰り返し印加してエコー信号の計測を制御する計測制御手段である。シーケンサ4は、CPU8の制御で動作し、被検体1の断層画像の再構成に必要なエコー信号の計測のための種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送って、これらの系を制御することにより、エコー信号の計測を制御する。
【0020】
信号処理系7は、光ディスク19、磁気ディスク18等の外部記憶装置と、CRT等からなるディスプレイ20とを有し、受信系6からのエコー信号のデータがCPU8に入力されると、CPU8(演算処理手段)が信号処理、画像再構成等の演算処理を実行し、その結果である被検体1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク18等に記録する。また、CPU8は、K空間に対応するメモリを内部に備えてエコー信号のデータを記憶する。以下、エコー信号のデータをK空間に配置する旨の記載は、エコー信号のデータがこのメモリに書き込まれて記憶されることを意味する。
【0021】
操作系25は、MRI装置の各種制御情報や上記信号処理系7で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール又はマウス23、及び、キーボード24から成る。この操作系25はディスプレイ20に近接して配置され、操作者がディスプレイ20を見ながら操作系25を通してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
【0022】
なお、図1において、送信側及び受信側のRF受信コイル14a,14bと傾斜磁場コイル9は、被検体1の周りの空間に配置された静磁場発生系2の静磁場空間内に設置されている。
【0023】
現在MRI装置の撮像対象スピン種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質であるプロトンである。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0024】
(第1の実施形態)
次に、本発明のMRI装置の第1の実施形態を説明する。本実施形態は、RF受信コイルの参照データの画像サイズを診断画像データの画像サイズよりも大きくして、RF受信コイルの感度補正を行う形態である。以下、図2、3に示す本実施形態の処理フローに基づいて本実施形態を詳細に説明する。図2は、処理フローを示すフローチャートであり、図3は、各処理を模式的に示す図である。
【0025】
ステップ201で、全身用RF受信コイルの感度画像Iw(x,z)が取得される。操作者は、全身用RF受信コイルを送受信兼用として設定する。その設定に基づいて、シーケンサ4は、全身用RF受信コイルのみを用いて送受信を行い、被検体を撮像する。好ましくは、後述する診断画像と同じ断面を撮像する。そして、CPU8が、撮像により計測されたエコー信号を用いて、全身用RF受信コイルの感度画像を取得する。
【0026】
この感度画像の取得の際には、好ましくは、感度画像の画像マトリクスを診断画像の画像マトリクスよりも少なくして、感度画像取得の為の撮像時間を短縮する。例えば、診断画像マトリックスを256X256とすると、感度画像マトリックスを16X16や32X32とすることにより、診断画像の撮像時間よりも1/16〜1/8に撮像時間を短縮できる。この感度画像マトリックスは、全身用RF受信コイル及び次ステップのRF受信コイルの感度分布の変化度合いに応じて変更すればよい。感度分布の変化度合いが少ない場合は小さいマトリックス数で、変化度合いが大きい場合は大きいマトリックス数とすればよい。図3に全身用RF受信コイルの感度画像201を示す。この感度画像201は、マトリックスサイズがa x b (a, b は2のべき乗数で例えば16, 32, 64等である)で取得された例である。
【0027】
また、感度画像取得のために用いるシーケンスは、特に限定されないが、好ましくは、静磁場不均一の影響を排除してRF受信コイルの感度分布データのみが反映されたエコー信号を計測するために、スピンエコー系のシーケンスが適当である。スピンエコーシーケンスを用いる場合は、例えば、TR=100msec TE=10msec, 位相エンコード数32, 周波数エンコード数32 , FOVは被検体の関心領域より広く、且つ、RF受信コイルの感度範囲より狭くして30cmとして、2次元又は3次元撮像を行う。
【0028】
ステップ202で、RF受信コイルの感度画像Ic(x,z)が取得される。操作者は、全身用RF受信コイルを送信コイルに設定し、被検体に所望のRF受信コイル(例えば膝用コイル)を装着して、これらRFコイルを用いて撮像を行い、RF受信コイルの感度画像を取得する。好ましくは、後述する診断画像と同じ断面を撮像する。撮像の際には、好ましくは、RF受信コイルの感度画像のマトリックスサイズを、ステップ201の全身用RF受信コイルの感度画像とおなじマトリックスサイズとし、全身用RF受信コイルの感度画像取得時と同じシーケンスを用いて撮像を行う。図3にRF受信コイルの感度画像202を示す。この感度画像202は、全身用RF受信コイルの感度画像と同じマトリックスサイズa x bで取得された例である。
【0029】
ステップ203で、RF受信コイルの感度分布データSc(x,z)が取得される。CPU8は、ステップ202で取得されたRF受信コイルの感度画像 Ic(x,z)を、ステップ201で取得された全身用RF受信コイルの感度画像 Iw(x,z)で除算し (203)、これらの比からRF受信コイルの感度分布データSc(x,z)を求める:

Sc(x, z) = Ic(x,z) / Iw(x,z)

図3にRF受信コイルの感度分布データSc(x,z)204を示す。この感度分布データSc(x,z)204は、全身用RF受信コイル及びRF受信コイルの感度画像と同じマトリックスサイズa x bで取得された例である。
【0030】
ステップ204で、ステップ203で求めた感度分布データSc(x,z)から参照データI0(x,z)が求められる。CPU8は、感度分布データSc(x,z)の画像サイズを、次ステップ205で取得される診断画像I(x,z)の画像サイズよりも大きくして、参照データI0(x,z)209を求める。求めたRF受信コイルの参照データI0(x,z)209は、磁気ディスク18等の外部記憶装置に記憶される。このステップの詳細は後述する。
【0031】
ステップ205で、RF受信コイルを用いて被検体の診断画像I(x, z)が取得される。操作者は、ステップ202で設定したRF受信コイルを用いて、被検体の所望の断面を撮像し、その診断画像を取得する。撮像に用いるシーケンスとその撮像パラメータは任意に設定でき、本実施形態は特に限定されない。図3に診断画像205の例を示す。この診断画像はマトリックスサイズAXB(A、Bは、2のべき乗数で例えば、128,256,512である。)で取得された例である。
【0032】
ステップ206で、ステップ204で求められた参照データI0(x、z)を用いて、ステップ205で取得された診断画像I(x, z)の感度補正が行われる。CPU8は、前述の(1)式に基づいて、I(x, z)205をI0(x、z)209で除算する(210)ことにより、診断画像I(x、z)205の感度補正を行い、均一な輝度分布を有する補正後の診断画像211を取得する。図3に輝度補正された診断画像211を示す。この輝度補正後の診断画像211のマトリックスサイズは診断画像205と同じAXBである。
【0033】
次に、ステップ204の参照データI0(x、z)を求める処理の詳細を説明する。
ステップ204-1で、感度分布データのマトリックスサイズが拡大される。ステップ203で求められ感度分布データSc(x, z)204のマトリックスサイズは、その元となる感度画像201のマトリックスサイズが、一般的には診断画像I(x, z) 205のマトリックスサイズよりも小さくして取得されるので、CPU8は、感度分布データ204のマトリックスサイズを診断画像205のマトリックスサイズに適用可能なほどに拡大する。従来は、診断画像のマトリックスサイズと同じマトリックスサイズとなるように、感度分布データのマトリックスサイズを拡大していたが、本実施形態では、CPU8は、診断画像205のマトリックスサイズよりも大きくなるように感度分布データ204のマトリックスサイズを拡大する。例えば、診断画像I(x, z) 205のマトリックスサイズを( A X B ) とすると、感度分布データSc(x, z)204のマトリックスサイズを

( A +σx ) X ( B +σz )

とする。つまり、x方向を{(A+σx)/A}倍に、z方向を{(B+σz)/B}倍に、それぞれ拡大する。ここでσx、σzは、拡大パラメータであり、次ステップのフィルタリングパラメータを用いるものである。マトリックスサイズが拡大された感度分布データをSc'(x, z)とする。図3に拡大された感度分布データ206の例を示す。この拡大感度分布データ206のマトリックスサイズは、上記の通りである。
【0034】
ステップ204-2で、拡大された感度分布データに対して、感度分布データの端部の値を抑圧するフィルタリング演算(F)が行われる。CPU8は、ステップ205-1で拡大した感度分布データSc'(x, z)に対して、以下のガウシアン関数f(x,z)207を掛ける(205):
F{Sc'(x, z)}= Sc'(x, z) ・f(x, z)
f (x, z ) = exp { - x2 / (2σx) − z2 / (2σz) } (2)
このガウシアン関数f(x,2)207は、(x, z)の値が大きくなるほど値が小さくなる関数であることから、この関数のフィルタリングにより、マトリックスサイズが拡大された感度分布データの端部の値が適正に抑圧される。図3に、上記(2)式のガウシアン関数f(x,z)207とフィルタリング後の感度分布データF{Sc'(x, z)}208を示す。フィルタリング後の感度分布データ208は、拡大された感度分布データ206と同じマトリックスサイズ( A +σx )X( B +σz )となるが、その端部の値はフィルタリングにより抑圧されている。このフィルタリングに行うことにより、リンギングアーチファクトの発生を抑制することができる。
【0035】
ステップ204-3で、フィルタリングされた感度分布データから、参照データI0(x、z)が抽出される。CPU8は、フィルタリングされた感度分布データF{Sc'(x, z)}208の中央部分から、診断画像205と同じマトリックスサイズの感度分布データを抽出して、これを参照データI0(x、z)209とする。図3に、参照データI0(x、z)209を示す。この参照データI0(x、z)209のマトリックスサイズは、診断画像205と同じ A X B である。
【0036】
以上までが、本実施形態の処理フローの説明である。なお、上記処理フローで説明した各ステップの実行順序は、上記の順序に限られない。ステップ201と202はどちらが先でも良い。要は、ステップ203の前に両受信コイルの感度画像が取得されていればよい。また、ステップ205はステップ206より前のいずれでも良い。
【0037】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置によれば、RF受信コイルの感度情報を持つ感度分布データを、被検体の診断画像より大きく拡大した後にフィルタリングして、参照データと診断画像の2つの画像データの整合を行なうことにより、感度分布データ取得時と画像データ取得時で画像データのサイズが変わっても、常に正確な感度補正を行うことができる。その結果、感度分布データの取得時間を短縮でき、検査のトータル時間も短くすることが可能になる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明のMRI装置の第2の実施形態を説明する。本実施形態は、第1の実施形態において、診断画像の取得を被検体の動きに合わせて同期撮像(例えば、心電、又は呼吸同期)によりを行う場合に、RF受信コイルの感度分布データの取得においても同じ同期撮像を行う形態である。以下、図4に示す本実施形態の処理フローに基づいて本実施形態を詳細に説明する。
【0039】
ステップ401で、所望の撮像時相が設定される。操作者は、例えば、ディスプレイ20に表示された撮像時相設定GUIを介して所望の撮像時相を設定する。
【0040】
心電同期撮像であれば、ディスプレイ20に表示された心電波形上で、操作者がマウス等で所望の時点を選択することにより、CPU8は選択された時点のR波からのディレイタイムを撮像時相と設定する。或いは、R波からのディレイタイムを入力するウィンドウがディスプレイ20に表示され、操作者がそのウィンドウ上でディレイタイムを設定し、CPU8は、操作者が設定したディレイタイムを撮像時相と設定しても良い。
【0041】
また、呼吸同期撮像であれば、公知のナビゲータエコーを取得して呼吸動を監視し、呼吸動を表す波形をディスプレイ20上に表示する。操作者は、呼吸動波形上で、マウス等で所望の状態を選択することにより、CPU8は選択された呼吸動状態を撮像時相と設定する。或いは、呼吸動の振幅は変動することから、操作者が所望の状態を挟む所望の幅を指定して、CPU8はその幅内を撮像時相と設定しても良い。
【0042】
ステップ402で、撮像が開始されるとともに、体動時相が監視される。シーケンサ4は、所定のシーケンスで撮像を開始するとともに被検体の体動状態を表す信号(心電波形、ナビゲータエコーなど)を取得する。そして、CPU8は取得された体動状態を表す信号から被検体の体動を監視し、その体動時相を検出する。例えば、心電同期撮像であれば、CPU8は、心電波形を監視する。呼吸同期撮像であれば、CPU8は、ナビゲータエコーを分析して呼吸動状態を監視する。
【0043】
ステップ403で、所望の体動時相が検出される。CPU8は、ステップ401で設定された所望の撮像時相と、ステップ402で検出した体動時相とを比較し、検出した体動時相が所望の時相であるか否かを判定する。同じ時相であればステップ404に移行し、異なればステップ402に戻って、体動時相の検出が継続される。
【0044】
ステップ404で、RF受信コイルの各画像が取得される。シーケンサ4は、所定のシーケンスを起動して、体動同期撮像を行い、RF受信コイルの感度画像と診断画像とを取得する。このステップは、図1のステップ201,202,205と同じ処理を行うので、詳細な説明は省略する。
【0045】
ステップ405で、CPU8は、ステップ404における撮像で、画像再構成に必要十分なデータが計測された否かを判定する。体動同期撮像であり、シーケンサ4は所望の時相でのみ必要なデータを計測するので、一つの時相で全てのデータを計測できない場合もある。そのような場合は、ステップ404に戻って未計測のデータを計測する。そして、CPU8は、画像再構成に必要十分なデータを計測するまでステップ404を繰り返す。
【0046】
ステップ406で、診断画像の感度補正が行われる。CPU8は、ステップ404で取得された各画像データを用いて、診断画像を再構成するとともに、その感度補正を行う。このステップは、図1のステップ203,204,206と同じ処理を行うので、詳細な説明は省略する。
【0047】
以上までが、本実施形態の処理フローである。
【0048】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置によれば、被検体の体動同期撮像を行う場合でも、被検体の体動に影響されずに、前述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明のMRI装置の第3の実施形態を説明する。本実施形態は第1の実施形態において、全身用RF受信コイルとRF受信コイルの感度分布データを3次元で取得して、3次元の参照データを用いて診断画像に対して感度補正を行う形態である。以下、図5に示す本実施形態の処理フローに基づいて本実施形態を詳細に説明する。
【0049】
ステップ501で、シーケンサ4は所定の3次元シーケンスを起動して、全身用RF受信コイルの3次元感度画像を取得する。これは図1のステップ201を3次元で行うことに相当し、それ以外はステップ201と同じなので、詳細な説明は省略する。
【0050】
ステップ502で、シーケンサ4は所定の3次元シーケンスを起動して、RF受信コイルの3次元感度画像を取得する。これは図1のステップ202を3次元で行うことに相当し、それ以外はステップ202と同じなので、詳細な説明は省略する。
【0051】
ステップ503で、CPU8はRF受信コイルの3次元感度分布データを取得する。これは図1のステップ203を3次元で行うことに相当し、それ以外はステップ203と同じなので、詳細な説明は省略する。
【0052】
ステップ504で、操作者は3次元空間内で所望の2次元撮像断面を設定する。設定方法は例えば特許文献4に開示されているような方法を用いることができる。
【0053】
ステップ505で、シーケンサ4は、RF受信コイルを用いて、ステップ504で設定された撮像断面の診断画像を撮像する。これは図1のステップ205をステップ504で設定された撮像断面で行うことに相当し、それ以外はステップ205と同じなので、詳細な説明は省略する。
【0054】
ステップ506で、CPU8は、ステップ501で取得された全身用RF受信コイルの3次元感度画像と、ステップ502で取得されたRF受信コイルの3次元感度画像とから、ステップ504で設定された撮像断面の感度画像をそれぞれ取得する。そのためには、公知のMPR(Multi-Planer-Reconstruction)法を用いることができる。そして、CPU8は、全身用RF受信コイルの撮像断面における感度画像データと、RF受信コイルの撮像断面における感度画像データと、からRF受信コイルの感度分布データを取得する。
【0055】
ステップ507で、CPU8は、ステップ506で取得したRF受信コイルの感度分布データから参照データを取得し、この参照データを用いてステップ505で取得された同じ撮像断面の診断画像の感度補正を行う。このステップは、図1のステップ204, 206と同じなので、詳細な説明は省略する。
【0056】
ステップ508で、操作者は、他の撮像断面の撮像を行う場合は、ステップ504に戻って、ステップ504〜507の処理を繰り返す。
【0057】
以上までが、本実施形態の処理フローである。なお、上記説明では、撮影断面毎にRF受信コイルの感度分布データを求め、これを拡大後に(2)式のフィルタリングを施す例を説明したが、3次元感度分布データを3次元のまま拡大した後に3次元フィルタリングを施しても良い。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置によれば、3次元の感度分布データを取得するために 同一のRF受信コイル、同一被検者の同一部位を撮像対象とするならば、撮像断面を変更しても、感度分布データの取り直しが不要になり、トータルの撮像時間を短縮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明が適用されるMRI装置の全体構成図。
【図2】第1の実施形態の処理フローを示す図。
【図3】図2の処理フローにおける各処理を模式的に示す図。
【図4】第2の実施形態の処理フローを示す図。
【図5】第3の実施形態の処理フローを示す図。
【符号の説明】
【0060】
1 被検体、2 静磁場発生系、3 傾斜磁場発生系、4 シーケンサ、5 送信系、6 受信系、7 信号処理系、8 中央処理装置(CPU)、9 傾斜磁場コイル、10 傾斜磁場電源、11 高周波発信器、12 変調器、13 高周波増幅器、14a 高周波コイル(送信コイル)、14b 高周波コイル(RF受信コイル)、15 信号増幅器、16 直交位相検波器、17 A/D変換器、18 磁気ディスク、19 光ディスク、20 ディスプレイ、21 ROM、22 RAM、23 トラックボール又はマウス、24 キーボード、51 ガントリ、52 テーブル、53 筐体、54 処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のRF受信コイルと第2のRF受信コイルとを備えて、被検体からのエコー信号を計測する計測制御手段と、前記第2のRF受信コイルで受信したエコー信号から前記被検体の診断画像を取得する演算処理手段と、を備え、
前記演算処理手段は、前記2つのRF受信コイルの感度画像を用いて前記第2のRF受信コイルの感度分布を求め、前記感度分布を用いて前記診断画像の輝度分布を補正する感度補正演算を行う磁気共鳴イメージング装置であって、
前記計測制御手段は、前記2つのRF受信コイルの感度画像が前記診断画像の画像サイズよりも小さい画像サイズとなるように、該2つのRF受信コイルの感度画像用のエコー信号を計測し、
前記演算処理手段は、前記感度分布の画像サイズを前記診断画像の画像サイズより大きくして、前記感度補正演算を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御手段は、前記被検体の体動時相毎に、前記2つのRF受信コイルの感度画像用及び前記診断画像用のエコー信号を計測し、
前記演算処理手段は、前記被検体の体動時相毎に、前記感度補正演算を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記前記計測制御手段は、前記2つのRF受信コイルの感度画像用及び前記診断画像用のエコー信号をそれぞれ3次元計測し、
前記演算処理手段は、3次元診断画像の内の所望の断面毎に前記感度補正演算を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−142522(P2009−142522A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324278(P2007−324278)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】