説明

磁気検出ユニット及びこれを用いた回転角度検出装置

【課題】自動車のステアリングの回転角度検出等に用いられる磁気検出ユニット、及びこれを用いた回転角度検出装置に関し、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】複数の磁気抵抗素子29と30を放射状に対向させて配列すると共に、この一端に切換手段31と32を各々設け、これらの切換手段31と32を二値化手段33に接続して磁気検出ユニット27や28を形成すると共に、この磁気検出ユニット27や28を第一の検出体22や第一の検出体22中央の磁石24や25に対向して配置し、制御手段35が切換手段31と32を切換え、磁気抵抗素子29と30の出力信号から回転体21の回転角度を検出することによって、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能なものを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のステアリングの回転角度の検出等に用いられる磁気検出ユニット、及びこれを用いた回転角度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高機能化が進むなか、様々な回転角度検出装置を用いてステアリングの回転角度を検出し、この回転角度を用いて車両の各種制御を行うものが増えている。
【0003】
このような、従来の回転角度検出装置について、図7〜図9を用いて説明する。
【0004】
図7は従来の回転角度検出装置の要部ブロック回路図、図8は同斜視図であり、同図において、1は外周に平歯車部1Aが形成された回転体で、中央部には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する係合部1Bが設けられている。
【0005】
そして、2は外周に平歯車部2Aが形成された第一の検出体、3は外周に第一の検出体2とは歯数の異なる平歯車部3Aが形成された第二の検出体で、第一の検出体2と第二の検出体3が回転体1に各々噛合すると共に、第一の検出体2と第二の検出体3の中央には、磁石4と5がインサート成形等により各々装着されている。
【0006】
また、6は第一の検出体2と第二の検出体3の上面にほぼ平行に配置された配線基板で、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出体2の磁石4との対向面には異方性磁気抵抗素子(以下、AMR素子と記載する)7が、第二の検出体3の磁石5との対向面にはAMR素子8が各々装着されている。
【0007】
そして、このAMR素子7や8は、図7に示すように、四つの磁気抵抗素子9を略矩形状に接続した第一のホイートストンブリッジ10と第二のホイートストンブリッジ11が、互いに45度傾けて重ねて形成されると共に、この二つのホイートストンブリッジの結合点から導出した電源端子10Aと11AがDC5Vの電源に、電源端子10Aと11Aの対角位置の結合点から導出したグランド端子10Bと11Bがグランドに、各々接続されている。
【0008】
また、これらとは異なる対角位置の結合点から導出した+出力端子10Cと11C、及び−出力端子10Dと11Dが、トランジスタ等の増幅手段12に各々接続されると共に、これらシリコンウェハー上に形成された磁気抵抗素子9や増幅手段12を、絶縁樹脂製のモールド(図示せず)が覆っている。
【0009】
さらに、このAMR素子7や8が実装された配線基板6には、マイコン等を実装して制御手段13が形成され、この制御手段13に配線パターンを介して、増幅手段12の出力端子12Aと12Bが接続されて、回転角度検出装置が構成されている。
【0010】
そして、このように構成された回転角度検出装置が、制御手段13がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、自動車の電子回路(図示せず)に接続されると共に、回転体1の係合部1Bにはステアリングの軸が挿通されて、自動車に装着される。
【0011】
以上の構成において、運転時にステアリングを回転すると、回転体1が回転し、これに連動して第一の検出体2と第二の検出体3が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石4と5も回転して、この磁石4と5の磁気の方向が変化し、これをAMR素子7と8が各々検出する。
【0012】
そして、例えば、磁石4と対向したAMR素子7の、第一のホイートストンブリッジ10の+出力端子10Cと−出力端子10Dからは正弦波の出力信号が、第二のホイートストンブリッジ11の+出力端子11Cと−出力端子11Dからは余弦波の出力信号が、各々増幅手段12に入力される。
【0013】
また、この正弦波と余弦波の出力信号を増幅手段12が差動増幅し、例えば、出力端子12Aからは、図9(a)の波形図に示すような、電圧が1.5〜3.5V前後で正弦波の出力信号が、出力端子12Bからは、図9(b)に示すような、余弦波の出力信号が各々制御手段13に出力される。
【0014】
さらに、磁石5と対向したAMR素子8からも同様に、正弦波と余弦波の出力信号が増幅手段12を介して制御手段13に出力されるが、第一の検出体2と第二の検出体3の平歯車部2Aと3Aは歯数が異なっているため、これらは位相差のある波形となって制御手段13に入力される。
【0015】
そして、この第一の検出体2と第二の検出体3からの出力信号と、各々の平歯車部の歯数から、制御手段13が所定の演算を行って、回転体1即ちステアリングの回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力されて、車両の様々な制御が行われるように構成されている。
【0016】
なお、上記のように、AMR素子7と8からの正弦波と余弦波の出力信号によって回転角度の検出を行う際、略矩形状に接続された四つの磁気抵抗素子9のばらつきによって、特に、回転角度検出装置が使用される周囲温度が高い場合には、制御手段13に入力される出力信号にばらつきが生じ、回転角度の検出に誤差が発生する場合がある。
【0017】
つまり、例えば、AMR素子7や8の第一のホイートストンブリッジ10の+出力端子10Cの電圧は、磁気抵抗素子9Aと9Bの分圧となっているため、磁気抵抗素子9Aと9Bの温度変化による抵抗値変化に差があった場合、+出力端子10Cから出力される正弦波の出力信号の、振幅中心電圧にずれが生じる。
【0018】
そして、この時、例えば、磁気抵抗素子9Aの抵抗値が磁気抵抗素子9Bの抵抗値より小さかった場合、振幅中心電圧は電源電圧側にずれるため、増幅手段12の出力端子12Aから出力される正弦波の出力信号は、図9(c)の破線に示すように電源電圧側にずれたものとなる。
【0019】
したがって、このようなずれた出力信号によって制御手段13が回転角度の演算を行った場合には、回転角度の検出に誤差が発生してしまい、精度の劣った回転角度の検出となってしまうものであった。
【0020】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2007−256139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、上記従来の回転角度検出装置においては、特に高温下で使用された場合、磁気抵抗素子9の温度による抵抗値の変化によって出力信号の電圧にずれが発生し、回転角度の検出に誤差が生じる場合があるため、高精度な角度検出を行うことが困難であるという課題があった。
【0023】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、温度変化による誤差等がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な磁気検出ユニット、及びこれを用いた回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0025】
本発明の請求項1に記載の発明は、複数の磁気抵抗素子を放射状に対向させて配列すると共に、この一端に切換手段を各々設け、これらの切換手段を二値化手段に接続して磁気検出ユニットを構成したものであり、この磁気検出ユニットを検出体中央の磁石に対向して配置し、制御手段によって回転体の回転角度の検出を行う際、複数の磁気抵抗素子の抵抗値に温度による多少の変化や、抵抗値変化の差があった場合でも、制御手段が二値化手段からの出力信号を演算して、回転角度を検出することで、回転角度の正しい検出を行うことができるため、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な磁気検出ユニットを得ることができるという作用を有する。
【0026】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の磁気検出ユニットを、回転体に連動して回転する検出体中央の磁石に対向して配置し、制御手段が磁気検出ユニットの切換手段を切換え、磁気抵抗素子の出力信号から回転体の回転角度を検出するようにして回転角度検出装置を構成したものであり、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な回転角度検出装置を実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明によれば、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な磁気検出ユニット、及びこれを用いた回転角度検出装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態による回転角度検出装置の要部ブロック回路図
【図2】同斜視図
【図3】同波形図
【図4】同波形図
【図5】同波形図
【図6】同波形図
【図7】従来の回転角度検出装置の要部ブロック回路図
【図8】同斜視図
【図9】同波形図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図6を用いて説明する。
【0030】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による回転角度検出装置の要部ブロック回路図、図2は同斜視図であり、同図において、21は外周に平歯車部21Aが形成された回転体で、中央部には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する係合部21Bが設けられている。
【0031】
そして、22は外周に平歯車部22Aが形成された第一の検出体、23は外周に第一の検出体22とは歯数の異なる平歯車部23Aが形成された第二の検出体で、第一の検出体22が回転体21に、第二の検出体23が第一の検出体22に各々噛合すると共に、第一の検出体22と第二の検出体23の中央には、磁石24と25がインサート成形等により各々装着されている。
【0032】
また、26は第一の検出体22と第二の検出体23の上面にほぼ平行に配置された配線基板で、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出体22の磁石24との対向面には磁気検出ユニット27が、第二の検出体23の磁石25との対向面には磁気検出ユニット28が各々装着されている。
【0033】
そして、この磁気検出ユニット27と28は、図1に示すように、複数の磁気抵抗素子29と30が0.5〜10度の角度間隔で、右側と左側に対向して放射状に配列されて形成されると共に、これら磁気抵抗素子29と30の外周側端部には、FET等の複数の切換手段31と32が各々接続されている。
【0034】
また、これら磁気抵抗素子29と30の内周側端部は、例えば右側の磁気抵抗素子29Aや29B等の内周側端部が連結されて電源に、左側の磁気抵抗素子30Aや30B等の内周側端部が連結されてグランドに、各々接続されている。
【0035】
さらに、33はコンパレータ等の二値化手段で、この二値化手段33の+端子に右側の切換手段31Aや31B等が、−端子に左側の切換手段32Aや32B等が各々接続されると共に、右側の切換手段31Aや31B等は抵抗36を介してグランドに、左側の切換手段32Aや32B等は抵抗34を介して電源に、各々接続されている。
【0036】
そして、シリコンウェハー上にスパッタ法等によって形成された、これら複数の磁気抵抗素子29や30、切換手段31や32、二値化手段33等を、絶縁樹脂製のモールド(図示せず)が覆って、磁気検出ユニット27や28が形成されている。
【0037】
つまり、複数の磁気抵抗素子29と30を右側と左側に対向して放射状に配列すると共に、この磁気抵抗素子29と30の外周側端部に切換手段31と32を設け、これらの切換手段31と32を二値化手段33に接続して、磁気検出ユニット27や28が形成された構成となっている。
【0038】
また、この磁気検出ユニット27や28が実装された配線基板26には、マイコン等を実装して制御手段35が形成され、この制御手段35に配線パターンを介して、磁気検出ユニット27と28の二値化手段33や、複数の切換手段31と32が接続されて、回転角度検出装置が構成されている。
【0039】
そして、このように構成された回転角度検出装置が、制御手段35がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、自動車の電子回路(図示せず)に接続されると共に、回転体21の係合部21Bにはステアリングの軸が挿通されて、自動車に装着される。
【0040】
以上の構成において、運転時にステアリングが回転すると、回転体21が回転し、これに連動して第一の検出体22が、第一の検出体22に連動して第二の検出体23が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石24と25も回転して、この磁石24と25の磁気の方向が変化し、これを磁気検出ユニット27と28が各々検出する。
【0041】
つまり、図3(a)の波形図に示すように、先ず磁気検出ユニット27と28の制御手段35から、制御信号LAが時間TAからTBの間出力されて、右側の切換手段31Aと左側の切換手段32AがONとなり、磁気抵抗素子29Aとこれに対向した磁気抵抗素子30Aが、磁石24や25の磁気方向を検出する。
【0042】
なお、磁気抵抗素子29や30は、これに流れる電流の方向と磁気の方向の傾き角度によって抵抗値が変化し、これが0度の場合には抵抗値は小さくなり、90度の場合には抵抗値が最大となるように形成されている。
【0043】
したがって、この時、例えば車両が直進状態でステアリングの回転角度が0度、すなわち磁石24と25の磁気方向が、図1の上下方向であった場合、磁気抵抗素子29Aと30Aはこの磁気方向と平行に配列され、流れる電流の方向と磁気の方向の傾き角度が0度であるため、磁気抵抗素子29Aと30Aの抵抗値は小さなものとなる。
【0044】
そして、この磁気抵抗素子29Aと抵抗36で分圧された、図3(b)に示すような、小さな電圧MAが二値化手段33の+端子に、磁気抵抗素子30Aと抵抗34で分圧され大きさが反転した、図3(c)に示すような、大きな電圧NAが二値化手段33の−端子に、各々入力される。
【0045】
また、続いて、制御手段35から図3(a)に示すように、制御信号LBが時間TBからTCの間出力されて、切換手段31Bと32BがONとなり、磁気抵抗素子29Bとこれに対向した磁気抵抗素子30Bが、磁石24や25の磁気方向を検出する。
【0046】
なお、この時、磁気抵抗素子29Bと30Bは、磁石24と25の磁気方向である上下方向に対してやや傾いているため、図3(b)や図3(c)に示すように、これらと抵抗36や34で分圧された、電圧MBは電圧MAよりやや大きく、電圧NBは電圧NAよりやや小さなものとなる。
【0047】
さらに、この後、制御手段35から制御信号が順次出力されて、複数の切換手段31と32が切換えられ、右側と左側に対向して放射状に配列された複数の磁気抵抗素子29と30が、磁石24と25の磁気方向を順次検出して、これらの電圧が二値化手段33に入力される。
【0048】
なお、これら複数の磁気抵抗素子29と30のうち、上記のように磁石24と25の磁気方向が上下方向の場合には、これと垂直な左右方向、すなわち90度と270度の位置に配列された、磁気抵抗素子29と30の抵抗値が最も大きなものとなり、この後、抵抗値は順次小さなものとなっていく。
【0049】
つまり、制御手段35が0度と180度の位置の切換手段31Aと32Aから、これらとほぼ真下あるいは真上の切換手段31と32まで順次切換えを行った場合、二値化手段33の+端子と−端子には、図4(a)の波形図に示すような、電圧信号MとNが各々入力される。
【0050】
また、二値化手段33からは、時間TAからT1の間と時間T2からTZの間は、電圧信号Mの電圧値が電圧信号Nよりも小さいためLow、時間T1からT2の間は、電圧信号Mの電圧値が電圧信号Nよりも大きいためHighとなった、図4(b)に示すような、電圧信号Sが制御手段35へ出力される。
【0051】
そして、この電圧信号Sから制御手段35が磁石24と25の磁気方向を検出するが、制御信号を順次出力して、複数の切換手段31と32の切換えを行った制御手段35は、例えば時間T1やT2の電圧信号Sが、右側と左側に対向して放射状に配列された複数の磁気抵抗素子29と30のうち、何度の位置に配列された磁気抵抗素子29と30によって検出されたものかを判別することが可能となっている。
【0052】
このため、制御手段35はこれらの磁気抵抗素子29と30が配列された角度によって、先ず、電圧信号Sの時間T1から例えば45度の角度を、時間T2から135度の角度を各々検出し、これらを加算した後、半分に除算してT0の90度という角度を算出し、さらにこれから90度を減じて、磁石24と25の磁気方向の角度0度を検出する。
【0053】
なお、以上の説明では判り易くするために、磁石24と25の磁気方向が上下方向、つまりステアリングの回転角度が0度の場合について説明したが、第一の検出体22や第二の検出体23が回転し、磁石24と25の磁気方向が、例えば30度の場合には、二値化手段33には、図5(a)の波形図に示すような、電圧信号M1とN1が各々入力される。
【0054】
そして、二値化手段33から制御手段35へは電圧信号S1が出力され、制御手段35が上記と同様に、75度と165度を加算した後、これを半分に除算した角度120度から90度を減じて、磁石24と25の磁気方向の角度30度を検出する。
【0055】
また、磁石24と25の磁気方向が、例えば60度の場合には、図5(b)に示すように、二値化手段33には電圧信号M2とN2が入力されると共に、二値化手段33から制御手段35へは電圧信号S2が出力され、制御手段35が演算を行って、磁気方向の角度60度を検出する。
【0056】
なお、このように制御手段35が複数の切換手段31と32を順次切換え、複数の磁気抵抗素子29と30の抵抗値をもとに形成された、二値化手段33からの電圧信号によって、制御手段35が磁石24と25の磁気方向の角度、つまり第一の検出体22と第二の検出体23の回転角度の検出を行うが、第一の検出体22と第二の検出体23の平歯車部22Aと23Aは歯数が異なっているため、これらは位相差のある波形となって制御手段35に入力される。
【0057】
そして、この第一の検出体22と第二の検出体23からの二つの異なる出力信号と、各々の平歯車部の歯数から、制御手段35が所定の演算を行って、回転体1即ちステアリングの回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力されて、車両の様々な制御が行われるように構成されている。
【0058】
なお、上記のように、複数の磁気抵抗素子29と30の抵抗値をもとにした、二値化手段33からの出力信号によって回転角度の検出を行う際、対向して放射状に配列された磁気抵抗素子29や30の抵抗値にばらつきや、特に、回転角度検出装置が使用される周囲温度が高い場合には、この温度変化による抵抗値変化に差が生じる場合がある。
【0059】
つまり、例えば、上述した場合と同様に、ステアリングの回転角度が0度で磁石24と25の磁気方向が上下方向であった場合、図6の波形図に示すように、正規の電圧信号MやNに対し、磁気抵抗素子29や30の温度による抵抗値の変化によって、上下にずれた電圧信号M3やN3が二値化手段33に入力される。
【0060】
このため、二値化手段33から制御手段35へも、正規の電圧信号Sに対してずれた電圧信号S3が出力されるが、この時、制御手段35は上述したように、ずれた時間T3とT4から検出した角度を加算した後、半分に除算し、さらにこれから90度を減じるという演算を行う。
【0061】
したがって、上記のように二値化手段33からの電圧信号S3がずれたものであった場合でも、時間T3とT4から検出した角度を加算した後、半分に除算してT0の90度という角度が算出され、これから90度を減じて、磁石24と25の正しい磁気方向の角度、0度が検出されるようになっている。
【0062】
すなわち、制御手段35が複数の切換手段31と32を順次切換え、複数の磁気抵抗素子29と30の抵抗値をもとに形成された、二値化手段33からの出力信号によって、制御手段35が磁石24と25の磁気方向の角度、つまり回転角度の検出を行うことで、温度変化による誤差がなく、高精度な回転角度の検出が可能なように構成されている。
【0063】
つまり、複数の磁気抵抗素子29と30を放射状に対向して配列すると共に、制御手段35が二値化手段33から出力された電圧信号SやS3を演算して、回転角度の検出を行うことによって、複数の磁気抵抗素子29や30の抵抗値に温度による多少の変化や、抵抗値変化の差があった場合でも、電圧信号M3やN3の値が逆転するような極端な変化や差でない限り、回転角度の正しい検出が行えるようになっている。
【0064】
このように本実施の形態によれば、複数の磁気抵抗素子29と30を放射状に対向させて配列すると共に、この一端に切換手段31と32を各々設け、これらの切換手段31と32を二値化手段33に接続して磁気検出ユニット27や28を形成すると共に、この磁気検出ユニット27や28を第一の検出体22や第一の検出体22中央の磁石24や25に対向して配置し、制御手段35が切換手段31と32を切換え、磁気抵抗素子29と30の出力信号から回転体21の回転角度を検出することによって、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な磁気検出ユニット、及びこれを用いた回転角度検出装置を得ることができるものである。
【0065】
なお、以上の説明では、磁気検出ユニット27や28と制御手段35を別体に設け、配線基板26の配線パターンを介して、制御手段35と二値化手段33や切換手段31と32を接続した構成として説明したが、これらを一つのチップ部品として一体に形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0066】
また、以上の説明では、回転体21に第一の検出体22を噛合させ、この第一の検出体22に第二の検出体23を噛合させた構成の回転角度検出装置について説明したが、背景技術の項で説明したように、回転体21に第一の検出体22と第二の検出体23の両方を噛合させた構成や、あるいは一方の検出体のみを回転体21に噛合させた構成のものとしても、本発明の実施は可能である。
【0067】
さらに、以上の説明では、回転体21や第一の検出体22、第二の検出体23の外周に各々平歯車部を形成し、これらが噛合して互いに連動して回転する構成について説明したが、平歯車部以外にも傘歯車等、他の形状の歯車を用いた構成や、あるいは歯車に代えて、回転を伝達できる凹凸部や高摩擦部などを回転体や各検出体の外周に形成し、これによって互いに連動して回転する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明による磁気検出ユニット及びこれを用いた回転角度検出装置は、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能なものが得られ、主に自動車のステアリングの回転角度検出等に有用である。
【符号の説明】
【0069】
21 回転体
21A、22A、23A 平歯車部
21B 係合部
22 第一の検出体
23 第二の検出体
24、25 磁石
26 配線基板
27、28 磁気検出ユニット
29、29A、29B、30、30A、30B 磁気抵抗素子
31、31A、31B、32、32A、32B 切換手段
33 二値化手段
34、36 抵抗
35 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁気抵抗素子を放射状に対向させて配列すると共に、この一端に切換手段を各々設け、これらの切換手段を二値化手段に接続した磁気検出ユニット。
【請求項2】
ステアリングに連動して回転する回転体と、この回転体に連動して回転する検出体と、この検出体の中央に装着された磁石と、この磁石に対向して配置された請求項1記載の磁気検出ユニットと、この磁気検出ユニットに接続された制御手段からなり、上記制御手段が上記磁気検出ユニットの切換手段を切換え、磁気抵抗素子からの出力信号によって上記回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−33559(P2011−33559A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182152(P2009−182152)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】