説明

磁気記録媒体、その製造方法および製造装置、磁気記録媒体の記録再生方法、および記録再生装置

膜面から光を照射して信号の記録再生を行う磁気記録媒体において、信頼性が高く、耐熱性に優れた媒体を提供することを課題とする。そのために、ディスク基板上に形成された、少なくとも磁気異方性を有する記録膜上に、記録膜よりも熱伝導率の小さい保護層を介して潤滑層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は書き換えが可能な磁気記録媒体、特に光を入射して温度を上昇させながら信号を記録再生する磁気記録媒体、その製造方法および製造装置、磁気記録媒体の記録再生方法、および記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光を用いる磁気記録媒体や相変化記録媒体などの光記録媒体は、大容量・高密度記録が可能な可搬型記録媒体であり、近年のマルチメディア化に伴うコンピュータの大容量ファイルや動画を記録する媒体として需要が急増しつつある。
光記録媒体は一般に、プラスチック等の透明な円盤状の基板に記録層を含む多層膜を形成し、レーザーを照射して記録、消去を行い、レーザーの反射光で再生する。光を用いる磁気記録媒体は従来、固定磁界を加えて消去した後、反対方向の固定磁界を加えて記録するいわゆる光変調記録が中心であったが、近年、レーザーを照射しながら、磁界を記録パターンに従って変調させる磁界変調方式が、1回で記録(ダイレクトオーバーライト)可能かつ高記録密度になっても正確に記録できる方式として、注目を浴びている。相変化記録媒体は、光変調記録によりダイレクトオーバーライト可能で、CDやDVDと同じ光学系で再生可能なため、実用化が進められている。
光記録媒体の記録密度の限界は光源のレーザー波長(λ)によって決まり、回折限界(〜λ/2NA:NAは対物レンズの開口数)に依存する。近年、対物レンズを2枚組にすることで0.8以上のNAを持ったシステムが提案され、開発が活発に行われている。記録再生のためのレーザーは従来、基板を通して記録膜に照射されていた。しかし、NAが大きくなるほど、光の基板通過時の基板の傾きなどによる収差が大きくなり、基板厚みを薄くする必要がある。この場合、例えば0.5mm以下の厚みの基板は、媒体製造時に保持することすら難しくなるため、高NA対物レンズを使ったシステムでは、薄膜の上の保護コートを通して記録再生する方式が提案されている(非特許文献1参照)。
例えば、光ビームを膜面から入射させ、対物レンズの開口数を大きくし、近接場光を用いて再生分解能を向上させる技術が開示されている(特許文献1参照)。この技術では、基板を通して光ビームを入射させる方法よりも、検出分解能を向上できる。また、基板のチルト等による光ビームの収差による影響を受けないため、高密度な記録を行う場合にも、良好な再生信号が得られる。
【特許文献1】特開平11−345442号公報
【非特許文献1】Jpn.J.Appl.Phys.36、p.456−459(1997)
【発明の開示】
【0003】
しかし、上記従来の高開口度の光学ヘッドを用いた場合にも、光の波長と開口度によって、検出分解能にはおのずと限界がある。また、光を照射してGMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて記録再生する方式においては、磁気ヘッドのみで記録再生する従来の方式に比べて、記録媒体の温度上昇により、磁気ヘッドを摺動させるための潤滑層の温度上昇による特性の変化、および、信頼性の低下が課題となる。また、さらに、GMRヘッド等の磁気ヘッドの温度上昇により、記録再生特性の劣化が課題となる。
本発明の目的は、光を照射して記録膜の温度を上昇させながら磁気記録再生する記録媒体において、潤滑層の特性を向上させることにより耐久性を高め、信号特性の優れた磁気記録媒体を提供することである。
本発明の磁気記録媒体は、ディスク基板上に、少なくとも磁気異方性を有する記録膜を備え、少なくとも記録膜の上に、記録膜よりも熱伝導率の小さい保護層を介して、潤滑層を有することを特徴とする。
これにより、記録層の温度上昇による潤滑層への熱の影響を遮断し、また記録再生用の磁気ヘッドの温度上昇も防ぐことが可能な、信号特性に優れた磁気記録媒体を得ることができる。
保護層は、熱伝導率が1×10^6erg/(s・K・cm)以下であることを特徴とする。
また、保護層は、複数の薄膜により構成されていてもよい。複数の薄膜は、熱伝導率がそれぞれ異なることが好ましい。また、記録膜側の薄膜の熱伝導率が、潤滑層側の薄膜の熱伝導率よりも大きくなることが好ましい。
複数の薄膜からなる保護層は、熱伝導率が1×10^6erg/(s・K・cm)以下である層を少なくとも有することが好ましい。
これらにより、信号特性に優れた磁気記録媒体を得ることができる。
保護層は、炭素を主成分とすること、また、ダイヤモンドライクカーボンを含有すること、さらには、窒素、酸素あるいは水素を含有することが好ましい。保護層の複数の薄膜においては、窒素、酸素あるいは水素の含有量を変化させることが好ましい。
保護層は、250℃以上の温度での耐熱性を有する材料を含有すること、また、耐熱性の保護層が、フッ素系樹脂、あるいは、セラミック材料からなること、さらにはテフロン(登録商標)からなるあることが好ましい。
保護層は、金属材料を含有すること、また、金属材料が、Ti、Ta、Crであること、さらには、金属材料が窒素化合物あるいは酸化物であってもよい。
また、保護層は、少なくともカルコゲン系化合物を含有していてもよい。
これらにより、記録膜、および、潤滑層の保護効果、断熱効果を備えた磁気記録媒体を実現できる。
潤滑層は、複数の薄膜により構成されること、また、複数の薄膜は、熱伝導率がそれぞれ異なることが好ましい。
潤滑層は、PFPEを含有すること、また、耐熱性材料を含有すること、あるいは、酸化物、あるいは窒化物を含有することが好ましい。
これにより、信号特性と熱耐久性に優れた磁気記録媒体を実現できる。
潤滑層と保護層の膜厚の合計が、1nm以上100nm以下であること、さらに、潤滑層の膜厚が、0.5nm以上20nm以下であること、あるいは、保護層の膜厚が、0.5nm以上99.5nm以下であることが好ましい。
記録膜は、膜面垂直方向に磁気異方性を有する磁性層を含むことを特徴とする。さらに、記録膜は、複数の磁性層からなることが好ましく、また、少なくとも記録層、中間層、再生層を積層した構成からなることが好ましい。
これにより、再生層に転写した再生信号の増大が可能になる。
本発明の磁気記録媒体では、記録膜中の記録層に形成される記録磁区が再生層に転写され、再生層での磁壁移動によって、記録情報が再生されることを特徴とする。
記録層は、少なくとも、Tb、Fe、Coを含有することが好ましい。
記録層は、材料、あるいは、組成比の異なる層ごとに間欠周期的に積層されることが好ましい。
ディスク基板上には、記録層に形成される記録磁区のパターンに応じて、ピット形状のパターンが形成されていることが好ましい。また、ディスク基板上に、記録層に形成される記録磁区の最小パターンよりも小さい、ピット形状の凹凸のパターンが形成されていることが好ましい。
これにより、安定して情報の記録再生を行うことができる。
光ディスク基板と記録膜との間に、少なくとも熱伝導率の大きい金属層を備えていてもよい。
また、記録膜と金属層との間に、誘電体層を備えること、あるいはさらに、ディスク基板と金属層との間に、誘電体層を備えていてもよい。少なくとも金属層、あるいは、誘電体層が、表面をエッチングした構成を有することが好ましい。このとき、金属層、あるいは、誘電体層は、表面粗さが、Ra0.5以上であることが好ましい。
ここで、誘電体層が、少なくともカルコゲン系化合物を含有することが好ましい。
これらにより、高密度で記録再生した場合にも、優れた信号特性を持つ磁気記録媒体を得られる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、ディスク基板上に、少なくとも磁気異方性を有する記録膜を形成し、記録膜の上に、記録膜よりも熱伝導率の小さい保護層を形成し、保護層を介して、潤滑層を形成することを特徴とする。潤滑層は、真空中で形成することが好ましい。また、保護層を形成した後、潤滑層を塗布形成することが好ましい。
これにより、記録再生特性の劣化が無く、高密度で記録再生した場合にも、優れた信号特性を持つ磁気記録媒体を提供することが可能となる
本発明の磁気記録媒体の製造装置は、ディスク基板上に、少なくとも磁気異方性を有する記録膜を形成する記録膜形成部と、記録膜の上に、記録膜よりも熱伝導率の小さい保護層を形成する保護層形成部と、保護層を介して、潤滑層を形成する潤滑層形成部とを備えることを特徴とする。
これにより、記録再生特性の劣化が無く、高密度で記録再生した場合にも、優れた信号特性を持つ磁気記録媒体を提供することが可能となる。
本発明の磁気記録媒体の記録再生方法は、レーザー光を入射させることにより、記録媒体の記録膜の温度を上昇させ、磁気記録媒体に情報を記録あるいは再生することを特徴とする。
これにより、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
本発明の磁気記録媒体の記録再生装置は、磁気記録媒体を昇温させる加熱部と、加熱部が磁気記録媒体を昇温させているときに磁気記録媒体に磁気的に信号を記録再生する記録再生部とを備え、磁気記録媒体の信号記録時と再生時では、磁気記録媒体の信号領域での温度分布がそれぞれ異なることを特徴とする。
これにより、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
以上のように、光を照射して記録膜の温度を上昇させながら磁気記録再生する記録媒体において、記録媒体、および磁気ヘッドの耐久性、信頼性を高めることができる。また、磁気ヘッドの温度上昇により記録再生特性の劣化が無く、高密度で記録再生した場合にも、優れた信号特性を持つ磁気記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】本発明の第1実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図2】本発明の第2実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図3】本発明の第3実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図4】本発明の第4実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図5】本発明の第5実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図6】本発明の第6実施形態における磁気記録媒体の構成を示す断面図
【図7】本発明の実施形態における磁気記録媒体の再生動作の説明のための磁気記録媒体の断面図 (a)磁気記録媒体の記録膜の構成(特に磁化の方向)を示す断面図 (b)再生動作中の磁気記録媒体の位置に対する媒体内部での温度分布を示す特性図 (c)再生層の磁壁エネルギー密度を示す特性図 (d)再生層の磁壁を移動させようとする力を示す特性図
【図8】本発明の実施形態における磁気記録媒体の温度に対する磁気特性を示す特性図
【図9】本発明の第7実施形態における記録再生装置の構成を示す概略図
【図10】本発明の第8実施形態における成膜装置の構成を示す概略図
【符号の説明】
【0005】
10、20、30、40、50、60 磁気記録媒体
11、21、31、41、51、61 ディスク基板
32、52、62 放熱層
53 耐熱層
22、42 誘電体層
63 下地断熱層
12、23、33、43、54、64 記録膜
13、24、34、44、55、65 保護層
14 潤滑層
25、35、45、56、66 第1の潤滑層
26、36、46、57、67 第2の潤滑層
15、68 エッチング面
70 真空搬送室
71 真空脱ガス室
72 ロードアンロード室
73 真空メインチャンバー
74 ロード室
75 アンロード室
77 加熱室
81−87 真空プロセス室
101 記録層
102 中間層
103 再生層
112 磁気ヘッド
113 スピンドルモータ
114 光学ヘッド
115 レーザー駆動回路
116 制御、検出回路
117 モータ駆動、制御回路
118、119、120、121 光学素子
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明を詳細に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り以下の実施形態に限定されるものではない。
本願発明の磁気記録媒体は、記録膜の上に、記録膜よりも熱伝導率の小さい断熱保護層を介して潤滑層を形成することにより、記録再生時に記録膜にレーザー光を照射した際にも、第2の潤滑層側への温度上昇を防止できる。この結果、光ビーム等により記録膜を昇温させて、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、熱耐久性に優れ、かつ信号特性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。第1〜第6実施形態では、下記の課題を解決する磁気記録媒体の構成について述べる。
◎ 第1〜第3実施形態
従来の磁気記録媒体では、記録膜へレーザー光を照射した際に、潤滑層も温度が上昇し、摺動特性が劣化する、あるいは、さらに磁気ヘッドへの熱伝導により、記録再生特性が低下する等の課題を有していた。また、レーザー光強度を小さくして、温度上昇を抑えた場合には、大きな記録磁界が必要、あるいは再生信号量が低下するという課題を有していた。
◎ 第4〜第6実施形態
従来、DWDD方式を用いた磁気記録媒体では、記録層から転写した再生層の磁壁移動を容易にさせるために、記録膜にレーザー光スポットを照射し、記録膜中の温度勾配を利用して再生層に転写された磁区の磁壁の移動を安定して行い、信号を検出する必要がある。しかし、潤滑層の温度上昇により浮上特性の変動、磁気ヘッドの特性の変化により、再生層へ転写された再生信号が変動するという課題を有していた。
また、第7実施形態では、本発明の記録再生方法および記録再生装置について、第8実施形態では、本発明の磁気記録媒体を構成する層の製膜例について、他の実施形態では、実施形態を踏まえつつ、さらなる変形例等について述べる。
[第1実施形態]
以下、図面を参照にして詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態における磁気記録媒体(以下、磁気ディスク)10の構造を示す断面図である。
11はガラスからなる透明なディスク基板、12は記録膜、13は記録膜を保護し、記録膜12と潤滑層14を断熱するための誘電体保護層、14は磁気ヘッドを摺動させるための潤滑層である。記録膜12が形成される側の基板の下地は、イオンエッチングにより下地の表面粗さを制御している。レーザー光は、潤滑層14の側から照射される。信号の記録、再生は磁気ヘッドを用いて行われ、照射されるレーザー光スポットの回折限界よりも小さい記録マークの記録再生が可能である。
ここで、図8に、本実施形態の記録膜の温度Tと保磁力Hc、飽和磁化Msとの関係を表す。本実施形態の磁気記録媒体は、情報の記録時には、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザー光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで記録される。この時、記録膜は、図8に示すように、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドでの記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザー光を照射して、温度上昇させながら、GMRヘッドにより、記録磁区を検出する。この時、飽和磁化Msは、80℃で最小となった後、温度と共に上昇し、180℃で極大となるため、GMRヘッドでの検出感度が向上し、再生信号が増大する。
したがって、この時レーザー光を照射した記録膜は、膜中に温度分布を有するため、レーザー光スポットの中心部分では、200℃以上となる。このため、表面潤滑層の摺動特性を保持するために、保護層は250℃以上の耐熱性が必要となる。本実施形態では、耐熱性を有する保護層に、フッ素系樹脂、あるいは、セラミック材料、より好ましくはテフロン薄膜を用いることにより、280℃以上の耐熱性を有し、記録膜、および、潤滑層の保護効果、断熱効果を備えた磁気記録媒体を実現できる。
次に、磁気ディスク10の構成と製造方法について詳細に説明する。
図1に示すように、ディスク基板11には、磁性薄膜の記録膜等が積層して形成されている。ディスク基板11は、グルーブの両側にはランド部が形成されており、矩形型のグルーブの深さhは、ランド部3の上面から35nmである。また、本実施形態の磁気ディスク10のトラックピッチは0.4μmであり、グルーブ幅は0.3μmである。
まず、フォトポリマーにより、ランドとグルーブが形成された透明なガラスからなるディスク基板11の表面上に、イオンガンによりエッチング面15を形成する。
次に、直流マグネトロンスパッタリング装置に、ターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、8×10^(−6)Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたままArガスを1.5Paになるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、Tb、Fe、Coそれぞれのターゲットを用いて、TbFeCoの記録膜12を40nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。ここで、TbFeCoの膜組成は、ターゲットの投入パワー比を調整することにより、所望の膜組成に合わせることができる。
さらに、0.3Paになるまでチャンバー内にArガスとNガスを導入し、基板を回転させながら、SiNからなる誘電体の保護層13を5nm、反応性スパッタリング法により膜形成する。
そして、保護層13の上に、アモルファスカーボンからなる潤滑層をArとCHの混合雰囲気中で、Cターゲットを用いて、反応性RFスパッタリングにより、5nm形成する。さらに、パーフルオロポリエーテル(以下、PFPE)を塗布することにより、固体潤滑層14を形成する。ここで、TbFeCoからなる記録膜12は補償組成温度が−50℃であり、キュリー温度は310℃になるように、各ターゲットの投入パワーを設定して組成を調整し、製膜した。
この結果、飽和磁化Msは温度と共に上昇し、180℃で極大となり、また、保磁力Hcは、室温からは温度上昇と共に、減少するという膜特性が得られる。この結果、本実施形態の磁気記録媒体では、光ビームを照射した状態での温度、180℃で、飽和磁化Msが極大となり、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
上記本実施形態の磁気ディスク10は、フォトポリマーにより矩形のランドとグルーブを有した構成のディスク基板に、記録膜を形成した構成について述べてきたが、ガラス基板を直接加工、あるいは、インプリント等を用いてもよい。
また、ランド部、あるいは、グルーブ部に記録する構成、あるいは、ランド/グルーブの両方に記録する構成であっても同等の特性が得られる。さらに、本実施形態では、トラックピッチが0.4μmであったが、情報の記録されるグルーブ幅が0.5μm以下の構成であって、記録情報の最短のマーク長が0.3μm以下の記録ドメインを記録する構成であれば、より効果が大きい。
以上のように、本実施形態の構成により、高密度に記録再生した場合にも、安定した再生信号特性が得られる。さらに、情報トラックでの記録磁区が安定した形状に形成されるため、記録再生時に隣接トラックからのクロスライトおよびクロストークも低減できる。
[第2実施形態]
図2は、本発明の第2実施形態における磁気ディスク20の構造を示す断面図である。
21は透明なガラスからなるディスク基板、22は低熱伝導率の誘電体材料からなり、記録膜の保護と下地の調整のための下地断熱層の役割を果たす、誘電体層である。23は記録膜であり、記録情報を保持しておく記録層と、再生情報の信号量を増大させるための再生層からなり、かつ再生層と記録層の間は磁気的に交換結合されている。24は断熱保護層であり、記録膜23と潤滑層を断熱するため、記録膜23の上に形成される。さらに、磁気ヘッドの浮上特性を向上させるために、第1の潤滑層25と第2の潤滑層26が形成されている。レーザー光は、第2の潤滑層26の側から照射される。信号の記録、再生は磁気ヘッドを用いて行われ、照射されるレーザー光スポットの回折限界よりも小さい記録マークの記録再生が可能である。
特に、本実施形態の磁気ディスク20では、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザー光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで情報が記録される。この時、記録膜は、第1実施形態と同様に、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドによる記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザー光を照射して、温度上昇させながら、GMRヘッドにより、記録磁区を検出する。この時、再生層の飽和磁化Msは温度と共に上昇し、120℃で極大となるため、GMRヘッドでの検出信号量が増大し、再生信号振幅を増大させることができる。
次に、磁気ディスク20の構成と製造方法について詳細に説明する。
図2に示すように、ディスク基板21には、上述した磁性膜を含む多層に積層した記録膜23が形成されている。ディスク基板21は、書き換え可能な領域と、サーボ用のウォブルピットとアドレスピットの形成されたピット領域とが、トラック上に交互に並設されたフォーマット構成をとっており、トラッキングサーボをかけながら、アドレスを検出し、書き換え可能な領域に情報の記録再生を行うことができる。この時、20nmから180nmの範囲にある深さのプリピットを有する構成により、アドレスピット等のプリピットからの信号が検出可能であり、記録再生を実現できる。
まず、直流マグネトロンスパッタリング装置に、BドープしたSiターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、8×10^(−6)Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたままArガスとNガスを0.3Paになるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、プリピットが形成された透明なガラスからなるディスク基板21上に、誘電体層22としてSiNを50nm、反応性スパッタリング法により形成する。
引き続き誘電体層22上には、同様に真空排気をしたまま、Arガスを0.5Paになるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、Tbターゲット、FeCoターゲットを用いて、Arガスを1.5Paになるまでチャンバー内に導入し、TbとFeCoが周期的に積層するように記録層を60nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。ここで、TbFeCoの膜組成は、それぞれのターゲットの投入パワー比を調整することにより、所望の膜組成に合わせることができる。次に、Gd、Fe、Co、Alそれぞれのターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法によりGdFeCoAlからなる再生層を30nm形成する。上記の方法で、記録層、再生層からなる記録膜23を形成することができる。
さらに、テフロンターゲットを用いて、0.5Paになるまでチャンバー内にArガスを導入し、基板を回転させながら、テフロン薄膜からなる保護層24を10nm、反応性スパッタリング法により形成する。
そして、保護層24の上には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる第1の潤滑層(固体潤滑層)25を、ArとCHの混合雰囲気中でプラズマCVDにより、10nm形成する。さらに、パーフルオロポリエーテルからなる第2の潤滑層26を、ディッピングにより塗布する。
ここで、TbFeCoからなる記録膜23は補償組成温度が50℃であり、キュリー温度は320℃になるように、各ターゲットの投入パワーを設定して組成を調整し、製膜した。また、GdFeCoAlの再生層は補償組成温度が−20℃でキュリー温度が270℃であり、この結果、再生層の飽和磁化Msは温度と共に上昇し、110℃で極大となる。また、記録層の保磁力Hcは、室温から補償組成温度までは上昇するものの、さらに温度上昇した場合には、減少するという膜の温度特性が得られる。このため、本実施形態の磁気ディスク20では、光ビームを照射した状態での温度、110℃で、飽和磁化Msが極大となり、微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
次に、記録層の製造方法についてさらに詳しく説明する。本実施形態の記録層は、TbターゲットとFeCoターゲットを用いて、Arガスを1.5Paになるまでチャンバー内に導入し、TbとFeCoが周期的に積層するように記録層を60nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。記録層のTbFeCo製膜時に、製膜速度、ディスク基板の回転数を制御することにより、TbとFe、Coの遷移金属が1.5nmの周期的な積層構造を有する非晶質な磁性薄膜を形成できる。具体的には、40rpmで自公転の回転をしながら、それぞれの元素粒子が、0.7nm/secの製膜レートでそれぞれ形成されることにより、上記膜構造が得られる。また、TbFeCoの膜組成は、それぞれのターゲットの投入パワー比を調整することにより、所望の膜組成に合わせることができる。
このように、少なくとも記録層を2.0nm以下の周期的な積層構造にすることにより、記録層の飽和磁化Msと保磁力Hcとの積を増大させることができ、3.0×10^6erg/cm以上のMs・Hcが得られる。実際、本実施形態の記録層では、4.2×10^6erg/cmという大きなMs・Hc値が得られる。70nm以下の微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
ここで、磁気ディスク20の、記録層の積層構造の周期に対するMs・Hcの依存性を調べると、記録層の積層周期が2nm以下になるとMs・Hc値は増加し、1.0nmの周期的な構造でほぼ最大となる。従って、Ms・Hc値が3.0×10^6erg/cm以上であるためには、2.0nm以下の積層周期とする必要がある。
さらに、磁気ディスク20の、記録層のMs・Hcに対する、記録マーク長限界の依存性を調べると、記録層のMs・Hcが大きくなると、記録限界となるマーク長は小さくなり、本実施形態の周期的な積層構造の記録層により、微小磁区の安定性に優れている。そして、Ms・Hc値が3.0×10^6erg/cm以上であれば、80nm以下のマーク長の記録磁区であっても、安定に記録再生可能であり、記録層と再生層からなる2層構造の記録膜を用いた場合にも、記録層の記録情報が安定して再生層に転写し、信号振幅が拡大して、優れた記録再生信号が得られる。
以上のように、本実施形態の構成により、磁気ヘッドにより、高密度に記録再生した場合にも、安定した再生信号特性が得られる。
なお、本実施形態の磁気ディスク20の記録層は、TbとFeCoが1.5nmに周期的に積層する構成であったが、上記した構成に限定されるものではなく、積層周期が0.4nm以上、2nm以下に積層した構成であって、記録層の膜厚を50nm以上、より好ましくは、60nmから200nmに形成した構成であれば、同等の効果が得られる。
また、本実施形態では、TbとFe、Coの遷移金属が周期的な積層構成について述べたが、上記した構成に限定されるものではなく、Tb、Fe、Coそれぞれ異なるターゲット、あるいは、それ以外の材料を含む構成であっても、2nm以下の積層周期を有する記録層の構成であればよい。
以上のように、本発明においては、記録情報の書き換え可能な積層周期構成を有する記録層と再生層とを積層した構成の記録膜により、0.3μm以下の微小磁区を安定して形成することができ、再生層に転写した再生信号の増大を可能にすることができる。さらに、情報トラックでの記録磁区が安定した形状に形成されるため、記録再生時に隣接トラックからのクロスライトおよびクロストークも低減できる。
[第3実施形態]
図3は、本発明の第3実施形態における磁気ディスク30の構造を示す断面図である。
31は透明なガラスからなるディスク基板、32は熱伝導率の大きい金属材料からなり、記録膜の保護と記録膜から熱を拡散させる放熱層である。33は積層した記録膜であり、記録情報を保持しておく記録層と、再生情報の信号量を増大させるための再生層と、再生層と記録層の間の交換結合力を制御する中間層により形成されている。34は断熱保護層であり、記録膜33と潤滑層とを断熱するため、記録膜33の上に形成されている。さらに、磁気ヘッドの浮上特性を向上させるために、第1の潤滑層35と第2の潤滑層36が形成されている。
図3で示した磁気ディスク30は、記録膜が形成された潤滑層側から、レーザー光を照射し、磁気ヘッドにより信号を記録、再生検出することによって、照射されるレーザー光スポットの回折限界よりも、小さい記録マークの記録再生が可能となる磁気記録媒体に適用できる構成である。
特に、本実施形態の磁気記録媒体では、ディスクが回転し、トラックに沿ってレーザー光ビームスポットを照射しながら磁気ヘッドで情報が記録される。この時、記録膜は、第1実施形態同様に、高温では保磁力が低下することから、磁気ヘッドによる記録が可能となる。また、信号再生時には、レーザー光を照射して、温度上昇させながら、GMRヘッドにより、記録磁区を検出する。この時、再生層の飽和磁化Msは温度と共に上昇し、130℃で極大となるため、GMRヘッドでの検出信号量が増大し、再生信号振幅を増大させることができる。
次に、磁気ディスク30の構成と製造方法について詳細に説明する。
図3に示すように、光ディスク基板31に、上述した磁性膜を含む多層に積層した記録膜33が形成されている。ディスク基板31は、書き換え可能な領域と、サーボ用のウォブルピットとアドレスピットの形成されたピット領域とがトラック上に交互に並設されたフォーマット構成をとっており、トラッキングサーボをかけながら、アドレスを検出し、書き換え可能な領域に情報の記録再生を行うことができる。この時、20nmから180nmの範囲にある深さのプリピットを有する構成により、アドレスピット等のプリピットからの信号が検出可能であり、記録再生を実現できる。
まず、直流マグネトロンスパッタリング装置に、AlTiターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、8×10^(−6)Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたままArガスを0.5Paになるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、プリピットが形成された透明なガラスからなるディスク基板31上に、金属材料のAlTiからなる放熱層32を60nm形成する。
引き続き、放熱層32上には、同様に真空排気をしたまま、Arガスを1.5Paになるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、TbFeCoの合金ターゲットを用いて、記録層を80nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。ここで、TbFeCoの膜組成は、合金ターゲットの組成比を調整することにより、所望の膜組成に合わせることができる。次に、TbDyFeCoAlの合金ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法によりTbDyFeCoAlからなる中間層を15nm形成する。さらに、GdFeCoAlの合金ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法によりGdFeCoAlからなる再生層を35nm形成する。このように、記録層、中間層、再生層からなる3層構造の記録膜33を形成することができる。
さらに、0.3Paになるまでチャンバー内にArガスとNガスを導入し、基板を回転させながら、SiNからなる保護層34を10nm、反応性スパッタリング法により形成する。
そして、保護層34の上には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる第1の潤滑層(固体潤滑層)35を、ArとCH、Hの混合雰囲気中でプラズマCVDにより、12nm形成する。さらに、パーフルオロポリエーテルからなる第2の潤滑層36を、ディッピングにより2nm塗布する。
ここで、TbFeCoからなる記録膜12は補償組成温度が90℃であり、キュリー温度は310℃になるように、ターゲットの組成比を設定して膜組成を調整した。また、TbDyFeCoAlの中間層は補償組成温度が20℃でキュリー温度が180℃であり、さらに、GdFeCoAlの再生層は補償組成温度が−60℃でキュリー温度が290℃に調整してある。この結果、記録層の保磁力Hcは、室温から補償組成温度までは上昇するものの、さらに温度上昇した場合には、減少するという膜の温度特性が得られる。また、再生層の飽和磁化Msは温度と共に上昇し、130℃で極大となり、さらに、中間層がキュリー温度以上の場合には、記録層と再生層間の交換結合を遮断するため、微小な記録マークであっても、再生層に転写されて、大きな信号量として検出される。
この結果、本実施形態の磁気ディスク30では、光ビームを照射した状態での温度である110℃から170℃の範囲で飽和磁化Msが大きい。そのため、磁気的超解像により、微小磁区を記録した場合にも周辺の記録磁区を転写することなく、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
ここで、本実施形態の記録層の製造方法によると、記録層のTbFeCo製膜時に、製膜速度、ディスク基板の回転数を制御することにより、TbとFe、Coの膜のミクロな構造を変化させることができ、膜面垂直方向の磁気異方性の大きい非晶質な膜構造の磁性薄膜を形成できる。具体的には、40rpmで自公転の回転をしながら、それぞれの元素粒子が、0.5nm/secの製膜レートで、それぞれ形成されることにより、上記膜構造が得られる。また、TbFeCoの膜組成は、ターゲット組成と製膜条件を調整することにより、所望の膜組成に合わせることができる。
以上のように、記録層、中間層、再生層からなる3層構造の記録膜を用いた場合にも、記録層の記録情報が安定して磁気ヘッドにより検出でき、高密度に記録再生した場合にも、安定した再生信号特性が得られる。
この結果、本発明においては、記録情報の書き換え可能な記録層、中間層、再生層を順次積層した構成の記録膜に断熱層を介して潤滑層を形成した構成により、0.3μm以下の微小磁区を安定して形成することができ、再生層に転写した再生信号の増大を可能にすることができる。さらに、情報トラックでの記録磁区が安定した形状に形成させるために、記録再生時に隣接トラックからのクロスライトおよびクロストークも低減できる。
この時、複数の薄膜で構成された潤滑層であれば、さらにその効果が大きい。すなわち、本実施形態の磁気ディスク30において、DLC膜形成時に、Arに対してH量を3%とした条件で潤滑層を形成した後に、H量を0.5%とした条件により潤滑層を形成し、さらに、PFREの潤滑層を塗布する。このような複数の潤滑層を用いた構成により、記録層と、表面のPEPEからなる潤滑層との間での断熱効果がさらに高まることになり、第2の潤滑層の温度上昇を抑制することができる。この結果、レーザー光照射により記録膜の温度上昇をさせた場合に、GMRヘッド等の磁気ヘッドによる信号の記録再生時にも、信号特性と熱耐久性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。
[第4実施形態]
図4は、本発明の第4実施形態における磁気ディスク40の構造を示す断面図である。
41はAl基板等の金属からなるディスク基板、42は記録膜の保護と下地を調整するための誘電体層である。43は積層した記録膜であり、図7に示すように、情報を保持しておく記録層101、情報を磁壁の移動によって検出するための再生層103、再生層と記録層の間の交換結合を制御するための中間層(あるいは、中間遮断層)102により構成されている。44は記録膜43と潤滑層を断熱するための保護層であり、さらに磁気ヘッドの浮上特性を向上させるために、第1の潤滑層45と第2の潤滑層46が形成されている。
図4で示した磁気ディスク40において、記録層101から中間層102を通して再生層103に転写した記録ドメインの磁壁は、光ビームによる温度勾配に差し掛かり次々と移動する。この磁壁の移動を磁気ヘッドにより検出することによって、再生時の磁気ヘッドでの検出感度を向上させて超解像再生が可能となるDWDD方式(Domain Wall Displacement Detection)を適用できる。
上述した構成に積層した記録膜は、磁壁の移動を利用して、再生信号の振幅、および信号量を大きくするDWDD方式の一例であり、大きな界面飽和保磁力を有する磁性膜を記録層、小さな界面飽和保磁力を有する磁性膜を磁壁移動する再生層とし、比較的低いキュリー温度を有する磁性膜間の転写を切り換えるための中間層を用いている。したがって、DWDD方式を可能にする磁性膜を用いていれば良く、この膜構成に限るものではない。
ここで、DWDD方式の再生原理について、図7を参照しながら説明する。
図7(a)は、回転している磁気ディスクの記録膜の断面を示す図であり、図示しないディスク基板と、誘電体層の上に再生層103、中間層102、記録層101の3層構成の記録膜、図示しない断熱層である誘電体層、さらにその上に潤滑層が形成されている。
再生層103として磁壁抗磁力の小さい磁性膜材料、中間層102としてキュリー温度の小さい磁性膜、記録層101として小さなドメイン径でも記録磁区を保持できる磁性膜を用いている。ここで、再生層は、記録トラック間にガードバンド等を形成することにより、閉じていない磁壁を含む磁区構造をしている。
図に示すように、情報信号は、記録層に熱磁気記録された記録磁区として形成されている。レーザー光スポットの照射されていない室温での記録膜は、記録層、中間層、再生層がそれぞれ強く交換結合しているため、記録層の記録磁区はそのまま再生層に転写形成される。
図7(b)は、(a)の断面図に対応した位置χと記録膜の温度Tとの関係を表す。記録信号の再生時にはディスクが回転し、トラックに沿ってレーザー光による再生ビームスポットが照射される。この時、記録膜は、図7(b)に示すような温度分布を示し、中間層がキュリー温度Tc以上となる温度領域Tsが存在し、再生層と記録層との交換結合が遮断される。
また、再生ビームが照射されると、図7(c)の磁壁エネルギー密度σに対する依存性に示すように、図7(a)、(b)の位置に対応するディスク回転方向のχ方向に磁壁エネルギー密度σの勾配が存在するために、図7(d)に示すように、位置χでの各層の磁壁に対して磁壁を駆動させる力Fが作用する。
この記録膜に作用する力Fは、磁壁エネルギー密度σの低い方に磁壁を移動させるように作用する。再生層は、磁壁抗磁力が小さく磁壁の移動度が大きいので、閉じていない磁壁を有する場合の再生層単独では、この力Fによって容易に磁壁が移動する。従って、再生層の磁壁は、矢印で示したように、より温度が高く、磁壁エネルギー密度の小さい領域へと瞬時に移動する。そして、再生ビームスポット内を磁壁が通過すると、スポット内での再生層の磁化は光スポットの広い領域で同じ方向に揃う。
この結果、記録磁区の大きさに依らず、再生磁区の大きさは常に一定の最大振幅になる。このため、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、光ビーム等により記録膜を昇温させているため、再生層での転写磁区を拡大することにより、常に一定の最大振幅の信号量になる。
次に、磁気ディスク40の構成と製造方法について詳細に説明する。
図4に示すように、金属のディスク基板41に、上述した磁性膜を含む多層に積層した記録膜43が形成されている。ディスク基板41は、平板であり、記録膜形成後に、サーボライター等により基準となるサーボトラック等を形成してフォーマットできる。
まず、直流マグネトロンスパッタリング装置に、Siターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、8×10^(−6)Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたままArガスとNガスを0.3Paの圧力となるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、ディスク基板41上に、SiNからなる断熱保護層34を20nm、反応性スパッタリング法により形成する。
引き続き、誘電体層42上には、同様に真空排気をしたまま、Arガスを1.5Paになるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、TbFeCoの合金ターゲットを用いて、記録層を80nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。ここで、TbFeCoの膜組成は、合金ターゲットの組成比を調整することにより、所望の膜組成に合わせることができる。次に、TbDyFeCoAlの合金ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法によりTbDyFeCoAlからなる中間層を15nm形成する。さらに、GdFeCoAlの合金ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法によりGdFeCoAlからなる再生層を35nm形成する。このように、記録層、中間層、再生層からなる3層構造の記録膜43を形成することができる。
さらに、0.3Paになるまでチャンバー内にArガスとNガスを導入し、基板を回転させながら、SiNからなる保護層44を10nm、反応性スパッタリング法により膜形成する。
そして、保護層44の上には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる第1の潤滑層(固体潤滑層)45をArとCHの混合雰囲気中で、Cターゲットを用いて、反応性RFスパッタリングにより、12nm形成する。さらに、パーフルオロポリエーテルからなる第2の第2の潤滑層46を2nm塗布する。
ここで、TbFeCoからなる記録膜43は補償組成温度が100℃であり、キュリー温度は310℃になるように、ターゲットの組成比を設定して膜組成を調整した。また、TbDyFeCoAlの中間層は補償組成温度が20℃でキュリー温度が180℃であり、さらに、GdFeCoAlの再生層は補償組成温度が160℃でキュリー温度が290℃に調整してある。この結果、記録層の保磁力Hcは、室温から補償組成温度までは上昇するものの、さらに温度上昇した場合には、減少するという膜の温度特性が得られる。また、再生層の飽和磁化Msは温度と共に上昇し、160℃で極大となり、さらに、中間層がキュリー温度以上の場合には、記録層と再生層間の交換結合を遮断するため、微小な記録マークであっても、再生層に転写されて、大きな信号量として検出される。
この結果、本実施形態の磁気ディスク40では、光ビームを照射した状態での温度である150℃から190℃の範囲で飽和磁化Msが大きい。そのため、磁気的超解像により、微小磁区を記録した場合にも周辺の記録磁区を転写することなく、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
[第5実施形態]
図5は、本発明の第5実施形態における磁気ディスク50の構造を示す断面図である。
51は透明なガラスからなるディスク基板、52は熱伝導率の大きい金属材料からなり記録膜の保護と記録膜から熱を拡散させる放熱層である。放熱層52の上には、耐熱層53を介して、積層した記録膜54が形成される。積層した記録膜54は、記録情報を保持しておく記録層と、再生情報の信号量を増大させるための再生層と、再生層と記録層の間の交換結合力を制御する中間層により形成されている。さらに、記録膜54の上に、記録膜54と潤滑層とを断熱するための断熱保護層55が形成されている。さらに、磁気ヘッドの浮上特性を向上させるために、第1の潤滑層56と第2の潤滑層57が形成されている。
磁気ディスク50には、第4実施形態と同様に、光ビームによる温度勾配により、差し掛かった磁壁を次々と移動させ、この磁壁の移動を磁気ヘッドにより検出することによって、再生時の磁気ヘッドでの検出感度を向上させて超解像再生が可能となるDWDD方式適用できる。ここで、レーザー光は、第2の潤滑層57側から照射される。信号の記録、再生は磁気ヘッドを用いて行われ、照射されるレーザー光スポットの回折限界よりも小さい記録マークの記録再生が可能である。
この結果、記録磁区の大きさに依らず、再生磁区の大きさは、常に一定の最大振幅になる。このため、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、光ビーム等により記録膜を昇温させているため、再生層での転写磁区を拡大することにより、常に一定の最大振幅の信号量になる。
上述した構成に積層した記録膜は、磁壁の移動を利用して、再生信号の振幅、および信号量を大きくするDWDD方式を可能にする磁性膜の一例であるが、この膜構成に限るものではない。
次に、磁気ディスク50の構成と製造方法について詳細に説明する。
図5に示すように、ガラスのディスク基板51に、上述した磁性膜を含む多層に積層した記録膜54が形成されている。ディスク基板51は、書き換え可能な領域と、サーボ用のウォブルピットとアドレスピットの形成されたピット領域とが、トラック上に交互に並設されたフォーマット構成をとっており、トラッキングサーボをかけながら、アドレスを検出し、書き換え可能な領域に情報の記録再生を行うことができる。この時、20nmから180nmの範囲にある深さのプリピットを有する構成により、アドレスピット等のプリピットからの信号が検出可能であり、記録再生を実現できる
まず、直流マグネトロンスパッタリング装置に、AlTiターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、8×10^(−6)Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたままArガスを0.5Paになるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、ディスク基板51上に、金属材料のAlTiからなる放熱層52が80nm、形成される。
引き続き放熱層52の上には、同様に真空排気をしたまま、さらに、0.3Paになるまでチャンバー内にArガスとNガスを導入し、基板を回転させながら、AlTiNからなる耐熱層53を10nm、反応性スパッタリング法により形成する。
耐熱層53の上には、同様に真空排気をしたままArガスを1.5Paになるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、TbFeCoの合金ターゲットを用いて、記録層を80nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。ここで、TbFeCoのCr膜組成は、合金ターゲットの組成比を調整することにより、所望の膜組成に合わせることができる。次に、TbDyFeCoCrの合金ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、TbDyFeCoCrからなる中間層を15nm形成する。さらに、GdFeCoCrの合金ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法によりGdFeCoCrからなる再生層を35nm形成する。上記の方法で、記録層、中間層、再生層からなる3層構造の記録膜54を形成することができる。
さらに、0.3Paになるまでチャンバー内にArガスとNガスを導入し、基板を回転させながら、SiNからなる保護層55を10nm、反応性スパッタリング法により形成する。
保護層55の上には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる第1の潤滑層(固体潤滑層)56をArとCHの混合雰囲気中で、Cターゲットを用いて、反応性RFスパッタリングにより、8nm形成する。さらに、パーフルオロポリエーテルからなる第2の潤滑層57を2nm塗布する。
ここで、TbFeCoCrからなる記録層は補償組成温度が20℃であり、キュリー温度は300℃になるようにターゲットの組成比を設定して膜組成を調整した。また、TbDyFeCoCrの中間層は補償組成温度が50℃でキュリー温度が180℃であり、さらに、GdFeCoCrの再生層は補償組成温度が160℃でキュリー温度が290℃に調整してある。この結果、記録層の保磁力Hcは、室温では大きいものの、温度上昇に伴って減少するという膜の温度特性が得られる。また、再生層の飽和磁化Msは温度と共に上昇し、160℃で極大となる。さらに、中間層がキュリー温度以上の場合には、記録層と再生層間の交換結合が遮断されるため、微小な記録マークであっても、DWDD方式により、再生層に転写され、大きな信号量として検出される。
この結果、本実施形態の磁気ディスク50では、光ビームを照射した状態での温度である120℃から180℃の範囲で、飽和磁化Msが大きい。そのため、磁気的超解像を用いたDWDD方式により、微小磁区を記録した場合にも周辺の記録磁区を転写することなく、安定した記録磁区を形成でき、また信号振幅も大きくできるため、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
[第6実施形態]
図6は、本発明の第6実施形態における磁気ディスク60の構造を示す断面図である。
61は平板のガラスからなる透明なディスク基板、62は熱伝導率の大きい金属材料からなり、記録膜の保護と記録膜から熱を拡散させる放熱層である。放熱層62の上には、下地断熱層63を介して、積層した記録膜64が形成される。積層した記録膜64は、記録情報を保持しておく記録層と、再生情報の信号量を増大させるための再生層と、再生層と記録層の間の交換結合力を制御する中間層により形成されている。さらに、記録膜64の上は、記録膜64と潤滑層とを断熱するための断熱保護層65が形成されている。さらに、磁気ヘッドの浮上特性を向上させるために、第1の潤滑層66と第2の潤滑層67が形成されている。記録膜64が形成される側の基板の下地は、イオンエッチングにより下地誘電体層の表面粗さを制御している。
磁気ディスク60において、第5実施形態と同様に、再生層に転写した記録ドメインの磁壁は、光ビームによる温度勾配に差し掛かり次々と移動する。この磁壁の移動を磁気ヘッドにより検出することによって、再生時の磁気ヘッドでの検出感度を向上させて超解像再生が可能となるDWDD方式を適用できる。ここで、レーザー光は、第2の潤滑層67側から照射される。また、信号の記録、再生は磁気ヘッドを用いて行われ、照射されるレーザー光スポットの回折限界よりも小さい記録マークの記録再生が可能である
この結果、記録磁区の大きさに依らず、再生磁区の大きさは、常に一定の最大振幅になる。このため、GMRヘッド等の磁気ヘッドを用いて信号再生する場合にも、光ビーム等により記録膜を昇温させているため、再生層での転写磁区を拡大することにより、常に一定の最大振幅の信号量になる。また、高NAの光学ヘッドを用いて信号を再生する構成であっても同様の効果が得られる。
上述した構成に積層した記録膜は、磁壁の移動を利用して、再生信号の振幅、および信号量を大きくする方法であるDWDD方式を可能にする磁性膜の一例であるが、この構成に限るものではない。
次に、磁気ディスク60の構成と製造方法について詳細に説明する。
図6に示すように、ガラスのディスク基板61に、上述した磁性膜を含む多層に積層した記録膜64が形成されている。ディスク基板61は、平板の基板であり、記録膜形成後に、サーボライター等により基準となるサーボトラック等を形成してフォーマットできる。このサーボトラックにより、光ヘッドと磁気ヘッドを同時にトラッキングサーボしながらアドレス検出することにより、情報の記録再生が可能となる。
まず、直流マグネトロンスパッタリング装置に、AlCrターゲットを設置し、ディスク基板を基板ホルダーに固定した後、8×10^(−6)Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をターボ分子ポンプで真空排気する。そして、真空排気をしたままArガスと微量のNガスを0.3Paになるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、ディスク基板61上に、金属材料のAlCrからなる放熱層52が50nm、形成される。
引き続き放熱層62の上には、同様に真空排気をしたまま、さらに、0.4Paになるまでチャンバー内にArガスとNガスを導入し、基板を回転させながら、AlCrNからなる下地断熱層63を15nm、反応性スパッタリング法により形成する。ここで、下地断熱層63の表面には、イオンガンにより、表面粗さRaが0.3nmより大きいエッチング面68が形成される。
さらに、下地断熱層63に形成したエッチング面68の上には、同様に真空排気をしたままArガスを1.5Paになるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、TbGdFeCoの合金ターゲットを用いて、記録層を100nm、DCマグネトロンスパッタリング法により形成する。ここで、TbGdFeCoの膜組成は、合金ターゲットの組成比を調整することにより、所望の膜組成に合わせることができる。次に、TbFeCoCrの合金ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、TbFeCoCrからなる中間層を15nm形成する。さらに、GdFeCoCrの合金ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により、GdFeCoCrからなる再生層を40nm形成する。上記の方法で、記録層、中間層、再生層からなる3層構造の記録膜64を形成することができる。
さらに、0.3Paになるまでチャンバー内にArガスとNガスを導入し、基板を回転させながら、AlTiNからなる保護層65を5nm、反応性スパッタリング法により形成する。
保護層65の上には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる第1の潤滑層(固体潤滑層)66をArとCHの混合雰囲気中で、Cターゲットを用いて、反応性RFスパッタリングにより、6nm形成する。さらに、パーフルオロポリエーテルからなる第2の潤滑層67を3nm塗布する。
ここで、TbGdFeCoからなる記録層は補償組成温度が40℃であり、キュリー温度は320℃になるようにターゲットの組成比を設定して膜組成を調整した。また、TbFeCoCrの中間層は補償組成温度が120℃でキュリー温度が190℃であり、さらに、GdFeCoCrの再生層は補償組成温度が20℃でキュリー温度が300℃に調整してある。この結果、記録層の保磁力Hcは、室温では大きいものの、温度上昇に伴って減少するという膜の温度特性が得られる。また、再生層の飽和磁化Msは温度と共に上昇し、220℃で極大となる。さらに、中間層がキュリー温度以上の場合には、記録層と再生層間の交換結合が遮断されため、微小な記録マークであっても、DWDD方式により、再生層に転写され、大きな信号量として検出される。
この結果、本実施形態の磁気ディスク60では、光ビームを照射した状態での温度である120℃から220℃の範囲で、飽和磁化Msが大きい。そのため、磁気的超解像を用いたDWDD方式により、微小磁区を記録した場合にも周辺の記録磁区を転写することなく、安定した記録磁区を形成でき、磁気ヘッドにより繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
以上のように、記録層、中間層、再生層からなる3層構造の記録膜を用いた場合にも、記録層の記録情報が安定して磁気ヘッドにより検出でき、高密度に記録再生した場合にも、安定した再生信号特性が得られる。
この結果、本発明においては、記録情報の書き換え可能な記録層、中間層、再生層を順次積層した構成の記録膜に断熱層を介して潤滑層を形成した構成により、0.3μm以下の微小磁区を安定して形成することができ、再生層に転写した再生信号の増大を可能にすることができる。さらに、情報トラックでの記録磁区が安定した形状に形成させるために、記録再生時に隣接トラックからのクロスライトおよびクロストークも低減できるものである。
[第7実施形態]
本発明の実施形態における、磁気記録媒体の記録再生方法および記録再生装置について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の実施形態の磁気記録媒体の記録再生方法は、上述した磁気記録媒体に、レーザー光スポットを照射することにより、記録膜の温度を上昇させながら、磁気記録媒体の記録層に形成された記録磁区を再生層に転写させ、GMRヘッド等の磁気ヘッド、あるいは光ヘッドを用いて情報の記録再生を行う。あるいは、記録時、または再生時に、レーザー光を照射する光学ヘッドを用いて、情報の記録再生を行う。
上記記録再生方法は、例えばレーザー光を用いて情報の記録、再生、消去を行う構成である。記録再生時には、レーザー光スポットを磁気記録媒体に対して相対的に移動させながら再生層側から照射し、磁気記録媒体からの反射光、あるいは磁気的な信号を用いてトラッキング制御をかけながら、磁気記録媒体上にレーザー光スポットの移動方向に対して勾配を有する温度分布を形成する。この時、記録層から中間層を介して生じる結合力よりも、再生層に形成されていた磁壁を温度が高い方向へ移動させようとする磁壁に生じる力の方が大きくなる、高い温度領域を有する温度分布を再生層に形成する。それによって、光スポットの内部に記録層からの情報の転写磁区を再生層に形成し、再生層での磁壁移動によって拡大形成された情報を光スポットからの反射光の偏向面の変化として検出する。
あるいは、上記記録再生方法は、例えばレーザー光により磁気記録媒体を昇温させながら、磁気ヘッドを用いて情報の記録、消去を行い、GMRヘッドを用いて情報を再生する構成である。情報の記録時には、レーザー光スポットを磁気記録媒体に対して相対的に移動させながら照射し、磁気ヘッドを磁気記録媒体の記録層、あるいは再生層側から配置し、記録情報に応じて磁界方向を変調させて、トラッキング制御をかけながら、磁気記録媒体の記録層に情報の記録、消去を行う。また、情報の再生時には、磁気記録媒体にレーザー光スポットを照射して磁気ディスクの移動方向に対して勾配を有する温度分布を形成し、再生層側に情報再生用のGMRヘッドを配置し、記録層から中間層を介して転写形成された記録情報の転写磁区が、再生層での温度勾配により、温度が高い方向へ移動させようとする磁壁移動によって拡大形成された情報、あるいは、Msの増大に伴い信号量が増大した情報を、GMRヘッドにより検出する磁気記録媒体の記録再生方法である。
また、再生層の深さ方向で膜組成が異なる場合には、段階的に転写した記録磁区の大きさを磁壁移動させることにより磁区拡大させて、情報を検出する磁気記録媒体の再生方法であってもよい。さらに、磁気記録媒体の中間層を介して生じる結合力が、磁気的結合力、交換結合力、静磁結合力のいずれかである構成により、記録層と再生層との磁気的結合力による信号の転写可能な温度範囲からのみ転写し、転写した磁区を拡大して信号を検出する磁気記録媒体の記録再生方法であってもよい。
図9は、本発明の実施形態における磁気記録媒体の記録再生装置の一例である。スピンドルモータ113に取り付けられた磁気記録媒体(以下、磁気ディスク)10において、磁気ヘッド制御、検出回路116でコントロールされた磁気ヘッドにより、信号が記録再生される。また、この時、磁気記録媒体を熱アシストするための光学ヘッド114が、レーザー駆動回路115により制御されたレーザー光をディスク上に照射する。また、制御回路117により、モータの回転駆動制御と、レーザー光のサーボ制御等が行われる。
上記の記録再生装置により、本実施形態の磁気ディスクにおいて、表面形状の凹凸ピット、あるいは磁気的に記録されたピットにより、トラッキングサーボをかけながら、情報信号の記録再生を行う事が可能となる。
ここで、光学ヘッドは、磁気ヘッドと反対方向に配置した構成について示してあるが、磁気ヘッドと同じ側から照射する構成、磁気ヘッドと光学ヘッドと一体となった構成、あるいは、磁気ヘッドが光源とつながった導波路と一体となった構成であってもよい。
以上のような構成によっても、本実施形態の記録再生装置は、光ヘッドにより磁気記録媒体を加熱しながら、磁気ヘッドにより情報信号の記録再生を行うことが可能となる。
[第8実施形態]
本発明の磁気記録媒体を構成する層の製膜例として、記録層を用いて説明する。
記録層は、それぞれの金属材料を用いたターゲットによる多元スパッタリング、あるいは必要な材料を混合した合金ターゲットを用いてマグネトロンスパッタリング法によって、製膜時の到達真空度が1.0×10^(−5)Pa以下であって、製膜時の導入ガスの圧力を0.6Pa以上6.0Pa以下に設定して膜形成すれば製造可能である。
図10に成膜装置の例を示す。70は真空搬送室、71は真空脱ガス室、72はロードアンロード室、73は真空メインチャンバー、74はロード室、75はアンロード室、77は加熱室、81−87が真空プロセス室である。
この時導入するガスとしては、少なくともArガス、Neガス、Krガス、Xeガスを含めばよい。さらに、上述の製膜時の圧力に対して、O、HO、N、Hの分圧は、100ppm以下であればさらその効果が大きい。ここで、スパッタリングガスの圧力に対するそれらの分圧は、真空室にガス分析管を接続することにより、容易に測定できる。
また、上述の実施形態における磁気記録媒体の記録層は、0.7nm/secから5nm/secの製膜時の堆積速度で膜形成していたが、0.5nm/sec以上10nm/sec以下であれば、製造プロセスにおける製膜時のAr、Ne、Kr、Xe等のガス圧やバイアス磁界、あるいは周期的な積層方法などの製膜条件、更には使用する装置に関わる要因パラメータにより、形成される記録膜組成が変化した場合にも、膜中に不活性ガスを含有した構成が可能であり、所望の記録層を形成することができる。
さらに、多元スパッタリング方式、あるいは、静止対向型のスパッタリング方式等の製膜装置条件を制御することにより、記録層の信号を増大、あるいは、再生層に転写し、スムーズに磁壁移動させて磁区拡大による再生を行うことができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の磁気記録媒体の構成例と記録再生方法の例等を述べた。ここでは、各層の他の実施例と、それらの層を用いた磁気記録媒体の記録再生方法を述べる。
<ディスク基板>
上記各実施形態のディスク基板は、ポリカーボート、金属、あるいはガラス基板に対し、フォトポリマーを用いて微細パターン、および、案内溝あるいはプリピットを形成した構成について述べた。しかし、ディスク基板の材料としては、機械特性などの媒体基板としての特性を満たすものであれば特に限定されず、ガラス、ポリカーボネート、ポリオレフィン、エポキシ系樹脂、その他のプラスチック材料等を用いることができる。これらに対して直接微細パターンを形成してもよい。さらには、金属基板、あるいは、ガラス基板とプラスチック材料を組み合わせたディスク基板であってもよい。ガラスの場合は、紫外線硬化樹脂を用いて2P法で製造することが可能である。ガラス基板にフォトポリマーで形成した微少なパターンとしては、0.3μmの円形パターンについて述べてきたが、少なくとも0.5μm以下のパターン、あるいは、記録磁区の最小パターンよりも小さい凹凸であって、半球状、四角形、あるいはその他の形状の凹凸であっても、微細形状が揃っていて、記録磁区からの信号のノイズにならなければ、同様に記録層の微小磁区を安定化する効果がある。
ディスク基板の構成については、平板であり、光スポットのトラッキングガイドのためのスパイラル状の案内溝、環状の案内溝、あるいはプリピットを備えたものを述べてきた。この時、ディスク基板のトラックピッチは0.4μmから0.8μm、グルーブ幅は0.3μmから0.6μmである。しかし、ディスク基板上に、アドレス情報を有する蛇行したスパイラル状の案内溝、あるいはサンプルサーボ方式等の蛇行したトラッキングガイドのためのプリピットを設けた構成のディスク基板を用いてもよい。この時、情報記録トラックのグルーブ間が矩形型あるいは逆V字型であるランド、あるいはグルーブにより、記録トラック間が遮断される場合、トラックピッチは1.0μm以下で、情報の記録されるランドあるいはグルーブの間に0.1μmから0.8μmの幅を有するグルーブあるいはランド部が構成されていればよい。また、さらにトラックピッチを小さくすることにより、さらに高密度な磁気記録媒体を得ることができる。
また、各実施形態では、下地層のエッチングにより情報記録面の面粗さRaを1.0nm以上と大きくした構成について述べた。しかし、製膜プロセス条件により、製膜時の下地の材料粒径を大きくすることにより記録面の面粗さRaを0.5nm以上とすれば、同様も効果を有する磁気記録媒体を実現できる。
<保護層>
誘電体保護層としては、SiN膜、および、AlTiN膜を用いた構成について述べた。しかし、ZnS膜、ZnS−SiO膜またはその他のカルコゲン化物の誘電体膜、TaO等の酸化物の膜、AlCrN等の窒化物の膜、あるいは、それらの化合物の薄膜を用いてもよい。また、誘電体層の膜厚は、2nmから300nmの範囲で、保護効果を有する構成であればよい。耐熱性の保護層としては、テフロン薄膜について述べた。しかし、PTFE(ボリテトラフルオロエチレン(4フッ化))、PPA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)等のテフロン(フッ素樹脂、または、4フッ化エチレン樹脂)、あるいは、酸化物(SiO、Al、BaO、CaO、BZnO、B、La、PbO)、窒化物(Si、AlN、BN等)、炭化物(SiC、TiC、BC、WC等)、ほう化物(LaB、TiB、ZrB等)、硫化物(CdS、MOS等)、けい化物(MOSi)および炭素のように非金属元素として酸素を含まない化合物(元素)からなるセラミックス材料から構成される、耐熱性に優れた薄膜材料であってもよい。また、Ti、Ta、Cr等の金属材料、あるいはこれらの金属材料に、添加物または窒素化合物を含んだ材料からなっていてもよい。
さらに、基板上に記録層を直接、あるいは、保護層を介した構成以外にも、熱吸収層等を配置した構成であってもよい。また、その場合の熱吸収層の材料としては、AlTi、Al、Cu、Ag、Auの少なくとも1つを含む合金材料であって、記録膜よりも熱伝導率の大きい材料であればよい。保護層の膜厚は、0.5nm以上99.5nm以下であればよい。
<潤滑層>
潤滑層については、DLC層およびPFPE材料からなるものについて述べた。しかし、ウレタン系樹脂、あるいは、アルミナ系の潤滑材を含有した構成、あるいは、その他の紫外線硬化型の樹脂、熱硬化型の樹脂等、またはホットメルト接着剤などと、摺動コート材料とを組み合わせたものを採用することも可能である。潤滑層の膜厚は、0.5nm以上20nm以下であればよく、潤滑層と保護層の膜厚の合計が、1nm以上100nm以下であればよい。
<誘電体層>
また、記録層上に形成される誘電体層は、硬い透明な層であって、AlN、SiN、GeN、Ta、TiO、HfO、あるいはダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の硬い材料からなることが好ましい。ZnS−SiOのように熱伝導率の小さい誘電体層を用いる場合には、その上に、AlN、SiN、GeN、Ta、TiO、HfOやダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの硬い保護層を積層することが好ましい。保護層の膜厚は記録されたマークからの信号出力が増大するような膜厚に設定される。
また、本発明の磁気記録媒体の基板側に保護コートを設けてもよく、厚み1μm以上200μm以下の無機あるいは有機材料で構成されることが好ましい。有機材料ではアクリル系の紫外線硬化樹脂など比較的硬い樹脂をスピンコート法で塗布することができる。無機材料ではシリカやアルミナなどをゾルゲル法で塗布することができる。また、透明シートを透明な接着剤ではりつけてもよい。保護コート膜厚を20nm以上20μm以下とすれば、スピンコート法で容易に良好な膜厚分布が得られるが、保護コートがこのように薄くてもテープバーニッシュ等により処理すれば、耐食性の低下等の問題は抑制される。
なお、対物レンズを浮上型のスライダーヘッドに乗せ、対物レンズと媒体の間に浮上型の磁気ヘッドを設けたシステムで懸念される、ヘッドと媒体の瞬間的な接触による傷を防止するために、保護層の上にパーフロロエーテルやシリコンオイルなどの潤滑剤を塗ってもよい。
<反射層>
反射層については、Au、Ag、Cu、Alなどの使用レーザー波長で反射率の高い材料が用いられる。反射層は、耐久性確保および薄膜全体の硬度確保のためにこれらの金属と他の金属との合金を用いてもよい。また、記録層の膜厚が十分に厚い場合には、反射層はなくてもよい。また、記録層と反射層の間の中間の誘電体層は、AlN、SiN、GeN、Ta、ZnS−SiO等からなるものでもよい。
<記録膜>
また、各層を構成する記録膜として、再生層はGdFeCoAl、GdFeCoCr、中間層はTbDyFeCo、TbDyFeCr、TbFeCoCr、記録層はTbFeCo、TbFeCoCr、TbGdFeCo膜からなるものについて述べてきた。しかし、TbFe、TbHoFe、TbCo、GdCo、GdTbFe、GdTbFeCo、GdTbHoFeCo、DyFeCo、GdFeCoSi等の希土類−遷移金属系フェリ磁性の非晶質合金、それらの混合材料、あるいは、MnBi、MnBiAlまたはPtMnSn等のMn系磁性膜の多結晶材料を用いた磁気材料、ガーネット、PtCo、PdCoなどの白金族−遷移金属合金、あるいはPt/Co、Pd/Coなどの金、白金族−遷移金属周期構造合金膜などを用いてもよい。また、上記材料を含み、かつ、材料または組成の異なる複数の記録層より構成された記録膜、あるいは、それらを混合した材料であってもよい。また、上記磁性層には、Cr、Al、Ti、Pt、Nbなどの耐食性改善のための元素添加を行った場合、Ms・Hcを所定値より大きくする構成であれば、本実施形態と同等あるいはそれ以上の効果が得られる。記録膜は、材料、あるいは組成比の異なる層ごとに間欠周期的に積層されていればよい。
さらに、積層した記録膜の膜構成として、30nmから40nmの膜厚の再生層、5nmから15nmの膜厚の中間層、60nmから100nmの膜厚の記録層、について述べた。しかし、上記膜厚に限定されるものではなく、本願発明の特性を満たすように、記録層と再生層との間で、十分な磁気的結合力が得られるのであれば、膜厚は5nmから200nmの範囲であれば良い。より好ましくは、例えば、再生層を10nmから100nm、中間層を5nmから50nm、および記録層を30nmから250nmとすることにより、同等の効果が得られる。さらに、5nmから50nmの制御層を付加した構成であってもよい。
また、記録再生特性を改善させるために、記録補助層、転写制御層、あるいはその他の磁性膜を備える構成であってもよい。さらに、中間層としては、膜厚方向での組成あるいは磁壁エネルギー密度を変化させた多層構成の磁性膜を設けてもよい。
また、本実施形態の記録層は、TbとFeCoが1.5nmに周期的に積層する構成であったが、この構成に限定されるものではない。積層周期が0.4nm以上、2nm以下であって、記録層の膜厚を50nm以上、より好ましくは、60nmから200nmであれば、同等の効果が得られる。さらに、記録層の耐食性を高めるためにCr、Ti、Zr、Nb、Taなどの耐食性元素を添加、あるいは、短波長でのカー回転角を高めるために数原子%のNdなどを添加したものであってもよい。
また、相変化記録材料も用いた場合、記録層はGeSbTe、AgInSbTeなど結晶とアモルファスの間で光学定数が変化する材料で構成される。記録層の膜厚は10nm以上40nm以下が好ましい。
また、両面に外周端まで薄膜を形成すると、外周端で両面の導通がとれ、どちらかの面で媒体を接地すれば静電対策が可能となる。さらには、両面の薄膜の応力バランスがとれる構成が好ましい。この時、チルト量を十分小さくすることが可能であるため、エラーレートが低減される。
また、本実施形態の記録層では、Ms・Hcが4.2×10^6erg/cmの値の記録層について述べてきたが、この値に限定されるものではない。より大きなMs・Hcが得られる記録膜であれば、100nm以下の微小磁区を記録した場合にも、安定した記録磁区を形成でき、繰り返し記録再生した場合にも、信号特性に優れた記録再生が可能となる。
記録膜の熱伝導率は、3×10^6erg/(s・K・cm)から7×10^6erg/(s・K・cm)程度であり、放熱層のAl、Al合金、Ag、Ag合金、Au等の材料は1×10^7erg/(s・K・cm)から4×10^7erg/(s・K・cm)であるため、少なくとも熱伝導率が1×10^6erg/(s・K・cm)以下である保護層を用いた構成であればよい。ここで、熱伝導率が1×10^6erg/(s・K・cm)以下である保護層であれば、熱伝導率が0.13×10^6erg/(s・K・cm)から1×10^6erg/(s・K・cm)であるSiO、TiO、MgO、SiN、TiN等の材料、あるいは、2.5×10^5erg/(s・K・cm)であるZnS等を用いた構成であっても、記録層と潤滑層との断熱性に優れた、摺動特性の耐熱性に優れた磁気記録媒体を実現できるものである。
<記録再生方法>
以下、本実施形態の磁気ディスクの記録再生方法の一例を示す。
本磁気ディスクは、矩形のランドとグルーブを有している。記録トラック間のアニール処理、あるいは、グルーブが深い構成のランドを形成することにより、情報の記録されるトラック間が磁性的遮断され、再生層に転写された記録磁区が容易に磁壁移動する構成であれば、前述したDWDD方式による記録再生が可能である。
また、本磁気ディスクは、再生層を含むグルーブ間あるいはランド間が分離された構成、あるいは、平板のディスク基板を有する構成となっているが、ランド/グルーブの両方に記録する構成、あるいは、微小パターンにより記録磁区間を分離する構成であっても同等の特性が得られる。
さらに、本実施形態では、トラックピッチが0.7μmであったが、情報の記録されるグルーブ幅が0.6μm以下であって、記録情報の最短のマーク長が0.3μm以下の記録ドメインを記録する構成であれば、より効果が大きい。
以上のように、本実施形態の構成により、DWDD方式により、高密度に記録再生した場合にも、安定した再生信号特性が得られる。
さらに、高温でMsが増大する記録膜、あるいは、DWDD方式を用いた磁気記録媒体とその記録再生方式について述べた。しかし、それ以外の磁壁移動タイプの磁区拡大再生方式、シュリンク動作による再生磁区の拡大再生方式、あるいは再生磁界交番型の再生方式等であってもよい。つまり、信号品質を高め、記録密度の高密度化を得るための記録再生方式を用い、ディスク基板を介さずに、記録膜から情報を記録再生する構成であれば、微小磁区の記録安定性に優れ、信号の再生も容易にできる高感度で高密度記録再生が可能という優れた効果が得られる。
以上のように、本発明においては、記録情報の書き換え可能な記録膜を用い、0.3μm以下の微小磁区を安定して形成することにより磁壁の移動度を確保でき、DWDD方式等による転写磁区の移動による再生信号の拡大を可能にすることができる。さらに、情報トラックでの記録磁区を安定した形状に形成させるために、記録再生時に隣接トラックからのクロスライトおよびクロストークも低減できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0007】
本発明にかかる磁気記録媒体とその製造方法は、ディスク基板上に形成された記録膜の上に、記録膜よりも熱伝導率の小さい保護層を介して、潤滑層を形成することによって、書き換えが可能な磁気記録媒体、また特に、記録媒体に光を入射して温度上昇させながら信号を記録再生する磁気記録媒体等において有用である。また、本構成によって、磁気記録媒体の記録再生方法等としても適用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク基板上に、少なくとも磁気異方性を有する記録膜を備える磁気記録媒体であって、
少なくとも前記記録膜の上に、前記記録膜よりも熱伝導率の小さい保護層を介して、潤滑層を有することを特徴とする、磁気記録媒体。
【請求項2】
前記保護層は、熱伝導率が1×10^6erg/(s・K・cm)以下であることを特徴とする、請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記保護層が、複数の薄膜により構成されることを特徴とする、請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記複数の薄膜は、熱伝導率がそれぞれ異なることを特徴とする、請求項3記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記複数の薄膜からなる保護層において、前記記録膜側の薄膜の熱伝導率が前記潤滑層側の薄膜の熱伝導率よりも大きくなるように構成することを特徴とする、請求項4記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記複数の薄膜からなる保護層は、熱伝導率が1×10^6erg/(s・K・cm)以下である薄膜を少なくとも有することを特徴とする、請求項4または5記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
前記保護層が、炭素を主成分とすることを特徴とする、請求項1から6記載の磁気記録媒体。
【請求項8】
前記保護層が、ダイヤモンドライクカーボンを含有することを特徴とする、請求項7記載の磁気記録媒体。
【請求項9】
前記保護層が、窒素、酸素あるいは水素を含有することを特徴とする、請求項8記載の磁気記録媒体。
【請求項10】
前記保護層の複数の薄膜において、窒素、酸素あるいは水素の含有量を変化させることを特徴とする、請求項9記載の磁気記録媒体。
【請求項11】
前記保護層が、250℃以上の温度での耐熱性を有する材料を含有することを特徴とする、請求項1から6記載の磁気記録媒体。
【請求項12】
前記耐熱性の材料が、フッ素系樹脂、あるいは、セラミック材料からなることを特徴とする、請求項11記載の磁気記録媒体。
【請求項13】
前記耐熱性の材料が、テフロン(登録商標)からなることを特徴とする、請求項11記載の磁気記録媒体。
【請求項14】
前記保護層が、金属材料を含有することを特徴とする、請求項1から6記載の磁気記録媒体。
【請求項15】
前記金属材料が、Ti、Ta、Crからなることを特徴とする、請求項14記載の磁気記録媒体。
【請求項16】
前記金属材料が、窒素化合物あるいは酸化物からなることを特徴とする、請求項14記載の磁気記録媒体。
【請求項17】
前記保護層が、少なくともカルコゲン系化合物を含有することを特徴とする、請求項1から6記載の磁気記録媒体。
【請求項18】
前記潤滑層が、複数の薄膜により構成されることを特徴とする、請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項19】
前記複数の薄膜は、熱伝導率がそれぞれ異なることを特徴とする、請求項18記載の磁気記録媒体。
【請求項20】
前記潤滑層が、PFPEを含有することを特徴とする、請求項18または19記載の磁気記録媒体。
【請求項21】
前記潤滑層が、耐熱性材料を含有することを特徴とする、請求項18または19記載の磁気記録媒体。
【請求項22】
前記潤滑層が、酸化物、あるいは窒化物を含有することを特徴とする、請求項18または19記載の磁気記録媒体。
【請求項23】
前記潤滑層と前記保護層の膜厚の合計が、1nm以上100nm以下であることを特徴とする、請求項1から22記載の磁気記録媒体。
【請求項24】
前記潤滑層の膜厚が、0.5nm以上20nm以下であることを特徴とする、請求項23記載の磁気記録媒体。
【請求項25】
前記保護層の膜厚が、0.5nm以上99.5nm以下であることを特徴とする、請求項23または24記載の磁気記録媒体。
【請求項26】
前記記録膜は、膜面垂直方向に磁気異方性を有する磁性層を含むことを特徴とする、請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項27】
前記記録膜は、複数の磁性層からなることを特徴とする、請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項28】
前記記録膜が少なくとも記録層、中間層、再生層を積層した構成からなることを特徴とする、請求項27記載の磁気記録媒体。
【請求項29】
前記記録膜中の前記記録層に形成される記録磁区が前記再生層に転写され、前記再生層での磁壁移動によって、記録情報が再生されることを特徴とする、請求項28記載の磁気記録媒体。
【請求項30】
前記記録層は、少なくとも、Tb、Fe、Coを含有することを特徴とする、請求項28または29記載の磁気記録媒体。
【請求項31】
前記記録層は、材料、あるいは、組成比の異なる層ごとに間欠周期的に積層されることを特徴とする、請求項28または29記載の磁気記録媒体。
【請求項32】
前記ディスク基板上に、前記記録層に形成される記録磁区のパターンに応じて、ピット形状のパターンが形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項33】
前記ディスク基板上に、前記記録層に形成される記録磁区の最小パターンよりも小さい、ピット形状の凹凸のパターンが形成されていることを特徴とする、請求項32に記載の磁気記録媒体。
【請求項34】
前記ディスク基板と前記記録膜との間に、少なくとも熱伝導率の大きい金属層を備えることを特徴とする、請求項32または33記載の磁気記録媒体。
【請求項35】
前記記録膜と前記金属層との間に、誘電体層を備えることを特徴とする、請求項34記載の磁気記録媒体。
【請求項36】
前記ディスク基板と前記金属層との間に、誘電体層を備えることを特徴とする、請求項34記載の磁気記録媒体。
【請求項37】
少なくとも前記金属層、あるいは前記誘電体層が、表面をエッチングした構成を有することを特徴とする、請求項34から36記載の磁気記録媒体。
【請求項38】
少なくとも前記金属層、あるいは前記誘電体層の表面粗さが、Rag0.5以上であることを特徴とする、請求項37記載の磁気記録媒体。
【請求項39】
前記誘電体層が、少なくともカルコゲン系化合物を含有することを特徴とする、請求項35から38記載の磁気記録媒体。
【請求項40】
ディスク基板上に、少なくとも磁気異方性を有する記録膜を備える磁気記録媒体の製造方法であって、
ディスク基板上に、少なくとも磁気異方性を有する記録膜を形成し、
前記記録膜の上に、前記記録膜よりも熱伝導率の小さい保護層を形成し、
前記保護層を介して、潤滑層を形成することを特徴とする、磁気記録媒体の製造方法。
【請求項41】
前記潤滑層を真空中で形成することを特徴とする、請求項40記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項42】
前記保護層を形成した後、前記潤滑層を塗布形成することを特徴とする、請求項41記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項43】
ディスク基板上に、少なくとも磁気異方性を有する記録膜を備える磁気記録媒体の製造装置であって、
ディスク基板上に、少なくとも磁気異方性を有する記録膜を形成する記録膜形成部と、
前記記録膜の上に、前記記録膜よりも熱伝導率の小さい保護層を形成する保護層形成部と、
前記保護層を介して、潤滑層を形成する潤滑層形成部とを備えることを特徴とする、磁気記録媒体の製造装置。
【請求項44】
ディスク基板上に、少なくとも磁気異方性を有する記録膜を備える磁気記録媒体の記録再生方法であって、
請求項1〜39に記載の情報記録媒体にレーザー光を入射させることにより、前記記録媒体の記録膜の温度を上昇させ、前記磁気記録媒体に情報を記録あるいは再生することを特徴とする、磁気記録媒体の記録再生方法。
【請求項45】
ディスク基板上に、少なくとも磁気異方性を有する記録膜を備える磁気記録媒体の記録再生装置であって、
請求項1〜39に記載の磁気記録媒体を昇温させる加熱部と、
前記加熱部が前記磁気記録媒体を昇温させているときに、前記磁気記録媒体に磁気的に信号を記録再生する記録再生部とを備え、
前記磁気記録媒体の信号記録時と再生時では、前記磁気記録媒体の信号領域での温度分布がそれぞれ異なることを特徴とする、磁気記録媒体の記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【国際公開番号】WO2005/083696
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510490(P2006−510490)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003208
【国際出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】