説明

磁気近接センサ

【課題】小型化に適した磁気センサ素子とバイアス磁石の配置を提供する。
【解決手段】磁気センサ素子5と、第1の極の面および第2の極の面を有する磁石アセンブリ6、7とを含む、磁気近接センサであって、磁石アセンブリ6、7の第1の極の面は、当該磁気近接センサのセンサターゲット面に近接して位置決めされ、センサ素子5は、センサターゲット面から離れて磁石アセンブリ6、7の第2の極の面から第1の距離tで位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、センサ付近の強磁性物の有無を検知するために使用可能な磁気近接センサに関する。さらに詳細には、本発明は、磁気センサ素子と、第1の極の面および第2の極の面を有する磁石アッセンブリとを含む、磁気近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ギアの歯(スチール)のような、センサに近接する強磁性物体を感知するように適合された、ホール効果強磁性物近接センサを開示する。当該センサは、ホールセンサ素子のような磁場センサのアッセンブリと、磁石構造とを含む。磁石構造は、センサのターゲット面から見て、平面のホールセンサ素子の後ろに位置決めされる。強磁性物体がセンサ面の付近(すなわち、ホールセンサ素子の付近)を通過するとき、変化する磁界が感知される。磁界の方向と位置決めするホールセンサ素子と組み合わされる磁石構造の配置により、効率的な信号処理を実行することができる。磁石構造は、少なくとも、N極とS極の両方がセンサ素子の真後ろの平面上にあるように選択され、特定の磁界方向および分布となる。
【0003】
このセンサは、周知のバックバイアスされたホールセンサの特定の実施例であり、磁界は、磁場センサを介してセンサの感知面へ向かうことが可能にされる。センサの感知面側のターゲットは、磁場センサを通過する磁力線に影響を与える。こうした変動が感知され、関連する信号が処理されることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,781,005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、改善された能力および効率性を有する磁気近接センサを提供することを目的とする。
【0006】
本発明によれば、上記に定義された磁気近接センサが提供され、磁石アセンブリの第1の極の面は、当該磁気近接センサのセンサターゲット面に近接して位置決めされ、センサ素子は、磁石アセンブリの第2の極の面から第1の距離で位置決めされ、センサターゲット面から離される。この構成により、非常に効率的な方法で、高い感度および信頼性をもって、近接センサの構築および組み立てが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明は、いくつかの例示的な実施例を使用して、添付の図面を参照して、以下により詳細に説明される。
【図1a】図1aは、従来のホールチップを有する磁気近接センサを表す概略図である。
【図1b】図1bは、図1aの磁気近接センサの特性グラフである。
【図2a】図2aは、本発明の磁気近接センサの実施例の概略図である。
【図2b】図2bは、図2aの磁気近接センサの特性グラフである。
【図3】図3は、本発明の磁気近接センサの他の実施例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
従来のセンサ設計は、センサの磁石とシステムのターゲットとの間に配置されたセンサホールチップを有する。理論上、この設計は、強磁性物体(鉄もしくは鉄合金から構成される物体のような磁気透過性の物体)についてのセンサとして機能することが可能であるが、すべてのアプリケーションにおいてうまく動作するものではない。この欠陥のひとつの理由は、ベースラインが非常に高いか、つまり物体が磁束または磁性信号を提示していないためである。多くのアプリケーションの状況において物体が提示する信号は、ベースライン信号よりもそれ程大きくはなく、電子ノイズの存在は、従来技術の設計に信頼されない結果をもたらす。
【0009】
特許文献1で開示された従来技術は、こうした高いバイアスの問題を克服するための解決策を提供する(図1aに示される従来例を参照)。図1aは、回転するディスク2の延在する歯3を検出するために実装された磁気近接センサの簡略図である(例えば、rpm測定)。
【0010】
ここで、極片7は、(永久)磁石6の穴もしくはボア内に配され、チップ側に位置された磁気面において対向する極が形成される。磁石6は、高さpおよび外径dを有するシリンダ形状の磁石であり、また、中央のボア径dを有する。T字状の極片7は、厚さqおよび径dのステムを有し、こうして、外径dおよび高さpを有するシリンダ形状の磁石アセンブリを提供する。磁石アセンブリ6、7の第1の極は、ターゲット(歯3)と向かい合い、かつ距離sで位置決めされる。ホールセンサ5は、ターゲットと磁石アセンブリ6、7の第1の面との間で、ターゲット(歯3)から距離tで位置決めされる。この方法では、スロットが存在するときにゼロの磁束が発生し得る。バイアスに対する感度は、次のように定義される。
【0011】
Sens=(B_tooth−B_slot)/(max(|B_tooth|,|B_slot|))*100%
ここで、B_toothは、歯3がセンサ面(第1の極)の近傍にあるときの磁束密度であり、B_slotは、スロット(二つの隣り合う歯3の間のディスク2の空間)がセンサ面の近傍にあるときの磁束密度である。
【0012】
図1bのグラフは、従来技術のセットアップにおいて、ホールセンサ5がt=2.4から2.6mmの間に配置されたとき、感度は、バイアスの100%よりも高くなり得る(>100%)ことを示している。これは、感度が20%未満である従来のセンサ(他のバックバイアスされた磁気センサ素子の例)に対して劇的な改善である。しかしながら、この原理の欠点は、ホールセンサ素子が、磁石6と、ターゲット(金属の歯3)が存在する(もしくは存在しない)センサの前面との間に位置決めされる必要があるので、ホールセンサ5のチップリードが磁石6の周囲に折り曲げられる必要があることである。このことは、磁石エリアを減少させ、それ故に強度も減少させ、同時に、リードの折り曲げのための余地があるように全体の寸法を大きくさせる。さらに、ホールセンサ5には空間を残す必要があるので、磁石6は、ターゲット3に近接することを制限され、このことは、より低い信号となり、あるいは、より強力なおよび/または大きな磁石6が必要となる。特に、小型センサが必要とされる場合、これが問題となり得る。また、ホールセンサ5がターゲット3の近傍に配置されるので、ターゲット3の残留磁化は、センサ信号に大きな影響を与えかねない。
【0013】
測定のめに、次の設計パラメータが用いられた。
=8mm;d=2mm;p=6mm;q=2mm;s=4.775mm
【0014】
本発明の実施例は、改良された機能を有する。図2aは、本発明による磁気近接センサの実施例の簡略図を表す。再び、延在する歯3を有するディスク2を備えたターゲットが例示される。この場合、磁石6には、円筒状のタイプが提供され、中心のボア(外径d、ボア径d、高さ(または長さ)p)を有し、また、外径d、長さpの軸方向の極片7を有する。磁石アセンブリはそれゆえ、軸方向の極片7とこれと同軸上に位置決めされた磁石本体もしくは磁石6を有する。磁界センサ5(例えば、ホールセンサ)は、ターゲット3から離れた磁石アッセンブリの面に、磁石アセンブリ6、7の第2の極の面から距離tで位置決めされる。磁石アセンブリ6、7の第1の極の面は、ターゲット(ディスク2および歯3)に直面し、歯3から距離sで位置決めされる。磁気近接センサ素子5、6、7は、例えば、プラスチック成型技術を使用して、センサハウジング8内に提供されることができる。センサハウジング8はまた、図示するように、磁石アセンブリ6、7の第1の極のセンサ面を覆うようにしてもよいし、センサハウジング8がセンサ面を覆わないようにしてもよい。
【0015】
上述の従来例のバックバイアスの構成は変更されるが、効果的な磁界の分配(できる限りターゲット3に近接されるので)は維持され、磁石アセンブリ6、7の背面において磁界センサ5を用いた測定が使用される。
【0016】
本発明は、ホールセンサ5が、磁石6の他方の側に配置される設計を示し、ここで磁石6は、ホールセンサ5とターゲット3の間にあり、その一方で、感度>100%がなお保証される(図2aおよび図3の実施例を参照)。歯3、またはスロット(ふたつの隣り合う歯3の間のディスク2の空間)の存在は、極片(磁石アセンブリ6、7)を介して運ばれる磁束の変化することに留意すべきである。磁石6の左側の位置tにおける変更は、ホールセンサ5により感知される。図2bのグラフは、ホールセンサ5がt=2.15から2.4mmの間に配されたとき、感度は、バイアスの100%よりも大きくなり得ることを表す。この原理による利点は、ホールセンサ5のリードが磁石6の周囲に折り曲げられる必要がないことである。さらに、ホールセンサ5は、ターゲット2、3から離れて移動されるので、ターゲット2、3の残留磁化がセンサ信号に与える影響はほとんどない。
【0017】
図2aの実施例では、次のことが適用される:
−磁石アセンブリ6、7は、適切な材料を選択することによって、保磁力(Hc)がおよそ900kA/mであり、かつ磁界強度(Br)がおよそ1.14Tである特性を有して使用される。極片7は、相対透透率(relative permeability)(Ur)が1000である軟磁性の素材である。
−tは、磁石アセンブリ6、7の(第2の極)の後方のホールセンサ5の位置である。
−他の実施例において、センサ前面(第1の極)との隙間は、磁石アセンブリ6、7の第1の極をカバーしかつ保護するプラスティックハウジング8の厚さ0.5mmを含めて、1mmにされる:従って、距離s=1.5mmである(磁石アセンブリの前面からターゲット3までの距離)。
−バイアスのパーセンテージとしての感度は、次のように定義される。
Sens=(B_tooth-B_slot)/(max(|B_tooth|,|B_slot|))*100%
−ホールセンサ5の後方の2.2ないし2.7mmの範囲で、バイアスのパーセンテージとしての感度が成される。磁石6の後方にt=2.15から2.4mmの間でホールセンサ5を配置したとき、バイアスのパーセンテージとしての感度は、100%よりも大きくなり得る。
−これらの結果(図2bを参照)は、図1bで示された結果と互換性がある。すなわち、磁石の後方の距離の範囲は、感度が非常に高いところに規定される。
【0018】
測定には、次の設計パラメータが使用された。
=8mm;d=3mm;p=6mm;s=1.5mm
【0019】
別の実施例では、次のパラメータが選択され得る。
=6mm...12mm
=3mm...5mm
s=0.7mm...2.5mm
p=4mm...12mm
【0020】
パラメータの選択された値によって、磁気近接センサの感度が最も高くなる地点tを計算することができ、同様に、高い感度が実現されることのできる地点周辺の範囲を計算することができる。
【0021】
より一般的な表現では、本発明は、磁気近接センサに関し、磁気近接センサは、磁気センサ素子5(例えば、ホールセンサ素子)と、第1の極の面と第2の極の面とを有する磁石アセンブリ6、7とを含み、磁石アセンブリの第1の極の面は、磁気近接センサのセンサターゲット面に近接して位置決めされ、センサ素子5は、センサターゲット面から離れて、磁石アセンブリ6、7の第2の極の面から第1の距離tで位置決めされる。
【0022】
磁石アセンブリは、同軸上に位置決めされた磁石本体6を有する軸方向の極片7(磁束を集中させるもの、例えば、円筒状の軟磁性の材料)を含む。従来技術におけるようなT字型の極片は必要とされない。
【0023】
ある実施例では、磁気近接センサはさらに、センサターゲット面を規定するセンサハウジング8(図2aおよび図3を参照)を含み、センサ素子5および磁石アセンブリ6、7はセンサハウジング8の中に埋め込まれる。また、例えば、センサ自身の測定信号を処理するためのセンサ素子回路は、センサハウジング8内に、例えば、センサ基板またはプリント配線基板上に提供されることができる。
【0024】
センサハウジング8は、少なくとも0.1mmの厚さで、他の実施例では少なくとも0.5mmの厚さで、磁石アセンブリ6、7の第1の極の面を覆う(図2a参照)。これにより、しっかりと規定されたセンサターゲット面を持つことが可能となり、また、磁石アセンブリ6、7により発生された磁界に対し、感知されるべきターゲット2、3を近接させることができる。他の実施例では、ハウジング8は、図3の実施例で表されるように、磁石アセンブリ6、7の第1の極の面と同一面である。
【0025】
ある実施例では、第1の距離tは、2.2から2.7mmの間である。これは、図2aの実施例で表されたように、3mmの極片の直径d、8mmの磁石本体の直径d、6mmの長さp、および1mm(1.5mm)のターゲット距離と組み合わされ、これは、t=2.34mmで最大の感度となる。
【0026】
図3は、第2の極の面が異なる形状を有する他の実施例を示し、軸方向の極片7は、同軸上に位置決めされた磁石本体6を超えて延在する。磁石6の長さはpで表され、軸方向の極片は、磁石6の長さを距離aだけ越えて延在する。磁石アセンブリ6、7の第1の極は、図2aの実施例と類似しており、第1の極を形成する平坦な磁石アッセンブリ面を提供する。
【0027】
本実施例は、より高い感度とともに、磁束密度のより小さな傾斜の絶対レベルを得ることができるという効果を有する。比較テストが行われ、そこでは、d=5.5mm、d=2mm、p=4.4mm、s=1.8mmであり、パラメータは変化された(‐0.5,−0.1,0.1,0.5,1mm)。より長い極片7(正の値1)は、急でない傾斜を与え、これによりホール素子5(値t)の位置公差が重要でなくなるということが判った。a=0.5mmに対しては、t=0.6mmが推奨される:もしくは、aが大きくなれば、tは小さくなり得る。より長い極片は、同じ値tに対する感度をわずかに落とすが、より高い値1に対してtを減少させることは、結果的にはより感度が高くなる。
【0028】
本発明の実施例は、図に表されたいくつかの例示的な実施例を参照して説明された。いつくかの部分や要素の修正や代替の実施は可能であり、それらは、添付の請求項で定義されたものとして保護される範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサ素子(5)と、第1の極の面および第2の極の面を有する磁石アセンブリ(6、7)とを含む磁気近接センサであって、
磁石アセンブリ(6、7)の第1の極面(5)は、当該磁気近接センサのセンサターゲット面と隣接して位置決めされ、
センサ素子(5)は、センサターゲット面から離れた磁石アセンブリ(6、7)の第2の極面から第1位の距離(t)で位置決めされる、磁気近接センサ。
【請求項2】
磁石アセンブリ(6、7)は、同軸で位置決めされた磁石本体(6)を有する軸方向の極片(7)を含む、請求項1に記載の磁気近接センサ。
【請求項3】
軸方向の極片(7)は、同軸上に位置決めされた磁石本体(6)を越えて延在する、請求項2に記載の磁気近接センサ。
【請求項4】
磁気近接センサはさらに、センサターゲット面を規定するセンサハウジング(8)を含み、センサ素子(5)および磁石アセンブリ(6、7)は当該センサハウジング(8)内に組み込まれる、請求項1ないし3いずれか1つに記載の磁気近接センサ。
【請求項5】
センサハウジング(8)は、少なくとも0.1mmの厚さで磁石アセンブリ(6、7)の第1の極の面を覆う、請求項4に記載の磁気近接センサ。
【請求項6】
第1の距離(t)は、2.2から2.7mmの間である、請求項1ないし5いずれか1つに記載の磁気近接センサ。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−242390(P2012−242390A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−111165(P2012−111165)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(506154029)センサータ テクノロジーズ インコーポレーテッド (28)
【Fターム(参考)】