説明

示温表示装置

本発明は、簡単な構造で、所定温度以上の熱履歴に対して確実に、且つ不可逆的に熱履歴を表示できる表示体を提供することを目的としている。また、本発明は検温剤層及び情報記録膜層を有する積層体を提供するものである。本発明は、所定の温度さらされた場合に不可逆的な変化が生じて、温度履歴を表示することができる示温表示装置に関する。また、本発明は、情報が記録された情報記録膜層、それを保持する情報記録保持層、及び温度に依存して状態が変化する物質をからなる検温剤層を有し、所定温度を履歴した場合に当該検温剤層の物質の状態が変化して前記情報記録膜層に記録されていた情報の表示状態を変化させることを特徴する示温表示装置、その積層体、それを設置してなる容器、及びラベルかされた示温表示可能なラベルに関する。さらに、本発明は従来の情報表示部材をそのまま使用することができるサイドタイプの示温装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、所定の温度にさらされた場合に不可逆的な変化が生じて、温度履歴を表示することができる示温表示装置に関する。より詳細には、本発明は、情報が記録された情報記録膜層、それを保持する情報記録保持層、及び温度に依存して状態が変化する物質をからなる検温剤層を有し、所定温度を履歴した場合に当該検温剤層の物質の状態が変化して前記情報記録膜層に記録されていた情報の表示状態を変化させることを特徴する示温表示装置、その積層体、それを設置してなる容器、及びラベル化された示温表示可能なラベルに関する。
【背景技術】
冷凍技術や冷蔵技術の発展にともなって多くの食品類が長期間に亘って、その安全性を保つことができるようになってきた。また、コールドチェーンなどの低温輸送技術の発達により、多数の低温保存食品が製品化されてきている。
一方、近年食品の安全性が一段と大きな問題となってきている。食品類の保存技術が改善されてきているにも拘わらず、毎年1万人以上の人が食中毒にかかっているともいわれてきており、年々その数は増加する傾向にある。
この原因として、細菌に対する抵抗力が弱い人が増加していることなどが挙げられているが、食品類の取扱いにも原因があるとされてきている。
一般的には食品1g当たり細菌の数が10以下であれば、健康な人には発症しないとされており、食品中の細菌類の増殖を防止する方法として各種の方法が行われている。例えば、食品保存中の細菌類の増加を抑制するために、防腐剤などの薬品を添加したり、塩分を増加させるなどの手段もあるが、これらの方法は食品の味や質に影響を与えることから低温による食品類の保管が優れていることは明らかである。また、近年の健康志向の傾向もあり、添加物の使用は極力避ける傾向にあることから、低温保存はますます注目を集めてきている。
しかし、低温による食品類の保管は、食品の製造・運送及び販売中における温度管理が充分にされていないと、細菌の数は指数関数的に増加し、安全基準を満たさなくことも往々にして起こり得ることである。例えば、3℃に保つべき場合に、保存温度が10℃に上昇すると、大腸菌では2時間で2倍づつ増加するといわれている。また、温度の上昇により食品中の水分が膨張し、食品の間に隙間を作りそこから毛管現象により水分と共に食品の養分が食品表面に押し出され、細菌の増殖のための養分を供給することになる。さらに、これを再び冷却すると、表面に押し出された水分が再び食品の内部に引き戻され、この時に食品表面に存在していた細菌類が水分と共に食品内部に侵入し、細菌汚染を食品内部にまで拡大することになる。再度の冷却により細菌類の分裂速度は抑制されるが、再び温度が上昇すると、反作用により細菌類の分裂速度は通常の場合よりも急速に早くなることもある。
このように、低温に保存されている食品にとって、温度の上げ下げは食品の衛生管理の点から非常に大きな問題となってきている。
食品類の製造過程における食品工場内において3℃以下に保つことはそう困難なことではないが、工場から出荷されて輸送される段階や、スーパーやコンビニなどの小売店で販売される状態において、常に3℃以下を保つことはそう簡単なことではない。
消費者が食品を消費するまでに、当該食品がどのような温度履歴を経てきたかということは、消費者は知ることが出来ないのが現状である。消費者が食品が経てきた温度履歴を知るためにさまざまな工夫がなされてきており、そのひとつとして温度履歴表示体というものが開発されてきている。例えば、特開平10−287863号には、所定温度での複数の物質の反応により不可逆的に発色する温度履歴表示体において、発色剤層、検温剤層および顕色剤層とを備えた温度履歴表示体についての発明が開示されている。この発明は、発色剤層と顕色剤層を検温剤層で区切っておき、所定温度以上になると検温剤層が溶解して発色剤層と顕色剤層が接触して発色し、この発色反応が不可逆的に起こることから、所定温度以上になったか否かを温度履歴表示体の発色により知ることができるというものである。
この方法は不可逆的であり有効な方法ではあるが、発色剤および顕色剤を使用することを必須としており、温度履歴表示体の構造が複雑になっているばがりでなく、コスト的にも高価になり実用的な方法ということはできない。
また、その他の温度履歴表示体においても、いずれも感温色材や発色剤が使用されており、現実的な普及に至っていないのが現状である。
従って、本発明は、簡単な構造で、所定温度以上の熱履歴に対して確実に、且つ不可逆的に熱履歴を表示できる表示体を提供することを目的としている。また、本発明は検温剤層及び情報記録膜層を有する積層体を提供するものである。
【発明の開示】
本発明者は、上記の様な従来技術の問題点に鑑みて研究を重ねた結果、所定温度で検温剤層の物質の物理状態を変化させるように設定することにより、情報記録膜層に記録されている文字やバーコードなどが印刷された情報を不可逆的に破壊若しくは読み取り不能、又は表示可能な状態にできることを見出し、簡単な装置により不可逆的に温度履歴を不可逆的に表示することができる装置を完成し、本発明に至った。
例えば、情報記録膜層に隣接する位置に、所定温度で物理状態の変化を生ずる物質を含有してなる検温剤層を配置することにより、検温剤層の物質の物理状態の変化に伴って、情報記録膜層を形成する物質を溶解又は拡散することができ、これにより情報記録膜層の情報を不可逆的に破壊したり、また検温剤層の物質の物理状態の変化により情報記録膜層を不可逆的に不透明又は透明にすることができることを見出した。
即ち、本発明は、情報が記録された情報記録膜層、及び温度に依存して状態が変化する物質をからなる検温剤層を有し、所定温度を履歴した場合に当該検温剤層の物質の状態が変化して前記情報記録膜層に記録されていた情報の表示状態を変化させることを特徴する示温表示装置、及びそれを設置してなる容器に関する。
また、本発明は、検温剤層、情報記録膜層、及び情報記録保持層、又は検温剤層、拡散層、情報記録膜層、及び情報記録保持層からなる示温表示用の積層体に関する。
さらに、本発明は、基材、温度に依存して状態が変化する物質をからなる検温剤層を含有してなるセパレーター、情報記録膜層が記録されている情報記録保持層からなる示温表示が可能なラベルに関する。
より詳細には、本発明は次の各事項に関する。
(A)情報が記録された情報記録膜層、及び温度に依存して状態が変化する物質をからなる検温剤層を有し、所定温度を履歴した場合に当該検温剤層の物質の状態が変化して前記情報記録膜層に記録されていた情報の表示状態を変化させることを特徴する示温表示装置に関する。
(B)検温剤層の温度に依存して状態が変化する物質が、所定温度以上になると融解する物質である前記(A)の示温表示装置に関する。
(C)情報記録膜層の記録膜を形成する物質が、検温剤層の温度に依存して状態が変化する物質の融解状態において、溶解又は分散する物質からなる前記(A)又は(B)に記載の示温表示装置に関する。
(D)検温剤層の温度に依存して状態が変化する物質が、パラフィン、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステルおよび高級アルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種の熱融解剤を含有してなるものである前記(A)〜(C)のいずれかに記載の示温表示装置に関する。
(E)検温剤層の温度に依存して状態が変化する物質が、不均一相を形成している2以上の物質からなり、所定温度以上になると均一相となり光の透過度を変化させるものである前記(A)に記載の示温表示装置に関する。
(F)検温剤層が、情報記録膜層に隣接している前記(A)〜(E)のいずれかに記載の示温表示装置に関する。
(G)示温表示装置が、更に拡散層を有する前記(A)〜(D)のいずれかに記載の示温表示装置に関し、好ましくは拡散層が、情報記録膜層と検温剤層の間にあり、また、好ましくは拡散層が紙、多孔性樹脂などの多孔質物質からなる前記(A)〜(D)のいずれかに記載の示温表示装置に関する。
(H)検温剤層の温度に依存して状態が変化する物質が、中央部が凹型になっているセパレーターに収納されている前記(A)〜(G)のいずれかに記載の示温表示装置に関する。
(I)示温表示装置が、シール状である前記(A)〜(H)のいずれかに記載の示温表示装置に関する。
(J)示温表示装置が、粘着層を有し接着可能となっていることを特徴とする前記(A)〜(I)のいずれかに記載の示温表示装置に関する。
(K)温度に依存して状態が変化する物質を収納してなる検温剤収納部、当該収納部に接した拡散層を備えてなる示温装置。
(L)検温剤収納部に収納されている温度に依存して状態が変化する物質が、所定温度以上になると融解する物質であり、情報記録膜層の記録膜を形成する物質が、検温剤収納部に収納されている温度に依存して状態が変化する物質の融解状態において、溶解又は分散する物質からなる前記(K)に記載の示温装置。
(M)前記(K)又は(L)に記載の示温装置の拡散層の少なくとも一部が、情報記録膜層を有する情報表示部材の情報記録膜層の一部に接しており、検温剤が融解したときに検温剤が拡散層を通して情報記録膜層に流入又は浸透できる構造からなる示温表示装置。
(N)前記(K)又は(L)に記載の示温装置、及び情報記録膜層を有する情報表示部材の全部が透明な保護シートで覆われている前記(M)に記載の示温表示装置。
(O)温度に依存して状態が変化する物質を含有してなる前記(A)〜(N)のいずれかに記載の示温表示装置の検温剤層を形成し得る検温剤に関する。
(P)前記(A)〜(J)又は前記(M)若しくは(N)のいずれかに記載の示温表示装置を設置してなる容器に関し、好ましくは容器が、食品容器、包装容器、運搬容器などの容器に関する。
(Q)基材、温度に依存して状態が変化する物質をからなる検温剤層を含有してなるセパレーター、及び情報が記録されている情報記録膜層を含有してなる情報記録保持層からなる示温表示が可能なラベルに関し、好ましくは情報記録保持層が、透明な材質からなり、また、セパレーターが透明な材質からなり、セパレーターに含有されている検温剤層と、情報記録保持層に記録されている情報記録膜層が隣接しているラベルに関し、さらに好ましくは、さらに拡散層を形成し得る多孔質板を有するラベルに関する。
(R)温度に依存して状態が変化する物質をからなる検温剤層、情報記録膜層、及び情報記録保持層の各層からなる示温表示用の積層体に関し、好ましくは情報記録膜層と検温剤層の間に拡散層がさらに設けられてなる積層体に関する。
近年、食品などの各種の消費財にバーコードなどの情報を印刷して記録したラベルが貼付され、販売や商品の管理に使用されてきている。本発明者らは、このラベルに着目して温度履歴の表示が可能なラベルの開発を行った。
即ち、本発明は、このような情報が印刷して記録された情報記録膜と、検温剤との組み合わせにより簡便な手段により低コストで実用的な示温表示装置を提供することができることを見出した。本発明の大きな特徴は、この情報記録膜と検温剤との組み合わせに着目した点であり、これにより従来使用されていた発色剤や感温色材などを使用することなく、所定温度に対する示温を確実にかつ不可逆的に表示することができ、しかも低コストの実用的な示温表示装置を提供するものである。
なお、本発明のおける「示温」とは、所定の温度に対する熱履歴の有無をいう。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の「溶解型」の態様を模式的に示すものである。
第2図は、本発明の「染み込み型」の態様を模式的に示すものである。
第3図は、本発明の「固体分散型」の態様を模式的に示すものである。
第4図は、本発明の「ドレッシング型」の態様を模式的に示すものである。
第5図は、本発明のサイドタイプの示温表示装置の例を示したものである。
第6図は、第5図のA−A’面における断面図を示したものである。
第7図は、本発明の示温装置のバリアー部付きの検温剤収納部の断面図を示したものである。
第8図は、本発明のサイドタイプの示温表示装置の他の例を示したものである。
第9図は、第8図のA−A’面における断面図を示したものである。
第10図は、65%オレイルアルコールの示差型熱量分析法(DSC)による分析を行った結果を示す。第10図の横軸は温度(℃)であり、縦軸は示差熱量(mcal/秒)である。
第11図は、85%オレイルアルコールの示差型熱量分析法(DSC)による分析を行った結果を示す。第11図の横軸は温度(℃)であり、縦軸は示差熱量(mcal/秒)である。
第12図は、95%オレイルアルコールの示差型熱量分析法(DSC)による分析を行った結果を示す。第12図の横軸は温度(℃)であり、縦軸は示差熱量(mcal/秒)である。
第13図は、65%オレイルアルコール及びエチルセルロース(増粘剤)の示差型熱量分析法(DSC)による分析を行った結果を示す。第13図の横軸は温度(℃)であり、縦軸は示差熱量(mcal/秒)である。
第14図は、97%ペンタデカンの示差型熱量分析法(DSC)による分析を行った結果を示す。第14図の横軸は温度(℃)であり、縦軸は示差熱量(mcal/秒)である。
第15図は、オレイン酸の示差型熱量分析法(DSC)による分析を行った結果を示す。第15図の横軸は温度(℃)であり、縦軸は示差熱量(mcal/秒)である。
第16図は、感温材料として65%オレイルアルコールを用いた場合の10℃、14℃、18℃、及び23℃における温度に対する応答性試験の結果を示す。第16図の横軸は温度(℃)であり、縦軸は平均応答時間(秒)である。
第1図〜第9図における符号は以下の通りである。
1は、「基材」を示す。
2は、「拡散層」を示す。
3は、「検温剤層を包含するセパレーター」を示す。
4は、「情報記録膜層を有する情報記録保持層」を示す。
5は、「ラミネートシール」を示す。
6は、「所定温度以下に保持された情報記録膜の状況」を示す。
7は、「所定温度以上に晒された履歴を有する情報記録膜の状況」を示す。
8は、「所定温度以下に保持された検温剤層の状況」を示す。
9は、「所定温度以上に晒された履歴を有する検温剤層の状況」を示す。
10及び20は、本発明の示温表示装置の例を示す。
11及び21は、検温剤収納部の形成部を示す。
12及び22は、検温剤収納部を示す。
13及び23は、拡散層を示す。
14及び24は、情報記録膜層を有する情報表示部材を示す。
15及び25は、透明な保護シートを示す。
16及び26は、容器を示す。
141及び241は、情報記録膜層を示す。
142及び242は、情報記録保持層を示す。
143及び243は、情報表示部材の基板層を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の大きな特徴は、この情報記録膜と検温剤との組み合わせに着目した点であり、この組み合わせに基づく本発明の具体的な実施の態様の概略をまとめると次の4つがあげられるが、本発明はこれらの態様に限定されるものではなく、情報記録膜と検温剤との組み合わせによるものである限りにおいて本発明に包含されるものである。
1.検温剤の溶解により情報記録膜のインキ等を溶解して、印刷などにより記録された情報を破壊し、読み取りを不可能にする。以下、この態様を「溶解型」という。第1図参照。
2.検温剤の溶解又は軟化により、検温剤が拡散層に染み込み、当該拡散層と密着している情報記録膜のインキ等を溶解又は分散させ、印刷などにより記録された情報を破壊し、読み取りを不可能にする。以下、この態様を「染み込み型」という。第2図参照。
3.透明又は半透明の液体又はゲル状物の中に、均一相を形成したときに不透明となる物質を不均一に分散させた層を検温剤層として、所定温度になると分散された物質の物理状態が変化し均一相を形成して不透明となることにより、その下にある情報記録膜に記録してある情報を読み取り不能にする。以下、この態様を「固体分散型」という。第3図参照。
4.固体又はゲル状物の中に、この物質を溶解しない物質を微小な泡又は粒子として固定した層を検温剤層として、所定温度になると当該固体又はゲル状物が流動性になることにより、両物質が分離され検温剤層が不透明な状態から透明な状態となり、それまで読みとることが出来なかった情報記録膜に記録してある情報を読み取り可能にする。以下、この態様を「ドレッシング型」という。第4図参照。
さらに、本発明の「溶解型」又は「染み込み型」の応用として、サイドタイプ型を例示することができる。第5図及び第8図参照。
本発明の前記した4つの態様をそれぞれ第1図から第4図に示す。第1図は、本発明の「溶解型」の態様を模式的に示すものであり、基材1の上に中央部に検温剤層を有するセパレーター3を置き、その上に下面に情報が記録された情報記録膜層を有する情報記録保持層4を重ね、検温剤層と情報記録膜層とが隣接して密着するように配置する。これらを上からラミネートシール5で覆い保護する。基材1の裏面には粘着層があり、容器等に固着できるように設計されている。
この装置が所定温度以上に晒されると、検温剤層中の検温剤が溶解し、隣接して密着している情報記録膜層の印刷インキなどを溶解して、記録内容を破壊する。一度破壊された記録内容は復元することができないので、この記録内容の破壊が生じたことにより、所定温度以上になったという温度履歴が表示されることになる。
第2図は、本発明の「染み込み型」の態様を模式的に示すものであり、基材1の上に中央部に検温剤層を有するセパレーター3を置き、その上に拡散層2を置き、さらにその上に下面に情報が記録された情報記録膜層を有する情報記録保持層4を重ね、検温剤層と拡散層、並びに拡散層と情報記録膜層とが各々隣接して密着するように配置する。これらを上からラミネートシール5で覆い保護する。基材1の裏面には粘着層があり、容器等に固着できるように設計されている。
この装置が所定温度以上に晒されると、検温剤層中の検温剤が溶解又は軟化して、隣接して密着している拡散層に染みだし、染みだしが充分に行われた状況になると、拡散層を通して情報記録膜層に達した検温剤が情報記録膜層の印刷インキなどを溶解して、記録内容を破壊する。一度破壊された記録内容は復元することができないので、この記録内容の破壊が生じたことにより、所定温度以上になったという温度履歴が表示されることになる。
第3図は、本発明の「固体分散型」の態様を模式的に示すものであり、その上面に情報が記録された情報記録膜層を有する情報記録保持層4の上に、中央部に検温剤層を有するセパレーター3を置き、これらを上からラミネートシール5で覆い保護する。情報記録保持層4の裏面には粘着層があり、容器等に固着できるように設計されている。
この装置が所定温度以上に晒されると、検温剤層中の不均一相であった検温剤層が流動性を増大させて、均一相となる。検温剤層が不均一相であったときは、固体が局在化して存在したために、検温剤層は透明性を保つことができていたが、所定温度以上に晒されたときに固体が溶解又は軟化して均一相となり、検温剤層全体が不透明になる。検温剤層が不透明になることにより、情報記録保持層4の上に印刷などにより記録されていた情報を読みとることができなくなる。そして、一度均一相となった検温剤層は、再度透明な不均一相になることができないので、この記録内容の読み取りが不可能になったことにより、所定温度以上になったという温度履歴が表示されることになる。
第4図は、本発明の「ドレッシング型」の態様を模式的に示すものであり、その上面に情報が記録された情報記録膜層を有する情報記録保持層4の上に、中央部に検温剤層を有するセパレーター3を置き、これらを上からラミネートシール5で覆い保護する。情報記録保持層4の裏面には粘着層があり、容器等に固着できるように設計されている。
この装置が所定温度以上に晒されると、検温剤層中の均一に分散されて固定されていた微小な泡又は粒子が周囲の物質の流動性の増加により凝集して、分離した多相系、好ましくは2相系を形成した状態になる結果、それまで微小な泡又は粒子によって不透明とされていた状態の検温剤層が透明となり、情報記録保持層4の上に印刷などにより記録されていた情報が、ラミネートシール5の上から読みとることができるようになる。そして、一度凝集して分離して相を形成した検温剤層は、再度不透明な状態に戻ることはできないので、情報記録保持層4の上面に記録されている記録内容が読み取り可能になったことにより、所定温度以上になったという温度履歴が表示されることになる。
本発明の「溶解型」や「染み込み型」における応用例としてサイドタイプの示温表示装置の例を第5図及び第8図に示す。
第5図は、情報表示部材の表面におけるバーコードなどの情報を記録している部分が大きく、拡散層を接しさせることができる部分が小さい場合のサイドタイプの例である。第8図は情報を記録している部分の面積が小さくて検温剤収納部の形成部のほぼ全部を情報表示部材の上に設置することが可能な場合の例を示している。
本発明の示温表示装置のサイドタイプの最初の例を第5図に示す。示温表示装置10は、検温剤収納部12、それを形成する形成部11、検温剤と接している拡散層13、拡散層13の他の端が接している情報表示部材14、及びこれらの全体を保護する保護シート15を備えている。情報表示部材14は、従来から使用されているバーコードラベルのようなものでよく、製品や製品の容器、又は製品を運送するための運送用容器に貼付されているものでよい。情報表示部材14の表面のバーコードなどの情報が印刷されていない部分に拡散層13の一端を接しさせ、拡散層13の他端の上部に検温剤収納部12を有する検温剤収納部の形成部11を設置する。そして、これら全体が固定されるように内側に粘着層を有する透明な保護シート15で覆う。第6図の第5図に示した示温表示装置10のA−A’面における断面図を示す。
第5図に示される示温表示装置が、所定温度以上に晒されると、検温剤収納部12中の検温剤が溶解し、隣接して密着している拡散層13に流出又は浸透し、検温剤が充分の流出又は浸透すると、拡散層13を通して情報記録膜層141に達した検温剤が情報記録膜層の印刷インキなどを溶解して、記録内容を破壊する。一度破壊された記録内容は復元することができないので、この記録内容の破壊が生じたことにより、所定温度以上になったという温度履歴が表示されることになる。
第7図は、本発明のサイドタイプの示温表示装置10における検温剤収納部12を形成している形成部11の保存時における断面図を示したものである。これは、例えばブリュスターパックのようなものであり、中央部に検温剤を収納することができる中空部分がある。底部の外周には粘着剤層110があり、バリアー部17により、シールされている。前記中空部に液状又は固体状の検温剤を収納し、バリアー部17によりシールしておくことにより、検温剤を室温で保存しておくことも可能となる。この検温剤を使用する場合には、低温にして充分に冷却して、検温剤を固化させてから、バリアー部17を剥離して拡散層13に密着させる。
本発明のサイドタイプの示温表示装置の他の例として第8図に示す示温表示装置20を例示できる。この装置も原理的には前記した第5図に示される示温表示装置と同じであるが、拡散層23及び検温剤収納部22のほぼ全部が情報表示部材24の上側に設置できている点が異なっている。
本発明のサイドタイプの示温表示装置は、従来から使用されているバーコードラベルなどの情報表示部材をそのまま使用することができる点に特徴を有するものであり、検温剤収納部及び拡散層をそれぞれ独立して製造、流通、保存できることを大きな特徴とするものである。したがって、本発明のサイドタイプの示温表示装置は、検温剤を収納した検温剤収納部、及び拡散層からなる独立した示温装置を形成するものでもある。さらに、検温剤を収納した検温剤収納部や、拡散層を独立して製造、流通、保存することもでき、示温装置の一部としてこれらを製造、流通、保存、又は譲渡することも本発明の範囲である。
本発明の前記した「溶解型」や「染み込み型」の態様やサイドタイプの態様における、検温剤層の検温剤としては、所定温度以上になると融解又は軟化して液体又ゾル状になる物質であって印刷インキなどの情報を記録している物質を溶解または拡散することができる1種又は2種以上からなる物質が好ましい。好ましい検温剤の具体例としては、例えばパラフィン、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステルおよび高級アルコールなどの熱融解剤が挙げられる。これらの検温剤は、その融点が目的の所定温度の近辺にあるものであって、融解又は軟化して印刷インキなどの情報を記録した媒体を溶解又は分散させることができるものであればよい。工業製品のように比較的高温に晒したくない場合には、高い融点の物質を採用すればよいし、医薬品などのように室温以上に晒したくない場合には室温近辺の融点の物質を採用すればよい。また、食品のように比較的低い温度であっても晒したくない場合には比較的融点の低い物質を採用すればよい。これらの物質の融点としては工業製品などに対しては−50℃〜100℃程度の範囲のものから選択すればよく、医薬品や常温保存品などについては10℃〜80℃程度の範囲のものから選択すればよく、食品などの場合には−30℃〜50℃程度の範囲のものから選択すればよい。
これらの検温剤は1種類の物質であってもよいが、2種以上の物質の混合物として使用することもできる。また、必要に応じて潤滑剤、増粘剤、着色剤などの添加剤を添加してもよい。
また、所定温度の近辺に適当な融点の物質が見当たらない場合には、2種以上物質を混合して融点降下作用などを利用して、所定の温度に設定することもできる。
検温剤の具体例としては、例えば、炭素数が10〜30、好ましくは12〜20、さらに好ましくは12〜18程度のパラフィン類;ラウリン酸、ステアリン酸、2−オキシミリスチン酸などの炭素数が10〜30、好ましくは12〜20、さらに好ましくは12〜18程度の置換若しくは非置換の高級脂肪酸;ミリスチン酸エチル、ラウリン酸ステアリル、フタル酸ジオクチルなどの前記した高級脂肪酸のエステル;n−セチルアルコール、オレイルアルコール、n−オクチルアルコール、テトラデカノールなどの炭素数が6〜30、好ましくは6〜20、さらに好ましくは10〜18程度の置換若しくは非置換の高級アルコール;メチルヘキシルケトン、ベンゾフェノンなどのケトン類;ジフェニルエーテル、ジステアリルエーテルなどの高級エーテル類;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ラウリン酸N−オクチルアミド、カプロン酸アニリドなどの高級脂肪酸アミド;イソプロピルベンゼン、ドデシルベンゼン、ビフェニル、トリメチルビフェニル、ジフェニルエタン、ジベンジルトルエン、プロピルナフタレンなどの芳香族炭化水素類、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの各種有機溶媒などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの検温剤成分としては、コスト面を考慮すればパラフィン類、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級アルコールなどがより好ましい。
本発明の「固体分散型」や「ドレッシング型」の態様は、いずれも複数の、好ましくは2種の物質の流動性に基づく物質の存在状態の変化を応用したものであり、「固体分散型」では所定の温度以上になると物質の存在状態の変化により検温剤層が不透明になるものであり、「ドレッシング型」では所定の温度以上になると物質の存在状態の変化により検温剤層が透明になるものである。例えば、サラダのドレッシングのように水性相と油相とが存在し、これをよく混合すると両者が微小な液滴として混ざりあって不透明になるが、これをしばらく放置しておくと、水性相と油相とが各々凝集して相分離して2相に分離する。各相は透明な相であるために、その結果透明となるものである。本発明の「ドレッシング型」の態様は、このような不透明な状態を低温下において固定化しておくことを特徴とするものである。低温下で固定化することにより不透明を保ったままの状態となっているが、これが一度所定温度以上に晒されると両者の流動性が増加して固定化された状態が解除され、例えば水性相は水性相に、油相は油相の相分離してくることにより透明性が出てきて、検温剤層が透明となる結果、その下に記録されている情報が光学手段などにより読み取り可能となるものである。
本発明の「ドレッシング型」の態様における物質としては、少なくとも低温下において相互に溶解しない物質であって、両者を微小な泡又は粒子として混合した状態では不透明であり、所定の温度以上になると相分離又は相互に溶解するなどして透明となる物質の組み合わせであればよい。例えば、水と油のような組み合わせで、超音波撹拌などにより両者を十分に微小な粒子にして混合した状態で低温で固定化したものや、水又はグリセリンなどの液体に空気などの気体の微小な気泡を発生させて、これを固定化したものなどが挙げられる。これが所定温度以上に晒されると両者又は一方の物質の流動性が増加して微小な気泡又は粒子が凝集する結果、透明な相が形成される。このような物質の組み合わせとしては、水と油脂、水とグリコール、例えばグリセリンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの各成分の比率も限定的ではないが、1:1から1:100程度が好ましい。また、必要に応じて潤滑剤、増粘剤、着色剤などの添加剤を添加してもよい。
本発明の「固体分散型」の態様における固体物質としては所定の温度において融解する1種又は2種以上からなる物質が使用される。この物質をその融点以下の温度において微小粉として透明な担体としての物質中に分散させて検温剤層を形成させる。この検温剤層が所定の温度以上に晒されると固体物質が融解して液状化して凝集する結果、不透明な相を形成し、検温剤層が不透明となる。固体物質としては、所定の温度で融解し、融解後に不透明な相を形成するものであればよく、融解後の不透明性を確保ために必要に応じて着色剤や散乱物質などを添加しておいてもよい。固体物質としては、例えば、オレイン酸などの脂肪酸、そのエステル、パラフィンなどが好ましい。1種類の物質で所定の温度の融点とすることができない場合には2種以上の物質を混合してもよい。透明な担体としての物質としては、透明で流動性のある物質であればよく、例えば、水、メタノール、エタノール、グリセリンなどのアルコール類などが挙げられる。固体成分の比率も限定的ではないが、液状成分に対して1:0.1から1:100程度が好ましい。また、必要に応じて潤滑剤、増粘剤、着色剤などの添加剤を添加してもよい。
本発明のより好ましい態様としては、「溶解型」や「染み込み型」が挙げられる。これらの態様は、情報を記録した記録物質、例えば印刷インキなどに直接作用するために、より簡単な構造の示温表示装置を提供することができる。また、本発明の「固体分散型」や「ドレッシング型」の態様は、情報を記録した記録物質に特性に依存することなく独立して透明性を変化させることができるので、特殊な記録物質が使用されている場合に好ましいが、多相系であるためにそれ自体の構造が「溶解型」や「染み込み型」やサイドタイプに比べてやや複雑となる。
情報記録膜層における情報としては、特に制限されるものではなく、光学的に読み取りできるものが好ましい。例えば、商品のバーコードや、温度表示についての警告やなどを記載したものが挙げられる
本発明の検温剤層は、それ自体を1枚のシート状として使用することもできるが、加工性をよくするためにその周囲に枠を付してその枠の中に必要な大きさの検温剤層を設けることもできる。本明細書ではこのような枠付きの検温剤層を「セパレーター」と称する。枠は中央部が空の、いわゆる枠型であってもよいが、中央部に台がある凹型の枠であってもよい。凹型の場合にはその凹んだ部分の検温剤が挿入されることになる。また、枠は透明であることが好ましいが、態様によっては必ずしも透明である必要ない。
本発明の「溶解型」の態様では、情報記録膜層に隣接して検温剤層が設けられ、検温剤層、情報記録膜層、及び情報記録保持層が順次並べられる。また、本発明の「染み込み型」の態様では、情報記録膜層と検温剤層の間に拡散層が設けられ、検温剤層、拡散層、情報記録膜層、及び情報記録保持層が順次並べられる。拡散層は、所定温度以上に晒された検温剤が染み込む又は通過することができて情報記録膜層に作用できるものであればよく、紙などの多孔性の物質や微小な孔が設けられた樹脂などが使用できる。このように各層を配置することにより、温度履歴を表示することができる。
また、本発明の「固体分散型」や「ドレッシング型」の態様では、検温剤層を情報記録膜層の上に配置され、検温剤層、情報記録膜層、及び情報記録保持層が順次並べられる。このように配置することにより温度履歴を表示することができる。
したがって、本発明はこのような構造を有する積層体を提供するものでもある。
本発明の示温表示装置は、ラベル化することができる。ラベル化基材に本発明の示温表示装置を接着やラミネート化などにより固定化してラベルとする。本発明の示温表示装置をそのまま各種容器に固着することもできるが、ラベル化して固着するのが好ましい。
容器への固着手段としては特に制限はないが、接着、ラミネート化、容器のポケットへの挿入、吸盤による方法などの各種の手段により行うことができる。また、本発明の示温表示装置全体を覆うシールで固着することもできる。
さらに、容器に印刷されているバーコードなどの印刷された記録膜を本発明の情報記録膜層として使用することもできる。即ち、既存の容器の印刷の上に、必要に応じて印刷の上部の保護部材を剥離してからその上に、本発明の検温剤層を固着させることにより、本発明の示温表示装置とすることもできる。このような態様、例えば前記してきたサイドタイプの例においては、本発明の示温表示装置の検温剤層を独立して製品化して使用することもできることになる。したがって、本発明は、温度に依存して状態が変化する物質を含有してなる本発明の示温表示装置の検温剤層を形成し得る検温剤組成物に関するものでもある。本発明の検温剤組成物は、前記してきた温度によって状態が変化する物質のみを成分とすることもできるし、さらに溶剤、増粘剤、潤滑剤、着色剤などの添加剤を添加してもよい。
また、このような検温剤組成物を検温剤収納部を有する形成部(例えば、検温剤のケースなど。)に収納して、金属薄膜などのバリアー部でシールして検温剤部材として製品化することも本発明の範囲である。このような検温剤部材にされに拡散層部材を添付して本発明の示温装置の部材とすることもできる。
本発明の容器としては、温度履歴の表示を必要とする製品の容器、その包装容器、運搬容器など各種の容器が挙げられる。
例えば、牛乳、お茶、コーヒーなどの各種の飲料の容器、弁当、ケーキ、サンドイッチなどの各種の食品の容器、医薬品や化粧品などの容器などが挙げられるが、さらに半導体やエアゾール製品などの高温に晒したくない工業製品又はその容器、低温輸送が必要な輸送品又はその容器などが挙げられる。これらの容器だけでなく、これらの製品を包装した包装容器に固着してもよく、またこれらの製品の運搬容器に固着することもできる。
本発明の示温表示装置を固着する時期としては、工場出荷時であってもよいし、運送時であってもよいし、店頭での販売時であってもよい。例えば、低温輸送品の場合には輸送開始時に本発明の示温表示装置を輸送品に固着することができるし、ケーキなどのように販売時にその容器に固着することもできる。
従って、本発明による示温表示装置を低温保持食品や工業製品又はその容器に固着しておくことにより、消費者が低温保持製品を購入する際や消費する際に、その製品の熱履歴を本発明の示温表示装置の状態により目視することができる。また、販売店やメーカーでは、製品の熱履歴を肉眼で観察することができるだけでなく、バーコードなどの情報の破壊により、バーコードリーダーでのバーコードの読み取りができなくなることから、バーコード入力の際に熱履歴の適否を機械的に判断することも可能となる。
さらに、本発明のサイドタイプの示温表示装置は、従来からのバーコードラベルなどの情報表示部材を使用することができ、簡便な材料により本発明の示温表示装置を製造することができる。また、本発明の検温剤収納部材及び拡散層からなる示温装置は、バーコードラベルなどの情報表示部材とは独立して製造、流通、保存できるものである。本発明の当該示温装置は、情報表示部材とは独立して存在することができるので、従来の情報表示部材、例えば、バーコードラベルなどをそのまま使用することができる。また、本発明の示温装置はバリヤー部を設けており、常温での製造、流通、保存が可能であるから、取扱いが容易であり、取扱いに特殊な装置を必要としない。
なお、特願2002−309457明細書に記載された内容を、本明細書にすべて取り込む。
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
検温剤としてオレイン酸を用いた。オレイン酸を30〜40℃に加温し、その後液体窒素にて急冷し、薄膜状に切断して検温剤を得た。また、液状のオレイン酸を薄膜状にして急冷することにより、薄膜状の検温剤とすることもできる。この検温剤の臨界温度(所定の温度)は、約10℃であった。
得られた厚さ約0.5mmの検温剤を凹型の枠に入れてセパレーターとした。このセパレーターの上に、透明なプラスチック上(情報記録保持層)にバーコードが印刷(情報記録膜層)された情報を記録した層を、情報記録膜層が前記検温剤層に密着するように配置した。
このようにして得られた示温表示装置の全体をラミネート材(ポリプロピレン)で封止した。
この表示体を室温(約20℃)に20分間放置したところ、バーコードの情報を肉眼で識別することはできなくなった。
【実施例2】
実施例1と同様にして検温剤層を製造した。
得られた厚さ約0.5mmの検温剤を凹型の枠に入れてセパレーターの上に、厚さ約0.5mmの紙を置き拡散層を作成し、その上に透明なプラスチック上(情報記録保持層)にバーコードが印刷(情報記録膜層)された情報を記録した層を、情報記録膜層が前記拡散層に密着するように配置した。
このようにして得られた示温表示装置の全体をラミネート材(ポリプロピレン)で封止した。
この表示体を室温(約20℃)に20分間放置したところ、バーコードの情報を肉眼で識別することはできなくなった。
【実施例3】
オレイン酸10gを30〜40℃に加温し、それに水10mLを混合し、十分に撹拌し、ついで超音波によりさらに撹拌する。この混合溶液を、液体窒素にて急冷し、水中に微小なオレイン酸の固体を製造する。これを徐々に暖めて水だけが融解した固体分散液とし、これに少量のアルカリ性物質を添加して検温剤とする。これを透明なフィルムに密封して、厚さ約0.5mmの検温剤層を得る。この検温剤の臨界温度(所定の温度)は、約10℃である。得られる厚さ0.5mmの検温剤層を枠に入れてセパレーターとする。このセパレーターの下に、透明なプラスチック上(情報記録保持層)にバーコードが印刷(情報記録膜層)された情報を記録した層を配置して示温表示装置とする。
この表示体は、10℃以下の温度ではバーコードを目視することができるが、室温(約20℃)に20分間放置すると、バーコードの情報を肉眼で識別することはできなくなる。
【実施例4】
グリセリン10mLを空気の存在下で超音波撹拌機で十分に撹拌する。この微小な気泡が発生した溶液を、液体窒素にて急冷し、微小な気泡を固定化する。これを透明なフィルムに密封して、厚さ約0.5mmの検温剤層を得る。この検温剤の臨界温度(所定の温度)は、約18℃である。
得られる厚さ約0.5mmの検温剤を枠に入れてセパレーターとし、このセパレーターの下に、透明なプラスチック上(情報記録保持層)にバーコードが印刷(情報記録膜層)された情報を記録した層を配置して、示温表示装置とする。
この表示体は、15℃以下の温度ではバーコードを目視することができないが、室温(約20℃)に30分間放置すると、バーコードの情報を肉眼で識別することができるようになる。
以上の試験結果から、本発明の示温表示装置は、臨界温度(所定の温度)以上の温度におかれた場合には、情報記録膜層に記載された情報を破壊し、または情報記録膜層の情報を肉眼でも読み取ることができなくなったり、できるようになることが確認された。
【実施例5】
第5図に示すサイドタイプの示温表示装置を製造した。検温剤としてはオレイルアルコール(和光純薬、純度65%)を使用した。検温剤のケースとしては(株)カナエ製のブリュースターパックを使用し、シール部分はアルミニウムを使用した。内容量は0.3mlのものを使用した。拡散層としてはキチントさんクッキングペーパーを使用した。
情報表示部材としては従来の感熱紙を使用した。透明な保護シートとしてOHPシートを使用した。
【実施例6】
実施例5と同様にして、オレイルアルコールの使用料を少なくして第8図に示すサイドタイプの示温表示装置を製造した。
実施例7 各種の感温材料の示差型熱量分析(DSC)
次の測定条件で各種の感温材料の示差型熱量分析法(DSC)による分析を行った。
[測定条件]
装置 ・・・DSC−3200S
容器 ・・・Alφ6.5の深皿容器
標準サンプル・・・アルミナ(40mg)
昇温速度 ・・・3℃/分
試料
(1) 65%オレイルアルコール 38.2mg
(2) 85%オレイルアルコール 54.6mg
(3) 95%オレイルアルコール 39.8mg
(4) 65%オレイルアルコール、及びエチルセルロース(増粘剤)
37.2mg
(5) 97%ペンタデカン 37.8mg
(6) オレイン酸 38.5mg
結果を、図10(試料(1))、図11(試料(2))、図12(試料(3))、図13(試料(4))、図14(試料(5))、及び図15(試料(6))にそれぞれ示す。各図の横軸は温度(℃)であり、縦軸は示差熱量(mcal/秒)である。マイナスは吸熱を示す。
感温材料は、その使用目的が主として生鮮食料品の温度管理であるため、危険性、毒性などの有害性が低いものを選んで分析した。ペンタデカンとオレイン酸については、温度特性的には使用に適しているが、感熱紙などとの相性を考えた場合、感熱剤の選択が困難なためアルコール系の試薬を中心に使用することが好ましいことがわかった。
実施例8 拡散層の材質の試験
拡散層の材料について検討を行った。拡散層の材料として、各紙の光学顕微鏡像を検討し、実際に各紙の拡散能を検討した。その結果、材質としてはクッキングペーパーや油取り紙のような不織布状の構造が適していることが分かった。
実施例9 温度に対する応答性試験
第5図に示される示温表示装置における感温材料の浸透について、感温材料として65%オレイルアルコールを用い、拡散層としてクッキングペーパーを用いた示温装置により、10℃、14℃、18℃、及び23℃における示温タグの応答特性を検討した。該当の温度において、バーコードをバーコードリーダーで読み取りを行って、読み取りができなくなった時間(秒)を応答時間とした。
この結果を図16に示す。図16の横軸は温度(℃)であり、縦軸は平均応答時間(秒)である。
【産業上の利用可能性】
本発明の示温表示装置は、簡単な構造により所定の温度の制限を履歴してきた否かを確実に且つ不可逆滴に表示することができる。例えば、低温保存食品などが所定の温度以下で貯蔵され、流通してきたか否かを肉眼でも容易に判定することができるし、また記録された情報が破壊されることからこれを機械的に判断することも可能となる。
本発明の示温表示装置は、所定の温度以上に晒されたくない各種の工業製品に広く応用することができ、貯蔵や流通段階における温度履歴による製品の劣化を肉眼や機械での読み取りにより確実になくすることができる。また、食品においては高温に晒されたことによる食品の腐敗の程度を本発明の示温表示装置により判別することができるようになる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報が記録された情報記録膜層、及び温度に依存して状態が変化する物質からなる検温剤層を有し、所定温度を履歴した場合に当該検温剤層の物質の状態が変化して前記情報記録膜層に記録されていた情報の表示状態を変化させることを特徴する示温表示装置。
【請求項2】
検温剤層の温度に依存して状態が変化する物質が、所定温度以上になると融解する物質である請求の範囲第1項に記載の示温表示装置。
【請求項3】
情報記録膜層の記録膜を形成する物質が、検温剤層の温度に依存して状態が変化する物質の融解状態において、溶解又は分散する物質からなる請求の範囲第2項に記載の示温表示装置。
【請求項4】
検温剤層の温度に依存して状態が変化する物質が、パラフィン、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステルおよび高級アルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種の熱融解剤を含有してなるものである請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の示温表示装置。
【請求項5】
検温剤層の温度に依存して状態が変化する物質が、不均一相を形成している2以上の物質からなり、所定温度以上になると均一相となり光の透過度を変化させるものである請求の範囲第1項に記載の示温表示装置。
【請求項6】
検温剤層が、情報記録膜層に隣接している請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載の示温表示装置。
【請求項7】
示温表示装置が、更に拡散層を有することを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の示温表示装置。
【請求項8】
拡散層が、多孔質物質である請求の範囲第7項に記載の示温表示装置。
【請求項9】
拡散層が、紙からなるものである請求の範囲第7項又は第8項に記載の示温表示装置。
【請求項10】
拡散層が、情報記録膜層と検温剤層の間にある請求の範囲第7項〜第9項のいずれかに記載の示温表示装置。
【請求項11】
検温剤層の温度に依存して状態が変化する物質が、中央部が凹型になっているセパレーターに収納されている請求の範囲第1項〜第10項のいずれかに記載の示温表示装置。
【請求項12】
示温表示装置が、シール状である請求の範囲第1項〜第11項のいずれかに記載の示温表示装置。
【請求項13】
示温表示装置が、粘着層を有し接着可能となっていることを特徴とする請求の範囲第1項〜第12項のいずれかに記載の示温表示装置。
【請求項14】
温度に依存して状態が変化する物質を収納してなる検温剤収納部、当該収納部に接した拡散層を備えてなる示温装置。
【請求項15】
検温剤収納部に収納されている温度に依存して状態が変化する物質が、所定温度以上になると融解する物質であり、情報記録膜層の記録膜を形成する物質が、検温剤収納部に収納されている温度に依存して状態が変化する物質の融解状態において、溶解又は分散する物質からなる請求の範囲第14項に記載の示温装置。
【請求項16】
検温剤収納部がバリアー層を有する請求の範囲第14項又は第15項に記載の示温装置。
【請求項17】
請求の範囲第14項又は第15項に記載の示温装置の拡散層の少なくとも一部が、情報記録膜層を有する情報表示部材の情報記録膜層の一部に接しており、検温剤が融解したときに検温剤が拡散層を通して情報記録膜層に流入又は浸透できる構造からなる示温表示装置。
【請求項18】
請求の範囲第14項又は第15項に記載の示温装置、及び情報記録膜層を有する情報表示部材の全部が透明な保護シートで覆われている請求の範囲第17項に記載の示温表示装置。
【請求項19】
温度に依存して状態が変化する物質を含有してなる請求の範囲第1項〜第18項のいずれかに記載の示温表示装置の検温剤層を形成し得る検温剤。
【請求項20】
検温剤が、パラフィン、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステルおよび高級アルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種の熱融解剤である請求の範囲第19項に記載の検温剤。
【請求項21】
請求の範囲第1項〜第13項又は第17項〜第18項のいずれかに記載の示温表示装置を設置してなる容器。
【請求項22】
容器が、食品容器である請求の範囲第21項に記載の容器。
【請求項23】
容器が、包装容器である請求の範囲第21項に記載の容器。
【請求項24】
容器が、運搬容器である請求の範囲第21項に記載の容器。
【請求項25】
基材、温度に依存して状態が変化する物質をからなる検温剤層を含有してなるセパレーター、情報が記録されている情報記録膜層を含有してなる情報記録保持層からなる示温表示が可能なラベル。
【請求項26】
情報記録保持層が、透明な材質からなる請求の範囲第25項に記載のラベル。
【請求項27】
セパレーターが透明な材質からなる請求の範囲第25項又は第26項に記載のラベル。
【請求項28】
セパレーターに含有されている検温剤層と、情報記録保持層に記録されている情報記録膜層が隣接している請求の範囲第25項〜第27項のいずれかに記載のラベル。
【請求項29】
さらに拡散層を形成し得る多孔質板を有する請求の範囲第25項〜第28項のいずれかに記載のラベル。
【請求項30】
基材の裏面に粘着層を有し接着可能となっていることを特徴とする請求の範囲第25項〜第29項のいずれかに記載のラベル。
【請求項31】
さらに保護板を有する請求の範囲第25項〜第30項のいずれかに記載のラベル。
【請求項32】
情報記録膜層の記録が、印刷である請求の範囲第25項〜第31項のいずれかに記載のラベル。
【請求項33】
温度に依存して状態が変化する物質をからなる検温剤層、情報記録膜層、及び情報記録保持層の各層からなる示温表示用の積層体。
【請求項34】
情報記録膜層と検温剤層の間に拡散層がさらに設けられてなる請求の範囲第33項の積層体。

【国際公開番号】WO2004/038353
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【発行日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546389(P2004−546389)
【国際出願番号】PCT/JP2003/002048
【国際出願日】平成15年2月25日(2003.2.25)
【出願人】(597164091)株式会社クロミック (1)
【出願人】(501343215)
【Fターム(参考)】