説明

移動体の制動装置

【課題】構造が簡単で、しかも耐久性が高い移動体の制動装置を提供する。
【解決手段】正逆方向へ移動する移動体2を制動して所定位置へ停止させる制動装置を、ケース7a内に回転自在に収容されたブレーキドラム12と、ブレーキドラム12の外周面に捲装されたコイルばねよりなる制動部材17と、移動体2が正方向へ移動された際制動部材17を拡径させ、かつ移動体2が予め設定された制動開始位置cにまで逆方向へ移動された際制動部材17を縮径させるアクチュエータ6とから構成したもので、衝撃音が発生することなく移動体2を所定位置に緩速停止させることができる共に、ワンウエイクラッチが不要になる上、ブレーキドラム12と制動部材17とで制動手段11を構成することができるため、部品点数の削減によるコストの低減が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自閉装置により自動的に閉鎖される引戸のような移動体を所定位置に緩速停止させる移動体の制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや住宅等の建造物に使用されている建具には、自閉装置により自動的に閉鎖される引戸がある。
引戸の自閉装置は、例えば特許文献1に記載されているように、巻き取りドラムに内装されたゼンマイ(付勢手段)を備えている。
また巻き取りドラムには、一端が引戸に固着され、他端が巻き取りドラムに係止された帯状の接続部材が巻き取られていて、引戸を開放すると、接続部材が巻き取りドラムより繰り出されると同時に、ゼンマイが巻き締められて付勢力が増大するようになっている。
その後開放した引戸から手を離すと、ゼンマイの付勢力により巻き取りドラムが接続部材を巻き取り方向へ回転させるため、引戸が自動的に閉鎖されるように構成されている。
しかし自閉装置により自動的に閉鎖される引戸は、閉じる瞬間の速度が最も早くなるため、引戸が戸当りに衝突する際衝突音を発生したり、指等体の一部が挟まれた場合怪我をする問題がある。
【0003】
かかる問題を解消するため、自閉装置により自動的に閉鎖される引戸の制動装置が例えば特許文献2や3等で提案されている。
前記特許文献2に記載の「ドア一方向ブレーキ装置」は、ドアを吊り下げている吊車の側面にブレーキ板が設けられていて、このブレーキ板はドアを開放する際には吊車と一緒に回転するようになっている。
またドアが閉鎖方向へ移動されると、ブレーキ板と圧着板の接触面に形成された凹凸部が互いに係合して、ブレーキ板が吊車に圧接されるため、ドアは緩やかに制動されながら閉鎖されるように構成されている。
【0004】
一方前記特許文献3に記載の「ドアクローザ用流体摩擦抵抗型ダンパー装置」は、粘性流体が充填された筐体内に、可動ドラムと回転ドラムが設けられており、回転ドラムと制動軸は一体回転されるようになっている。
制動軸にはワンウエイクラッチを介してピニオンが取り付けられていて、ドアが閉戸位置近傍に達すると、このピニオンがドアの近傍に布設されたラックと噛合して、制動軸が回転されるようになっており、これによって制動軸と一体に回転する回転ドラムと可動ドラムの間に充填された粘性流体の粘性により回転ドラムに制動力が作用するため、自閉装置により自動的に閉鎖されるドアを制動できるようになっている。
【特許文献1】特開平6−167163号公報
【特許文献2】特開2002−256759号公報
【特許文献3】特開平8−93312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし前記特許文献2に記載のブレーキ装置は、ブレーキ板と圧着板の間に、ドアの開放時係合が外れ、ドアの閉鎖時係合する凹凸を設けた構成のため、構造が複雑で高価となる問題がある。
またドア閉鎖時の全工程で制動力がドアに作用するためドアの閉鎖に時間がかかり、冷暖房している建造物に設けられたドアの場合、ドアが閉鎖されるまでの間冷気や暖気が開口部より漏洩するため、冷暖房効果を低下させる問題がある。
一方特許文献3に記載のダンパー装置は、制動力を粘性流体により得ているため、制動力が気温の変化等に影響されやすい問題がある。
またドアを開放する際には制動力が作用しないようピニオンと制動軸の間にワンウエイクラッチを設けているため、部品点数が多くなって部品コストが上るため、装置自体が高価となる問題もある。
本発明はかかる従来の問題を改善するためになされたもので、構造が簡単で、しかも耐久性が高い移動体の制動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の移動体の制動装置は、正逆方向へ移動する移動体の制動装置であって、ケース内に回転自在に収容されたブレーキドラムと、ブレーキドラムの外周面に捲装されたコイルばねよりなる制動部材と、移動体が正方向へ移動された際制動部材を拡径させ、かつ移動体が予め設定された制動開始位置にまで逆方向へ移動された際制動部材を縮径させるアクチュエータとから構成したものである。
【0007】
前記構成により、移動体が制動開始位置に達し、アクチュエータによりブレーキドラムが回転されると、ブレーキドラムと制動部材の摩擦により制動部材が縮径されて、ブレーキドラムとの接触面に制動力が発生し、この制動力により移動体が減速されるため、衝撃音が発生することなく移動体を所定位置に緩速停止させることができる。
またコイルばねよりなる制動部材がワンウエイクラッチの機能を有するため、ワンウエイクラッチが不要になる上、ブレーキドラムと制動部材とで制動手段を構成することができるため、部品点数の削減によるコストの低減が図れる。
【0008】
本発明の移動体の制動装置は、調整制動部材の一端側に、制動部材の内径を拡縮調整する調整ねじと、制動部材を縮径方向へ予圧する予圧ばねとからなる制動力調整手段を設けたものである。
【0009】
前記構成により、移動体の重量や、移動体の移動距離等の諸条件に合せて制動力が任意に調整できるため、汎用性が高いと共に、予圧ばねにより制動手段に予圧が付与されていることにより、ブレーキドラムに対する制動部材の初期食いつき性が向上するため、移動体を確実に制動することができる上、長期間使用している間に、ブレーキドラムと制動部材の接触面が摩耗して制動力が低下した場合にも、調整ねじにより簡単に制動力が調整できるため、初期設定時の制動力を長期間に亘って維持することができる。
【0010】
本発明の移動体の制動装置は、アクチュエータを、ブレーキドラムの回転軸に取り付けられたピニオンと、移動体の移動方向と平行するよう設けられ、かつ移動体が制動開始位置に達した際ピにオンと噛合するラックとから構成したものである。
【0011】
前記構成により、ラックの設置位置を変えることにより制動開始位置が任意に設定できる上、アクチュエータが安価に得られるようになる。
【0012】
本発明の移動体の制動装置は、ケースを密閉構造に形成し、かつ内部にモリブデングリースよりなる潤滑剤を充填したものである。
【0013】
前記構成により、ブレーキドラムと制動部材の接触面に過大な摩擦力が発生しても、ブレーキドラムの表面にカジリ等が発生することがないため、長期間安定した制動力が得られる。
【0014】
本発明の移動体の制動装置は、制動部材を異形線コイルばねにより形成したものである。
【0015】
前記構成により、ブレーキドラムと制動部材との接触面積が大きくなるため、少ない巻き数で大きな制動力が得られるようになり、これによって制動装置本体の小型軽量化が可能になる。
【0016】
本発明の移動体の制動装置は、自閉装置により自動的に閉鎖される引戸に適用したものである
【0017】
前記構成により、自閉装置により自動的に閉鎖される引戸が制動開始位置に達し、アクチュエータによりブレーキドラムが回転されると、ブレーキドラムと制動部材の摩擦により制動部材が縮径されて、ブレーキドラムとの接触面に制動力が発生し、この制動力により引戸が減速されるため、衝撃音が発生することなく引戸を閉位置に緩速停止させることができると共に、引戸が制動開始位置に達したときから制動が開始されるため、引戸の閉鎖時間を短縮することができ、これによって冷暖房している建造物に設けられた引戸に採用した場合、冷暖房による冷気や暖気が開口部より漏洩することが少なくなるため、冷暖房効果の向上が図れる。
またコイルばねよりなる制動部材がワンウエイクラッチの機能を有するため、ワンウエイクラッチが不要になる上、ブレーキドラムと制動部材とで制動手段を構成することができるため、部品点数の削減によるコストの低減が図れる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の移動体の制動装置によれば、移動体が制動開始位置に達すると、ブレーキドラムの回転により制動部材が縮径されて、ブレーキドラムとの接触面に制動力が発生し、この制動力により移動体が減速されるため、衝撃音が発生することなく移動体を所定位置に緩速停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態になる移動体の制動装置を、自閉装置により自動的に閉鎖される引戸に実施した例を、図面を参照して詳述する。
図1は制動装置が設けられた引戸の正面図、図2は同側面図、図3は制動装置本体の正面図、図4は図3のA−A線に沿う断面図、図5は図3のB−B線に沿う断面図、図6図4のC−C線に沿う断面図である。
ビルや住宅等の建造物1の開口部1aには、開口部1aを開閉する引戸2が設けられている。
引戸2は開口部1aの上部と床1bに布設されたガイドレール(図示せず)に案内されて矢印a、b方向へ開閉自在となっており、自閉装置3により閉方向bへ自動的に閉鎖されるようになっている。
【0020】
自閉装置3には、既存のものが使用されているため詳細な説明は省略するが、例えばゼンマイよりなる付勢手段により戸締り方向に付勢された巻き取りドラム(ともに図示せず)と、この巻き取りドラムに巻き取られたワイヤ3aとからなり、ワイヤ3aの一端は、引戸2の上部に固着されたワイヤ固定部材4に結着されている。
そして引戸2が閉位置より開方向aへ移動(開放)されると、自閉装置3の巻き取りドラムよりワイヤ3aが繰り出され、同時に付勢手段が巻き締められて付勢力が増大し、開位置で引戸2から手を離すと、付勢手段により巻き取りドラムが回転されてワイヤ3aを巻き取るため、引戸2は自動的に閉位置へと移動されて、開口部1aを閉鎖するようになっている。
【0021】
前記構成された自在装置3による引戸2の自閉動作では、引戸2が自閉を開始したときが最も速度が遅く、引戸2が閉位置に達したときに最も速度が早くなるため、引戸2が戸当り部1cに衝突した際大きな衝突音が発生する。
これを防止するため、自閉装置3により自動的に閉鎖される引戸2の戸当り面2aが図1の仮想線で示す制動開始位置cに達したときに、制動装置5により引戸2が制動されるようになっている。
制動装置5は、引戸2側に後述するブラケット20を介して取り付けられた制動装置本体7と、制動装置本体7に設けられたピにオン6a及び制動開始位置c近傍の開口部1a上方に設置されたラック6bとから構成されたアクチュエータ6よりなる。
【0022】
制動装置本体7は図3ないし図6に示すように、後面側が開口した例えば角箱状のケース7aと、ケース7aの開口部7bに固着具8により取り付けられたカバー7cとを有しており、これらケース7a及びカバー7cは、金属や合成樹脂により形成されていると共に、ケース7aの開口側端面とカバー7cの間には、シートパッキン等のシール部材9aが介在されている。
ケース7aの前面とカバー7cには、ほぼ中心部に軸孔7d、7eが一直線上に設けられていて、これら軸孔7d、7eに、それぞれシール機能を有する軸受け10が液密に嵌着されており、各軸受け10の内側には、軸孔7d、7eの内周面に環状溝7fが形成されていて、これら環状溝7fにもOリング等のシール部材9が嵌合されている。
ケース7aには制動手段11を構成するブレーキドラム12が設けられていて、ブレーキドラム12の両端面より突設された回転軸12aが軸受け10に回転自在に支承されており、各軸受け10とブレーキドラム12の両端面との間には、ブレーキドラム12がスラスト方向へ移動するのを規制するスペーサ13が介在されている。
【0023】
ブレーキドラム12の両端面に突設された回転軸12aの一方は他方より長く形成されていて、ケース7aの外側へ突出されていて、先端部にピニオン6aが固着具14により固着されおり、ピニオン6aとケース7aの間にもスペーサ13が介在されている。
ケース7a内に設けられたブレーキドラム12の外周面には、ワンウエイクラッチを兼ねた制動部材17が捲装されている。
制動部材17は、ブレーキドラム12とにより制動手段11を構成するもので、線条17aの断面が角形の異形線コイルばねにより形成されていて、内径がブレーキドラム12の外径より僅かに大きくなっており、線条17aの両端は図6に示すように外側へほぼ直角に屈曲されていて、一方の屈曲部17bは、ケース7aの内周面に形成された凹孔よりなる端末固定部7gに係止されている。
そして他方の屈曲部17cは、ケース7a内に設けられた制動力調整手段18に係止されている。
【0024】
制動力調整手段18は図4及び図6に示すように、制動部材17を挟んで前記端末固定部7gと対向するように設けられていて、調整ねじ18aと、コイルばねよりなる予圧ばね18bとからなる。
調整ねじ18aと予圧ばね18bは、上下方向に一直線上に配置されていて、調整ねじ18aはケース7aの上部に形成されたねじ孔7hに上方より螺挿されており、調整位置がロックナット18cにより固定できるようになっている。
予圧ばね18bは、調整ねじ18aと同軸となるように下端がケース7aの下部に植設されたガイドピン18dに嵌装されていて、調整ねじ18aの先端と予圧ばね18bの先端間で制動部材17の屈曲部17cを挟着することにより、制動力調整手段18に対し屈曲部17cが係止されている。
また制動手段11を構成するブレーキドラム12及び制動部材17は、繰り返し加わる制動力に対して早期に摩耗するのを防止して耐久性を高めるため、熱処理等による表面処理が施されており、ケース7a内には、例えばモリブデングリースのような潤滑剤がほぼ一杯に充填されていて、ブレーキドラム12と制動部材17の接触面にカジリ等が発生するのを防止している。
【0025】
一方前記構成された制動装置本体7は、ケース7aの下部に形成された取り付け部7iが固着具19によりブラケット20の上部に固着されている。
ブラケット20は図2に示すようにほぼL字形に形成されていて、下部が固着具19により引戸2の上面に固着されている。
制動装置本体1の取り付け位置は、引戸2の戸当り面2aより開放側へ距離Lだけオフセットされていて、引戸2の戸当り面2aが図1の仮想線で示す制動開始位置cに達したとき、開口部1aの上方に水平に設置されたラック6bに、制動装置本体7側に設け設けられたピニオン6aが噛合されるようになっている。
ラック6bは歯を上向きにして、ほぼL字形に形成されたブラケット21の水平部に固着されており、ブラケット21の垂直部は建造物1の壁面に固着されていると共に、ラック6bの全長は、引戸2の戸当り面2aが制動開始位置cに達してピニオン6aが噛合してから、引戸2が閉位置に達した際にもピニオン6aが離脱しない長さに設定されている。
【0026】
次に前記構成された移動体の制動装置の作用を説明する。
自閉装置3により自動的に閉鎖される引戸2の上部に、図1に示すように制動装置本体7を取り付け、建造物1側の壁面にアクチュエータ6のラック6bを水平に取り付ける。
次に制動力調整手段18により制動力を調整するに当り、まず調整ねじ18aを固定しているロックナット18cを緩め、この状態で実際に引戸2を開閉して制動力が適正かを判断する。
判断するに当たって、まず閉位置にある引戸2を開方向aへ移動させると、引戸2と共に制動装置本体7も移動し、このとき制御装置本体7側に設けられたピニオン6aがラック6bにより回転されるため、予圧ばね18bの作用でブレーキドラム12の外周面に圧接された異形線コイルばねよりなる制動部材17が拡径方向に捩じられて、ブレーキドラム12の外周面より僅かに離間することから、制動部材17のワンウエイクラッチ機能により引戸2の開放時には制動力が作用することがなく、これによって引戸2を容易に開放することができる。
【0027】
次に開位置にある引戸2から手を離すと、自閉装置3の作用により引戸2が自動的に閉方向bへ移動を開始し、引戸2の戸当り面2aが制動開始位置cに達すると、制動装置本体7側のピニオン6aがラック6bと噛合し、ラック6bによりピニオン6aを介してブレーキドラム12が回転される。
ブレーキドラム12の外周に設けられた制動部材17には、制動力調整手段18の予圧ばね18bによりブレーキドラム12の外周面に軽く圧接されるように予圧が加えられているため、ブレーキドラム12が回転されると、ブレーキドラム12と制動部材17の摩擦により制動部材17が縮径されて、ブレーキドラム12との接触面に制動力が発生し、自閉装置3により自動的に閉鎖されて制動開始位置cに達した引戸2は、制動装置本体7に発生した制動力により減速される。
その後制動装置本体7による制動力は、引戸2が閉位置に達するまで漸増するため、引戸2は閉位置に達したときには速度がほとんどなくなり、これによって引戸2が戸当り部1cに当接した際に衝撃音が発生することがほとんどない。
【0028】
以上の操作を数回繰り返して、引戸2に対する制動の効き具合を調査し、制動力が適正と判断された場合は、調整ねじ18aのロックナット18cを締め付けて、その位置に調整ねじ18aを固定するが、制動装置本体7による制動力が弱すぎて、引戸2が戸当り部1cに強く当ったり、逆に制動力が強すぎて、引戸2が戸当り部1cに当る前に停止する場合は、調整ねじ18aを回転して、制動部材17の捩じり力を調整する。
すなわち制動力が弱い場合は、調整ねじ18aを回転して、制動部材17を縮径方向に調整し、制動力が強い場合は、制動部材17を拡径方向に調整する。
これによって引戸2の重量や、引戸2の開閉距離等の諸条件に合せて制動力が任意に調整できると共に、調整後はロックナット18cにより調整ねじ18aを調整位置に固定することにより、その制動力を長期間維持することができる。
【0029】
一方ケース7a内にはモリブデングリースのような潤滑剤が充填されていて、ブレーキドラム12と制動部材17の接触面を常時潤滑している上、ブレーキドラム12と制動部材17は熱処理等の表面処理が施されていて、耐摩耗性が向上されているため、接触面に過大な摩擦力が発生しても、ブレーキドラム12の表面にカジリ等が発生することがなく、これによって長期間安定した制動力が得られる。
また制動部材17に異形線コイルばねを使用したことにより、ブレーキドラム12との接触面積が大きくなるため、少ない巻き数で大きな制動力が得られるようになり、これによって制動装置本体7の小型軽量化が可能になるため、住宅等に設置された比較的小型の引戸2にも制動装置5を容易に設置することが可能になる。
さらに長期間使用している間に、ブレーキドラム12と制動部材17の接触面が摩耗して制動力が低下した場合にも、調整ねじ18aにより簡単に制動力が調整できるため、初期設定時の制動力を長期間に亘って維持することができる。
【0030】
なお前記実施の形態では、図1に示すように左方向へ開放される引戸2に適用した場合について説明したが、右方向へ開放される勝手違いの引戸に対しても、予め逆仕様の制動装置を製作しておくことにより、対応することができる。
すなわち図6に示す制動部材17の端末固定部7gの位置と、制動力調整手段18の位置を逆にした勝手違いの制動装置本体7を予め製作することにより、左右何れの方向へ開放する引戸2にも対応できるものである。
また前記実施の形態では、移動体を自閉装置3により自動的に閉鎖される引戸2とした場合について説明したが、正逆方向へ移動される移動体であって、一方向の移動のみ制動を必要とする移動体全般に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態になる移動体の制動装置を採用した自閉引戸の正面図である。
【図2】本発明の実施の形態になる移動体の制動装置を採用した自閉引戸の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態になる移動体の制動装置の正面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図3のB−B線に沿う断面図である。
【図6】図4のC−C線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0032】
2 引戸(移動体)
3 自閉装置
6 アクチュエータ
6a ピニオン
6b ラック
7 制動装置本体
7a ケース
11 制動手段
12 ブレーキドラム
17 制動部材
18 制動力調整手段
18a 調整ねじ
18b 予圧ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正逆方向へ移動する移動体の制動装置であって、ケース内に回転自在に収容されたブレーキドラムと、前記ブレーキドラムの外周面に捲装されたコイルばねよりなる制動部材と、前記移動体が正方向へ移動された際前記制動部材を拡径させ、かつ前記移動体が予め設定された制動開始位置にまで逆方向へ移動された際前記制動部材を縮径させるアクチュエータとを具備したことを特徴とする移動体の制動装置。
【請求項2】
前記調整制動部材の一端側に、前記制動部材の内径を拡縮調整する調整ねじと、前記制動部材を縮径方向へ予圧する予圧ばねとからなる制動力調整手段を設けてなる請求項1に記載の移動体の制動装置。
【請求項3】
前記アクチュエータを、前記ブレーキドラムの回転軸に取り付けられたピニオンと、前記移動体の移動方向と平行するよう設けられ、かつ前記移動体が前記制動開始位置に達した際前記ピにオンと噛合するラックとから構成してなる請求項1または2に記載の移動体の制動装置。
【請求項4】
前記ケースを密閉構造に形成し、かつ内部にモリブデングリースよりなる潤滑剤を充填してなる請求項1ないし3の何れかに記載の移動体の制動装置。
【請求項5】
前記制動部材を、異形線コイルばねにより形成してなる請求項1ないし4の何れかに記載の移動体の制動装置。
【請求項6】
前記移動体が自閉装置により自動的に閉鎖される引戸である請求項1ないし5の何れかに記載の移動体の制動装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−278013(P2007−278013A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108510(P2006−108510)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(598151670)中央ばね工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】