説明

移動体の電動化方法

【課題】総量的CO削減に大きく寄与できる、移動体の電動化方法を提供する。
【解決手段】オートマチックトランスミッションの自動車に搭載されたガソリンエンジンを取外す。電動モータ8の出力軸8Aをインナーブッシング5の貫通孔に通し、さらにインナーブッシング5の外側にアウターブッシング4を取付け、さらにアウターブッシング4の外側にカップリング1を取付けて、セットスクリュー6でインナーブッシング5及びアウターブッシング4を締めて、カップリング1に固定する。次に、ボルト12によって、カップリング1とドライブプレート10を接続する。さらにドライブプレート10とトルクコンバータ11をボルト12によって接続する。そして、トルクコンバータ11とインプットシャフト13とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体の電動化方法に関する。詳しくは、例えばガソリンエンジンを搭載した、移動体例えば自動車や漁船の電動化方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
移動体例えば自動車において、エンジンの主流はガソリンエンジンとディーゼルエンジンである。これらの内燃機関は高温高圧下の急速間欠燃焼という形態のため、自動車走行条件の変動に対して排気をクリーンに保つことが困難である。
【0003】
このため、一部の新型車は、内燃機関と電気モータとを組み合わせたハイブリッド方式を採用している。ハイブリッド方式では、エンジン駆動力に余裕があるときに発電して電力を蓄電池に蓄え、低速トルクや大出力が必要なときに蓄電池の電力でモータを駆動する。これにより、車両重量に比して小容量のエンジンで済み、また、エンジンが担当すべき運転条件を狭めて排気対策を容易にすることができる。さらに、減速時に車軸からモータを駆動して発電させることで、エネルギー回生を行い、総合的な燃費向上を実現させようとしている。
また、例えば特許文献1にもハイブリッド自動車に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−264685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハイブリッド方式の自動車は車両価格が高くて生産台数が少なく、総量的CO削減への寄与は僅かであるという問題があった。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、総量的CO削減に大きく寄与できる、移動体の電動化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の移動体の電動化方法は、電動モータの出力軸に軸受けを取付ける工程と、電動モータの出力軸を、移動体の動力伝達部材に取付ける工程とを備え、前記軸受けは、前記出力軸が通される貫通孔が形成された第1の軸受け構成部材と、該第1の軸受け構成部材の外周面に沿って該第1の軸受け構成部材と同軸に位置される第2の軸受け構成部材と、前記第1の軸受け構成部材及び前記第2の軸受け構成部材を前記動力伝達部材に取付けるための取付け部材とを有する。
【0008】
ここで、出力軸が通される貫通孔が形成された第1の軸受け構成部材と、第1の軸受け構成部材の外周面に沿って第1の軸受け構成部材と同軸に位置される第2の軸受け構成部材と、第1の軸受け構成部材及び第2の軸受け構成部材を動力伝達部材に取付けるための取付け部材とを有する軸受けを用いることによって、様々な排気量の車や漁船に対応した電動モータを、様々な排気量の車や漁船に簡単に取付けることができる。
なお、ここでいう「電動モータの出力軸に軸受けを取付ける工程」には、軸受けを構成する少なくとも1つの部材を取付ける工程も含まれるものとする。
【0009】
また、本発明の移動体の電動化方法において、第1の軸受け構成部材の外周面に沿う第2の軸受け構成部材の内周面が傾斜する場合、テーパしまりばめ原理により、締結力が焼きばめと同等となり、確実でしかも安定した締結を得ることができる。
【0010】
また、本発明の移動体の電動化方法において、第1の軸受け構成部材に、貫通孔と略平行にスリットが形成されると共に、スリットは貫通孔にまで到達し、
第2の軸受け構成部材に、第1の軸受け構成部材の貫通孔と略平行にスリットが形成されると共に、スリットは第2の軸受け構成部材の内周面にまで到達する場合、出力軸の径が多少大きくても、第1の軸受け構成部材や第2の軸受け構成部材は拡径して、出力軸を通すことができる。
【0011】
また、本発明の移動体の電動化方法において、移動体は漁船であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る移動体の電動化方法は、総量的CO削減に大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る移動体の電動化方法に使用されるカップリングの一例を示す概略平面図及び概略断面図である。
【図2】図1に示したカップリングにアウターブッシングを取付けた状態の一例を示す概略平面図及び概略断面図である。
【図3】図2に示したカップリングとアウターブッシングに、インナーブッシングを取付けた状態の一例を示す概略平面図及び概略断面図である。
【図4】図3に示された軸受けにセットスクリューを取付けた状態の一例を示す概略平面図である。
【図5】オートマチックトランスミッションの自動車のガソリンエンジンを外して電動モータを取付けた状態の一例を示す概略図である。
【図6】マニュアルトランスミッションの自動車のガソリンエンジンを外して電動モータを取付けた状態の一例を示す概略図である。
【図7】小型漁船のガソリンエンジンを外して電動モータを取付けた状態の一例を示す概略図である。
【図8】船外機のガソリンエンジンを外して電動モータを取付けた状態の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明に係る移動体の電動化方法に使用されるカップリングの一例を示す概略平面図及び概略断面図である。
図1(a)に示すように、円形のカップリング(取付け部材の一例である。)1の略中央には、電動モータの出力軸が通される貫通孔2が形成されており、貫通孔2の半径方向外側には、セットスクリューを通すためのセットスクリュー用孔3が形成されている。
また、図1(b)に示すように、貫通孔2は、径が異なる2種類の孔で構成されている。
【0015】
図2は、図1に示したカップリングにアウターブッシングを取付けた状態の一例を示す概略平面図及び概略断面図である。
図2(b)に示すように、両端が開口した貫通孔が形成された円筒形のアウターブッシング(第2の軸受け構成部材の一例である。)4が、カップリング1の大きい径を有する貫通孔2内に入れられ、図2(a)に示すように、アウターブッシング4は、カップリング1の内周面に沿ってカップリング1と同軸に配置される。
また、セットスクリュー用孔3に対応するアウターブッシング4の領域には、窪みが形成され、この窪みにセットスクリューが当接する。
また、図2(b)に示すように、アウターブッシング4の内周面は傾斜している。
【0016】
図3は、図2に示したカップリングとアウターブッシングに、インナーブッシングを取付けた状態の一例を示す概略平面図及び概略断面図である。
図3(b)に示すように、両端が開口した貫通孔が形成された円筒形のインナーブッシング(第1の軸受け構成部材の一例である。)5が、カップリング1の内側に入れられたアウターブッシング4の内側に入れられ、図3(a)に示すように、インナーブッシング5は、アウターブッシング4の内周面に沿ってカップリング1及びアウターブッシング4と同軸に配置される。
また、セットスクリュー用孔3に対応するインナーブッシング5の領域には、窪みが形成され、この窪みにセットスクリューが当接する。
また、図3(b)に示すように、傾斜したアウターブッシング4の内周面に沿って、インナーブッシング5の外周面も傾斜している。
また、図3(a)に示すように、カップリング1の貫通孔と、アウターブッシング4の貫通孔と、インナーブッシング5の貫通孔とは、同軸に配置されており、電動モータの出力軸が、これら貫通孔に通される。
【0017】
図4は、図3に示された軸受けにセットスクリューを取付けた状態の一例を示す概略平面図である。
セットスクリュー用孔3にセットスクリュー6が挿入されて、セットスクリュー6を締めつけると、アウターブッシング4が拡がり、カップリング1に固定される。
また、アウターブッシング4及びインナーブッシング5には、それぞれ貫通孔と略平行に形成されると共に内周面にまで到達するスリット7が形成されている
【0018】
図5は、オートマチックトランスミッションの自動車のガソリンエンジンを外して電動モータを取付けた状態の一例を示す概略図である。
以下に、オートマチックトランスミッションの自動車の電動化方法の一例を説明する。
オートマチックトランスミッションの自動車に搭載されたガソリンエンジンを取外す。
また、電動モータ8の出力軸8Aをインナーブッシング5の貫通孔に通し、さらにインナーブッシング5の外側にアウターブッシング4を取付け、さらにアウターブッシング4の外側にカップリング1を取付けて、セットスクリュー6でインナーブッシング5及びアウターブッシング4を締めて、カップリング1に固定する。
また、出力軸8Aの表面には、モーターキー18が設けられており、インナーブッシング5の内周面と係合している。
次に、ボルト12によって、カップリング1とドライブプレート(動力伝達部材の一例である。)10を接続する。
さらにドライブプレート10とトルクコンバータ11をボルト12によって接続する。
そして、トルクコンバータ11とインプットシャフト13とを接続する。
【0019】
また、ドライブプレート10やトルクコンバータ11は、トランスミッションケース9A内に配置され、トランスミッションケース9Aは、開口部が形成されたトランスミッションカバー9で覆われる。
また、トランスミッションカバー9は、トランスミッションケース9Aにボルト12によって接続される。
また、トランスミッションカバー9と電動モータ8とが、ボルト12によって接続される。
以上により、オートマチックトランスミッションの自動車の電動化が完了する。
【0020】
図6は、マニュアルトランスミッションの自動車のガソリンエンジンを外して電動モータを取付けた状態の一例を示す概略図である。
以下に、マニュアルトランスミッションの自動車の電動化方法の一例を説明する。
マニュアルトランスミッションの自動車に搭載されたガソリンエンジンを取外す。
また、ガソリンエンジンに取付けてあったフライホイール14に、カップリング1を固定するための孔をあける。
孔があけられたフライホイール14に、アウターブッシング4が取付けられたカップリング1を3点のボルト12で固定する。
次に、電動モータ8の出力軸8Aに、インナーブッシング5を取付け、カップリング1とアウターブッシング4が取付けられたフライホイール14を、アウターブッシング4内にインナーブッシング5を入れて、セットスクリュー6で固定する。
そして、電動モータ8の出力軸8Aが固定されたフライホイール14にクラッチプレート15を取付け、さらにクラッチプレート15にクラッチカバー16を取付ける。
そして、レリーズベアリング17に通されたインプットシャフト13を、クラッチカバー16と接続する。
【0021】
また、カップリング1、アウターブッシング4及びインナーブッシング5が取付けられたフライホイール14や、クラッチプレート15や、クラッチカバー16は、トランスミッションケース9A内に配置され、トランスミッションケース9Aは、開口部が形成されたトランスミッションカバー9で覆われる。
また、トランスミッションカバー9は、トランスミッションケース9Aにボルト12によって接続される。
また、トランスミッションカバー9と電動モータ8とが、ボルト12によって接続される。
以上により、マニュアルトランスミッションの自動車の電動化が完了する。
【0022】
図7は、小型漁船のガソリンエンジンを外して電動モータを取付けた状態の一例を示す概略図である。
以下に、小型漁船の電動化方法の一例を説明する。
小型漁船に搭載されたガソリンエンジンを取外す。
また、電動モータ8の出力軸8Aをインナーブッシング5の貫通孔に通し、さらにインナーブッシング5の外側にアウターブッシング4を取付け、さらにアウターブッシング4の外側にカップリング1を取付ける。
また、小型漁船の電動化に用いられるカップリング1の長さは、アウターブッシング4やインナーブッシング5の長さの2倍あると共に、カップリング1の貫通孔の径は1種類だけなので、アウターブッシング4やインナーブッシング5をカップリング1の両側から取付ける。
そして、出力軸8Aが接続された側とは反対側から、アウターブッシング4やインナーブッシング5が取付けられたカップリング1内にドライブシャフト(動力伝達部材の一例である。)19を挿入して、セットスクリュー6によって固定する。ドライブシャフト19は、プロペラ(図示せず。)に接続されている。
【0023】
また、電動モータ8やドライブシャフト19は船内に収容されており、船外殻20に取付けられた仕切り部材20Aに、ボルト12によって電動モータ8が固定される。
以上により、小型漁船の電動化が完了する。
【0024】
図8は、船外機のガソリンエンジンを外して電動モータを取付けた状態の一例を示す概略図である。
以下に、船外機の電動化方法の一例を説明する。
船外機に搭載されたガソリンエンジンを取外す。
また、スプライン溝21が表面に形成されたドライブシャフト19にアウターブッシング4やインナーブッシング5を取付けるためのスプラインアダプター23を、船外機のクランクシャフト(図示せず。)の一部材を切断し、切断した一部材を用いて製作する。
そして、インナーブッシング5の外側にアウターブッシング4を取付け、さらに図8に示すように、アウターブッシング4及びインナーブッシング5の一方の端面に、スプラインアダプター23をボルト12によって取付ける。
そして、電動モータ8の出力軸8Aをインナーブッシング5の貫通孔に通し、さらに、セットスクリュー6でインナーブッシング5及びアウターブッシング4を締めて固定する。
次に、電動モータ8の出力軸8Aが固定されたスプラインアダプター23に、ドライブシャフト19を取付ける。ドライブシャフト19は、プロペラ(図示せず。)に接続されている。
【0025】
また、ドライブシャフト19、アウターブッシング4、インナーブッシング5及びスプラインアダプター23は、船外機外殻22に囲まれている。
また、船外機外殻22に、ボルト12によって電動モータ8が固定される。
以上により、船外機の電動化が完了する。
【0026】
以上のように、本発明の移動体の電動化方法は、カップリング、アウターブッシング及びインナーブッシングを、電動モータの出力軸の軸受けとして用いているので、様々な排気量の車や漁船に対応した電動モータを、様々な排気量の車や漁船に簡単に取付けることができ、よって、今までCOを排出していたガソリンエンジン搭載の車や漁船のガソリンエンジンを電動モータに変換することができるので、総量的CO削減に大きく寄与できる。
【0027】
また、本発明により、メーカー製電機自動車やメーカー製電動漁船のように、1から製造するのではなく、ガソリンエンジン車やガソリンエンジン漁船を改造して、多種多様な車や漁船の電動化が可能である。
【0028】
また、自ら購入した電動モータを用いて、本発明によって電気自動車や電動式漁船へ改造し、それをフィードバックさせて自らが運用若しくは地域で活用することで、カーボンオフ社会からカーボンマイナス社会へ導いていくことができる。
【符号の説明】
【0029】
1 カップリング
2 貫通孔
3 セットスクリュー用孔
4 アウターブッシング
5 インナーブッシング
6 セットスクリュー
7 スリット
8 電動モータ
8A 出力軸
9 トランスミッションカバー
9A トランスミッションケース
10 ドライブプレート
11 トルクコンバータ
12 ボルト
13 インプットシャフト
14 フライホイール
15 クラッチプレート
16 クラッチカバー
17 レリーズベアリング
18 モーターキー
19 ドライブシャフト
20 船外殻
20A 仕切り部材
21 スプライン溝
22 船外機外殻
23 スプラインアダプター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの出力軸に軸受けを取付ける工程と、
電動モータの出力軸を、移動体の動力伝達部材に取付ける工程とを備え、
前記軸受けは、前記出力軸が通される貫通孔が形成された第1の軸受け構成部材と、該第1の軸受け構成部材の外周面に沿って該第1の軸受け構成部材と同軸に位置される第2の軸受け構成部材と、前記第1の軸受け構成部材及び前記第2の軸受け構成部材を前記動力伝達部材に取付けるための取付け部材とを有する
移動体の電動化方法。
【請求項2】
前記第1の軸受け構成部材の外周面に沿う前記第2の軸受け構成部材の内周面は傾斜する
請求項1に記載の移動体の電動化方法。
【請求項3】
前記第1の軸受け構成部材に、前記貫通孔と略平行にスリットが形成されると共に、同スリットは前記貫通孔にまで到達し、
前記第2の軸受け構成部材に、前記第1の軸受け構成部材の前記貫通孔と略平行にスリットが形成されると共に、同スリットは前記第2の軸受け構成部材の内周面にまで到達する
請求項1または請求項2に記載の移動体の電動化方法。
【請求項4】
前記移動体は漁船である
請求項1〜3のいずれか1つに記載の移動体の電動化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−213382(P2010−213382A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53930(P2009−53930)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(509256274)アイティオー株式会社 (4)
【Fターム(参考)】