説明

移動体測定システム

【課題】 簡易な構成により、被測定物までの距離及び位置を容易に測定することが可能な移動体測定システムを提供する。
【解決手段】 移動体測定システムS1は、被測定物Zまでの距離L1,L2を電波によって測定する複数の距離センサ10a,10bと、複数の距離センサ10a,10bのそれぞれからの測定情報及び複数の距離センサ10a,10b同士の配置情報L0に基づいて、被測定物Zの位置を求める演算部21と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置等を測定する移動体測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建造物内への不審者の侵入等を検出する装置として、従来から様々な技術がある。
例えば、マイクロ波等の電波を室内に照射し、反射してきた反射波と予め記憶手段に記憶した反射波の基本波形とを比較し、反射波のレベルの減衰により双方の波形間に差異が認められた場合に、侵入者が室内に潜んでいると判断する技術が提案されている。
【特許文献1】特開昭59−24396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した技術では、被測定物である移動体までの距離を測定する技術にすぎず、このため、被測定物の位置、移動方向を検知することができないという問題がある。
このため、電波の照射を走査させることで、その走査方向と距離との関係から被測定物の位置、移動方向を検知する技術も提案されているが、電波を走査するための特別な装置が必要となり、システムコストの上昇を招いてしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、簡易な構成により、被測定物までの距離及び位置を容易に測定することが可能な移動体測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る移動体測定システムでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明の移動体測定システムは、被測定物までの距離を電波によって測定する複数の距離センサと、前記複数の距離センサのそれぞれからの測定情報及び前記複数の距離センサ同士の配置情報に基づいて、前記被測定物の位置を求める演算部、を備えるようにした。
この発明によれば、複数の距離センサを設けることで、移動体である被測定物の距離のみならず、位置等も容易に求められる。
【0006】
また、前記複数の距離センサとして、非直線上に配置された三つの距離センサを備えるものでは、複数の移動体(被測定物)が存在する場合であっても、これらの位置等を容易に求めることが可能となる。
また、前記被測定物の位置を記憶する記憶部を備えるものでは、移動体(被測定物)の位置等を記録することで、容易に移動体の移動軌跡を求めることが可能となる。
また、前記複数の距離センサは、前記被測定物の距離測定を交互に行うものでは、各距離センサの計測が干渉してしまう不都合を容易かつ確実に回避することができる。
また、前記距離センサは、前記被測定物の距離測定を行う際に、直前の測定情報に基づいて、測定範囲を切り替えるものでは、直線の測定により移動体の位置が求められているので、距離センサの測定範囲を移動体の存在する周辺に絞り込む(所定方向に指向を合わせる)ことで、確実な距離測定を実現することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば以下の効果を得ることができる。
本発明の移動体測定システムは、被測定物までの距離を電波によって測定する複数の距離センサと、前記複数の距離センサのそれぞれからの測定情報及び前記複数の距離センサ同士の配置情報に基づいて、前記被測定物の位置を求める演算部と、を備えるようにしたので、特別な装置等を用いることなく、複数の距離センサを設けるだけで、移動体である被測定物の位置等を容易に求めることが可能となる。
したがって、システムコストの上昇を最小限に抑えつつ、高性能な移動体測定システムを構築することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の移動体測定システムの実施形態について図を参照して説明する。
[第一実施形態]
図1は、移動体測定システムS1の概略構成を示す図である。図2は、距離センサ10の回路構成を示す図である。
移動体測定システムS1は、2つの距離センサ10(10a,10b)と、演算部21や記憶部22等を有する制御装置20と、を備える。
【0009】
距離センサ10は、図2に示すように、ミリ波レーダ方式の電波センサであって、アンテナ11、サーキュレータ12、カップラ13、発信器14、ミキサ15、増幅器16、A/D変換器17、DSP18等を備える。
そして、アンテナ11からミリ波を発信し、被測定物である移動体Zからの反射波を受信することで、移動体Zまでの距離を測定するものである。
ミリ波とは,一般に30GHz〜300GHz(波長10mm〜1mm)の周波数帯であり,波長が非常に短い電波である。例えば、76GHz帯電波を使用したレーダ方式がよく知られおり、霧の中や降雨、降雪時でも使用できるという特徴を有する。ミリ波レーダには、FM−CW(Frequency−Modulated Continuous Waves)、2周波CW,パルス,スペクトラム拡散方式等、様々な変調方式がある。特に、2周波CWレーダは、至近距離での検知が可能で、他のレーダとの干渉も起こしにくいという特徴を有する。
本実施形態においては、2周波CWレーダ方式を用い、また、ドップラーレーダを用いることで、移動体Zの速度も測定することが可能であるが、測定条件に応じて、他の方式のレーダを用いてもよい。
【0010】
図1に示すように、移動体測定システムS1は、2つの距離センサ10a,10bを備え、それぞれの距離センサ10a,10bから移動体Zまでの距離L1,L2が測定される。また、距離センサ10a,10bの距離L0は既知の情報である。したがって、制御装置20の演算部21は、これらの距離L0,L1,L2の情報に基づいて、移動体Zの位置(図1における測定領域の平面位置)を求めることができる。
【0011】
ところで、距離センサ10a,10bからのミリ波の発信及び受信が同時に行われると、距離センサ10a,10b同士の干渉が発生してしまい、誤測定を引き起こす虞がある。そこで、距離センサ10a,10bの距離測定を時分割方式に行う。すなわち、距離センサ10a,10bによる移動体Zの距離計測を短時間毎に交互に切り替えて行うことで、距離センサ10a,10b同士の干渉を容易かつ確実に回避することが可能となる。
【0012】
そして、制御装置20の記憶部22には、演算部21において求めた移動体Zの位置情報が時時刻刻と記憶される。したがって、記憶部22に記憶された情報から、移動体Zの移動軌跡を求めることが可能となる。
【0013】
このように、移動体測定システムS1が2つの距離センサ10a,10bを備えることで、移動体Zの位置を容易かつ確実に測定することが可能となる。特に、距離センサ10からのミリ波の発信方向をスキャンさせる等の方法を用いなくとも、移動体Zの位置を測定することが可能となり、システムコストの低減を図ることができる。
【0014】
なお、距離センサ10a,10bには、ミリ波の発信方向を所定方向に指向させる機能、すなわち、測定範囲を切り替える機能を具備させることで、移動体Zまでの距離測定の精度を向上させることも可能である。
つまり、測定当初は、距離センサ10a,10bの測定範囲を限定することなく、広範囲に向けてミリ波を発信する。そして、移動体Zが検出された後には、記憶部22に記憶された移動体Zの直前の位置情報に基づいて、距離センサ10a,10bの測定範囲(ミリ波の発信方向)を移動体Zが存在する方向に限定する。そして更に、移動体Zの移動に伴って、距離センサ10a,10bからのミリ波の発信方向を移動体Zに追従させる。これにより、他の領域からの反射波の影響を受けることがなくなるので、移動体Zまでの距離や移動速度を高精度に測定することができる。したがって、移動体Zの位置や移動軌跡も高精度に測定することが可能となる。
【0015】
[第二実施形態]
次に、本発明の移動体測定システムの第二実施形態について図を参照して説明する。
図3は、移動体測定システムS2の概略構成を示す図である。なお、移動体測定システムS1と同一の構成要素等については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0016】
移動体測定システムS2は、3つの距離センサ10(10a,10b、10c)と、制御装置20(不図示)とを備える。
移動体測定システムS2は、3つの距離センサ10a,10b、10cを備えているので、複数の移動体Z1、Z2、Z3の位置を測定することが可能である。
【0017】
ここで、図4を用いて、複数の移動体Z1、Z2、Z3の位置を測定する際に、3つの距離センサ10a,10b、10cを用いる理由について説明する。
まず、2つの距離センサ10a,10bを用いて複数の移動体Z1,Z2の位置を測定しようとする場合には、各距離センサ10a,10bから移動体Z1及びZ2までの距離La1,La2,Lb1,Lb2を求める。そして、これらの距離情報と、距離センサ10a,10b同士の距離L0との関係から、移動体Z1,Z2の位置を求める。
しかし、距離La1,La2,Lb1,Lb2を測定したとしても、移動体Z1,Z2の位置を確定することはできない。移動体Z1,Z2が存在する可能性のある場所が複数存在するからである
【0018】
それは、距離センサ10a,10bは、それぞれアンテナ11からミリ波を発信し、移動体Z1,Z2からの反射波を受信することで、移動体Z1,Z2までの距離を測定しているので、移動体Z1,Z2からの反射波は、区別することができないことに起因する。
つまり、距離センサ10aは、距離La1,La2の地点に被測定物が存在することは認識できるが、その被測定物が移動体Z1なのか移動体Z2なのかを認識することはできない。距離センサ10bも同様に、距離Lb1,Lb2の地点に存在する被測定物が移動体Z1なのか移動体Z2なのかを認識することはできない。このため、移動体Z1,Z2が存在する場所を確定できない。
【0019】
具体的には、図4に示すように、移動体Z1の位置を求める場合には、距離センサ10aを中心とする半径La1の円Ca1と、距離センサ10bを中心とする半径Lb1の円Cb1との交点Aを移動体Z1の位置と認定する必要がある。
同様に、移動体Z2の位置を求める場合には、距離センサ10aを中心とする半径La2の円Ca2と、距離センサ10bを中心とする半径LB2の円Cb2との交点Bを移動体Z2の位置と認定する必要がある。
【0020】
しかし、距離センサ10a,10bは、単に距離La1,La2,Lb1,Lb2の地点に被測定物が存在することしか認識できない。このため、図4に示すように、円Ca1と円Cb2との交点Cや、円Ca2と円Cb1との交点Dにも被測定物が存在する可能性を否定できない。すなわち、移動体Z1,Z2が交点A〜Dのいずれに存在するのかを確定することができない。
【0021】
このように、2つの距離センサ10a,10bを用いた場合には、複数の移動体Z1,Z2の位置を測定することはできない。
そこで、図3に示すように、3つの距離センサ10a,10b、10cを備えることで、上述したような不都合を回避でき、同時に複数の移動体Z1、Z2、Z3の位置を測定することが可能となる。なお、3つの距離センサ10a,10b、10cの位置関係は、既知であるものとする。
すなわち、被測定物の位置を求める場合に、3つの距離センサ10a,10b、10cを中心とする3つ円の交点を求めることで、確実に物体の位置を認識できる。
したがって、被測定物である移動体が複数存在する場合であっても、これらの位置を確実に求めることができる。
【0022】
なお、複数の移動体Z1、Z2、Z3の位置を高精度に測定するためには、距離センサ10a,10b,10cが同一直線上に位置するような配置は避けるべきである。図3に示すように、被測定物である測定移動体Z1〜Z3が、3つの距離センサ10a,10b,10cで囲まれた領域内に存在するように、距離センサ10a,10b,10cを配置することで、測定移動体Z1〜Z3の位置測定等を良好に行うことが可能となる。
【0023】
また、移動体測定システムS2においても、距離センサ10a,10b,10cによる距離測定を時分割方式にて行うことで、距離センサ10a,10b,10c同士の干渉を回避することが好ましい。
また、移動体測定システムS2は、制御装置20の記憶部22に記憶された移動体Z1〜Z3の位置情報から、移動体Z1〜Z3の移動軌跡を求めることも可能である。
【0024】
また、距離センサ10a,10b,10cにミリ波の発信方向を所定方向に指向させる機能を具備させてもよい。移動体までの距離測定の精度を向上させることが可能となるからである。特に、被測定物が複数存在する場合に、そのうちの特定の被測定物に向けて各距離センサ10a,10b,10cからミリ波を発信することで、その被測定物の位置や軌跡等を高精度に測定することが可能となる。
【0025】
このように、移動体測定システムS2が3つの距離センサ10a,10b,10cを備えることで、複数の移動体Z1〜Z3の位置を容易かつ確実に測定することが可能となる。特に、距離センサ10からのミリ波の発信方向をスキャンさせる等の方法を用いなくとも、移動体Zの位置を測定することが可能となり、システムコストの低減を図ることができる。
【0026】
上述した移動体測定システムS1,S2の用途としては、建造物内の侵入者の検知システム(防犯システム)や、港湾における船舶監視システム等があるが、これに限られるものではなく、移動体の位置を計測するものであればよい。
また、移動体測定システムS1,S2に対して、被測定物の位置が変化する場合に限らず、被測定物に対して移動体測定システムS1,S2の位置が変化する場合、或いは被測定物と移動体測定システムS1,S2とが共に移動する場合であってもよい。このような場合には、移動体測定システムS1,S2に対する被測定物の相対的な位置が求められる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】移動体測定システムS1の概略構成を示す図である。
【図2】距離センサ10の回路構成を示す図である。
【図3】移動体測定システムS2の概略構成を示す図である。
【図4】複数の移動体Z1〜Z3の位置計測方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0028】
S1,S2…移動体測定システム
Z、Z1〜Z3…移動体(被測定物)
10(10a〜10c)…距離センサ
20…制御装置
21…演算部
22…記憶部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物までの距離を電波によって測定する複数の距離センサと、
前記複数の距離センサのそれぞれからの測定情報及び前記複数の距離センサ同士の配置情報に基づいて、前記被測定物の位置を求める演算部、
を備えることを特徴とする移動体測定システム。
【請求項2】
前記複数の距離センサとして、非直線上に配置された三つの距離センサを備えることを特徴とする請求項1に記載の移動体測定システム。
【請求項3】
前記被測定物の位置を記憶する記憶部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動体測定システム。
【請求項4】
前記複数の距離センサは、前記被測定物の距離測定を交互に行うことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の移動体測定システム。
【請求項5】
前記距離センサは、前記被測定物の距離測定を行う際に、直前の測定情報に基づいて、測定範囲を切り替えることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の移動体測定システム。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−64655(P2007−64655A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247504(P2005−247504)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000232357)横河電子機器株式会社 (109)
【Fターム(参考)】