説明

移動型ロボットシステム

【課題】 自律移動や自律作業が可能な移動型ロボットにおいて、充電による可動範囲の制限や作業内容の制限を受けずに、作業を継続可能な技術を提供する。
【解決手段】 移動して所定の作業を自律的に実行する移動型メインロボット(10A)と、その移動型メインロボット(10A)に対して装着可能であるとともに移動型メインロボット(10A)とは別に移動可能な移動型サブロボット(20A,20B,20C,20D)と、その移動型サブロボット(20C)に対して充電を実行する充電装置(30)とを備える。移動型メインロボット(10A)は、電気エネルギを供給するメインバッテリ(11)を備える。前記移動型サブロボットは、前記の移動型メインロボット(10A)に装着された場合に前記メインバッテリ(11)へ電気エネルギを充電する内蔵バッテリを備える。移動型メインロボット(10A)に装着されていない場合であって内蔵バッテリの電気エネルギが少ない場合には、充電装置(30)へ自律移動して充電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを搭載して自律移動や自律作業が可能な移動型ロボット(自律移動体を含む)において、充電のために移動や作業を中断しなくて済む技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットが様々な分野に応用されるようになり、長距離の移動や複雑な作業を伴う仕事が可能となってきた。
作業内容に大きな出力を伴う場合には、その出力をエンジンから供給するロボットもあるが、データの入出力や演算処理が必須であるため、多くのロボットは電気エネルギのみで稼働する。
さて、ロボットを稼働させるための電気エネルギの供給は、そのロボットが移動できる範囲を制限しないようにするため、バッテリを用いる。バッテリには、繰り返しの充放電が可能な二次電池を用いることが極めて一般的である。
【0003】
特許文献1には、移動型ロボットにおいて、メインのバッテリ(主電池)とサブのバッテリ(副電池)を備えることにより、主電池が充電中であっても移動型ロボットを使用できる技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、移動型ロボットに対して、移動型ロボットに追従して移動可能であり、接続ケーブルを介して移動型ロボットに充電を実行可能な充電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−304544号公報
【特許文献2】特開2009−142080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術では、移動型ロボットが充電を必要とする際には、充電装置のある場所まで移動しなければならない。 したがって、その充電装置の場所で実行可能な作業は継続できるものの、移動しなければ実行できない作業は中断しなければならない。
【0007】
特許文献2に開示された技術では、充電装置が追従するので、移動型ロボットが充電装置を伴って移動できる範囲での作業は、充電中であっても継続できる。 しかし、充電装置と移動型ロボットとはケーブルにて接続されているため、ケーブルによる可動範囲の制限や作業内容の制限を受ける。
【0008】
本願発明が解決しようとする課題は、移動型ロボットに対して充電による可動範囲の制限や作業内容の制限を受けずに、作業を継続可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(第一の発明)
本願における第一の発明は、 移動して所定の作業を自律的に実行する移動型メインロボット(10A)と、 その移動型メインロボット(10A)に対して装着可能であるとともに移動型メインロボット(10A)とは別に移動可能な移動型サブロボット(20A,20B,20C,20D)と、 その移動型サブロボット(20A,20B,20C,20D)に対して充電を実行する充電装置(30)とを備えた移動型ロボットシステムに係る。
すなわち、前記移動型メインロボット(10A)は、バッテリとして電気エネルギを供給するメインバッテリ(11)を備えており、 前記移動型サブロボット(20A,20B,20C,20D)は、前記の移動型メインロボット(10A)に装着された場合に前記メインバッテリ(11)へ電気エネルギを充電する内蔵バッテリを備えるとともに、 移動型メインロボット(10A)に装着されていない場合であって内蔵バッテリの電気エネルギが少ない場合には前記の充電装置(30)へ自律移動して充電する移動型ロボットシステムに係る。
「移動型メインロボット」は単数であるか、複数であるかは問わない。
【0010】
(作用)
移動型メインロボット(10A)は、メインバッテリ(11)の電気エネルギによって、移動して所定の作業を自律的に実行する。その作業によってメインバッテリ(11)の電気エネルギが減るが、移動型サブロボット(20D)が移動型メインロボット(10A)に装着されると、移動型サブロボット(20A)の内蔵バッテリの電気エネルギが前記メインバッテリ(11)へ充電される。
前記移動型メインロボット(10A)の内蔵バッテリの電気エネルギが放電して少ない場合は、その移動型サブロボット(20B)が、移動型メインロボット(10A)から離れて充電装置(30)へ自律移動して充電する(移動型サブロボット(20C))。充電後の移動型サブロボット(20D)は、再び移動型メインロボット(10A)へ自律移動して移動型メインロボット(10A)に装着され、内蔵バッテリの電気エネルギがメインバッテリ(11)へ充電される。
移動型メインロボット(10A)は、充電装置(30)から離れているにもかかわらずメインバッテリ(11)の電気エネルギが常に充電されることとなるので、所定の作業を継続的に実行することができる。
【0011】
(第二の発明)
第二の発明は、 移動して所定の作業を自律的に実行する移動型メインロボット(10B)と、 その移動型メインロボット(10B)に対して装着可能であるとともに移動型メインロボット(10B)とは別に移動可能な複数の移動型サブロボット(20A,20B,20C,20D)と、 その移動型サブロボット(20A,20B,20C,20D)に対して充電を実行する充電装置(30)とを備えた移動型ロボットシステムに係る。
前記移動型サブロボット(20A,20B,20C,20D)は、前記の移動型メインロボット(10B)に装着された場合にバッテリとして電気エネルギを供給する内蔵バッテリを備えるとともに、移動型メインロボット(10B)に装着されていない場合であって内蔵バッテリの電気エネルギが少ない場合には前記の充電装置(30)へ自律移動して充電することとする。
また、前記移動型メインロボット(10B)は、二つ以上の移動型サブロボット(20A,20B,20C,20D)を装着可能とし、少なくとも一つの移動型サブロボット(20A,20B,20C,20D)を装着してその内蔵バッテリをメインロボット(10B)のバッテリとして電気エネルギを供給することとする。
なお、ここでも「移動型メインロボット」は単数であるか、複数であるかは問わない。
【0012】
(作用)
移動型メインロボット(10B)は、装着した移動型サブロボット(20A)の内蔵バッテリの電気エネルギによって、移動して所定の作業を自律的に実行する。二つ以上の移動型サブロボット(20A)を装着できるので、一つの移動型サブロボット(20A)の内蔵バッテリの電気エネルギが少なくなっても、他の移動型サブロボット(20A)の電気エネルギが使用される。前記の電気エネルギが少なくなった移動型サブロボット(20B)は、移動型メインロボット(10B)から離れて充電装置(30)へ自律移動して充電する(移動型サブロボット(20C))。
充電した移動型サブロボット(20D)は移動型メインロボット(10B)へ自律移動し、移動型メインロボット(10B)に装着される。したがって、移動型メインロボット(10A)は、充電装置(30)から離れているにもかかわらず、一つ以上の移動型サブロボット(20A)から電気エネルギが常に提供されるので、所定の作業を継続的に実行することができる。
【0013】
(第一の発明および第二の発明のバリエーション1)
第一の発明および第二の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 充放電装置(30A)は、自然エネルギから発電した電気を移動型サブロボット(20C)に供給可能とするとともに、移動型サブロボット(20C)から電力系統への放電についても可能とする。
ここで、「自然エネルギから発電した電気」とは、たとえば太陽光発電による電気、風力発電による電気などである。
【0014】
(作用)
自然エネルギ発電装置(40)を、充放電装置(30A)を介して移動型サブロボット(20C) へ接続することにより、不安定な自然エネルギを安定的に利用すること、出力変動の安定化に寄与することができる。
【0015】
(第一の発明および第二の発明のバリエーション2)
第一の発明および第二の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記の移動型サブロボット(20A)は、その移動型サブロボット(20A)を自立移動させる駆動機構にて前記移動型メインロボット(10B)を駆動させるように装着可能に形成した。
【0016】
(作用)
移動型メインロボット(10B)においては、移動のための駆動装置を省略することができる。すなわち、移動型メインロボット(10B)に装着された移動型サブロボット(20A)における自律移動のための駆動装置によって、移動型メインロボット(10B)を移動させることができる。
【0017】
(第一の発明および第二の発明のバリエーション3)
第一の発明および第二の発明は、以下のようなバリエーションを提供することもできる。
すなわち、 前記移動型メインロボットを複数備えるとともに、 複数の移動型メインロボット(10B-1,10B-2)との双方向通信が可能な中央制御装置(90)を備える。 そして、その中央制御装置(90)は、移動型メインロボット(10B-1,10B-2)からのデータを受信するデータ受信手段と、移動型メインロボット(10B-1,10B-2)に対する制御信号等のデータを送信するデータ送信手段と、を備える。
前記データ送信手段が他の移動型メインロボット(10B-1)に対して支援命令を含む制御信号を送信することができる。
【0018】
(作用)
中央制御装置(90)は、複数の移動型メインロボット(10B-1,10B-2)からのデータを受信したり、複数の移動型メインロボット(10B-1,10B-2)に対してデータを送信したりすることができる。
一の移動型メインロボット(10B-2)からの支援要請を含んだデータを中央制御装置(90)に送信した場合には、中央制御装置(90)のデータ受信手段がその支援要請を含んだデータを受信する。 そして、中央制御装置(90)は、他の移動型メインロボット(10B-1)に対して支援命令を含む制御信号を、データ送信手段にて送信する。
当該制御信号を受信した移動型メインロボット(10B-1)は、たとえば、自らの稼働に支障のない移動型サブロボット(20E)を切り離す。その移動型サブロボット(20E)は、支援要請を発信した移動型メインロボット(10B-2)の元に移動し、移動型メインロボット(10B-2)の作業や移動を継続させることに寄与する電気エネルギを供給する。
【0019】
(第一の発明および第二の発明のバリエーション3における更なるバリエーション)
前記のバリエーション3に係る発明は、更に、以下のようにすることもできる。
すなわち、前記の中央制御装置(90)は、前記移動型メインロボット(10B-1,10B-2)から、当該移動型メインロボット(10B-1,10B-2)がどのような状態であるかを含む状態データを連続的に受信して蓄積する状態データベースを備える。 前記データ受信手段が一の移動型メインロボット(10B-2)からの支援要請を受信した場合には、その支援要請に的確な移動型メインロボットを前記状態データベースから抽出し、 前記データ送信手段は、その抽出された移動型メインロボット(10B-1)に対して支援命令を含む制御信号を送信する。
【0020】
(用語説明)
「状態データ」とは、たとえば、移動型メインロボットの現在位置、バッテリの残量などである。
「連続的に受信」とは、常時接続の場合の他、たとえば、毎分1回、5分ごとに1回というように定期的な場合も含む。 前記データ受信手段が一の移動型メインロボット(10B-2)からの支援要請を受信する場合のほか、中央制御装置(90)が状態データから移動型メインロボット(10B-2)に支援が必要である、と判断する場合もある。
【0021】
(作用)
中央制御装置(90)は、前記移動型メインロボット(10B-1,10B-2)から、当該移動型メインロボット(10B-1,10B-2)がどのような状態であるかを含む状態データを連続的に受信して蓄積している。 データ受信手段が一の移動型メインロボット(10B-2)からの支援要請を受信した場合、状態データベースにアクセスして当該一の移動型メインロボット(10B-2)がどこに位置しているかを把握する。そして、その位置情報やそのほかの状態データを用いて、支援要請を行う他の移動型メインロボット(10B-1)を抽出する。そして抽出した移動型メインロボット(10B-1)に対して、支援要請を含む制御信号を送信する。
【発明の効果】
【0022】
第一の発明によれば、移動型メインロボットは、そのメインバッテリに対して移動型サブロボットの自律移動によって確実に充電できる。したがって、充電による可動範囲の制限や作業内容の制限を受けずに、作業を継続することが可能となる移動型ロボットシステムを提供することができた。
また、第二の発明によれば、移動型メインロボットは、二つ以上の移動型サブロボットを装着するので、一つの移動型サブロボットにて電気エネルギを供給し、他の移動型サブロボットが自律移動して充電することができる。したがって、充電による可動範囲の制限や作業内容の制限を受けずに、作業を継続することが可能となる移動型ロボットシステムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る移動型ロボットシステムを示す概略説明図である。
【図2】本発明の第二の実施形態に係る移動型ロボットシステムを示す概略説明図である。
【図3】第一の実施形態および第二の実施形態に適用できる動作例を示す概略説明図である。
【図4】第一の実施形態および第二の実施形態に適用できる実施例を示す概略説明図である。
【図5】本発明の第三の実施形態に係る移動型ロボットシステムを示す概略説明図である。
【図6】本発明の第四の実施形態に係る移動型ロボットシステムを示す概略説明図である。
【図7】複数の移動型メインロボットを稼働させる移動型ロボットシステムを示す概略説明図である。
【図8】図7における中央制御装置の作動例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第一の実施形態ないしは第四の実施形態に係る移動型ロボットシステムについて図面を参照して説明する。ここで使用する図面は、図1から図8である。
【0025】
図1は、第一の実施形態に係る移動型ロボットシステムを示している。その移動型ロボットシステムは、基本的には移動型メインロボット10A、少なくとも一つ以上の移動型サブロボット20A,20B,20C,20D、充電装置30を備えている。
【0026】
また、移動型メインロボット10Aは、例えば室内の床面を車輪にて走行移動して所定の作業を自律的に実行する自律・移動型ロボットである。
こうした自律・移動型ロボットの主な用途は、パーソナルロボットおよび非製造業用ロボットである。パーソナルロボットには、家庭内で使用されるホームロボットなどの生活支援ロボット、医療・福祉ロボットなどの社会参加支援ロボットや教育・アミューズメント支援ロボットなどがある。
非製造業用ロボットには、オフィスロボット、消防・防災ロボット、運輸・倉庫用ロボット、ゴミ処理・清掃ロボット、サービス用ロボット、ライフメンテナンスロボット、医療・福祉ロボットなどがある。
【0027】
移動型メインロボット10Aは、図1では詳細な図示を省略しているが、移動のための移動機構を備えたメインロボット(MR)用構造本体、所定の作業を実行するためのロボットアームや把持部(ロボットハンド)などの部分構造体、移動や作業動作を制御するためのメインロボット(MR)用制御装置、外部情報を認識するための外部情報認識装置、前記移動機構や前記MR用制御装置などの各種装置へ電気エネルギを供給するためのバッテリ、などを備えている。
【0028】
本実施形態では、上記の移動機構、MR用構造本体、部分構造体、MR用制御装置、外部情報認識装置などは、特に限定されないが、前記バッテリとしては、電気エネルギを供給するメインバッテリ11が備えられている。
さらに、前記MR用構造本体の内部は、少なくとも一つ以上の移動型サブロボットを装着可能となっている。前記メインバッテリ11には、装着可能な移動型サブロボットに対応する数のコネクタ装置12を備えている。
図1では、四つの移動型サブロボット20A,20B,20C,20Dを図示しているが、移動型メインロボット10Aは、二つの移動型サブロボットを装着可能である。
【0029】
一方、移動型サブロボット20A,20B,20C,20Dは、移動型メインロボット10Aとは別に自律して移動可能である。例えば、移動のための移動機構を備えたサブロボット(SR)用構造本体、詳細な図示は省略しているが、自律的な移動や作業動作を制御するためのサブロボット(SR)用制御装置などを備えている。また、前記SR構造本体は、前記移動型メインロボット10Aに装着された場合に、前記メインバッテリ11へ電気エネルギを充電するための内蔵バッテリを備えている。 その内蔵バッテリによる移動型メインロボット10Aへの充電は、充電装置30へ自律移動が可能である電気エネルギを残すように制御される。
【0030】
移動型サブロボット20Bは、移動型メインロボット10Aに装着されていない場合であって前記内蔵バッテリの電気エネルギが少ない場合には、前記充電装置30へ自律移動して充電する。 その自律移動は、SR用制御装置またはMR用制御装置のいずれか、もしくは双方によって制御される。
【0031】
充電装置30は、前記移動型サブロボット20Dに対して充電を実行する装置である。 その充電装置30は、例えば、充電用電源と、その充電用電源を制御する充電用制御装置と、前記充電用電源から供給される電気エネルギを移動型サブロボット20Bの内蔵バッテリへ充電するための配線部材などを備えている。
【0032】
次に、上述した第一の実施形態の移動型ロボットシステムにおける作用を説明する。
移動型メインロボット10Aでは、メインバッテリ11の電気エネルギが、移動型メインロボット10Aを構成する各種機器へ供給される。例えば、外部情報認識装置にて外部情報を認識すると、所定の作業を実行するためにMR用制御装置によって制御される。MR用構造本体は、移動機構が作動して所定の位置へ移動し、部分構造体が作動して所定の作業を実行する。
【0033】
図1では、移動型サブロボット20Aが、移動型メインロボット10Aの内部のコネクタ装置12に装着されており、内蔵バッテリから電気エネルギがコネクタ装置12を経てメインバッテリ11へ充電される。すなわち、移動型サブロボット20Aの内蔵バッテリは、電気エネルギを移動型メインロボット10Aのメインバッテリ11に対して放電する。
移動型サブロボット20Bは、充電装置30へ自律移動が可能である電気エネルギを残しつつ、その内蔵バッテリの電気エネルギを放電した後に、移動型メインロボット10Aから離れて充電装置30へ向かって移動する。
移動型サブロボット20Cは、充電装置30にて充電されている状態を示している。 また、移動型サブロボット20Dは、充電装置30にて充電後に、移動型メインロボット10Aへ向かって移動している状態を示している。
【0034】
以上のように、移動型サブロボット20Aの少なくともひとつによって、内蔵バッテリの電気エネルギが、メインバッテリ11へ供給されて充電されるので、メインバッテリ11の電気エネルギが消耗しない。その結果、移動型メインロボット10Aは、充電のための充電装置への移動時間や充電中の時間が不要であり、作業を中断することなく、作業を継続することが可能となる。
【0035】
なお、第一の実施形態の移動型ロボットシステムでは、最低一つの移動型サブロボット20Aでも、本願発明の目的を達成する。 この場合は、移動型サブロボット20Aに関する制御として、以下のような制御が必要である。
すなわち、移動型メインロボット10Aのメインバッテリ11の電気エネルギを放電しきる前に、移動型サブロボット20Aが充電装置30へ自律移動して内蔵バッテリを充電する必要がある。 また、その充電後、再び移動型メインロボット10Aへ自律移動して、前記内蔵バッテリの電気エネルギをメインバッテリ11へ放電する必要がある。 この充放電を繰り返すのである。
【0036】
図2は、第二の実施形態に係る移動型ロボットシステムを示している。その移動型ロボットシステムは、基本的には移動型メインロボット10B、二つ以上の移動型サブロボット20A,20B,20C,20D、および充電装置30を備えている。
前述した第一の実施形態の移動型ロボットシステムと異なる点は、移動型メインロボット10Bがメインバッテリ11を備えておらず、少なくとも一つの移動型サブロボット20A(または20B,20C,20D)の内蔵バッテリが、常に移動型メインロボット10Bのバッテリとして機能することにある。そのために、二つ以上の移動型サブロボット20Aを装着可能とし,二つの移動型サブロボット20Aを装着した場合には二つのいずれか若しくは二つともを使用し、一つの移動型サブロボット20Aを装着しているのみである場合には、二つ目の移動型サブロボットは充電もしくは移動型メインロボット10Bへの移動をしている。
【0037】
移動型メインロボット10Bは、前述した移動型メインロボット10Aと同じように、走行移動して所定の作業を自律的に実行する自律・移動型ロボットである。移動機構を備えたMR用構造本体、部分構造体、MR用制御装置、外部情報認識装置などを備えている点は、前述した移動型メインロボット10Aと同様である。
【0038】
前記MR用構造本体の内部は、二つ以上の移動型サブロボットを装着可能となっている。前記メインバッテリ11には、前記移動型サブロボットに対応する数だけ装着可能なコネクタ装置12を備えている。
図2では、四つの移動型サブロボット20A,20B,20C,20Dを使用しており、移動型メインロボット10Bは、そのうちの二つの移動型サブロボットを装着可能である。移動型サブロボット20A,20B,20C,20Dは、図1にて説明したのと同様の構成である。例えば、前記移動型メインロボット10Bとは別に自律して移動可能である。また、前記移動型メインロボット10Bに装着された場合に、バッテリとして電気エネルギを供給する内蔵バッテリを備えている。
【0039】
移動型サブロボット20A,20B,20C,20Dは、移動型メインロボット10Bに装着されていない場合であって前記内蔵バッテリの電気エネルギが少ない場合には、前記充電装置30へ自律移動して充電する構成である。その内蔵バッテリによる移動型メインロボット10Aへの充電は、充電装置30へ自律移動が可能である電気エネルギを残すように制御される。
充電装置30は、図1にて説明したのと同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0040】
次に、上述した第二の実施形態の移動型ロボットシステムにおける作用を説明する。
移動型メインロボット10Bは、少なくとも一つの移動型サブロボット20A(または20B,20C,20D)の内蔵バッテリの電気エネルギが、移動型メインロボット10Bを構成する各種機器へ供給される。 例えば、外部情報認識装置にて外部情報を認識すると、所定の作業を実行するためにMR用制御装置によって制御される。MR用構造本体は、移動機構が作動して所定の位置へ移動し、部分構造体が作動して所定の作業を実行する。
【0041】
図2では、移動型サブロボット20Aが、移動型メインロボット10Bの内部のコネクタ装置12に装着されており、内蔵バッテリがバッテリとして機能し、その電気エネルギがコネクタ装置12を経て移動型メインロボット10Bへ供給される。すなわち、移動型サブロボット20Aの内蔵バッテリは、その電気エネルギを放電し、その電気エネルギによって移動型メインロボット10Bが稼働する。
移動型サブロボット20Bは、その内蔵バッテリの電気エネルギを放電して残り少なくなったため、移動型メインロボット10Bから離れて充電装置30へ向かって移動する。
移動型サブロボット20Cは、充電装置30にて充電されている状態を示している。移動型サブロボット20Dは、充電装置30にて充電後に、移動型メインロボット10Aへ向かって移動している状態を示している。
【0042】
以上のように、少なくとも一つの移動型サブロボット20A(または20B,20C,20D)の内蔵バッテリが、継続して移動型メインロボット10Bのバッテリとして機能する。前記内蔵バッテリの電気エネルギが、移動型メインロボット10Bを構成する各種機器へ供給される。 その結果、移動型メインロボット10Aは、充電のための充電装置への移動時間や充電中の時間が不要であり、作業を中断することなく、作業を継続することが可能となる。
【0043】
図3は、前述した第一の実施形態および第二の実施形態に係る移動型ロボットシステムの動作例を示している。
この例では、第一の実施形態に係る移動型メインロボット10Aを使用して説明する。図3に示す移動型メインロボットは、メインバッテリ11の図示を省略している。
移動型メインロボット10Aは、二つの移動型サブロボット20A,20Aを搭載してコネクタ装置12に装着している。一方の移動型サブロボット20Aは、内蔵バッテリの電気エネルギが放電されているが、蓄電容量の80%の電気エネルギが残っている。もう一方の移動型サブロボット20Aは、内蔵バッテリの電気エネルギが放電された後、蓄電容量の25%の電気エネルギが残っている状態である。
【0044】
上記の移動型サブロボット20Bは、電気エネルギが残っている状態であるが、コネクタ装置12および移動型メインロボット10Aから離れて、充電のために充電装置30へ向かって移動している。
以上のように、移動型サブロボット20A,20Aが二つ以上装着されている場合には、電気エネルギが残っている量の大きさにかかわらずに、放電および充電のために臨機応変に使用することができる。
【0045】
図4は、前述した第一の実施形態および第二の実施形態に係る移動型ロボットシステムにおいて適用できる実施例を示している。ここでは、移動型メインロボット10Aまたは移動型メインロボット10Bの図示を省略している。
この実施形態では、充放電装置30Aは、自然エネルギ発電装置40にて自然エネルギから発電した電気を、例えば移動型サブロボット20Cに供給可能とするものである。自然エネルギ発電装置40としては、例えば、風力発電装置41や太陽光発電装置42などがある。
【0046】
風力発電装置41は、地上に立設させたタワーと、そのタワーに固定されたナセルと、そのナセルに対してハブを介して回転自在に固定された複数のブレードを備えている。ブレードが回転することによって得られる電力を、電力系統へ供給するものである。
太陽光発電装置42は、複数の太陽電池パネルを直列および並列に配列した太陽電池モジュールから得られる直流電力が、パワーコンディショナ(PCS)にて交流電力に変換され、その電力を電力系統へ供給するものである。
風力発電装置41や太陽光発電装置42は、いずれも気象条件によって発電量が異なる。これを家庭や工場内で消費する場合も、電力会社へ売電する場合にも、発電量が不安定なので活用のための運用は複雑になりがちである。しかし、充放電装置30Aに接続中の移動型サブロボット20Cのバッテリを利用することにより、風力発電装置41や太陽光発電装置42にて発電した電気エネルギに対する出力変動抑制動作が可能である。
【0047】
図5は、第三の実施形態に係る移動型ロボットシステムを示している。その移動型ロボットシステムは、基本的には前述した第一の実施形態および第二の実施形態に係る移動型ロボットシステムとほぼ同様である。
異なる点は、移動型メインロボット10Aおよび移動型メインロボット10Bが、移動可能とするための支持輪13を備えているが、その支持輪13自身は、自律して移動するための駆動機構を有していない。支持輪13は、例えば四つの車輪で構成される。そのため、少なくとも一つ以上の移動型サブロボット20A(または20B,20C,20D)が、移動型メインロボット10Aおよび移動型メインロボット10Bの駆動機構を兼用することにある。
【0048】
この実施形態では、移動型メインロボット10Bを使用して説明する。図5では、その内部のコネクタ装置12などの図示を省略している。また、図1および図2にて説明したのと同様の構成である、四つの移動型サブロボット20A,20B,20C,20Dを使用している。
移動型サブロボット20A,20B,20C,20Dは、移動型メインロボット10Bに対して装着可能である。 図5では、二つの移動型サブロボット20A,20Bを装着した状態を示している。このとき、移動型サブロボット20A,20Bの駆動輪21が床面に接地する位置で、移動型メインロボット10Bに装着する。駆動輪21は、例えば四つの車輪で構成される。また、移動型サブロボット20A,20Bの内蔵バッテリは、コネクタ装置12(図示省略)に装着可能である。
【0049】
図5では、移動型サブロボット20Aの内蔵バッテリの電気エネルギが放電され、移動型メインロボット10Bの移動や作業のために用いられている。この時点では、移動型サブロボット20Aの移動機構は、駆動輪21を駆動して移動型メインロボット10Bを移動する。 一方、移動型サブロボット20Bは、移動型メインロボット10Bから離れ、充電のために充電装置30へ向かって移動する。
二つの移動型サブロボット20A,20Bが、移動型メインロボット10Bに装着されているときは、移動型サブロボット20A,20Bのいずれか一方または両者の駆動輪21が、移動型メインロボット10Bを移動させるのに用いられる。
【0050】
また、移動型サブロボット20Dは、充電装置30にて充電後に、移動型メインロボット10Bへ向かって移動し、その移動型メインロボット10Bにおいて前記移動型サブロボット20Bが装着されていた位置(空きスロット19)へ装着される直前の状態を示している。
【0051】
図6は、第四の実施形態に係る移動型ロボットシステムを示している。その移動型ロボットシステムは、基本的には前述した第一の実施形態および第二の実施形態に係る移動型ロボットシステムとほぼ同様である。異なる点は、移動型メインロボット10Aおよび移動型メインロボット10Bが、歩行あるいは車輪等で移動し、かつロボットアーム14やロボットハンド15(把持部)にて所定の作業を実行する人型のロボットである。
【0052】
図6では、移動型メインロボット10Bの符号を付して説明する。内部のコネクタ装置12などの図示を省略している。また、図1および図2にて説明したのと同様の構成である、四つの移動型サブロボット20A,20B,20C,20Dを使用している。
移動型サブロボット20A,20B,20C,20Dは、移動型メインロボット10Bに装着可能である。このとき、移動型サブロボット20A,20B,20C,20Dは、移動型メインロボット10Bのロボットアーム14およびロボットハンド15によって、移動型メインロボット10Bの内部へ装着および離脱する構成である。また、移動型サブロボット20A,20B,20C,20Dの内蔵バッテリは、コネクタ装置12(図示省略)に装着可能である。
【0053】
図6は、移動型サブロボット20A,20B,20C,20Dのいずれかを二箇所に装着でき、左側に移動型サブロボット20Aを装着し、右側の二点鎖線は未装着の状態を示している。前記移動型サブロボット20Aは、内蔵バッテリの電気エネルギを放電している状態である。また、移動型サブロボット20Dは、充電装置30にて充電後に、移動型メインロボット10Bへ向かって移動してきたものである。その移動型サブロボット20Dは、移動型メインロボット10Bのロボットアーム14およびロボットハンド15によって、図6の右側の二点鎖線の未装着箇所(空きスロット19)へ装着される。
【0054】
図7は、複数の移動型メインロボット10B-1、10B-2を稼働させる移動型ロボットシステムを示す。また、図8では、図7における中央制御装置の作動例を示す。
複数の移動型メインロボット10B-1、10B-2には通信手段が搭載されており、その通信手段によって中央制御装置90との双方向通信を連続的に行っている。
中央制御装置90は、複数の移動型メインロボット10B-1、10B-2から状態データ(現在位置の情報やバッテリの残量)を受信し、状態データベースに蓄積している。
【0055】
移動型メインロボット10B-2は充電装置30からの距離が遠い位置にて、一の移動型メインロボット10B-2におけるバッテリ(移動型サブロボット20A)の残量が乏しくなったとする。そのため、充電装置30にて充電している移動型サブロボット20Cを移動させていたのでは、移動型メインロボット10B-2がバッテリ切れを起こすおそれがある。
【0056】
移動型メインロボット10B-2は、バッテリ切れを起こすおそれがある旨を状態データとして中央制御装置90へ送信し、状態データベースにて移動型メインロボット10B-2の現在位置および他の移動型メインロボット10B-1を確認する。そして、他の移動型メインロボット10B-1が搭載している移動型サブロボット20が二つであり、二つとも満充電に近い状態(90%)であることを把握し、移動型メインロボット10B-1に支援命令を送信する。
【0057】
支援命令を受信した移動型メインロボット10B-1は、搭載している二つの移動型サブロボットのうちのひとつを切り離す。切り離された移動型サブロボット20Eは、移動型メインロボット10B-2に向かって移動し、移動型メインロボット10B-2に搭載される。これによって移動型メインロボット10B-2は、バッテリ切れを起こさずに済むこととなる。
なお、移動型サブロボット20Eが搭載された移動型メインロボット10B-2は、状態データとして中央制御装置90へその旨を発信し、中央制御装置90は支援命令が完遂されたことを確認する。
【0058】
詳しい図示は省略しているが、移動型メインロボット10B-1、10B-2や全ての移動型サブロボットには、自らの位置情報を把握するための機能を搭載している。そして、中央制御装置90に対する状態データとして送信したり、支援命令に伴う支援先の移動型メインロボットに向かって移動する際に用いる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、家庭における家電としてのロボットに関わるロボットや危険な場所において自律的に作業するロボットの製造業、それらロボットのメンテナンス業、それらロボットに用いる二次電池の製造業などにおいて、利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0060】
10A,10B 移動型メインロボット
11 メインバッテリ
12 コネクタ装置 13 支持輪
14 ロボットアーム 15 ロボットハンド(把持部)
19 空きスロット
20A 移動型サブロボット(メインロボットに組み込まれた状態)
20B 移動型サブロボット(充電装置に向かって移動している状態)
20C 移動型サブロボット(充電装置にて充電している状態)
20D 移動型サブロボット(メインロボットに向かって移動している状態)
30 充電装置
40 自然エネルギ発電装置 41 風力発電装置
42 太陽光発電装置
90 中央制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動して所定の作業を自律的に実行する移動型メインロボットと、その移動型メインロボットに対して装着可能であるとともに移動型メインロボットとは別に移動可能な移動型サブロボットと、その移動型サブロボットに対して充電を実行する充電装置とを備えた移動型ロボットシステムであって、
前記移動型メインロボットは、バッテリとして電気エネルギを供給するメインバッテリを備えており、
前記移動型サブロボットは、前記の移動型メインロボットに装着された場合に前記メインバッテリへ電気エネルギを充電する内蔵バッテリを備えるとともに、移動型メインロボットに装着されていない場合であって内蔵バッテリの電気エネルギが少ない場合には前記の充電装置へ自律移動して充電することとした移動型ロボットシステム。
【請求項2】
移動して所定の作業を自律的に実行する移動型メインロボットと、その移動型メインロボットに対して装着可能であるとともに移動型メインロボットとは別に移動可能な複数の移動型サブロボットと、その移動型サブロボットに対して充電を実行する充電装置とを備えた移動型ロボットシステムであって、
前記移動型サブロボットは、前記の移動型メインロボットに装着された場合にバッテリとして電気エネルギを供給する内蔵バッテリを備えるとともに、移動型メインロボットに装着されていない場合であって内蔵バッテリの電気エネルギが少ない場合には前記の充電装置へ自律移動して充電することとし、
前記移動型メインロボットは、二つ以上の移動型サブロボットを装着可能とし、少なくとも一つの移動型サブロボットを装着してその内蔵バッテリを移動型メインロボットのバッテリとして電気エネルギを供給することとした移動型ロボットシステム。
【請求項3】
前記の移動型サブロボットは、充放電装置を介して自然エネルギ発電装置または電力系統と接続することとした請求項1または請求項2に記載の移動型ロボットシステム。
【請求項4】
前記の移動型サブロボットは、その移動型サブロボットを自律移動させる駆動機構にて前記の移動型メインロボットを駆動させるように装着可能に形成した請求項1から請求項3のいずれかに記載の移動型ロボットシステム。
【請求項5】
前記移動型メインロボットを複数備えるとともに、 複数の移動型メインロボットとの双方向通信が可能な中央制御装置を備え、
その中央制御装置は、移動型メインロボットからのデータを受信するデータ受信手段と、移動型メインロボットに対する制御信号等のデータを送信するデータ送信手段と、を備え、
前記データ送信手段が他の移動型メインロボットに対して支援命令を含む制御信号を送信することとした請求項1から請求項4のいずれかに記載の移動型ロボットシステム。
【請求項6】
前記の中央制御装置は、前記移動型メインロボットから、当該移動型メインロボットがどのような状態であるかを含む状態データを連続的に受信して蓄積する状態データベースを備え、
前記データ受信手段が一の移動型メインロボットからの支援要請を受信した場合には、その支援要請に的確な移動型メインロボットを前記状態データベースから抽出し、
前記データ送信手段は、その抽出された移動型メインロボットに対して支援命令を含む制御信号を送信することとした請求項5に記載の移動型ロボットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−43072(P2012−43072A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181948(P2010−181948)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】