説明

移動式容器

【課題】低温液化ガスの輸送能力の向上と、加圧蒸発器の能力向上による低温液化ガスの荷下ろし作業性の向上とを両立できる移動式容器を提供すること。
【解決手段】低温液化ガスを貯蔵するタンク10と、そのタンク10に貯蔵された低温液化ガスが導入される伝熱管41を有する加圧蒸発器40とを備える移動式容器1において、加圧蒸発器40は伝熱管41の周囲に気体が強制供給される。その結果、伝熱管41の周囲の風速を大きくすることができ、伝熱管41と空気との伝熱を促進させ、熱抵抗を低減できる。よって加圧蒸発器40の熱通過率を大きくすることができる。これにより加圧蒸発器40を大型化することなく加圧蒸発器40の能力を高めることができる。その結果、低温液化ガスの輸送能力の向上と、加圧蒸発器40の能力向上による低温液化ガスの荷下ろし作業性の向上とを両立できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動式容器に関し、特に、低温液化ガスの輸送能力の向上と、加圧蒸発器の能力向上による低温液化ガスの荷下ろし作業性の向上とを両立できる移動式容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LNG等の低温液化ガスは、タンク(移動式容器)に充填された状態で車両等の輸送用機器により輸送される。輸送用機器または移動式容器に加圧蒸発器が搭載された自己加圧方式の移動式容器では、輸送先に到着すると、特許文献1に開示されるように加圧蒸発器を利用して低温液化ガスの荷下ろしを行う。具体的には、タンク内の低温液化ガスを加圧蒸発器に供給し、加圧蒸発器では低温液化ガスを外気温により蒸発気化させる。蒸発気化された低温液化ガス(以下「気化ガス」と称す)をタンクに還流することによりタンク内を加圧し、その圧力により低温液化ガスをタンクから排出させ荷下ろしを行う。そのため加圧蒸発器の能力(低温液化ガスを蒸発させてタンク内を加圧する能力)を高くできれば、タンクからの低温液化ガスの排出速度を大きくできる。即ち、低温液化ガスの荷下ろし作業性を向上させることができる。
【0003】
ここで、特許文献1に開示される技術では、低温液化ガスは加圧蒸発器で外気温により蒸発気化される。低温液化ガスと外気温との温度差は、加圧蒸発器の能力に影響を与える要因の一つであるが、低温液化ガスの種類と外気温とによって決まってしまう。そのため加圧蒸発器の能力を向上させるには、温度差以外の要因である加圧蒸発器の伝熱面積を大きくすることが有効である。加圧蒸発器を大型化すれば伝熱面積を大きくでき、それに比例して加圧蒸発器の能力を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−255525号公報(図4(a)等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の技術では、加圧蒸発器とタンクとを配置するスペースに制約があるため、加圧蒸発器が大型化されると、相対的にタンクを小さくしなければならず、低温液化ガスの積載量が少なくなるという問題点があった。また、加圧蒸発器が大型化されると加圧蒸発器の質量が増加するので、その質量分だけ低温液化ガスの積載量が減少し、その結果、低温液化ガスの輸送能力が低下するという問題点があった。以上のように低温液化ガスの輸送能力の向上と、加圧蒸発器の能力向上による低温液化ガスの荷下ろし作業性の向上とを両立させることは困難であった。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、低温液化ガスの輸送能力の向上と、加圧蒸発器の能力向上による低温液化ガスの荷下ろし作業性の向上とを両立できる移動式容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1記載の移動式容器によれば、低温液化ガスを貯蔵するタンクと、そのタンクに貯蔵された低温液化ガスが導入される伝熱管を有する加圧蒸発器とを備えるものにおいて、気体供給部から伝熱管の周囲に気体が強制供給される。その結果、伝熱管の周囲の風速を大きくすることができ、伝熱管と気体との伝熱を促進させ、熱抵抗を低減できる。よって加圧蒸発器の熱通過率を大きくすることができる。これにより加圧蒸発器を大型化することなく加圧蒸発器の能力を高めることができる。その結果、低温液化ガスの輸送能力の向上と、加圧蒸発器の能力向上による低温液化ガスの荷下ろし作業性の向上とを両立できる効果がある。
【0008】
また、加圧蒸発器は、伝熱管と交差する方向から気体が強制供給されるので、伝熱管の流路長さと気体の流路長さとを独立に設定できる。そのため、制約を受けながらもスペースを有効活用することができ、タンクに併設される加圧蒸発器を可能な限り大きくすることができる。その結果、輸送用機器の限られたスペースを有効活用しつつ加圧蒸発器の能力を向上できる効果がある。
【0009】
請求項2記載の移動式容器によれば、第1接続部に窒素ガスボンベが接続されて気体供給部から伝熱管の周囲に窒素ガスが供給される。これにより請求項1の効果に加え、伝熱管の着霜を抑制できる効果がある。即ち、伝熱管の表面温度が水の氷点である0℃以下に下がると、伝熱管の周囲の水蒸気が伝熱管の表面に熱を奪われて伝熱管に着霜する。着霜した霜が成長して霜層が形成されると、霜層が断熱層として作用し、伝熱管と空気との伝熱が低下し熱抵抗が増大する。さらに霜層が成長すると、伝熱管の周囲の流路面積が減少して風量が低下し、加圧蒸発器の能力が大幅に低下することがある。
【0010】
これに対し、窒素ガスボンベからの乾燥した窒素ガスを伝熱管の周囲に強制供給することにより、着霜の原因となる水蒸気の量を減らすことができるので、伝熱管の着霜を抑制し、荷下ろし作業中に加圧蒸発器の能力が低下することを防止できる効果がある。
【0011】
請求項3記載の移動式容器によれば、タンクの天部および底部にそれぞれ接続された導圧管にタンクの圧力が導入され、それら導圧管の圧力から液面計によりタンクに貯蔵された低温液化ガスの液面の高さが検出される。
【0012】
ここで、タンク内の液の移動によってタンク内に貯蔵された低温液化ガスが導圧管に浸入すると、液頭に誤差が生じ、液面の高さを正確に測定できなくなる。これを防ぐため、導圧管に浸入した低温液化ガス(ドレン)を大気放出すると、低温液化ガスが可燃性ガスの場合には安全性に問題がある。
【0013】
これに対し、窒素ガスボンベを第2接続部に接続して導圧管からタンクに向けて窒素ガスを供給することにより、導圧管に浸入した低温液化ガスを大気放出することなくタンクに戻すことができる。導圧管に浸入した低温液化ガスを大気放出しないので、請求項1又は2の効果に加え、低温液化ガスが可燃性ガスの場合でも安全性を確保できると共に、液頭の誤差の原因となる導圧管内のドレンを除去することで液面の高さを正確に検出できる効果がある。
【0014】
請求項4記載の移動式容器によれば、タンクに貯蔵された低温液化ガスを荷下ろし側施設に移送する連通管に、第2接続部に接続された窒素ガスボンベにより窒素ガスが供給される。そのため、連通管を荷下ろし側施設の配管に接続した後、窒素ガスボンベから連通管に窒素ガスを供給することにより、連通管と荷下ろし側施設の配管との気密性を確認できると共に、連通管および荷下ろし側施設の配管内の空気−窒素置換を行うことができる。これにより請求項1から3のいずれかの効果に加え、荷下ろし側施設に窒素ガス供給設備がなくても、これらの気密性の確認や空気−窒素置換を行うことができる効果がある。
【0015】
請求項5記載の移動式容器によれば、気体供給部から伝熱管の周囲に気体を間欠的に強制供給する間欠供給装置を備えているので、伝熱管に気体を間欠的に供給することで、伝熱管の着霜を抑制できる効果がある。即ち、伝熱管の表面温度が水の氷点である0℃以下に下がると、伝熱管の周囲の水蒸気が伝熱管の表面に熱を奪われて伝熱管に着霜する。着霜した霜が成長して霜層が形成されると、霜層が断熱層として作用し、伝熱管と空気との伝熱が低下し熱抵抗が増大する。さらに霜層が成長すると、伝熱管の周囲の流路面積が減少して風量が低下し、加圧蒸発器の能力が大幅に低下することがある。
【0016】
これに対し、伝熱管の周囲に気体を間欠的に強制供給する間欠供給装置により、伝熱管の周囲の気体の風速を間欠的に増大させることができる。その結果、請求項1から4のいずれかの効果に加え、伝熱管の着霜を抑制でき、荷下ろし作業中に加圧蒸発器の能力が低下することを防止できる効果がある。
【0017】
請求項6記載の移動式容器によれば、気体供給部から加圧蒸発器に強制供給される気体は、輸送用機器に連動して作動する圧縮機により作られる圧縮空気であるので、圧縮機を有効に活用して、風速の大きな気体を加圧蒸発器に容易に供給できる。これにより、請求項1の効果に加え、加圧蒸発器の能力を容易に向上できる効果がある。
【0018】
請求項7記載の移動式容器によれば、圧縮空気は空気タンクに蓄えられているので、請求項6の効果に加え、低温液化ガスの荷下ろしのときに圧縮機を作動させることなく圧縮空気を加圧蒸発器に供給できる効果がある。
【0019】
請求項8記載の移動式容器によれば、加圧蒸発器に強制供給される気体は、低温液化ガスの荷下ろし側施設から供給されるので、請求項1の効果に加え、圧縮機や空気タンク等の気体を供給する装置を移動式容器側に準備しなくても、加圧蒸発器の能力を高められる効果がある。
【0020】
請求項9記載の移動式容器によれば、加圧蒸発器に強制供給される気体は、輸送用機器に連動して作動するヒータコア又はコンデンサーにより加温されるので、請求項1から8のいずれかの効果に加え、低温液化ガスと気体との温度差を大きくすることができ、加圧蒸発器の能力を向上できる効果がある。また、低温液化ガスと気体との温度差を大きくできることで、伝熱管の表面温度を上昇させ、伝熱管への着霜を防止できる効果がある。
【0021】
請求項10記載の移動式容器によれば、加圧蒸発器に強制供給される気体は、輸送用機器が発生する排ガスが含まれているので、請求項1から9のいずれかの効果に加え、低温液化ガスと気体との温度差を大きくすることができ、加圧蒸発器の能力を向上できる効果がある。また、低温液化ガスと気体との温度差を大きくできることで、伝熱管の表面温度を上昇させ、伝熱管への着霜を防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】輸送用機器が連結された第1実施の形態における移動式容器の側面図である。
【図2】移動式容器の配管構造を示す配管図である。
【図3】(a)は加圧蒸発器の平面図であり、(b)は加圧蒸発器の側面図であり、(c)は加圧蒸発器の正面図であり、(d)は図3(c)のIIId−IIId線における伝熱管の断面図である。
【図4】第2実施の形態における移動式容器の一部の模式図である。
【図5】(a)は第3実施の形態における移動式容器の一部の模式図であり、(b)は第4実施の形態における移動式容器の一部の模式図である。
【図6】第5実施の形態における移動式容器の配管構造を示す配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、輸送用機器Tが連結された第1実施の形態における移動式容器1の概略構造について説明する。図1は輸送用機器Tが連結された第1実施の形態における移動式容器1の側面図である。なお、図1では、タンクセミトレーラ(移動式容器)がトラクタ(輸送用機器)に連結された状態を図示している。
【0024】
移動式容器(タンクセミトレーラ)1は、輸送用機器(トラクタ)Tに牽引されて低温液化ガスを運搬するセミトレーラであり、図1に示すように、低温液化ガス(LNGなど)を収容するタンク10と、そのタンク10を支持するフレーム20と、そのフレーム20を支持する車輪30とを主に備え、フレーム20が連結装置21を介して輸送用機器Tに連結されるように構成されている。タンク10の下部のフレーム20には、タンク10に収容された低温液化ガスを外部との熱交換により気化させてタンク10から取り出すための加圧蒸発器40が配設されている。
【0025】
次に図2を参照して、移動式容器1の配管構造について説明する。図2は移動式容器1の配管構造を示す配管図である。図2に示すように、低温液化ガスが貯蔵されるタンク10は、金属製の内容器11と、その外部全体を覆う金属製の外容器12と、内容器11の上部に配設される散布管13とを備えて構成されている。内容器11と外容器12との間はパーライト等の断熱材が充填されると共に真空断熱構造とされている。散布管13はクールダウンのときに小流量の低温液化ガスをタンクに散布するための部材である。
【0026】
連通口51は連通管52の一端部に形成され、タンク10に低温液化ガスを充填したり、タンク10に貯蔵された低温液化ガスを外部へ送出したりする際に使用される部位であり、タンク10に低温液化ガスを供給する積込側施設(図示せず)の配管や、タンク10から低温液化ガスを送出する荷下ろし側施設(図示せず)の配管が連結される。連通管52には遮断弁53が配設されている。
【0027】
遮断弁53は、配管系統等に異常が発生した場合など、流路を遮断して事故を未然に防止するため、即座に閉止できる装置である。開閉弁54は手動で開閉される弁であり、開閉弁54が開弁されている状態では、空気タンク(図示せず)から作動流体が遮断弁53に供給されることで遮断弁53は開弁されている。開閉弁54を閉止するとバネ等の駆動部(図示せず)の動作により遮断弁53は速やかに閉止される。空気タンク(図示せず)は輸送用機器T(図1参照)に搭載される圧縮機55と連通されている。空気タンク(図示せず)は、輸送用機器Tのサスペンションや輸送用機器Tを制動する空気ブレーキの作動流体である圧縮空気を貯蔵するタンクとしても機能する。この空気タンク(図示せず)とは別に、圧縮器55に連通される空気タンク56がフレーム20に配設されている。
【0028】
上部連通管57及び下部連通管58は、連通管52の他端部から2つに分岐される配管である。上部連通管57は、小流量の低温液化ガスをタンク10の上部から導入するための配管であり、外容器12及び内容器11を貫通し、内容器11の上部に配設される散布管13に接続されている。上部連通管57には、開度を手動で調整可能に構成される上部弁59が配設されている。
【0029】
下部連通管58は、タンク10の底部から低温液化ガスを導入したり、タンク10に貯蔵された低温液化ガスを外部へ送出したりする際に使用される配管であり、外容器12を貫通し内容器11の底部に連通されている。下部連通管58には、開度を手動で調整可能に構成される下部弁60が配設されている。
【0030】
通気管61は、低温液化ガスの気化により発生したガス(ボイルオフガス)が流通する配管であり、一端部が内容器11の天部に連通され、他端部にガス回収口62が形成されている。ガス回収口62は、積込側施設や荷下ろし側施設(いずれも図示せず)の配管が連結される部位である。通気管61には、開度を調整可能に構成される通気弁63が配設されている。
【0031】
加圧管64は、タンク10の底部から低温液化ガスを抜き出すと共に、蒸発気化した加圧用の低温液化ガス(気化ガス)をタンク10に還流するための配管であり、加圧蒸発器40が配設されている。加圧管64は、一端が内容器11の底部に連通され、他端が通気弁63の上流(タンク10側)の通気管61に連通されており、加圧蒸発器40の上流に第1加圧弁65が、加圧蒸発器40の下流に第2加圧弁66がそれぞれ配設されている。
【0032】
気体供給管67は、加圧蒸発器40に気体(圧縮空気)を導く配管であり、一端が空気タンク56に連通されており、気体供給管67の流路を開閉する開閉弁(図示せず)及び間欠供給装置68が配設されている。
【0033】
間欠供給装置68は流体を下流に間欠的に供給する装置であり、本実施の形態では、弁体を間欠的に開閉する間欠作動弁により構成されている。間欠作動弁としては、例えば特許第3978659号公報等に開示の公知の装置を用いることができる。特許第3978659号公報に開示の装置(間欠作動弁)は、開閉弁(図示せず)により気体供給管67の流路が開かれ、空気タンク56から気体が供給されると、弁体の開閉動作を自動的に繰り返すものである。なお、間欠供給装置68はこれに限定されず、スピードコントローラ等を組み合わせることにより、弁体の開閉動作を繰り返すように構成される装置を用いることも可能である。噴射装置(気体供給部)69は、気体供給管67の他端が連通されており、空気タンク56から気体供給管67を通り間欠供給装置68を介して供給される気体(圧縮空気)を加圧蒸発器40に向けて噴射する装置である。
【0034】
以上のように構成される移動式容器1により荷下ろし側施設(図示せず)で実行される荷下ろし作業について説明する。荷下ろし作業は、タンク10に充填された低温液化ガスを荷下ろし側施設の貯槽(図示せず)に充填する作業である。荷下ろし作業では、連通口51に荷下ろし側施設の配管(図示せず)を接続すると共に、上部弁59及び通気弁63を閉止し、下部弁60を開弁する。第1加圧弁65及び第2加圧弁66を開弁すると、タンク10と加圧蒸発器40とのヘッド圧の差(液面の高低差)によりタンク10内の低温液化ガスが加圧管64を通って加圧蒸発器40に導かれる。気体供給管67に配設される開閉弁(図示せず)を開弁すると、空気タンク56から圧縮空気が気体供給管67を通って間欠供給装置68に供給され、間欠供給装置68は圧縮空気を間欠的に噴射装置69に供給する。これにより加圧蒸発器40に気体(圧縮空気)が強制供給される。
【0035】
加圧蒸発器40では、低温液化ガスと気体との熱交換により低温液化ガスが蒸発気化され、蒸発気化された低温液化ガス(気化ガス)が加圧管64を通って通気管61からタンク10に還流される。還流された気化ガスによりタンク10が昇圧され、タンク10内の低温液化ガスは下部連通管58に送出される。タンク10から下部連通管58に送出された低温液化ガスは、連通管52及び連通口51から荷下ろし側施設の配管(図示せず)に供給される。
【0036】
以上のように加圧蒸発器40に気体(圧縮空気)を強制供給するので、加圧蒸発器40の空気との伝熱を促進させ加圧蒸発器40の熱抵抗を低減できる。よって加圧蒸発器40の熱通過率を大きくすることができる。これにより加圧蒸発器40を大型化することなく加圧蒸発器40の能力を高めることができる。その結果、低温液化ガスの輸送能力の向上と、加圧蒸発器40の能力向上による低温液化ガスの荷下ろし作業性の向上とを両立できる。
【0037】
ここで、加圧蒸発器40の伝熱管41(図3参照)に温水や蒸気を供給して能力向上を図ることも可能であるが、その場合は、加圧蒸発器40に温水や蒸気を流通するための流路の設計が煩雑であると共に、メンテナンスも煩雑化するという問題がある。これに対し、加圧蒸発器40に気体を強制供給する場合は、外気温により熱交換をする既存の空温式の加圧蒸発器をそのまま利用することができると共に、特別なメンテナンスを必要としないという利点がある。
【0038】
また、移動式容器1は気体供給管67に配設される間欠供給装置68を備えているので、加圧蒸発器40に気体を間欠的に供給できる。これにより伝熱管41(図3参照)の周囲の気体の風速を間欠的に増大させることができる。その結果、伝熱管41の周囲に滞留する気体を入れ替えることができるので、伝熱管41の着霜を抑制できる。伝熱管41に着霜して形成された霜層が成長すると加圧蒸発器40の能力が大幅に低下するところ、着霜を抑制できるので、荷下ろし作業中に加圧蒸発器40の能力が低下することを防止できる。
【0039】
また、圧縮空気を間欠的に加圧蒸発器40に供給することにより、連続的に圧縮空気を供給する場合と比較して、小容量の圧縮空気で伝熱管41の着霜を抑制して荷下ろし作業中の加圧蒸発器40の能力低下を防止できる。小容量の圧縮空気で済むため、空気タンク56に蓄えられた圧縮空気の消費量を抑制できる。その結果、移動式容器1に搭載される空気タンク56の容量が小さい場合であっても、荷下ろし作業中に圧縮空気を加圧蒸発器40に供給できなくなる等の不具合が生じることを抑制できる。
【0040】
また、圧縮空気を用いるので、風速の大きな気体を加圧蒸発器40に容易に供給できる。その結果、加圧蒸発器40の能力を容易に向上できる。その圧縮空気は輸送用機器Tに連動して作動する圧縮機55により作られるので、輸送用機器Tの圧縮機55を有効に活用できる。
【0041】
また、圧縮空気は空気タンク56に蓄えられているので、荷下ろし作業中に圧縮機55を作動させるために輸送用機器Tのエンジン等を駆動させる操作を不要にできる。その結果、荷下ろし作業中は輸送用機器Tのエンジン等を停止させることができるので、電気火花等の点火エネルギーが発生することを防止できる。これによりLNG、液体水素等の可燃性物質を低温液化ガスとして取り扱うことを可能にできる。
【0042】
さらに、空気タンク56は遮断弁53の作動流体である圧縮空気を貯蔵する空気タンク(図示せず)とは別に設けられているので、空気タンク56に貯蔵される空気を加圧蒸発器40に供給して消費しても、遮断弁53の動作の安定性を確保できる。
【0043】
次に図3を参照して、加圧蒸発器40について説明する。図3(a)は加圧蒸発器40の平面図であり、図3(b)は加圧蒸発器40の側面図であり、図3(c)は加圧蒸発器40の正面図であり、図3(d)は図3(c)のIIId−IIId線における伝熱管41の断面図である。
【0044】
図3(a)から図3(c)に示すように、加圧蒸発器40は、上下左右に所定間隔をあけて互いに平行となるように水平方向に配設される複数本の直線状の伝熱管(直管)41と、上下に位置する伝熱管41の端部同士を接続し蛇行するように連通させるベンド管(曲管)42と、伝熱管41と略直交して水平方向に配設されると共に伝熱管41の複数の端部が纏めて連通されるヘッダ管43,45と、そのヘッダ管43,45にそれぞれ連通される接続口44,46とを備えている。接続口44,46は圧力管64(図2参照)に接続されている。
【0045】
本実施の形態では、加圧管64の上流側(第1加圧弁65側)が接続口46に接続され、加圧管64の下流側(第2加圧弁66側)が接続口44に接続されるように構成されている。その結果、低温液化ガスは接続口46から加圧蒸発器40に導かれ、伝熱管41及びベンド管42を上昇しつつ蒸発気化され、気化ガスは接続口44から送出される。
【0046】
図3(a)及び図3(c)に示すように、伝熱管41は、鉛直方向に立設される板状の支持部47に保持されている。伝熱管41と支持部47との間には、熱伝導を妨げる断熱材(図示せず)が介装されている。また、図3(d)に示すように、伝熱管41は、伝熱面積を拡大するフィン41aが表面に突設されている。本実施の形態では、フィン41aは伝熱管41の周囲に螺旋状に形成されている。
【0047】
また、図3に示すように、加圧蒸発器40は、支持部47から上方に延設される延設部47aを備えている。延設部47aは噴射装置69の両端を支持する部材である。これにより噴射装置69は、伝熱管41の上方に伝熱管41と略平行に位置される。
【0048】
噴射装置69(気体供給部)は、図3(a)及び図3(c)に示すように、上下方向に貫通形成される孔部69aを有している。噴射装置69は、気体供給管67(図2参照)により側方から気体(圧縮空気)が供給され、孔部69aの下方から噴射する。この噴射装置69内の気流が孔部69aの上方から周囲の空気を吸引し、気体供給管67から供給される気体を増幅して、孔部69aの下方から伝熱管41に向けて気体を噴射する。
【0049】
これにより噴射装置69は、気体供給管67から供給される小流量の気体により、大流量の気体を伝熱管41に噴射することができる。気体供給管67から噴射装置69に供給する気体は小流量でよいので、空気タンク56に蓄えられた圧縮空気の消費量を抑制できる。その結果、移動式容器1に搭載される空気タンク56の容量が小さい場合であっても、荷下ろし作業中に圧縮空気を加圧蒸発器40に供給できなくなる等の不具合が生じることを抑制できる。
【0050】
また、加圧蒸発器40は、水平方向に配設される伝熱管41と交差する方向(鉛直方向)から気体が強制供給されるものであり、低温液化ガスと気体とが直交するように流れる直交流式であるから、気体の流路長さ(伝熱管41の上下方向の距離)と伝熱管41の流路長さとを独立に設定できる。そのため、移動式容器1のスペースを有効活用することができ、タンク10に併設される加圧蒸発器40をスペースが許す限り大きくすることができる。その結果、加圧蒸発器40の伝熱面積を可能な限り大きくすることにより、加圧蒸発器40の能力を向上できる。
【0051】
また、低温液化ガスは、加圧蒸発器40の下部から伝熱管41に導入され伝熱管41及びベンド管42を上昇する。一方、気体は、噴射装置69から下向きに噴射され、伝熱管41の周囲を下降する。このため低温液化ガスを気体の出口温度(伝熱管41の下部を通過するときの気体の温度)より高い温度まで加温することができる。その結果、気化ガスの体積を大きくすることができ、タンク10を効率良く昇圧して、低温液化ガスの排出効率を向上できる。
【0052】
加圧蒸発器40は、低温液化ガスの出口(接続口44)が、噴射装置69から供給される気体の上流側に位置する一方、低温液化ガスの入口(接続口46)が、供給される気体の下流側に位置し、供給される気体に対して低温液化ガスが対向流となるように構成されている。そのため、加圧蒸発器40の出口(接続口44)近くの低温液化ガスの温度を、加圧蒸発器40の入口(接続口46)近くの低温液化ガスの温度より高温にできる。その結果、加圧蒸発器40の入口(接続口46)近くの上流側の伝熱管41に氷結や着霜が生じても、加圧蒸発器40の出口(接続口44)近くの下流側の伝熱管41に氷結や着霜が生じることを抑制できる。そのため、全ての伝熱管41に氷結や着霜が生じて熱交換効率が大幅に低下することを防止できる。
【0053】
また、図3(d)に示すように、フィン41aは伝熱管41の周囲に螺旋状に形成されているので、伝熱管41の周囲を上から下へと強制供給される気体が圧力降下をおこすのを防止できる。これにより伝熱管41と空気との伝熱が悪化することが防止され、加圧蒸発器40の能力を向上できる。
【0054】
次に図4を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、圧縮機55で作られた圧縮空気を空気タンク56に蓄え、空気タンク56に蓄えた圧縮空気を加圧蒸発器40の伝熱管41の周囲に強制供給する場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、空気タンクに圧縮空気を蓄えることなく加圧蒸発器140に強制供給すると共に、強制供給する気体をヒータコア82(輸送用機器T(図1参照)の暖房装置の一部)で加温する場合について説明する。
【0055】
図4は第2実施の形態における移動式容器の一部の模式図である。なお、図4では移動式容器の一部の加圧蒸発器140を図示し、その他のタンクや配管等の図示は省略する。また、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0056】
輸送用機器T(図1参照)のエンジン71は、プーリ72,74及びベルト73を介して圧縮機75を作動する。エンジン71及び圧縮機75はエアクリーナ76を介して吸入管路77,78から空気を吸入し、圧縮機75は吸入した空気を圧縮して吐出管路79から温風吹出し装置80へ吐出する。温風吹出し装置80には、輸送用機器Tの室内あるいは室外の空気を温風吹出し装置80内に導入する送風機81と、導入された空気(圧縮空気を含む)と接触し熱交換するヒータコア82が配設されている。空気(圧縮空気を含む)はヒータコア82により加温され、温風吹出し装置80から加圧蒸発器140に強制供給される。
【0057】
エンジン71は、冷却水が流れる水冷ジャケット83が表面に装着され、冷却水はラジエータ84により冷却される。第1冷却水路85は、ラジエータ84から水冷ジャケット83に冷却水が流れる水路であり、サーモスタットバルブ86及び冷却水ポンプ87が配設されている。第2冷却水路88は、水冷ジャケット83からラジエータ84に冷却水が流れる水路であり、水冷ジャケット83とラジエータ84とを連通する。バイパス管89は、冷却水ポンプ87の下流の第1冷却水路85と第2冷却水路88とを連通する水路である。
【0058】
第1暖房水路90は、水冷ジャケット83からヒータコア82に冷却水が流れる水路であり、水冷ジャケット83及びヒータコア82と連通する。第2暖房水路91は、ヒータコア82から第1冷却水路85に冷却水が流れる水路であり、ヒータコア82とサーモスタットバルブ86とを連通する。サーモスタットバルブ86は、冷却水の温度が所定の温度以下のときは閉止され、第2暖房水路91と第1冷却水路85とを連通する一方、冷却水の温度が所定の温度を越えると開放され、ラジエータ84と水冷ジャケット83とを連通しラジエータ84へ冷却水を循環させるバルブである。
【0059】
以上のように構成される第2実施の形態における移動式容器では、エンジン71の作動に連動して圧縮機75が作動され、温風吹出し装置80から圧縮空気が加圧蒸発器140に強制供給される。圧縮機75によって断熱圧縮されて得られる圧縮空気は外気温に対して温度が上昇するので、加圧蒸発器140に供給される低温液化ガスと気体(圧縮空気)との温度差を大きくすることができ、加圧蒸発器140の能力を向上できる。さらに、低温液化ガスと気体(圧縮空気)との温度差を大きくできることで、伝熱管41(図3参照)の表面温度を上昇させ、伝熱管41への着霜を防止できる。
【0060】
ここで、冷却水の温度が所定の温度以下の場合にはサーモスタットバルブ86が閉止され、冷却水は第1暖房水路90及び第2暖房水路91を循環される。その結果、水冷ジャケット83で加温された冷却水がヒータコア82を通過して循環される。冷却水の温度が所定の温度を超えるとサーモスタットバルブ86が開放され、冷却水はラジエータ84で冷却されつつ第1暖房水路90及び第2暖房水路91を循環される。これらの結果、水冷ジャケット83で加温された冷却水がヒータコア82を通過して循環され、ヒータコア82が加温される。
【0061】
これにより、送風機81により温風吹出し装置80に導入された空気はヒータコア82により加温され、温風吹出し装置80から加圧蒸発器140に強制供給される。その結果、加圧蒸発器140に強制供給される気体と低温液化ガスとの温度差を大きくすることができ、加圧蒸発器140の能力を向上できる。伝熱管41(図3参照)の表面温度を上昇させることで、伝熱管41への着霜も防止できる。
【0062】
また、圧縮機75により温風吹出し装置80に導入された気体(圧縮空気)はヒータコア82により加温され、温風吹出し装置80から加圧蒸発器140に強制供給される。これにより、加圧蒸発器140に強制供給される気体(圧縮空気)と低温液化ガスとの温度差を大きくすることができ、加圧蒸発器140の能力を向上できる。伝熱管41(図3参照)の表面温度を上昇させることで、伝熱管41への着霜も防止できる。
【0063】
次に図5を参照して、第3実施の形態および第4実施の形態について説明する。第2実施の形態では、ヒータコア82(暖房装置の一部)で加温した気体を加圧蒸発器140に強制供給する場合について説明した。これに対し、第3実施の形態では、輸送用機器T(図1参照)が発生する排ガスを加圧蒸発器240に強制供給する場合について説明する。また、第4実施の形態では、強制供給する気体をコンデンサー101(輸送用機器Tの冷房装置の一部)で加温する場合について説明する。
【0064】
図5(a)は第3実施の形態における移動式容器の一部の模式図であり、図5(b)は第4実施の形態における移動式容器の一部の模式図である。なお、図5では移動式容器の一部の加圧蒸発器240,340を図示し、その他のタンクや配管等の図示は省略する。また、第1実施の形態および第2実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0065】
まず図5(a)を参照して、第3実施の形態について説明する。図5(a)に示すように、輸送用機器T(図1参照)のエンジン71は、エアクリーナ76を介して吸入管路77から空気を吸入し、燃料を燃焼した後の排ガスを排ガス管92から排出する。排ガス管92から排出される排ガス(気体)を加圧蒸発器240に強制供給することで、加圧蒸発器240に供給される低温液化ガスと気体との温度差を大きくすることができ、廃熱を有効に利用して加圧蒸発器240の能力を向上できる。また、低温液化ガスと気体との温度差を大きくできることで、伝熱管41(図3参照)の表面温度を上昇させ、伝熱管41への着霜を防止できる。
【0066】
次に図5(b)を参照して、第4実施の形態について説明する。輸送用機器Tの冷房装置100は、図5(b)に示すように、圧縮機175とコンデンサー101と膨張弁102と冷却器103と送風機104とを主に備えている。
【0067】
圧縮機175は冷媒を圧縮するための装置であり、エンジン71(図4参照)に連動して作動する。コンデンサー101は圧縮機175から送られた高温・高圧の冷媒を冷却するための装置であり、冷媒が管路内を流通するように形成されている。膨張弁102は冷媒を噴射するための装置であり、ノズルとダイアフラム(いずれも図示せず)とを備えて構成されている。冷却器103は空気を冷却するための装置であり、冷媒が管路内を流通するように形成されている。送風機104は空気を輸送用機器T(図1参照)の室内に送風するための装置である。
【0068】
冷房装置100では、冷媒を図5(b)の実線で示す向きに従って循環させることで、冷媒を圧縮・膨張させて冷却器103の周りの空気を冷却する。一方、高温・高圧の冷媒によりコンデンサー101の周囲の空気は加温されるので、加温された空気を送風機105により吸引して、加圧蒸発器340に強制供給する。
【0069】
その結果、加圧蒸発器340に強制供給される気体と低温液化ガスとの温度差を大きくすることができ、廃熱を有効に利用して加圧蒸発器340の能力を向上できる。伝熱管41(図3参照)の表面温度を上昇させることで、伝熱管41への着霜も防止できる。
【0070】
次に図6を参照して、第5実施の形態について説明する。第1実施の形態から第4実施の形態では、加圧蒸発器140,240,340に大気を強制供給する場合について説明した。これに対し第5実施の形態では、移動式容器401に窒素ガスボンベ423を搭載し、その窒素ガスボンベ423から加圧蒸発器40に窒素ガスを強制供給する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図6は第5実施の形態における移動式容器401の配管構造を示す配管図である。
【0071】
図6において、移動式容器(タンクセミトレーラ)401は、輸送用機器(トラクタ)T(図1参照)に牽引されて低温液化ガスを運搬するセミトレーラである。遮断弁402(加圧管遮断弁)は、異常が発生した場合などに加圧管64の流路を遮断するためのバルブであり、第1加圧弁65より下流側であって加圧蒸発器40より上流側の加圧管64に配設されている。ガス放出弁403は低温液化ガスの荷下ろし後にタンク10の内圧を規定圧力まで下げるためのバルブであり、安全弁405はタンク10の内圧を所定圧力以下にするためのバルブである。ガス放出弁403及び安全弁405は加圧管64の下流の通気管61に連通しており、ガス放出弁403や安全弁405を通過した気化ガスは、逆火防止器404を通して大気放出される。
【0072】
バイパス管406は、ガス回収口62と通気弁63との間の通気管61と、連通口51と遮断弁53との間の連通管52との間を連通する管であり、バイパス管406の流路を開閉するバイパス弁407が配設されている。ドレン弁408は、通気管61内のドレンや連通管52内の残液(低温液化ガス)の有無を確認するための弁であり、連通管52及びバイパス管406に連通している。なお、ドレン弁(第3接続部)408は、後述する窒素ガスボンベ423が着脱可能に接続される継手としても機能する。
【0073】
導圧管409,410は、内槽11の天部および底部にそれぞれ連通し内槽11の圧力が導入される管である。バイパス管411は、導圧管409,410を連通する管であり、バイパス管411の流路を開閉する液面計元弁412が配設されている。液面計(差圧伝送器)413は、導圧管409,410の差圧を測定して内槽11に貯蔵された低温液化ガスの液面の高さ(レベル)を検出するための装置であり、バイパス管411に液面計元弁412と並列に配設されている。ドレン弁(第2接続部)414,415は、導圧管409,410の端部にそれぞれ配設される弁であり、後述する窒素ガスボンベ423が着脱可能に接続される継手として機能する。
【0074】
気体供給管416は、加圧蒸発器40に気体(窒素ガス)を導く配管であり、一端が噴射装置69に接続されると共に、他端が第1接続部(第1継手)417に接続されている。窒素ガス管418は、窒素ガスボンベ423から供給される窒素ガスが流通する配管であり、一端が第1接続部417に着脱可能に接続される。窒素ガス管418は、窒素ガス管418内のドレンを排出するドレン弁419と、窒素ガス管418の圧力を検出する圧力計420とが連通されている。減圧弁421は、窒素ガス管418の流路を開閉すると共に、窒素ガスボンベ423から窒素ガス管418に供給される窒素ガスを減圧するための装置である。窒素ガス管418は、他端に第2継手422が配設されており、その第2継手422を介して窒素ガスボンベ423と接続されている。
【0075】
以上のように構成される移動式容器401により荷下ろし側施設(図示せず)で実行される荷下ろし作業について説明する。荷下ろし作業は、タンク10に充填された低温液化ガスを荷下ろし側施設の貯槽(図示せず)に充填する作業である。荷下ろし作業では、まず、連通口51及びガス回収口62に荷下ろし側施設の配管(図示せず)を接続すると共に、上部弁59、下部弁60及び通気弁63を閉止し、バイパス弁407を開弁する。次に、第1接続部417に接続されていた窒素ガス管418及び窒素ガスボンベ423を取り外した後、窒素ガス管418及び窒素ガスボンベ423をドレン弁(第3接続部)408に接続する。連通口51及びガス回収口62の近傍の荷下ろし側施設の配管に配設された弁(図示せず)を閉止した後、減圧弁421を開弁してドレン弁408から窒素ガスを供給することで、連通口51及びガス回収口62と荷下ろし側施設の配管(図示せず)とのリークチェック(気密性の確認)を行うことができる。
【0076】
気密性の確認後、連通口51及びガス回収口62の近傍の荷下ろし側施設の配管に配設された弁(図示せず)及び通気弁63を開弁する。これにより荷下ろし側施設の配管(図示せず)及び通気管61内の空気が、窒素ガスボンベ423から供給された窒素で置換され、配管内の空気−窒素置換が行われる。荷下ろし側施設に窒素ガス供給設備がなくても、リークチェック(気密性の確認)及び配管内の空気−窒素置換を、移動式容器401に搭載された窒素ガスボンベ423によって行うことができる。
【0077】
リークチェック(気密性の確認)及び配管内の空気−窒素置換の後、ドレン弁(第3接続部)408に接続されていた窒素ガス管418及び窒素ガスボンベ423を、第1接続部417に接続する。次に、上部弁59及び通気弁63を閉止し、下部弁60を開弁する。第1加圧弁65及び第2加圧弁66を開弁すると、タンク10と加圧蒸発器40とのヘッド圧の差(液面の高低差)によりタンク10内の低温液化ガスが加圧管64を通って加圧蒸発器40に導かれる。圧力計420を見ながら減圧弁421を開弁し所定の圧力に調整すると、窒素ガスボンベ423から窒素ガスが窒素ガス管418及び気体供給管416を通って噴射装置69に供給される。加圧蒸発器40に気体(窒素ガス)が強制供給されるので、伝熱管41と気体との伝熱を促進させ加圧蒸発器40の熱通過率を大きくすることができる。これにより加圧蒸発器40を大型化することなく加圧蒸発器40の能力を高めることができる。
【0078】
また、窒素ガスボンベ423から加圧蒸発器40に供給される窒素ガスの湿度(水分量)は、大気中の湿度と比較して低く抑えられている(乾燥している)ので、加圧蒸発器40に大気を強制供給する場合と比較して、着霜の原因となる水蒸気の量を減らすことができる。その結果、伝熱管41(図3参照)の着霜を抑制できる。伝熱管41に着霜して形成された霜層が成長すると加圧蒸発器40の能力が大幅に低下するところ、着霜を抑制できるので、荷下ろし作業中に加圧蒸発器40の能力が低下することを防止できる。
【0079】
また、窒素ガスボンベ423に充填された窒素ガス(圧縮ガス)の圧力を利用して加圧蒸発器40に気体(窒素ガス)を強制供給できるので、輸送用機器401の大きな改造を不要にすることができ、既存の輸送用機器に簡易な改造を施すだけで輸送用機器401を製造できる。
【0080】
さらに、窒素ガスボンベ423を搭載することで輸送用機器401の質量は窒素ガスボンベ423の分だけ増加するが、低温液化ガスの積載量が大幅に減少するほどの影響を与えない。従って、低温液化ガスの輸送能力が低下する問題を回避しつつ、加圧蒸発器40の能力向上による低温液化ガスの荷下ろし作業性の向上を図ることができる。
【0081】
次に、移動式容器401に配設された液面計413について、液面の高さ測定の誤差要因を解消する方法について説明する。液面計413(差圧伝送器)は、内槽11の底面に加わる低温液化ガス(液体)の密度と液面の高さとの積に比例した圧力から、液面の高さを測定するための装置である。内槽11は気化ガスによる内圧があるので、その影響をキャンセルするため、ガスによる内圧と低温液化ガス(液体)の圧力とをそれぞれ導圧管409,410に導入し、それらの差圧が液面計413により測定され液面の高さが検出される。
【0082】
ここで、タンク10内の液の移動によって内槽11内に貯蔵された低温液化ガスが導圧管409,410に浸入すると、差圧の測定が不正確になるため液頭に誤差が生じ、液面の高さを正確に測定できなくなる。これを防ぐため、導圧管409,410に浸入した低温液化ガス(ドレン)を大気放出すると、低温液化ガスが可燃性ガスの場合には安全性に問題がある。
【0083】
これを解消するため、液面の高さを測定するときには、窒素ガス管418及び窒素ガスボンベ423を、まず、ドレン弁(第2接続部)414に接続する。次いで、減圧弁421を開弁して導圧管409に窒素ガスを供給することにより、導圧管409に浸入した低温液化ガスを大気放出することなく内槽11に戻すことができる。次に、窒素ガス管418及び窒素ガスボンベ423をドレン弁(第2接続部)415に接続し、同様に窒素ガスを供給することにより、導圧管410に浸入した低温液化ガスを大気放出することなく内槽11に戻すことができる。導圧管409,410内の低温液化ガス(ドレン)を大気放出することなく除去できるので、低温液化ガスが可燃性ガスの場合でも安全性を確保できると共に、液頭の誤差の原因を取り除くことで、タンク10に貯蔵された低温液化ガスの液面の高さを正確に検出できる。
【0084】
以上説明したように、輸送用機器401は、第1接続部417、第2接続部414,415、第3接続部408に着脱可能に構成される窒素ガスボンベ423が搭載されている。これにより、窒素ガスボンベ423から加圧蒸発器40に乾燥した窒素ガスを供給して加圧蒸発器40の氷結を防止しつつ熱交換効率を向上させることができる。また、窒素ガスボンベ423の接続位置を替えて、不燃性の窒素ガスを配管の酸素パージや導圧管409,410のドレン除去等に使用できるので、低温液化ガスが可燃性ガスの場合でも安全性に優れている。
【0085】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0086】
上記各実施の形態では、低温液化ガスとしてLNGを例示して説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の低温液化ガスを貯蔵する移動式容器1,401に適用することは当然可能である。他の低温液化ガスとしては、例えば、液体窒素、液体酸素、液体アルゴン、液体ヘリウム、液体水素、液化炭酸ガス等を挙げることができる。
【0087】
上記各実施の形態では、輸送用機器(トラクタ)Tに連結される移動式容器1,401(タンクセミトレーラ)について説明したが、必ずしもこれに限るものではなく、他の移動式容器に適用することは当然可能である。他の移動式容器としては、例えば、タンクローリー(車輪が回転駆動される輸送用機器によりタンクを移動させるもの)、コンテナ等を挙げることができる。
【0088】
上記実施の形態では説明を省略したが、加圧蒸発器40,140,240,340に強制供給させる気体を、低温液化ガスの荷下ろし側施設から供給することは可能である。この場合の気体は、荷下ろし側施設から供給可能なものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、圧縮空気、窒素ガス等を挙げることができる。荷下ろし側施設からの配管を噴射装置69(図3参照)に接続することにより、加圧蒸発器40,140,240,340に気体を強制供給することができる。
【0089】
これにより、圧縮機55,75,175や空気タンク56等の気体を供給する装置を移動式容器1,401側に準備しなくても、加圧蒸発器40,140,240,340に強制供給される気体を低温液化ガスの荷下ろし側施設から供給することで、加圧蒸発器40,140,240,340の能力を高められる。また、荷下ろし作業中に圧縮機55,75,175を作動させるために輸送用機器Tのエンジン等を駆動させる操作を不要にできる。その結果、荷下ろし作業中は輸送用機器Tのエンジン等を停止させることができるので、電気火花等の点火エネルギーが発生することを防止できる。これによりLNG、液体水素等の可燃性物質を低温液化ガスとして取り扱うことを可能にできる。
【0090】
上記各実施の形態では、噴射装置69(気体供給部)は、気体供給管67,416から供給された気体(空気または窒素ガス)による気流を利用して、周囲の空気を吸引しつつ伝熱管41に向けて気体を噴射するものを説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、有底の管体の底部または外周に多数の小孔を形成した気体供給部(噴射装置)を採用することは当然可能である。この場合、気体供給部に気体が供給されると、気体が分散されて小孔から加圧蒸発器40,140,240,340に噴射される。窒素ガスボンベ423から窒素ガスを供給する場合に、窒素ガスが周囲の空気で希釈され難いので、加圧蒸発器40,140,240,340に大気中の水分を供給され難くできる。その結果、乾燥した窒素ガスによって伝熱管41の着霜や氷結を効果的に防止できる。
【0091】
なお、低温液化ガスの荷下ろし側施設から供給された気体や窒素ガスボンベ423からの窒素ガス(気体)を加圧蒸発器40,140,240,340に強制供給する場合、上記実施の形態で説明したように、気体を加温したり気体に排ガスを混ぜたりすることは当然可能である。これにより低温液化ガスと気体との温度差を拡大して加圧蒸発器40,140,240,340の能力を向上できると共に、伝熱管41の表面温度を気体の露点以上に上昇させることで伝熱管41への着霜も防止できる。
【0092】
上記第5実施の形態では、窒素ガスボンベ423と連通する窒素ガス管418を、第1接続部417、第2接続部414,415、第3接続部408から取り外し、目的に応じて他につなぎ替える場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1接続部417、第2接続部414,415、第3接続部408と窒素ガス管418とを分岐管で接続し、切換弁で流路を切り換えるようにすることは当然可能である。これにより、窒素ガス管418を取り外してつなぎ替える必要がなく、切換弁の操作だけで流路の切換ができるので作業性に優れている。
【符号の説明】
【0093】
1,401 移動式容器
10 タンク
40,140,240,340 加圧蒸発器
41 伝熱管
55,75,175 圧縮機
56 空気タンク
68 間欠供給装置
69 噴射装置(気体供給部)
82 ヒータコア
101 コンデンサー
408 第3接続部
409,410 導圧管
413 液面計
414,415 第2接続部
417 第1接続部
423 窒素ガスボンベ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯蔵するタンクと、そのタンクに貯蔵された低温液化ガスが導入される伝熱管を有する加圧蒸発器とを備える移動式容器において、
前記伝熱管と交差する方向から前記伝熱管の周囲に気体を強制供給する気体供給部を備えていることを特徴とする移動式容器。
【請求項2】
前記気体供給部から前記伝熱管の周囲に窒素ガスを供給するために窒素ガスボンベが接続される第1接続部を備えていることを特徴とする請求項1記載の移動式容器。
【請求項3】
前記タンクの天部および底部にそれぞれ接続され前記タンクの圧力が導入される導圧管と、
それら導圧管の圧力から前記タンクに貯蔵された前記低温液化ガスの液面の高さを検出する液面計と、
前記タンクに向けて窒素ガスを供給するために前記導圧管に窒素ガスボンベが接続される第2接続部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動式容器。
【請求項4】
前記タンクに貯蔵された低温液化ガスを荷下ろし側施設に移送する連通管と、
その連通管に窒素ガスを供給するために窒素ガスボンベが接続される第3接続部とを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の移動式容器。
【請求項5】
前記気体供給部から前記伝熱管の周囲に気体を間欠的に強制供給する間欠供給装置を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の移動式容器。
【請求項6】
前記気体供給部から前記加圧蒸発器に強制供給される気体は、前記輸送用機器に連動して作動する圧縮機により作られる圧縮空気であることを特徴とする請求項1記載の移動式容器。
【請求項7】
前記圧縮空気は、空気タンクに蓄えられていることを特徴とする請求項6記載の移動式容器。
【請求項8】
前記加圧蒸発器に強制供給される気体は、前記低温液化ガスの荷下ろし側施設から供給されることを特徴とする請求項1記載の移動式容器。
【請求項9】
前記加圧蒸発器に強制供給される気体は、前記輸送用機器に連動して作動するヒータコア又はコンデンサーにより加温されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の移動式容器。
【請求項10】
前記加圧蒸発器に強制供給される気体は、前記輸送用機器が発生する排ガスが含まれていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の移動式容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−32839(P2013−32839A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151410(P2012−151410)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】