説明

移動装置の位置決定のための信号強度マップの自動生成

本発明は、無線データ通信ネットワークの複数のアクセスポイントにより放出される信号の対応する信号強度と、ビル内の位置との間の割り当てを提供する信号強度データベースを生成して管理する移動装置及び方法を提供する。本発明の移動装置は、ネットワークの専用の基準点又はアクセスポイントに基づいて三角技術を利用することにより、自分の位置を決定するように適合される。移動装置は、複数のアクセスポイントにより送信される信号の信号強度を測定するように更に適合される。移動装置の決定された位置は、一式の測定信号強度に割り当てられ、データベースのエントリーとして格納される。移動装置は、ビルを通じて頻繁に移動するトローリーのような装置に取り付けられることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ネットワークの移動装置を位置決め及びトラッキングする分野に関する。
【背景技術】
【0002】
無線ネットワークでの移動計算装置の自在の活用は、位置認識システム及びサービスの実装を提供する。無線ネットワークのデータ又はアプリケーションプログラムへのアクセスの許可は、移動計算装置の位置の関数として効果的に実装され得る。例えば、移動計算装置を使用するユーザは、ドキュメントの印刷を要求するときに、近くのプリンタを利用することを許可され得る。更に、医療環境では、患者、医者又は他の医療関係者の位置が既知であると有利である。緊急事態に、医者は近くの患者の患者に関するデータを自動的に提供され得る。従って、医療関係者は、特定の患者と移動計算装置を使用する医療関係者との間の相対距離に基づいて、患者に関するデータを自動的に提供され得る。
【0003】
位置認識システム及びサービスは、ユーザ及びユーザの移動計算装置の位置情報が重要な特徴である場合に、多様な適用シナリオを広く提供する。例えば、位置情報は、訪問者又は顧客をビル内の明確な位置に誘導するために又はユーザの位置をトラッキングするために効果的に利用され得る。
【0004】
基本的にはユーザ及び移動計算装置の位置の決定は、複数の異なる位置決め技術(例えば地球投影位置決定衛生システム(GPS:global positioning satellite system)等)により実現され得る。しかし、特にビル内では、GPSシステムは十分に適用可能ではなく、必要な分解能を提供しない。
【0005】
無線ネットワークのサービスエリア内で移動計算装置の位置を決定する信頼のある手法は、ネットワーク自体のデータ通信インフラストラクチャを利用する。データ通信無線ネットワークは、複数の空間に分散されたアクセスポイントを提供するため、移動計算装置の位置を決定するために様々なアクセスポイントの対応する通信信号が効果的に利用され得る。
【0006】
アクセスポイントにより送信される信号の信号強度は、アクセスポイントからの距離、介在する壁、及び信号の重なりのため変化する。従って、移動装置により測定される信号強度は、移動装置とアクセスポイントとの間の距離についての情報を提供する。複数の様々なアクセスポイントを考慮すると、ビル内の如何なる位置も、複数のアクセスポイントにより送信されてその位置で測定される信号の信号強度のセットにより効果的に特徴付けられ得る。信号強度は距離と共に線形的に減少しないため、典型的にはこの位置の特徴は、ビル内で測定された信号特性データベースにより提供される。このように、移動装置の位置は、複数のアクセスポイントにより送信された信号の信号強度を測定し、測定された信号と信号強度の測定されたセットについて位置を示す信号特性データベースのエントリーとを比較することにより決定され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
文献WO03/075125は位置認識データネットワークを提供する。この文献では、ネットワークに関連する装置が接続されたネットワークで、このような装置と物理的位置とを関連付けるシステムが開示されている。このシステムは、信号強度の減衰の関数として既知のアクセスポイントからの距離を近似する計算を実行し得る。計算に加えて、このシステムはまた、信号特性と対応の位置との関連を格納し得る。この情報は、信号特性データベースに格納され得る。ネットワーク管理者は、異なる位置で所定の信号特性を測定し、位置毎に測定された特性を格納することにより、この信号特性データベースを生成する。
【0008】
従って、従来技術では、信号特性データベースは手動で生成される必要がある。すなわち、異なる位置でネットワーク管理者は一式の信号を測定し、位置毎に測定された信号を格納する。特に多様なサービスエリアを提供する無線通信又はデータネットワークでは、このような信号特性データベースの生成は、非常に時間集約的になり、面倒になることがある。更に、信号特性データベースはまた、アクセスポイント、データ通信ネットワーク、備品の配置、又は移動装置の変更が生じると常に、頻繁に管理される必要がある。更に、信号特性データベースの手動生成は、人材コストのため高価になり、更にネットワーク管理者が信号特性データベースに誤ったデータを入力するため誤りが生じやすくなり得る。
【0009】
従って、本発明は、無線データ通信ネットワークの移動計算装置の位置を決定するデータベースの改善した容易な生成及び管理を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントを有する無線データ通信ネットワークのデータベースを生成する移動装置を提供する。本発明の移動装置は、移動装置の位置を決定する手段と、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより無線送信される少なくとも第1、第2及び第3の信号を測定する手段と、移動装置の位置と、少なくとも第1、第2及び第3の測定信号とをデータベースに格納する手段とを有する。
【0011】
典型的には無線データ通信ネットワークは、例えばIEEE802.11又はワイヤレス・フィディリティ(Wi-Fi:wireless fidelity)通信標準に基づく無線周波数(RF:radio frequency)通信技術に基づく。本発明で使用される無線データ通信ネットワークは、決してRF通信ネットワークに制限されない。基本的に、本発明の移動装置は、例えば赤外線(IR:infrared)通信技術に基づく他の無線データ通信ネットワークにも広く採用され得る。
【0012】
移動装置の位置を決定する手段は、三角技術に基づいて少なくとも第1、第2及び第3の基準点を利用するように適合される。次に、三角技術は、三角測量又は三辺測量手順に基づいてもよい。三角測量手順を利用して、移動装置の位置を決定する手段は、少なくとも第1、第2及び第3の基準点を指す方向を特定する様々な角度を決定するように適合される。これらの角度(すなわち、様々な基準点を指す方向)及び/又は移動装置の方位を認識し、更に静止している第1、第2及び第3の基準点の位置を認識することで、移動装置の位置が十分に決定され得る。
【0013】
基本的には、同様に移動装置の位置を決定するために三辺測量手順が代替として使用され得る。この場合、移動装置で受信され、第1、第2及び第3の基準点により同期送信される信号の遅延が移動装置の位置を示す。しかし、本発明では、移動装置の三角測量に基づく位置決定が好ましい。これは既存のRF型ネットワークに実装され得るが、三辺測量手順の実装は、本質的にアクセスポイント又は基準点の適切な機能変更を必要とする。
【0014】
用途上の目的のため、及び特定の三角技術のため、少なくとも2つ、3つ又は4つの基準点は、移動装置の位置を明確に決定することが必要である。例えば、移動装置が2次元の移動(例えばx-y平面での移動)のみを受けるが、z方向に所定の位置に留まる場合、一般的には3つの基準点は、三角技術が三角測量手順に基づく場合に、移動装置の位置を明確に決定するのに十分である。移動装置がまた、その方向を決定する手段を特徴とする場合、2つの基準点のみに基づいてその位置の十分な決定が可能になり得る。三辺測量手順を利用する同様の構成も、移動装置の位置を明確に決定するために少なくとも3つの基準点を必要とし得る。
【0015】
しかし、少なくとも第1、第2及び第3の基準点は、所定の基準点特有の信号を放出するように適合される。次に、移動装置の位置を決定する手段は、基準点を特定して三角測量又は三辺測量手順を実行するために、これらの基準点特有の信号を受信するように適合される。
【0016】
少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより無線送信される少なくとも第1、第2及び第3の信号を測定する手段は、それぞれ少なくとも第1、第2及び第3の信号の強度を測定するように適合されることが好ましい。従って、少なくとも第1、第2及び第3の信号を測定する手段は、移動装置の位置で第1、第2及び第3の信号の信号減衰を測定するように適合される。無線データ通信ネットワークの少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより送信された少なくとも第1、第2及び第3の信号の減衰は、空間で変化するため、第1、第2及び第3のアクセスポイントの少なくともいずれかを介して無線データ通信ネットワークにアクセスする移動計算装置の位置を決定するために効果的に利用され得る。
【0017】
格納する手段は、移動装置の位置と、少なくとも第1、第2及び第3の信号とをデータベースのエントリーとして格納するように適合される。このように、データベースのエントリーは、特定の位置と、この位置で受信された少なくとも第1、第2及び第3の信号の対応するセットとの間の割り当てを示す。無線データ通信ネットワークのサービスエリア内で複数の異なる位置に移動装置を移動することにより、最終的にデータベースは信号強度のセットと移動装置の位置との間の完全なマッピングを提供してもよい。
【0018】
このように、無線データ通信ネットワークの少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより無線送信される少なくとも第1、第2及び第3の信号の信号強度を測定するようにのみ適合された移動計算装置は、データベースを利用することによりその位置を効果的に決定し得る。
【0019】
本発明の移動装置の位置を決定する基準点は、無線データ通信ネットワークのアクセスポイントと一致することが好ましい。従って、基準点の機能(すなわち、基準点特有の信号を送信すること)は、完全にアクセスポイントにより実装される。このように、移動装置の自律的な位置決定を実装するために、更なるインフラストラクチャの導入が必要なくなる。
【0020】
従って、本発明の装置により、様々な移動計算装置により利用され得る信号強度データベースを自律的に生成して管理することが可能になる。信号強度の測定に基づく位置決定は、アクセスポイントも移動計算装置も更なる専用ハードウェア構成要素を備える必要がないため、位置決定への高速且つ非常に効率的な手法を示す。
【0021】
これに対して、三角測量又は三辺測量に基づく位置決定は、ステラジアン(steradian)の所要の走査のため、いくぶん低速である。更に、これは高性能のハードウェア構成要素を必要とする。従って、本発明の移動装置は、位置決定について2つの異なるシステムを備える。第1のシステム(三角測量に基づく位置決めシステム)は、信号強度の測定に基づく第2の位置決めシステムを較正するために、移動装置の物理的位置を決定するために使用される。
【0022】
本発明の更に好ましい実施例によれば、移動装置は、移動装置が静止しているか否かを決定するように適合された動作検出器を更に有する。三角技術(三角測量又は三辺測量)を利用することによる移動装置の位置の決定は、数秒を軽く超過してもよい所定の時間間隔を要する。移動装置の位置決定についての三角型技術は、移動装置が位置決定の間に所定の位置に静止したままであることを必要とする。従って、移動装置の位置決定の間に、移動装置が移動の対象にならないことが確保される必要がある。
【0023】
更に、動作検出器を用いて、2つの測定手順(信号強度の測定及び移動装置の位置の決定)が連続して実行される場合に、信号強度の測定及び位置決定が移動装置の同じ位置で生じることが更に確保され得る。しかし、移動装置の位置の決定と、少なくとも第1、第2及び第3の信号の強度の測定とが、同時に実行されてもよい。
【0024】
移動装置は、移動するように設計されるが、自発的にその位置を変更する手段を備えないことが好ましい。移動装置がその位置の決定中又は少なくとも第1、第2及び第3の信号の測定中に移動を受ける場合に、測定データは明らかに歪められ、データベースの生成に使用されるべきではない。このような場合に、測定データは破棄され、及び/又は進行中の測定が中断される。代替として、動作検出器はまた、移動装置が現在移動しているときに、測定手順の開始を妨げるために使用されてもよい。
【0025】
本発明の更に好ましい実施例によれば、移動装置の位置を決定する手段は、ピボット・ビームアンテナ(pivoting beam antenna)及び/又はフェーズドアンテナアレイを利用するように適合される。この実施例では、位置を決定する手段は、三角測量手順を利用するように適合される。従って、移動装置の位置を決定する手段は、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントが移動装置の位置及び方位に関して位置決めされる方向を決定するように適合される。
【0026】
ピボット・ビームアンテナ及び/又はフェーズドアンテナアレイは、基準点特有の信号が受信される角度を決定するように適合される。少なくとも第1、第2及び第3の基準点は、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントと一致することが好ましい。従って、第1、第2及び第3のアクセスポイントはまた、第1、第2及び第3の基準点として機能する。例えば、IEEE802.11に基づく通信ネットワークでは、アクセスポイントは、アクセスポイント特有のビーコンを定期的に送信する。フェーズドアンテナアレイを利用することにより、特定のビーコンが移動装置により受信される角度は少なくともおおまかに決定され得る。
【0027】
更に、少なくとも第1、第2及び第3の基準点又はアクセスポイントの方向の更に正確な決定のために、ピボット・ビームアンテナが使用されてもよい。この場合、広範囲のステラジアンを走査するために、チルト・ビームアンテナ(tilting beam antenna)が効果的に使用されてもよい。特定のビーコン又は基準点特有の信号が最大になる角度又はステラジアンは、角度を特定し、従って基準点を指す方向を特定する。この角度は、移動装置の三角測量に基づく位置決定に利用される。
【0028】
好ましくは、移動装置がチルト・ビームアンテナとフェーズドアンテナアレイとを有する場合、これらの2つのアンテナを組み合わせた使用により、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントの関連する方向情報の高速、正確且つ効率的な決定が可能になる。特に、フェーズドアンテナアレイを用いて、基準点又はアクセスポイントへの方向はおおまかに決定され得る。このおおまかな決定は、チルト・ビームアンテナを用いて効率的に利用され得る。この場合、チルト・ビームアンテナは、フェーズドアンテナアレイを用いて実行された大まかな方向の決定に対応するステラジアンを走査しさえすればよい。従って、フェーズドアンテナアレイは、基準点への方向の粗い決定に使用され、その後にチルト・ビームアンテナ(例えばパラボラアンテナ)を用いて角度が更に正確に決定され得る。
【0029】
本発明の更に好ましい実施例によれば、移動装置は、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントと移動装置との間で無線データ送信を可能にする無線通信モジュールを更に有する。無線通信モジュールを用いて、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより無線送信される少なくとも第1、第2及び第3の信号の強度が測定されることが好ましい。従って、無線通信モジュールは、無線データ通信ネットワークの少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより送信される少なくとも第1、第2及び第3の信号の減衰を測定する手段として機能する。例えば無線データ通信ネットワークがIEEE802.11伝送標準に基づく場合、移動装置の無線通信モジュールは、パーソナルコンピュータ又は同様のポータブル計算装置用の802.11拡張カードとして実装されることが好ましい。
【0030】
このように、移動装置により、無線データ通信ネットワークの少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントを介した無線データ通信ネットワークへの無線データ伝送が可能になる。従って、移動装置により測定される何らかのデータ(位置特有のデータ又は信号強度特有のデータ等)は、無線データ通信ネットワークに送信され得る。その結果、位置特有の信号強度を収集するデータベースが、移動装置にローカルに格納されてもよく、データ通信ネットワークのどこかに格納されてもよい。
【0031】
更に、位置特有のデータを収集し、位置特有のデータを格納し、及び/又は収集データを処理するために、様々なデータベースが使用され得る。適用分野に応じて、これらの様々なデータベースは、移動装置にローカルに格納されてもよく、他の適切なネットワークリソースを用いて格納されてもよい。位置情報又は信号強度情報に特有の得られたデータの無線送信は、ローカルで処理されてもよく、無線データ通信ネットワークの如何なる構成要素に送信されてもよい。
【0032】
本発明の更に好ましい実施例によれば、移動装置は、識別信号が少なくとも第1、第2及び第3の基準点により無線送信されることを要求する手段を更に有する。識別信号を要求する手段は、無線データ通信ネットワークの少なくとも第1、第2及び第3の基準点及び/又は少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより受信され得る要求信号を放出するように適合される。要求信号を受信することに応じて、少なくとも第1、第2及び第3の基準点及び/又は少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントは、基準点又はアクセスポイント毎に特有の識別信号又は識別信号のシーケンスを放出し始める。
【0033】
移動装置の位置を決定する手段がチルト・ビームアンテナを利用する場合に、このことは特に有利である。チルト・ビームアンテナを利用することによる角度の決定は、典型的には特定のステラジアンの走査を必要とする。分解能に応じて、このような走査は、チルト・ビームアンテナの複数の走査位置を取り入れる。典型的にはこれらの走査位置のそれぞれで、チルト・ビームアンテナは、特定の基準点又はアクセスポイントにより送信された少なくとも1つの識別信号を受信する必要がある。
【0034】
例えば、IEEE802.11に基づく無線ネットワークのアクセスポイントにより送信される次のビーコンは、約100ミリ秒のタイムギャップを特徴とする。従って、10のみの異なる走査点を利用する走査は、少なくとも1秒を必要とする。チルト・ビームアンテナは、データ通信ネットワークのアクセスポイント又は基準点が位置決めされる角度を正確に決定するように適合されることが好ましい。従って、チルト・ビームアンテナは、三角測量手順に必要なステラジアンを正確に決定するために、大量の異なる走査位置を走査する必要がある。この場合、IEEE802.11標準の何らかの2つのビーコンの間の時間間隔が大きくなり過ぎる。
【0035】
従って、基準点又はアクセスポイントは、チルト・ビームアンテナを利用した高速且つ効率的な走査手順を可能にするために、かなり高いレートで識別信号のシーケンスを放出するように適合される。従って、識別信号を要求する手段は、移動装置のチルト・ビームアンテナの走査により効果的に使用され得る識別信号のシーケンスを送信するためにデータ通信ネットワークの基準点及び/又はアクセスポイントを起動する効果的なツールになる。
【0036】
本発明の更に好ましい実施例によれば、移動装置は、無線データ通信ネットワークのサービスエリア内で移動可能なトローリーのような装置に移動装置を取り付けるように適合された固定手段を更に有する。移動装置は自律的に移動するように設計されないことが好ましいため、好ましくは無線通信ネットワークのサービスエリア内で定期的な移動を受ける他の移動装置と共に移動するように指定される。例えば、本発明の移動装置は、清掃員により使用される何らかのトローリーのような支持枠又はラックに取り付けられ得る。このような清掃ラックはビルを通じて定期的に移動しており、様々な位置で頻繁に静止する。
【0037】
例えば清掃員が窓を掃除している間に、典型的にはラックは静止しており、清掃員のラックに取り付けられた移動装置は専用の測定を実行し得る。代替として、無線データ通信ネットワークが病院のような医療環境に実装されている場合に、移動装置はまた、例えば車椅子又は病床に取り付けられてもよい。
【0038】
好ましくは無線データ通信ネットワークのサービスエリア内で定期的に移動するトローリーのような装置に移動装置を取り付けることにより、データベースが移動装置により、並びに移動装置とデータ通信ネットワークの様々なアクセスポイント及び基準点との間の相互作用により、自発的に生成して管理され得る。従って、信号特性データベースの生成及び管理は、もはやネットワーク管理者により実行される必要はなく、既存の装置の定期的な移動の副産物として生じる。
【0039】
他の態様では、本発明は、少なくとも第1及び第2のアクセスポイントを有する無線データ通信ネットワークと、位置を決定するように適合され、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより無線送信された少なくとも第1及び第2の信号を測定するように更に適合された移動装置とを有するネットワークシステムを提供する。ネットワークシステムは、少なくとも第1、第2及び第3の信号の強度と共に移動装置の位置を格納するように適合されたデータベースを更に有する。移動装置は、三角技術に基づいて少なくとも第1及び第2の基準点を用いて自分の位置を決定するように適合される。
【0040】
従って、移動装置の位置並びに少なくとも第1、第2及び第3の信号の強度は独立して決定され、データベースを用いて割り当てられる。移動装置の位置で測定された対応する第1、第2及び第3の信号の強度と共に移動装置の位置を格納することにより、無線データ通信ネットワークのサービスエリア内の各位置は、少なくとも第1、第2及び第3の信号の強度のセットに割り当てられ得る。データベースは、移動装置を用いて格納されてもよく、移動装置が位置と対応の信号強度との間の割り当てを格納するデータベースにアクセス可能であることを前提としてデータ通信ネットワークのどこかに格納されてもよい。
【0041】
本発明の更に好ましい実施例によれば、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントは、少なくとも第1、第2及び第3の基準点として機能する。このように、アクセスポイントと基準点とが一致する。従って、移動装置の位置を決定するための更なるインフラストラクチャを実装せずに、ほとんど如何なる無線データ通信ネットワークで、データベースを生成する移動装置が使用され得る。従って、三角技術(三角測量又は三辺測量)に基づく移動装置の位置決定は、無線データ通信ネットワークの既存のインフラストラクチャ(すなわち、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイント)を効果的に利用し得る。
【0042】
他の態様では、本発明は、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントを有する無線データ通信ネットワークのデータベースを生成する方法を提供する。本発明の方法は移動装置を利用し、三角技術に基づいて少なくとも第1、第2及び第3の基準点を用いて移動装置の位置を決定するステップと、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより無線送信される少なくとも第1、第2及び第3の信号を測定するステップと、少なくとも第1、第2及び第3の信号を移動装置の位置に割り当てるステップと、少なくとも第1、第2及び第3の信号と移動装置の位置との間の割り当てを信号データベースのエントリーとして格納するステップとを有する。
【0043】
次に無線データ通信ネットワークのサービスエリア内で移動装置を異なる位置に移動することにより、様々な位置が決定され、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより無線送信される第1、第2及び第3の信号の強度で少なくとも特徴付けられる。移動装置の位置の決定は、三角技術(三角測量又は三辺測量)に基づき、少なくとも第1、第2及び第3の基準点を利用する。無線データ通信ネットワークの基準点及びアクセスポイントは一致することが好ましい。
【0044】
移動装置の位置の決定並びに少なくとも第1、第2及び第3の信号の強度の測定は、連続的に実行されてもよく、同時に実行されてもよい。双方の場合に、移動装置が位置決定又は信号強度測定の間に移動しないことが確保される必要がある。
【0045】
更に他の態様では、本発明は、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントを有する無線データ通信ネットワークのデータベースを生成するコンピュータプログラムプロダクトを提供する。コンピュータプログラムプロダクトは、少なくとも第1、第2及び第3の基準点を用いて移動装置の位置を決定する三角計算手順を実行するプログラム手段を有する。コンピュータプログラムプロダクトは、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより送信されて移動装置により測定される少なくとも第1、第2及び第3の信号に移動装置の位置を割り当てるプログラム手段を更に有する。コンピュータプログラムプロダクトは、少なくとも第1、第2及び第3の信号と移動装置の位置との間の割り当てを信号データベースのエントリーとして格納するプログラム手段を更に有する。
【0046】
本発明の更に好ましい実施例によれば、コンピュータプログラムプロダクトは、第1のデータベースエントリーの位置と第2のデータベースエントリーの位置との間の距離が所定の閾値より下である場合に、少なくとも第1及び第2のデータベースエントリーの間で重み付け手順を実行するように適合されたコンピュータプログラム手段を更に有する。例えば、識別できる位置が繰り返し測定を受けることになり、繰り返し測定が既にデータベースに格納されている前の測定から逸脱する場合、前の測定及び繰り返し測定の双方が重み付け手順を受けてもよい。
【0047】
例えば、同じ位置で異なる信号強度が測定された場合、平均値を決定し、平均値をデータベースエントリーとして格納することが妥当である。このように、測定中に生じ得る測定誤差又は偏差が繰り返し測定により効果的に最小化され得る。更に、重み付け関数はまた、まだ測定されていない位置について補間機能を提供してもよい。従って、コンピュータプログラムプロダクトは、データベースを最適化する効果的な手段を提供する。
【0048】
本発明の更に好ましい実施例によれば、コンピュータプログラムプロダクトは、位置の決定の間に移動装置の動きが動作センサを用いて検出された場合に、三角計算を破棄するように適合されたコンピュータプログラム手段を有する。従って、コンピュータプログラムプロダクトは、その位置の決定の間並びに少なくとも第1、第2及び第3の信号の測定の間に、移動装置の静止位置を制御するように機能する。
【0049】
更に、本発明の請求項における如何なる参照符号も本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない点に留意すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下に、本発明の好ましい実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0051】
図1は、無線データ通信ネットワーク102と、移動装置100と、データベース108とを有するネットワークシステムのブロック図を示している。無線データ通信ネットワーク102は、第1のアクセスポイント104と、第2のアクセスポイント106と、第3のアクセスポイント107とを有する。無線データ通信ネットワーク102は、無線データ通信ネットワーク102のサービスエリアに分散された更なるアクセスポイントを有してもよい。
【0052】
移動装置100は、動作センサ116と、位置決めモジュール118と、測定モジュール120とを有する。動作センサ116は、移動装置の何らかの動きを検出するように適合され、位置決めモジュール118は、三角技術(三角測量又は三辺測量等)を利用することにより移動装置の位置を決定するように適合される。移動装置100の測定モジュール120は、アクセスポイント104とアクセスポイント106とアクセスポイント107とにより無線送信される信号の強度を測定するように適合される。アクセスポイント104、106、107により放出される信号は方向性なく送信されるため、アクセスポイント104、106、107からの距離の増加と共に信号は減衰する。従って、測定モジュール120により測定される信号の強度は、アクセスポイント104、106、107に関する移動装置の位置にかなり依存する。
【0053】
次に、移動装置100の位置決めモジュール118は、移動装置100の位置を決定するように適合される。移動装置100の位置の決定は、三角技術(例えば三辺測量又は三角測量等)に基づく。図示の実施例では、移動装置の位置決定は、この場合にはアクセスポイント104、106、107と一致する第1、第2及び第3の基準点を利用することによる三角測量手順に基づく。アクセスポイント104と移動装置100との間の第1の角度又はステラジアンと、アクセスポイント106と移動装置100との間の第2の角度又はステラジアンと、アクセスポイント107と移動装置との間の第3の角度又はステラジアンを決定することにより、移動装置100が2次元平面内でのみ移動可能であることを前提として、移動装置100の位置は十分に決定され得る。代替として、位置決定は、3次元座標を特徴付ける更なるアクセスポイントを利用することにより、3次元の位置決定に拡張されてもよい。
【0054】
位置決めモジュール118を用いた位置の決定、並びにそれぞれアクセスポイント104、106、107により送信される第1、第2及び第3の信号の強度の測定は、連続的に実行されてもよく、同時に実行されてもよく、部分的に重複する時間間隔内で実行されてもよい。位置測定及び信号測定の間に移動装置100が静止したままであることを前提として、決定された位置は、測定された第1、第2及び第3の信号に割り当てられる。この種類の割り当ては、データベース108を用いて効果的に実現され得る。
【0055】
従って、データベース108は、少なくとも3つの列110、112、114を有する。例えば、列110は位置データを格納するように適合され、列112はアクセスポイント104の信号強度情報を格納するように適合され、列114はアクセスポイント106の信号強度情報を格納するように適合される。典型的には、位置データは、例えば25cmの所定のグリッドサイズのグリッドの精度になる。このことは、精度の高すぎる結果の格納を回避し、同じエリアでの繰り返し測定が容認されて平均化されることを可能にする。このように、別々に得られた位置及び信号強度情報は、効果的にマッピングされ得る。
【0056】
図1に示す実施例では、データベース108は、移動装置100と、無線データ通信ネットワーク102とによりアクセス可能であるように図示されている。代替として、データベース108は、移動装置100に格納されてもよく、ネットワーク102を用いて格納されてもよい。
【0057】
図2は、無線データ通信ネットワーク102及び移動装置100のブロック図を示している。ここでは、無線データ通信ネットワーク102はまた、アクセスポイント104、106及び107を有し、移動装置100は、位置決めモジュール118と測定モジュール120とを有する。更に、図1と対称的に、ここでは移動装置100はまた、無線通信モジュール128とフェーズドアンテナアレイ124とピボット・ビームアンテナ126とを有する。従って、移動装置の位置を決定するために、位置決めモジュール128は、例えばパラボラアンテナとして実装されてもよいピボット・ビームアンテナ126及び/又はフェーズドアンテナアレイ124を利用する。
【0058】
フェーズドアンテナアレイ124及びピボット・ビームアンテナ126の双方は、アクセスポイント104、106、107により無線送信される識別信号を受信するように適合される。フェーズドアンテナアレイ124は、アクセスポイント104、106、107からの識別信号の発生角度をおおまかに決定するようにまさに適合されるが、ピボット・ビームアンテナ126は、アクセスポイント104、106、107の位置を見つけるためにステラジアンを走査するように適合される。フェーズドアンテナアレイ124は、2つのアクセスポイント104、106、107の位置のおおまかな決定を提供し、次に、この大まかな推定に基づいてピボット・ビームアンテナはアクセスポイント104に向けられ、その後にアクセスポイント106に向けられ、その後にアクセスポイント107に向けられ、アクセスポイント104、106、107が見つけられ得る方向を正確に決定し得ることが好ましい。位置決めモジュール118は、フェーズドアンテナアレイ124とピボット・ビームアンテナ126との間の相互作用を制御する。
【0059】
双方のアンテナ124、126は、それぞれ2つのアクセスポイント104、106、107と移動装置100との間の角度を決定するように適合される。アクセスポイント104、106、107の位置が移動装置100又は少なくともネットワークに既知であるため、移動装置の既知の方位に関してこれらの少なくとも2つの角度を用いて、位置決めモジュール118は、移動装置100の位置を計算するように適合される。このような場合、移動装置の方位がアクセス可能でない場合、移動装置の位置を十分に決定するために、少なくとも3つの基準点が必要になる。
【0060】
移動装置100とアクセスポイント104、106、107との間の角度と共に、アクセスポイント104、106、107の位置情報を利用することにより、移動装置100の位置の計算が効果的に可能になる。移動装置100の位置の3次元の決定については、少なくとも1つの更なるアクセスポイントが必要になる。
【0061】
位置決定の必要な分解能に応じて、フェーズドアンテナアレイ124のみを用いて移動装置100の位置を決定するだけで十分なことがある。移動装置100の正確な位置決定が必要な場合に、位置決めモジュール118は、フェーズドアンテナアレイ124とピボット・ビームアンテナ126との組み合わせを効率的に利用する。特にIEEE802.11無線ネットワーク環境を利用することにより、フェーズドアンテナアレイ124は、アクセスポイント104、106、107により定期的に送信されるビーコンを検出するように適合されることが好ましい。
【0062】
ピボット・ビームアンテナ126を用いて実行される十分な角度の走査は大量のビーコンメッセージを必要とするため、アクセスポイント104、106、107から識別信号のシーケンスを要求することが有利である。このような要求は、移動装置100の無線通信モジュール128を用いてアクセスポイント104、106、107に送信されてもよい。アクセスポイント104、106、107は、802.11標準のビーコンより実質的に高い反復率を特徴とする識別信号のシーケンスを送信する。従って、無線通信モジュール128を用いて、移動装置100はまた、アクセスポイント104、106、107を介して無線通信ネットワーク102に信号を送信することが可能になる。
【0063】
無線通信モジュールは、商用で入手可能なIEEE802.11無線通信構成要素として実装されることが好ましい。更に、無線通信モジュール128を利用することにより、測定モジュール120は、それぞれアクセスポイント104、106、107から送信される信号の信号強度を測定することが可能になる。
【0064】
図3は、移動装置100の詳細ブロック図を示す。図2に示す例に加えて、移動装置100は、処理ユニット130と動作センサ116とデータベースモジュール132とを更に有する。位置決めモジュール118は、フェーズドアンテナアレイ124とピボット・ビームアンテナ126とを利用することにより、移動装置100の位置を決定するように適合される。測定モジュール120は、無線通信モジュール128を利用することにより、アクセスポイント104、106により送信される信号の強度を測定するように適合される。処理ユニット130は、データベースモジュール132と位置決めモジュール118と動作センサ116と測定モジュール120との間の相互作用を制御する。従って、処理ユニット130は、移動装置100の全体機能を制御する。
【0065】
データベースモジュール132は、データベース又はデータベースの少なくとも一部を格納するように適合される。データベースモジュール132に格納されるデータベースは、新しいデータベースエントリーを入力し、データベースエントリーを更新し、データベースエントリーを削除し、データベースエントリーを読み取るために、処理ユニット130によりアクセス可能である。動作センサ116は、移動装置100が静止位置にあるか移動を受けているかを検出するように適合される。移動装置が静止していないことを移動センサ116が処理ユニット130に示すと、信号強度の測定又は位置の決定が中止、非活性化され、又は対応する結果が破棄される。
【0066】
図4は、床144で移動するように適合されたトローリー140に取り付けられた移動装置100を概略的に示している。図4の概略図は、ビル内の床と付近の壁142とを示している。壁142は、無線データ通信ネットワークの3つの空間的に離れた基準点150、152、154及びアクセスポイント104、106、107を有する。ここでは、トローリー140はやや抽象的に図示されている。一般的に、これは無線データ通信ネットワークのサービスエリア内で頻繁に移動する如何なる種類のトローリーのような装置として実装されてもよい。
【0067】
例えば、トローリーは、ゴミ入れ及び/又はバケツの支持枠として機能し、又はほうき若しくは同様の清掃用具の付属手段を提供し、清掃員により使用されるラックとして実装されてもよい。
【0068】
トローリー140は床144に沿って移動可能であり、従って移動装置100の位置は2つの座標に関してのみ変化し得ることが好ましい。この実装では、第1及び第2の基準点150、152、154は、三角手順を利用することによって移動装置100の位置の明確な決定に十分である。ここでは、基準点150、152、154は、三角測量に基づいて移動装置100の位置決定を可能にするビーコン及び/又は識別信号を送信する機能を提供する。
【0069】
移動装置100の位置決定は、RF無線伝送技術に決して限定される必要がない。更に、光又は赤外線伝送手段に基づいてもよい如何なる種類の適用可能な三角測量手順が適用可能である。基準点150、152、154は床144の上の同じ高さにあることが好ましい。同じことがアクセスポイント104、106、107にも当てはまる。このように、位置決定及び/又は信号強度測定に関する誤差が低減され得る。更に、システムはまた、床144の上の異なる高さを特徴とするアクセスポイント及び基準点に実装されてもよい。
【0070】
図5は、データベースエントリーを生成するフローチャートの図である。第1のステップ200において、移動装置は三角法(好ましくは三角測量技術)を利用することにより自分の位置を決定する。移動装置の位置が正確に決定されると、以下のステップ202において、無線データ通信ネットワークの少なくとも第1のアクセスポイントにより送信された第1の信号が測定される。この第1の信号の測定は、移動装置と少なくとも第1のアクセスポイントとの間の距離を示すものとして機能する信号の強度を測定することを示す。典型的には、アクセスポイントにより送信される信号は、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントのそれぞれに特有のビーコンとして送信される。従って、送信信号を受信することにより、移動装置はまた、少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントのうち1つに受信信号を割り当てることが可能になる。次のステップ204において、移動装置は、無線データ通信ネットワークの少なくとも第2のアクセスポイントにより送信された第2の信号の強度を測定する。その後、ステップ205において、少なくとも第3のアクセスポイントにより送信された第3の信号の強度が同様に決定される。
【0071】
図示のフローチャートでは、ステップ202、204及び205は連続したステップとして図示されている。しかし、第1、第2及び第3の信号の測定はまた同時に実行されてもよい。ステップ200において移動装置の位置が決定され、ステップ202、204、205において第1、第2及び第3の信号の少なくとも第1、第2及び第3の信号強度が移動装置の位置で測定された後に、次のステップ206において、移動装置の決定された位置が第1、第2及び第3の信号強度に割り当てられる。その後、ステップ208において、第1、第2及び第3の信号強度と位置との間の割り当ては、データベースエントリーとしてデータベースに格納される。代替として、第1、第2及び第3の信号強度と位置とのデータベースへの別々の格納が本質的に位置と対応の信号強度との間の割り当てを提供するため、ステップ206はスキップされてもよい。
【0072】
データベースエントリーがステップ208において格納された後に、ステップ210において、移動装置は異なる位置に移動してもよい。移動装置の移動は、典型的には例えば清掃員により使用されてもよく、ビル内で頻繁に移動を受ける他の移動装置の移動の副産物として実施される。ステップ210において移動装置が異なる位置に動かされると、次のステップ212において、移動装置が静止位置にあるか否かが検査される。ステップ212において、移動装置が静止位置にある場合、方法はステップ200に戻り、第1及び第2の信号の信号強度を測定する移動装置の位置を決定する全体の手順が繰り返し実行される。
【0073】
ステップ212において移動装置が静止していない場合、この方法は移動装置が移動を受けるステップ210に戻る。移動装置の静止位置の検査を提供するステップ212は、移動装置の動作センサを利用することにより実装されることが好ましい。
【0074】
図6は、三角測量手順を利用することにより移動装置の位置を決定するフローチャートの図である。第1のステップ300において、位置決定手順が開始される。位置決定は、移動装置が静止状態にあることを動作センサが示すことに応じて起動されてもよい。しかし、ステップ300で位置決定手順の起動の後に、次のステップ302において、移動装置が静止位置にあるか否かが検査される。ステップ302において又はステップ302の後に移動装置が静止していない場合、この方法はステップ302に戻り、移動装置が静止しているか否かを繰り返し検査する。移動装置が静止している場合にのみ、この方法はステップ304に進み、移動装置は、少なくとも第1、第2及び第3の基準点又はアクセスポイントの全て又はいずれか1つから識別信号のシーケンスを要求する。
【0075】
従って、移動装置は、無線ネットワークの基準点又はアクセスポイントのいずれかに要求を送信するために、その無線通信モジュール126を利用する。代替として、例えば無線通信ネットワークがIEEE802.11標準に基づく場合に、原則としてステップ304がスキップされてもよい。この場合、ネットワークのアクセスポイントは、基本的に様々なアクセスポイント又は基準点の位置に関して相対的に移動装置の位置を決定することを可能にするビーコンメッセージを頻繁に放出する。
【0076】
ステップ306において、移動装置は、ネットワークの基準点又はアクセスポイントがトレースされ得る相対角度を決定するためにステラジアンを走査するために、そのビームアンテナを利用する。従って、典型的にはパラボラアンテナであるビームアンテナがある範囲の角度で走査され、角度毎に測定信号の信号強度が監視される。最大測定信号が所要の角度情報に対応することを仮定してもよい。走査される角度の範囲で同様の強度の複数の明らかに別々の強度の最大値が存在する場合には、対応する測定値が無視される。このような場合に、基準点への直接の方向が妨害されており、反射のみが測定されていることを仮定してもよい。
【0077】
従って、ステップ308において、第1の基準点又はアクセスポイントへの方向を決定するために、ステップ306で実行された走査が処理される。この方向の決定の後に、次のステップ310において、収集された方向情報が移動装置の位置を決定するために十分であるか否かが検査される。例えば、ステップ306及び308が第1の基準点のみを指す角度の決定を示す場合、第2及び第3のアクセスポイントを指す更なる角度が続いて決定される必要がある。
【0078】
従って、ステップ310は、移動装置の位置が既に決定可能であるか否かを検査する。第1、第2及び第3のアクセスポイントへの方向が決定されている場合には、この方法はステップ312に進み、移動装置の位置が三角計算に基づいて決定される。そうでない場合、第2及び第3のアクセスポイントへの必要な方向情報がまだ不足している場合、この方法はステップ304に戻り、再び識別信号のシーケンスが第2又は第3のアクセスポイントから要求される。移動装置の正確な決定を可能にする十分な方向データが収集されている限り、ステップ304〜310に記載したループは継続する。
【0079】
第1及び第2のアクセスポイントへの方向が決定された後に、ステップ312において、移動装置の位置が三角計算に基づいて決定される。従って、移動装置はまた、少なくとも第1、第2及び第3の基準点又はアクセスポイントの位置の情報を必要とする。典型的には基準点及びアクセスポイントはネットワークインフラストラクチャの一部として固定されているため、これらの位置は移動装置に格納されてもよく、無線ネットワークを介して移動装置に送信されてもよい。
【0080】
代替として、移動装置の位置決定はまた、ネットワーク構成要素を用いて実行されてもよい。この場合、移動装置は、無線通信モジュールを利用することにより、第1、第2及び第3の基準点又はアクセスポイントへの測定された方向を無線ネットワークに送信する必要がある。移動装置がビルのレベル内での2次元の移動に制限されることを仮定すると、移動装置の位置の明確な決定は、第1、第2及び第3の基準点又はアクセスポイントへの方向の測定を必要とする。
【0081】
更なる基準点又はアクセスポイントが利用可能である場合、移動装置の位置決定は、これらの更なる基準点又はアクセスポイントを考慮してもよい。アクセスポイント又は基準点への方向のいずれか1つが測定誤差を受ける場合に、移動装置の位置を決定する式のシステムは過剰決定になることがある。特にこのような場合に、移動装置及びそのコンピュータプログラムプロダクトは、測定値を破棄すること又は近くの位置で決定された位置を重み付けることを可能にする重み付け関数を用いて実現される。
【0082】
ステップ312における移動装置の位置の決定の後に、次のステップ314において、位置決定手順の間に移動装置が移動しているか否かが検査される。ステップ314において移動が検出された場合、この方法はステップ318に進み、決定された位置が破棄される。従って、この場合には、移動装置の移動のため測定値が測定誤差を受けると仮定されてもよい。ステップ318の後に、この方法は、移動装置が静止しているか否かを検査することに専念するループを記述するステップ302に戻る。ステップ314において移動装置の動きが検出されない反対の場合、この方法はステップ316に進み、第1及び第2のアクセスポイントにより送信される信号の信号強度が決定される。従って、図6のステップ316は図5のステップ202及び204に対応する。
【0083】
ステップ314に記載の何らかの動作検出は、より定期的に(例えば位置決定の単一のステップの間に)実行されることが好ましい。移動装置の動きを頻繁に又はほぼ継続して監視することにより、継続中の位置及び/又は信号強度測定が直ちに破棄され得る。この結果、移動装置の他の静止位置に到達するとすぐに、他の測定が行われてもよい。
【0084】
従って、本発明は、無線通信ネットワークのアクセスポイントの位置に応じた信号特性を示すデータベースを自発的に生成して更新する移動装置及び方法を提供する。移動装置はビルを通じた頻繁な移動を受けるトローリーのような装置に取り付けられることが好ましいため、ネットワーク管理者はもはや異なる位置で手動で信号強度を測定する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】データベースと移動装置とを有するネットワークシステムのブロック図
【図2】無線データ通信ネットワーク及び移動装置のブロック図
【図3】移動装置の詳細なブロック図
【図4】無線データ通信ネットワーク環境でトローリーのような装置に取り付けられた移動装置の概略図
【図5】データベースエントリーを生成するフローチャート
【図6】三角技術を用いて移動装置の位置を決定するフローチャート
【符号の説明】
【0086】
100 移動装置
102 ネットワーク
104 アクセスポイント
106 アクセスポイント
107 アクセスポイント
108 データベース
110 データベースの列
112 データベースの列
114 データベースの列
116 動作センサ
118 位置決めモジュール
120 測定モジュール
124 フェーズドアンテナアレイ
126 ビームアンテナ
128 無線通信モジュール
130 処理ユニット
132 データベースモジュール
140 トローリー
142 壁
144 床
150 基準点
152 基準点
154 基準点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1及び第2のアクセスポイントを有する無線データ通信ネットワークのデータベースを生成する移動装置であって:
−三角技術に基づいて少なくとも第1、第2及び第3の基準点を用いて前記移動装置の位置を決定する手段と、
−前記少なくとも第1のアクセスポイントにより無線送信される少なくとも第1の信号を測定し、前記少なくとも第2のアクセスポイントにより無線送信される少なくとも第2の信号を測定し、前記少なくとも第3のアクセスポイントにより無線送信される少なくとも第3の信号を測定する手段と、
−前記位置と、前記少なくとも第1、第2及び第3の信号とを前記データベースに格納する手段と
を有する移動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動装置であって、
前記移動装置が静止しているか否かを決定するように適合された動作検出器を更に有する移動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の移動装置であって、
前記移動装置の前記位置を決定する手段は、チルト・ビームアンテナ及び/又はフェーズドアンテナアレイを利用するように適合される移動装置。
【請求項4】
請求項1に記載の移動装置であって、
前記少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントのうちいずれかと前記移動装置との間で無線データ送信を可能にする無線通信モジュールを更に有する移動装置。
【請求項5】
請求項1に記載の移動装置であって、
識別信号が前記少なくとも第1、第2及び第3の基準点により無線送信されることを要求する手段を更に有する移動装置。
【請求項6】
請求項1に記載の移動装置であって、
前記無線データ通信ネットワークのサービスエリア内で移動可能なトローリーのような装置に前記移動装置を取り付けるように適合された固定手段を更に有する移動装置。
【請求項7】
−少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントを有する無線データ通信ネットワークと、
−三角技術に基づいて少なくとも第1、第2及び第3の基準点を用いて位置を決定するように適合され、前記少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより無線送信された少なくとも第1、第2及び第3の信号を測定するように更に適合された移動装置と、
−前記少なくとも第1、第2及び第3の信号の強度と共に前記移動装置の前記位置を格納するように適合されたデータベースと
を有するネットワークシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のネットワークシステムであって、
前記少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントは、前記少なくとも第1、第2及び第3の基準点として機能するネットワークシステム。
【請求項9】
少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントを有する無線データ通信ネットワークのデータベースを生成する方法であり、移動装置を利用する方法であって:
−三角技術に基づいて少なくとも第1、第2及び第3の基準点を用いて前記移動装置の位置を決定するステップと、
−前記少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより無線送信される少なくとも第1、第2及び第3の信号を測定し、前記少なくとも第1、第2及び第3の信号は前記移動装置により測定されるステップと、
−前記少なくとも第1、第2及び第3の信号を前記移動装置の前記位置に割り当てるステップと、
−前記少なくとも第1、第2及び第3の信号と前記移動装置の前記位置との間の割り当てを前記データベースのエントリーとして格納するステップと
を有する方法。
【請求項10】
少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントを有する無線データ通信ネットワークのデータベースを生成するコンピュータプログラムであって:
−少なくとも第1、第2及び第3の基準点を用いて移動装置の位置を決定する三角計算手順を実行するプログラム手段と、
−前記少なくとも第1、第2及び第3のアクセスポイントにより送信されて前記移動装置により測定される少なくとも第1、第2及び第3の信号に前記移動装置の前記位置を割り当てるプログラム手段と、
−前記少なくとも第1、第2及び第3の信号と前記移動装置の前記位置との間の割り当てを前記データベースのエントリーとして格納するプログラム手段と
を有するコンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のコンピュータプログラムであって、
第1のデータベースエントリーの位置と第2のデータベースエントリーの位置との間の距離が所定の閾値より下である場合に、少なくとも第1及び第2のデータベースエントリーの間で重み付け手順を実行するように適合されたコンピュータプログラム手段を更に有するコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項10に記載のコンピュータプログラムであって、
前記位置の決定の間に前記移動装置の動きが動作センサを用いて検出された場合に、三角計算を破棄するように適合されたコンピュータプログラム手段を更に有するコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−501974(P2008−501974A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526628(P2007−526628)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051771
【国際公開番号】WO2005/121829
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】