説明

移動通信端末、測位システム、測位方法およびプログラム

【課題】測位処理による消費電力を抑制することができる移動通信端末を提供する。
【解決手段】移動通信端末10は、基地局と無線通信する通信部18と、通信部18の通信先を一の基地局から他の基地局へと切り替えるハンドオーバ処理を実行するハンドオーバ実行部13と、GPS測位部11と、GPS測位部11より測位精度が低くかつ消費電力が少ない方法で、測位情報を間欠的に取得するセクタ測位部12と、ハンドオーバ実行部13によってハンドオーバ処理が実行された頻度を示す頻度情報に基づいて、GPS測位部11またはセクタ測位部12のいずれか一方を測位情報の取得元として起動させ他方の消費電力を低減させる、または測位情報を取得する頻度を変更させる測位制御部14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信端末、測位システム、測位方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動通信端末の位置情報を使ったサービスの普及が進んでいる。また、ユーザのいる位置をリアルタイムに把握しその情報を活かすようなサービスに進化してきている。常時位置を把握するためは、移動通信端末のGPS機能を常時起動しておけばよいが、GPS測位をするには、膨大な電力を必要とする。一方、移動通信端末においては、小型・薄型化が重要視され、容量の大きなバッテリを搭載することが困難であることから、いかに消費電力を抑えてバッテリの持ち時間を延ばすかが重要となってきている。
【0003】
この種の技術として、特許文献1(特開平10−281801号公報)には、次のようなシステムが記載されている。このシステムは、GPSによる測位、無線基地局による測位、電波マーカによる測位を適切に切り替え、移動通信端末の位置を常時測位可能としている。また、上記した測位方法では測位できない場合については、測位情報の履歴や、移動通信端末に搭載されている加速度センサから得られる情報等から、移動方向と移動速度を算出し、これらに基づいて現在位置を予測することもできる。
【0004】
また、この種の技術として、特許文献2(特開2008−180582号公報)には、次のようなシステムが記載されている。このシステムは、設定された目的地から遠い位置の基地局からの到来電波を受信した場合、基地局の位置から移動通信端末の位置を特定する。また、このシステムは、設定された目的地から近い位置の基地局からの到来電波を受信した場合、GPSを利用した測位方法で移動通信端末の位置を測位する。これにより、目的地から遠い位置に移動通信端末が存在するとき、移動通信端末の消費電力が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−281801号公報
【特許文献2】特開2008−180582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記技術は、以下の点で改善の余地を有していた。特許文献1に記載の技術は、複数の測位方法を同時に機能させているので、移動通信端末の消費電力は増大する。また、特許文献2に記載の技術は、目的地を設定しなくては利用することができない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、測位処理による消費電力を抑制することができる移動通信端末、測位システム、測位方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、基地局と無線通信する通信手段と、前記通信手段の通信先を一の基地局から他の基地局へと切り替えるハンドオーバ処理を実行するハンドオーバ実行手段と、自機の位置を示す測位情報を間欠的に取得する第1の測位手段と、前記第1の測位手段より測位精度が低くかつ消費電力が少ない方法で、前記測位情報を間欠的に取得する第2の測位手段と、前記ハンドオーバ実行手段によって前記ハンドオーバ処理が実行された頻度を示す頻度情報に基づいて、前記第1の測位手段または前記第2の測位手段のいずれか一方を前記測位情報の取得元として起動させ他方の消費電力を低減させる、または前記測位情報を取得する頻度を変更させる測位制御手段と、を備えることを特徴とする移動通信端末が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、移動通信端末の位置を示す測位情報を間欠的に当該移動通信端末に取得させる第1の測位手段と、前記第1の測位手段より測位精度が低くかつ前記移動通信端末の消費電力が少ない方法で、前記測位情報を間欠的に当該移動通信端末に取得させる第2の測位手段と、前記移動通信端末の通信先を一の基地局から他の基地局へと切り替えるハンドオーバ処理を実行するハンドオーバ実行手段と、前記ハンドオーバ実行手段によって前記ハンドオーバ処理が実行された頻度を示す頻度情報に基づいて、前記第1の測位手段または前記第2の測位手段のいずれか一方を前記測位情報の取得元として起動させ他方の消費電力を低減させる、または前記移動通信端末が前記測位情報を取得する頻度を変更させる測位制御手段と、を備えることを特徴とする測位システムが提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、移動通信端末の位置を示す測位情報を間欠的に当該移動通信端末に取得させる第1の測位手段と、前記第1の測位手段より測位精度が低くかつ前記移動通信端末の消費電力が少ない方法で、前記測位情報を間欠的に当該移動通信端末に取得させる第2の測位手段と、のいずれかを用いて前記移動通信端末に前記測位情報を取得させる測位ステップと、前記移動通信端末の通信先を一の基地局から他の基地局へと切り替えるハンドオーバ処理を実行するハンドオーバ実行ステップと、前記ハンドオーバ実行ステップで前記ハンドオーバ処理が実行された頻度を示す頻度情報に基づいて、前記第1の測位手段または前記第2の測位手段のいずれか一方を前記測位ステップで用いる測位手段として起動させ他方の消費電力を低減させる、または前記測位ステップで前記移動通信端末が前記測位情報を取得する頻度を変更させる測位制御ステップと、を備えることを特徴とする測位方法が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、コンピュータが読み出し可能な記憶媒体に格納されるプログラムであって、基地局と無線通信する通信処理と、前記通信処理における通信先を一の基地局から他の基地局へと切り替えるハンドオーバ処理と、自機の位置を示す測位情報を間欠的に取得する第1の測位処理と、前記第1の測位処理より測位精度が低くかつ消費電力が少ない方法で、前記測位情報を間欠的に取得する第2の測位処理と、前記ハンドオーバ処理が実行された頻度を示す頻度情報に基づいて、前記第1の測位処理または前記第2の測位処理のいずれか一方を選択し実行させ他方の消費電力を低減させる、または前記測位情報を取得する頻度を変更させる測位制御処理と、を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測位処理による消費電力を抑制することができる移動通信端末、測位システム、測位方法およびプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る測位システムの構成図である。
【図2】GPS測位部による測位処理に関するシーケンス図である。
【図3】セクタ測位部による測位処理に関するシーケンス図である。
【図4】本実施形態の移動通信端末の構成図である。
【図5】ハンドオーバ処理に関するシーケンス図である。
【図6】通信履歴記憶部に記憶されるデータテーブルの一例を示す図である。
【図7】本実施形態の測位システムにおける測位処理を含むフローチャートである。
【図8】本実施形態の測位システムにおけるハンドオーバ処理を含むフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る測位システム100の構成図である。本実施形態の測位システム100は、基地局30、基地局40または基地局50と無線通信する移動通信端末10を備える。移動通信端末10は、GPS受信機として機能し、GPS衛星60、GPS衛星70またはGPS衛星80を利用して移動通信端末10の位置を算出することができる。なお、GPS衛星60、GPS衛星70またはGPS衛星80は、GPS(Global Positioning System)による測位処理に用いられる衛星である。
【0016】
また、測位システム100は、移動通信端末10と無線通信する基地局の位置または当該基地局の通信エリアを示すセクタ情報を、移動通信端末10の測位情報として求め、求めた測位情報を移動通信端末10に出力する測位装置20を備える。なお、移動通信端末10がGPSを利用して測位情報を算出するより、測位装置20が求めたセクタ情報を測位情報として取得する方が、測位精度が低くなるが、移動通信端末10が負担する消費電力が少なくて済む。ここで、測位精度とは、測位対象である移動通信端末10の位置の絞り込み範囲の大小のことである。移動通信端末10がGPSを利用して算出する測位情報は、測位装置20が算出するセクタ情報よりも狭い領域に限定して、移動通信端末10の位置を示すことができる。
【0017】
図2は、本実施形態の移動通信端末10の構成図である。移動通信端末10は、GPS測位部11、セクタ測位部12、ハンドオーバ実行部13、測位制御部14、通信履歴記憶部15、基地局情報取得部16、アンテナ17および通信部18から構成される。
【0018】
通信部18は、基地局30、40、50と無線通信する。より詳細には、通信部18は、アンテナ17を介して基地局30、40、50と無線信号を送受信する。
【0019】
GPS測位部11(第1の測位手段)は、GPSを利用して測位処理を行い、自機(移動通信端末10)の位置を示す測位情報を間欠的に取得する。GPS測位部11による測位処理について、ここで間欠的とは、一定の時間間隔であってもよいし、不定の時間間隔であってもよい。なお、本実施形態においてGPS測位部11は、測位制御部14によって設定される設定時間tごとに測位情報を取得するものとする。すなわち、GPS測位部11は、設定時間tごとに測位処理を実行する。
【0020】
図3のシーケンス図を用いて詳細に説明する。なお、図3のシーケンス図に記載されているGPS衛星とは、GPS衛星60、GPS衛星70およびGPS衛星80の各々のことであり、各々のGPS衛星が図3のシーケンスに記載されている処理を実行するものとする。
【0021】
まず、GPS測位部11は、測位処理を実行してから設定時間t経過したとき、再び測位処理を開始する(ステップT1)。そして、GPS測位部11は、GPS信号から測位信号を受信し(ステップT2)、ステップT2で受信した受信時刻や、測位信号の中に埋め込まれた種々の情報に基づいて、移動通信端末10の位置を算出する(ステップT3)。
【0022】
セクタ測位部12(第2の測位手段)は、上述したセクタ情報を移動通信端末10の測位情報として間欠的に取得する。ここで間欠的とは、一定の時間間隔であってもよいし、不定の時間間隔であってもよい。なお、本実施形態においてセクタ測位部12は、測位制御部14によって設定される設定時間tごとに測位情報を取得するものとする。すなわち、測位装置20は、設定時間tごとにセクタ情報をセクタ測位部12に送信する。なお、設定時間tと設定時間tとは等しくてもよいし、異なる値であってもよい。
【0023】
セクタ測位部12による測位処理について、図4のシーケンス図を用いて説明する。まず、セクタ測位部12は、測位情報(セクタ情報)を受信してから設定時間t経過したとき、移動通信端末10が現在無線通信している基地局に対応するセクタ情報を、測位装置20に要求する(ステップT11)。続いて、測位装置20は、セクタ情報を要求した移動通信端末10と無線通信している基地局を特定し、特定された基地局に対応するセクタ情報をデータベースから検索する(ステップT12)。そして、測位装置20は、特定したセクタ情報を測位情報としてセクタ測位部12に送信する(ステップT13)。
【0024】
ハンドオーバ実行部13は、通信部18(移動通信端末10)の通信先を一の基地局から他の基地局へと切り替えるハンドオーバ処理を実行する。上記ハンドオーバ処理について、図5のシーケンス図を用いて詳細に説明する。なお、ここでは、ハンドオーバ処理前の通信先を基地局30とし、ハンドオーバ処理後の通信先を基地局40とする。
【0025】
まず、基地局30および基地局40は、RS(Reference Symbol)を移動通信端末10に送信する(ステップT21、T22)。次に、移動通信端末10は、受信したRSに基づいてRSRP(Reference Signal Received Power)またはRSRQ(Reference Signal Received Quality)の少なくとも一方を計測する(ステップT23)。ここで、RSRPとは、いわゆる基準信号受信電力であって、本実施形態においては受信したRSの受信電力のことである。また、RSRQとは、いわゆる基準信号受信品質であって、本実施形態においては受信したRSの受信電力と同一の周波数帯域において受信したノイズ電力との比である。
【0026】
また、基地局30はUL(Up Link)Grantを移動通信端末10に送信し(ステップT24)、移動通信端末10はUL Grantに応答してMeasurement Reportを送信する(ステップT25)。なお、Measurement Reportは、ステップT23で測定されたRSRPまたはRSRQをUL Grantに対応するリソースに多重させた信号である。
【0027】
さらに、基地局30は、ステップT25で受信したMeasurement Reportから、基地局30と移動通信端末10との間のRSRPまたはRSRQと、基地局40と移動通信端末10との間のRSRPまたはRSRQと、を抽出して取得する(ステップT26)。そして、基地局30は、ステップT26で取得された情報を比較し(ステップT27)、基地局40と移動通信端末10との間のRSRPまたはRSRQがより良好であると判定された場合、基地局30は、移動通信端末10に基地局30から基地局40へのハンドオーバ処理を実行させることを決定する(ステップT28)。そして、基地局30はハンドオーバ処理の要求(HO Request)を基地局40に送信し(ステップT29)、基地局40はハンドオーバ処理の要求確認(HO Request ACK)を基地局30に送信する(ステップT30)。次に、基地局30はハンドオーバ処理の指令(HO Command)を移動通信端末10に送信し(ステップT31)、移動通信端末10はハンドオーバ処理の指令確認(HO Command ACK)を基地局30に送信する(ステップT32)。そして、移動通信端末10(ハンドオーバ実行部13)は、基地局30から基地局40へのハンドオーバ処理を実行する(ステップT33)。
【0028】
通信履歴記憶部15は、通信部18(移動通信端末10)が無線通信した基地局を示す基地局情報を記憶する。また、通信履歴記憶部15は、基地局情報を取得した時刻を示す時刻情報を記憶する。ここで、基地局情報を取得するタイミングは、当該基地局情報が示す基地局へのハンドオーバ処理が完了した旨を通知されたときが望ましいが、これに限らず移動通信端末10と当該基地局とが通信接続している間であればよい。図6に、通信履歴記憶部15に記憶されるデータテーブルの一例を示す。
【0029】
基地局情報取得部16は、通信履歴記憶部15に記憶された基地局情報の一部または全部を取得する。より詳細には、基地局情報取得部16は、所定回数のハンドオーバ処理の実行に要した時間の間に通信履歴記憶部15に記憶された基地局情報を取得する。ここで所定回数を三回とした場合における基地局情報取得部16の処理を、図6のデータテーブルを用いて具体的に説明する。基地局情報取得部16は、上記データテーブルにおける最新の基地局情報を含めて三回まで遡って基地局情報を取得する(図6におけるNo.1〜No.3の基地局情報)。このとき、No.1の時刻情報とNo.3の時刻情報との差分が、所定回数のハンドオーバ処理の実行に要した時間である。なお、上記所定回数は三回以上であることが望ましい。
【0030】
測位制御部14は、ハンドオーバ実行部13によってハンドオーバ処理が実行された頻度を示す頻度情報に基づいて、GPS測位部11とセクタ測位部12のいずれか一方を測位情報の取得元として起動させ、他方の消費電力を低減させる。ここで、消費電力を低減させるとは、GPS測位部11またはセクタ測位部12を停止させることであってもよいし、待機モードにすることであってもよい。待機モードにすることによって、測位制御部14からの制御に応じて比較的速やかに起動することができる。
【0031】
より詳細には、基地局情報取得部16によって取得された基地局情報が全て異なるとき、かつ所定回数のハンドオーバ処理の実行に要した時間が閾値未満であるとき、測位制御部14は、セクタ測位部12を測位情報の取得元として起動させる。また、基地局情報取得部16によって取得された基地局情報の一部が一致するとき、または所定回数のハンドオーバ処理の実行に要した時間が閾値以上であるとき、測位制御部14は、GPS測位部11を測位情報の取得元とて起動させる。
【0032】
移動通信端末10に内包される構成の全部または一部は、ハードウェアで実現されてもよいし、あるいは、プロセッサに処理を実行させるプログラム(またはプログラムコード)で実現されてもよい。
【0033】
移動通信端末10に内包される構成がプログラムによって実施される場合、当該プログラムはプロセッサ(コンピュータ)読み出し可能な記憶媒体に格納される。そして、当該プログラムは、基地局と無線通信する通信処理をプロセッサに実行させる。また、当該プログラムは、通信処理における通信先を一の基地局から他の基地局へと切り替えるハンドオーバ処理をプロセッサに実行させる。そして、当該プログラムは、自機の位置を示す測位情報を間欠的に取得する第1の測位処理(GPS測位部11による測位処理)をプロセッサに実行させる。そして、当該プログラムは、第1の測位処理より測位精度が低くかつ消費電力が少ない方法で、測位情報を間欠的に取得する第2の測位処理(セクタ測位部12による測位処理)をプロセッサに実行させる。そして、当該プログラムは、ハンドオーバ処理が実行された頻度を示す頻度情報に基づいて、第1の測位処理または第2の測位処理のいずれか一方を選択し実行させ他方の消費電力を低減させる、または測位情報を取得する頻度を変更させる測位制御処理をプロセッサに実行させる。
【0034】
図7は、本実施形態の測位システム100における測位処理を含むフローチャートである。このフローチャートは、GPS測位部11またはセクタ測位部12のいずれかを用いて移動通信端末10の測位情報を取得させる測位ステップ(ステップS1)を備える。なお、ステップS1が実行された後、設定時間tまたは設定時間tが経過しない間(ステップS2のNO)は待機状態となり、設定時間tまたは設定時間tが経過したとき(ステップS2のYES)、再びステップS1が実行される。なお、設定時間tまたは設定時間tのいずれを用いるかは、ステップS1で用いる測位手段が、GPS測位部11であるか、またはセクタ測位部12であるかによる。
【0035】
このフローチャートは、移動通信端末10の測位を続ける間(ステップS3のNO)は、ステップS1とステップS2とが繰り返される。また、移動通信端末10の測位を終了するとき(ステップS3のYES)、このフローチャートは終了となる。
【0036】
図8は、本実施形態の測位システム100におけるハンドオーバ処理を含むフローチャートである。このフローチャートは、移動通信端末10の通信先を一の基地局から他の基地局へと切り替えるハンドオーバ処理が実行されるとき(ステップS11のYES)、ハンドオーバ処理を実行するハンドオーバ実行ステップ(ステップS12)を備える。なお、このフローチャートは、ハンドオーバ処理が実行されない間(ステップS11のNO)、待機状態となる。
【0037】
また、このフローチャートにおいて、通信履歴記憶ステップ(ステップS13)では、移動通信端末10が無線通信した基地局を示す基地局情報を記憶する。そして、基地局情報取得ステップ(ステップS14)では、所定回数のハンドオーバ処理の実行に要した時間が閾値未満であるとき、上記時間の間にステップS13で記憶された基地局情報を取得する。
【0038】
ステップS14で取得された基地局情報が全て異なるとき、測位制御ステップ(ステップS16)では、ステップS12でハンドオーバ処理が実行された頻度を示す頻度情報に基づいて、GPS測位部11またはセクタ測位部12のいずれか一方を、測位ステップ(図7のステップS1)で用いる測位手段として起動させ、他方の消費電力を低減させる。より詳細には、ステップS14で取得された基地局情報が全て異なるとき(ステップS15のYES)、ステップS16では、所定回数のハンドオーバ処理の実行に要した時間に応じて、測位ステップ(図7のステップS1)で用いる測位手段をGPS測位部11またはセクタ測位部12のいずれかから選択する。また、ステップS14で取得された基地局情報の一部が一致するとき(ステップS15のNO)、再びハンドオーバ処理が実行されるまで、待機状態となる。
【0039】
このフローチャートは、移動通信端末10が無線通信を続ける間(ステップS17のNO)は、ステップS11〜ステップS16が繰り返される。また、移動通信端末10が無線通信を終了するとき(ステップS17のYES)、このフローチャートは終了となる。
【0040】
ここで、本実施形態の効果について述べる。本実施形態は、ハンドオーバ処理が実行された頻度に応じて、移動通信端末10が取得する(測位装置20が測位する)測位情報の精度を変更させることができる。これにより、ハンドオーバ処理の頻度が多い場合、移動通信端末10が高速で移動していることが推察されるので、測位精度が低く消費電力が少ないセクタ測位部12による測位情報を移動通信端末10が取得するように制御することができる。また、ハンドオーバ処理の頻度が少ない場合、移動通信端末10が低速で移動していることが推察されるので、測位精度が高く消費電力が多いGPS測位部11による測位情報を移動通信端末10が取得するように制御することができる。
【0041】
また、本実施形態は、最新の基地局情報から所定回数だけ遡った基地局情報までを参照し、この中で一致する基地局情報がないとき、移動通信端末10が取得する(測位装置20が測位する)測位情報の精度を変更させる。これにより、複数の基地局の通信可能エリアに跨る位置にいる場合などにおいて、移動通信端末10が移動していないのにハンドオーバ処理が実行された場合については、測位制御部14の制御条件に含まれない。従って、測位制御部14が実態に反した制御を行う可能性が低くなる。
【0042】
さらに、本実施形態は、ハンドオーバ処理の頻度を制御条件としている。ハンドオーバ処理は、移動通信端末が携帯電話機やPHS等であれば一般的に実行される処理であるため、移動通信端末10に加速度センサ等の付帯構成要素を追加する必要がなく、処理負担や消費電力についても軽減される。
【0043】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0044】
図1において、GPS衛星は3つ図示したが、4つ以上であってもよい。また、基地局も3つ図示したが、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0045】
図2、図3および図5のシーケンス図で説明したGPSによる測位処理、セクタ情報による測位処理、およびハンドオーバ処理の処理手順は一例であって、この手順に限るものではない。
【0046】
上記の実施形態において、本発明の第1の測位手段はGPS測位部11、第2の測位手段はセクタ測位部12としたが、本発明の第1の測位手段と第2の測位手段とは必ずしも異なる構成要素である必要はない。例えば、ともにGPSを利用した測位手段であって、モードを選択することによって測位情報の精度と移動通信端末の消費電力が変化する測位手段であってもよい。
【0047】
上記の実施形態において、GPS測位部11は、GPSを利用して測位情報を算出して取得したが、他の装置で算出された測位情報を取得してもよい。また、上記の実施形態において、セクタ測位部12は、測位装置20によって求められたセクタ情報を測位情報として取得したが、セクタ測位部12が求めたセクタ情報を測位情報として取得してもよい。
【0048】
上記の実施形態において、測位制御部14は、頻度情報に基づいて、GPS測位部11とセクタ測位部12とを切り替えて、取得する測位情報の測位精度を変更する。しかし、測位制御部14は、頻度情報に基づいて、測位情報を取得する(測位装置20が測位情報を出力する)頻度を変更させてもよい。より詳細には、測位制御部14は、ハンドオーバ実行部13によってハンドオーバ処理が実行された頻度が多いほど、設定時間tや設定時間tの値を大きくしてもよい。また、測位制御部14は、ハンドオーバ実行部13によってハンドオーバ処理が実行された頻度が少ないほど、設定時間tや設定時間tの値を小さくしてもよい。このように処理しても、移動通信端末10の消費電力を抑制することができる。
【0049】
上記の実施形態において、基地局情報取得部16によって取得された基地局情報が全て異なるとき、かつ所定回数のハンドオーバ処理の実行に要した時間が閾値未満であるとき、測位制御部14は、セクタ測位部12を測位情報の取得元として起動させる旨を説明した。しかし、測位制御部14の動作条件はこれに限らない。例えば、基地局情報取得部16によって取得された基地局情報のうち、重複する基地局情報が所定数未満であるとき、かつ所定回数のハンドオーバ処理の実行に要した時間が閾値未満であるとき、測位制御部14は、セクタ測位部12を測位情報の取得元として起動させるもよい。
【0050】
当然、測位制御部14は、頻度情報に基づいて、取得する測位情報の精度と、測位情報を取得する頻度と、を双方共に変更させてもよい。
【0051】
上記実施形態において、頻度情報は、所定回数のハンドオーバ処理の実行に要した時間によって示される事例のみを述べたが、これに限らなくてもよい。例えば、頻度情報は、所定期間内にハンドオーバ処理が実行された回数、または第1のハンドオーバ処理が実行された時刻と第2のハンドオーバ処理が実行された時刻との時間差等であってもよいし、ここに列挙した情報を複数組み合わせてもよい。
【0052】
また、上記実施形態の説明には、複数のフローチャートを用いており、それぞれに複数のステップを順番に記載してあるが、その記載の順番は、本発明の測位方法のステップを実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の測位方法を実行するときには、その複数のステップの順番は内容的に支障しない範囲で変更することができる。
【0053】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各構成要素の機能などを具体的に説明したが、その機能などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 移動通信端末
11 測位部
12 セクタ測位部
13 ハンドオーバ実行部
14 測位制御部
15 通信履歴記憶部
16 基地局情報取得部
17 アンテナ
18 通信部
20 測位装置
30 基地局
40 基地局
50 基地局
60 GPS衛星
70 GPS衛星
80 GPS衛星
100 測位システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と無線通信する通信手段と、
前記通信手段の通信先を一の基地局から他の基地局へと切り替えるハンドオーバ処理を実行するハンドオーバ実行手段と、
自機の位置を示す測位情報を間欠的に取得する第1の測位手段と、
前記第1の測位手段より測位精度が低くかつ消費電力が少ない方法で、前記測位情報を間欠的に取得する第2の測位手段と、
前記ハンドオーバ実行手段によって前記ハンドオーバ処理が実行された頻度を示す頻度情報に基づいて、前記測位情報の取得元として前記第1の測位手段または前記第2の測位手段のいずれか一方を起動させ他方の消費電力を低減させる、または前記測位情報を取得する頻度を変更させる測位制御手段と、
を備えることを特徴とする移動通信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の移動通信端末であって、
前記頻度情報は、所定期間内に前記ハンドオーバ処理が実行された回数、第1のハンドオーバ処理が実行された時刻と第2のハンドオーバ処理が実行された時刻との時間差、または所定回数の前記ハンドオーバ処理の実行に要した時間の少なくとも一つにより示されることを特徴とする移動通信端末。
【請求項3】
請求項2に記載の移動通信端末であって、
前記測位制御手段は、
前記所定回数の前記ハンドオーバ処理の実行に要した時間が閾値未満であるとき、前記第2の測位手段を前記測位情報の取得元として起動させ、
当該時間が前記閾値以上であるとき、前記第1の測位手段を前記測位情報の取得元として起動させることを特徴とする移動通信端末。
【請求項4】
請求項3に記載の移動通信端末であって、
前記通信手段が無線通信した前記基地局を示す基地局情報を記憶する通信履歴記憶手段と、
前記通信履歴記憶手段に記憶された前記基地局情報の一部または全部を取得する基地局情報取得手段と、をさらに備え、
前記基地局情報取得手段によって取得された前記基地局情報のうち、重複する前記基地局情報が所定数未満であって、かつ当該時間が前記閾値未満であるとき、前記測位制御手段は、前記第2の測位手段を前記測位情報の取得元として起動させることを特徴とする移動通信端末。
【請求項5】
移動通信端末の位置を示す測位情報を間欠的に当該移動通信端末に取得させる第1の測位手段と、
前記第1の測位手段より測位精度が低くかつ前記移動通信端末の消費電力が少ない方法で、前記測位情報を間欠的に当該移動通信端末に取得させる第2の測位手段と、
前記移動通信端末の通信先を一の基地局から他の基地局へと切り替えるハンドオーバ処理を実行するハンドオーバ実行手段と、
前記ハンドオーバ実行手段によって前記ハンドオーバ処理が実行された頻度を示す頻度情報に基づいて、前記測位情報の取得元として前記第1の測位手段または前記第2の測位手段のいずれか一方を起動させ他方の消費電力を低減させる、または前記移動通信端末が前記測位情報を取得する頻度を変更させる測位制御手段と、
を備えることを特徴とする測位システム。
【請求項6】
請求項5に記載の測位システムであって、
前記頻度情報は、所定期間内に前記ハンドオーバ処理が実行された回数、第1のハンドオーバ処理が実行された時刻と第2のハンドオーバ処理が実行された時刻との時間差、または所定回数の前記ハンドオーバ処理の実行に要した時間の少なくとも一つにより示されることを特徴とする測位システム。
【請求項7】
請求項6に記載の測位システムであって、
前記測位制御手段は、
前記所定回数の前記ハンドオーバ処理の実行に要した時間が閾値未満であるとき、前記第2の測位手段を前記測位情報の取得元として起動させ、
当該時間が前記閾値以上であるとき、前記第1の測位手段を前記測位情報の取得元として起動させることを特徴とする測位システム。
【請求項8】
請求項7に記載の測位システムであって、
前記移動通信端末が無線通信した前記基地局を示す基地局情報を記憶する通信履歴記憶手段と、
前記通信履歴記憶手段に記憶された前記基地局情報の一部または全部を取得する基地局情報取得手段と、をさらに備え、
前記基地局情報取得手段によって取得された前記基地局情報のうち、重複する前記基地局情報が所定数未満であって、かつ当該時間が前記閾値未満であるとき、前記測位制御手段は、前記第2の測位手段を前記測位情報の取得元として起動させることを特徴とする測位システム。
【請求項9】
移動通信端末の位置を示す測位情報を間欠的に当該移動通信端末に取得させる第1の測位手段と、前記第1の測位手段より測位精度が低くかつ前記移動通信端末の消費電力が少ない方法で、前記測位情報を間欠的に当該移動通信端末に取得させる第2の測位手段と、のいずれかを用いて前記移動通信端末に前記測位情報を取得させる測位ステップと、
前記移動通信端末の通信先を一の基地局から他の基地局へと切り替えるハンドオーバ処理を実行するハンドオーバ実行ステップと、
前記ハンドオーバ実行ステップで前記ハンドオーバ処理が実行された頻度を示す頻度情報に基づいて、前記測位ステップで用いる測位手段を前記第1の測位手段または前記第2の測位手段のいずれか一方を起動させ他方の消費電力を低減させる、または前記測位ステップで前記移動通信端末が前記測位情報を取得する頻度を変更させる測位制御ステップと、
を備えることを特徴とする測位方法。
【請求項10】
請求項9に記載の測位方法であって、
前記移動通信端末が無線通信した前記基地局を示す基地局情報を記憶する通信履歴記憶ステップと、
前記通信履歴記憶ステップで記憶された前記基地局情報の一部または全部を取得する基地局情報取得ステップと、をさらに備え、
前記基地局情報取得ステップで取得された前記基地局情報のうち、重複する前記基地局情報が所定数未満であって、かつ当該時間が前記閾値未満であるとき、前記測位制御ステップでは、前記第2の測位手段を前記測位情報の取得元として起動させることを特徴とする測位方法。
【請求項11】
コンピュータが読み出し可能な記憶媒体に格納されるプログラムであって、
基地局と無線通信する通信処理と、
前記通信処理における通信先を一の基地局から他の基地局へと切り替えるハンドオーバ処理と、
自機の位置を示す測位情報を間欠的に取得する第1の測位処理と、
前記第1の測位処理より測位精度が低くかつ消費電力が少ない方法で、前記測位情報を間欠的に取得する第2の測位処理と、
前記ハンドオーバ処理が実行された頻度を示す頻度情報に基づいて、前記測位情報を取得する処理を前記第1の測位処理または前記第2の測位処理のいずれか一方を実行させ他方の消費電力を低減させる、または前記測位情報を取得する頻度を変更させる測位制御処理と、
を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−43479(P2011−43479A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193504(P2009−193504)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】