説明

種々の配列を有するタンパク質から形成されたアミロイドに共通の高分子量凝集中間体に特異的なモノクローナル抗体

アミロイド疾患(例えばアルツハイマー病)に罹患しているヒトまたは動物のアミロイド原線維形成の一因となる前原線維凝集物の配座エピトープに特異的なモノクローナル抗体の製造方法、並びにハイブリドーマおよび前記から生成されるモノクローナル抗体が提供される。さらにまた、アルツハイマー病または他のアミロイド疾患に対するヒトまたは動物の免疫におけるそのようなモノクローナル抗体の使用、及び/又はアルツハイマー病または他のアミロイド疾患の診断または検出のためのそのようなモノクローナル抗体の使用が提供される。前記モノクローナル抗体は、抗炎症剤(例えば金または金含有化合物)と同時にまたは前記と併用して投与され、アミロイド疾患(例えばアルツハイマー病)に付随する神経の炎症を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願:本出願は、米国仮特許出願60/502,326号(2003年9月12日)(前記出願は参照により本明細書に含まれる)に対し優先権を主張する。
本発明は一般的には医学、免疫学および生化学の分野に関し、より具体的にはa)ヒトまたは動物のアミロイド原線維形成の一因となる前原線維凝集物の配座エピトープに特異的なモノクローナル抗体の製造方法、b)前記方法から製造されたハイブリドーマおよびモノクローナル抗体、c)アルツハイマー病または他のアミロイド疾患に対するヒトまたは動物の免疫における前記モノクローナル抗体の使用、d)ヒトまたは動物のアルツハイマー病または他のアミロイド疾患の診断もしくは検出における前記モノクローナル抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの生物学的機能は、少なくとも部分的には、多様な配列依存性構造を取り入れることができるタンパク質の能力によって生じる。しかしながら、ある種のタンパク質配列は時には、アミロイド原線維として知られる異常な、間違って折たたまれた不溶性の凝集物を形成するであろう。これらのアミロイド原線維は、その発症が遺伝性、感染性及び/又は偶発的である種々のアミロイド疾患の病理発生に中心的に関与すると考えられている。前記アミロイド疾患には、海綿状脳症、アルツハイマー病、パーキンソン病、II型糖尿病、クロイツフェルト-ヤコブ病、ハンチントン病、時には黄斑変性、種々のプリオン病および他の多くの疾患が含まれる。これらのアミロイド疾患の少なくともいくつかでは、アミロイド原線維がアミロイド斑の発生をもたらす。
【0003】
アミロイドペプチドはアミロイド斑の主要な構成成分である。アルツハイマー病の場合は、前記ペプチドは、A(3またはA(3-アミロイドペプチドと称される。ペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の39から43アミノ酸の内部フラグメントである。APPタンパク質内のいくつかの変異がADの存在と関連性を有している。例えば以下を参照されたい:Goate et al., Nature (1991) 349:704(バリンからイソロイシンへの変異);Chartier Marian et al., Nature (1991) 353:844(バリンからグリシン);Murrell et al., Science (1991) 21:97(バリンからフェニルアラニン);Mullan et al., Nature Genet. (1992) 1:345(リジン595−メチオニン596からアスパラギン595−ロイシン596に変化する二重変異)。そのような変異は、APPからAβへのプロセッシングの増加または変化を生じることによってADをもたらすと考えられる。特に、より長い形態のAβ、例えばAβ1-42およびAβ1-32の蓄積を生じるAPPのプロセッシングは、AD発症において重要であると考えられる。他の遺伝子における変異、例えばプレセニリン遺伝子PS1およびPS2はAPPプロセッシングに間接的に影響し、長い形態のAβの産生をもたらすと考えられる。例えば以下の文献を参照されたい:Hardy, TINS (1997) 20:11。
【0004】
細胞障害性アミロイド-ベータペプチド凝集物は細胞膜の完全性を破壊し、さらに反応性酸素中間体を生成し、それによって細胞質ゾルのカルシウムを上昇させて最終的には細胞死をもたらすと考えられている。アミロイド-ベータペプチドの細胞表面レセプターもまたシグナルトランスダクションのメカニズムを活性化することができる。
欧州特許出願EP526,511(McMichael)およびPCT国際特許公開WO/9927944(Schenk)は、アルツハイマー病の治療または予防のために患者にAβを投与することについて記載している。しかしながら、トランスジェニックマウスへのAβの能動免疫は明白な利益を生じるが、このアプローチのAD患者への拡大は、対象者の数人において中枢神経系の望ましくない炎症をもたらした(例えば以下を参照されたい:Hardy, D.J. Selkoe (2002) Science 297:353-356)。可溶性AβはAβモノマーの他にそのようなモノマーの凝集物(前原線維凝集物と称される)を含む。これらの前原線維凝集物はアミロイド原線維の成長をもたらす。
【0005】
ヒトの脳の可溶性Aβ含有量は、アミロイド斑の蓄積よりもADの重篤度と良好な相関性を示す。例えば以下を参照されたい:Y.M. Kuo et al. (1996) J. Biol. Chem. 271:4077-4081;C.A. McLean et al. (1999) Annals of Neurology 46:860-6;L.F. Lue et al. (1999) American J. Pathology 155:853-862)。さらにまた、最近の報告は、Aおよび他のアミロイド形成性タンパク質の細胞障害性は、蓄積するモノマーまたは不溶性原線維にあるのではなく、むしろ前原線維凝集物にあることを示唆している(例えば以下を参照されたい:Hartley et al. (1999) J. Neuroscience 19:8876-8884;Lambert et al., Proc. Natl Acad. Sci, USA (1998) 95:6448-53;Bucciantini et al., Nature (2002) 416:507-511;Hartley et al. Nature (2002) 418:291)。総合すれば、これらの結果は、前原線維凝集物は他の形態のアミロイドペプチドよりも病理学的に重要であり、したがってアミロイド疾患(例えばAD)の予防または治癒により望ましい標的でありえることを示している。
【0006】
PCT国際特許出願PCT/US2003/028829(WO2004/024090)[発明の名称:Monoclonal Antibodys and Corresponding Antibodies Specific for High Molecular Weight Aggregation Intermediates Common to Amyloids Formed from Proteins of Differing Sequence(種々の配列を有するタンパク質から形成されたアミロイドに共通の高分子量凝集中間体に特異的なモノクローナル抗体)](Kayed and Glabe)は、アミロイドペプチド凝集物上に見出される1つまたは2つ以上の配座エピトープを含む物質の組成物、そのようなエピトープに対する抗体、並びに前記組成物、エピトープ及び/又は抗体の製造および使用方法を開示している。PCT/US2003/028829に記載されている組成物には、アミロイド疾患(例えばアルツハイマー病)に罹患しているか、または発症のおそれのある患者または患畜に存在するペプチド凝集物(例えば有害ペプチド凝集物)で見出されるある種の配座エピトープを含むか、または前記エピトープから成る合成または単離組成物が含まれる。PCT/US2003/028829に記載されている発明はまた、ヒト若しくは動物で疾患の検出、治療および予防、及び/又はそのような抗体を用いる潜在的治療方法(例えば薬剤スクリーニング)の試験および特定におけるそのような組成物の使用方法を開示している。PCT国際特許出願PCT/US2003/028829はその全体が参照により本明細書に含まれる。
モノクローナル抗体は、それらの対応する抗原の領域またはエピトープを特異的に認識するか、またはそれらと特異的に結合する免疫グロブリンタンパク質の均一な調製物である。いくつかの事例では、モノクローナル抗体は、毒性を示すかまたは有害な内在性物質と結合し、さらにこれらの活性を阻害することができる。したがって有害な形態のアミロイド(例えば細胞障害性アミロイド-ベータペプチド凝集物または原原線維)と高い特異性で結合して前記を阻害し、それによってアミロイド疾患の診断および治療を提供する新規なモノクローナル抗体の開発が希求されている。
【発明の開示】
【0007】
発明の要旨
本発明は、ヒトまたは動物の脳内のアミロイド原線維形成の一因となる前原線維凝集物(例えば前原線維凝集物の有害種)の1つまたは2つ以上の配座エピトープと結合する単離モノクローナル抗体を含む組成物を提供する。前記モノクローナル抗体を治療量でヒトまたは動物に投与して前原線維凝集物の有害性を減少させ、それによってアミロイド沈着の形成、およびアミロイド沈着が脳または神経組織内に形成される疾患または異常の合併発生または進行を妨げるかまたは制限することができる。そのようなアミロイド疾患の例には、アルツハイマー病、ダウン症候群に付随する若年性アルツハイマー病、SAAアミロイド症、遺伝性アイスランド症候群、多発性骨髄腫、海綿状脳症(狂牛病、ヒツジのスクレーピーおよびミンクの海綿状脳症を含む)、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルトヤコブ病、ゲルストマン-シュトラウスラー-シャインカー症候群、クールー、致死性家族性不眠症、慢性消耗性症候群、家族性アミロイド性多発性神経障害、前側頭性痴呆、II型糖尿病、全身性アミロイド症、血清アミロイド症、イギリス型家族性痴呆、デンマーク型家族性痴呆、黄斑変性および脳血管性アミロイド症が含まれるが、ただしこれらに限定されない。本発明のモノクローナル抗体は以下の番号で識別される:354B85.1(クローン#56)、354B85.1(クローン#38)、354B85.1(クローン#45)、354B133、354B256、および354B273。これらのクローンは、配座固定(conformationally-constrained)抗原を用いてマウスを免疫することによって調製された。前記抗原は、チオエステル結合を介してコロイド金と共有結合させたアミロイドAβから成る。
【0008】
本発明にしたがえば、前原線維凝集物は、約1kDaから約100,000,000kDaの範囲の分子量を有する。さらにまた、前原線維凝集物は任意の適切な数のモノマーを含むことができる。例えば、いくつかの具体的な実施態様では、前原線維凝集物は5つのモノマーを含み、他の実施態様では前原線維凝集物は8つのモノマーを含むことができる。
さらにまた本発明にしたがえば、アミロイドペプチドモノマー及び/又はアミロイド原線維は、前記モノクローナル抗体が結合する配座エピトープを実質的に含まなくてもよい。
さらにまた本発明にしたがえば、前記モノクローナル抗体はコロイド金と結合させるか、または金若しくは金含有調製物と付随的に投与することができる。
本発明のさらに別の特徴および目的は以下の詳細な説明および実施例から理解されよう。
【0009】
発明の詳細な説明
定義
本特許出願及び/又はPCT国際特許出願PCT/US2003/028829(公開番号WO2004/024090 A2)(前記文献は参照により本明細書に含まれる)で用いられているように、以下の用語は以下の意味を有するであろう。
“アジュバント”という用語は、抗原と一緒に投与されたときには前記抗原に対する免疫応答を増大させるが、単独で投与されたときは抗原に対する免疫応答を発生させない化合物を指す。アジュバントは、リンパ球の補充、B及び/又はT細胞の刺激、およびマクロファージの刺激を含むいくつかのメカニズムによって免疫応答を増大させることができる。
“A”または“Aペプチド”という用語は、低分子量の可溶性オリゴマー、前原線維凝集物、原線維およびアミロイド沈着(前記は各々ADに付随する)を構成するペプチドを指す。アミロイドAペプチドには、A39、A40、A41、A42およびA43(前記は長さがそれぞれ39、40、41、42および43アミノ酸である)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“アミロイドペプチド”は、アミロイドペプチド中間体、低分子量可溶性オリゴマー、アミロイド原線維およびアミロイド斑を含むアミロイド集団に存在するペプチドである。
“抗体”という用語は、完全な抗体およびその結合フラグメントを含むために用いられる。前記には、例えば完全長抗体(例えばIgG抗体)または単なる抗原結合部位(例えばFab、F(ab')2またはscFvフラグメント)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。典型的には、フラグメントは、それらが由来した完全な抗体と抗原との特異的な結合について競合する。場合によって、抗体またはその結合フラグメントは、他のタンパク質と化学的に結合させるか、または他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることができる。
【0010】
“抗オリゴマー抗体”または“抗オリゴマー”は、アミロイドペプチド凝集中間体と結合するが、アミロイドペプチドモノマー、ダイマー、三量体または四量体とは結合しないか、または前記と特異的に結合しない抗体を指す。
列挙された1つまたは2つ以上の成分を“含む”組成物または方法は、特別に列挙されなかった他の成分も含むことができる。例えば、アミロイドAペプチドを含む組成物は、より大きなポリペプチド配列の一成分として、および複数の成分を含む組成物の一部分として両方の単離アミロイドAペプチドを包含することができる。
“エピトープ”または“抗原決定基”は、B及び/又はT細胞が応答する抗原上の部位、または抗体がそれに対して産生される及び/又は抗体が結合する分子上の部位を指す。例えば、エピトープは、前記エピトープを規定する抗体によって認識されえる。
“直鎖状エピトープ”は、アミノ酸一次配列が認識されるエピトープを含むエピトープである。直鎖状エピトープは典型的には少なくとも3つ、より通常的には少なくとも5つ、例えば約8つから約10のアミノ酸を固有配列内に含む。
“配座エピトープ”は、直鎖状配列とは対照的に、エピトープを含むアミノ酸の一次配列が、認識されるエピトープの唯一の規定成分ではないエピトープである(例えばアミノ酸の一次配列がエピトープを規定する抗体によって必ずしも認識されるとは限らないエピトープである)。典型的には、配座エピトープは直鎖状エピトープと比較してより大きな数のアミノ酸を含む。配座エピトープの認識の場合、抗体はペプチドまたはタンパク質の三次元構造を認識する。例えば、タンパク質分子が折りたたまれて三次元構造を形成するとき、配座エピトープを形成するある種のアミノ酸及び/又はポリペプチド骨格は併置されて抗体のエピトープ認識を可能にする。エピトープの配座を決定する方法には、例えばX線結晶学、二次元核磁気共鳴分析並びに位置特異的スピン標識および電子常磁性共鳴分析が含まれるが、ただしこれらに限定されない。例えば以下の文献を参照されたい:Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol.66, Glenn E. Morris, Ed.(1996)(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
【0011】
“免疫学的応答”または“免疫応答”という用語は、レシピエント患者でアミロイドペプチドに対して誘導される有益な液性(抗体媒介)及び/又は細胞性(抗原特異的T細胞またはそれらの分泌生成物によって媒介される)応答の進行に関する。そのような応答は、モノクローナル抗体の投与によって誘発される能動的応答であっても、または抗体若しくはプライムされたT細胞の投与によって誘発された受動的応答であってもよい。細胞性免疫応答は、クラスIまたはクラスII MHC分子と一緒にポリペプチドエピトープを提示し、抗原特異的CD4+ Tヘルパー細胞及び/又はCD8+細胞障害性T細胞を活性化することによって惹起される。前記応答はまた単球、マクロファージ、NK細胞、好塩基球、樹状突起細胞、星状細胞、ミクログリア細胞、好酸球または先天性免疫の他の成分の活性化を必要とするであろう。
“モノクローナル抗体性薬剤”または“モノクローナル抗体”または“抗原”は、(場合によってはアジュバントと一緒に)対象への投与に際してそのもの自体に対して免疫学的応答を誘発することができる。
“単離された”とは、精製されていること、実質的に精製または部分的に精製されていることを意味する。単離はまた、天然に存在する環境以外の環境に存在することを意味しえる。例えば、抗体が天然に存在するときには通常前記が見出される全血血清中に存在しない抗体は単離された抗体である。
【0012】
“低分子量凝集物”、“低分子量アミロイド凝集物”、“低分子量オリゴマー”および“低分子量可溶性オリゴマー”は4または5ペプチド未満の凝集物に存在するアミロイドペプチドを指す。ある特徴では、低分子量AはADに付随して見出される低分子量可溶性オリゴマーを指す。
“患者”という用語は、治療的、予防的または診断的処置を受けるヒトおよび他の動物、または疾患を有するか若しくは疾患の素因を有するヒトまたは動物を含む。
【0013】
“前原線維凝集物”、“ミセル凝集物”、“高分子量凝集物中間体”、“高分子量アミロイドペプチド凝集物”、“高分子量可溶性アミロイドペプチド凝集物”、“アミロイドペプチド凝集物”、“可溶性凝集物中間体”、“アミロイドオリゴマー中間体”、“オリゴマー中間体”および“オリゴマー凝集物”または単純に“中間体”は、4つ以上の個々のペプチドまたはタンパク質モノマー、例えば5つ以上のペプチドまたはタンパク質モノマーを含む凝集物を指す。大きいサイズの前原線維凝集物はオリゴマーの凝集物を含み、前記は原線維形成をもたらす球状構造またはミセルおよびミセルのとげを形成する。
“輪状原原線維”は特定の前原線維凝集物セットであり、前記では3つから10の球状オリゴマーサブセットが、中空の中心(電子または原子顕微鏡写真では孔として見える)をもつ輪状または環状態様で配置されている。
前原線維凝集物の分子量は、約10kDaから約100,000,000kDaの範囲、例えば約10kDaから約10,000,000kDaまたは1,000,000kDaの範囲である。しかしながら、このサイズ範囲は制限を意図するものではなく、前原線維凝集物は分子量範囲によって規定されない。
“原原線維”は、曲線構造を形成する球状構造のとげを表すように見えるアミロイドAペプチドを含む球状構造を含む前原線維凝集物である。
2つの物質間の“特異的結合”は少なくとも106、107、108、109M-1、または1010M-1の親和性を意味する。108M-1より高い親和性が特異的結合には好ましい。
【0014】
“実質的に同一”という用語は、2つのペプチド配列が、最適にアラインメントされたとき(例えば規定値ギャップ重を用いGAPまたはBESTFITプログラムによって)、少なくとも65パーセント配列同一性、例えば少なくとも80%または90%配列同一性、または少なくとも95%配列同一性またはそれ以上、例えば99%配列同一性またはそれ以上の配列同一性を共有することを意味する。
好ましくは、アラインメントで同一ではない残基位置は保存的アミノ酸置換により相違する、すなわちアミノ酸は同じクラスまたは群の別のアミノ酸で置換されている。いくつかのアミノ酸は以下のように分類することができる:群I(疎水性側鎖):Leu、Met、Ala、Val、Leu、Ile;群II(中性親水性側鎖):Cys、Ser、Thr;群III(酸性側鎖):Asp、Glu;群IV(塩基性側鎖):Asn、Gln、His、Lys、Arg;群V(鎖の方向性に影響を与える残基):Gly、Pro;および群VI(芳香族側鎖):Trp、Tyr、Phe。非保存的置換は、これらのクラスの1つのあるメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを含むことができる。
【0015】
配列比較のためには、典型的には1つの配列は参照配列として機能し、前記に対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いるとき、試験配列および参照配列はコンピュータに入力され、部分配列等価物が必要ならば指定され、さらに配列アルゴリズムプログラムのパラメーターが指定される。続いて指定されたプログラムパラメーターを基準にして、参照配列に対して試験配列のパーセント配列同一性を配列比較アルゴリズムを用いて計算することができる。比較のための最適配列アラインメントは、例えばSmith & Watermanの局所相同性アルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2:482 (1981))によって、Needleman & Wunschの相同性アラインメントアルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:443 (1970))によって、Pearson & Lipmanの類似性検索方法(Natl. Acad. Sci. USA, 85:2444(1988))によって、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実施によって(GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA;Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)、または目視精査によって実施することができる。
パーセント配列同一性および配列類似性の決定に適切なアルゴリズムのある例はBLASTアルゴリズムであり、これは以下の文献に記載されている:Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)。BLAST解析を実施するソフトは以下に公開されている:National Cancer for Biotechnology Information, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。典型的には、規定値のプログラムパラメーターを配列比較に用いることができるが、個々の注文に応じたパラメーターもまた用いることができる。アミノ酸配列のためには、BLASTPプログラムは、ワード長(W)3、期待値(E)10およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを規定値として用いる(例えば以下の文献を参照されたい:Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 10915 (1989))。保存的置換は、同じクラスのアミノ酸との間の置換を必要とする。
【0016】
“治療薬”とは患者の疾患の治療または予防に有用な物質である。本発明の治療薬は典型的には実質的に純粋である。これは、薬剤が典型的には少なくとも約50%(w/w、重量/重量)純粋であるとともに、治療薬の有効性に干渉するタンパク質および夾雑物質を実質的に含まないことを意味する。前記薬剤は少なくとも約80%(w/w)、より好ましくは少なくとも90%(w/w)または約95%(w/w)純粋でありえる。しかしながら、通常のタンパク質精製技術を用いる場合、99%(w/w)またはそれ以上の均質なペプチドを製造することができる。
【0017】
実施態様および実施例
アミロイド疾患は、患者におけるアミロイド斑若しくはアミロイド斑前駆体の蓄積または患者におけるアミロイド斑若しくはアミロイド斑前駆体の蓄積素因を特徴とする。アミロイド斑の主要な構成成分の1つはアミロイドペプチドである。アミロイドペプチドの一般的な配座は症状間で変化しえるが、しかしながら前記ペプチドはしばしば特徴的なひだのあるシート構造を有する。アミロイドペプチドは、長さが約10または約20アミノ酸から約200アミノ酸をもつペプチドまたはタンパク質を含む。このサイズ範囲は限定的なものではなく、本発明ではアミノ酸がそれよりも少ないまたはそれよりも多いアミロイドペプチドまたはタンパク質も意図される。
【0018】
前原線維凝集物は、アミロイド沈着を特徴とする疾患(例えばアルツハイマー病)をもつヒトまたは動物のアミロイド斑で蓄積される不溶性原線維の生成における中間体である。前原線維凝集物は、4アミロイドペプチドの小ささ、5アミロイドペプチドの小ささ、6アミロイドペプチドの小ささ、7アミロイドペプチドの小ささ、または8アミロイドペプチドの小ささでありえる凝集物を含む。ある実施態様では、前原線維凝集物は、ミセル状凝集物またはミセル若しくはミセルのとげである。前原線維凝集物は、本発明の抗体によって認識される配座エピトープの形成に有効である。
前原線維凝集物上に見出される配座エピトープは、アミロイドペプチドのための天然の前駆体タンパク質(例えばアミロイドペプチドモノマー、ダイマー、三量体または四量体)にも、成熟アミロイド原線維(交差X線によるそれらの特徴的な線維回折パターンによって特定される)にも、アミロイド斑にも実質的に見出されない。本発明の抗体によって認識される配座エピトープを生じる特異的なポリペプチド構造を含む前原線維凝集物は、ほぼ五量体、六量体、七量体または八量体からミセル形または原原線維(1,000,000ダルトンを超える分子量を有する)のサイズ範囲を有する。本発明の抗体はこれらのエピトープとの結合に有効である。
【0019】
本発明のモノクローナル抗体は、アミロイドオリゴマーまたは原原線維に付随する配座依存エピトープに特異的である。前記モノクローナル抗体は、チオエステル結合を介してコロイド金と共有結合させたアミロイドAβから成る配座固定抗原でマウスを免疫することによって調製することができる。図1は、そのようなモノクローナル抗体をどのようにして作製することができるかという例を図表で示している。そのようなモノクローナル抗体はまた、抗体Fabと抗原との同時結晶化およびX線結晶学による抗体結合アミロイドオリゴマーの三次元構造の決定に有用である。
ハイブリドーマ融合物の上清をストラテジックバイオソルーション(Strategic Biosolution)によるELISAでスクリーニングし、さらにDr. Rakez Kayed、Monica SiegenthalerおよびMaya Hatchによるドットブロットアッセイによる更なる分析のために同じ上清がUCIに送られた。ELISAアッセイのために、100ngの可溶性オリゴマーまたは原線維Aβ42を平板培養緩衝液中に懸濁し、1時間から一晩、ハイボンド(hyBond)ELISAプレートを被覆するために用いた。被覆後に、トリス緩衝食塩水、0.01%トゥイーン40(TBST)中の10%BSA(300μL)でウェルを37℃で1時間ブロックした。ハイブリドーマの組織培養上清を前記ウェルに1:200、1:500、1:1000、1:2000および1:5000で添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをリン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄し、100μLのヤギ抗マウス-セイヨウワサビペルオキシダーゼ複合物(1:10,000希釈)を各ウェルに添加し、1時間インキュベートした。プレートを3回PBSで洗浄し、続いて着色検出基質(TMB)を100μL添加することによってHRP活性についてアッセイした。プレートを450nmで読み取った。オリゴマーに対して高い反応性並びにモノマーおよび原線維に対して低い反応性を示すクローンを選別した。
【0020】
ドットブロットアッセイ
Aβ(100ng)のモノマー、オリゴマーおよび原線維サンプルをニトロセルロース膜に適用し、乾燥させ、TBST中の10%BSAでブロックした。ハイブリドーマの組織培養上清を1:200、1:500、1:1000、1:2000および1:5000で各細片に添加し、37℃で1時間インキュベートした。前記細片をPBSで3回洗浄し、ヤギ抗マウス-セイヨウワサビペルオキシダーゼ複合物(1:10,000)と37℃で1時間インキュベートした。細片を3回PBSで洗浄し、抗体結合は強化化学発光(ECL)によって可視化した。典型的なドットブロットは、354B85.1クローン#38、および354B85.1クローン#45、および354B273について図2に示されている。レーン1はAβ42モノマーである。レーン2はAβ42オリゴマーである。レーン3はAβ42原線維である。レーン4はヒトリゾチームオリゴマーである。
【0021】
図1は、アミロイドオリゴマー中間体に共通である配座エピトープに特異的な抗体のスクリーニングに関する結果の要旨を含む。前記は、コロイド金とチオエステル結合させた配座固定Aβから成るミセル分子模倣体で免疫したマウス1867/11 #5684由来の融合31Bの結果のまとめである。循環B細胞の数を使用可能レベルに増加させるために、脾臓摘出3日前に前記マウスにAβオリゴマーをブースター接種し、ハイブリドーマ製造に用いた。第一の欄はハイブリドーマクローン標識を示す。第二の欄は、可溶性低分子量Aβ(sol)、オリゴマー中間体(interm)およびアミロイド原線維(原線維)の列を含むELISAプレートを用いたELISAアッセイの結果を示す。数値は吸収ユニットで示した光学的吸収値であり、種々のクローンが、プレートに吸着させたA(3の種々の配座を認識する程度を表している。solおよび原線維の欄の低い数値またはバックグラウンド数値は、結合または認識が存在しないことを示し、一方中間体の欄の高い数値は高度の認識または結合を示している。solおよび原線維については低い数値をもち中間体については高い数値をもつクローンは可溶性オリゴマーの配座依存エピトープに対して高度な特異性を示している。可溶性オリゴマーに対し高度な特異性を示し低分子量Aβまたは原線維に対しては特異性を示さないクローンの例には、クローン354B85.1(クローン#56)、354B85.1(クローン#38)、354B85.1(クローン#45)、354B256および354B273が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0022】
以下のアミロイドペプチドの各々は、本発明の抗体(例えばAペプチドオリゴマー中間体に対して作製された抗体)によって認識される配座エピトープを生じるアミロイドペプチド凝集物を形成することが示された。これらのペプチドのいくつかは、アミロイド沈着を特徴とする疾患を有するヒトまたは動物のアミロイド沈着に存在する。本発明は列記したペプチド若しくはタンパク質配列、または前記配列のいくつかと関連する特定の疾患に限定されない。本発明は、他のアミロイドペプチド凝集物または全ての他のアミロイドペプチド凝集物と結合する本明細書に記載したような抗体を意図する。特に本発明は、他の疾患に関連してアミロイド前駆体凝集物を形成する他のペプチドまたはタンパク質配列に本発明の方法および組成物を応用することを意図および包含する。
【0023】
A40(配列番号:1)
DAEFRHDSGYEVHHQKLVFF AEDVGSNKGA IIGLMVGGVV
A42(配列番号:2)
DAEFRHDSGY EVHHQKLVFF AEDVGSNKGA IIGLMVGGVV IA
ヒトIAPP(配列番号:3)
KCNTATCATQ RLANFLVHSS NNFGAILSST NVGSNTY
ヒトプリオン106−126(配列番号:4)
KTNMKHMAGA AAAGAVVGGL G
【0024】
最近、Stefaniおよび共同研究者らは、非疾患関連タンパク質から形成されたアミロイドペプチドは本質的に細胞障害性であることを報告し(Bucciantini et al (2002) Natrure 416:507-511)、それらは疾患関連アミロイドペプチドと共通の構造を有する可能性があることを提唱した。以下の非疾患関連アミロイドペプチドを含む非疾患関連アミロイドペプチド凝集物もまた、本発明の抗体と結合することが示されている。
ポリグルタミン合成ペプチドKK(Q40)KK(配列番号:5)
KKQQQQQQQQ QQQQQQQQQQ QQQQQQQQQQ QQQQQQQQQQ
QQKK
ヒトリゾチーム(配列番号:6)
MKALIVLGLV LLSVTVQGKV FERCELARTL KRLGMDGYRG
SLANWMCLA KWESGYNTRA TNYNAGDRST DYGIFQINSR
YWCNDGKTPG AVNACHLSCS ALLQDNIADA VACAKRVVRD
PQGIRAWVAW RNRCQNRDVR QYVQGCGV
ヒトインスリン(配列番号:7)
MALWMRLLPL LALLALWGPD PAAAFVNQHL CGSHLVEALY
LVCGERGFFY TPKTRREAED LQVGQVELGG GPGAGSLQPL
ALEGSLQKRG IVEQCCTSIC SLYQLENYCN
ヒトトランスサイレチン(配列番号:8)
MASHRLLLLC LAGLVFVSEA GPTGTGESKC PLMVKVLDAV
RGSPAINVAV HVFRKAADDT WEPFASGKTS ESGELHGLTT
EEEFVEGIYK VEIDTKSYWK ALGISPFHEH AEVVFTANDS
GPRRYTIAAL LSPYSYSTTA VVTNPKE
ヒトアルファサイヌクレイン(配列番号:9)
MDVFMKGLSK AKEGVVAAAE KTKQGVAEAA GKTKEGVLYV
GSKTKEGVVH GVATVAEKTK EQVTNVGGAV VTGVTAVAQK
TVEGAGSIAA ATGFVKKDQL GKNEEGAPQE GILEDMPVDP
DNEAYEMPSE EGYQDYEPEA
【0025】
さらにまた、野生型A42、A40の変種およびフラグメントから形成されるオリゴマー中間体は本発明の抗体によって認識される(前記変種およびフラグメントには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):A42(A21G)フランダース型変異、A42(E22Q)オランダ型変異、A42(E22G)北極型変異、A42(D23N)アイオワ型変異、A40(A21G)フランダース型変異、A40(E22Q)オランダ型変異、A40(E22G)北極型変異、A40(D23N)アイオワ型変異、A40(E22Q&D23N)オランダ型およびアイオワ型変異、A3−42(pGlu3)、A3−40(pGlu3)、A8−42、A17−42、A1−16、A3−11、A25−35、A4−16(3つの類似体、Cys16A4−16、Ala4A4−16およびAla10A4−16)、His6A40C40(AβC40のアミノ末端に6つのヒスチジンが付加)。本発明の抗体によって認識される他のオリゴマー中間体には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):IAPP(C2AおよびC7A)から形成されるオリゴマー中間体(ここでIAPPに天然に存在するシステインはアラニンに置換される)、ポリグルタミンKKQ40KKまたはポリグルタミン(ここでQ残基の数は32より大きい)、カルシトニン、TTRおよびその変異体TTR Pro55、TTR Phe78、ヴィトロニクチン、ポリリジン、ポリアルギニン、血清アミロイドA、シスタンチンC、IgGカッパ軽鎖、本明細書に記載される他のアミロイドペプチドから精製されるオリゴマー中間体、および本明細書に記載されるアミロイド疾患に付随するアミロイド中間体。
【0026】
本発明は、アミロイドオリゴマー中間体に対して特異的な免疫応答を誘発するアミロイド疾患治療薬を提供する。本発明の治療薬は、オリゴマー中間体と特異的に結合する抗体を含む。そのような抗体は本出願で開示されるモノクローナルであっても、PCT国際出願PCT/US2003/028829(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に開示されているポリクローナルであってもよい。ある有用な実施態様では、前記抗体は配座エピトープと結合する。本発明の非ヒト(例えばネズミまたはラット)モノクローナル抗体の製造は、例えば動物を本発明のオリゴマー中間体の模倣物で免疫することによって達成することができる。さらにまた意図されることは、精製アミロイド中間体で動物を免疫することである。
本発明のマウス抗体のヒト化型は、非ヒト抗体のCDR領域をヒト定常領域と組換えDNA技術によって結合させることによって作製することができる。例えば以下の文献を参照されたい:Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:10029-10033 (1989);WO90/07861(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
【0027】
ヒトの抗体はファージディスプレーの方法を用いて得ることができる。例えば以下を参照されたい:Dower et al., WO91/17271およびMcCafferty et al., WO92/01047。これらの方法では、ライブラリーメンバーがそれらの外側表面に種々の抗体を提示しているファージライブラリーが作製される。所望の特異性を有するファージ提示抗体をアフィニティー濃縮によって選別する。オリゴマー中間体に対するヒトの抗体はまた非ヒトトランスジェニック哺乳動物からも製造することができる。前記動物は、少なくとも1つのヒト免疫グロブリン遺伝子座セグメントおよび不活化した内因性免疫グロブリン遺伝子座をコードするトランスジーンを有する。例えば以下の文献を参照されたい:Lonberg et al., WO93/12227 (1993);Kucherlapati, WO91/10741 (1991)(前記文献の各々は、その全体が参照により全ての目的のために本明細書に含まれる)。ヒト抗体は競合的結合実験によって選別するか、また別には特定のマウス抗体と同じエピトープ特異性をもつように選別することができる。そのような抗体は、マウス抗体の有用な機能的特性をおそらく共有するであろう。
【0028】
ヒトの抗体またはヒト化抗体はIgG、IgD、IgAおよびIgE定常領域並びに任意のアイソタイプ(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む)を有するように設計することができる。抗体は、2つの軽鎖および2つの重鎖を含む四量体として、別々の重鎖、軽鎖として、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFvとして、または単鎖抗体(前記では重鎖および軽鎖可変ドメインはスペーサーを介して連結される)として発現させることができる。
ある種の事例では、本発明の1つまたは2つ以上のモノクローナル抗体を適切な担体と一緒にすることが所望されよう。適切な担体には、血清アルブミン、カサガイ(keyhole limpet)のヘモシアニン、免疫グロブリン分子、タイログロブリン、卵白アルブミン、破傷風類毒素、または他の病原性細菌(例えばジフテリア、大腸菌、コレラまたはH.ピロリ)由来の類毒素もしくは弱毒誘導体が含まれる。免疫応答を刺激または強化するためのアジュバントとして作用することができる他の担体には、サイトカイン(例えばIL-1、IL-1とペプチド、IL-2、INF、IL-10、GM-CSF)およびケモカイン(例えばM1P1およびRANTES)が含まれる。
【0029】
本発明のモノクローナル抗体による治療に適したヒトまたは動物の患者には、症状を示していないがアミロイド疾患のおそれのある個体が、既にアミロイド疾患の症状または他の形跡を示している個体と同様に含まれる。ADを含むある種のアミロイド疾患の事例では、実質的にだれもが前記疾患に罹患するおそれがある。
したがって、本発明のモノクローナル抗体は、対象患者のリスクを判定することなく予防的に、例えばワクチンとして一般的集団に投与することができる。本方法は、アミロイド疾患(例えばAD)に対する既知の遺伝的リスクをもつ個体で特に有用である。そのような個体には、アミロイド疾患の病歴を有する血縁者をもつ者、および遺伝的または生化学的マーカーの解析によってそのリスクが決定された者、またはそのような疾患の症状若しくは進行の可能性を示唆する前駆症状または現実に存在を示している者が含まれる。例えば、AD発症リスクの遺伝的マーカーには、APP遺伝子における変異、特に717位並びに670および671位における変異(それぞれハーディ(Hardy)型およびスウェーデン型変異と称される)が含まれる(上掲書(Hardy, TINS)を参照されたい)。ADのリスクの他のマーカーは、プレセニリン遺伝子(PS1およびPS2)およびApoE4、ADの家族歴、高コレステロール血症またはアテローム性硬化症である。
【0030】
アミロイド疾患の症状は通常の技術を有する医師にとって明白である。例えば、アルツハイマー病に現在罹患している個体は、上述の危険因子の存在と同様に特徴的な痴呆から識別することができる。さらにまた、多くの診断用検査がアミロイド疾患をもつ個体の特定に利用可能である。例えばADの場合、これら検査にはCSFtauおよびA42レベルの測定が含まれる。tauの上昇およびA42レベルの低下はADの存在を示す。
無症状の患者では、処置は任意の年齢、例えば10歳、20歳、30歳、40歳、50歳、60歳または70歳で開始することができる。処置は1回または2回以上の投与、例えばある期間にわたって複数の投与が必要とされえる。処置は、抗体または治療薬(例えばオリゴマー中間体の模倣物)に対して活性化されたT細胞若しくはB細胞応答のアッセイによって、または存在する前原線維凝集物のレベルのアッセイによって、各時間にわたってモニターすることができる。ある実施態様では、本発明の単一治療薬(例えばただ1つのモノクローナル抗体を含む調製物)の投与による処置が、2つ以上のアミロイド疾患(例えば全てのアミロイド疾患)に対する治療的手段または予防的手段として機能しえる。
【0031】
予防的適用では、本発明の組成物または医薬は、具体的疾患に感受性を有するか、そうでなければそのリスクがある患者に、前記疾患を排除するためにまたはその発症のリスクを低下させるか若しくは発症を遅らせるため十分な量で投与される。治療的応用では、組成物または医薬は、そのような疾患が疑われるかまたは既に罹患している患者に、前記疾患およびその合併症の症状を治癒させるために、または少なくとも部分的に停止させるために十分な量で投与される。前記を達成するために適切な量は、治療的または医薬的に有効な用量と定義される。予防的および治療的施療の両方において、治療薬は、十分な免疫応答が達成されるまで通常数回投与される。典型的には免疫応答はモニターされ、免疫応答が弱まり始めたら反復投与が与えられる。
【0032】
上述の症状の治療のために有効な本発明の組成物の用量は、種々の多くの因子により変動する。前記因子には、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与された他の医薬、および処置が予防的であるか治療的であるかが含まれる。通常では患者はヒトであるが、いくつかの疾患(例えば狂牛病)では、患者はヒトではない哺乳動物(例えばウシ)であり、またアルツハイマー病の場合では患者はイヌであってもよい。治療用量は力価を測定して、安全性および有効性を最適化させる必要がある。抗体による受動免疫の場合、用量は約0.0001mg/kg宿主体重から約100mg/kg宿主体重、より好ましくは約0.01mg/kg体重から約5mg/kg体重の範囲である。投与されるべきモノクローナル抗体の量はいずれかのアジュバントもまた投与されるのか否かで左右され、アジュバントが存在しない場合にはより高用量が要求される。例えば、約1重量%の所望のモノクローナル抗体を含む0.1から100ccの溶液を皮下に注射し、それによって注射当たり1mgから1gのモノクローナル抗体をデリバーすることができる。注射のタイミングは1日1回から1年に1回、10年に1回まで大きく変動させることができる。ある典型的な治療計画は、1回の免疫とそれに続く6週間間隔のブースター注射から成る。また別の治療計画は、1回の免疫とそれに続く1、2および12ヵ月後のブースター注射から成る。また別の治療計画は、生涯にわたって2ヵ月毎の注射を必要とする。また別には、ブースター注射は、免疫応答のモニターによる指標にしたがって不規則に実施してもよい。
免疫応答を誘発するための治療薬は、適切な任意の投与経路(例えば非経口、局所、静脈内、経口、皮下、腹腔内、鼻内または筋肉内)によって投与することができる。もっとも典型的な投与経路は皮下であるが、他のものも等しく有効である。次にもっとも一般的なものは筋肉内注射である。このタイプの注射はもっとも典型的には腕または脚の筋肉に実施される。静脈内注射もまた、腹腔内注射、動脈内、頭蓋内または皮内注射と同様に免疫応答の発生に有効でありえる。いくつかの方法では、治療薬は、沈着が蓄積されているかまたは蓄積しえる特定の組織に直接注射される。
【0033】
本発明のモノクローナル抗体は、アミロイド形成性疾患の治療で少なくとも部分的に有効である他の薬剤と場合によって併用して投与することができる。アルツハイマー病およびダウン症候群の場合(前記ではアミロイド沈着は脳内に生じる)、本発明の治療薬はまた、本発明の組成物の血液脳関門の通過を高める他の薬剤と併用して投与することができる。例えば、下記に詳細に記載されるように、抗炎症性用量のコロイド金または金の塩を付随的に(例えばモノクローナル抗体の前、同時または後で)投与して、ADおよび他のアミロイド疾患に付随する脳の炎症を防ぐことができる。
【0034】
本発明のモノクローナル抗体は時にアジュバントと併用して投与することができる。免疫応答を引き出すために、多様なアジュバントを本発明のモノクローナル抗体と併用して用いることができる。好ましいアジュバントは、応答の質的形態に影響を与える配座変化をモノクローナル抗体にもたらすことなく、モノクローナル抗体に対する固有の応答を増大させる。好ましいアジュバントには、ミョウバン、3脱酸素アシル化モノホスホリル脂質A(MPL)(GB2220211を参照されたい)が含まれる。QS21は、南アメリカで見出されたキラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)樹の樹皮から単離されたトリテルペングリコシドまたはサポニンである(以下の文献を参照されたい:Kensil et al., in Vaccine Design: The Subunit and Ajubant Approach (eds. Powell & Mewman, Plenum Press, NY, 1995);米国特許5,057,540)。他のアジュバントは水中油乳濁液、例えばスクォレンまたはピーナツ油であり、場合によって免疫刺激剤(例えばモノホスホリル脂質A)と組み合わされる(例えば以下を参照されたい:Stoute et al., N. Engl. J. Med. (1997) 336:86-91)。別の有用なアジュバントは、以下の文献(Bioworld Today, Nov. 15, 1998)に記載されているCpGである。また別には、モノクローナル抗体はアジュバントと複合体を形成させることができる。しかしながら、そのような複合体形成は、実質的にモノクローナル抗体を変化させ、モノクローナル抗体に対する免疫応答の性質に影響を与えるようなものであるべきではない。アジュバントは治療薬組成物の成分として活性な薬剤と一緒に投与することができるが、また治療薬とは別個に、治療薬の投与の前に、同時に、または後で投与してもよい。
【0035】
好ましいクラスのアジュバントは、アルミニウム塩(ミョウバン)、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムである。そのようなアジュバントは、他の特別な免疫刺激剤、例えばMPLまたは3-DMP、QS21、ポリマーもしくはモノマーアミノ酸(例えばポリグルタミン酸またはポリリジン)とともに、またはそれらを含まずに用いることができる。
また別のクラスのアジュバントは水中油乳濁製剤である。そのようなアジュバントは、他の特別な免疫刺激剤、例えばムラミルペプチド(例えばN-アセチルムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(nor-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミル-L-アラニン-2-(1'-2'ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)、N-アセチルグルクサミニル-N-アセチルムラミル-L-Al-D-isoglu-L-Ala-ジパルミトキシプロピルアミド(DTP-DPP)テラミド(theramide)(商標))または他の細菌細胞壁成分とともに、またはそれらを含まずに用いることができる。水中油乳濁液には以下が含まれる:(a)MF59(WO90/14837)、5%スクォレン、0.5%トゥイーン80および0.5%スパン85を含み(場合によって種々の量のMTP-PEを含む)、サブミクロンの粒子に微粒子流動化装置(例えばモデル110Y微粒子流動化装置(Microfluidics, Newton MA)を用いて製剤化される;(b)SAF、10%スクォレン、0.4%トゥイーン80、5%プルロニック封鎖ポリマーL121およびthr-MDP、微粒子流動化によりサブミクロン乳濁液とするか、または渦動攪拌によってより大きな粒子サイズの乳濁液を製造する;および(c)Ribi(商標)アジュバント系(RAS)、(Ribi Immunochem, Hamilton, MT)、2%スクォレン、0.2%トゥイーン80、並びにモノホスホリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)から成る群から選択される1つまたは2つ以上の細菌細胞壁成分(好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))を含む。
【0036】
また別の好ましいアジュバントのクラスは、サポニンアジュバント、例えばスティミュロン(Stimulon;QS21, Aquila, Worcester, MA)またはそれらから生成される粒子、例えばISCOM(免疫刺激複合体)およびISCOMATRIXである。他のアジュバントには、完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)が含まれる。他のアジュバントにはサイトカイン、例えばインターロイキン(例えばIL-1、IL-2およびIL-12)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)及び/又はケモカイン(例えばCXCL10およびCCL5)が含まれる。
【0037】
アジュバントは、単一組成物としてモノクローナル抗体と一緒に投与することができるが、またモノクローナル抗体の投与前、同時またはその後で投与してもよい。モノクローナル抗体およびアジュバントは同じバイアル中に包装して供給することができるが、また別個のバイアルに包装し使用前に混合してもよい。モノクローナル抗体およびアジュバントは典型的には、治療薬の意図される適用を指示するラベルとともに包装される。モノクローナル抗体とアジュバントが別々に包装される場合、パッケージは典型的には使用前に混合することについての指示を含む。アジュバント及び/又は担体の選択は、アジュバントを含むワクチンの安定性、投与経路、投与スケジュール、免疫される対象種に対するアジュバントの有効性によって左右され、さらにヒトでは、医薬的に許容できるアジュバントは承認されたもの、または関係する規制団体によってヒトの投与について承認されえるものである。例えば完全フロイントアジュバントはヒトの投与については適切ではない。場合によって、2つまたは3つ以上の別個のアジュバントを同時に用いてもよい。好ましい組合せには、ミョウバンとMPL、ミョウバンとQS21、MPLとQS21、およびミョウバン、QS21とMPLの併用が含まれる。さらにまた、不完全フロイントアジュバントを用いることができ(Chang et al., Advanced Drug Delivery Reviews 32:173-186 (1998))、場合によってはミョウバン、QS21およびMPLのいずれかとの併用、およびそれらの全てと併用することができる。
【0038】
本発明の組成物は、多様な医薬的に許容できる他の成分を含む医薬組成物としてしばしば投与される(以下の文献を参照されたい:Remington's Pharmaceutical Science, 15th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 1980)。好ましい形態は、意図される投与態様および治療用途に左右される。組成物はまた、所望される製剤に応じて、医薬的に許容できる無毒な担体または希釈剤(前記は動物またはヒトの投与を目的とする医薬組成物の製剤化のために通常的に用いられる賦形剤と規定される)を含むことができる。希釈剤は組成物の生物学的活性に影響を与えないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液およびハンクス溶液である。さらにまた、医薬組成物または製剤はまた他の担体、アジュバントまたは無毒な非治療性のモノクローナル抗体安定化剤などを含むことができる。しかしながら、動物への投与には適切ないくつかの試薬(例えば完全フロイントアジュバント)は、ヒトへの使用を目的とする組成物には典型的には含まれない。
【0039】
医薬組成物はまた、緩徐に代謝される大きな巨大分子(例えばタンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(例えばラテックス官能基付加セファロース、アガロース、セルロースなど)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集物(例えば油滴またはリポソーム)を含むことができる。さらにまた、これらの担体は免疫刺激剤(すなわちアジュバント)として機能することができる。
非経口投与のために、本発明の組成物は、医薬的担体(前記は滅菌液、例えば水、油、食塩水、グリセロールまたはエタノール)を含む生理学的に許容できる希釈剤中の前記物質の溶液または懸濁液の注射可能な投薬として投与することができる。
補助物質、例えば湿潤剤若しくは乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質なども組成物に存在することができる。医薬組成物の他の成分は、鉱油、動物、植物または合成起源のもの、例えばピーナツ油、ダイズ油および鉱物油である。一般的には、グリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが好ましい液体担体であり、特に注射用溶液には好ましい。
【0040】
組成物は、注射可能なものとして、溶液または懸濁液のいずれかとして、注射前に液体賦形剤中の溶液または懸濁液として適した固体形として調製することができる。調製物はまた、乳化またはリポソーム中で被包化するか、またはミクロ粒子(例えばポリアクチド、ポリグリコリド)であっても、または上述のようにアジュバント作用を強化するためにコポリマーであってもよい(以下の文献を参照されたい:Langer, Science (1990) 249:1527;Hanes, Adv. Drug Delivery Reviews (1997) 28:97-119)。本発明の組成物は、デポット注射または移植調製物の形態で投与することができる。前記は、活性成分の持続性または拍動性放出を可能にするような態様で製剤化することができる。
【0041】
他の投与態様に適したまた別の製剤には経口、鼻内および肺適用製剤、座薬並びに経皮膏薬が含まれる。
座薬の場合は、結合剤および担体には例えばポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが含まれる。そのような座薬は、0.5%から約10%、例えば約1%から約2%の範囲の活性成分を含む混合物から形成することができる。経口製剤は、賦形剤、例えば医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロースおよび炭酸マグネシウムを含む。これらの組成物は溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、徐放性製剤または散剤の形態をとり、約10%から約95%、例えば約25%から約70%の活性成分含むことができる。
局所適用は経皮または皮内デリバリーをもたらすことができる。局所投与は、コレラ毒素若しくは無毒化誘導体若しくはそのサブユニットまたは他の同様な細菌毒素とともに組成物を同時投与することにより促進することができる(以下の文献を参照されたい:Glenn et al., Nature (1998) 391:851)。同時投与は、混合物として、または化学的架橋若しくは融合タンパク質としての発現により得られる連結分子として成分を用いることによって達成することができる。
また別には、経皮デリバリーは皮膚経路を用いるか、またはトランスフェロソーム(transferosome)を用いて達成することができる(例えば以下の文献を参照されたい:Paul et al., Eur. J. Immunol. (1995) 25:3521-24;Cevc et al., Biochem. Biophys. Acta (1998) 1368:201-15)。
【0042】
金または他の抗炎症剤の付随投与
金の抗炎症作用は十分に確立されている。例えば、注射可能なコロイド金調製物(ミオクリシン、Myochrysine(商標)またはソルガナル、Solganal(商標))は慢性関節リウマチの治療のために市販されている。経口投与用金調製物(オーラノフィン、Auranofin(商標))もまた利用可能である。脳の炎症はアルツハイマー病の原因または一因であると考えられる。なぜならばアルツハイマー病患者の脳で見出されるアミロイド-ベータ(タンパク質)は炎症性タンパク質であることが判明しているからである。このことから他の研究者らは非ステロイド性抗炎症薬(例えばロフェコキシブ(Vioxx)およびナプロキセン(Aleve))をアルツハイマー病の進行を遅らせるために使用することを提唱している。
【0043】
出願人らは、組織病理学的観察を基にして、コロイド金の皮下投与は、アミロイド疾患のマウスモデルの脳内でミクログリアの活性化を低下させることができると結論した。本発明は、コロイド金、金の塩または他の抗炎症性薬剤を神経の炎症を減少させるために治療的に有効な量で対象に投与することを含む。いくつかの事例では、金または抗炎症性薬剤はモノクローナル抗体と併用することができる。他の事例では、金または抗炎症性薬剤はモノクローナル抗体とは別々に投与することができる。任意の適切な用量、投与スケジュールまたは投与経路を用いることができる。例えば、慢性関節リウマチの治療のための市販の金調製物を、慢性関節リウマチの治療のために推奨される同じ投与経路(ミオクリシン(商標)若しくはソルガナル(商標)の皮下注射、またはオーラノフィン(商標)の経口投与)および同じ用量/投与スケジュールで投与することができる。
前述の発明は、明瞭な理解を目的として詳細に記載してきたが、ある種の改変が添付の特許請求の範囲内で実施できることは明白であろう。本明細書に引用した全ての刊行物および特許書類は、それらの各々があたかも個別に示されたかの如くに、参照により完全に本明細書に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のいくつかのモノクローナル抗体の作用を比較する表である。
【図2】本発明のいくつかのモノクローナル抗体について得られたドットブロットのデータを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物で生じ、アミロイド原線維形成の一因となる前原線維凝集物の配座エピトープと結合する単離されたモノクローナル抗体を含む組成物であって、前記モノクローナル抗体が、Aβおよび他のアミロイドのオリゴマー配座によって優先的に表示される配座依存エピトープに対して特異的である前記組成物。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体が前原線維凝集物の有害性を減少させるために有効である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記前原線維凝集物が約1kDaから約100,000,000kDaの範囲の分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記前原線維凝集物が5つのモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記前原線維凝集物が8つのモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
アミロイドペプチドモノマーが配座エピトープを実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
アミロイド原線維が前記エピトープを実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記前原線維凝集物が有害種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記前原線維凝集物が、アミロイド沈着を特徴とする疾患を有するヒトまたは動物に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記疾患が、アルツハイマー病、ダウン症候群に付随する若年性アルツハイマー病、SAAアミロイド症、遺伝性アイスランド症候群、多発性骨髄腫、海綿状脳症(狂牛病、ヒツジのスクレーピーおよびミンクの海綿状脳症を含む)、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルトヤコブ病、ゲルストマン-シュトラウスラー-シャインカー症候群、クールー、致死性家族性不眠症、慢性消耗性症候群、家族性アミロイド性多発性神経障害、前側頭性痴呆、II型糖尿病、全身性アミロイド症、血清アミロイド症、イギリス型家族性痴呆、デンマーク型家族性痴呆、黄斑変性および脳血管性アミロイド症から成る群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記疾患がアルツハイマー病である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が医薬組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの請求項1のモノクローナル抗体を少なくとも1つの抗炎症剤と併せて含む調製物。
【請求項14】
前記抗炎症剤が金を含む、請求項13に記載の調製物。
【請求項15】
ヒトまたは動物で生じ、アミロイド原線維形成の一因となる前原線維凝集物の配座エピトープと結合するモノクローナル抗体を含む組成物であって、前記アミロイド原線維が実質的に前記エピトープを含まない前記組成物。
【請求項16】
前記前原線維凝集物が有害種を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
アミロイドペプチドモノマーが実質的に前記エピトープを含まない、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記モノクローナル抗体が前記前原線維凝集物の有害性を減少させるために有効である、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記前原線維凝集物が約1kDaから約100,000,000kDaの範囲の分子量を有する、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
前記前原線維凝集物が5つのモノマーを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項21】
前記前原線維凝集物が8つのモノマーを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項22】
前記前原線維凝集物が、アミロイド沈着を特徴とする疾患を有するヒトまたは動物に存在する、請求項15に記載の組成物。
【請求項23】
前記疾患が、アルツハイマー病、ダウン症候群に付随する若年性アルツハイマー病、SAAアミロイド症、遺伝性アイスランド症候群、多発性骨髄腫、海綿状脳症(狂牛病、ヒツジのスクレーピーおよびミンクの海綿状脳症を含む)、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルトヤコブ病、ゲルストマン-シュトラウスラー-シャインカー症候群、クールー、致死性家族性不眠症、慢性消耗性症候群、家族性アミロイド性多発性神経障害、前側頭性痴呆、II型糖尿病、全身性アミロイド症、血清アミロイド症、イギリス型家族性痴呆、デンマーク型家族性痴呆、黄斑変性および脳血管性アミロイド症から成る群から選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記疾患がアルツハイマー病である、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
少なくとも1つの請求項15のモノクローナル抗体を少なくとも1つの抗炎症剤と併せて含む調製物。
【請求項26】
前記抗炎症剤が金を含む、請求項25に記載の調製物。
【請求項27】
前記組成物が医薬組成物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項28】
ヒトおよび動物で生じる、原線維形成の一因となる前原線維凝集物の配座エピトープにモノクローナル抗体を結合させる工程(A)を含む、アミロイド沈着を特徴とする疾患または症状をヒトまたは動物で治療する方法。
【請求項29】
工程(A)が、治療的に有効量または予防量のモノクローナル抗体を対象に投与することを含み、前記抗体が、チオエステル結合を介してコロイド金と共有結合させたアミロイドAβから成る配座固定抗原でマウスを免疫することによって調製されてある、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記前原線維凝集物が、前原線維凝集物の有害種を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記モノクローナル抗体が前記前原線維凝集物の有害性を減少させるために有効である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記前原線維凝集物が約1kDaから約100,000,000kDaの範囲の分子量を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記前原線維凝集物が5つのモノマーを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記前原線維凝集物が8つのモノマーを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
アミロイドペプチドモノマーが実質的にエピトープを含まない、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
アミロイド原線維が実質的にエピトープを含まない、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
前記前原線維凝集物が、アミロイド沈着を特徴とする疾患を有するヒトまたは動物に存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患または症状が、アルツハイマー病、ダウン症候群に付随する若年性アルツハイマー病、SAAアミロイド症、遺伝性アイスランド症候群、多発性骨髄腫、海綿状脳症(狂牛病、ヒツジのスクレーピーおよびミンクの海綿状脳症を含む)、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルトヤコブ病、ゲルストマン-シュトラウスラー-シャインカー症候群、クールー、致死性家族性不眠症、慢性消耗性症候群、家族性アミロイド性多発性神経障害、前側頭性痴呆、II型糖尿病、全身性アミロイド症、血清アミロイド症、イギリス型家族性痴呆、デンマーク型家族性痴呆、黄斑変性および脳血管性アミロイド症から成る群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
前記疾患がアルツハイマー病である、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物が、脊髄内、硬膜下腔内、経口、経皮、肺、静脈内、皮下、鼻内、動脈内、頭蓋内、皮内、腹腔内、筋肉内、直腸および頬内投与から成る群から選択される方法によって投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項41】
脳の炎症を防ぐために有効な量で抗炎症剤を対象に投与する工程(B)をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項42】
工程(B)が、神経の炎症を減少させるために治療的に有効な量で金または金含有化合物を対象に投与することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
コロイド金調製物が工程(B)で投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記抗炎症剤が前記モノクローナル抗体と併用される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記抗炎症剤が前記モノクローナル抗体から分離されている、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
アミロイド沈着神経組織を特徴とする疾患または症状をヒトまたは動物で治療する方法であって、アミロイド原線維形成の一因となるヒトおよび動物で生じる前原線維凝集物のエピトープにモノクローナル抗体を結合させる工程(A)を含み、ここで前記アミロイド原線維が実質的に前記エピトープを含まない前記治療方法。
【請求項47】
工程Aが、前記モノクローナル抗体が工程Aにしたがって結合できるように治療的に有効な量または予防量の抗体を対象に投与することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記モノクローナル抗体が、ヒトまたは動物のアミロイド原線維形成の一因となる前原線維凝集物の配座エピトープと結合し、前記モノクローナル抗体が、Aβおよび他のアミロイドのオリゴマー配座によって優先的に表示される配座依存エピトープに対して特異的である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記前原線維凝集物が約1kDaから約100,000,000kDaの範囲の分子量を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記前原線維凝集物が5つのモノマーを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記前原線維凝集物が8つのモノマーを含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項52】
前記前原線維凝集物が有害種を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
前記モノクローナル抗体が前記前原線維凝集物の有害性を減少させるために有効である、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
アミロイド原線維が前記エピトープを実質的に含まない、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
前記前原線維凝集物が有害種を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
前記前原線維凝集物が、アミロイド沈着を特徴とする疾患を有するヒトまたは動物に存在する、請求項46に記載の方法。
【請求項57】
前記疾患または症状が、アルツハイマー病、ダウン症候群に付随する若年性アルツハイマー病、SAAアミロイド症、遺伝性アイスランド症候群、多発性骨髄腫、海綿状脳症(狂牛病、ヒツジのスクレーピーおよびミンクの海綿状脳症を含む)、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルトヤコブ病、ゲルストマン-シュトラウスラー-シャインカー症候群、クールー、致死性家族性不眠症、慢性消耗性症候群、家族性アミロイド性多発性神経障害、前側頭性痴呆、II型糖尿病、全身性アミロイド症、血清アミロイド症、イギリス型家族性痴呆、デンマーク型家族性痴呆、黄斑変性および脳血管性アミロイド症から成る群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項58】
前記疾患または症状がアルツハイマー病である、請求項46に記載の方法。
【請求項59】
前記組成物が、脊髄内、硬膜下腔内、経口、経皮、肺、静脈内、皮下、鼻内、動脈内、頭蓋内、皮内、腹腔内、筋肉内、直腸および頬内投与から成る群から選択される方法によって投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項60】
脳の炎症を防ぐために有効な量で抗炎症剤を対象に投与する工程(B)をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項61】
工程(B)が、神経の炎症を減少させるために治療的に有効な量で金または金含有化合物を対象に投与することを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
コロイド金調製物が工程(B)で投与される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記抗炎症剤が前記モノクローナル抗体と併用される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記抗炎症剤が前記モノクローナル抗体から分離されている、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
ヒトおよび動物で生じる、アミロイド原線維形成の一因となる前原線維凝集物の配座エピトープを得る工程(A)を含むモノクローナル抗体の製造方法。
【請求項66】
工程Aが、ヒトまたは動物から前記モノクローナル抗体を回収することを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
ヒトまたは動物で生じ、アミロイド原線維形成の一因となる前原線維凝集物のエピトープを含む組成物ヒトまたは動物に投与する工程(A)を含み、ここで前記アミロイド原線維が実質的に前記エピトープを含まない、モノクローナル抗体の製造方法。
【請求項68】
工程Aが、ヒトまたは動物から前記モノクローナル抗体を回収することを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
神経組織のアミロイド沈着の形成を特徴とする疾患または症状をヒトまたは動物で診断する方法であって、前記方法が、ヒトまたは動物の組織若しくは液体とモノクローナル抗体を含むかまたはモノクローナル抗体から成る組成物とを一緒にする工程(A)を含み、ここで前記モノクローナル抗体が、アミロイド原線維形成の一因となる前原線維凝集物の配座エピトープと結合する抗体である前記診断方法。
【請求項70】
前記疾患または症状が、アルツハイマー病、ダウン症候群に付随する若年性アルツハイマー病、SAAアミロイド症、遺伝性アイスランド症候群、多発性骨髄腫、海綿状脳症(狂牛病、ヒツジのスクレーピーおよびミンクの海綿状脳症を含む)、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルトヤコブ病、ゲルストマン-シュトラウスラー-シャインカー症候群、クールー、致死性家族性不眠症、慢性消耗性症候群、家族性アミロイド性多発性神経障害、前側頭性痴呆、II型糖尿病、全身性アミロイド症、血清アミロイド症、イギリス型家族性痴呆、デンマーク型家族性痴呆、黄斑変性および脳血管性アミロイド症から成る群から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記疾患または症状がアルツハイマー病である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記組織または液体が脳脊髄液である、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
神経組織のアミロイド沈着の形成を特徴とする疾患または症状をヒトまたは動物で診断する方法であって、前記方法が、ヒトまたは動物の組織若しくは液体と、アミロイド原線維形成の一因となるヒトまたは動物で生じる前原線維凝集物のエピトープと結合するモノクローナル抗体を含む組成物とを一緒にする工程(A)を含み、ここで前記アミロイド原線維は実質的に前記エピトープを含まない前記診断方法。
【請求項74】
前記疾患または症状が、アルツハイマー病、ダウン症候群に付随する若年性アルツハイマー病、SAAアミロイド症、遺伝性アイスランド症候群、多発性骨髄腫、海綿状脳症(狂牛病、ヒツジのスクレーピーおよびミンクの海綿状脳症を含む)、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルトヤコブ病、ゲルストマン-シュトラウスラー-シャインカー症候群、クールー、致死性家族性不眠症、慢性消耗性症候群、家族性アミロイド性多発性神経障害、前側頭性痴呆、II型糖尿病、全身性アミロイド症、血清アミロイド症、イギリス型家族性痴呆、デンマーク型家族性痴呆、黄斑変性および脳血管性アミロイド症から成る群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記疾患または症状がアルツハイマー病である、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記組織または液体が脳脊髄液である、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
ヒトまたは動物で生じ、アミロイド原線維形成の一因となる前原線維凝集物の配座エピトープと結合するモノクローナル抗体から成るかまたは該モノクローナル抗体を含む組成物を含む、ヒトまたは動物の中枢神経系のアミロイド沈着を特徴とする疾患または症状の検出に有用な診断キット。
【請求項78】
前記モノクローナル抗体が、Aβおよび他のアミロイドのオリゴマー配座によって優先的に表示される配座依存エピトープに対して特異的である、請求項77に記載のキット。
【請求項79】
アミロイド原線維形成の一因となる前原線維凝集物のエピトープと結合するモノクローナル抗体を含む単離された組成物を含む、ヒトまたは動物の中枢神経系のアミロイド沈着を特徴とする疾患または症状の検出に有用な診断キット。
【請求項80】
前記モノクローナル抗体が、Aβおよび他のアミロイドのオリゴマー配座によって優先的に表示される配座依存エピトープに対して特異的である、請求項79に記載のキット。
【請求項81】
以下の工程を含む、アルツハイマー病及び/又はヒトまたは動物で脳の炎症を惹起するまた別のアミロイド疾患を治療または予防する方法:
(A)請求項1のモノクローナル抗体の治療的に有効な量を対象に投与する工程;および
(B)脳の炎症を防ぐために有効な量で抗炎症剤を対象に投与する工程。
【請求項82】
工程(B)が、神経の炎症を減少させるために治療的に有効な量で金または金含有化合物を対象に投与することを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
コロイド金調製物が工程(B)で投与される、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記抗炎症剤が前記モノクローナル抗体と併用される、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
前記抗炎症剤が前記モノクローナル抗体から分離されている、請求項81に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−527865(P2007−527865A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526390(P2006−526390)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/029946
【国際公開番号】WO2005/025516
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】