説明

種子梱包装置

【課題】作業員の労力を小さくすることができ、製造される種子ネットの品質を安定させることができる種子梱包装置を提供すること。
【解決手段】種子梱包装置1は、内部に種子が梱包され両端部がシール部材によって熱溶着された種子ネット4を製造するものであり、送出部10と、第1溶着部20とを備える。送出部10は、ネット部材2を送り出す部分である。第1溶着部20は、送出部10から送り出されるネット部材2を切断し、切断したネット部材2の一端部を溶着シール23及びネームシール24が重なり合う状態でヒータ22を用いて熱溶着して、一端部が閉じられたネット袋3を形成する部分である。この種子梱包装置1には、送出部10を覆うカバー53と、第1溶着部20のヒータ22が放出する熱をカバー53内に送り込む送り込み機構60とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に種子が梱包され両端部がシール部材によって熱溶着されたネット袋を製造する種子梱包装置に関し、特に製造される種子ネットの品質を安定させることができる種子梱包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に種子が梱包された種子ネットは、例えば下記非特許文献1に開示されているような種子梱包装置によって製造される。この種子梱包装置は、図8に示したように、主に、送出部110、第1溶着部120、種子投入部130、及び図示しない第2溶着部の4つの部分を備えている。ここで、各部分の作動について説明する。
【0003】
先ず、送出部110では、リール111に巻かれたネット部材102が所定の長さだけ送り出される。次に、第1溶着部120では、送り出されるネット部材102が、カッター121によって切断され、切断されたネット部材102の送り出し方向の後端部は、シール部材123が重なり合う状態で、ヒータ122によって熱溶着される。これにより、一端部が閉じられたネット袋が形成される。続いて、種子投入部130では、投入装置131がネット袋の上方側が開いている状態で種子を投入する。最後に、第2溶着部では、閉じられていないネット袋の他端部が、シール部材が重なり合う状態で、ヒータによって熱溶着される。このようにして、内部に種子が梱包された種子ネットが製造されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“種子センター 環境・営農・製造プラント 日本車輌”、[online]、[平成22年7月15日検索]、インターネット<URL:http://www.n−syaryo.co.jp/business/plant/seedcenter−flow.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、種子梱包装置101が稼働する時期は、一般的に種子用籾の収穫が終わった11月頃であり、種子梱包装置101が設置される場所は、倉庫の様な内部の温度が外気温と変わらない状況の場所である。このため、種子梱包装置101は、昼間は二桁の温度になり朝晩は一桁の温度になる状況で稼働している。ここで、図9に示したように、送出部110では、リールに巻かれたネット部材102がカバー等に覆われておらず、外気の影響を受け易い。このため、例えば寒い日の早朝等で外気が約5度程度まで冷えたときには、ネット部材102は外気が常温であるときの状態より冷えて、第1溶着部120へ送り出されることになる。このとき、第1溶着部120では、シール部材123から冷えたネット部材102に熱が奪われて、シール部材123がヒータ122の熱でネット部材102に対して適切に溶け込まない。この結果、シール部材123がネット部材102の送り出し方向の後端部に適切に熱溶着しない場合があった。即ち、外気の温度に応じて送出部110から第1溶着部120へ送り出されるネット部材102の温度が変化するため、シール部材123の溶着具合が異なるという問題があった。
【0006】
そこで、従来では、作業員がシール部材123の溶着具合を見ていて、シール部材123が適切に熱溶着していない場合には、作業員がヒータ122の設定温度を高くすることによってシール部材123を適切に溶け込ませていた。また、高温すぎる場合には、ネット部材102がヒータ122の熱により溶けてしまうので、作業員がヒータ122の設定温度を低くする必要があった。しかし、これらの場合には、作業員が常にシール部材123の溶着具合を監視する必要があり、作業員の労力が大きかった。また、作業員の技能によってシール部材123の溶着具合にバラツキが生じて、製造される種子ネットの品質が安定しなかった。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決すべく、作業員の労力を小さくすることができ、且つ製造される種子ネットの品質を安定させることができる種子梱包装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る種子梱包装置は、ネット部材を送り出す送出部と、前記送出部から送り出されるネット部材を切断し、切断したネット部材の一端部をシール部材が重なり合う状態でヒータを用いて熱溶着して、一端部が閉じられたネット袋を形成する第1溶着部と、前記ネット袋の内部に種子を投入する種子投入部と、前記種子が投入されたネット袋の他端部を熱溶着する第2溶着部と、を備えたものであって、前記送出部を覆うカバーと、前記第1溶着部のヒータが放出する熱を前記カバー内に送り込む送り込み機構と、を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る種子梱包装置において、前記送り込み機構は、前記ヒータが放出する熱を熱交換することにより周囲の空気を温める熱交換器と、前記熱交換器により温められた空気を前記カバー内に吸入する吸入ファンと、を有することが好ましい。
また、本発明に係る種子梱包装置において、前記送り込み機構は、前記送出部のネット部材の温度を検出する温度検出装置と、前記温度検出装置により検出された温度に基づいて前記吸入ファンの駆動を制御する電子制御装置と、を有し、前記電子制御装置は、前記温度検出装置により検出された温度が設定温度より低い場合に前記吸入ファンを駆動させ、前記温度検出装置により検出された温度が設定温度より高い場合に前記吸入ファンの駆動を停止させることが好ましい。
また、本発明に係る種子梱包装置において、前記送り込み機構は、前記電子制御装置に駆動が制御されていて前記カバー内の空気を排出する排出ファンを有し、前記電子制御装置は、通常時に前記排出ファンの駆動を停止させ、前記温度検出装置により検出された温度が基準温度より高い場合に前記排出ファンを駆動させることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る種子梱包装置において、前記送り込み機構は、前記送出部と前記第1溶着部との間の空気の移動を遮断する遮断装置を有することが好ましい。
また、本発明に係る種子梱包装置において、前記カバーは、前記送出部と前記第1溶着部と前記種子投入部と前記第2溶着部の全体を覆うものであっても良い。
また、本発明に係る種子梱包装置において、前記第2溶着部を覆う第2カバーと、前記第2溶着部に設けられたヒータが放出する熱を前記第2カバー内に送り込む第2送り込み機構と、を設けても良い。
【発明の効果】
【0011】
よって、本発明の種子梱包装置によれば、カバーが送出部を覆っていて、送り込み機構は第1溶着部のヒータが放出する熱をカバー内に送り込む。このため、例えば寒い日の早朝等で外気が約5度程度まで冷えた場合であっても、送出部のネット部材は温められて、外気が常温であるときのような状態で、第1溶着部へ送り出される。従って、第1溶着部では、シール部材がヒータの熱でネット部材に対して適切に溶け込み、ネット部材の一端部が適切に熱溶着する。この結果、外気の温度に応じてシール部材の溶着具合にバラツキが生じることを防止でき、製造される種子ネットの品質を安定させることができる。
特に、本発明の種子梱包装置によれば、送り込み機構は第1溶着部のヒータが放出する熱を用いてカバー内を温めるため、ヒータを新たに設ける必要がなくて、送り込み機構を安価に構成することができる。更に、作業員がシール部材の溶着具合を見てヒータの設定温度を調節する必要がなくて、作業員の労力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態において、カバーで覆われていない種子梱包装置の概略的な全体構成図である。
【図2】カバーで覆われている種子梱包装置において、図1のX−X線に沿った断面図である。
【図3】図2に示した送出部と第1溶着部の拡大図である。
【図4】カバーで覆われている種子梱包装置において、図1のY方向から見た正面図である。
【図5】送出部がカバーで覆われていて第1溶着部がカバーで覆われていない状態を示した平面図である。
【図6】第2実施形態において、送出部と第1溶着部と種子投入部と第2溶着部の全体がカバーで覆われている状態を示した図1相当の全体構成図である。
【図7】第3実施形態において、送出部がカバーで覆われていて、第2溶着部が第2カバーで覆われている状態を示した図1相当の全体構成図である。
【図8】従来の種子梱包装置において、図2相当の断面図である。
【図9】従来の種子梱包装置において、図4相当の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る種子梱包装置について図面を参照しながら以下に説明する。図1は、カバーで覆われていない種子梱包装置1の概略的な全体構成図である。図2は、カバーで覆われている種子梱包装置1において図1のX−X線に沿った断面図である。図1では、ネット部材2の移動方向及びネット袋3の移動方向が黒い矢印で示されている。種子梱包装置1は、内部に種子が梱包された種子ネット4を製造するものであり、図1に示したように、主に、送出部10、第1溶着部20、種子投入部30、第2溶着部40の4つの部分を備えている。なお、この実施形態において、一端部のみがシール部材で熱溶着されたものがネット袋3であり、両端部がシール部材で熱溶着されたものが種子ネット4である。
【0014】
先ず、送出部10について説明する。送出部10は、図1及び図2に示したように、ネット部材2を所定の長さ毎に第1溶着部20に送り出す部分である。ネット部材2は、長手方向の長さが約35mで幅が30cmのものであり、長手方向の両端部が開口した筒状のものである。このネット部材2は、上面側と下面側とが重ね合わされた状態で、リール11(図2参照)に巻かれている。
【0015】
次に、第1溶着部20について説明する。第1溶着部20は、図1及び図2に示したように、送出部10から送り出されるネット部材2を切断し、切断されたネット部材2の送り出し方向の後端部(一端部)を熱溶着する部分である。第1溶着部20は、カッター21と、ヒータ22と、シール部材としての溶着シール23及びネームシール24と、シリンダ装置25とを備えている。
【0016】
ここで、図3は、図2に示した送出部10及び第1溶着部20の拡大図である。図3に示したように、カッター21は上側刃部21aと下側刃部21bとを有していて、上側刃部21aがシリンダ装置25によって下側刃部21bに対して上下動するようになっている。ヒータ22は上側放熱部22aと下側放熱部22bとを有していて、上側放熱部22aがシリンダ装置25によって下側放熱部22bに対して上下動するようになっている。溶着シール23は、リール26(図2参照)に巻かれていて、ネット部材2の溶着部分に対して上方側から重なり合うように送り込まれるものである。ネームシール24は、リール27(図2参照)に巻かれていて、ネット部材2の溶着部分に対して下方側から重なり合うように送り込まれるものである。
【0017】
この第1溶着部20では、以下のように作動する。送出部10から送り出されるネット部材2は、カッター21及びヒータ22を通り過ぎ、ネット部材2の先端部の両端が、スライド機構28(図1参照)によって保持される。スライド機構28は、ネット部材2を保持した後、種子投入部30側へスライドして、ネット部材2の先端部をカッター21から所定量引き出す。そして、ネット部材2は、溶着シール23及びネームシール24が重ね合わされた状態で、上側刃部21aの下方への移動によって、切断される。このとき、溶着シール23及びネームシール24は、ヒータ22の上側放熱部22a及び下側放熱部22bから放出される熱によって、ネット部材2に溶け込む。これにより、切断されたネット部材2の送り出し方向の後端部が熱溶着され、一端部が閉じられたネット袋3が形成される。
【0018】
続いて、種子投入部30について説明する。種子投入部30は、図1及び図2に示したように、ネット袋3の上方側が開いている状態で種子を投入する部分である。種子投入部30は、開口機構31と、チャック機構32と、投入装置33と、自動計量装置34とを備えている。
【0019】
この種子投入部30では、以下のように作動する。ネット袋3は、スライド機構28に保持された状態で、開口機構31に送られ、開口機構31は、ネット袋3の先端部を開口させる。そして、開口されたネット袋3は、チャック機構32によって保持され、投入装置33の下方に送れられる。その後、投入装置33は、ネット袋3の上方側が開いている状態で、自動計量装置34によって計量された所定量の種子(例えば4kgの種籾)を投入するようになっている。
【0020】
最後に、第2溶着部40について説明する。第2溶着部40は、図1に示したように、閉じられていないネット袋3の上端部(他端部)を熱溶着する部分である。第2溶着部40は、ベルトコンベア41と、左側シール部材42及び右側シール部材43と、ヒータ44と、ガイド部材45とを備えている。左側シール部材42及び右側シール部材43は、ガイド部材45に沿ってそれぞれヒータ44の先端まで送り出されていて、それぞれの先端がヒータ44の熱で互いに熱溶着している。ヒータ44は、ネット袋3の移動方向に延びる二つの加熱部44a,44bを有していて、加熱部44a,44bはネット袋3の上端部を挟み込むように移動可能である。
【0021】
この第2溶着部40では、以下のように作動する。種子が投入されたネット袋3は、チャック機構32及びベルトコンベア41によってヒータ44側に送られ、左側シール部材42及び右側シール部材43の先端の溶着部分に当接する。そして、ネット袋3は、上記したシール部材42,43の溶着部分を引っ掛けながら加熱部44a,44bの間を移動し、この移動に伴って左側シール部材42及び右側シール部材43が引き出される。こうして、ネット袋3が所定量移動した後、加熱部44a,44bがネット袋3の上端部を挟み込む。このとき、左側シール部材42及び右側シール部材43は、ヒータ44の加熱部44a,44bから放出される熱によって、ネット部材3に溶け込む。これにより、ネット部材3の上端部が熱溶着されて、内部に種子が梱包され両端部が熱溶着された種子ネット4が製造される。
【0022】
ところで、図8及び図9に示したように、従来の種子梱包装置101の送出部110では、リールに巻かれたネット部材102がカバーに覆われておらず、外気の影響を受け易い。このため、例えば寒い日の早朝等で外気が約5度程度まで冷えたとき、ネット部材102は外気が常温であるときの状態より冷えて、第1溶着部120へ送り出されることになる。このとき、第1溶着部120では、シール部材123から冷えたネット部材102に熱が奪われて、シール部材123がヒータ122の熱でネット部材102に対して適切に溶け込まない。この結果、シール部材123が、切断されたネット部材102の送り出し方向の後端部に適切に熱溶着しない場合があった。即ち、外気の温度に応じて送出部110から第1溶着部120へ送り出されるネット部材102の温度が変化するため、シール部材123の溶着具合が異なるという問題があった。
【0023】
そこで、この実施形態においては、上記した問題に対処するために、図2に示したように、送出部10から第1溶着部20へ送り出すネット部材2を温めて、シール部材としての溶着シール23及びネームシール24の溶着具合のバラツキを防止できるようになっている。以下、上記した問題に対処するための構成について説明する。
【0024】
図4は、カバーで覆われている種子梱包装置1において、図1のY方向から見た正面図である。図2及び図4に示したように、第1溶着部20はカバー51で覆われ、種子投入部30はカバー52で覆われ、第2溶着部40はカバー(図示省略)で覆われている。更に、この実施形態においては、送出部10もカバー53で覆われている。カバー53は、リール11に巻かれたネット部材2を囲んで内部の空気を温め易くするためのものである。こうして、第1溶着部20、種子投入部30、第2溶着部40に加えて、送出部10においても、外気の影響を受け難くなっている。
【0025】
送出部10のカバー53は、内部に熱をこもり易くするために、例えばグラスウール等の断熱部材で構成されている。また、カバー53は、開口部分で第1溶着部20のカバー51に脱着できるように取付けられている。これは、送出部10のリール11に巻かれたネット部材2が全て送り出されたときに、カバー53を取り外して、新しいネット部材2に交換するためである。
【0026】
そして、この実施形態においては、図3に示したように、第1溶着部20のヒータ22が放出する熱をカバー53内に送り込む送り込み機構60が設けられている。送り込み機構60は、第1溶着部20のヒータ22から放出される熱を利用してカバー53内に温風を送り込むようになっていて、熱交換器61と、吸入ファン62と、連通管63,64(図5参照)と、温度センサ65(温度検出装置)と、エアカーテン66(遮断装置)と、排出ファン67と、電子制御装置68とを備えている。
【0027】
熱交換器61は、ヒータ22の下側放熱部22bから放出される熱を取り出し易くするものである。具体的に、熱交換器61は、ヒータ22の下側放熱部22bから放出される熱と周囲の空気との間で熱交換して、周囲の空気の温度を例えば約50度程度まで温めるようになっている。この熱交換器61は、プレート状のものであり、図3に示したように、ヒータ22の下側放熱部22bに一体的に組付けられている。ここで、下側放熱部22bから放出される熱は、150度〜200度程度の一定温度に設定されていて、非常に高温である。しかし、図3に示したように、下側放熱部22bから熱が放出される部分は非常に小さいため、下側放熱部22bから直接熱を取り出し難い。そこで、この熱交換器61を用いることで、下側放熱部22bから放出される熱が取り出されて、周囲の空気が温まり易くなっている。
【0028】
吸入ファン62は、熱交換器61により温められた空気をカバー53内へ吸入するためのものである。ここで、図5は、カバー53が送出部10を覆い且つカバー51(図2参照)が第1溶着部20から取り外された状態の平面図である。図5に示したように、熱交換器61により温められた空気、即ち温風は、連通管64を通ってカバー53内に吸入されるようになっている。そして、このような空気の流れが生じることによって、カバー53内の空気が、連通管63の端の吸入孔63aから連通管63を通って熱交換器61の周囲へ流れて、再びカバー53内へ循環するようになっている。このようにして、カバー53内の空気を循環させることにより、熱効率を上げている。吸入ファン62は、図3に示したように、電子制御装置68に接続されていて、電子制御装置68の制御指令に応じて駆動するようになっている。
【0029】
温度センサ65は、送出部10のリール11に巻かれたネット部材2の温度(以下、「ネット温度T」と呼ぶ)を検出するものであり、カバー53に組付けられている。この温度センサ65は、ネット部材2に対して非接触型の温度センサであるが、接触型の温度センサであっても良い。温度センサ65により検出されたネット温度Tは、電子制御装置68に入力され、電子制御装置68は、ネット温度Tに基づいて吸入ファン62の駆動を制御する。具体的には、ネット温度Tが15度〜20度の間の所定の設定温度t1より低い場合、電子制御装置68は、ネット温度Tが設定温度t1になるまで、吸入ファン62を駆動させる。一方、ネット温度Tが設定温度t1より高い場合、電子制御装置68は、ネット温度Tが設定温度t1になるまで、吸入ファン62の駆動を停止させる。
【0030】
エアカーテン66は、送出部10と第1溶着部20との間の空気の移動を遮断するためのものである。このエアカーテン66は、図3に示したように、カバー53の上壁部分とカバー51との間に組付けられていて、下方に向かって風を送るようになっている。これにより、図3の仮想線で示したように、空気の壁Aiが形成され、カバー53内に吸入された空気(温風)が第1溶着部へ逃げ難くなる。この結果、温風がカバー53内で循環して、ネット温度Tを設定温度t1に維持し易くなる。
【0031】
排出ファン67は、カバー53外に温風を排出するためのものであり、カバー53の下壁部分に組付けられている。この排出ファン67は、電子制御装置68に接続されていて、電子制御装置68の制御指令に応じて駆動するようになっている。具体的に、電子制御装置68は、通常時に排出ファン67の駆動を停止させている。しかし、電子制御装置68は、カバー53内に吸入された空気(温風)によりネット温度Tが基準温度s1より高い場合に、排出ファン67を駆動させるようになっている。なお、基準温度s1は、設定温度t1より十分高い温度である。このようにして、ネット温度Tが設定温度t1より高くなりすぎた場合に、温風がカバー53外へ排出されて、素早くネット温度Tを低くすることができる。
【0032】
上記のように構成された種子梱包装置1の作用効果について説明する。
この実施形態の種子梱包装置1によれば、カバー53が送出部10を覆っていて、送り込み機構60は第1溶着部20のヒータ22が放出する熱をカバー53内に送り込む。具体的には、熱交換器6が、ヒータ22の下側放熱部22bから放出される熱と周囲の空気との間の熱交換により、周囲の空気を温めていて、吸入ファン62が、この温められた空気(温風)を連通管64を通してカバー53内に吸入する。そして、電子制御装置68は、ネット温度Tが設定温度t1になるように吸入ファン62の駆動を制御する。このため、例えば寒い日の早朝等で外気が約5度程度まで冷えた場合であっても、送出部10のネット部材2は温められて、外気が常温であるときのような状態で、第1溶着部20に送り出される。従って、第1溶着部20では、溶着シール23及びネームシール24がヒータ22の熱でネット部材2に対して適切に溶け込み、ネット部材2の一端部が適切に熱溶着する。この結果、外気の温度に応じて溶着シール23及びネームシール24の溶着具合にバラツキが生じることを防止でき、製造される種子ネット4の品質を安定させることができる。
【0033】
特に、この実施形態の種子梱包装置1によれば、送り込み機構60は、第1溶着部20のヒータ22が放出する熱を用いてカバー53内を温める。即ち、カバー53内は、既存の構成部材であるヒータ22を用いて温められる。このため、ヒータを新たに設ける必要がなくて、送り込み機構60を安価に構成することができる。
【0034】
ところで、図8及び図9に示した従来の種子梱包装置101では、作業員がシール部材123の溶着具合を見ていて、シール部材123が適切に熱溶着していない場合には、作業員がヒータ122の設定温度を高くすることによってシール部材123を適切に溶け込ませていた。また、高温すぎる場合には、ネット部材102がヒータ122の熱により溶けてしまうので、作業員がヒータ122の設定温度を低くする必要があった。しかし、これらの場合には、作業員が常にシール部材123の溶着具合を監視する必要があり、作業員の労力が大きかった。
これに対して、この実施形態の種子梱包装置1では、ヒータ22の設定温度は一定であって、変更する必要がなく、ネット温度Tが設定温度t1に調節される。このため、従来のように作業員がシール部材(溶着シール23及びネームシール24)の溶着具合を監視する必要がなくて、作業員の労力を低減することができる。
【0035】
次に、第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態における種子梱包装置1の概略的な全体構成図である。図6に示したように、送出部10と第1溶着部20と種子投入部30と第2溶着部40の全体が、カバー54で覆われている。この第2実施形態においては、図示しない送り込み機構60が、第1溶着部20のヒータ22が放出する熱をカバー54内全体に送り込むようになっている。具体的には、第1溶着部20のヒータ22を熱源として、第2溶着部40に、第1実施形態における熱交換器61、吸入ファン62、連通管63,64、温度センサ65、エアカーテン66、排出ファン67、電子制御装置68に相当する部材を適宜設ける。これにより、ネット温度Tが設定温度t1に調節されるとともに、第2溶着部40のネット袋3の温度が設定温度t1に調節される。
【0036】
この第2実施形態によれば、例えば寒い日の早朝等で外気が約5度程度まで冷えた場合であっても、第1溶着部20では、溶着シール23及びネームシール24がヒータ22の熱でネット部材2に対して適切に溶け込んで、ネット部材2の一端部を適切に熱溶着させることができる。更に、第2溶着部40では、左側シール部材42及び右側シール部材43がヒータ44の熱でネット袋3に対して適切に溶け込んで、ネット袋3の他端部(ネット部材2の他端部に相当する部位)を適切に熱溶着させることができる。第2実施形態のその他の作用効果は、第1実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0037】
続いて、第3実施形態について説明する。図7は、第3実施形態における種子梱包装置1の概略的な全体構成図である。図7に示したように、送出部20は第1実施形態におけるカバー53で覆われていて、第2溶着部40は第2カバー55で覆われている。この第3実施形態においては、第1実施形態と同様の送り込み機構(図示省略)を設けるとともに、第2溶着部40のヒータ44が放出する熱を第2カバー55内に送り込む第2送り込み機構(図示省略)を設ける。具体的には、第2溶着部40のヒータ44を熱源として、第2溶着部40に、第1実施形態における熱交換器61、吸入ファン62、連通管63,64、温度センサ65、エアカーテン66、排出ファン67、電子制御装置68に相当する部材を適宜設ける。これにより、ネット温度Tが設定温度t1に調節されるとともに、第2溶着部40のネット袋3の温度が第2設定温度t2に調節される。
【0038】
この第3実施形態によれば、例えば寒い日の早朝等で外気が約5度程度まで冷えた場合であっても、第1溶着部20では、溶着シール23及びネームシール24がヒータ22の熱でネット部材2に対して適切に溶け込んで、ネット部材2の一端部を適切に熱溶着させることができる。更に、第2溶着部40では、左側シール部材42及び右側シール部材43がヒータ44の熱でネット袋3に対して適切に溶け込んで、ネット袋3の他端部を適切に熱溶着させることができる。第3実施形態のその他の作用効果は、第1実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0039】
以上、本発明に係る種子梱包装置について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、各実施形態において、排出ファン67を設けたが、この排出ファン67に換えてカバー53に排出孔を形成しても良い。また、排出ファン67、排出孔等を設けなくても良い。
また、各実施形態において、送出部10と第1溶着部20との間の空気の移動を遮断する遮断装置として、エアカーテン66を設けたが、遮断装置の構成は適宜変更可能であり、例えばビニルカーテンであっても良い。また、遮断装置を設けなくても良い。
また、各実施形態において、送り込み機構60は熱交換器61と吸入ファン62とを備える構成としたが、送り込み機構60の構成は適宜変更可能であり、熱交換器61と吸入ファン62を備えていない構成としても良い。なお、この場合には、ヒータ22の暖気運転時間を長くして、ヒータ22から放出する熱を連通管64を通して直接カバー53内に送り込む。
また、各実施形態において、ネット部材2の温度を直接測定することによって、ネット温度Tが設定温度t1になるように調整したが、ネット部材2の周囲の温度を測定することによって、ネット温度Tが設定温度t1になるように調整しても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 種子梱包装置
2 ネット部材
3 ネット袋
4 種子ネット
10 送出部
20 第1溶着部
21 カッター
22 ヒータ
23 溶着シール
24 ネームシール
30 種子投入部
40 第2溶着部
42 左側シール部材
43 右側シール部材
44 ヒータ
53 カバー
54 カバー
55 第2カバー
60 送り込み機構
61 熱交換器
62 吸入ファン
63,64 連通管
65 温度センサ
66 エアカーテン
67 排出ファン
68 電子制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネット部材を送り出す送出部と、
前記送出部から送り出されるネット部材を切断し、切断したネット部材の一端部をシール部材が重なり合う状態でヒータを用いて熱溶着して、一端部が閉じられたネット袋を形成する第1溶着部と、
前記ネット袋の内部に種子を投入する種子投入部と、
前記種子が投入されたネット袋の他端部を熱溶着する第2溶着部と、を備えた種子梱包装置において、
前記送出部を覆うカバーと、
前記第1溶着部のヒータが放出する熱を前記カバー内に送り込む送り込み機構と、を設けたことを特徴とする種子梱包装置。
【請求項2】
請求項1に記載する種子梱包装置において、
前記送り込み機構は、
前記ヒータが放出する熱を熱交換することにより周囲の空気を温める熱交換器と、
前記熱交換器により温められた空気を前記カバー内に吸入する吸入ファンと、を有することを特徴とする種子梱包装置。
【請求項3】
請求項2に記載する種子梱包装置において、
前記送り込み機構は、
前記送出部のネット部材の温度を検出する温度検出装置と、
前記温度検出装置により検出された温度に基づいて前記吸入ファンの駆動を制御する電子制御装置と、を有し、
前記電子制御装置は、前記温度検出装置により検出された温度が設定温度より低い場合に前記吸入ファンを駆動させ、前記温度検出装置により検出された温度が設定温度より高い場合に前記吸入ファンの駆動を停止させることを特徴とする種子梱包装置。
【請求項4】
請求項3に記載する種子梱包装置において、
前記送り込み機構は、
前記電子制御装置に駆動が制御されていて前記カバー内の空気を排出する排出ファンを有し、
前記電子制御装置は、通常時に前記排出ファンの駆動を停止させ、前記温度検出装置により検出された温度が基準温度より高い場合に前記排出ファンを駆動させることを特徴とする種子梱包装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載する種子梱包装置において、
前記送り込み機構は、
前記送出部と前記第1溶着部との間の空気の移動を遮断する遮断装置を有することを特徴とする種子梱包装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載する種子梱包装置において、
前記カバーは、前記送出部と前記第1溶着部と前記種子投入部と前記第2溶着部の全体を覆うものであることを特徴とする種子梱包装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載する種子梱包装置において、
前記第2溶着部を覆う第2カバーと、
前記第2溶着部に設けられたヒータが放出する熱を前記第2カバー内に送り込む第2送り込み機構と、を設けたことを特徴とする種子梱包装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−236611(P2012−236611A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105278(P2011−105278)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】