説明

積層コンデンサの実装構造

【課題】共振周波数におけるインピーダンスの急激な低下を抑えることができ、かつクラックの発生を抑制できる積層コンデンサの実装構造を提供する。
【解決手段】積層コンデンサ2の実装構造1では、樹脂電極層14が第2コンデンサ部12のESR成分として機能するようなフィレット高さHのハンダフィレット7によって積層コンデンサ2と回路基板6との接続がなされている。これにより、樹脂電極層14の厚みに応じたESR成分が第2コンデンサ部12に付与され、共振周波数におけるインピーダンスのフラット化を実現できる。また、積層コンデンサ2の実装構造1では、第1コンデンサ部11と第2コンデンサ部12との間に間隔Dが設けられている。これにより、回路基板6の変形応力や第1コンデンサ部11の電歪振動による応力が第2コンデンサ部12に伝達しにくくなり、クラックの発生を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コンデンサの実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層コンデンサとして、例えば特許文献1に記載の積層コンデンサがある。この従来の積層コンデンサは、内部電極を有する誘電体グリーンシートの積層体を焼結してなるコンデンサ素体を重畳し、重畳体の両端面を覆うように外部電極を形成することによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−090067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような構成を有する積層コンデンサでは、共振周波数におけるインピーダンスの急激な低下を防止することが求められている。また、積層コンデンサを回路基板に実装した状態において、回路基板の変形による応力や基板側のコンデンサの電歪振動による応力が上側のコンデンサに伝わると、クラックが発生することが考えられる。したがって、クラックの発生を抑制できる構成も必要となる。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、共振周波数におけるインピーダンスの急激な低下を抑えることができ、かつクラックの発生を抑制できる積層コンデンサの実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る積層コンデンサは、積層コンデンサがハンダフィレットの形成によって回路基板に接続された積層コンデンサの実装構造であって、積層コンデンサは、誘電体層を介在させて第1の内部電極層と第2の内部電極層とが交互に積層されてなるコンデンサ素体と、コンデンサ素体の両端部にそれぞれ形成される一対の端子電極と、を備え、コンデンサ素体は、回路基板の実装面の法線方向に沿って所定の間隔をもって実装面側から順に配置された第1コンデンサ部及び第2コンデンサ部を有し、端子電極は、第1コンデンサ部及び第2コンデンサ部の両端部にそれぞれ形成された焼付電極層と、第1コンデンサ部及び第2コンデンサ部の焼付電極層の片側同士を繋ぐように形成された樹脂電極層と、第1コンデンサ部から第2コンデンサ部にわたって連続的に形成されためっき電極層と、を有し、ハンダフィレットは、樹脂電極層が第2コンデンサ部のESR成分として機能するようなフィレット高さとなっていることを特徴としている。
【0007】
この積層コンデンサの実装構造では、樹脂電極層が第2コンデンサ部のESR(等価直列抵抗)成分として機能するようなフィレット高さのハンダフィレットによって積層コンデンサと回路基板との接続がなされている。これにより、樹脂電極層の厚みに応じたESR成分が第2コンデンサ部に付与され、共振周波数におけるインピーダンスのフラット化を実現できる。また、この積層コンデンサの実装構造では、第1コンデンサ部と第2コンデンサ部との間に所定の間隔が設けられている。これにより、回路基板の変形による応力や基板側の第1コンデンサ部の電歪振動による応力が第2コンデンサ部に伝達しにくくなるので、クラックの発生を抑制できる。
【0008】
また、ハンダフィレットのフィレット高さは、第1コンデンサ部と第2コンデンサ部との間に位置する樹脂電極層よりも低くなっていることが好ましい。この場合、樹脂電極層を第2コンデンサ部のESR成分としてより確実に機能させることができる。
【0009】
また、樹脂電極層は、第1コンデンサ及び第2コンデンサの焼付電極層を覆うように形成され、めっき電極層は、樹脂電極層を覆うように形成されていることが好ましい。この場合、第2コンデンサ部に付与するESRを一層十分に確保できる。
【0010】
また、樹脂電極層は、第1コンデンサ部及び第2コンデンサ部の焼付電極層の片側同士の間にのみ形成され、めっき電極層は、樹脂電極層と焼付電極層とを覆うように形成されていることが好ましい。この場合、第2コンデンサ部に付与するESR成分が過剰になることを防止できる。
【0011】
また、第1コンデンサ部の静電容量が第2コンデンサ部の静電容量と異なっていることが好ましい。これにより、積層コンデンサが複数の共振周波数を持つこととなり、より広帯域でインピーダンスのフラット化を実現できる。
【0012】
また、第2コンデンサ部の静電容量は、第1コンデンサ部の静電容量よりも大きくなっていることが好ましい。この場合、低周波帯域において広帯域でインピータンスのフラット化が図られる。また、第1コンデンサ部の静電容量を抑えることで電歪振動が小さくなるので、音鳴きの発生を抑制できる。
【0013】
また、第2コンデンサ部の誘電体層が強誘電体材料からなり、第1コンデンサ部の誘電体層が常誘電体材料からなることが好ましい。この場合、第2コンデンサ部の静電容量と第1コンデンサ部の静電容量との差異が十分なものとなる。
【0014】
また、第2コンデンサ部の静電容量は、第1コンデンサ部の静電容量よりも小さくなっていることが好ましい。この場合、高周波帯域において広帯域でインピータンスのフラット化が図られる。
【0015】
また、本発明に係る積層コンデンサの実装構造は、積層コンデンサがハンダフィレットの形成によって回路基板に接続された積層コンデンサの実装構造であって、積層コンデンサは、誘電体層を介在させて第1の内部電極層と第2の内部電極層とが交互に積層されてなるコンデンサ素体と、コンデンサ素体の両端部にそれぞれ形成される一対の端子電極と、を備え、コンデンサ素体は、回路基板の実装面の法線方向に沿って所定の間隔をもって配置された複数のコンデンサ部を有し、端子電極は、各コンデンサ部の両端部にそれぞれ形成された焼付電極層と、隣り合うコンデンサ部の焼付電極層の片側同士を繋ぐように形成された樹脂電極層と、各コンデンサ部にわたって連続的に形成されためっき電極層と、を有し、ハンダフィレットは、樹脂電極層が当該樹脂電極層よりも上側のコンデンサ部のESR成分として機能するようなフィレット高さとなっていることを特徴としている。
【0016】
この積層コンデンサの実装構造では、樹脂電極層がそれよりも上側のコンデンサ部のESR成分として機能するようなフィレット高さのハンダフィレットによって積層コンデンサと回路基板との接続がなされている。これにより、樹脂電極層の厚みに応じたESR成分がコンデンサ部に付与され、共振周波数におけるインピーダンスのフラット化を実現できる。また、この積層コンデンサの実装構造では、各コンデンサ部間に所定の間隔が設けられている。これにより、回路基板の変形による応力や基板側のコンデンサ部の電歪振動による応力が上側のコンデンサ部に伝達しにくくなるので、クラックの発生を抑制できる。
【0017】
また、ハンダフィレットのフィレット高さは、最上段のコンデンサ部とその一段下のコンデンサ部との間に位置する樹脂電極層よりも低くなっていることが好ましい。
【0018】
また、ハンダフィレットのフィレット高さは、最下段のコンデンサ部とその一段上のコンデンサ部との間に位置する樹脂電極層よりも低くなっていることが好ましい。
【0019】
また、樹脂電極層は、各コンデンサの焼付電極層を覆うように形成され、めっき電極層は、樹脂電極層を覆うように形成されていることが好ましい。この場合、コンデンサ部に付与するESRを一層十分に確保できる。
【0020】
また、樹脂電極層は、各コンデンサ部の焼付電極層の片側同士の間にのみ形成され、めっき電極層は、樹脂電極層と焼付電極層とを覆うように形成されていることが好ましい。この場合、第2コンデンサ部に付与するESR成分が過剰になることを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る積層コンデンサの実装構造によれば、共振周波数におけるインピーダンスの急激な低下を抑えることができ、かつクラックの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る積層コンデンサの実装構造の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示した積層コンデンサの実装構造の等価回路図である。
【図3】図1に示した積層コンデンサの共振周波数付近のインピーダンスの変化の様子を示す図である。
【図4】比較例に係る積層コンデンサの実装構造の等価回路図である。
【図5】図4に示した積層コンデンサの共振周波数付近のインピーダンスの変化の様子を示した図である。
【図6】別の比較例に係る積層コンデンサに生じるクラックの様子を示す図である。
【図7】第2コンデンサ部の静電容量が第1コンデンサ部の静電容量よりも大きい場合の合成インピーダンスの様子を示す図である。
【図8】第2コンデンサ部の静電容量が第1コンデンサ部の静電容量よりも小さい場合の合成インピーダンスの様子を示す図である。
【図9】本発明に係る積層コンデンサの実装構造の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明に係る積層コンデンサの実装構造の別の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る積層コンデンサの実装構造の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る積層コンデンサの実装構造の一実施形態を示す断面図である。同図に示すように、積層コンデンサ2の実装構造1は、積層コンデンサ2をハンダフィレット7の形成によって回路基板6に接続することによって構成されている。
【0025】
積層コンデンサ2は、誘電体層8を介在させて第1の内部電極層9と第2の内部電極層10とが交互に積層されてなるコンデンサ素体3と、コンデンサ素体3の両端部にそれぞれ形成される一対の端子電極4,4とを備えている。コンデンサ素体3は、回路基板6の実装面Mの法線方向に沿って所定の間隔をもって実装面M側から順に配置された略直方体形状の第1コンデンサ部11及び第2コンデンサ部12を有している。第1コンデンサ部11と第2コンデンサ部12との間の間隔Dは、例えば50μm〜200μm程度となっている。
【0026】
第1コンデンサ部11の誘電体層8は、例えば(Ca,Sr)(Zr,Ti)O系の常誘電体材料を含むセラミックグリーンシートの積層体を焼結することによって形成されている。また、第2コンデンサ部12の誘電体層8は、例えばBaTiO系の強誘電体材料を含むセラミックグリーンシートの積層体を焼結することによって形成されている。これにより、第2コンデンサ部12の静電容量C2は、第1コンデンサ部11の静電容量C1よりも大きくなっている。
【0027】
第1の内部電極層9と第2の内部電極層10とは、例えばNiを含む導電性ペーストを印刷等によってセラミックグリーンシートにパターン形成し、当該パターンをセラミックグリーンシートと共に焼結することによって形成されている。第1の内部電極層9と第2の内部電極層10とは、少なくともグリーンシート1層分に相当する誘電体層8を挟むようにして積層方向に交互に配置されている。
【0028】
また、第1の内部電極層9の端部は、コンデンサ素体3の長手方向の一端面に伸び、第2の内部電極層10の端部は、コンデンサ素体3における長手方向の他端面に延びている。第1の内部電極層9と第2の内部電極層10とによって挟まれる素体領域は、第1コンデンサ部11の静電容量C1及び第2コンデンサ部12の静電容量C2を実質的に発生させる部分であり、電歪効果によって機械的歪みが生じる部分でもある。
【0029】
端子電極4は、第1コンデンサ部11及び第2コンデンサ部12の両端部を覆うようにそれぞれ形成された焼付電極層13と、焼付電極層13の片側同士を覆い、かつ上下に繋ぐように形成された樹脂電極層14と、樹脂電極層14の全体を覆い、第1コンデンサ部11から第2コンデンサ部12にわたって連続的に形成されためっき電極層15とによって形成されている。
【0030】
焼付電極層13は、例えば導電性金属粉末及びガラスフリットを含む電極ペーストを浸漬法などによってコンデンサ素体3の端面に付与し、これを焼き付けることによって形成される。樹脂電極層14は、例えばエポキシ硬化樹脂と銀フィラーからなる樹脂電極ペースト中に、コンデンサ素体3,3同士を重ねて浸漬(ディップ)することによって形成される。樹脂電極層14は、前述の樹脂電極ペースト中に、コンデンサ素体3を別々に浸漬したものを重ねることによって形成してもよい。めっき電極層15は、例えばNi層/Sn層、Ni層/Au層等によって形成されている。
【0031】
積層コンデンサ2の端子電極4は、ハンダフィレット7の形成によって回路基板6上のパッド電極16に対して電気的に接続されている。ハンダフィレット7のフィレット高さHは、樹脂電極層14が第2コンデンサ部12のESR成分として機能するような高さとなっている。より具体的には、本実施形態では、フィレット高さHは、樹脂電極層14のうち、第1コンデンサ部11の焼付電極層13と第2コンデンサ部12の焼付電極層13との間に位置する電極部分14aよりも低くなっている。
【0032】
なお、ハンダフィレット7のフィレット高さHの制御は、主にハンダの量で制御することができる。ハンダの量が多くなればフィレット高さHは高くなり、ハンダの量が少なくなればフィレット高さHは低くなる。また、パッド電極16の幅によるフィレット高さHの制御も可能である。パッド電極16の幅が端子電極4の幅よりも大きい場合、体積の大きなハンダフィレット7が形成され、フィレット高さHは高くなる。また、パッド電極16の幅が端子電極4の幅と同等程度である場合、体積の小さなハンダフィレット7が形成され、フィレット高さHは低くなる。
【0033】
図2は、この積層コンデンサ2の実装構造1の等価回路図である。同図に示すように、積層コンデンサ2の実装構造1では、フィレット高さHが第1コンデンサ部11の焼付電極層13と第2コンデンサ部12の焼付電極層13との間に位置する樹脂電極層14の電極部分14aよりも低くなっているので、電極部分14aの厚みに応じた抵抗Rが第2コンデンサ部12の抵抗rと直列に接続される。
【0034】
この抵抗Rは、第1コンデンサ部11及び第2コンデンサ部12の抵抗rに比べて十分に大きいため、樹脂電極層14の電極部分14aの厚みに応じたESR成分が第2コンデンサ部12に付与されると、コンデンサ部の段数n(本実施形態ではn=2)に依存せず、ESR=r(一定)となる。したがって、図3に示すように、共振周波数におけるインピーダンスの急激な低下が抑えられる。
【0035】
一方、図4は、比較例に係る積層コンデンサの実装構造の等価回路図である。この比較例の等価回路図は、端子電極4に樹脂電極層14を用いない多段積みコンデンサを想定したものである。この場合、第1コンデンサ部11と第2コンデンサ部12との間に抵抗Rは存在せず、第1コンデンサ部11及び第2コンデンサ部12の抵抗rが並列回路を構成するため、コンデンサ部の段数nに反比例して低ESR(=r/n)となる。したがって、図5に示すように、共振周波数におけるインピーダンスの急激な低下が生じることとなる。以上のように、この積層コンデンサ2の実装構造1では、共振周波数におけるインピーダンスの急激な低下が抑えられ、広帯域でインピーダンスのフラット化を実現できる。
【0036】
また、この積層コンデンサ2の実装構造1では、第1コンデンサ部11と第2コンデンサ部12との間に所定の間隔Dが設けられている。これにより、回路基板6の変形による応力や回路基板6側の第1コンデンサ部11の電歪振動による応力が上側の第2コンデンサ部12に伝達しにくくなり、クラックの発生を抑制できる。
【0037】
クラック発生の抑制効果につき、上記実施形態の場合と、図6に示す積層コンデンサ102の実装構造101のように、間隔Dに接着剤Gを充填して第1コンデンサ部11と第2コンデンサ部12とを繋いだ場合とで、回路基板6を実装面側が凸となるように3mm程度撓ませてクラック発生率を測定した。この結果、間隔Dを設けた本実施形態の場合では100個のサンプル全てでクラックが発生しなかったのに対し、接着剤を充填した比較例では100個のサンプルのうち2個で、第2コンデンサ部12の底面から両側の焼付電極層13,13に到達するクラックKが発生した(図6参照)。
【0038】
また、本実施形態では、端子電極4において、樹脂電極層14が第1コンデンサ部11及び第2コンデンサ部12の焼付電極層13を覆うように形成され、めっき電極層15が樹脂電極層14の全体を覆うように形成されている。これにより、樹脂電極層14の体積が十分確保されるので、第2コンデンサ部12に付与するESRを一層十分に確保できる。
【0039】
また、本実施形態では、第2コンデンサ部12の誘電体層8が強誘電体材料からなり、第1コンデンサ部11の誘電体層8が常誘電体材料からなり、第2コンデンサ部12の静電容量C2が第1コンデンサ部11の静電容量C1よりも大きくなっている。これにより、図7に示すように、第1コンデンサ部11と第2コンデンサ部12との合成インピーダンスは、特に低周波帯域において広帯域でフラット化される。また、第1コンデンサ部11の静電容量C1を抑えることで電歪振動が小さくなるので、音鳴きの発生を抑制できる。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した実施形態では、第2コンデンサ部12の静電容量C2が第1コンデンサ部11の静電容量C1よりも大きくなっているが、第2コンデンサ部12の静電容量C2が第1コンデンサ部11の静電容量C1よりも小さくなっていてもよい。この場合、図8に示すように、第1コンデンサ部11と第2コンデンサ部12との合成インピーダンスは、特に高周波帯域において広帯域でフラット化される。また、第2コンデンサ部12の静電容量C2と第1コンデンサ部11の静電容量C1とを必ずしも異ならせる必要はなく、両者が等価であってもよい。
【0041】
また、上述した実施形態では、端子電極4において、焼付電極層13の片側同士を覆うように樹脂電極層14を形成しているが、図9に示すように、積層コンデンサ22の実装構造21のように、端子電極23において、第1コンデンサ部11及び第2コンデンサ部12の焼付電極層13の片側同士の間にのみ樹脂電極層24を設け、焼付電極層13と樹脂電極層24とを覆うようにめっき電極層25を形成してもよい。この場合、第2コンデンサ部12に付与するESR成分が過剰になることを防止できる。
【0042】
さらに、上述した実施形態では、コンデンサ素体3が第1コンデンサ部11と第2コンデンサ部12との2段構成を有する例を示したが、コンデンサ部の配置数は更に多段であってもよい。この場合、ハンダフィレットのフィレット高さは、少なくとも最上段のコンデンサ部とその一段下のコンデンサ部との間に位置する樹脂電極層の電極部分よりも低くなっている必要がある。
【0043】
図10は、コンデンサ素体3が3段のコンデンサ部33からなる積層コンデンサ32の実装構造31を示す断面図である。この積層コンデンサ32の実装構造31では、端子電極35に接するハンダフィレット7のフィレット高さHは、下段のコンデンサ部33aと中段のコンデンサ部33bとの間に位置する樹脂電極層36の電極部分36aよりも低くなっている。これにより、樹脂電極層36の電極部分36aの厚みに応じたESR成分が上段のコンデンサ部33cと中段のコンデンサ部33bとに付与されるので、共振周波数におけるインピーダンスの急激な低下が抑えられ、広帯域でインピーダンスのフラット化を実現できる。
【0044】
また、各コンデンサ部33,33間には、所定の間隔Dが設けられている。したがって、回路基板6の変形による応力や回路基板6側のコンデンサ部33aの電歪振動による応力が上側のコンデンサ部33b,33cに伝達しにくくなるので、クラックの発生を抑制できる。この実施形態においても、各コンデンサ部33の焼付電極層13の片側同士の間にのみ樹脂電極層36を設け、焼付電極層13と樹脂電極層36とを覆うようにめっき電極層37を形成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1,21,31…実装構造、2,22,32…積層コンデンサ、3,33…コンデンサ素体、4,23,35…端子電極、6…回路基板、7…ハンダフィレット、8…誘電体層、9…第1の内部電極、10…第2の内部電極、11…第1コンデンサ部、12…第2コンデンサ部、13…焼付電極層、14,24,36…樹脂電極層、15,25,37…めっき電極層、33(33a〜33c)…コンデンサ部、C1…第1コンデンサ部の静電容量、C2…第2コンデンサ部の静電容量、D…間隔、H…フィレット高さ、M…実装面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層コンデンサがハンダフィレットの形成によって回路基板に接続された積層コンデンサの実装構造であって、
前記積層コンデンサは、
誘電体層を介在させて第1の内部電極層と第2の内部電極層とが交互に積層されてなるコンデンサ素体と、
前記コンデンサ素体の両端部にそれぞれ形成される一対の端子電極と、を備え、
前記コンデンサ素体は、
前記回路基板の実装面の法線方向に沿って所定の間隔をもって前記実装面側から順に配置された第1コンデンサ部及び第2コンデンサ部を有し、
前記端子電極は、
前記第1コンデンサ部及び前記第2コンデンサ部の両端部にそれぞれ形成された焼付電極層と、
前記第1コンデンサ部及び前記第2コンデンサ部の前記焼付電極層の片側同士を繋ぐように形成された樹脂電極層と、
前記第1コンデンサ部から前記第2コンデンサ部にわたって連続的に形成されためっき電極層と、を有し、
前記ハンダフィレットは、前記樹脂電極層が前記第2コンデンサ部のESR成分として機能するようなフィレット高さとなっていることを特徴とする積層コンデンサの実装構造。
【請求項2】
前記ハンダフィレットのフィレット高さは、第1コンデンサ部と第2コンデンサ部との間に位置する樹脂電極層よりも低くなっていることを特徴とする請求項1記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項3】
前記樹脂電極層は、前記第1コンデンサ及び前記第2コンデンサの前記焼付電極層を覆うように形成され、
前記めっき電極層は、前記樹脂電極層を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項4】
前記樹脂電極層は、前記第1コンデンサ部及び前記第2コンデンサ部の前記焼付電極層の片側同士の間にのみ形成され、
前記めっき電極層は、前記樹脂電極層と前記焼付電極層とを覆うように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項5】
前記第1コンデンサ部の静電容量が前記第2コンデンサ部の静電容量と異なっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項6】
前記第2コンデンサ部の静電容量は、前記第1コンデンサ部の静電容量よりも大きくなっていることを特徴とする請求項5記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項7】
前記第2コンデンサ部の誘電体層が強誘電体材料からなり、前記第1コンデンサ部の誘電体層が常誘電体材料からなることを特徴とする請求項6記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項8】
前記第2コンデンサ部の静電容量は、前記第1コンデンサ部の静電容量よりも小さくなっていることを特徴とする請求項5記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項9】
積層コンデンサがハンダフィレットの形成によって回路基板に接続された積層コンデンサの実装構造であって、
前記積層コンデンサは、
誘電体層を介在させて第1の内部電極層と第2の内部電極層とが交互に積層されてなるコンデンサ素体と、
前記コンデンサ素体の両端部にそれぞれ形成される一対の端子電極と、を備え、
前記コンデンサ素体は、
前記回路基板の実装面の法線方向に沿って所定の間隔をもって配置された複数のコンデンサ部を有し、
前記端子電極は、
前記各コンデンサ部の両端部にそれぞれ形成された焼付電極層と、
隣り合う前記コンデンサ部の前記焼付電極層の片側同士を繋ぐように形成された樹脂電極層と、
前記各コンデンサ部にわたって連続的に形成されためっき電極層と、を有し、
前記ハンダフィレットは、前記樹脂電極層が当該樹脂電極層よりも上側のコンデンサ部のESR成分として機能するようなフィレット高さとなっていることを特徴とする積層コンデンサの実装構造。
【請求項10】
前記ハンダフィレットのフィレット高さは、最上段のコンデンサ部とその一段下のコンデンサ部との間に位置する樹脂電極層よりも低くなっていることを特徴とする請求項9記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項11】
前記ハンダフィレットのフィレット高さは、最下段のコンデンサ部とその一段上のコンデンサ部との間に位置する樹脂電極層よりも低くなっていることを特徴とする請求項10記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項12】
前記樹脂電極層は、前記各コンデンサの前記焼付電極層を覆うように形成され、
前記めっき電極層は、前記樹脂電極層を覆うように形成されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項13】
前記樹脂電極層は、前記各コンデンサ部の前記焼付電極層の片側同士の間にのみ形成され、
前記めっき電極層は、前記樹脂電極層と前記焼付電極層とを覆うように形成されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項記載の積層コンデンサの実装構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−43947(P2012−43947A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183290(P2010−183290)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】