説明

積層シートの製造方法

【課題】 コートむら、変色がなく、耐アルカリ性、耐汚染性、可視光平均透過率、近赤外線吸収性に優れた積層シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 透明基材フィルム(A)の一方の面に低屈折率層(B)を形成する工程と、前記透明基材フィルム(A)の他方の面に近赤外線吸収層(C)を形成する工程とを有し、 前記透明基材フィルム(A)の一方の面に特定のグラフト共重合体を含む低屈折率層形成用組成物を第1のコーターで塗布し、加熱乾燥して前記低屈折率層(B)を形成した後、シートを巻き取ることなく、前記透明基材フィルム(A)の他方の面に近赤外線吸収層形成用組成物を第2のコーターで塗布し、加熱乾燥して前記近赤外線吸収層(C)を形成する積層シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シートの製造方法に関するものであり、詳しくは、積層シートのコートむら、積層シートの変色がなく、耐アルカリ性、耐汚染性、可視光平均透過率、近赤外線吸収性に優れた積層シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光エレクトロニクス関連部品、機器の進歩は著しく、その中で、画像を表示するディスプレイは、従来のテレビジョン装置用に加えて、コンピューターモニター用等として需要が増加しつつある。中でも、ディスプレイの大型化および薄肉化に対する市場要求は高まる一方である。最近、大型かつ薄肉化を実現することが可能であるディスプレイとして、プラズマディスプレイパネル(PDP)が注目されている。PDPは、原理上、強い近赤外線を装置外に放出する。この近赤外線は、コードレス電話や赤外線方式のリモートコントローラー等の誤動作を引き起こす原因となる。そこで、近赤外線を遮断するために、プラズマディスプレイパネルに近赤外線(NIR)カットフィルムが使用されている。
【0003】
一方、パーソナルコンピュータ、テレビジョン、カーナビゲータ、携帯電話などのディスプレイは、人間が画像を見て情報を読み取るものであり、見やすさが重要な機能として求められる。しかし、現実には背景の映りこみによるコントラストが低下し、画面が見づらくなるという状況が多々発生する。これを防ぐために、視認性低下の原因になっている画面の表面反射の抑制する工夫がなされ、ディスプレイの表面には防眩処理又は反射防止処理が施される。
【0004】
防眩処理は、ディスプレイの表面に微細な凹凸を形成し、光の散乱により反射像を散らして輪郭をぼかせる処理である。基板がプラスチックの場合には、シリカなどの無機微粒子や、ポリスチレンなどの有機微粒子などが表面にコーティングされるが、画像の解像度が低下する。反射防止処理は、表面に光の波長程度の厚さからなる薄膜を形成し、光の干渉効果により反射率を低減するものである。入射媒質の屈折率をn1、膜の屈折率をn2、反射率をRとすると、
R=〔(n2−n1)/(n2+n1)〕2
であり、膜厚をd、光の波長をλとすると
d=λ/(4n2
のとき、光の干渉効果は最大になる。
【0005】
特許文献1には、近赤外線吸収特性を備えた反射防止性フィルムとして、透明樹脂フィルムの一方の面に反射防止層を形成し、かつ該透明樹脂フイルムの他の面に近赤外線吸収剤を0.005〜0.3wt%・mm含有する粘着剤層を積層してなる反射防止性フィルムが開示されている。
しかし、特許文献1に記載の反射防止性フィルムは、積層シートのコートむら、積層シートの変色が生じるという問題点がある。また、耐アルカリ性、耐汚染性、可視光平均透過率、近赤外線吸収性等の特性にも改善の余地があった。
【特許文献1】特開平10−156991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、上記のような従来の課題を解決し、積層シートのコートむら、積層シートの変色がなく、耐アルカリ性、耐汚染性、可視光平均透過率、近赤外線吸収性に優れた積層シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のとおりである。
1.透明基材フィルム(A)の一方の面に低屈折率層(B)を形成する工程と、前記透明基材フィルム(A)の他方の面に近赤外線吸収層(C)を形成する工程とを有する積層シートの製造方法であって、
前記透明基材フィルム(A)の一方の面に下記低屈折率層形成用組成物を第1のコーターで塗布し、加熱乾燥して前記低屈折率層(B)を形成した後、シートを巻き取ることなく、前記透明基材フィルム(A)の他方の面に下記近赤外線吸収層形成用組成物を第2のコーターで塗布し、加熱乾燥して前記近赤外線吸収層(C)を形成することを特徴とする積層シートの製造方法。
低屈折率層形成用組成物:ラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位を幹とし、シリコーンを枝とするグラフト共重合体を含有する。
近赤外線吸収層形成用組成物:アクリル系樹脂バインダーおよび近赤外線吸収色素を含有するとともに、前記アクリル系樹脂バインダー100質量部に対し、前記近赤外線吸収色素を5〜50質量部含有する。
2.前記低屈折率層形成用組成物が、フッ素原子を1個以上含有する2価の有機基を有するジシラン化合物又はその(部分)加水分解物を主成分とするマトリックス成分;中空シリカ粒子;および前記グラフト共重合体を含有するとともに、前記マトリックス成分100質量部に対し、前記中空シリカ粒子20〜120質量部および前記グラフト共重合体5〜40質量部を含有することを特徴とする前記1に記載の積層シートの製造方法。
3.前記近赤外線吸収色素が2種類以上使用されることを特徴とする前記1または2に記載の積層シートの製造方法。
4.前記近赤外線吸収色素が、ジイモニウム系色素、シアニン系色素およびフタロシアニン系色素から選ばれた2種類以上であることを特徴とする前記3に記載の積層シートの製造方法。
5.前記アクリル系樹脂が、ポリメチルメタクリレート系樹脂であることを特徴とする前記1に記載の積層シートの製造方法。
6.前記透明基材フィルム(A)が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする前記1に記載の積層シートの製造方法。
7. 前記近赤外線吸収層(C)の、前記透明基材フィルム(A)側の面とは反対面に、粘着剤層(D)を形成する工程をさらに有することを特徴とする前記1に記載の積層シートの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明で特定する組成を有する低屈折率層は、耐アルカリ性、塗工性、耐汚染性、耐擦傷性、透明性に優れ、また最低反射率も小さいという利点を有するが、当業界で一般的に行われている従来法を適用して積層シートを製造しようとすると、低屈折率層形成用組成物の成分、とくに上記グラフト共重合体が透明基材フィルム(A)の他方の面に転写してしまい、近赤外線吸収層(C)のコートむらが生じるという問題点があった。ここで従来法とは、基材上に低屈折率層を形成し、長尺ロール状に一旦巻き取って、しかる後、長尺ロールを再び巻きだして基材の他面に目的とする層を形成する方法である。
そこで本発明の製造方法では、透明基材フィルム(A)の一方の面に特定組成の低屈折率層形成用組成物を第1のコーターで塗布し、加熱乾燥して低屈折率層(B)を形成した後、シートを巻き取ることなく、透明基材フィルム(A)の他方の面に特定組成の近赤外線吸収層形成用組成物を第2のコーターで塗布し、加熱乾燥して近赤外線吸収層(C)を形成することを特徴としている。この方法によれば、低屈折率層(B)を形成した後、シートを巻き取ることなく近赤外線吸収層(C)を形成しているので、従来法のように低屈折率層形成用組成物の成分が透明基材フィルム(A)の他方の面に転写してしまうことがない。したがって、近赤外線吸収層(C)のコートむらが生じない。また、本発明における低屈折率層(B)を形成するには140℃程度の高温乾燥が必要であるが、このような高温は、近赤外線吸収層(C)に含まれる近赤外線吸収色素の変色の原因となる。本発明の製造方法では、上記のように低屈折率層(B)の形成のための加熱乾燥を、近赤外線吸収層(C)の形成以前に実施しているので、近赤外線吸収色素が変色することがない。
このように本発明によれば、積層シートのコートむら、積層シートの変色がなく、耐アルカリ性、耐汚染性、可視光平均透過率、近赤外線吸収性に優れた積層シートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。なお本発明でいう近赤外線とはおよそ800〜1100nmの波長領域の赤外線を意味しているが、本製品は、特に850nm、950nmの近赤外線透過率で評価を行った。850nmで近赤外線透過率が10%以下、950nmで近赤外線透過率が5%以下であることが、必要とされている。
【0010】
(透明基材フィルム(A))
本発明で使用される透明基材フィルム(A)としては特に制限はなく、様々な透明プラスチックフィルムの中から、状況に応じて適宜選択して用いることができる。この透明プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエチレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂などからなるフィルム、これらの積層フィルム等が挙げられる。これらの中でも、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、機械的強度と寸法安定性が良好であり、また所望の厚みに調整が可能である。
透明基材フィルム(A)の厚さとしては、例えば10〜300μm、好ましくは20〜200μmである。
透明基材フィルム(A)は、所望により酸化防止剤や紫外線吸収剤等、公知の添加剤を配合してもよい。
また透明基材フィルム(A)は、他層との接着性を高めるために、易接着剤層を設けておくこともできる。
【0011】
(ハードコート層)
本発明における積層シートは、透明基材フィルム(A)と低屈折率層(B)との間にハードコート層を設ける形態が好ましい。
このようなハードコート層は、厚さが0.5〜10μmであることが好ましい。
厚さが0.5μm未満では、鉛筆硬度が低下し、耐スチールウール性も低下する。厚さが10μmを超えると、カールが強く発生し好ましくない。好ましい厚さは、0.6〜4.0μmであり、さらに好ましい厚さは、0.7〜3.0μmである。
【0012】
本発明においては、ハードコート層に高屈折率層のもつ役割を兼ねさせ、その上に低屈折率層を設けた簡易な構成と、ハードコート層上に高屈折率層および低屈折率層を設けた構成が挙げられる。前者の構成、すなわちハードコート層に高屈折率層のもつ役割を兼ねさせ、その上に低屈折率層を設けた簡易な構成(以下、簡易構成という)において、ハードコート層は、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に、五酸化アンチモン20〜600質量部、所望により末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体5〜20質量部を配合し、これを硬化して形成される形態が好ましい。
【0013】
分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート等を挙げることができる。好ましい具体例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートが挙げられ、中でもジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートがとくに好ましい。これらの多官能(メタ)アクリレ−トは単独で用いても又は2種以上混合して用いてもよい。
【0014】
五酸化アンチモンは、平均粒子径が5〜100nmであることが好ましい。この平均粒子径を有することにより、透明性が高まる。
さらに好ましい平均粒子径は、10〜70nmであり、とくに好ましい平均粒子径は、 15〜50nmである。
五酸化アンチモンはパイロクロア構造を有しているものが好ましい。このようなパイロクロア構造を有するものは、プロトン伝導による導電性が高いという特性を有している。なお、パイロクロア構造とは、日本化学会誌、No.4, P.488,1983年に記載されているように、アンチモン原子を中心にして6個の酸素原子およびOH基により8面体が形成され、これら8面体の頂点共有によって形成された骨格構造をいう。
【0015】
末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体としては、末端メタクリレートポリメチルメタクリレート、末端スチリルポリメタクリレート、末端メタクリレートポリスチレン、末端メタクリレートポリエチレングリコール、末端メタクリレートアクリロニトリル−スチレン共重合体、末端メタクリレートスチレン−メチルメタクリレート共重合体等を挙げることができ、その質量平均分子量は5000〜10000が好ましい。末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体の市販品としては、マクロモノマーAA−6、AS−6S、AN−6S、AW−6S(東亞合成(株)製)等を挙げることができる。
【0016】
簡易構成において、ハードコート層は、上記の2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に、五酸化アンチモン20〜600質量部、所望により末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体5〜20質量部を配合した組成物を用いて形成される。五酸化アンチモンの配合割合が20〜600質量部であることにより、最低反射率の低減効果が向上する。また帯電防止効果も発現する。末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体が5〜20質量部であることにより、低屈折率層との密着性が高まり、その結果耐アルカリ性および耐擦傷性に優れるという効果が発揮される。また、耐カール性が向上する。
さらに好ましい配合割合は、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に対し、五酸化アンチモン45〜140質量部および末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体5〜15質量部である。
【0017】
ハードコート層上に高屈折率層および低屈折率層を設けた構成(以下、3層構成という)では、ハードコート層に五酸化アンチモンを配合する必要はない。しかし、末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体を配合することが好ましい。
これにより、高屈折率層との密着性が高まり、その結果耐アルカリ性および耐擦傷性に優れるという効果が発揮される。
3層構成において、電離放射線硬化型樹脂および末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体の好ましい種類および配合割合は、前述の簡易構成と同様である。
【0018】
ハードコート層は、透明基材フィルム上に上記各成分を塗料として塗布、乾燥し、電離放射線照射により硬化させることにより形成することができる。電離放射線に特に制限はなく、例えば、電子線、放射線、紫外線などを挙げることができる。電離放射線の中で、紫外線は装置が簡単であり、取り扱いか容易であることから、特に好適に用いることができる。電離放射線を照射して架橋させることにより、JIS K 5400において定義される鉛筆硬度H以上の塗膜を形成することができる。
【0019】
電離放射線が紫外線の場合、光重合開始剤が通常添加される。光重合開始剤としては特に制限はなく、例えばイルガキュアー184,907,651,1700,1800,819,369(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ダロキュアー1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、エザキュアーKIP150、TZT(日本シイベルヘグナー社製)、ルシリンTPO(BASF社製)、カヤキュアBMS(日本化薬製)等が挙げられる。
【0020】
また上記組成物は、必要に応じて各種添加剤を併用できることは勿論である。
【0021】
(易接着剤層)
本発明においては、透明基材フィルムとハードコート層との間に、両者の密着性を向上させる目的で易接着剤層を設けてもよい。易接着剤層は、透明基材フィルムとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを採用したときに、とくに有効である。
易接着剤層の材質は、透明であって、透明基材フィルムとハードコート層の密着性を向上させるものであれば、とくに制限されないが、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂およびそれらの共重合体等が挙げられる。易接着剤層の厚さは特に限定されないが、0.03〜0.30μmが好ましく、0.05〜0.20μmがさらに好ましい。易接着剤層は、透明基材フィルム上に公知のコーティング技術により設けることができる。
【0022】
(低屈折率層)
本発明における低屈折率層は、ラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位を幹とし、シリコーンを枝とするグラフト共重合体を含有する低屈折率層形成用組成物を用いて形成される。中でも低屈折率層形成用組成物が、フッ素原子を1個以上含有する2価の有機基を有するジシラン化合物又はその(部分)加水分解物を主成分とするマトリックス成分;中空シリカ粒子;および前記グラフト共重合体を含有するとともに、前記マトリックス成分100質量部に対し、前記中空シリカ粒子20〜120質量部および前記グラフト共重合体5〜40質量部を含有する形態が好ましい。
なお本発明において、(部分)加水分解物とは、部分加水分解物であっても、完全加水分解物であってもよいことを示す。またマトリックス成分における主成分とは、溶剤を除く有効成分中50質量%以上、特に70質量%以上の割合で含まれていることを意味する。
【0023】
マトリックス成分は、フッ素原子を1個以上含有する2価の有機基を有するジシラン化合物又はその(部分)加水分解物を主成分とする。
上記ジシラン化合物は、下記式(I)
m13-mSi−Y−SiR13-mm (I)
(式中、R1は炭素数1〜6の1価炭化水素基、Yはフッ素原子を1個以上含有する2価有機基、Xは加水分解性基、mは1、2又は3である。)
で示されるジシラン化合物又はその(部分)加水分解物(以下(i)成分ともいう)であるのが好ましい。
【0024】
ここで、Yは、フッ素原子を1個以上、好ましくは4〜50個、特に好ましくは8〜24個含有する2価有機基を示し、具体的には下記のものを例示することができるが、これに限定されるものではない。
−C24−(CF2n−C24
−C24−CF(CF3)−(CF2n−CF(CF3)−C24
−C24−CF(C25)−(CF2n−CF(C25)−C24
−C24−CF(CF3)CF2−O(CF2nO−CF2CF(CF3)−C24
(但し、nは2〜20である。)
−C24−C610−C24
−C24−C64−C24
【0025】
反射防止性に加え、防汚性、撥水性等の諸機能を良好な基準で発現させるためには、フッ素原子を多量に含有していることが好ましい。また、パーフルオロアルキレン基は剛直なため、高硬度で耐擦傷性に富む被膜を得る目的のためは、フッ素原子をできるだけ多量に含有していることが好ましい。フッ素原子を多量に含有していれば、耐アルカリ性もよくなる。従って、Yとしては下記の構造
−CH2CH2(CF2nCH2CH2
−C24−CF(CF3)−(CF2n−CF(CF3)−C24
(但し、nは2〜20である。)
が好ましく、特に
−CH2CH2(CF2nCH2CH2−(n=2〜20)
が好ましい。
【0026】
nとしては2〜20の値を満たす必要があるが、より好ましくは4〜12、特に好ましくは4〜10の範囲を満たすのがよい。これより少ないと、反射防止性、耐アルカリ性、耐汚染性、撥水性等の諸機能を十分に得ることができない場合があり、多すぎると、架橋密度が低下するため十分な耐擦傷性が得られない場合が生ずる。
【0027】
1は、炭素数1〜6の1価炭化水素基を表す。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基等を例示することができる。良好な耐擦傷性を得るには、メチル基が好ましい。
【0028】
mとしては1、2又は3、好ましくは2又は3であり、特に高硬度な被膜にするには、m=3とするのがよい。
【0029】
Xは、加水分解性基を表す。具体例としては、Clなどのハロゲン原子、OR2(R2は炭素数1〜6の1価炭化水素基)で示されるオルガノオキシ基、特にメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、イソプロペノキシ基などのアルケノキシ基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、メチルエチルケトキシム基等のケトオキシム基、メトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基などを挙げることができる。これらの中でアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基のシラン化合物が取り扱い易く、加水分解時の反応の制御もし易いため、好ましい。
【0030】
以上を満たすジシラン化合物の具体例としては、下記のものが例示される。
(CH3O)3Si−C24−(CF24−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−(CF26−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−(CF28−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−(CF210−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−(CF216−C24−Si(OCH33
(C25O)3Si−C24−(CF24−C24−Si(OC253
(C25O)3Si−C24−(CF26−C24−Si(OC253
(CH3O)2(CH3)Si−C24−(CF24−C24−Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)Si−C24−(CF26−C24−Si(CH3)(OCH32
(CH3O)(CH32Si−C24−(CF24−C24−Si(CH32(OCH3
(C25O)(CH32Si−C24−(CF26−C24−Si(CH32(OC25
(CH3O)3Si−C24−CF(CF3)−(CF24−CF(CF3)−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−CF(CF3)−(CF28−CF(CF3)−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−CF(CF3)−(CF212−CF(CF3)−C24−Si(OCH33
これらの中でも、好ましくは、
(CH3O)3Si−C24−(CF24−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−(CF26−C24−Si(OCH33
(CH3O)3Si−C24−(CF28−C24−Si(OCH33
(C25O)3Si−C24−(CF24−C24−Si(OC253
(C25O)3Si−C24−(CF26−C24−Si(OC253
の各ジシラン化合物を使用するのがよい。
【0031】
前記の式(I)のジシラン化合物は、下記式(II)で示されるフッ素原子置換有機基を含有する有機珪素化合物又はその(部分)加水分解物((ii)成分)と併用することができる。
Rf−SiX3 (II)
(式中、Rfはフッ素原子を1個以上含有する1価有機基、Xは加水分解性基である。)
【0032】
ここで、Rfはフッ素原子を1個以上、好ましくは3〜25個、特に好ましくは3〜17個含有する1価有機基を示し、具体的には下記のものを例示することができる。
CF324
CF3(CF2324
CF3(CF2524
CF3(CF2724
CF3(CF2924
CF3(CF21124
CF3(CF27CONHC36
CF3(CF27CONHC24NHC36
CF3(CF2724OCOC24SC36
CF3(CF2724OCONHC36
CF3(CF27SO2NHC36
37O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)CONHC36
(但し、pはp≧1、特に1〜3である。)
これらの中でも、
CF324
CF3(CF2324
CF3(CF2724
が極性部分を含んでいないため好ましい。Xは、前述の通りである。
【0033】
以上を満たすフッ素原子置換有機基を含有する有機珪素化合物の具体例としては、下記のものが例示される。
CF324−Si(OCH33
CF324−Si(OC253
CF3(CF2324−Si(OCH33
CF3(CF2324−Si(OC253
CF3(CF2524−Si(OCH33
CF3(CF2724−Si(OCH33
CF3(CF2724−Si(OC253
CF3(CF2924−Si(OCH33
CF3(CF21124−Si(OCH33
CF3(CF27CONHC36−Si(OCH33
CF3(CF27CONHC24NHC36−Si(OCH33
CF3(CF2724OCOC24SC36−Si(OCH33
CF3(CF2724OCONHC36−Si(OCH33
CF3(CF27SO2NHC36−Si(OCH33
37O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)CONHC36−Si(OCH33
(但し、pはp≧1である。)
これらの中でも、下記のものが好ましい。
CF324−Si(OCH33
CF3(CF2324−Si(OCH33
CF3(CF2724−Si(OCH33
【0034】
本発明においては、(i)成分を(ii)成分と併用せず、単独で用いることができるが、(i)成分と(ii)成分とを混合して使用する場合、(i)成分の含有率を60質量%以上100質量%未満とすることが必要である。(i)成分の含有率が60質量%未満であると、架橋密度が低下し、良好な耐擦傷性が得られないため、保護被膜としての機能が不十分となり、好ましくない。より好ましくは(i)成分の含有率が95質量%以上であるのがよい。また、(ii)成分の添加効果の点から、(i)成分の含有率は、99.5質量%以下であることが好ましい。
また、本発明においては、上記(i)成分と(ii)成分との混合物を共加水分解したものを使用してもよい。
【0035】
本発明における好ましい低屈折率層形成用組成物は、(i)成分単独又は(i)成分と(ii)成分との混合物もしくはその共加水分解物を主成分とするが、求める諸特性に影響を与えない範囲で、下記有機珪素化合物又はその(部分)加水分解物を使用することができる。
【0036】
(i)、(ii)成分と併用することが可能な有機珪素化合物としては、テトラエトキシシラン等のシリケート類、メチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のアルキルシラン類、フェニルトリメトキシシラン等のフェニルシラン類、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤類等の各種化合物を挙げることができる。特に、テトラアルコキシシランは、架橋密度を上げる効果があるため、耐擦傷性を向上させる目的で併用する場合には有効であるが、被膜を親水性化する傾向があり、耐アルカリ性、耐汚染性、撥水性等の諸機能を低下させることがあるため、多量に使用するのは避けた方がよく、(i)成分又は(i)、(ii)成分の合計量100質量部に対して5質量部以下、特に2質量部以下、とりわけ1質量部以下であることが好ましい。
【0037】
上述した式(I)、(II)の化合物、或いは上記(i)、(ii)成分と併用可能な有機珪素化合物は、このままで使用してもよいし、(部分)加水分解した形、或いは下記溶剤中で加水分解した形で使用してもよい。コーティング後の硬化速度を高める観点からは、(部分)加水分解した形で使用する方が好ましい。加水分解に使用する水の量は、(H2O/Si−X)のモル比が0.1〜10の量比で使用するのがよい。
【0038】
加水分解は、従来公知の方法を適用することができ、この加水分解用触媒或いは加水分解・縮合硬化用触媒として、塩酸、酢酸、マレイン酸等の酸類、水酸化ナトリウム(NaOH)、アンモニア、トリエチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン等のアミン化合物、及びアミン化合物の塩類、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩等の塩基類、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムのようなフッ化塩、固体酸性触媒或いは固体塩基性触媒(例えばイオン交換樹脂触媒など)、鉄−2−エチルヘキソエート、チタンナフテート、亜鉛ステアレート、ジブチル錫ジアセテートなどの有機カルボン酸の金属塩、テトラブトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、ジブトキシ−(ビス−2,4−ペンタンジオネート)チタン、ジ−i−プロポキシ(ビス−2,4−ペンタンジオネート)チタンなどの有機チタンエステル、テトラブトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、ジブトキシ−(ビス−2,4−ペンタンジオネート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ(ビス−2,4−ペンタンジオネート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウムエステル、アルミニウムトリイソプロポキシド等のアルコキシアルミニウム化合物、アルミニウムアセチルアセトナート錯体等のアルミニウムキレート化合物等の有機金属化合物、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノアルキル置換アルコキシシランが例示され、これらを単独で又は混合して使用してもよい。
【0039】
この触媒の添加量は、(部分)加水分解されるべき化合物100質量部に対し、0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜1質量部である。この量が0.01質量部よりも少ないと、反応完結までに時間がかかりすぎたり、反応が進行しない場合がある。また、10質量部を超えると、コスト的に不利であり、得られる組成物或いは硬化物が着色してしまったり、副反応が多くなる場合がある。
【0040】
中空シリカ粒子は、シリカを主成分とする外殻層を有し、内部が多孔質または空洞となっている粒子である。中空シリカ粒子の平均粒子径は5〜100nmが好ましく、10〜80nmがさらに好ましい。なお、上記平均粒子径は動的光散乱法によって求めた。
【0041】
ラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位を幹とし、シリコーンを枝とするグラフト共重合体は、好ましくは、繰り返し単位からなる幹部分がアクリル系ポリマーである櫛形のアクリル系グラフト共重合体である。当該グラフト共重合体としては、下記式(III)で示されるシリコーンと下記式(IV)で示されるアクリルシラン化合物とを縮合させてなる生成物をあげることができる。
【0042】
【化1】

【0043】
(式中R6およびR7は炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基、フェニル基または一価のハロゲン化炭化水素基を表す。qは1以上の正数である。)
【0044】
【化2】

【0045】
(式中R8は水素原子またはメチル基を表す。R9はメチル基、エチル基、またはフェニル基を表し、2つのR9は互いに同一もしくは異なっていてもよい。Zは塩素原子、メトキシ基またはエトキシ基を表す。)
【0046】
ここで用いられる前記式(III)で示されるシリコーンは市販品として入手でき、目的にあったものを使用することができる。前記式(III)におけるR6およびR7は炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基、フェニル基または一価のハロゲン化炭化水素であり、炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、アシル基等が挙げられ、一価のハロゲン化炭化水素としては、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロ−3,3−ジフルオロブチル基、2−クロロエチル基等が挙げられる。R8およびR9として特に好ましいのはメチル基である。
【0047】
前記式(III)でqは1以上の正数であるが、一般にqの数が100以上という高分子量のシリコーンを用いた場合、得られるグラフト共重合体はオイル状のものであることが多い。qの数が100以下という低分子量シリコーンを用いた場合、得られるグラフト共重合体は、モノマーの種類によりオイル状、ゼリー状、固体状等各種のものを得ることができる。
【0048】
次に前記式(IV)で示されるアクリルシラン化合物としては、例えばγ−メタクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルジフェニルクロロシラン、γ−アクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。これらのアクリルシラン化合物は、特公昭33−9969号公報に記載の方法等に従い、ケイ素化合物と脂肪族性多重結合を有する化合物とを塩化白金酸の存在下で反応させることにより容易に得られる。
【0049】
また、グラフト共重合体の作製におけるラジカル共重合は、従来公知の方法を使用でき、放射線照射法、ラジカル重合開始剤を用いる方法を使用できる。さらに紫外線照射法により共重合させる場合は、ラジカル重合開始剤として公知の増感剤を使用し、電子線照射により共重合させる場合はラジカル重合開始剤を使用する必要はない。このようにして得られたラジカル共重合体は、ラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位を幹とし、シリコーンを枝とする櫛形グラフト共重合体である。なお、ラジカル重合性モノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基を含有するモノマーを併用してもよい。
【0050】
また本発明におけるグラフト共重合体は、市販品を利用することもでき、例えば、サイマックUS−150、US−270、US−350、US−450、レゼダGP−700(以上、東亞合成(株)製)等を挙げることができる。
【0051】
前述のように、本発明における低屈折率層形成用組成物の好適な形態では、前記マトリックス成分100質量部に対し、前記中空シリカ粒子を20〜120質量部および前記グラフト共重合体5〜40質量部を配合してなる。グラフト共重合体の配合量が5質量部未満であると、耐アルカリ性の改善効果が発揮されない。また40質量部を超えると、低屈折率層の塗工時に塗工ムラが発生する。さらに好ましい配合割合は、マトリックス成分100質量部に対し、中空シリカ粒子40〜100質量部およびグラフト共重合体10〜30質量部である。
【0052】
更に、本発明における低屈折率層形成用組成物には、被膜の硬度、耐擦傷性、導電性等の物性を調整することを目的として各種添加剤を配合することもできる。
【0053】
低屈折率層を形成するための塗料に用いるに好適な有機溶剤としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテルなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等のβ−ジケトン、β−ケトエステルを挙げることができる。
【0054】
低屈折率層の屈折率は、1.28〜1.50が好ましく、1.30〜1.45がさらに好ましい。また低屈折率層の厚さは、40〜300nmであることが好ましく、60〜150nmであることがより好ましい。
【0055】
(高屈折率層)
本発明における高屈折率層は、とくに制限されず、公知の高屈折率層を適宜採用することができる。例えば、本発明において高屈折率層は、例えば高屈折率層を形成しうるマトリックス成分に、高屈折率材料である酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、さらにこれらの金属酸化物微粒子にアンチモン、錫等の異種元素をドープした微粒子を高屈折率層形成用マトリックスに分散させ、塗料とし、これを塗布等により形成した層であることができる。
本発明では、高屈折率層形成用のマトリックスとして、ハードコート層との密着性や塗工性等の条件に適合する樹脂等から選択して用いることができ、具体的には前記ハードコート層を形成するために用いられる電離放射線硬化型樹脂、あるいは、熱硬化型樹脂等が挙げられる。中でも本発明では、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂が好ましい。該電離放射線硬化型樹脂は、ハードコート層に用いられるものと同様の成分が好ましい。
【0056】
本発明において、高屈折率層としてとくに好ましい形態は、高屈折率層が、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に、アンチモン酸亜鉛を100〜600質量部を配合し、これを硬化して形成されたものである。
アンチモン酸亜鉛は公知であり、例えば特開平6−219743号公報、特開平9−211221号公報等に開示されている。該公報には、ZnO/Sb2 5 のモル比が0.8〜1.2であって、5〜200nmの1次粒子径を有する導電性無水アンチモン酸亜鉛の粉末が開示され、本発明に使用することができる。また、上記アンチモン酸亜鉛は、ZnO/Sb2 5 のモル比が0.8〜1.2となる割合で、焼成により酸化亜鉛を生成する亜鉛化合物と、焼成により酸化アンチモンを生成するアンチモン化合物との混合物を焼成することにより、製造することができる。焼成温度は、例えば500〜680℃である。
【0057】
またアンチモン酸亜鉛は、その一次粒子径が0.5ミクロン以下の無水アンチモン酸亜鉛ゾルとして入手することができる。例えば、メタノール(セルナックスCX−Z603M−F2、セルナックスCX−Z400、日産化学(株)製)あるいはメタノール/イソプロパノール(セルナックス CX−Z300IM、日産化学(株)製)のオルガノゾルとして入手できる。
上記無水アンチモン酸亜鉛ゾルは、メタノール中では安定で凝集して粒子径が大きくなるようなことはないが、電離放射線硬化型樹脂中で不安定で凝集して粒子径が大きくなったり、分散が破壊されて分離、沈降してしまう。したがって、高屈折率層のマトリックスとして電離放射線硬化型樹脂を使用する場合、分散剤を使用してアンチモン酸亜鉛をマトリックス中に均一に分散することが好ましい。この場合の分散剤としては、カチオン系、弱カチオン系、ノニオン系あるいは両性界面活性剤が有効であり、特にアルキルアミンEO・PO付加体(例えばソルスパース20000、日本ルーブリゾール社製)、アルキルアミンEO付加体(例えばTAMNO−15、TAMNS−10及びTAMNO−5、日光ケミカル(株)製)及びエチレンジアミンPO−EO縮合物(例えばプルロニックTR−701、TR−702及びTR−704、旭電化工業(株)製)などが好ましい。その添加量はアンチモン酸亜鉛100質量部に対し、0.1〜5質量部が有効である。なお、アルキルアミンのアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、ラウリル基、ステアリル基等をあげることができる。また、EO(エチレンオキサイド)やPO(プロピレンオキサイド)の付加モル数としては、アミン1モルに対し数モル〜100モルぐらいまでが適当しているが、これに限定されるものではない。
【0058】
前述のように、アンチモン酸亜鉛は、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100質量部に対し、100〜600質量部を配合するのが好ましく、200〜500質量部を配合するのがさらに好ましい。
【0059】
更に、本発明における高屈折率層には、被膜の硬度、耐擦傷性、導電性等の物性を調整することを目的として各種添加剤を配合することもできる。
【0060】
高屈折率層を形成するための塗料に用いるに好適な有機溶剤としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテルなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等のβ−ジケトン、β−ケトエステルを挙げることができる。
【0061】
高屈折率層の屈折率は、1.60以上が好ましい。さらに好ましい屈折率は、1.70〜1.80である。また、高屈折率の厚さは、30〜500nmが好ましく、50〜250nmがさらに好ましい。
【0062】
(近赤外線吸収層(C))
本発明における近赤外線吸収層(C)は、アクリル系樹脂バインダーおよび近赤外線吸収色素を含有するとともに、前記アクリル系樹脂バインダー100質量部に対し、前記近赤外線吸収色素を5〜50質量部含有する近赤外線吸収層形成用組成物により形成される。
【0063】
(アクリル系樹脂バインダー)
本発明で使用されるアクリル系樹脂バインダーとしては、アクリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエステル類の単独重合体、前記単量体と共重合し得るエチレン性不飽和単量体との共重合体などが挙げられ、とくに制限されるものではないが、本発明ではポリメチルメタクリレート系樹脂が好ましい。中でも、ポリメチルメタクリレート系樹脂は、低分子量成分が極力排除された、シャープな分子量分布を有するものであれば、近赤外線吸収色素の劣化を起こさず、耐熱性、耐光性を良化させることができる。なお低分子量成分は、近赤外線吸収色素の構造を破壊する傾向にあり、近赤外線吸収色素の吸収性能を変化させ、耐熱性および耐光性を劣化させてしまう。したがって本発明でとくに好適なポリメチルメタクリレート系樹脂の分子量分布は、Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が、1.5乃至2.1であることが好ましく、1.6乃至1.9であることがより好ましい。なお本発明でいう分子量分布は、展開溶媒としてクロロホルムを用い、GPC(ポリメチルメタクリレート換算値)により測定される。
【0064】
(近赤外線吸収色素)
本発明で使用される近赤外線吸収色素は、上記で定義した近赤外線の波長領域の赤外線を吸収可能な色素であればとくに制限されないが、本発明では、近赤外線吸収色素が、ジイモニウム系色素、シアニン系色素およびフタロシアニン系色素から選ばれた2種類以上であることが好ましい。
【0065】
ジイモニウム色素は、下記一般式(1)で示される構造を有するものが挙げられる。
【0066】
【化3】

【0067】
上記一般式(1)中、R16〜R23はそれぞれ同じであっても異なっていても良く、水素原子、ヒドロキシ基、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はフェニルアルキル基を示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。シクロアルキル基としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基が挙げられる。アルケニル基としてはビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。アリール基としてはフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
【0068】
これらの基に結合する置換基としては、シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;テトラヒドロフリル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、プロポキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基エトキシプロポキシ基、メトキシブトキシ基、エトキシブトキシ基等の炭素数2〜12のアルコキシアルコキシ基;メトキシメトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、メトキシエトキシメトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシメトキシメトキシ基、エトキシメトキシエトキシ基、エトキシエトキシメトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基等の炭素数3〜15のアルコキシアルコキシアルコキシ基;アリルオキシ基;フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜12のアリールオキシ基;メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、n−プロピルスルホニルアミノ基、イソプロピルスルオニルアミノ基、n−ブチルスルホニルアミノ基、tert−ブチルスルホニルアミノ基、sec−ブチルスルホニルアミノ基、n−ペンチルスルホニルアミノ基、n−ヘキシルスルホニルアミノ基等の炭素数1〜6のアルキルスルホニルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカアルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、イソプロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、sec−ブトキシカルボニルオキシ基、n−ペンチルオキシカルボニルオキシ基、n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0069】
これらのR16〜R23のうち、炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、シアノ置換アルキル基が好ましく、炭素数2〜6の直鎖又は分鎖基を有するアルキル基が特に好ましい。かかる炭素数2〜6の直鎖又は分鎖基を有するアルキル基の具体例としては、例えばエチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、iso−アミル基等が挙げられる。
【0070】
また、R16〜R23の好ましい他の例として、フェニルアルキレン基を挙げることもできる。かかるフェニルアルキレン基のアルキレン基の炭素数は、1〜8であることが好ましい。更にフェニルアルキレン基におけるフェニル基は、置換基を有していなくてもよいが、アルキル基、水酸基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、ハロゲン置換アルキル基及びハロゲンからなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有していてもよい。好ましくは置換基を有していないフェニル基である。
【0071】
かかるフェニルアルキレン基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピレン基、フェニル−α−メチルプロピレン基、フェニル−β−メチルプロピレン基、フェニルブチレン基、フェニルペンチレン基、フェニルオクチレン基等が挙げられ、ベンジル基及びフェネチル基が好ましい。
【0072】
上記一般式(1)における環A及びBは、1,4−位以外に1〜4個の置換基を有しても、いなくてもよい。
結合しうる置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、シアノ基、低級アルキル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等のC1〜C5のアルコキシ基が挙げられ、低級アルキルとしては、例えばメチル基、エチル基等のC1〜C5のアルキル基が挙げられる。好ましくはA及びBが置換基を有していないか、ハロゲン原子(特に塩素原子、臭素原子)、メチル基もしくはシアノ基で置換されたのもが好ましい。なお、Bに置換基を有する場合は、4つのB環がすべて同じであるもの、更に、置換基の位置はフェニレンジアミン骨格に結合する窒素原子に対して、m−位であるものが合成上好ましい。更に環A及びBには1,4−位以外に置換基を有していないものが合成上好ましい。
【0073】
上記一般式(1)におけるXは、電荷を中和するのに必要なアニオンであり、アニオンが2価である場合には1分子、アニオンが1価の場合には2分子必要になる。これらのアニオンは、例えば有機酸アニオン又は無機アニオン等から選択される。具体的には、有機酸アニオンとしては、例えば酢酸イオン、乳酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、ステアリン酸イオン等の有機カルボン酸イオン;メタスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ナフタレンモノスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン、クロロベンゼンスルホン酸イオン、ニトロベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等の有機スルホン酸イオン;及びテトラフェニルホウ酸イオン、ブチルトリフェニルホウ酸イオン等の有機ホウ酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド酸イオン、ビス(ペンタフルオロエタン)イミド酸イオン、ペンタフルオロエタンスルホントリフルオロメタンスルホンイミド酸イオン、トリフルオロメタンスルホンヘプタフルオロプロパンスルホンイミド酸イオン、ノナフルオロブタンスルホントリフルオロメタンスルホンイミド酸イオン、1,3−ジスルホンニルヘキサフルオロプロピレンイミド酸イオン等のスルホンイミド酸イオン等が挙げられ、好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等のアルキルスルホン酸イオン、アルキルアリールスルホン酸イオン及びスルホンイミド酸イオンが挙げられる。
【0074】
無機アニオンとしては、例えばフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン;チオシアン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、硝酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、バナジン酸イオン、リン酸イオン及びホウ酸イオン等が挙げられ、好ましいものとしては、過塩素酸イオン、ヨウ素イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン及びヘキサフルオロアンチモン酸イオン等が挙げられる。
【0075】
これらのアニオンのうち、好ましいものとしては、例えば過塩素酸イオン、ヨウ素イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン及びスルホンイミド酸イオン等が挙げられる。
【0076】
上記一般式(1)で示されるジイモニウム系色素の合成方法は公知であり、例えば特公昭43−25335号公報に開示された方法を採用できる。上記一般式(1)で表されるジイモニウム系色素は、850〜1200nmの範囲に近赤外線吸収能があり、特に1000nm前後の近赤外線吸収が強く、リモコン等に使用される近赤外線の波長の光以外にも、将来使用が見込まれるコンピューター通信の波長の光をも遮断し、この誤作動の防止にも効果が期待できる。
【0077】
本発明でとくに好ましいジイモニウム色素は、下記一般式(2)で表される。
【0078】
【化4】

【0079】
(一般式(2)中、R1〜R8はそれぞれ同じであっても異なっていても良く、水素原子、ヒドロキシ基、置換もしくは未置換の、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アリール基、又はフェニルアルキル基であり、環A及びBは置換基を有していても良い。また、R9及びR10はそれぞれ同じであっても異なっていても良く、それぞれフルオロアルキル基を示すか、それらが一緒になって形成するフルオロアルキレン基を表す。)
【0080】
本発明における一般式(2)で表されるジイモニウム系色素の中でも、とくに好適な化合物を下記に例示する。
【0081】
式(20)で示される、ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド酸N,N,N',N'−テトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、
式(20)
【0082】
【化5】

【0083】
式(21)で示される、ビス(ペンタフロロエタンスルホン)イミド酸N,N,N',N'−テトラキス{p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、
式(21)
【0084】
【化6】

【0085】
式(22)で示される、ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド酸N,N,N',N'−テトラキス{p−ジ(iso−ブチル)アミノフェニル}−p−フェニレンジイモニウム、
式(22)
【0086】
【化7】

【0087】
式(23)で示される、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド酸}N,N,N',N'−テトラキス(p−ジベンジルアミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウム、
式(23)
【0088】
【化8】

【0089】
式(24)で示される、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド酸}N,N,N',N'−テトラキス(p−ジフェネチルアミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウム、
式(24)
【0090】
【化9】

【0091】
式(25)で示される、ビス{ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド酸}N,N,N',N'−テトラキス{(p−ジ(4−フッ化)ベンジルアミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウム、
式(25)
【0092】
【化10】

【0093】
式(26)で示される、ビス(1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミド酸)N,N,N',N'−テトラキス(p−ジフェネチルアミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウム、
式(26)
【0094】
【化11】

【0095】
式(27)で示される、ビス(1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミド酸)N,N,N',N'−テトラキス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウム等が挙げられる。
式(27)
【0096】
【化12】

【0097】
本発明で使用される一般式(2)で表されるジイモニウム系色素は、例えば特公昭43−25335号公報に開示された次の様な方法で得ることができる。すなわち、p−フェニレンジアミンと1−クロロ−4−ニトロベンゼンをウルマン反応させて得られた生成物を還元することにより得られる、下記一般式(28)で表されるアミノ体を有機溶媒中、好ましくはジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等の水溶性極性溶媒中、30〜160℃、好ましくは50〜140℃で、所望のR1〜R8に対応するハロゲン化化合物(例えば、R1がn−C49のときはBrC49)と反応させて、全ての置換基(R1〜R8)が同一である化合物(以下、全置換体と記す)を得ることができる。また、全置換体以外の化合物を合成する場合、例えば、先に所定のモル数(一般式(20)のアミン体1モル当たり7モル)の試薬(BrC49)と反応させてR1〜R8のうち7つにn−ブチル基を導入した後、残りの置換基(iso−ブチル基)を導入するのに必要なモル数(一般式(28)のアミン体1モル当たり1モル)の試薬(BrC49BrCH2CH(CH32)と反応させる。
一般式(28)
【0098】
【化13】

【0099】
(式中、環A及びBは前記で定義された通りである。)
【0100】
その後、上記で合成した化合物を、有機溶媒中、好ましくはジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、アセトニトリル等の水溶性極性溶媒中、0〜100℃、好ましくは5〜70℃で、一般式(29)で示されるスルホンイミド酸銀誘導体を添加して酸化反応を行い、析出した銀を濾別した後、水、酢酸エチル又はヘキサン等の溶媒を加え、生じた沈殿を濾過することにより本発明の一般式(2)で表されるジイモニウム系色素がえられる。
一般式(29)
【0101】
【化14】

【0102】
(式中、R9及びR10は前記で定義された通りである。)
【0103】
上記一般式(2)で表されるジイモニウム系色素の市販品としては、例えば、「CIR−RL」、「CIR−1085」(いずれも日本カーリット株式会社製)、「K−1032」(日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0104】
フタロシアニン系色素は、フタロシアニン、フタロシアニン錯体、或いはフタロシアニン及びフタロシアニン錯体であってフタロシアニン骨格のベンゼン環上にOR、SR、NHR、又はNRR′のうちの1種以上有するものである。ここでR、R′は、同一もしくは異なって、置換基を有してもよいフェニル基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜20のアラルキル基を表す。なお置換基のうちの1個がNHRで置換されたフタロシアニンであることが好ましい。
フタロシアニン系色素は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0105】
【化15】

【0106】
(式中、αは、同一もしくは異なって、SR28、OR29、NHR30又はハロゲン原子を表し、NHR30を必須とする。R28、R29及びR30は、同一もしくは異なって、置換基を有してもよいフェニル基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜20のアラルキル基を表す。βは、同一もしくは異なって、SR28、OR29又はハロゲン原子を表し、SR28、OR29を必須とする。Mは無金属、金属、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。)
【0107】
上記一般式(3)において、炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の直鎖又は分岐状のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子であることが好ましい。
【0108】
上記R28、R29及びR30におけるフェニル基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜20のアラルキル基は、置換基を1個又は2個以上有してもよい。このような置換基としては、例えばハロゲン原子、アシル基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基カルボニル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0109】
上記一般式(3)中のMにおいて、無金属とは、金属以外の原子、例えば2個の水素原子であることを意味する。具体的には、フタロシアニン構造の中央部分に存在する、置換基を有してもよい、相対する2つの窒素原子に水素原子が結合している構造となる。金属としては、例えば鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、錫等が挙げられる。金属酸化物としては、例えばチタニル、バナジル等が挙げられる。金属ハロゲン化物としては、例えば塩化アルミニウム、塩化インジウム、塩化ゲルマニウム、塩化錫、塩化ケイ素等が挙げられる。Mとしては、金属、金属酸化物又は金属ハロゲン化物であることが好ましく、具体的には、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉄、バナジル、ジクロロ錫等が挙げられる。より好ましくは、亜鉛、銅、コバルト、バナジル、ジクロロ錫である。
【0110】
上記一般式(3)で表されるフタロシアニン系色素の好ましい形態としては、8個のβのうち4〜8個が、同一もしくは異なって、SR28又はOR29である。より好ましくは、8個のβが全て、同一もしくは異なって、SR28又はOR29である。このようなフタロシアニン系化合物としては、例えば、ZnPc(PhS)8(PhNH)35、ZnPc(PhS)8(PhNH)44、ZnPc(PhS)8(PhNH)53、ZnPc(PhS)8(PhCH2NH)44、ZnPc(PhS)8(PhCH2NH)53、ZnPc(PhS)8(PhCH2NH)62、CuPc(PhS)8(PhNH)7F、CuPc(PhS)8(PhNH)62、CuPc(PhS)8(PhNH)53、VOPc(PhO)8(PhCH2NH)53、VOPc(PhO)8(PhCH2NH)62、VOPc(PhO)8(PhCH2NH)8、VOPc(PhS)8(PhCH2NH)8、VOPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4{Ph(CH3)CHNH}3F、VOPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4(PhCH2NH)4、CuPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4(PhCH2NH)4、CuPc(PhS)8{2,6−(CH32PhO}4(PhCH2NH)4、VOPc(4−CNPhO)8{2,6−Br2−4−(CH3)PhO}4{Ph(CH3)CHNH}4、ZnPc(2,4−Cl2PhO)8{2,6−Br2−4−(CH3)PhO}4{Ph(CH3)CHNH}3Fの略号で表されるフタロシアニン化合物等が挙げられる。
【0111】
またこれらの化合物の中でも8個のαのうち4個が、同一もしくは異なってNHR30又はハロゲン原子を表す化合物で、例えば、ZnPc(PhS)8(PhNH)35、ZnPc(PhS)8(PhNH)44、ZnPc(PhS)8(PhCH2NH)44、VOPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4{Ph(CH3)CHNH}3F、VOPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4(PhCH2NH)4、CuPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4(PhCH2NH)4、CuPc(PhS)8{2,6−(CH32PhO}4(PhCH2NH)4、VOPc(4−CNPhO)8{2,6−Br2−4−(CH3)PhO}4{Ph(CH3)CHNH}4、ZnPc(2,4−Cl2PhO)8{2,6−Br2−4−(CH3)PhO}4{Ph(CH3)CHNH}3Fの略称で表されるフタロシアニン化合物等が好ましい。
【0112】
なお、上記化合物の略号において、Pcはフタロシアニン核を表し、Pcの後には、β位に置換する8個の置換基を表し、その後にα位に置換する8個の置換基を表す。また、上記Phはフェニル基を表す。更に具体的には、上記略号は、中心金属:Pc:β位の8個の置換基:α位の8個の置換基を表す。例えば、VOPc(2,5−Cl2PhO)8{2,6−(CH32PhO}4{Ph(CH3)CHNH}3Fでは、中心金属がVO:フタロシアニン核:β位に2,5−Cl2PhOが8個置換:α位に2,6−(CH32PhOが4個とPh(CH3)CHNHが3個とFが1個置換したフタロシアニン系化合物を表す。
【0113】
上記一般式(3)で表されるフタロシアニン系色素の製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適当に利用することができる。例えば、フタロニトリル化合物を、金属塩、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属から選ばれる一種と環化反応させた後、アミノ化合物と反応させることによって製造される。
【0114】
上記一般式(3)で表されるフタロシアニン系色素の市販品としては、例えば、「イーエックスカラーIR10A」、「イーエックスカラーIR12」、「イーエックスカラーIR14」、「イーエックスカラーHA−1」、「イーエックスカラーHA−14」(いずれも日本触媒製)等があけられ、フタロシアニン系化合物の溶媒溶解性、共重合体(A)との相溶性の点より、近赤外線吸収フィルターとして使用する場合の可視光線透過率、近赤外線吸収効率の点より、「イーエックスカラーIR10A」、「イーエックスカラーIR12」、「イーエックスカラーIR14」が好ましい。
【0115】
これら一般式(3)で表されるフタロシアニン系色素は、800〜900nmの近赤外線領域で吸収極大を持ち、且つ可視光領域での吸収が小さいという特徴を持つ。そこでジイモニウム系色素と組み合わせることにより、両者の相乗効果で800〜1000nmの近赤外線領域を効率良く吸収遮蔽するので、プラズマディスプレイが発する不要な近赤外線を吸収することができる。
また、フタロシアニン系色素は、一般的に耐熱性に優れるため、単独で使用した場合、他の色素と混合した場合でも、耐熱性の低下は問題ない。
【0116】
シアニン系色素は、例えば、下記一般式(4)であることが好ましい。
【0117】
【化16】

【0118】
(一般式(4)中、R31〜R35は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、その具体例は、先述のものと同様なものが挙げられる。nは、0以上の整数を表し、通常は、1〜3である。Z1、Z2は、それぞれ独立に、S原子、O原子、NR36、CR3738である。R36〜R38は、それぞれ独立に、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいフェニル基を表す。その具体例は、先述のものと同様なものが挙げられる。L1、L2は、それぞれ独立に、5〜7員環を形成するものであって、好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環などの芳香環である。)
【0119】
シアニン系色素の具体例としては、例えば日本化薬社製CY17、住友精化社製SD50、林原生物化学研究所社製NK−5706、NK−5060、NK−9028などのシアニン系化合物を好適に用いることができる。上記は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0120】
これら一般式(4)で表されるシアニン系色素は、800〜950nmの近赤外線領域で吸収極大を持ち、且つ可視光領域での吸収が小さいという特徴を持つ。そこでジイモニウム系色素と組み合わせることにより、両者の相乗効果で800〜1000nmの近赤外線領域を効率良く吸収遮蔽するので、プラズマディスプレイが発する不要な近赤外線を吸収することができる。
【0121】
前述のように、本発明では近赤外線吸収色素を1種類のみ使用することもできるが、ジイモニウム系色素、シアニン系色素およびフタロシアニン系色素から選ばれた2種類以上を使用することが好ましい。2種類以上を併用する場合、各色素の使用割合は任意であるが、例えばジイモニウム系色素とシアニン系色素を併用する場合は、質量比として、前者1に対し、後者0.01〜0.5が好ましい。また、ジイモニウム系色素とフタロシアニン系色素を併用する場合は、質量比として、前者1に対し、後者0.02〜2.0が好ましい。また、シアニン系色素とフタロシアニン系色素を併用する場合は、質量比として、前者1に対し、後者1.0〜100が好ましい。また、3者をいずれも使用する場合は、質量比として、ジイモニウム系色素1に対し、シアニン系色素0.01〜0.5、フタロシアニン系色素0.02〜2.0が好ましい。
なお必要に応じて、近赤外線吸収層(C)には、近赤外線以外の波長領域の光を吸収する、例えばジチオール系金属錯体系の色素を加えてもよい。
【0122】
(シリカ微粒子)
本発明では、近赤外線吸収層(C)が、シリカ微粒子を含有する形態が好ましい。このようなシリカ微粒子は、平均粒子径(一次粒子径)が5〜50nmであるシリカ微粒子が挙げられる。好ましい平均粒子径は、10〜40nmである。
【0123】
本発明におけるシリカ微粒子の形状は球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、もしくは不定形状であり、好ましくは球状である。シリカ微粒子の比表面積は0.1〜3000m2/gであり、好ましくは10〜1500m2/gである。
これらのシリカ微粒子の使用形態は乾燥状態の粉末、もしくは水もしくは有機溶剤で分散した状態で用いることができ、コロイダルシリカとして知られている微粒子状のシリカ微粒子の分散液を直接用いることができる。特に粒子感を改善するためにはコロイダルシリカの利用が好ましい。コロイダルシリカの分散溶媒が水の場合、その水素イオン濃度はpH値として2〜10の範囲であり、好ましくはpH3〜7の酸性コロイダルシリカが用いられる。また、コロイダルシリカの分散溶媒が有機溶剤の場合、有機溶剤としてメタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、エチレングリコ−ル、ブタノ−ル、エチレングリコ−ルモノプロピルエ−テル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド等の溶剤もしくはこれらと相溶する有機溶剤もしくは水との混合物として用いても良い。好ましい分散溶剤はメタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、メチルエチルケトン、キシレンである。シリカ微粒子の市販品としては、例えば、コロイダルシリカとしては日産化学工業(株)製のメタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−STおよびST−UP、ST−20L、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等をあげることができる。また粉体状シリカとしては、日本アエロジル(株)製のアエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600及びアエロジルOX50、旭硝子(株)製のシルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製のE220A、E220 富士シリシア(株)製のサイリシア470、日本板硝子(株)製のSGフレ−ク等を挙げることができる。また、ヒュームドシリカとして、日本アエロジル(株)製のアエロジルR972等を挙げることができる。
【0124】
本発明の近赤外線吸収層(C)において、アクリル系樹脂バインダー100質量部に対し、前記近赤外線吸収色素の配合割合を5〜50質量部に設定する必要がある。またシリカ微粒子を使用する場合は、上記配合割合を0.1〜2.0質量部に設定する必要がある。近赤外線吸収色素の配合割合が5質量部未満では、近赤外線の吸収効果が発現されず、逆に50質量部を超えると可視光の透過率に悪影響を及ぼす。また、シリカ微粒子の配合割合が0.1質量部未満であると、フィルムの巻き取り性が悪化する。逆に2.0質量部を超えるとヘーズおよび粒子感が悪化する。さらに好ましい形態としては、アクリル系樹脂バインダー100質量部に対し、前赤外線吸収色素を10〜40質量部、かつシリカ微粒子を0.2〜1.5質量部使用する形態である。
【0125】
なお、近赤外線吸収層(C)の乾燥後の厚さは、例えば0.5μm〜5.0μm、好ましくは1.0μm〜3.0μmである。
【0126】
また本発明の製造方法は、透明基材フィルム(A)の一方の面に上記低屈折率層形成用組成物を第1のコーターで塗布し、加熱乾燥して低屈折率層(B)を形成した後、シートを巻き取ることなく、透明基材フィルム(A)の他方の面に上記近赤外線吸収層形成用組成物を第2のコーターで塗布し、加熱乾燥して前記近赤外線吸収層(C)を形成する工程を有する。
一例について説明すると、まず、長尺ロール状の透明基材フィルム(A)を準備する。製造時、この長尺ロール状の透明基材フィルム(A)が連続的に巻きだされ、第1のコーターに供される。第1のコーターによって、低屈折率層形成用組成物からなる塗料が透明基材フィルム(A)の一方の面に連続的に塗布される。続いて該塗料が、公知の乾燥炉によって乾燥される。乾燥温度は、例えば140℃付近、具体的には120〜150℃程度である。透明基材フィルム(A)の一方の面に低屈折率層(B)が形成された後、シートは巻き取られることなく、第2のコーターに供される。第2のコーターによって、近赤外線吸収層形成用組成物からなる塗料が透明基材フィルム(A)の他方の面、すなわち低屈折率層(B)が形成された面とは反対の面に連続的に塗布される。続いて該塗料が、公知の乾燥炉によって乾燥される。乾燥温度は、例えば80℃付近、具体的には60〜110℃程度である。
このようにして、積層シートは同一製造ライン中で、シートを巻き取ることなく製造される。したがって、低屈折率層形成用組成物の成分が透明基材フィルム(A)の他方の面に転写してしまうことがなく、近赤外線吸収層(C)のコートむらが生じない。また、低屈折率層(B)の形成のための加熱乾燥を、近赤外線吸収層(C)の形成以前に実施しているので、近赤外線吸収色素が変色することがない。
なお、本発明で用いる第1のコーターおよび第2のコーターは、とくに制限されず、公知の各種種類のコーターを用いることができる。例えばグラビアコーター、ダイコーター、リバースロールコーター、ナイフコーター、バーコーター、リップコーター等が挙げられる。
【0127】
また本発明では、粘着剤層(D)をさらに積層する工程を設けてもよい。粘着剤層(D)は、近赤外線吸収層(C)の、透明基材フィルム(A)側の面とは反対面に通常設けられる。また粘着剤層(D)は、近赤外線吸収層(C)を形成した後、シートを巻き取らずに設けてもよいし、シートを巻き取った後、再び巻きだして設けてもよい。粘着剤層(D)を有する積層シートは、プラズマディスプレイパネルに好適に使用される。例えば、プラズマディスプレイパネルの前面ガラス板から視認側にかけて、前面ガラス板、粘着剤層(D)、近赤外線吸収層(C)、透明基材フィルム(A)、低屈折率層(B)の順番で適用することができる。
粘着剤層(D)は、光学用途のものであって、例えばアクリル系粘着剤 、ウレタン系粘着剤 、シリコーン系粘着剤等、公知のものの中から適宜選択することができる。この粘着剤層(D)の厚さは、通常5〜40μmの範囲である。
また本発明では、低屈折率層(B)の替わりに、汚染防止機能を有する汚染防止層を用いてもよい。
【実施例】
【0128】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0129】
実施例1
厚さ100μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製A−1540、両面に易接着剤層が形成されている。二軸PET(1)と呼称する)上に、下記組成のハードコート層形成用組成物Bを乾燥膜厚2.5μmとなるように塗布し、乾燥した。続いて、高圧水銀灯により紫外線を照射して塗料を硬化させ、ハードコート層を形成し(屈折率1.57)、長尺ロール状に巻き取った。
次に、上記長尺ロール状物を連続的に巻きだし、ハードコート層上に下記組成の低屈折率層形成用組成物Aを乾燥膜厚70nmとなるように塗布し、140℃の乾燥炉を通過させ、低屈折率層を形成した(低屈折率層の屈折率1.39)。なお、低屈折率層形成用組成物Aを塗布するための第1のコーターとして、グラビアコーターを用いた。続いて、シートを巻き取ることなく、二軸PET(1)の他方の面、すなわち低屈折率層が形成された面とは反対の面に下記組成の近赤外線吸収層形成用組成物Cを乾燥膜厚1.5μmとなるように連続的に塗布し、80℃の乾燥炉を通過させ、近赤外線吸収層を形成した。なお、近赤外線吸収層形成用組成物Cを塗布するための第2のコーターとして、グラビアコーターを用いた。近赤外線吸収層の形成後は、シートを再び長尺ロール状に巻き取った。
【0130】
(ハードコート層形成用組成物B)
・電離放射線硬化型樹脂 100質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)
(日本化薬社製6官能アクリル系紫外線硬化型樹脂、固形分100%、屈折率1.48)
・五酸化アンチモンゾル 333質量部
(固形分100質量部)
(触媒化成工業社製、ELCOM RK−1022SBV、固形分30%、溶剤は変性アルコール、屈折率1.70)
・末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体 20質量部
(固形分9質量部)
(東亜合成社製マクロモノマーAA−6、末端メタクリレートポリメチルメタクリレート、分子量6000、固形分45%、トルエン希釈)
・光重合開始剤 7質量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(IR)184)
・光重合開始剤 1質量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(IR)907)
・溶剤 120質量部
(メチルエチルケトン(MEK)/プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM))
【0131】
(低屈折率層形成用組成物A)
・下記マトリックス成分A 3333質量部
(固形分100質量部)
・中空シリカ分散液ゾル 250質量部
(固形分50質量部)
(触媒化成工業社製、ELCOM RK−1018SIV、固形分20%、溶剤はメチルイソブチルケトン(MIBK)、中空シリカの平均粒子径は、40nm)
・グラフト共重合体 67質量部
(固形分20質量部)
(東亞合成(株)製、サイマックUS−270、固形分30%、幹部分がアクリル系ポリマーであり、枝部分がシリコーンで構成された櫛型グラフトポリマー)
・溶剤 4850質量部
(メチルイソブチルケトン(MIBK))
【0132】
(マトリックス成分Aの調製)
攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた1リットルフラスコに、下記のジシラン化合物(1)29.9g(0.05モル)、及びt−ブタノール125gを仕込み、25℃で攪拌しているところに、0.1N酢酸水10gを10分かけて滴下。更に25℃で20時間攪拌し、加水分解を終了し、ここに縮合触媒としてアルミニウムアセチルアセトナート2g、レベリング剤としてポリエーテル変性シリコーン1gを加え、更に30分間攪拌し、得た溶液に、エタノール670g、プロピレングリコールモノメチルエーテル40g、ジアセトンアルコール40gを加えて希釈し調整した塗料。(固形分3%)
(CH3O)3Si−C24−C612−C24−Si(OCH33 (1)
【0133】
(近赤外線吸収層形成用組成物C)
・バインダー樹脂(1) 333質量部
(固形分100質量部)
ポリメチルメタクリレート系樹脂
(綜研化学社製、GS1000、固形分30%、重量平均分子量(Mw)111,000で、Mw/Mn=1.68の分子量分布を有する)
分子量分布は、展開溶媒としてクロロホルムを用い、GPC(ポリメチルメタクリレート換算値)により測定した。GPCの測定条件は、カラムの種類:ShodexK806L×2+K800P、試料濃度:0.2%(w/v)、注入量:100μL、流速:1.0ml/min、測定温度:35℃、検出器:示差屈折計で測定した。
・ジイモニウム系色素(1) 200質量部
(固形分20質量部)
(日本カーリット社製、CIR−RL、固形分10%、溶剤はメチルエチルケトン(MEK))
・シアニン系色素(1) 100質量部
(固形分1.0質量部)
(林原生物化学研究所社製、NK−5060、最大吸収波長は864nm、固形分1%、MEK希釈)
・コロイダルシリカ分散液(1) 2質量部
(固形分0.6質量部)
(日産化学社製、MEK−ST、メチルエチルケトン分散液コロイダルシリカ、平均粒子径15nm、シリカ濃度30%)
・溶剤 MEK 317質量部
【0134】
得られた積層シートについて、下記の評価を行った。
(1)積層シートのコートむら
積層シートのコートむらについて、目視で観察し、下記の基準により評価した。
・コートむらの評価基準
○:コートむらがない。
△:コートむらがわずかにある。
×:コートむらが大きい。
【0135】
(2)積層シートの変色
得られた近赤外線カットフィルムを分光光度計〔(株)島津製作所製、Solid Spec3700〕にてJIS Z8701−1999に準じて、(Y、x、y)を測定した後、恒温層中に80℃で500時間静置した後の(Y、x、y)を上記と同様に測定した。試験前後の(Y、x、y)の変化量を求め、下記の基準により評価した。
・変色の評価基準
○:(Y、x、y)の各数値の変化量が、全て1%未満である。
△:(Y、x、y)の各数値の変化量が、全て2%未満であるが、少なくとも1個が、1%以上である。
×:(Y、x、y)の各数値の変化量の少なくとも1個が、2%以上である。
【0136】
(3)耐アルカリ性
2%NaOH水溶液を低屈折率層表面に滴下し、20分放置後に拭取り、汚染状況を目視にて、下記の基準により判定する。
○: 汚染が見られない。
△: 汚染される。
×: 著しく汚染される。
【0137】
(4)耐汚染性
(株)サクラクレパス、サクラマイネーム(油性)を用いて表面に文字を書き乾燥後ティッシュペーパー〔(株)クレシア、「キムワイプ」〕にて拭取り、その拭取り性を観察することにより評価した。
○:10往復以内できれいに拭取れる。
△:11〜20往復以内できれいに拭取れる。
×:20往復で拭取れない。
【0138】
(5)可視光(400〜700nm)平均透過率
JIS A5759に準拠し測定した。
【0139】
(6)近赤外線透過率(850nm)
分光光度計〔(株)島津製作所製、Solid Spec3700〕を用いて波長850nmの光線透過率を測定した。
(7)近赤外線透過率(950nm)
分光光度計〔(株)島津製作所製、Solid Spec3700〕を用いて波長950nmの光線透過率を測定した。
【0140】
結果を表1に示す。
【0141】
比較例1
実施例1において、低屈折率層を形成した後、シートを一旦巻き取り、再度シートを巻きだして近赤外線吸収層を形成したこと以外は、実施例1を繰り返した。
【0142】
比較例2
比較例1において、低屈折率層形成用組成物Aからグラフト共重合体を省いて低屈折率層形成用組成物Dとし、該組成物Dを低屈折率層形成用組成物として用いたこと以外は、比較例1を繰り返した。
【0143】
比較例3
二軸PET(1)上に、実施例1と同様にハードコート層を形成し、長尺ロール状に巻き取った後、この長尺ロール状物を連続的に巻きだし、ハードコート層の形成面とは反対側に実施例1で使用した近赤外線吸収層形成用組成物Cを乾燥膜厚1.5μmとなるように連続的に塗布し、80℃の乾燥炉を通過させ、近赤外線吸収層を形成し、長尺ロール状に巻き取った。続いて、再度長尺ロール状物を連続的に巻きだし、ハードコート層上に実施例1で使用した低屈折率層形成用組成物Aを乾燥膜厚70nmとなるように塗布し、140℃の乾燥炉を通過させ、低屈折率層を形成した。なお、比較例3で使用した第1のコーターおよび第2のコーターは実施例1と同じである。
【0144】
比較例4
比較例3において、近赤外線吸収層形成用組成物Cからジイモニウム系色素(1)およびシアニン系色素(1)を省き、その替わりにATO微粒子(メチルエチルケトンに分散した濃度40%のATO分散液(御国色素製))を固形分200質量部、および6ホウ化化合物微粒子(トルエンに分散した濃度1.85%の6ホウ化微粒子分散液、平均粒径0.02μm(住友金属鉱山社製、「KHF−7A」))を固形分2質量部として用い、近赤外線吸収層形成用組成物Eとし、該組成物Eを近赤外線吸収層形成用組成物として用いたこと以外は、比較例3を繰り返した。
【0145】
比較例1〜4の結果を表2に示す。
【0146】
実施例2
実施例1で用いた二軸PET(1)上に、下記組成のハードコート層形成用組成物Gを乾燥膜厚2.5μmとなるように塗布し、乾燥した。続いて、高圧水銀灯により紫外線を照射して塗料を硬化させ、ハードコート層を形成した(屈折率1.49)。
次に、ハードコート層上に、下記組成の高屈折率層形成用組成物Fを乾燥膜厚80nmとなるように塗布し(高屈折率層の屈折率1.70)、乾燥した後、高圧水銀灯により紫外線を照射して塗料を硬化させ、長尺ロール状に巻き取った。
次に、上記長尺ロール状物を連続的に巻きだし、高屈折率層上に実施例1と同様の手順で低屈折率層および近赤外線吸収層を形成し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0147】
(ハードコート層形成用組成物G)
・電離放射線硬化型樹脂 100質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬社製6官能アクリル系紫外線硬化型樹脂、固形分100%)
・末端に共重合可能な不飽和二重結合を有する重合体 20質量部
(固形分9質量部)
(東亜合成社製マクロモノマーAA−6、
末端メタクリレートポリメチルメタクリレート、分子量6000、
固形分45%、トルエン希釈)
・光重合開始剤 7質量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(IR)184)
・光重合開始剤 1質量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(IR)907)
・溶剤 120質量部
(メチルエチルケトン(MEK)/プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM))
【0148】
(高屈折率層形成用組成物F)
・マトリックス成分 100質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬社製6官能アクリル系紫外線硬化型樹脂、固形分100%)
・アンチモン酸亜鉛 400質量部
(固形分240質量部)
(日産化学製、セルナックスCX−Z603M−F2、固形分60%、
屈折率1.7)
・光重合開始剤 20質量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア(IR)184)
・分散剤 4質量部
(固形分0.8質量部)
(日本ルーブリゾール社製、ソルスパース20000、
アルキルアミンEO・PO付加体、固形分20%)
【0149】
比較例5
実施例2において、低屈折率層を形成した後、シートを一旦巻き取り、再度シートを巻きだして近赤外線吸収層を形成したこと以外は、実施例2を繰り返した。
【0150】
比較例6
比較例5において、低屈折率層形成用組成物Aからグラフト共重合体を省いて低屈折率層形成用組成物Dとし、該組成物Dを低屈折率層形成用組成物として用いたこと以外は、比較例5を繰り返した。
【0151】
比較例7
二軸PET(1)上に、実施例2と同様にハードコート層および高屈折率層を形成し、長尺ロール状に巻き取った後、この長尺ロール状物を連続的に巻きだし、ハードコート層の形成面とは反対側に実施例1で使用した近赤外線吸収層形成用組成物Cを乾燥膜厚1.5μmとなるように連続的に塗布し、80℃の乾燥炉を通過させ、近赤外線吸収層を形成し、長尺ロール状に巻き取った。続いて、再度長尺ロール状物を連続的に巻きだし、高屈折率層上に実施例2で使用した低屈折率層形成用組成物Aを乾燥膜厚70nmとなるように塗布し、140℃の乾燥炉を通過させ、低屈折率層を形成した。なお、比較例7で使用した第1のコーターおよび第2のコーターは実施例2と同じである。
【0152】
比較例8
比較例7において、近赤外線吸収層形成用組成物Cからジイモニウム系色素(1)およびシアニン系色素(1)を省き、その替わりにATO微粒子(メチルエチルケトンに分散した濃度40%のATO分散液(御国色素製))を固形分200質量部、および6ホウ化化合物微粒子(トルエンに分散した濃度1.85%の6ホウ化微粒子分散液、平均粒径0.02μm(住友金属鉱山社製、「KHF−7A」))を固形分2質量部として用い、近赤外線吸収層形成用組成物Eとし、該組成物Eを近赤外線吸収層形成用組成物として用いたこと以外は、比較例7を繰り返した。
【0153】
比較例5〜8の結果を表4に示す。
【0154】
【表1】

【0155】
【表2】

【0156】
【表3】

【0157】
【表4】

【0158】
表1〜4の結果から、以下の事項が導き出される。
・実施例1は、透明基材フィルム(A)の一方の面にハードコート層を設け、その上に特定組成の低屈折率層形成用組成物を第1のコーターで塗布し、加熱乾燥して低屈折率層(B)を形成した後、シートを巻き取ることなく、透明基材フィルム(A)の他方の面に特定組成の近赤外線吸収層形成用組成物を第2のコーターで塗布し、加熱乾燥して近赤外線吸収層(C)を形成している。これにより、低屈折率層(B)を形成した後、シートを巻き取ることなく近赤外線吸収層(C)を形成しているので、低屈折率層形成用組成物の成分が透明基材フィルム(A)の他方の面に転写してしまうことがなく、近赤外線吸収層(C)のコートむらが生じない。また、低屈折率層(B)の形成に必要である高温乾燥が、近赤外線吸収層(C)に含まれる近赤外線吸収色素に悪影響を及ぼさず、色素が変色しない。さらに特定組成の低屈折率層形成用組成物および近赤外線吸収層形成用組成物を用いているので、耐アルカリ性、耐汚染性、可視光平均透過率、近赤外線吸収性にも優れる。
・これに対し、比較例1では、低屈折率層(B)の形成後にシートをロール状に巻き取っているため、低屈折率層形成用組成物の成分が透明基材フィルム(A)の他方の面に転写してしまい、近赤外線吸収層(C)のコートむらが生じた。
・比較例2では、低屈折率層形成用組成物から特定のグラフト共重合体を省いたために、積層シートのコートむらは生じなかったが、耐アルカリ性、耐汚染性が×評価になった。
・比較例3では、近赤外線吸収層(C)の形成後に低屈折率層(B)を形成し、高温乾燥しているため、近赤外線吸収層(C)に含まれる色素が熱により変色し、積層シートの変色が×評価になった。
・比較例4では、比較例3の製造方法において、近赤外線吸収層(C)の色素を無機系の近赤外線吸収剤であるATO微粒子および6ホウ化化合物微粒子に変更した例であり、積層シートの変色は問題ないが、可視光平均透過率が悪化した。
【0159】
・実施例2は、透明基材フィルム(A)の一方の面にハードコート層および高屈折率層を設け、該高屈折率層上に特定組成の低屈折率層形成用組成物を第1のコーターで塗布し、加熱乾燥して低屈折率層(B)を形成した後、シートを巻き取ることなく、透明基材フィルム(A)の他方の面に特定組成の近赤外線吸収層形成用組成物を第2のコーターで塗布し、加熱乾燥して近赤外線吸収層(C)を形成している。これにより、低屈折率層(B)を形成した後、シートを巻き取ることなく近赤外線吸収層(C)を形成しているので、低屈折率層形成用組成物の成分が透明基材フィルム(A)の他方の面に転写してしまうことがなく、近赤外線吸収層(C)のコートむらが生じない。また、低屈折率層(B)の形成に必要である高温乾燥が、近赤外線吸収層(C)に含まれる近赤外線吸収色素に悪影響を及ぼさず、色素が変色しない。さらに特定組成の低屈折率層形成用組成物および近赤外線吸収層形成用組成物を用いているので、耐アルカリ性、耐汚染性、可視光平均透過率、近赤外線吸収性にも優れる。
・これに対し、比較例5では、低屈折率層(B)の形成後にシートをロール状に巻き取っているため、低屈折率層形成用組成物の成分が透明基材フィルム(A)の他方の面に転写してしまい、近赤外線吸収層(C)のコートむらが生じた。
・比較例6では、低屈折率層形成用組成物から特定のグラフト共重合体を省いたために、積層シートのコートむらは生じなかったが、耐アルカリ性、耐汚染性が×評価になった。
・比較例7では、近赤外線吸収層(C)の形成後に低屈折率層(B)を形成し、高温乾燥しているため、近赤外線吸収層(C)に含まれる色素が熱により変色し、積層シートの変色が×評価になった。
・比較例8では、比較例7の製造方法において、近赤外線吸収層(C)の色素を無機系の近赤外線吸収剤であるATO微粒子および6ホウ化化合物微粒子に変更した例であり、積層シートの変色は問題ないが、可視光平均透過率が悪化した。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の製造方法によれば、コートむら、変色がなく、耐アルカリ性、耐汚染性、可視光平均透過率、近赤外線吸収性に優れた積層シートを製造することができ、当該積層シートは、とくにプラズマディスプレイパネルに好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルム(A)の一方の面に低屈折率層(B)を形成する工程と、前記透明基材フィルム(A)の他方の面に近赤外線吸収層(C)を形成する工程とを有する積層シートの製造方法であって、
前記透明基材フィルム(A)の一方の面に下記低屈折率層形成用組成物を第1のコーターで塗布し、加熱乾燥して前記低屈折率層(B)を形成した後、シートを巻き取ることなく、前記透明基材フィルム(A)の他方の面に下記近赤外線吸収層形成用組成物を第2のコーターで塗布し、加熱乾燥して前記近赤外線吸収層(C)を形成することを特徴とする積層シートの製造方法。
低屈折率層形成用組成物:ラジカル重合性単量体を用いて形成された繰り返し単位を幹とし、シリコーンを枝とするグラフト共重合体を含有する。
近赤外線吸収層形成用組成物:アクリル系樹脂バインダーおよび近赤外線吸収色素を含有するとともに、前記アクリル系樹脂バインダー100質量部に対し、前記近赤外線吸収色素を5〜50質量部含有する。
【請求項2】
前記低屈折率層形成用組成物が、フッ素原子を1個以上含有する2価の有機基を有するジシラン化合物又はその(部分)加水分解物を主成分とするマトリックス成分;中空シリカ粒子;および前記グラフト共重合体を含有するとともに、前記マトリックス成分100質量部に対し、前記中空シリカ粒子20〜120質量部および前記グラフト共重合体5〜40質量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の積層シートの製造方法。
【請求項3】
前記近赤外線吸収色素が2種類以上使用されることを特徴とする請求項1または2に記載の積層シートの製造方法。
【請求項4】
前記近赤外線吸収色素が、ジイモニウム系色素、シアニン系色素およびフタロシアニン系色素から選ばれた2種類以上であることを特徴とする請求項3に記載の積層シートの製造方法。
【請求項5】
前記アクリル系樹脂が、ポリメチルメタクリレート系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の積層シートの製造方法。
【請求項6】
前記透明基材フィルム(A)が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の積層シートの製造方法。
【請求項7】
前記近赤外線吸収層(C)の、前記透明基材フィルム(A)側の面とは反対面に、粘着剤層(D)を形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の積層シートの製造方法。

【公開番号】特開2008−284438(P2008−284438A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130396(P2007−130396)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】