説明

積層シート及び成形体

【課題】少なくとも表面が金属で構成された部材を接触状態で搬送するための成形体を形成するのに有用な積層シート及び成形体を提供する。
【解決手段】少なくとも表面が金属で被覆された部材と接触して搬送するための積層シートは、基材層(B)の少なくとも一方の面に、前記部材と接触可能であり、主成分としてポリエチレン系樹脂(特に、高密度ポリエチレン)を含む表層(A)が形成されている積層シートである。表層(A)は、ポリエチレン系樹脂と水添スチレン系熱可塑性エラストマー(a2)と高分子型帯電防止剤(a3)とを含んでいてもよい。基材層(B)は、スチレン系樹脂(b1)と水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)と非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)とを含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも表面が金属で構成された部材(金属メッキ部材など)と接触して前記部材を搬送するための成形体(包装容器)を形成するのに有用な積層シート及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器部品のための包装形態としては、トレー(インジェクショントレー、真空成形トレーなど)、マガジン、キャリアテープ(エンボスキャリアテープなど)などの包装・収容容器などが使用されている。これらの成形品では、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂やポリスチレンなどのスチレン系樹脂などで構成された樹脂シートを熱成形や打ち抜き成形によって所定形状に成形加工することにより得られる。
【0003】
例えば、特開2004−90609号公報(特許文献1)には、基材層の少なくとも一方の面に、オレフィン系樹脂及び高分子型帯電防止剤で構成された表層が形成された帯電防止性樹脂積層シートが開示されている。この文献には、オレフィン系樹脂として、ポリプロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂を用いるのが好ましく、耐摩耗性の点から、ポリエチレン系樹脂(例えば、低密度ポリエチレンなど)と組み合わせてもよいことが記載されている。また、基材層や表層において、さらに相溶化剤を含んでいてもよく、基材層に含有させる相溶化剤としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体が記載され、表層に含有させる相溶化剤としては、エポキシ基などの官能基を有する変性オレフィン系樹脂が記載されている。さらに、この積層シートは帯電防止性に優れるため、搬送用成形品(例えば、電子部品搬送用トレーなど)に有用であることが記載されている。
【0004】
しかし、この積層シートの表層は、主成分としてポリプロピレンを含むため、少なくとも表面が金属で構成された部材(特に、金属メッキ部材)を収容して搬送する場合、使用の形態によっては、積層シートと前記メッキ部材とが自重又は所定の荷重が作用した状態で繰り返し擦れると、前記メッキ部材に擦過痕が発生する。また、この積層シートは、層間接着強度も充分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−90609号公報(特許請求の範囲、段落[0042][0054][0069])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、少なくとも表面が金属で構成された部材(金属メッキ部材)と接触した形態で、前記部材を搬送するのに有用であり、振動や衝撃が作用しても、前記部材に対して擦過痕が生成することを防止できる積層シート及び成形体を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、擦過防止性と耐摩耗性とを両立できる積層シート及び成形体を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、接着層を介在させることなく層間接着強度が大きい積層シート及び成形体を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、剛性、耐衝撃性などの機械的特性、押出加工性などの成形性に優れた積層シート及び成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、基材層の少なくとも一方の面に、少なくとも表面が金属で構成された部材(金属メッキ部材)と接触可能であり、主成分としてポリエチレン系樹脂を含む表層が形成されている積層シートは、前記部材を接触状態で搬送するのに有用であること、より具体的には、搬送過程において、振動や衝撃が作用することにより、前記積層シート(表層)と前記部材とが、自重又は所定の荷重が作用した状態で繰り返し擦れても、前記部材に対して擦過痕が生成することを防止できることを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の積層シートは、少なくとも表面が金属で構成された部材(例えば、金属メッキ部材)を接触状態で搬送するための積層シートであって、プラスチックを含む基材層(B)の少なくとも一方の面に、前記部材と接触可能であり、主成分としてポリエチレン系樹脂を含む表層(A)が形成されている積層シートである。
【0012】
前記部材は、亜鉛メッキ又は亜鉛合金メッキ部材であってもよい。前記プラスチックは、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリアミド系樹脂から選択された少なくとも一種の熱可塑性樹脂であってもよい。前記ポリエチレン系樹脂は、高密度ポリエチレンで構成されていてもよい。
【0013】
表層(A)は、さらに高分子型帯電防止剤を含んでいてもよい。基材層(B)はベース成分としてスチレン系樹脂(b1)を含み、かつ表層(A)及び基材層(B)のうち少なくとも一方の層が、さらに水添スチレン系熱可塑性エラストマー(例えば、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及び水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体から選択された少なくとも一種の水添スチレン−ジエン系ブロック共重合体)を含んでいてもよい。また、基材層(B)は、さらに非水添スチレン系熱可塑性エラストマーを含んでいてもよい。
【0014】
基材層(B)が、水添スチレン系熱可塑性エラストマーと非水添スチレン系熱可塑性エラストマーを含む場合、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)の割合は、非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)1重量部に対して、0.7〜1.5重量部程度であってもよい。
【0015】
前記積層シートには、表層(A)が、高密度ポリエチレンで構成されたポリエチレン系樹脂(a1)と水添スチレン系熱可塑性エラストマー(a2)と高分子型帯電防止剤(a3)とで構成され、ポリエチレン系樹脂(a1)100重量部に対して、高分子型帯電防止剤(a3)の割合が10〜30重量部程度であり、基材層(B)が、スチレン系樹脂(b1)と水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)と非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)とで構成され、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)の割合が、非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)1重量部に対して、0.8〜1.2重量部程度である積層シートも含まれる。
【0016】
本発明には、前記積層シートで形成された成形体(少なくとも表面が金属で構成された部材と接触可能である成形体、例えば、前記部材と接触可能な凸部を有する成形体)も含まれる。
【0017】
なお、本明細書中、「擦過痕」とは、少なくとも表面が金属で構成された部材とシート(又はこのシートで形成された成形体)とが、自重又は所定の荷重が作用した状態で接触して擦れることにより発生する金属の受傷(又は擦傷)部を意味する。また、「擦過痕」とは、金属膜(金属メッキ被膜)の剥離部のみならず、変色部を意味する場合がある。
【発明の効果】
【0018】
本発明の積層シートは、表層に主成分としてポリエチレン系樹脂(例えば、高密度ポリエチレン)を含むため、少なくとも表面が金属で構成された部材(例えば、金属メッキ部材、特に、亜鉛メッキ又は亜鉛合金メッキ部材)と接触して搬送するために適する。より具体的には、搬送過程において衝撃や振動が作用して、積層シートと前記部材とが自重又は所定の荷重が作用した状態で繰り返し擦れても、前記部材に対して擦過痕が生成することを防止でき、積層シートの摩耗も抑制できる。特に、基材層がベース成分としてスチレン系樹脂を含む積層シートは剛性に優れる。また、表層及び基材層のうち少なくとも一方の層(特に、両層)に、さらに水添スチレン系熱可塑性エラストマーを配合することにより、表層と基材層との層間接着強度を大きくすることができる。この積層シートは、耐衝撃性などの機械的特性や押出加工性などの成形性にも優れる。
【0019】
本発明の積層シートで構成された成形体(搬送用成形体又は搬送用容器又は包装容器)は、被搬送部材に対して擦過痕が生成するのを有効に抑制できる。そのため、被搬送部材を高い外観品質の状態で、より安全に搬送できる。また、被搬送部材と繰り返し擦れても成形体は摩耗しないため、商品寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の成形体の一例である搬送用トレーの部分概略斜視図である。
【図2】図2は、図1のA−A’断面図である。
【図3】図3は、図1のトレーに被搬送部材を収容して積層した状態を示す概略切欠斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の積層シートは、少なくとも表面が金属で構成された部材(被搬送部材)を接触状態で搬送するための成形体を形成するのに有用なシートである。
【0022】
[被搬送部材]
被搬送部材は、少なくとも表面が金属で構成された部材であり、単層構造であってもよいが、ベース基材の表面が金属薄膜で被覆された多層構造の部材に対して有効である。
【0023】
(金属薄膜)
金属薄膜はベース基材の劣化防止(例えば、防錆)や装飾などを目的として、メッキや金属箔として形成される。金属薄膜に含有させる金属としては、特に限定されず、例えば、遷移金属(例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期表第4A族金属;バナジウム、ニオブなどの周期表第5A族金属;モリブデン、タングステンなどの周期表第6A族金属;マンガンなどの周期表第7A族金属;鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金などの周期表第8族金属;銅、銀、金などの周期表第1B族金属など)、周期表第2B族金属(例えば、亜鉛、カドミウムなど)、周期表第3B族金属(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、周期表第4B族金属(例えば、ゲルマニウム、スズ、鉛など)、周期表第5B族金属(例えば、アンチモン、ビスマスなど)などが例示できる。
【0024】
金属には、前記金属単体に加えて、金属合金(又は混合物)、金属化合物(例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物など)なども含まれる。
【0025】
金属のモース硬さ数は、例えば、1.8〜3.2、好ましくは2〜3、さらに好ましくは2.2〜2.8程度であってもよい。なお、モース硬さ数とは、固体の表面を引っ掻き、傷の有無で硬さを半定量的に表す数である。本発明の積層シートは、モース硬さ数が前記範囲にある金属の薄膜で被覆された被搬送部材と擦れても、前記部材に対して擦過痕の生成を防止し、積層シートの摩耗も抑制できる。
【0026】
これらの金属は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属のうち、亜鉛又は亜鉛合金が汎用される。
【0027】
亜鉛合金において、亜鉛と合金を形成する金属成分としては、例えば、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、アルミニウムなどが挙げられる。これらの金属成分は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの金属成分のうち、スズ、マグネシウム、ニッケル、アルミニウムなどが汎用される。
【0028】
金属成分の割合は、特に限定されず、例えば、0.01〜50重量%、好ましくは0.05〜30重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%程度であってもよい。
【0029】
金属薄膜の厚みは、例えば、1〜500μm、好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは10〜100μm程度であってもよい。本発明の積層シートは、このような厚みが小さく剥離し易い被膜を有する部材と接触して擦れても、前記部材に対して擦過痕が生成することを防止できる。
【0030】
なお、金属薄膜の形成方法は、特に限定されず、慣用のコーティング方法(溶融メッキや電気メッキなどのメッキ、真空蒸着などの蒸着、スパッタリングなど)であってもよい。
【0031】
(ベース基材)
ベース基材として利用可能な材料は、有機材料(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などのプラスチックなど)、無機材料のいずれであってもよいが、通常、金属薄膜との密着性の点から、無機材料である。無機材料としては、「金属薄膜に含有させる金属」で例示した金属、金属合金(又は混合物)、金属化合物などであってもよい。これらの材料は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0032】
代表的な材料としては、鉄又は鉄合金であり、例えば、特殊鋼(ニッケル、クロム、タングステン、モリブテンなどの元素を含む鉄合金など)、炭素鋼(極軟鋼、軟鋼、半軟鋼、半硬鋼、硬鋼、最硬鋼など)、鋳鉄(黒心可鍛鋳鉄などの鉄系鋳物、鍛造物も含む)などが挙げられる。なお、特殊鋼としては、用途に応じて、構造用特殊鋼、特殊用特殊鋼、高速度鋼などの工具用特殊鋼なども使用できる。
【0033】
ベース基材としては、前記材料を用いた成形体である限り、特に限定されない。代表的なベース基材としては、鉄鋼製品であり、例えば、板状形状(鋼板、板帯等)、線状形状(鋼線など)、筒状形状、立体形状(鋳物など)等の種々の形状を有する部材が使用できる。
【0034】
少なくとも表面が金属で構成された部材としては、金属メッキ部材が汎用される。金属メッキ部材のうち、特に、亜鉛メッキ又は亜鉛合金メッキ部材(例えば、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板などの亜鉛メッキ鉄鋼製品)などに有効である。
【0035】
[積層シート]
本発明の積層シートは、基材層(B)の少なくとも一方の面(特に、両面)に、少なくとも表面が金属で構成された部材(金属メッキ部材)と接触可能であり、主成分としてポリエチレン系樹脂(a1)を含む表層(A)が形成されている積層シートである。
【0036】
(A)表層
(a1)ポリエチレン系樹脂
表層(A)は、主成分として少なくとも50重量%以上(例えば、50〜100重量%、好ましくは60〜99.9重量%、さらに好ましくは70〜99重量%程度)の割合で、ポリエチレン系樹脂(a1)を含む。表層(A)にポリエチレン系樹脂(a1)を配合することにより、擦過防止性、耐摩耗性を向上できる。
【0037】
ポリエチレン系樹脂(a1)は、エチレン単独重合体の他、エチレン系共重合体であってもよい。共重合性単量体としては、エチレン以外のα−オレフィン類[例えば、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチルペンテン、4−メチルペンテン、4−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどのα−C3−16オレフィン(特にα−C3−6オレフィン)など]、酢酸ビニルなどの有機酸ビニルエステル、(メタ)アクリル酸などの(メタ)アクリル酸系単量体などが例示できる。これらの共重合性単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0038】
エチレン系共重合体において、エチレンと、共重合性単量体(例えば、エチレン以外のα−オレフィン)との割合(モル比)は、前者/後者=70/30〜99.9/0.1、好ましくは80/20〜99.5/0.5、さらに好ましくは90/10〜99/1程度であってもよい。
【0039】
ポリエチレン系樹脂(a1)は、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン(例えば、直鎖状低密度ポリエチレンなど)、分岐鎖状ポリエチレン、アイオノマー、塩素化ポリエチレンなどであってもよい。これらのポリエチレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリエチレン系樹脂のうち、エチレン単独重合体(ポリエチレン)が好ましく、特に、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが好ましい。なかでも、耐摩耗性の点から、高密度ポリエチレンが好ましい。すなわち、ポリエチレン系樹脂(a1)の密度は、JIS K7112に準拠して、例えば、910kg/cm以上(例えば、910〜990kg/cm程度)、好ましくは920kg/cm以上(例えば、930〜980kg/cm程度)、さらに好ましくは935kg/cm以上(例えば、940〜975kg/cm程度)、特に950kg/cm以上(例えば、950〜970kg/cm、特に955〜965kg/cm程度)であってもよい。
【0040】
ポリエチレン系樹脂(a1)のメルトフローレート(MFR)は、0.01〜10g/10分、好ましくは0.05〜5g/10分、さらに好ましくは0.1〜1g/10分(例えば、0.15〜0.5g/10分)程度であってもよい。なお、MFRは、JIS K7210に準じて、試験温度190℃、荷重2.16kgf(21.2N)の条件で測定できる。
【0041】
なお、表層(A)を構成する樹脂成分には、擦過防止性及び耐摩耗性の点から、ポリプロピレンを実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、表層(A)全体に対して、ポリプロピレンの含有量が、例えば、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下(例えば、0.01〜0.1重量%程度)であってもよいことを意味する。
【0042】
(a2)ゴム又はエラストマー
表層(A)は、弾性や基材層との密着性の点から、さらに、ゴム(ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)又はエラストマー[スチレン系エラストマー(水添スチレン系熱可塑性エラストマー、非水添スチレン系熱可塑性エラストマー)、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなど]を含んでもよい。これらのゴム又はエラストマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0043】
特に、後述の基材層(B)が、スチレン系樹脂を含む場合、表層(A)は、スチレン系エラストマー、特に水添スチレン系熱可塑性エラストマー(a2)を含んでもよい。水添スチレン系熱可塑性エラストマー(a2)は、表層(A)と基材層(B)との層間接着強度を向上させる機能を有する。
【0044】
水添スチレン系熱可塑性エラストマー(a2)は、通常、硬質相(硬質ブロック又はセグメント)が芳香族ビニル単位(例えば、スチレン系樹脂の項で例示された芳香族ビニルなど)で構成され、軟質相(軟質ブロック又はセグメント)が、少なくとも水添ジエン系単位[例えば、ポリブタジエン(又はブタジエン単位)、ポリイソプレン(又はイソプレン単位)などの共役ジエン系重合体(又は共役ジエン系単位)に水素添加された単位(又はエチレン、プロピレン、ブチレンなどのC2−4アルキレン単位)]を含んでいる。軟質相は、水添ジエン系単位と非水添ジエン系単位とで構成されていてもよい。
【0045】
水添スチレン系熱可塑性エラストマーを構成する硬質相と軟質相との割合(重量比)は、硬質相/軟質相=1/99〜99/1程度の範囲から選択でき、例えば、50/50〜95/5、好ましくは55/45〜90/10、さらに好ましくは60/40〜85/15程度であってもよい。
【0046】
代表的な水添スチレン系熱可塑性エラストマーは、通常、水添スチレン−ジエン系ブロック共重合体(又はスチレン−ジエン系ブロック共重合体の水添物)である。スチレン−ジエン系ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などが例示できる。ブロック共重合体において、末端ブロックは、スチレン系ブロック又はジエン系ブロックのいずれで構成してもよい。
【0047】
スチレン−ジエン系ブロック共重合体の構造としては、リニア(直線状)型(AB型、ABA型など)、星型(ラジアルテレブロック型など)、テーパー型などが例示できる。これらのうち、リニア型や星型でABA型のブロック共重合体が好ましく使用できる。スチレン−ジエン系ブロック共重合体としては、スチレンとジエン成分とのジブロック、トリブロック、テトラブロック共重合体などが例示できる。
【0048】
これらの水添スチレン系熱可塑性エラストマーは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの水添スチレン系熱可塑性エラストマーのうち、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)及び水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)から選択された少なくとも一種の水添スチレン−ジエン系ブロック共重合体が好ましい。なかでも、剛性及び層間接着強度の点から、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などの水添スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体が好ましい。これらの水添スチレン系熱可塑性エラストマーは、部分(選択)水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、部分(選択)水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などの部分(選択)水添熱可塑性エラストマー、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などの完全水添スチレン系熱可塑性エラストマーであってもよい。なかでも、剛性及び層間接着強度の点から、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)などの完全水添スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体が好ましい。
【0049】
水添スチレン系熱可塑性エラストマー(a2)の割合は、ポリエチレン系樹脂(a1)100重量部に対して、1〜25重量部程度の範囲から選択でき、例えば、1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部、さらに好ましくは3〜10重量部程度であってもよい。水添スチレン系熱可塑性エラストマー(a2)の割合がこのような範囲にあると、擦過防止性、耐摩耗性、剛性のバランスに優れる。
【0050】
(a3)添加剤
表層(A)は、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、安定剤(例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤など)、難燃剤、防曇剤、分散剤、離型剤、可塑剤(フタル酸エステル、脂肪酸系可塑剤、リン酸系可塑剤など)、帯電防止剤、抗菌剤、着色剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維などの繊維充填剤など)、流動性改良剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。特に、表層(A)は、高分子型帯電防止剤などの帯電防止剤を含んでもよい。被搬送部材が電子部品を構成する部材などの場合において、積層シート(又はこのシートで形成された成形体)の帯電を防止することにより、電子部品の製造工程や被搬送部材に対して静電気が原因となる不具合が発生することを防止できる。なお、高分子型であると、被搬送部材に帯電防止剤が付着することも防止できる。
【0051】
高分子型帯電防止剤(a3)としては、高分子量(例えば、数平均分子量1000以上)である限り、特に制限されず、例えば、オレフィン系ブロック及び/又はポリアミド系ブロックと、親水性ブロックとのブロック共重合体などが例示できるが、ポリエチレン系樹脂(b1)との親和性や分散性などの点から、オレフィン系ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体が好ましい。
【0052】
前記オレフィン系ブロックを構成するオレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのC2−6オレフィンが例示できる。これらのオレフィンのうち、エチレン及びプロピレンから選択された少なくとも一種が好ましく、特に、少なくともプロピレンを含むのが好ましい。オレフィン系単量体のうち、プロピレンの割合は80モル%以上(特に90モル%以上)が好ましい。ポリオレフィンブロックにおいて、オレフィン系単量体(C2−6オレフィン、特にエチレン及び/又はプロピレン)の含有量は、80モル%以上(特に90モル%以上)程度であってもよい。ポリオレフィンブロックの数平均分子量は、2000〜50000、好ましくは3000〜40000、さらに好ましくは5000〜30000程度であってもよい。
【0053】
親水性ブロックとしては、例えば、ポリエーテル系ポリマー(又はノニオン性ポリマー)、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーなどが例示できる。親水性ブロックを構成する親水性単量体としては、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのC2−6アルキレンオキシド)、特にエチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのC2−4アルキレンオキシドなどが好ましい。好ましい親水性ブロックとしては、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドなどのポリC2−4アルキレンオキシド)が好ましい。ポリアルキレンオキシドの平均重合度は2〜300(例えば、5〜200)、好ましくは10〜150、さらに好ましくは10〜100程度であってもよい。
【0054】
前記オレフィン系ブロックと、親水性ブロックとは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合などを介して結合されていてもよい。これらの結合は、例えば、ポリオレフィンを変性剤で変性した後、親水性ブロックを導入することにより形成できる。例えば、ポリオレフィンを変性剤で変性して活性水素原子を導入した後、アルキレンオキシドなどの親水性単量体を付加重合することによって導入される。このような変性剤としては、例えば、不飽和カルボン酸又はその無水物((無水)マレイン酸など)、ラクタム又はアミノカルボン酸(カプロラクタムなど)、酸素又はオゾン、ヒドロキシルアミン(2−アミノエタノールなど)、ジアミン(エチレンジアミンなど)又はこれらの組み合わせなどが例示できる。
【0055】
帯電防止剤(a3)中のナトリウムイオン(Na)及び硫酸イオン(SO2−)の含有量は、それぞれ、例えば、1〜150ppm、好ましくは1.5〜130ppm、さらに好ましくは2〜120ppm程度であってもよい。
【0056】
帯電防止剤(a3)のMFRは、1〜20g/10分、好ましくは5〜18g/10分、さらに好ましくは7〜15g/10分程度であってもよい。なお、MFRは、ASTM D 1238に準拠して、試験温度190℃、公称荷重2.16kgf(21.2N)の条件で測定できる。
【0057】
帯電防止剤(a3)の割合は、ポリエチレン系樹脂(a1)100重量部に対して、5〜35重量部、好ましくは10〜30重量部、さらに好ましくは15〜25重量部程度であってもよい。
【0058】
また、帯電防止剤(a3)の割合は、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(a2)1重量部に対して、例えば、0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜10重量部(例えば、1.5〜5重量部)程度であってもよい。
【0059】
表層(A)(又は積層シート)の耐摩耗性は、例えば、0〜2.0mg、好ましくは0〜1.8mg、さらに好ましくは0〜1.6mg程度であってもよい。なお、耐摩耗性は、JIS K7204に準拠して、摩耗論CS−17、加重4.9N×2、測定回数1000回転、回転速度72rpmの条件でテーバー摩耗試験を行い、試験前後の質量差として算出できる。
【0060】
表層(A)の厚み(表層(A)が後述の基材層(B)の両面に形成されている場合は、その和)は、用途に応じて適当に選択でき、例えば、0.005〜0.6mm、好ましくは0.01〜0.5mm、さらに好ましくは0.05〜0.45mm程度であってもよい。
【0061】
(B)基材層
基材層(B)のベース成分は、成形性を有する限り、特に限定されず、プラスチック(例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂など)である。プラスチックとしては、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリアミド系樹脂から選択された少なくとも一種の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0062】
以下、本発明の代表的な基材層(B)について詳細に説明する。
【0063】
(b1)スチレン系樹脂
基材層(B)は、容器に成形した場合の強度や、成形性、剛性、耐熱性を保持させるため、ベース成分として、スチレン系樹脂(b1)を含む。
【0064】
スチレン系樹脂(b1)は、芳香族ビニル単量体を主構成単位として形成される単独又は共重合体である。スチレン系樹脂を形成するための芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、ビニルトルエン、ビニルキシレン、p−エチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなど)、α位にアルキル基が置換したα−アルキル置換スチレン(例えば、α−メチルスチレンなど)などが例示できる。これらの芳香族ビニル単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの単量体のうち、通常、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど、特にスチレンが使用される。
【0065】
前記芳香族ビニル単量体は、共重合可能な単量体と組み合わせて使用してもよい。共重合可能な単量体としては、例えば、シアン化ビニル系単量体(例えば、アクリロニトリルなど)、不飽和多価カルボン酸又はその酸無水物(例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸又はその酸無水物など)、イミド系単量体[例えば、マレイミド、N−アルキルマレイミド(例えば、N−C1−4アルキルマレイミドなど)、N−アリールマレイミド(例えば、N−フェニルマレイミドなど)]、アクリル系単量体[例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C5−20シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸C6−20アリールエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルなどの(メタ)アクリル酸C6−20アラルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2−4アルキルエステルなど]などが例示できる。これらの共重合可能な単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0066】
スチレン系樹脂において、芳香族ビニル単量体(又は芳香族ビニル成分由来の単位)と共重合可能な単量体(又は共重合性成分由来の単位)との割合(モル比)は、例えば、前者/後者=50/50〜99/1、好ましくは60/40〜97/3、さらに好ましくは70/30〜95/5程度であってもよい。
【0067】
スチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、例えば、0.1〜10g/10分、好ましくは0.3〜5g/10分、さらに好ましくは0.5〜2g/10分程度であってもよい。MFRがこのような範囲にあると、押出加工性、トレー成形性に優れる。なお、MFRは、JIS K7210に準じて、試験温度200℃、荷重49.1Nの条件で測定できる。
【0068】
スチレン系樹脂(b1)は、ゴム変性スチレン系樹脂であってもよい。ゴム変性スチレン系樹脂は、耐衝撃性及び緩衝性を改善するために使用され、共重合(グラフト重合、ブロック重合など)などにより、前記スチレン系樹脂で構成されたマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散した重合体であってもよく、通常、ゴム状重合体の存在下、少なくとも芳香族ビニル単量体を、慣用の方法(塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、乳化重合など)で重合することにより得られるグラフト共重合体(ゴムグラフトポリスチレン系重合体)である。
【0069】
ゴム状重合体としては、例えば、ジエン系ゴム[ポリブタジエン(低シス型又は高シス型ポリブタジエン)、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソブチレン−ブタジエン系共重合ゴムなど]、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリルゴム(ポリアクリル酸C2−8アルキルエステルを主成分とする共重合エラストマーなど)、エチレン−α−オレフィン系共重合体[エチレン−プロピレンゴム(EPR)など]、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体[エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)など]、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴムなどが例示できる。なお、上記共重合体はランダム又はブロック共重合体であってもよく、ブロック共重合体には、AB型、ABA型、テーパー型、ラジアルテレブロック型の構造を有する共重合体などが含まれる。これらのゴム状重合体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいゴム状重合体は、共役1,3−ジエン又はその誘導体の重合体、特にジエン系ゴム[ポリブタジエン(ブタジエンゴム)、ポリイソプレン(イソプレンゴム)、スチレン−ブタジエン共重合体など]である。
【0070】
ゴム変性スチレン系樹脂において、ゴム状重合体の含有量は、3〜80重量%(例えば、4〜70重量%)、好ましくは5〜60重量%(例えば、6〜55重量%)、さらに好ましくは7〜50重量%(例えば、7〜30重量%)程度である。ゴム状重合体がこのような範囲にあると、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れる。
【0071】
スチレン系樹脂で構成されたマトリックス中に分散するゴム状重合体の形態は、特に限定されず、サラミ構造、コア/シェル構造、オニオン構造などであってもよい。
【0072】
分散相を構成するゴム状重合体の粒子径は、例えば、体積平均粒子径0.5μm以上(例えば、0.5〜30μm)、好ましくは0.5〜10μm、さらに好ましくは0.5〜7μm(例えば、0.5〜5μm)程度の範囲から選択できる。また、ゴム状重合体のグラフト率は、5〜150%、好ましくは10〜150%程度である。
【0073】
スチレン系樹脂(b1)(ゴム変性スチレン系樹脂の場合はマトリックス樹脂)の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000、好ましくは50,000〜500,000、さらに好ましくは100,000〜500,000程度である。
【0074】
ゴム変性スチレン系樹脂のMFRは、例えば、1〜5g/10分、好ましくは2〜4g/10分、さらに好ましくは2.5〜3.5g/10分程度であってもよい。なお、MFRは、JIS K7210に準じて、試験温度200℃、荷重49.1Nの条件で測定できる。
【0075】
これらのスチレン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのスチレン系樹脂のうち、ポリスチレン(GPPS)、スチレン−アクリロニトリル(AS樹脂)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂)などの非ゴム含有スチレン系樹脂(ゴム成分を含有しないスチレン系樹脂や非ゴム強化スチレン系樹脂など)や、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ABS樹脂)、α−メチルスチレン変性ABS樹脂、イミド変性ABS樹脂、MBS樹脂などのゴム変性スチレン系樹脂が好ましく、特にGPPSやHIPSが好ましい。
【0076】
スチレン系樹脂は、非ゴム含有スチレン系樹脂とゴム変性スチレン系樹脂とを組み合わせてもよい。非ゴム含有スチレン系樹脂とゴム変性スチレン系樹脂との割合(重量比)は、前者/後者=10/90〜80/20(例えば、15/85〜80/20)、好ましくは20/80〜75/25(例えば30/70〜75/25)程度であってもよい。非ゴム含有スチレン系樹脂とゴム含有スチレン系樹脂との割合が前記範囲にあると、耐衝撃性と剛性とのバランスに優れる。
【0077】
スチレン系樹脂(b1)の割合は、基材層(B)全体に対して、少なくとも50重量%以上(例えば、50〜100重量%、好ましくは60〜99.9重量%、さらに好ましくは70〜99重量%程度)であってもよい。
【0078】
基材層(B)は、さらに、ゴム(ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)、エラストマー(スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなど)などを含んでいてもよい。これらのゴム又はエラストマー成分は、単独で又は二種以上組み合わせて配合してもよい。特に、本発明では、基材層(B)に、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)単独、又は水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)と非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)とを組み合わせて配合してもよい。
【0079】
(b2)水添スチレン系熱可塑性エラストマー
基材層(B)は、層間接着強度を向上する点から、さらに、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)を含んでもよい。
【0080】
水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)としては、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(a2)の項で例示された水添スチレン系熱可塑性エラストマーを使用できる。好ましい水添スチレン系熱可塑性エラストマーも同様である。
【0081】
水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)の割合は、スチレン系樹脂(b1)100重量部に対して、1〜35重量部程度の範囲から選択でき、例えば、1〜30重量部、好ましくは2〜25重量部、さらに好ましくは3〜20重量部程度であってもよい。水添スチレン系熱可塑性エラストマーが前記割合であると、剛性と耐衝撃性と層間接着強度とのバランスに優れる。
【0082】
積層シート全体において、水添スチレン系熱可塑性エラストマーの割合は、ポリエチレン系樹脂(a1)とスチレン系樹脂(b1)との合計100重量部に対して、1〜25重量部程度の範囲から選択でき、例えば、2〜20重量部、好ましくは3〜15重量、さらに好ましくは4〜12重量部程度であってもよい。
【0083】
(b3)非水添スチレン系熱可塑性エラストマー
基材層(B)は、非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)を含んでいてもよい。非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)は、積層シートの耐衝撃性や折曲げなどの加工性を向上できる。
【0084】
非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)は、通常、硬質相(硬質ブロック又はセグメント)が芳香族ビニル単位(例えば、スチレン系樹脂の項で例示された芳香族ビニルなど)で構成され、軟質相(軟質ブロック又はセグメント)が、非水添ジエン系単位[例えば、ポリブタジエン(又はブタジエン単位)、ポリイソプレン(又はイソプレン単位)などのジエン系単位]で構成されている。
【0085】
非水添スチレン系熱可塑性エラストマーを構成する硬質相と軟質相との割合(重量比)は、硬質相/軟質相=1/99〜99/1程度の範囲から選択でき、例えば、20/80〜60/40、好ましくは25/75〜55/45、さらに好ましくは30/70〜50/50程度であってもよい。
【0086】
代表的な非水添スチレン系熱可塑性エラストマーは、通常、スチレン−ジエン系ブロック共重合体である。スチレン−ジエン系ブロック共重合体としては、前記水添スチレン系熱可塑性エラストマー(a2)の項で例示されたブロック共重合体と同様である。
【0087】
好ましい非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体である。
【0088】
非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)のMFRは、例えば、2〜7g/10、好ましくは3〜6g/10分、さらに好ましくは4〜5g/10分程度であってもよい。なお、MFRは、ISO1133に準じて、試験温度190℃、荷重21.2Nの条件で測定できる。
【0089】
非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)の硬度は、ISO7619に準じて、例えば、70〜110、好ましくは75〜105、さらに好ましくは80〜100程度であってもよい。
【0090】
非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)の割合は、スチレン系樹脂(b1)100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは2〜10重量部程度であってもよい。非水添スチレン系熱可塑性エラストマーの割合がこのような範囲にあると、剛性と耐衝撃性とを両立できる。
【0091】
水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)の割合は、非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)1重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部程度の範囲から選択でき、0.2〜6重量部、好ましくは0.3〜5.5重量部(例えば、0.7〜1.5重量部)、さらに好ましくは0.4〜5重量部(例えば、0.8〜1.2重量部)程度であってもよい。
【0092】
(b4)ポリエチレン系樹脂
基材層(B)は、層間接着強度を向上する点から、ポリエチレン系樹脂(b4)を含んでいてもよい。ポリエチレン系樹脂(b4)は、ポリエチレン系樹脂(a1)の項で例示されたポリエチレン系樹脂であってもよく、表層と同じポリエチレン系樹脂であってもよい。ポリエチレン系樹脂(b4)としては、本発明の積層シートの製造時に発生するトリミングした端部やトレー成形打ち抜き時に発生する抜きあと(スケルトン)などをリサイクルすることにより得られる成分であってもよい。
【0093】
ポリエチレン系樹脂(b4)の割合は、スチレン系樹脂(b1)100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは2〜10重量部程度であってもよい。このような範囲にあると、層間接着強度と剛性と耐衝撃性とのバランスに優れる。
【0094】
(b5)添加剤
基材層(B)において、必要に応じて、表層(A)と同様の添加剤を配合してもよい。
【0095】
基材層(B)の厚みは、用途に応じて適当に選択でき、例えば、0.1〜1.5mm、好ましくは0.2〜1.4mm、さらに好ましくは0.4〜1.2mm(例えば、0.6〜1.0mm)程度であってもよい。
【0096】
表層(A)(基材層(B)の両面に表層(A)が形成されている場合は、その和)の厚みを1とすると、基材層(B)の厚みは、例えば、1〜20、好ましくは1.5〜15、さらに好ましくは3〜10程度であってもよい。このような範囲にあると、均一な厚みのシートを形成できるとともに、剛性にも優れる。
【0097】
表層(A)と基材層(B)との厚みの総和は、例えば、0.5〜1.5mm、好ましくは0.6〜1.4mm、さらに好ましくは0.8〜1.2mm程度であってもよい。
【0098】
本発明の積層シートは、被搬送部材(金属薄膜で被覆された部材)と接触して、所定の荷重が作用した状態で、振動や衝撃が加えられて、両者が繰り返し擦れても、前記部材に擦過痕が生成することを有効に抑制できる。例えば、本発明の積層シートが、溶融亜鉛メッキ鋼板(日新製鋼(株)製、ペンタイトB、厚み:1.0mm、規格:MSB・CC・ZC_90)と接触して、シートの中央部に8Nの荷重が作用した状態で、シートの長手方向に振幅20mmで振動させた場合、擦過痕が生成するまでの振動回数は、例えば、600回以上、好ましくは800回以上、さらに好ましくは900回以上(特に、1000回以上)であってもよい。
【0099】
また、本発明の積層シートでは、部材に擦過痕が生成しやすく、シートが摩耗しやすいような、部材との接触態様[例えば、一方の部材の表面積に対して小さい面積で、他方の部材を接触させる場合(例えば、一方の部材が凸状に湾曲した形状であり、他方の部材は平板形状である場合など)]で、両者が擦れあっても、前記部材に対して擦過痕が生成すること、及びシートが摩耗することを有効に抑制できる。
【0100】
上述の通り、本発明の積層シートは、擦過防止性、耐摩耗性などの特性に優れているが、さらに、以下の(i)〜(iii)の特性も兼ね備える場合が多い。
【0101】
(i)剛性(引張弾性率)は、例えば、2000〜3000MPa、好ましくは2100〜2800MPa、さらに好ましくは2200〜2500MPa程度であってもよい。なお、剛性は、テンシロン((株)エー・アンド・デイ製、商品名「RTA500」)により、試験速度50mm/分で測定でき、シート流れ方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)の平均値として算出できる。
【0102】
(ii)耐衝撃性は、例えば、0.5〜3.5J、好ましくは1〜3J、さらに好ましくは1.5〜2.8J程度であってもよい。なお、耐衝撃性は、JIS K7211に準拠して、デュポン衝撃強度を測定することにより、算出できる。
【0103】
(iii)層間接着強度は、例えば、0.15〜2.5N/15mm程度の範囲から選択でき、例えば、0.6〜1.6N/15mm、好ましくは0.7〜1.5N/15mm、さらに好ましくは0.8〜1.4N/15mm程度であってもよい。なお、層間接着強度は、テンシロン((株)エー・アンド・デイ製、商品名「RTA500」)により、試験速度15mm/分でキャストロール側の表層を180°でMD方向に剥離させ、その強度として測定できる。
【0104】
[積層シートの製造方法]
積層シートの製造方法は、特に制限されず、各層の各成分を混合して樹脂組成物を調製した後、慣用の方法によりシート状に成形する方法であってもよい。樹脂組成物は、各成分の粉粒体の混合物であってもよく、各成分を混練して調製してもよい。混練には、慣用の方法を用いることができ、例えば、各成分をヘンシェルミキサーやリボンミキサーで乾式混合し、単軸又は二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの慣用の溶融混合機に供給して溶融混練することができる。樹脂組成物は、ペレットの形態であってもよい。また、混練の配合順序は限定されない。
【0105】
シート状に成形する方法としては、例えば、エキストルージョン法[ダイ(フラット状、T状(T−ダイ)、円筒状(サーキュラダイ)等)法、インフレーション法など]などの押出成形法などが挙げられる。これらの成形方法のうち、特に、T−ダイを用いた押出成形法が好ましい。樹脂シートは、得られた各シートをヒートラミネーションやドライラミネーションなどの方法により調製してもよいが、各構成層用の樹脂組成物を、汎用のフィードブロック付きダイやマルチマニホールドダイ等を使用して共押出する方法により調製するのが好ましい。
【0106】
[二次成形方法、二次成形品]
このようにして得られた積層シートは、用途に応じて、吹込成形、真空成形、折り曲げ加工、圧空成形(圧縮空気圧成形)、マッチモールド成形、熱板成形などの慣用の熱成形などで二次成形することができる。
【0107】
熱成形工程においては、ヒーター又は熱板で加熱したシートを加圧や減圧により成形し、例えば、圧空成形の場合は、加熱したシートを圧空により金型に押し当てて容器を成形する。真空成形の場合は、金型と加熱したシートとの間を真空にすることにより、加熱シートを金型側に引き込んで容器を成形する。前記金型には、空気を引き込むための小孔やスリットが設けられている。
【0108】
二次成形品としては、前記被搬送部材を接触状態で搬送可能な成形体であれば、特に限定されないが、例えば、トレー、キャリアテープ、エンボステープ、マガジンなどの容器や包装材料などが汎用される。これらの二次成形品のうち、被搬送部材(例えば、金属メッキ部材)を接触状態で搬送するための成形体(搬送用成形体)、特に、前記被搬送部材と接触する凸部を有する搬送用成形体が好ましい。
【0109】
凸部を有する搬送用成形体としては、例えば、被搬送部材を収容する容器を積層して搬送するための容器が挙げられる。このような容器は、被搬送部材の形状に対応する収容凹部と、前記凹部の裏面に形成され、積層状態において、下層に収容された被搬送部材と接触して固定するための凸部(凸状湾曲部)とで構成される。凹部の形態は、特に限定されず、被搬送部材の形状に対応した断面コ字状やU字状の長尺状溝部や、三次元状凹部などであってもよい。さらに、前記容器は、一段(一層)で複数の被搬送部材を収容可能であってもよく、例えば、列状(2〜10列程度)に凹部を形成してもよい。また、凸部の形態は、特に限定されず、例えば、多角柱状、半球状、半楕円球状(特に、半楕円球状)などであってもよい。容器の積層数は、2層以上であれば特に限定されず、例えば、5〜15層、好ましくは6〜14層、さらに好ましくは8〜12層程度であってもよい。
【0110】
図1は、本発明の成形体の一例である搬送用トレー(搬送用容器)を示す部分概略斜視図である。図2は、図1のA−A’断面図である。図3は、図1のトレーに被搬送部材を収容して積層した状態を示す概略切欠斜視図である。図1に示すように、この例では、トレー1は、被搬送部材である平板3を収容するための断面コ字状の複数の長尺状溝部(凹部)2が列状(8列程度)に長手方向に沿って平行に形成されており、この溝部2の裏面の中央部には、長手方向に沿って、所定間隔をおいて、複数の半楕円球状凸部(脚部)2が形成されている。このトレー1は、図3に示すように、溝部2に平板3を収容した状態で積み重ねて使用される。このような積層状態では、上段のトレーの複数の半楕円球状凸部2が、下段のトレーに収容された被搬送部材である平板3の上面と接触して平板3を固定することにより、搬送中の振動などに対して平板3が溝部から脱離するのを防止し、隣接する溝部に収容された平板同士が衝突することを防止できる。また、搬送中にトレーと被搬送部材とが、自重又は所定荷重が作用した状態で、トレーの長手方向に繰り返し擦れても、被搬送部材に対して擦過痕が生成することを防止でき、トレーの摩耗も抑制できる。
【実施例】
【0111】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、文中、特に断わりのない限り、「部」は重量基準である。実施例における各評価項目の評価方法、及び用いた各成分の内容は以下の通りである。
【0112】
[耐摩耗性]
スクリュー径30mm、L/D=28、T−ダイ幅150mmのフィードブロック方式の単層押出機にて表層成分のみで1.0mm厚みの単層シートを作成して評価サンプルとした。JIS K7204に準拠して、摩耗論CS−17、加重4.9N×2、測定回数1000回転、回転速度72rpmの条件でテーバー摩耗試験を行った。試験前後のサンプル質量差を摩耗論とした。測定は3回行い、平均値で示した。
【0113】
[擦過防止性]
水平に設置された溶融亜鉛メッキ鋼板(日新製鋼(株)製、ペンタイトB、厚み:1.0mm、規格:MSB・CC・ZC_90)の表面に、各シートサンプル30mm×10mmを、表層がメッキ表面と接触するように設置した。シートの中央部に重りを載置して、8Nの荷重が作用した状態で、シートの長手方向に振幅20mmで振動させて、100回毎に擦過痕を確認し、以下の基準で評価した。
5:擦過痕が生成した時の振動回数が1000回以上
4:擦過痕が生成した時の振動回数が800回以上1000回未満
3:擦過痕が生成した時の振動回数が600回以上800回未満
2:擦過痕が生成した時の振動回数が400回以上600回未満
1:擦過痕が生成した時の回数が400回未満。
【0114】
[剛性]
各シートからJIS K7133に準じた2号ダンベルを打ち抜き、サンプルを得た。このサンプルを用いて、テンシロン((株)エー・アンド・デイ製、商品名「RTA500」)により、試験速度50mm/分で引張弾性率を測定した。測定した値は、シート流れ方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)の平均値で示した。
【0115】
[耐衝撃性]
各シートをJIS K7211に準拠して、デュポン衝撃強度を測定した。
【0116】
[層間接着強度]
各シート中央部で長手がMD方向となるように、100mm×15mmのサンプルを作成した。テンシロン((株)エー・アンド・デイ製、商品名「RTA500」)により、試験速度15mm/分でキャストロール側の表層を180°でMD方向に剥離させ、その強度を測定した。
【0117】
[容器成形性]
各シートを用いて、単発真空成形機((株)浅野研究所製)によって、開口部径90mm、底部径0mm、高さ50mmのカップ状容器を成形し、容器と底面のコーナー(底面と側面との接する面)との外観を目視観察し、以下の基準で評価した。
5:均一に伸びて、均一な厚みに成形されている
4:ほぼ均一に伸びて、均一な厚みに成形されている
3:底面又はコーナーの一部にややムラがある
2:底面又はコーナーの一部にムラがある
1:底面又はコーナーの一部に薄皮となっている部分がある。
【0118】
[各成分の内容]
GPPS1:ポリスチレン系樹脂(東洋スチレン(株)製、トーヨースチロールGP HRM40、MFR(JIS K7210、200℃、49.1N)1.1g/10分)
GPPS2:ポリスチレン系樹脂(東洋スチレン(株)製、トーヨースチロールGP HRM10N、MFR(JIS K7210、200℃、49.1N)7.3g/10分)
HIPS:ゴム変性スチレン系樹脂(東洋スチレン(株)製、トーヨースチロールHI E640、MFR(JIS K7210、200℃、49.1N)2.7g/10分)
HDPE:高密度ポリエチレン(東ソー(株)製、ニポロンハード 6200 MFR(JIS K7210、190℃、21.2N)0.2g/10分、密度(JIS K7122)958kg/cm
LDPE:低密度ポリエチレン(旭化成ケミカルズ(株)製、サンテック M1703、MFR(JIS K7210、190℃、21.2N)0.3g/10分、密度(JIS K7122)918kg/cm
LLDPE:直線状低密度ポリエチレン((株)プライムポリマー製、ネオゼックス 0144N、MFR(JIS K7210、190℃、21.2N)0.2g/10分、密度(JIS K7122)922kg/cm
PP:ポリプロピレン((株)プライムポリマー製、プライムポリプロ E−105GM ホモタイプ MFR(JIS K7210、230℃、21.2N)0.5g/10分)
SBS:スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ(株)製、タフプレン 126S、MFR(ISO1133、190℃、21.2N)4.5g/10分)
SBBS:選択水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ(株)製、タフテックP2000、MFR(JIS K7210、190℃、21.2N)3g/10分)
SEBS:完全水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ(株)製、タフテックH1043、MFR(JIS K7210、200℃、41.9N)5g/10分)
SEPS:水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体((株)クラレ製、セプトン2104、MFR(JIS K7210、200℃、98.1N)22g/10分)
高分子型帯電防止剤(三洋化成工業(株)製、ペレスタット212、MFR(ASTM D1238、190℃、21.2N)12g/10分)。
【0119】
実施例1〜25及び比較例1
フィードブロック方式の多層押出機(二種三層押出機)の第1の単軸押出機(スクリュー径90mm、L/D=32)に、表1及び2に示す基材層を構成する成分の混合物をシリンダー温度210℃で供給し、第2の単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28)に、表1及び2に示す表層を構成する成分の混合物をシリンダー温度200℃(比較例1は230℃)で供給し、フィードブロック内で、基材層の両面に表層を合流させて積層し、T−ダイキャスト法によりシート状に押出した。クロームメッキした金属製のキャストロールに金属製のタッチロールで押し当てるいわゆるタッチロール法で60℃まで冷却し、引き取り速度を調整することにより、総厚みが1.0mmで、層構成が表層/基材層/表層(実施例17は表層/基材層)の積層シートを得た。
【0120】
比較例2
第1の単軸押出機(スクリュー径90mm、L/D=32)のみを用い、表2に示す構成成分の混合物をシリンダー温度210℃で供給し、タッチロール法で60℃まで冷却して厚み1.0mmの単層シートを得た。
【0121】
比較例3
単層シート(帝人化成(株)製、A−PETシート、帯電防止グレード、1.0mm)を用いた。
【0122】
結果を表1及び2に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
【表2】

【0125】
なお、表1、2中、基材層の両面に表層が形成された積層シート(実施例1〜16、18〜25、比較例1)において、各表層の構成成分及び処方は同一であり、一方の表層の構成成分及び処方を示す。
【0126】
表1、2から明らかなように、比較例に比べ、実施例の積層シートは擦過防止性や耐摩耗性に優れる。特に、実施例1〜20の積層シートは、剛性、耐衝撃性、層間接着強度、成形性などのバランスにも優れる。実施例1と13と14とを比較すると、ポリエチレン系樹脂が高密度ポリエチレンであると、耐摩耗性が特に優れることが分かる。また、実施例1と19とを比較すると、選択水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体よりも、完全水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を配合する方が、剛性及び層間接着強度は大きく、実施例19と20とを比較すると、水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体よりも、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を配合する方が、剛性及び層間接着強度は大きいことが分かる。さらに、実施例21と23と25とを比較すると、基材層及び表層の少なくとも一方の層に水添スチレン系熱可塑性エラストマーを配合することにより、層間接着強度を大きくすることができる。さらに、実施例1の積層シートは、実施例22と24の積層シートと比較して、基材層中の水添スチレン系熱可塑性エラストマーの割合、及び表層中の水添スチレン系熱可塑性エラストマーの割合が調整されており、擦過防止性、耐摩耗性、剛性、耐衝撃性、層間接着強度全てでバランスよく具備している。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の積層シートは、トレー、キャリアテープ、エンボステープ、マガジンなどの容器や包装材料として有用であり、被搬送部材[例えば、金属薄膜で被覆された部材、特に、金属メッキ部材(例えば、プリンターのブレードなどの亜鉛メッキ鉄鋼製品など)]を接触状態で搬送するのに有用である。特に、長時間に亘り、積層シートと前記部材とが擦れあう事態が想定される船舶輸送の用途に有効である。
【符号の説明】
【0128】
1…搬送用トレー
2…溝部(凹部)
3…凸部
4…被搬送部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面が金属で構成された部材を接触状態で搬送するための積層シートであって、プラスチックを含む基材層(B)の少なくとも一方の面に、前記部材と接触可能であり、主成分としてポリエチレン系樹脂を含む表層(A)が形成されている積層シート。
【請求項2】
少なくとも表面が金属で構成された部材が、亜鉛メッキ又は亜鉛合金メッキ部材である請求項1記載の積層シート。
【請求項3】
ポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレンで構成されている請求項1又は2記載の積層シート。
【請求項4】
表層(A)が、さらに高分子型帯電防止剤を含む請求項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
【請求項5】
プラスチックが、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリアミド系樹脂から選択された少なくとも一種の熱可塑性樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の積層シート。
【請求項6】
基材層(B)がベース成分としてスチレン系樹脂(b1)を含み、かつ表層(A)及び基材層(B)のうち少なくとも一方の層が、さらに水添スチレン系熱可塑性エラストマーを含む請求項1〜5のいずれかに記載の積層シート。
【請求項7】
水添スチレン系熱可塑性エラストマーが、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及び水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体から選択された少なくとも一種の水添スチレン−ジエン系ブロック共重合体である請求項6記載の積層シート。
【請求項8】
基材層(B)が、さらに非水添スチレン系熱可塑性エラストマーを含む請求項6又は7記載の積層シート。
【請求項9】
基材層(B)が水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)を含み、かつ水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)の割合が、非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)1重量部に対して、0.7〜1.5重量部である請求項8記載の積層シート。
【請求項10】
表層(A)が、高密度ポリエチレンで構成されたポリエチレン系樹脂(a1)と水添スチレン系熱可塑性エラストマー(a2)と高分子型帯電防止剤(a3)とで構成され、ポリエチレン系樹脂(a1)100重量部に対して、高分子型帯電防止剤(a3)の割合が10〜30重量部であり、基材層(B)が、スチレン系樹脂(b1)と水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)と非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)とで構成され、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b2)の割合が、非水添スチレン系熱可塑性エラストマー(b3)1重量部に対して、0.8〜1.2重量部である請求項1記載の積層シート。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の積層シートで形成された成形体。
【請求項12】
少なくとも表面が金属で構成された部材と接触可能である請求項11記載の成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−104901(P2011−104901A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263184(P2009−263184)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(501073426)ダイセルパックシステムズ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】