説明

積層セラミックコンデンサの製造方法および積層セラミックコンデンサ

【課題】外部電極を形成する際に発生する不具合を解消し、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサとするための製造方法を提供すること。
【解決手段】内部電極を有する積層セラミックコンデンサ用素体の端部に前記内部電極に電気的に接続される外部電極を形成する積層セラミックコンデンサの製造方法であって、前記積層セラミックコンデンサ用素体の端部に露出した内部電極に金属粉末を付着させた後、前記内部電極と前記金属粉末とを合金化する合金化工程と、前記金属粉末が合金化された積層セラミックコンデンサ用素体の端部に外部電極を形成する外部電極形成工程とを行うもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層セラミックコンデンサの製造方法および積層セラミックコンデンサに係り、特に外部電極を形成する際に発生する不具合を解消し、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを製造するための製造方法およびそれを用いて製造される積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、一般に内部電極を有する積層セラミックコンデンサ用素体の端部に外部電極を形成することにより製造されている。この外部電極は、例えば金属粉末、ガラス粉末、有機バインダおよび有機溶剤を混合して得られる導電性ペーストを積層セラミックコンデンサ用素体の端部にディッピング法等により塗布し、脱バインダ処理を行った後、炉中で焼成することによって形成されている。一般的には、このような焼成の後、Niメッキを行い、さらにSnメッキあるいはSn−Pb合金メッキを行うことによって積層セラミックコンデンサとしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上述したような導電性ペーストの調製に用いられる金属粉末としては、例えばNi、Cu、Ag等の金属粉末が用いられている。また、有機バインダとしては、例えばエチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂や、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂が用いられている。さらに、有機溶剤としては単一系で、例えばブチルセルソルブ(bp170℃)、メチルカルビトール(bp194℃)、エチルカルビトール(bp202℃)、ブチルカルビトール(bp230℃)、ベンジルアルコール(bp205℃)、ターピネオール(bp210℃)等が用いられている。
【特許文献1】特開平10−177931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5は、一般的な積層セラミックコンデンサを示した断面図である。積層セラミックコンデンサ1は、積層セラミックコンデンサ用素体2と、この積層セラミックコンデンサ用素体2の端部2a、2bに形成された外部電極3とから構成されている。積層セラミックコンデンサ用素体2は、セラミックを主体とした誘電体層4と内部電極5とが交互に複数積層されたものである。内部電極5は一方の端部が積層セラミックコンデンサ用素体2の両端部2a、2bのいずれかに露出するように形成されており、この内部電極5の露出部分5a、5bが外部電極3と電気的に接続されている。このような積層セラミックコンデンサ1の外部電極3は、一般に緻密であることが求められている。
【0005】
図6は、従来の外部電極3の形成方法として、積層セラミックコンデンサ用素体2に導電性ペースト6を塗布した状態を示したものである。図6に示すように、積層セラミックコンデンサ用素体2に導電性ペースト6を塗布した時点では、導電性ペースト6に含まれる金属粉末7は、この導電性ペースト6中に均一に分散している。しかしながら、図6中に矢印で示すように、従来の形成方法では、内部電極5の露出部分5a(5bも同様)付近にあった金属粉末7が、焼成した際にこの内部電極5の露出部分5a上へ移動する。
【0006】
図7は、焼成後の外部電極3の断面を示したものである。また、図8は、図7に示す積層セラミックコンデンサ用素体2の端部2a付近の様子を示した平面図である。図7、8に示すように、従来の外部電極3の形成方法では、内部電極5の露出部分5a付近にあった金属粉末7が焼成中にこの露出部分5a上に移動することにより、この金属粉末7が元々あった部分が空孔8となり、最終的に得られる外部電極3が緻密にならないという課題がある。
【0007】
一般に、積層セラミックコンデンサ用素体2の内部電極5は必ずしも緻密ではなく、外部電極3が緻密でないと、外部電極3から水分が侵入し、この水分が内部電極5を通って積層セラミックコンデンサ用素体2の内部に侵入し、絶縁抵抗の劣化やリフロー時の破裂等を引き起こすことがある。
【0008】
また、外部電極3を上述したような導電性ペースト6の塗布、焼成によらず、メッキ法により形成する場合についても、メッキの際にメッキ液が内部電極5から侵入し、やはり絶縁抵抗の劣化やリフロー時の破裂を引き起こすことがある。
【0009】
本発明は上述したような課題を解決するためになされたものであって、外部電極を形成する際に発生する不具合を解消し、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを製造するための製造方法およびそれを用いて製造される信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法は、内部電極を有する積層セラミックコンデンサ用素体の端部に前記内部電極に電気的に接続される外部電極を形成する積層セラミックコンデンサの製造方法であって、前記積層セラミックコンデンサ用素体の端部に露出した内部電極に金属粉末を付着させた後、前記内部電極と前記金属粉末とを合金化する合金化工程と、前記金属粉末が合金化された積層セラミックコンデンサ用素体の端部に前記外部電極を形成する外部電極形成工程とを有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明における前記外部電極形成工程は、金属粉末、ガラス粉末およびバインダを含んでなる導電性ペーストを塗布した後、焼き付けるか、あるいは、メッキ法により行われることが好ましい。
【0012】
また、本発明の積層セラミックコンデンサは、内部電極を有する積層セラミックコンデンサ用素体の端部に前記内部電極に電気的に接続される外部電極が形成された積層セラミックコンデンサであって、上述した積層セラミックコンデンサの製造方法により製造されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、積層セラミックコンデンサ用素体の端部に露出した内部電極に金属粉末を付着させて合金化することで、この積層セラミックコンデンサ用素体の端部に導電性ペーストの塗布、焼き付けにより外部電極を形成する場合には、この導電性ペーストに含まれる金属粉末の移動に伴う空孔の発生を抑制し、緻密な外部電極を形成でき、またメッキ法により外部電極を形成する場合には、メッキの際の内部電極へのメッキ液の侵入を抑制することができる。このため、本発明では絶縁抵抗の劣化やリフロー時の破裂が抑制され、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法は、内部電極を有する積層セラミックコンデンサ用素体の端部に、この内部電極に電気的に接続される外部電極を形成するものであって、まず積層セラミックコンデンサ用素体の端部に露出した内部電極に金属粉末を付着させ、内部電極と金属粉末とを合金化する合金化工程を行った後、この金属粉末が合金化された積層セラミックコンデンサ用素体の端部に外部電極を形成する外部電極形成工程を行うことを特徴とするものである。
【0015】
図1は、本発明に用いる積層セラミックコンデンサ用素体2の一例を模式的に示した断面図である。積層セラミックコンデンサ用素体2は、セラミックを主体とした誘電体層4と内部電極5とが交互に複数積層されたものである。各内部電極5は、その一方の端部が積層セラミックコンデンサ用素体2の端部2aまたは2bへと交互に引き出され露出している(露出部分5a、5b)。
【0016】
このような積層セラミックコンデンサ用素体2は、例えば以下のようにして作製されるものである。まず、チタン酸バリウム系等の誘電体セラミック原料粉末をスラリーとし、このスラリーをシート状に成形してセラミックグリーンシートとした後、この表面上に公知の内部電極用材料をスクリーン印刷やインクジェット方式等を用いて直接所望のパターンに塗布する。
【0017】
そして、この内部電極用材料を塗布したセラミックグリーンシートを例えば30〜500枚程度積層した後、所定の温度、時間で熱処理して焼結体とする。さらに、この焼結体の両端部を研磨することにより内部電極を露出させる。このようにすることで、図1に示すような各内部電極5の一方の端部5aまたは5bが交互に積層セラミックコンデンサ用素体2の端部2aまたは2bへと引き出されたものとすることができる。
【0018】
本発明では、このような積層セラミックコンデンサ用素体2に対して、外部電極の形成前に、予め合金化工程を行う。この合金化工程では、まず積層セラミックコンデンサ用素体2の端部2a、2bにおける少なくとも内部電極5の露出部分5a、5bに金属粉末を付着させてから、この付着させた金属粉末と内部電極5とを合金化する。
【0019】
本発明では、外部電極の形成前に少なくとも内部電極5の露出部分5a、5bに金属粉末を付着、合金化する合金化工程を行うことで、例えば外部電極を導電性ペーストの塗布、焼き付けにより形成する場合には、導電性ペースト中に含まれる金属粉末が焼き付け時に内部電極5の露出部分5a、5bへと移動することを抑制し、外部電極に空孔が発生することを抑制することができる。
【0020】
また、外部電極をメッキ法により形成する場合には、メッキの際に内部電極5の露出部分5a、5bからメッキ液が侵入することを抑制し、これにより積層セラミックコンデンサの絶縁抵抗の劣化やリフロー時の破裂等を抑制でき、信頼性に優れたものとすることができる。
【0021】
このような内部電極5の露出部分5a、5bへの金属粉末の付着は、例えば所定の容器中に付着させるための金属粉末を入れておき、この金属粉末に積層セラミックコンデンサ用素体2の端部2a、2bを押しつけることにより行うことができる。また、積層セラミックコンデンサ用素体2の端部2a、2bに金属粉末を吹き付けること等により行ってもよい。なお、本発明では、内部電極5の露出部分5a、5bに金属粉末を付着させることができれば、必ずしも上述したような方法に限られるものではなく他の方法を採用することもできる。
【0022】
金属粉末の付着は内部電極5の露出部分5a、5bの全面に行うことが好ましい。内部電極5の露出部分5a、5bに金属粉末が付着していない部分があると、例えば導電性ペーストの塗布、焼き付けにより外部電極を形成する場合、この金属粉末が付着していない部分へ導電性ペースト中の金属粉末が移動するため、空孔の発生を十分に抑制できないおそれがある。また、例えばメッキ法により外部電極を形成する場合についても、メッキの際にこの金属粉末が付着していない部分からメッキ液が侵入するおそれがある。
【0023】
金属粉末の付着は少なくとも内部電極5の露出部分5a、5bに行えばよく、他の部分については付着させてもよいし、付着させなくてもよい。少なくとも内部電極5の露出部分5a、5bに金属粉末を付着させておけば、本発明の効果を得ることができる。
【0024】
また、後述するように金属粉末は最終的に内部電極5の露出部分5a、5bに付着させたものを合金化し、他の部分に付着したものは必ずしも必要ではなく除去してしまうことから、ここでの付着は必ずしも強固である必要はなく、その後の合金化の際の取り扱い時や熱処理中に容易に脱落しない程度に付着されていればよい。
【0025】
このような内部電極5の露出部分5a、5bに付着させる金属粉末としては、この種の積層セラミックコンデンサ用素体2に外部電極を形成する際に一般に用いられる導電性ペーストに含まれる金属粉末と同様のものを使用することができる。
【0026】
このような金属粉末としては、例えば銀、パラジウム、金、白金、ニッケルおよび銅等の金属単体からなる粉末、または、それらの金属から選ばれる少なくとも1種を含む合金からなる粉末が挙げられる。これらの金属粉末は1種のみで用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
このような金属粉末の平均粒径は10μm以下とすることが好ましい。金属粉末の平均粒径が10μmを超えると、内部電極5の露出部分5a、5bに緻密に付着させることが困難となり、上述したような内部電極5の露出部分5a、5bへの導電性ペースト中の金属粉末の移動や、内部電極5の露出部分5a、5bからのメッキ液の侵入等を十分に抑制することができないおそれがある。内部電極5の露出部分5a、5bに緻密に付着させる観点から、金属粉末の平均粒径は5μm以下とすればより好ましく、例えば0.01μm程度のものを用いることもできる。
【0028】
次に、内部電極5の露出部分5a、5bに付着させた金属粉末は、内部電極5と合金化させる。この合金化は、例えば内部電極5の露出部分5a、5bに金属粉末を付着させた積層セラミックコンデンサ用素体2を熱処理することにより行うことができる。この熱処理は、金属粉末の酸化の抑制等の観点から窒素雰囲気中で行うことが好ましい。
【0029】
また、熱処理の温度、時間は、付着させた金属粉末の種類、平均粒径によっても異なるが、例えば200℃以上、500℃以下の温度で、15分以上、30分以下とすることが好ましい。熱処理温度が200℃未満、熱処理時間が15分未満であると、金属粉末と内部電極5とを十分に合金化することができないおそれがある。また、熱処理温度を500℃程度、熱処理時間を30分程度とすれば、十分に金属粉末と内部電極5とを合金化することができる。
【0030】
このような熱処理により金属粉末と内部電極5とは合金化され、金属粉末は内部電極5の露出部分5a、5bに接合された状態となる。また、積層セラミックコンデンサ用素体2の端部2a、2bのうち、内部電極5の露出部分5a、5b以外の部分に付着させた金属粉末は必ずしも必要でないため除去する。
【0031】
内部電極5の露出部分5a、5b以外の部分に付着させた金属粉末は合金化されていないため容易に除去することができ、例えばエアーガンで圧縮空気を噴射すること等により行うことができる。図2は、このようにして内部電極5の露出部分5a以外に付着したものを除去し、露出部分5aのみに金属粉末9を残した積層セラミックコンデンサ用素体2の一例を示した断面図である。また、図3は図2に示す積層セラミックコンデンサ用素体2を端部2a側から見た平面図である。
【0032】
このようにして合金化工程を行った積層セラミックコンデンサ用素体2は、その端部2a、2bに外部電極を形成するための外部電極形成工程を行うことにより積層セラミックコンデンサとする。外部電極の形成は、この種の積層セラミックコンデンサ用素体2に外部電極を形成するために一般に用いられる方法を採用することができ、例えば金属粉末、ガラス粉末およびバインダを含む導電性ペーストを塗布した後、焼き付けることにより行ってもよいし、メッキ法により行ってもよい。また、必要に応じて外部電極の表面に半田付け性を向上させるためのニッケルメッキ、スズメッキ等を施してもよい。
【0033】
導電性ペーストを用いて外部電極を形成する場合、例えば積層セラミックコンデンサ用素体2の端部2a、2bにディップ法等により導電性ペーストを付与し、乾燥させた後、例えば700〜900℃で30分〜2時間程度熱処理することにより行うことができる。
【0034】
図4は、導電性ペーストを塗布、熱処理することにより外部電極3を形成した積層セラミックコンデンサ1の一例を示したものである。本発明では、予め内部電極5の露出部分5a、5bに金属粉末9を合金化させておくことで、導電性ペーストの塗布、焼き付けにより外部電極3を形成した場合、導電性ペーストに含まれる金属粉末7の内部電極5の露出部分5a、5bへの移動をこの合金化された金属粉末9により抑制でき、空孔の発生が抑制された緻密な外部電極3とすることができる。このため、外部電極3からの水分等の侵入を抑制でき、絶縁抵抗の劣化やリフロー時の破裂が抑制された信頼性に優れた積層セラミックコンデンサ1とすることができる。
【0035】
導電性ペーストに用いる金属粉末7としては、例えば銀、パラジウム、金、白金、ニッケルおよび銅等の金属単体からなる粉末、または、それらの金属から選ばれる少なくとも1種を含む合金からなる粉末が挙げられる。これらの金属粉末は1種のみで用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
また、金属粉末7は平均粒径の異なる2種以上のものからなるものとすれば好ましい。平均粒径の異なる2種以上のものからなるものとすることで、金属粉末7を高密度で充填でき、電気的特性に優れかつ均一な特性を有する外部電極3を形成することができる。
【0037】
導電性ペースト中の金属粉末7の含有量は、導電性ペースト全体の60重量%以上90重量%以下とすることが好ましい。60重量%未満であると外部電極3にポアや亀裂が発生しやすく、電気的特性も低下するため好ましくない。また、90重量%を超えると相対的にガラス粉末の含有量が減少し、外部電極3を形成する際の焼成が困難となるため好ましくない。
【0038】
導電性ペーストに用いられるガラス粉末は、導電性ペーストを用いて外部電極3を作製する際に焼成を容易にするために加えられるものである。ガラス粉末の平均粒径は5.0μm以下とすることが好ましい。ガラス粉末の平均粒径が5.0μmを超える場合、導電性ペーストにおける分散性が悪くなり、外部電極を形成した場合に電気的特性にばらつきが発生しやすくなるため好ましくない。
【0039】
ガラス粉末としては、ホウ酸塩ガラス、珪酸塩ガラス、ホウ珪酸塩ガラス等が用いられ、より具体的にはホウ酸ビスマスガラス、ホウ珪酸ビスマスガラス、ホウ珪酸亜鉛ガラス等が用いられる。
【0040】
導電性ペースト中のガラス粉末の含有量は、導電性ペースト全体に対して5重量%以上15重量%以下とすることが好ましい。5重量%未満であると、導電性ペーストの焼成を容易にする効果が低く、15重量%を超えると、導電性ペーストを焼成して外部電極3を形成した場合に、外部電極3の表面をガラス成分が覆ってしまい、メッキ処理等が困難となるため好ましくない。
【0041】
導電性ペーストに用いられるバインダとしては、例えば分子量10万〜90万のiso−ブチルメタクリレート樹脂が好適に用いられる。iso−ブチルメタクリレート樹脂の分子量が10万未満であると、導電性ペーストを焼成して外部電極3を形成した際に、外部電極3の形状が所定形状となりにくく、分子量が90万を超えるものは製産に時間がかかり、一般的に製品になりにくい。
【0042】
バインダとしては上述したiso−ブチルメタクリレート樹脂と共に他の樹脂を用いることができ、例えばiso−ブチルメタクリレート樹脂以外のアクリル樹脂、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらのエステル類を重合させたものを用いることができる。
【0043】
アクリル酸エステル類としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート、メチルグリシジルアクリレートが挙げられ、メタクリル酸エステル類としては例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0044】
導電性ペースト中のバインダの含有量は、導電性ペースト全体100重量%のうち、2重量%以上、15重量%以下とすることが好ましい。バインダの含有量が2重量%未満であるとペースト状になりにくく、積層セラミックコンデンサ用素体2への付与が困難となり、バインダの含有量が15重量%を超えると焼成して外部電極3を形成した際に、外部電極3の形状が所定形状とならず、またバインダが十分に除去されず、ポアや亀裂が発生するおそれがあるため好ましくない。
【0045】
導電性ペーストに用いられる有機溶剤としては、上述したようなバインダを溶解できるものであれば特に制限されるものではなく、公知のものを広く使用することができる。このようなものとしては、例えばジオキサン、トルエン、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、テルピオネールおよびベンジルアルコールが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
また、導電性ペーストを用いて外部電極3を形成する代わりに、メッキ法により外部電極3を形成してもよい。メッキ法による外部電極3の形成としては、無電解メッキ法によるものが好適なものとして挙げられる。無電解メッキ法によって積層セラミックコンデンサ用素体2の端部2a、2bに析出させる金属としては、銀、パラジウム、金、白金、ニッケルおよび銅等の金属単体、または、それらの金属から選ばれる少なくとも1種を含む合金が挙げられる。
【0047】
無電解メッキ法による外部電極3の形成は、例えば図2、3に示すような内部電極5の露出部分5a、5bに金属粉末9を付着、合金化させた積層セラミックコンデンサ用素体2の端部2a、2bに活性化処理等の前処理を行った後、これを上述した金属の金属塩の錯化合物と還元剤とからなる無電解メッキ液に浸漬し、所定の厚さに析出させることにより行うことができる。
【0048】
本発明では、予め内部電極5の露出部分5a、5bに金属粉末9を付着、合金化させておくことで、メッキの際にメッキ液が内部電極5の露出部分5a、5bから内部に侵入することを抑制し、最終的に積層セラミックコンデンサ1としたときに絶縁抵抗の劣化やリフロー時の破裂を抑制でき、信頼性に優れたものとすることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0050】
(実施例1〜9)
複数の誘電体層と内部電極とが交互に積層された積層セラミックコンデンサ用素体として1005型チップを用いた。この積層セラミックコンデンサ用素体の両端部を表1に示すような平均粒径を有する銅粉(合金化用金属粉末)にそれぞれ押し付け、銅粉を付着させた。この銅粉を付着させた積層セラミックコンデンサ用素体を200℃の窒素雰囲気下で熱処理を行い、合金化を行った。その後、内部電極の露出部分以外に付着し合金化しなかった銅粉をエアーガンを用いて圧縮空気を噴射することにより吹き飛ばし、内部電極の露出部分のみに銅粉を合金化させた積層セラミックコンデンサ用素体を得た(以下、合金化素体と呼ぶ)。
【0051】
一方、アクリル樹脂系バインダ iBMA(根上工業製)と、このバインダを溶解するための溶剤であるターピネオールとを表1に示すような割合で混合し、バインダ液を得た。さらに、このバインダ液に銅粉末およびガラス粉末を表1に示すような割合で添加し、三本ロールで混練して外部電極を形成するための銅ペーストを作製した。
【0052】
上述した合金化素体の端部にこの銅ペーストをディップ法により塗布し、乾燥させた後、焼成を行うことにより外部電極を形成し、さらに半田付け性を向上させるためのメッキ処理を行い積層セラミックコンデンサを得た。
【0053】
(実施例10)
実施例1〜9と同様にして得た合金化素体を、コンディショナー PB120(荏原ユージライト製、商品名)を用いて、60℃、5分間の脱脂を行った後、3分間の水洗いを行った。そして、触媒付与剤 PB318(荏原ユージライト製、商品名)を用いて酸触媒の付与を行った後、3分間の水洗いを行い、さらに還元剤 PB445(荏原ユージライト製、商品名)を用いてパラジウム(Pd)を析出させ、3分間の水洗いを行った。そして、メッキ液 PB556(荏原ユージライト製、商品名)を用いて、25℃、30分間の無電解メッキ処理を行った後、3分間の水洗いを行い外部電極を形成し、さらに半田付け性を向上させるためのメッキ処理を行い積層セラミックコンデンサを得た。
【0054】
(比較例1〜3)
積層セラミックコンデンサ用素体の端部への銅粉の付着、合金化を行わなかった以外は実施例1、2、3と同様にして銅ペーストの塗布、焼成を行い外部電極を形成し、さらに半田付け性を向上させるためのメッキ処理を行い積層セラミックコンデンサを得た。
【0055】
(比較例4)
積層セラミックコンデンサ用素体の端部への銅粉の付着、合金化を行わなかった以外は実施例10と同様にしてメッキ法により外部電極を形成し、さらに半田付け性を向上させるためのメッキ処理を行い積層セラミックコンデンサを得た。
【0056】
なお、表1、2中、ペースト組成の数値の単位は重量部である。また、表1、2中、銅粉(合金化用金属粉末)の数値の単位は重量[g]である。なお、表1、2中の銅粉(合金化用金属粉末)の重量[g]は、積層セラミックコンデンサ用素体を押し付けて付着させる際に使用した量を示したものであり、実際に積層セラミックコンデンサ用素体に付着あるいは合金化した銅粉(合金化用金属粉末)の重量[g]はこれよりも少なくなっている。また、実施例1〜10、比較例1〜4の積層セラミックコンデンサについては、いずれも外部電極の厚さが同じになるようにした。
【0057】
次に、実施例1〜10、比較例1〜4の積層セラミックコンデンサについて緻密度の評価、爆ぜ発生率の評価および絶縁抵抗劣化の評価を行った。また、これらの評価に基づいて総合評価を行った。結果を表1、2に示す。なお、各評価の方法は以下に示すとおりである。
【0058】
(緻密度の評価)
実施例1〜10、比較例1〜4の積層セラミックコンデンサ(外部電極の形成まで行い、半田付け性を向上させるためのメッキ処理を行っていないもの)の外部電極の断面観察を行い、この断面の所定面積における緻密度を測定した。なお、所定面積中に空孔等が全く存在しない場合を緻密度100(%)とし、結果は各実施例、比較例の積層セラミックコンデンサ50個の平均値を示した。
【0059】
(爆ぜ発生率の評価)
実施例1〜10、比較例1〜4の積層セラミックコンデンサ(半田付け性を向上させるためのメッキ処理を行ったもの)を所定の回路基板上に載せてリフロー炉に流し、積層セラミックコンデンサの破裂の有無を調べた。結果は、各実施例、比較例の積層セラミックコンデンサ300個における破裂したものの数(p)で示した。
【0060】
(絶縁抵抗劣化の評価)
実施例1〜10、比較例1〜4の積層セラミックコンデンサ(半田付け性を向上させるためのメッキ処理を行ったもの)を、温度65℃、湿度95%の雰囲気中に125時間保持し、絶縁抵抗の劣化の有無を測定した。結果は、各実施例、比較例の積層セラミックコンデンサ300個における絶縁抵抗の劣化のあったものの数(p)で示した。
【0061】
(総合評価)
上記爆ぜ発生率の評価および絶縁抵抗劣化の評価において、爆ぜの発生および絶縁抵抗の劣化がなかったもの合格とし、爆ぜの発生および絶縁抵抗の劣化が1つでもあったものを不合格とした。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
表1、2から明らかなように、内部電極の露出部分に銅粉を合金化させた実施例1〜10の積層セラミックコンデンサはいずれも外部電極が緻密なものとなっており、爆ぜの発生や絶縁抵抗の劣化も十分に抑制されていることが認められた。
【0065】
これに対して内部電極の露出部分に銅粉を合金化せず、銅ペーストの塗布、焼成のみを行い外部電極を形成した比較例1〜3の積層セラミックコンデンサは、外部電極に空孔等が発生し緻密にならず、爆ぜの発生や絶縁抵抗の劣化を十分に抑制できないことが認められた。また、内部電極の露出部分に銅粉を合金化せず、メッキ法のみにより外部電極を形成した比較例4の積層セラミックコンデンサは、外部電極自体は緻密になるものの、メッキの際に積層セラミックコンデンサ用素体内へのメッキ液の侵入があり、爆ぜの発生や絶縁抵抗の劣化が多くなることが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に用いる積層セラミックコンデンサ用素体の一例を示した断面図。
【図2】合金化工程を行った積層セラミックコンデンサ用素体の一例を示した断面図。
【図3】図2に示す積層セラミックコンデンサ用素体を端部側から見た状態を示した平面図。
【図4】導電性ペーストの焼き付けにより外部電極を形成した積層セラミックコンデンサの一例を示した断面図。
【図5】従来の積層セラミックコンデンサを示した断面図。
【図6】従来の導電性ペーストの焼き付けによる外部電極形成の様子を示した断面図。
【図7】従来の導電性ペーストの焼き付けによる積層セラミックコンデンサを示した断面図。
【図8】図7における積層セラミックコンデンサ用素体の端部付近の状態を示した平面図。
【符号の説明】
【0067】
1…積層セラミックコンデンサ、2…積層セラミックコンデンサ用素体(端部…2a、2b)、3…外部電極、4…誘電体層、5…内部電極(5a,5b…露出部分)、6…導電性ペースト、7…金属粉末(導電性ペースト中)、8…空孔、9…金属粉末(合金化用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極を有する積層セラミックコンデンサ用素体の端部に前記内部電極に電気的に接続される外部電極を形成する積層セラミックコンデンサの製造方法であって、
前記積層セラミックコンデンサ用素体の端部に露出した内部電極に金属粉末を付着させた後、前記内部電極と前記金属粉末とを合金化する合金化工程と、
前記金属粉末が合金化された積層セラミックコンデンサ用素体の端部に前記外部電極を形成する外部電極形成工程と
を有することを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記外部電極形成工程は、金属粉末、ガラス粉末およびバインダを含んでなる導電性ペーストを塗布した後、焼き付けるものであることを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記外部電極形成工程は、メッキ法により行われるものであることを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項4】
内部電極を有する積層セラミックコンデンサ用素体の端部に前記内部電極に電気的に接続される外部電極が形成された積層セラミックコンデンサであって、
請求項1乃至3のいずれか1項記載の積層セラミックコンデンサの製造方法により製造されたものであることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−208112(P2007−208112A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26919(P2006−26919)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】