説明

積層フィルム、該積層フィルムを用いた容器及び該容器の製造方法

【課題】廃棄性に優れ、かつデッドホールド性を有する積層フィルムを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルム11と直鎖状低密度ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムからなる未発泡フィルム13との間に、低密度ポリエチレン発泡フィルム又はポリプロピレン発泡フィルムからなる発泡フィルム12が配置され、前記熱可塑性樹脂フィルム11と前記発泡フィルム12とがドライラミネート法又は押出しラミネート法で貼り合わせられており、前記発泡フィルム12は、厚さが50〜500μmで、発泡倍率が1.2〜2.5倍のフィルムであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄性やデッドホールド性に優れた積層フィルム、該積層フィルムを用いた容器及び該容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療、食品、化粧品分野等で用いられる自立性のある容器には、デッドホールド性のある材料を用いている。デッドホールド性とは、フィルム等の平坦な材料に折り曲げ等の力を加えて形状変化させた際、その形態をそのまま保持する性質のことである。
【0003】
ところで、通常の樹脂フィルムはデッドホールド性を有していない。従って、樹脂フィルムにデッドホールド性を付与するためには、樹脂フィルムに紙を積層する方法が用いられる。また、樹脂フィルムにデッドホールド性と、光や空気に対する遮断性とを付与する場合は、樹脂フィルムに金属箔を積層させる方法が用いられる。
例えば、紙層と低密度ポリエチレン等からなるシーラント層の間にアルミニウム箔が設けられているデッドホールド性を有する蓋材がある(特許文献1参照)。
また、ポリエステルフィルムからなる基材上に、アルミニウム箔及び/又は紙からなる剛直層とシーラント層とを積層させた、デッドホールド性を有する包装用構成体等もある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−142780号公報
【特許文献2】特開2002−87459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、樹脂フィルムに紙及び/又はアルミニウム等の金属箔を積層させた積層体は、廃棄性が悪いという問題がある。具体的には、樹脂フィルムに紙を積層させた紙パック等は、可燃物とは別にリサイクル品として回収することがあるが、回収後に、樹脂フィルムと紙を分離しなければならない。また、アルミニウム等の金属箔を積層させた積層体は、地域によっては不燃物として廃棄しなければならないことがある。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、廃棄性に優れ、かつデッドホールド性を有する積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成を含む。
[1]熱可塑性樹脂フィルムと直鎖状低密度ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムからなる未発泡フィルムとの間に、低密度ポリエチレン発泡フィルム又はポリプロピレン発泡フィルムからなる発泡フィルムが配置され、前記熱可塑性樹脂フィルムと前記発泡フィルムとがドライラミネート法又は押出しラミネート法で貼り合わせられており、前記発泡フィルムは、厚さが50〜500μmで、発泡倍率が1.2〜2.5倍のフィルムである積層フィルム。
[2]前記未発泡フィルムと前記発泡フィルムとは、共押出法により貼り合わせられている[1]に記載の積層フィルム。
[3]前記熱可塑性樹脂フィルムの片面には無機蒸着層が設けられている、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[4]前記熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム及びポリアミドフィルムのいずれかである、[1]乃至[3]の積層フィルム。
[5][1]乃至[4]のいずれかに記載の積層フィルムを用いた容器。
[6]前記積層フィルムには、罫線処理が施されている[5]の容器。
[7][1]乃至[4]のいずれかに記載の積層フィルムに罫線処理を施し、この罫線処理が施された部分を折り曲げて成形する容器の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層フィルムは、紙や金属箔を有していないため廃棄が容易である。また、本発明の積層フィルムによれば、容器の蓋材や、自立性がある、医療、食品、化粧品分野等で用いることの可能な容器を製造することができる。
また、本発明の積層フィルムが無機蒸着層を有する場合、さらにバリア性を有する容器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の積層フィルムの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[積層フィルム]
図1に本発明の積層フィルムの一例を示す。
この例の積層フィルム10では、未発泡フィルム13の上に発泡フィルム12が積層され、さらに、発泡フィルム12の上に熱可塑性樹脂フィルム11が積層されている。
【0010】
(熱可塑性樹脂フィルム)
熱可塑性樹脂フィルム11は、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム及びポリアミドフィルムのいずれかよりなるものであることが好ましい。
ポリエステルフィルムとして具体的には、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
以上の各フィルムは、二軸延伸フィルムであっても、未延伸フィルムであってもよく、積層した際にデッドホールド性を得やすいことから、二軸延伸フィルムであることがより好ましい。
なお、以上の各熱可塑性樹脂フィルムの内、積層して積層フィルムとした際にデッドホールド性を得やすいことから、特に、ポリブチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることがより好ましく、特にポリブチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。
これらの熱可塑性樹脂フィルム11は、本発明の積層フィルム10にデッドホールド性を付与できる傾向にある。
【0011】
熱可塑性樹脂フィルム11の厚さは、5〜50μmであることが好ましく、8〜30μmであることがより好ましく、10〜25μmであることがさらに好ましい。
フィルムの厚さが上記範囲内であれば製造性に優れる。対して、熱可塑性樹脂フィルム11の厚さが5μm未満の場合、製造し難い傾向にあり、50μmを超えると硬くて使用し難く、コスト的にも高くなる傾向にある。
【0012】
また、熱可塑性樹脂フィルム11の片面には無機蒸着層が設けられていても良い。
ここで無機蒸着層が設けられる熱可塑性樹脂フィルム11の片面とは、発泡フィルム12側であっても、熱可塑性樹脂フィルム11の表面、即ち積層フィルム10の表面であってもよく、無機蒸着層が剥がれることによるバリア性の低下を防ぐ等の観点から発泡フィルム12側であることが好ましい。
無機蒸着層には、金属や無機酸化物が用いられる。具体的に、金属としては、アルミニウム、銅、マグネシウム、亜鉛及び亜鉛合金等が挙げられる。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化銅及び酸化亜鉛等が挙げられる。
この無機蒸着層は、積層フィルム10に、光や空気に対する遮断性を付与することができる。また、無機蒸着物は金属箔と比較して薄いことから可燃物として認められており、廃棄性に影響を与えない。
【0013】
(発泡フィルム)
発泡フィルム12は、低密度ポリエチレンを発泡して得られる低密度ポリエチレン発泡フィルム又はポリプロピレンを発泡して得られるポリプロピレン発泡フィルムであり、低密度ポリエチレンとは、エチレンを高圧で重合して得られるものである。このような低密度ポリエチレン又はポリプロピレンを一定の発泡倍率で発泡させて得たフィルムを、熱可塑性樹脂フィルム11及び未発泡フィルム13と共に用いると、積層フィルム10にデッドホールド性を付与できる傾向にある。さらに、発泡フィルム12は、積層フィルム10に断熱性を付与できる傾向にある。
なお、ポリプロピレン発泡フィルムは、低密度ポリエチレン発泡フィルムに比べてコシが強い。このため、例えば箱型の容器等、特に自立性が重視される容器には、発泡フィルム12をポリプロピレン発泡フィルムとした積層フィルムが好適である。
【0014】
発泡フィルム12の発泡倍率は、1.2〜2.5であり、1.2〜2.0であることがより好ましい。発泡倍率が1.2未満の場合、発泡フィルム12内部が殆ど発泡していないため、デッドホールド性を得にくく、かつ断熱性を得にくい傾向にある。一方、発泡倍率が2.5を超える場合、フィルムの凸凹が見られ、外観が悪くなる傾向にある。
ここで、発泡倍率とは、(発泡前の発泡フィルムの密度/発泡後の発泡フィルムの密度)の式で求められる値である。
なお、発泡フィルム12における発泡形態は、独立発泡でもよいし、連続発泡でもよい。
【0015】
発泡フィルム12の発泡セルの径は、20〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。発泡セルの径が20μm以上の場合、発泡フィルム12の内部が均一に発泡されやすい。一方、発泡セルの径が200μm以下の場合、発泡フィルム12の外観が優れる傾向にある。
【0016】
発泡フィルム12の厚さは、50〜500μmであり、さらに発泡フィルム12が低密度ポリエチレン発泡フィルムの場合には100〜200μmがより好ましく、ポリプロピレン発泡フィルムである場合には150〜300μmがより好ましい。発泡フィルム12の厚さが50μm未満の場合は、その内部を発泡させることが難しい。一方、厚さが500μmを超える場合は、その内部を均一に、上記発泡倍率で発泡させることが難しい。
【0017】
(未発泡フィルム)
未発泡フィルム13は、直鎖状低密度ポリエチレン又はポリプロピレンよりなるフィルムである。直鎖状低密度ポリエチレンとは、チーグラ触媒法、メタロセン触媒法等によって得られるものであり、ヒートシール性を付与するために、積層フィルム10に用いる。また、ポリプロピレンフィルムは、特に限定されず、例えば、無延伸ポリプロピレン(CPP)が好適に用いられる。
未発泡フィルム13の厚さは、10〜200μmであることが好ましく、15〜100μmであることがより好ましく、20〜80μmであることがさらに好ましい。
未発泡フィルム13の厚さが10μm以上であれば、ヒートシール強度が良い傾向にある。一方、200μm以下であればヒートシールし易い傾向にある。
【0018】
その他、積層フィルム10は、印刷を直接付与してもよく、また印刷が付与されたフィルムを最外層に設けてもよい。
【0019】
(積層フィルムの製造方法)
図1で示される積層フィルム10では、熱可塑性樹脂フィルム11が、発泡フィルム12に積層されている。積層方法としては、接着剤を用いたドライラミネート法又は溶融樹脂を用いた押出しラミネート法が挙げられる。特に、ドライラミネート法によって積層されたものの方がデッドホールド性に優れる傾向が見られ好ましい。
一方、未発泡フィルム13と発泡フィルム12とは、共押出によって積層されたものでも、ドライラミネート法によって積層されたものでもよく、共押出によって積層されたものの方がデッドホールド性に優れる傾向が見られる。
【0020】
積層フィルム10において、未発泡フィルム13と発泡フィルム12とが共押出によって積層される場合の製造方法の一例を以下に示す。
【0021】
直鎖状低密度ポリエチレン又はポリプロピレンと、低密度ポリエチレン又はポリプロピレン中に発泡剤が混合された発泡性混合物とを共押出すると共に、発泡性混合物を発泡させて、未発泡フィルム13と発泡フィルム12とを有する積層物を得る。その後、得られた積層物の発泡フィルム12に熱可塑性樹脂フィルム11をドライラミネートして積層フィルム10を得る。
【0022】
具体的には、まず、低密度ポリエチレン又はポリプロピレン中に発泡剤が混合された発泡性混合物を得る。
発泡性混合物に含まれる発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾカルボンアミド等のヒドラジン化合物、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシ−ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のヒドラジド化合物等の窒素ガスを発生する有機系化学発泡剤;炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸ガスを発生する無機系化学発泡剤;プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ヘキサン等の低級脂肪族炭化水素化合物;シクロブタン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;メタノール、エタノール等の低級脂肪族1価アルコール化合物、アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン化合物、クロロメチル、クロロエチル、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン等の低沸点ハロゲン化炭化水素化合物;アルゴンガス、ヘリウムガス、フロンガス、炭酸ガス(二酸化炭素ガス)、窒素ガス等のガスからなる物理発泡剤が挙げられる。なお、本発明におけるガスとは、気体状態のみならず、亜臨界状態、超臨界状態の流体も含む。
これらの発泡剤の中でも、毒性がなく食品用途等に適していることから、炭酸ガス、窒素ガスが好ましく、超臨界状態の炭酸ガス又は窒素ガスであることが特に好ましい。
【0023】
発泡剤が炭酸ガス又は窒素ガスである場合には、発泡性混合物の押出において押出発泡成形装置が使用される。ここで、押出発泡成形装置としては、押出機と、該押出機に接続され、熱融着性樹脂材料を押出機に供給する樹脂材料供給手段と、押出機に接続され、発泡剤を押出機に供給する発泡剤供給手段とを備える公知のものが使用される。
【0024】
発泡性混合物より形成される発泡フィルム12の発泡倍率を1.2〜2.5とする方法としては、例えば発泡性混合物の発泡剤の種類を適宜選択する方法、発泡剤の量を適宜選択する方法、共押出時の温度を適宜選択する方法等が挙げられる。
また、その発泡セルの径を20〜200μmにするには、例えば、成形温度やダイリップの調整でコントロールする方法等が挙げられる。
発泡性混合物における発泡剤の含有量は、発泡倍率と発泡セルの径を上記範囲とすることができれば特に限定しないが、化学発泡剤(有機系化学発泡剤、無機系化学発泡剤、脂環式炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物、低級脂肪族1価アルコール化合物及び低沸点ハロゲン化炭化水素化合物を含む)の場合、0.3〜0.8質量%であることが好ましく、0.4〜0.6質量%であることがより好ましい。物理発泡剤、例えば窒素ガスの場合0.03〜0.08質量%であることが好ましい。発泡性混合物における発泡剤の含有量が上記範囲内であれば、低密度ポリエチレン発泡フィルムの発泡倍率を1.2〜2.5とし易く、且つ発泡セルの径を20〜200μmとし易い傾向にある。
【0025】
この製造方法における共押出とは、複数の押出機により複数の樹脂材料を同時に押出して、ダイ内又はダイ外で複数の溶融樹脂層を積層することを意味する。具体的には、発泡性混合物と、直鎖状低密度ポリエチレン又はポリプロピレンとを同時に押出して積層させて、未発泡フィルム13と発泡フィルム12を有する積層物を得る。
この積層物は、サーキュラーダイを用いた多層インフレーション法にて成形されることが好ましい。多層インフレーション成形法を用いると、積層物を簡便に製造できる。さらには、未発泡フィルム13と発泡フィルム12との厚さを容易に上述の範囲にできる。
なお、積層物は、Tダイ法によって多層成形されたものであってもよい。
【0026】
次に、得られた積層物の発泡フィルム12側に熱可塑性樹脂フィルム11をドライラミネート法によって貼り合わせて、積層フィルム10を得ると良い。
ドライラミネート法には、ポリエステル系、ポリエーテル系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリアミド系、ポリ酢酸ビニル系又はゴム系等の樹脂材料のドライラミネートに使用する一般的な接着剤を用いることができる。
また、接着剤はリバースロール、グラビヤロール、エアーナイフコーター等を使用して塗布することができる。
なお、押出しラミネート法を用いて得られた積層物の発泡フィルム12側に熱可塑性樹脂フィルム11を貼り合わせる場合、押出しラミネート法に用いる溶融樹脂は、発泡フィルム12、熱可塑性樹脂フィルム11の材質を勘案して決定でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン系共重合体、アイオノマー等、一般的な樹脂を用いることができる。なかでも、発泡フィルム12が低密度ポリエチレン発泡フィルムである場合には、溶融樹脂にポリエチレンを用いることが好ましく、発泡フィルム12がポリプロピレン発泡フィルムである場合には、溶融樹脂にポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0027】
[容器]
容器は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、どのような形状の容器でもよい。例えば、本発明の積層フィルム10のデッドホールド性を利用した飲料用の箱型の容器形状等が挙げられる。
【0028】
(容器の製造方法)
容器の製造方法は、目的とする容器の形状に合わせ、従来公知の方法を用いることができる。以下に、箱型の容器の製造方法の一例を説明する。
まず、積層フィルム10の熱可塑性樹脂フィルム11側を外側にし、積層フィルム10の両端をヒートシールにより貼り合わせ、筒状のフィルム体とする。次いで、前記フィルム体の一方の開口端をヒートシールして底部とし、有底の袋体とする。そして、目的とする容器の形状に合わせて、この袋体に折り目をつけて、目的とする形状に成形する。
【0029】
なお、本発明の積層フィルム10は、デッドホールド性が高いため折り目を付けるだけでも自立性のある容器に成形されるが、成形に際し、罫線処理を施して、罫線処理が施された部分を折り目とすることが好ましい。
罫線処理は、折り目とする部分を積層フィルム10の厚みが減少するような線状又は点線状の圧縮部(罫線)を設ける処理である。施された罫線は、谷折線であっても山折線であってもよいが、谷折線、即ちシーラント側である未発泡フィルム13側に施すことが好ましい。
【0030】
罫線処理は、従来公知の方法で施すことができる。例えば、積層フィルム10に形成する罫線の幅に応じた押刃を用い、該押刃を温度100〜180℃に加熱しながら、圧力0.2〜1.0MPa程度で積層フィルム10に押し付けることで、罫線を形成できる。押刃を積層フィルム10に押し付ける時間は、求める罫線の深さ等を勘案して決定でき、例えば1〜20秒程度とされる。
罫線処理の程度は、容器の形状や、その容器に求める自立性等を勘案して決定でき、例えば、図1に示す積層フィルム10の厚さtが、罫線において10〜80%となるように罫線処理を施すことが好ましく、30〜70%とすることがより好ましい。10%未満であると積層フィルムの強度が低下するおそれがあり、80%超ではデッドホールド性のさらなる向上が図れないおそれがある。
このような罫線処理を施した部分(罫線)では、発泡フィルム12内の発泡セルが潰れた状態となって折り曲げやすくなると共に、潰れた発泡セルが復元しないので積層フィルム10のデッドホールド性がより向上する。
【0031】
以上のように、本発明の積層フィルムでは、熱可塑性樹脂フィルムと未発泡フィルムとの間に発泡フィルムが配置されている。
中でも特に、発泡フィルムと、未発泡フィルムとは、それぞれ単独ではデッドホールド性を示し難いフィルムである。
しかしながら、発泡フィルムと、未発泡フィルムとを重ねると、わずかにデッドホールド性が生じる傾向が見られ、さらにこれに熱可塑性樹脂フィルムを重ねることで、より高いデッドホールド性を有する積層フィルムを得ることが可能となった。
このように予めデッドホールド性を有する積層フィルムに、光や空気に対する遮断性を付与する場合、金属箔を用いる必要はなく、廃棄が可能な無機蒸着物を用いることができる。
以上のような本発明のデッドホールド性を有する積層フィルムによれば、自立性のある容器を製造することが可能となる。また、本発明の積層フィルムは樹脂フィルムで構成されており、紙や金属箔を有していないので、これによって製造された容器は廃棄性に優れている。加えて、本発明の積層フィルムには紙や金属箔による層を設ける必要がないため、積層フィルムの生産性の向上が図れる。
【0032】
さらに、本発明の積層フィルムは、罫線処理が施されることにより、デッドホールド性及び成形性のさらなる向上が図れる。
【0033】
なお、上述の実施形態では、熱可塑性樹脂フィルム11と発泡フィルム12と未発泡フィルム13とからなる三層構造であるが、本発明はこれに限定されず、例えば、熱可塑性樹脂フィルム11と発泡フィルム12との間や、発泡フィルム12と未発泡フィルム13との間に他のフィルムが配置されていてもよい。あるいは、積層フィルム10の熱可塑性樹脂フィルム11面又は未発泡フィルム13面上に、他のフィルムが配置されていてもよい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
以下の各実施例及び比較例では、下記の熱可塑性樹脂フィルムを用いた。
(熱可塑性樹脂フィルム:A)
A−1:ポリアミドフィルム(東洋紡(株)製N1100(15μm))
A−2:ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製E5100(12μm))
A−3:アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レフィルム加工(株)製1310(12μm))
A−4:ポリブチレンテレフタレートフィルム(林一二(株)製PBTフィルムソフトタイプ(30μm))
A−5:ポリブチレンテレフタレートフィルム(林一二(株)製PBTフィルムハードタイプ(30μm))
【0036】
[実施例1]
2種2層のダイリップを有するサーキュラーダイを備えた空冷式インフレーション成形機を使用して、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムと低密度ポリエチレン発泡フィルムの積層物を得た。
具体的には、まず、1層に直鎖状低密度ポリエチレン(メルトフローレート(MFR):1.0g/10分(190℃)、密度:0.925g/cm)を使用し、もう1層にアゾジカルボンアマイド0.5質量部及び低密度ポリエチレン(MFR:0.4g/10分(190℃)、密度:0.922g/cm)99.5質量部を含む発泡性混合物を使用して、ダイ温度185℃の条件下で、発泡倍率1.8倍である低密度ポリエチレン発泡フィルムの厚みが130μmに、もう一方の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムの厚みが40μmになるように設定し、2種2層の共押出フィルムを製造し、積層物とした。
次に、この積層物の低密度ポリエチレン発泡フィルム面と熱可塑性樹脂フィルムA−1とを、脂肪族エステル系のドライラミネート接着剤を使用して、ドライラミネート法により貼り合わせて積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムを50mm(幅方向)×100mm(フィルム流れ方向)にカットし、デッドホールド性を評価した。デッドホールド性評価に当たって測定した折り曲げ角度を表1に示す。
【0037】
[実施例2〜5]
実施例1で得られた積層物の低密度ポリエチレン発泡フィルム面と、表1に示される各熱可塑性樹脂フィルム(A−2)〜(A−5)とを、脂肪族エステル系のドライラミネート接着剤を使用して、ドライラミネート法により貼り合わせて各積層フィルムを得た。得られた積層フィルムを50mm(幅方向)×100mm(フィルム流れ方向)にカットし、デッドホールド性を評価した。デッドホールド性評価に当たって測定した折り曲げ角度を表1に示す。
なお、実施例3では、金属蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムの金属蒸着層が低密度ポリエチレン発泡フィルムと接するようにしてドライラミネートを行った。
【0038】
[実施例6]
実施例2と同様にして積層フィルムを得、この積層フィルムを50mm(幅方向)×100mm(フィルム流れ方向)にカットした。カットした積層フィルムのフィルム流れ方向の端部からフィルム流れ方向に沿って20mmの位置に、幅方向の罫線を形成した後(罫線処理)、デッドホールド性を評価した。デッドホールド性評価に当たって測定した折り曲げ角度を表1に示す。なお、罫線処理は、下記条件とした。
【0039】
<罫線処理条件>
・罫線の位置:LLDPE側
・温度:115℃
・圧力:0.4MPa
・処理時間:15秒
・罫線の幅:1.0mm
・罫線部分の積層フィルム厚さ:81μm
【0040】
[実施例7]
アゾジカルボンアマイド0.5質量部及びポリプロピレン(メルトフローレート(MFR):2.0g/10分(230℃)、密度:0.90g/cm)99.5質量部を含む発泡性混合物をインフレーションフィルム成形法により成形し、得られたチューブ状のフィルムを切り開いてシート状にし、発泡倍率1.8倍であるポリプロピレン発泡フィルム(厚み:220μm)を得た。このポリプロピレン発泡フィルムの一方の面に、脂肪族エステル系のドライラミネート接着剤を使用して、ドライラミネート法によりCPP(厚み:50μm)を貼り合わせて積層体を得た。
得られた積層体のポリプロピレン発泡フィルム面に脂肪族エステル系のドライラミネート接着剤を使用してドライラミネート法によりA−2を貼り合わせ、積層フィルムとした。
この積層フィルムを50mm(幅方向)×100mm(フィルム流れ方向)にカットした。カットした積層フィルムのフィルム流れ方向の端部からフィルム流れ方向に沿って20mmの位置に、幅方向の罫線を形成した後(罫線処理)、デッドホールド性を評価した。罫線処理は、下記条件とした。デッドホールド性評価に当たって測定した折り曲げ角度を表1に示す。
【0041】
<罫線処理条件>
・罫線の位置:CPP側
・温度:130℃
・圧力:0.4MPa
・処理時間:15秒
・罫線の幅:1.0mm
・罫線部分の積層フィルム厚さ:169μm
【0042】
[比較例1]
実施例1で得られた積層物を50mm(幅方向)×100mm(フィルム流れ方向)にカットし、デッドホールド性を評価した。
【0043】
[比較例2]
サーキュラーダイを備えた空冷式インフレーション成形機を使用し、アゾジカルボンアマイド0.5質量部及び低密度ポリエチレン(MFR:0.4g/10分(190℃)、密度:0.922g/cm)99.5質量部を含む発泡性混合物より、ダイ温度185℃の条件下で、発泡倍率1.8倍で、厚みが130μmの低密度ポリエチレン発泡フィルムを得た。この低密度ポリエチレン発泡フィルムを50mm(幅方向)×100mm(フィルム流れ方向)にカットし、デッドホールド性を評価した。デッドホールド性評価に当たって測定した折り曲げ角度を表1に示す。
【0044】
[比較例3]
実施例7と同様にしてポリプロピレン発泡フィルムを得、得られたポリプロピレン発泡フィルムを50mm(幅方向)×100mm(フィルム流れ方向)にカットし、デッドホールド性を評価した。デッドホールド性評価に当たって測定した折り曲げ角度を表1に示す。なお、比較例3のフィルムには、罫線処理を施さなかった。
【0045】
[デッドホールド性の評価]
50mm(幅方向)×100mm(フィルム流れ方向)にカットした各例の積層フィルムについて、フィルム流れ方向の端部からフィルム流れ方向に沿って20mmの位置で、フィルム流れ方向に対して直角方向に軽く折り曲げた。実施例1〜5、比較例1については、LLDPE側に折り曲げ、実施例6〜7については、罫線に従って谷折とした。
さらに、折り曲げたフィルムを2枚のアクリル板(それぞれ、245×180mm、300g)に挟み、さらに一方のアクリル板の上に重り(2kg)を乗せて1分間放置した。
その後、重りとアクリル板を取り除き、30秒後の折り曲げ角度を測定し、120°以下をデッドホールド性合格とした。なお、以上の操作は室温にて行った。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示す通り、熱可塑性樹脂フィルムと未発泡フィルムとの間に発泡フィルムを配置した実施例1〜7は、いずれも折り曲げ角度が120°以下であり、高いデッドホールド性を示した。特に罫線処理を施した実施例6は、低密度ポリエチレン発泡フィルムを用い、罫線処理を施さなかった実施例1〜5と比較してより高いデッドホールド性を示した。
一方、熱可塑性樹脂フィルムを備えていない比較例1〜3は、いずれもデッドホールド性が低いものであった。
【0048】
以上の結果から、本発明の積層フィルムは、紙や金属箔を積層しなくても高いデッドホールド性を示し、さらに罫線処理が施されることでデッドホールド性を向上できることが判った。このため、医療、食品、化粧品分野等の各分野の容器、特に自立性角底容器等に本発明の積層フィルムを好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 積層フィルム
11 熱可塑性樹脂フィルム
12 発泡フィルム
13 未発泡フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムと直鎖状低密度ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムからなる未発泡フィルムとの間に、低密度ポリエチレン発泡フィルム又はポリプロピレン発泡フィルムからなる発泡フィルムが配置され、
前記熱可塑性樹脂フィルムと前記発泡フィルムとがドライラミネート法又は押出しラミネート法で貼り合わせられており、
前記発泡フィルムは、厚さが50〜500μmで、発泡倍率が1.2〜2.5倍のフィルムである積層フィルム。
【請求項2】
前記未発泡フィルムと前記発泡フィルムとは、共押出法により貼り合わせられている、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂フィルムの片面には無機蒸着層が設けられている、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム及びポリアミドフィルムのいずれかである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の積層フィルムを用いた容器。
【請求項6】
前記積層フィルムには、罫線処理が施されている請求項5に記載の容器。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載の積層フィルムに罫線処理を施し、この罫線処理が施された部分を折り曲げて成形する容器の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−105396(P2010−105396A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229743(P2009−229743)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(594050821)日生化学株式会社 (16)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】