説明

積層フィルム体の製造装置

【課題】積層フィルム体の面方向に対して、均一に押圧することができ、接着強度に優れる積層フィルム体を製造することができる積層フィルム体の製造装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、複数のフィルム50を挟持可能な対向する一対の無端ベルト15a,15bと、無端ベルト15a,15bそれぞれを介して複数のフィルム50を加熱且つ押圧する一対の加熱加圧手段16a,16bと、該加熱加圧手段16a,16bの隣に配置され、無端ベルト15a,15bそれぞれを介して複数のフィルム50を冷却する一対の冷却手段17a,17bと、を備え、加熱加圧手段16a,16bが無端ベルト15a,15bを加熱媒体Hにより直接加圧するものであることを特徴とする積層フィルム体の製造装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層フィルム体の製造装置は数多く報告されている。
例えば、図5は、従来の積層フィルム体の製造装置の一例を示す概略図である。
図5に示すように、従来の積層フィルム体の製造装置60は、2つのロールに巻かれたフィルムそれぞれを一対のプレスロール61で押圧する。
このとき、製造装置60においては、プレスロール61を加熱してフィルム同士を溶着させる。
【0003】
ところが、上記製造装置60は、プレスロール61でフィルム同士を押圧するため、押圧する面積が極めて小さい。このことから、積層フィルム体の面に対して均一に押圧す
ことが困難となる。
また、押圧の時間がフィルムの部位単位において瞬時であるので、十分な接着を行うことができない。一方、接着を十分に行うには一定の押圧時間が必要であるが、プレスロール61では、不可能に近い。
したがって、上記製造装置60において、得られる積層フィルム体は、面全体において接着強度が均一とならないばかりではなく接着強度も不十分になり易い傾向にある。
【0004】
これに対し、押圧時間を確保するため、フィルム同士を押圧する面積を広くする、いわゆるダブルベルトプレスが開発されている。
このようなダブルベルトプレスとしては、2枚のプレスバンドを具備した連続作動プレス機が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
かかる連続作動プレス機は、ウエブ材料(フィルム)に圧力を加えるための圧力板を備えており、流体圧又は機械により、圧力板を介してウエブ材料が押圧される。
【特許文献1】特開昭60−79910号公報
【特許文献2】特開昭60−94305号公報
【特許文献3】特開昭60−172502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1〜3のダブルベルトプレスは、プレスバンドを介して加圧装置により積層フィルム体を押圧しているため、積層フィルム体の面方向に対する押圧力が必ずしも均一とはならない。
このため、接着強度のバラつきは改善されるものの十分とはいえない。
特に、薄型の積層フィルム体を製造する場合は、この接着強度のバラつきが顕著に認められる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、積層フィルム体の面方向に対して、均一に押圧することができ、接着強度に優れる積層フィルム体を製造することができる積層フィルム体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、ダブルベルトプレスのシステムを採用し、無端ベルトを加熱媒体により直接加圧する方式とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)複数のフィルムを挟持可能な対向する一対の無端ベルトと、無端ベルトそれぞれを介して複数のフィルムを加熱且つ押圧する一対の加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の隣に配置され、無端ベルトそれぞれを介して複数のフィルムを冷却する一対の冷却手段と、を備え、加熱加圧手段が無端ベルトを加熱媒体により直接加圧されるものであることを特徴とする積層フィルム体の製造装置に存する。
【0009】
本発明は、(2)加熱加圧手段が、無端ベルト側に開口した区画容器を有し、該区画容器と無端ベルトとにより密閉空間が形成され、該密閉空間内の加熱媒体により無端ベルトが直接加熱加圧されるものであることを特徴とする上記(1)記載の積層フィルム体の製造装置に存する。
【0010】
本発明は、(3)冷却手段が、無端ベルト側に開口した区画容器を有し、該区画容器と無端ベルトとにより密閉空間が形成され、該密閉空間内の冷却媒体により無端ベルトが直接冷却されるものであることを特徴とする上記(1)記載の積層フィルム体の製造装置に存する。
【0011】
本発明は、(4)加熱媒体が加熱エアであることを特徴とする上記(1)記載の積層フィルム体の製造装置に存する。
【0012】
本発明は、(5)複数のフィルムを無端ベルト同士の間に挟持させたまま、複数のフィルム及び一対の無端ベルトを同じ速度で搬送させることを特徴とする上記(1)記載の積層フィルム体の製造装置に存する。
【0013】
本発明は、(6)区画容器と無端ベルトとの間に、動的封止具が設けられていることを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の積層フィルム体の製造装置に存する。
【0014】
本発明は、(7)無端ベルトがステンレスであることを特徴とする上記(1)記載の積層フィルム体の製造装置に存する。
【0015】
本発明は、(8)無端ベルトの厚みが0.5〜1.0mmであることを特徴とする上記(1)記載の積層フィルム体の製造装置に存する。
【0016】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)〜(8)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層フィルム体の製造装置においては、複数のフィルムが一対の無端ベルトの間に挟持された状態で、上記無端ベルトを介して加熱加圧手段により押圧される。
このとき、複数のフィルムは、所定の面積において加熱媒体により直接加圧された無端ベルトにより押圧されることになるので、複数のフィルムの面方向に対して均一に接着される。
また、押圧される複数のフィルムは、無端ベルト同士に挟持された状態を保ちつつ加熱加圧手段及び冷却手段が施されるので、得られる積層フィルム体は接着強度が優れるものとなる。
【0018】
したがって、上記積層フィルム体の製造装置によれば、複数のフィルムの面方向に対して、均一に押圧することができ、接着強度が優れる積層フィルム体を製造することができる。
【0019】
本発明の積層フィルム体の製造装置は、加熱加圧手段が、無端ベルト側に開口した区画容器を有し、該区画容器と無端ベルトとにより密閉空間が形成され、該密閉空間内の加熱媒体により無端ベルトが直接加熱加圧されるものであると、装置をコンパクトにすることができる。
また、上記加熱加圧手段が所定位置で固定されるので、搬送される無端ベルトは所定位置で加熱加圧手段が施されることになる。
よって、この無端ベルトに複数のフィルムが挟持され、搬送されることにより、積層フィルム体を連続して加工することが可能となる。
【0020】
本発明の積層フィルム体の製造装置は、冷却手段が、無端ベルト側に開口した区画容器を有し、該区画容器と無端ベルトとにより密閉空間が形成され、該密閉空間内の冷却媒体により無端ベルトが直接冷却されるものであると、上記同様装置をコンパクトにすることができる。
また、上記冷却手段が所定位置で固定されるので、搬送される無端ベルトは所定位置で冷却手段が施されることになる。
よって、この無端ベルトに複数のフィルムが挟持され、搬送されることにより、積層フィルム体を連続して加工することが可能となる。
【0021】
本発明の積層フィルム体の製造装置は、加熱媒体が加熱エアであると、無端ベルトが均一且つ確実に加熱押圧される。
したがって、この場合の無端ベルトは、より均一且つ確実に複数のフィルムを加熱押圧することができる。
【0022】
本発明の積層フィルム体の製造装置は、複数のフィルムを無端ベルト同士の間に挟持させたまま、複数のフィルム及び一対の無端ベルトを同じ速度で搬送させると、積層フィルム体を傷つけることなく、確実に搬送させることができる。
【0023】
本発明の積層フィルム体の製造装置は、区画容器と無端ベルトとの間に、動的封止具が設けられていると、無端ベルトを搬送させながら区画容器内の圧力を保持させることができる。
【0024】
本発明の積層フィルム体の製造装置は、無端ベルトがステンレスであると、熱伝導性に優れることから、加熱や冷却を効率的に積層フィルム体に伝導させることができる。
したがって、必要なエネルギー量を低減できる。
【0025】
本発明の積層フィルム体の製造装置は、無端ベルトの厚みが0.5〜1.0mmであると、板厚が十分に薄いため、積層フィルム体をより一層均一に押圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に準拠したものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0027】
図1は、本実施形態に係る積層フィルム体の製造装置の一例を示した概略図である。
図1に示すように、本実施形態に係る積層フィルム体の製造装置10(以下単に「製造装置」ともいう。)は、複数のフィルム50を挟持可能な対向する一対の無端ベルト15a,15bと、無端ベルト15a,15bそれぞれを介して複数のフィルム50を加熱且つ押圧する一対の加熱加圧手段16a,16bと、該加熱加圧手段16a,16bの隣に配置され、無端ベルト15a,15bそれぞれを介して複数のフィルム50を冷却する一対の冷却手段17a,17bと、を備える。
なお、上記一対の無端ベルト15a,15bは、無端ベルト15a,15bそれぞれの面同士で複数のフィルム50を挟持可能となっている。
【0028】
すなわち、上記製造装置10は、無端ベルト15aと、無端ベルト15aを介して複数のフィルム50を加熱且つ押圧する加熱加圧手段16aと、該加熱加圧手段16aの隣に配置され、無端ベルト15aを介して複数のフィルム50を冷却する冷却手段17aと、を備える上段部、及び、無端ベルト15bと、無端ベルト15bを介して複数のフィルム50を加熱且つ押圧する加熱加圧手段16bと、該加熱加圧手段16bの隣に配置され、無端ベルト15bを介して複数のフィルム50を冷却する冷却手段17bと、を備える下段部、を有する。
【0029】
上記製造装置10は、ガイドロール11aが上段部の両端に設けられており、これらに無端ベルト15aが案内されるように配置されている。
すなわち、無端ベルト15aは、ループ状となっており、ガイドロール11aの回動に基づいて循環されるようになっている。
【0030】
また、上記製造装置10は、ガイドロール11bが下段部の両端に設けられており、これらに無端ベルト15bが案内されるように配置されている。
すなわち、無端ベルト15bは、ループ状となっており、ガイドロール11bの回動に基づいて循環されるようになっている。
【0031】
上段部及び下段部はそれぞれ独立に一体で昇降可能となっている。すなわち、上段部及び下段部の間に複数のフィルム50を配し、上段部及び下段部を近接させることにより、複数のフィルム50は無端ベルト15a及び15b間に挟持される。
【0032】
このとき、製造装置10の両端に設けられたガイドロール11a及び11b、加熱加圧手段16a及び16b、冷却手段17a及び17bはそれぞれ無端ベルト15a及び15bを介して複数のフィルム50を挟持している。
【0033】
図2は、本実施形態に係る積層フィルム体の製造装置における加熱加圧手段を説明するための概略断面図である。
図2に示すように、上段部の加熱加圧手段16aは、無端ベルト15a側に開口した区画容器21aを有し、該区画容器21aと無端ベルト15aとにより密閉空間が形成され、該密閉空間内の加熱媒体Hにより無端ベルト15aが直接加熱加圧される。
【0034】
ここで、本実施形態に係る製造装置10において、上記加熱媒体Hとしては、加熱エアが用いられる。加熱媒体Hが加熱エアであると、無端ベルト15aを均一且つ確実に加熱押圧することができる。
【0035】
区画容器21aと、無端ベルト15aとの間には、区画容器21a内の圧力を維持すると共に、無端ベルト15aの搬送を妨げないようにするため、動的封止具22aが設けられている。
この動的封止具22aは耐熱性を有する弾性体で構成され、内部の加熱媒体Hを外部に逃がさないように無端ベルト15aに常時一定の圧力で接触しているものである。
かかる動的封止具22aが設けられていると、区画容器21aと無端ベルト15aとの間に、無端ベルト15aを搬送させながら区画容器21a内の圧力を保持させることができる。
【0036】
また、区画容器21aには、区画容器21a内に加熱エアを導入するための導入口23aが複数設けられている。
なお、かかる導入口23aの数は特に限定されない。
【0037】
上記製造装置10においては、動的封止具22aが無端ベルト15aに接しているものの、無端ベルト15aが搬送される際に、区画容器21a内の加熱エアが僅かに漏れることになる。
この加熱エアが漏れることにより区画容器21a内の圧力が低下するのを抑制するために、導入口23aから加熱エアが区画容器21a内に導入されることになる。
このことにより、区画容器21a内の圧力は均一且つ一定に保たれる。
【0038】
一方、下段部の加熱加圧手段16bも上述した上段部の加熱加圧手段16aと同様の構造となっている。
【0039】
図3は、本実施形態に係る積層フィルム体の製造装置における冷却手段を説明するための概略断面図である。
図3に示すように、冷却手段17aは、加熱加圧手段16aの隣に配置されている。かかる冷却手段17aは、加熱媒体Hの代わりに冷却媒体Cを用いること以外は、上述した加熱加圧手段16aと同様である。
【0040】
すなわち、冷却手段17aは、無端ベルト15a側に開口した区画容器31aを有し、該区画容器31aと無端ベルト15aとにより密閉空間が形成され、該密閉空間内の冷却媒体Cにより無端ベルト15aが直接冷却される。
このとき、無端ベルトを冷却すると同時に加圧することが好ましい。
この場合、複数のフィルム50をより確実に接着させることができる。
【0041】
ここで、本実施形態に係る積層フィルム体の製造装置10において、上記冷却媒体Cとしては、冷却エアが用いられる。
冷却媒体Cが冷却エアであると、無端ベルト15aを均一且つ確実に冷却押圧することができる。
【0042】
区画容器31aと、無端ベルト15aとの間には、区画容器31a内の圧力を維持すると共に、無端ベルト15aの搬送を妨げないようにするため、動的封止具32aが取付けられている。
この動的封止具32aは耐熱性を有する弾性体で構成され、内部の冷却媒体Cを外部に逃がさないように無端ベルト15aに常時一定の圧力で接触しているものである。
かかる動的封止具22aが設けられていると、区画容器21aと無端ベルト15aとの間に、無端ベルト15aを搬送させながら区画容器21a内の圧力を保持させることができる。
【0043】
また、区画容器31aには、区画容器31a内に冷却エアを導入するための導入口33aが複数設けられている。
なお、かかる導入口33aの数は特に限定されない。
【0044】
上記製造装置10においては、動的封止具32aが無端ベルト15aに接しているものの、無端ベルト15aが搬送される際に、区画容器31a内の冷却エアが僅かに漏れることになる。
この冷却エアが漏れることにより区画容器31a内の圧力が低下するのを抑制するために、導入口33aから冷却エアが区画容器31a内に導入されることになる。
このことにより、区画容器31a内の圧力は均一且つ一定に保たれる。
【0045】
一方、下段部の冷却手段17bも上述した上段部の冷却手段17aと同様の構造となっている。
【0046】
そして、上段部と下段部との間には、第1フィルム1と、接着層3を介して積層された第2フィルム2が挟持される。
【0047】
このように、本実施形態に係る製造装置10においては、加熱加圧手段16a,16b及び冷却手段17a,17bが、区画容器21a,21b,31a,31bを有するので、装置をコンパクトにすることができる。
【0048】
また、上記加熱加圧手段16a,16b及び冷却手段17a,17bが所定位置で固定されているので、搬送される無端ベルト15a,15bには所定位置で加熱加圧手段16a,16b及び冷却手段17a,17bを施すことができる。
このことにより、積層フィルム体の連続加工が可能となる。
【0049】
さらに、押圧される複数のフィルム50は、無端ベルト15a,15bの間に挟持された状態を保ちつつ加熱加圧手段16a,16b及び冷却手段17a,17bが施されるので、得られる積層フィルム体は接着強度が優れるものとなる。
【0050】
このとき、上記製造装置10においては、複数のフィルム50を押圧する際には無端ベルト15a,15bの間を脱気することが好ましい。
換言すると、減圧雰囲気下において、複数のフィルム50を押圧することが好ましい。
この場合、気泡がより確実に除去されるため、より接着強度に優れる積層フィルム体が得られる。
【0051】
これらのことにより、上記製造装置10によれば、複数のフィルム50の面方向に対して、均一に押圧することができ、接着強度が優れる積層フィルム体を製造することができる。
【0052】
次に、本実施形態に係る積層フィルム体の製造装置10を用いた積層フィルム体10の製造の流れについて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る積層フィルム体の製造装置10の前方には、ロール81に巻かれた第1フィルム1と、ロール83に巻かれた第2フィルム2とが配置される。
なお、第1フィルム1又は第2フィルム2の貼り合せ面側には、所定の接着剤が付与されている。
【0053】
そして、第1フィルム1及び第2フィルム2を製造装置10の上段部と下段部との間に通し、製造装置10の上段部と下段部とを近接させることにより、第1フィルム1と第2フィルム2とを無端ベルト15a及び15bに挟持させる。
【0054】
次いで、第1フィルム1と第2フィルム2とを無端ベルト15a及び15bの間に挟持させたまま、これらを同じ速度で搬送させる。
そうすると、積層フィルム体を傷つけることなく、確実に搬送させることができる。
【0055】
このとき、無端ベルト15a及び15bが、加熱加圧手段16a,16bに到達すると、加熱加圧手段16a,16bにより、無端ベルト15a,15bが直接加熱加圧され、冷却手段17a,17bに到達すると、冷却手段17a,17bにより、無端ベルト15a,15bが直接冷却される。
これにより、第1フィルム1及び第2フィルム2は確実且つ均一に接着剤を介して接着される。
【0056】
そして、本実施形態に係る積層フィルム体の製造装置10を用いて製造された積層フィルム体は、製造装置10の後方に配置されたロール80により巻き取られる。
【0057】
一方、第1フィルム1及び第2フィルム2を挟持した無端ベルト15a,15bは、ガイドロール11a,11bによりループ状に案内され、循環される。
これにより、無端ベルト15a,15bは連続して第1フィルム1及び第2フィルム2を挟持することが可能となる。
したがって、この場合、効率よく積層フィルム体を製造することができる。
【0058】
本実施形態に係る積層フィルム体の製造装置10において、上述した無端ベルト15a,15bの材質としては、鉄、銅、銀、ステンレス等を用いることができる。
これらの中でも、無端ベルト15a,15bがステンレスであることが好ましい。
この場合、熱伝導性に優れることから、加熱や冷却を効率的に積層フィルム体に伝導させることができるので、必要なエネルギー量を低減できる。
【0059】
上記無端ベルト15a,15bの厚みは0.5〜1.0mmであることが好ましい。
この場合、板厚が十分に薄いため、加熱加圧手段16a,16bにおける区画容器21a,21b内の加熱エアや冷却手段17a,17bにおける区画容器31a,31b内の冷却エアによる加熱加圧又は冷却を、無端ベルトを介して十分に複数のフィルム50に伝えることができる。
また、複数のフィルム50をより一層均一に押圧することが可能となる。
【0060】
図4は、本発明の積層フィルム体の製造装置を用いて得られる積層フィルム体の一例を示す断面図である。
図4に示すように、積層フィルム体としては、金属箔張積層板が挙げられる。
具体的には、上記製造装置10を用い、第1フィルム1を金属箔とし、第2フィルム2を基材フィルムとし、接着剤で接着させることにより、金属箔張積層板が得られる。
すなわち、得られる積層フィルム体は、金属箔、接着剤からなる接着層、基材フィルムがこの順序で積層された構造となる。
【0061】
なお、上記製造装置10を用いて金属箔張積層板を製造する場合、加熱加圧手段16a,16bにて加熱する温度は、100〜200℃であることが好ましい。
また、このときの圧力は、1.5〜7.0MPaであることが好ましい。
また、冷却手段17a,17bにて冷却する温度は、0〜20℃であることが好ましい。
また、このときの圧力は、1.5〜7.0MPaであることが好ましい。
【0062】
本実施形態に係る積層フィルム体の製造装置を用いると、極めて薄膜の金属箔張積層板を製造することが可能となる。
具体的には、上記接着層の厚みが6μm以下であっても、十分に接着強度に優れる金属箔張積層板を製造することができる。
【0063】
こうして得られる金属箔張積層板は、小型化、高密度化された電子機器に好適に用いられる。
具体的には、金属箔張積層板は、カメラ、パソコン、液晶ディスプレイ等の電子機器類に用いられ、特に小型化、高密度化された電子機器に好適に用いられる。
また、この金属箔張積層板は、レジスト付与、露光、エッチング等を施して、導体パターンを形成することにより、プリント配線板としても用いられる。
かかるプリント配線板は、薄型でありながら十分な耐折性、屈曲性を有する。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0065】
例えば、上述した実施形態においては、無端ベルト15a,15bがループ状になっているが、ループ状でなくてもよい。
【0066】
上述した実施形態においては、加熱加圧手段16a,16b及び冷却手段17a,17b、が区画容器21a,21b,31a,31bを有しており、該区画容器21a,21b,31a,31b内の加熱媒体H、冷却媒体Cにより無端ベルト15a,15bを加熱、冷却しているが、区画容器を有せず、単に無端ベルト15a,15bを加熱媒体H、冷却媒体Cにより加熱、冷却してもよい。
【0067】
上述した実施形態においては、加熱媒体として、加熱エアを用いているが,加熱流体であってもよい。
また、冷却媒体として、冷却エアを用いているが、冷却流体であってもよい。
【0068】
また、上述した積層フィルム体は、金属箔張積層板以外の非金属材張積層板等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本実施形態に係る積層フィルム体の製造装置の一例を示した概略図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る積層フィルム体の製造装置における加熱加圧手段を説明するための概略断面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る積層フィルム体の製造装置における冷却手段を説明するための概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の積層フィルム体の製造装置を用いて得られる積層フィルム体の一例を示す断面図である。
【図5】図5は、従来の積層フィルム体の製造装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・第1フィルム
2・・・第2フィルム
3・・・接着層
10,60・・・積層フィルム体の製造装置
11a,11b・・・ガイドロール
15a,15b・・・無端ベルト
16a,16b・・・加熱加圧手段
17a,17b・・・冷却手段
21a,21b,31a,31b・・・区画容器
22a,22b,32a,32b・・・動的封止具
23a,23b,33a,33b・・・導入口
50・・・複数のフィルム
61・・・プレスロール
80,81,83・・・ロール
C・・・冷却媒体、H・・・加熱媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィルムを挟持可能な対向する一対の無端ベルトと、
前記無端ベルトそれぞれを介して前記複数のフィルムを加熱且つ押圧する一対の加熱加圧手段と、
該加熱加圧手段の隣に配置され、前記無端ベルトそれぞれを介して前記複数のフィルムを冷却する一対の冷却手段と、
を備え、
前記加熱加圧手段が前記無端ベルトを加熱媒体により直接加圧されるものであることを特徴とする積層フィルム体の製造装置。
【請求項2】
前記加熱加圧手段が、前記無端ベルト側に開口した区画容器を有し、該区画容器と前記無端ベルトとにより密閉空間が形成され、該密閉空間内の前記加熱媒体により前記無端ベルトが直接加熱加圧されるものであることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム体の製造装置。
【請求項3】
前記冷却手段が、前記無端ベルト側に開口した区画容器を有し、該区画容器と前記無端ベルトとにより密閉空間が形成され、該密閉空間内の冷却媒体により前記無端ベルトが直接冷却されるものであることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム体の製造装置。
【請求項4】
前記加熱媒体が加熱エアであることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム体の製造装置。
【請求項5】
前記複数のフィルムを前記無端ベルト同士の間に挟持させたまま、前記複数のフィルム及び前記一対の無端ベルトを同じ速度で搬送させることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム体の製造装置。
【請求項6】
前記区画容器と前記無端ベルトとの間に、動的封止具が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の積層フィルム体の製造装置。
【請求項7】
前記無端ベルトがステンレスであることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム体の製造装置。
【請求項8】
前記無端ベルトの厚みが0.5〜1.0mmであることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム体の製造装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−37062(P2008−37062A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217860(P2006−217860)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(501382339)株式会社KITANO (8)
【Fターム(参考)】