説明

積層体の製造方法

【課題】本発明は、多孔質基材の孔部を金属酸化物で効率良く埋めることができ、表面平滑性および緻密性等に優れた金属酸化物膜を形成することができる積層体の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した多孔質基材に噴射することにより、上記多孔質基材上に金属酸化物膜を形成する積層体の製造方法であって、上記金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向を、上記多孔質基材側に向け、かつ、上記多孔質基材表面の法線方向に対して傾けることを特徴とする積層体の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質基材の孔部を金属酸化物で効率良く埋めることができ、表面平滑性および緻密性等に優れた金属酸化物膜を形成することができる積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属酸化物膜は様々な優れた物性を示すことが知られており、その特性を活かして、透明導電膜、光学薄膜、燃料電池用電解質等、幅広い分野において使用されている。このような金属酸化物膜の製造方法としては、例えば、ゾルゲル法、スパッタリング法、CVD法、PVD法、印刷法、レーザーアブレーション法等が知られている(例えば特許文献1〜3)。
【0003】
一方、このような金属酸化物膜を得る別の方法として、スプレー熱分解法が提案されている。スプレー熱分解法は、金属酸化物膜を構成する金属源を含有した溶液を、高温の基材に噴霧することにより金属酸化物膜を得る方法であり、通常500℃程度に加熱した基材を使用することから、瞬時に溶媒が蒸発し、金属源が熱分解反応を起こすため、短時間かつ簡略化された工程で金属酸化物膜を得ることができるという利点を有する。
【0004】
このようなスプレー熱分解法の研究として、例えば、特許文献4においては、TiO前駆体を含む溶液に過酸化水素又はアルミニウムアセチルアセトナートを添加して原料溶液を調製し、500℃程度に高温保持された基材に上記原料溶液を間歇噴霧することによりTiO前駆体をTiOに熱分解し、基材上に多孔質のTiO薄膜を得る方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−348665号公報
【特許文献2】特開平4−361239号公報
【特許文献3】特開2005−213105号公報
【特許文献4】特開2002−145615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、スプレー熱分解法においては、基材に対して金属酸化物膜を垂直に噴射する方法が一般的であった。しかしながら、このような方法では、多孔質基材を用いた場合に、多孔質基材の孔部を金属酸化物で埋めることが困難な場合があり、表面平滑性および緻密性等に優れた金属酸化物膜を得ることができない場合があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、多孔質基材の孔部を金属酸化物で効率良く埋めることができ、表面平滑性および緻密性等に優れた金属酸化物膜を形成することができる積層体の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明においては、金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した多孔質基材に噴射することにより、上記多孔質基材上に金属酸化物膜を形成する積層体の製造方法であって、上記金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向を、上記多孔質基材側に向け、かつ、上記多孔質基材表面の法線方向に対して傾けることを特徴とする積層体の製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向を所定の角度に傾けることにより、多孔質基材の孔部を金属酸化物で効率良く埋めることができ、表面平滑性および緻密性等に優れた金属酸化物膜を形成することができる。
【0010】
上記発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向を、上記多孔質基材表面の法線方向に対して、10°以上傾けることが好ましい。さらに効率良く、多孔質基材の孔部を金属酸化物で埋めることができるからである。
【0011】
上記発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液を、扇状に噴射することが好ましい。さらに効率良く、多孔質基材の孔部を金属酸化物で埋めることができるからである。
【0012】
また、本発明においては、多孔質基材を支持する支持手段と、上記多孔質基材を加熱する加熱手段と、上記多孔質基材表面の法線方向に対して、所定の角度で金属酸化物膜形成用溶液を噴射する噴射手段と、を有することを特徴とする積層体の製造装置を提供する。
【0013】
本発明によれば、所定の角度で金属酸化物膜形成用溶液を噴射することにより、多孔質基材の孔部を金属酸化物で効率良く埋めることができ、表面平滑性および緻密性等に優れた金属酸化物膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、多孔質基材の孔部を金属酸化物で効率良く埋めることができ、表面平滑性および緻密性等に優れた金属酸化物膜を形成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の積層体の製造方法、および積層体の製造装置について、詳細に説明する。
【0016】
A.積層体の製造方法
まず、本発明の積層体の製造方法について説明する。本発明の積層体の製造方法は、金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した多孔質基材に噴射することにより、上記多孔質基材上に金属酸化物膜を形成する積層体の製造方法であって、上記金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向を、上記多孔質基材側に向け、かつ、上記多孔質基材表面の法線方向に対して傾けることを特徴とするものである。
【0017】
本発明によれば、金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向を所定の角度に傾けることにより、多孔質基材の孔部を金属酸化物で効率良く埋めることができ、表面平滑性および緻密性等に優れた金属酸化物膜を形成することができる。特に本発明によれば、多孔質基材上に、緻密な金属酸化物膜を形成することができる。そのため、例えば、色素増感型太陽電池の透明電極として有用なITO膜を形成した場合には、その透明電極層の薄膜化による全光線透過率の向上や表面平滑化による基材との密着性向上を図ることができる。また、固体酸化物型燃料電池の電解質として有用なYSZ膜を形成した場合には、その電解質の厚さを薄くすることができ、電池の高出力化を図ることができる等の利点を有する。
【0018】
次に、本発明の積層体の製造方法について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の積層体の製造方法の一例を示す概略断面図である。図1に示される積層体の製造方法においては、まず多孔質基材1を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱する。次に、加熱した多孔質基材1に対して、金属源を含有する金属酸化物膜形成用溶液(図示せず)を、スプレーノズル2を用いて噴射する。この際、スプレーノズル2から噴射される金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向Dを、多孔質基材1側に向け、かつ、多孔質基材1表面の法線方向Dに対して角度θで傾ける。
【0019】
本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向を多孔質基材側に向ける。そのため、図1に示すように、金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向Dは、通常、多孔質基材1のある図面下側に向く。一方、金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向を、多孔質基材側ではなく、その反対側(図1における図面上側)に向けた場合、金属酸化物膜形成用溶液を霧状にすることで、金属酸化物膜を形成することは可能であるが、このような場合は、通常、本発明には含まれない。金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向性が失われ、多孔質基材の孔部を効率良く埋めることができないからである。
【0020】
また、後述するように、本発明においては、例えばフラットスプレーノズルを用いて、扇状に金属酸化物膜形成用溶液を噴射しても良い。フラットスプレーノズルを用いた場合、図2に示すように、金属酸化物膜形成用溶液3は、所定の角度の広がりを持って扇状に噴射される。このような場合は、フラットスプレーノズル2aの噴射軸Dの方向を、金属酸化物膜形成用溶液3の噴射方向Dとする。そのため、図3に示すように、金属酸化物膜形成用溶液3の噴射方向Dと、多孔質基材1の法線方向Dとが平行である場合は、例えば領域Aで金属酸化物膜形成用溶液3が多孔質基材1の法線方向Dに対して傾いた状態で噴射されていたとしても、本発明には含まれない。本発明において、金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向は、全ての方向成分において、多孔質基材表面の法線方向に対して傾いていることが好ましい。
【0021】
また、本発明において、多孔質基材の孔部を、金属酸化物で効率良く埋めることができるメカニズムは未だ定かではないが、図4(a)に示すように、多孔質基材1の表面に形成された孔部1aは、最表面よりも内部の径が大きい構造を有していることが予想されるため、金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向Dを、多孔質基材1表面の法線方向Dに対して傾けることで、孔部1aの側面部に金属酸化物4aを効率良く形成できるからであると考えられる。これにより、図4(b)に示すように、多孔質基材1bの孔部を金属酸化物で効率良く埋めることができ、表面平滑性および緻密性等に優れた金属酸化物膜4を形成することができると考えられる。なお、図4における孔部は、大きく誇張したものであり、実際とは異なる場合がある。
以下、本発明の積層体の製造方法について、構成毎に詳細に説明する。
【0022】
1.金属酸化物膜形成用溶液
まず、本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液について説明する。本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、少なくとも金属源を含有する。さらに、必要に応じて、ホウ素化合物、酸化剤、還元剤、および添加剤等を含有していても良い。
【0023】
(1)金属源
まず、本発明に用いられる金属源について説明する。本発明に用いられる金属源は、通常、金属塩または有機金属化合物である。本発明においては、2種類以上の金属源を併用しても良い。
【0024】
上記金属源を構成する金属元素としては、金属酸化物膜を形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ca、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、WおよびTaからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素を挙げることができ、中でもAl、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、In、Sn、CeおよびLaからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素が好ましい。
【0025】
上記金属塩としては、金属酸化物膜を形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、上記金属元素を含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。中でも、本発明においては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩を使用することが好ましい。これらの化合物は汎用品として入手が容易だからである。上記金属塩としては、具体的には塩化マグネシウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、酢酸スカンジウム、四塩化チタン、オキソ硫酸バナジウム、クロム酸アンモニウム、塩化クロム、二クロム酸アンモニウム、酢酸クロム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、塩化鉄(I)、塩化鉄(III)、酢酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(III)、塩化コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化銅、硝酸銅、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸イットリウム、塩化イットリウム、塩化酸化ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、塩化銀、酢酸銀、塩化インジウム、酢酸インジウム、塩化スズ、酢酸スズ、硫酸スズ、塩化セリウム、酢酸セリウム、硝酸セリウム、シュウ酸セリウム、硝酸二アンモニウムセリウム、硫酸セリウム、塩化サマリウム、硝酸サマリウム、塩化鉛、酢酸鉛、硝酸鉛、ヨウ化鉛、リン酸鉛、硫酸鉛、塩化ランタン、酢酸ランタン、硝酸ランタン、硝酸ガドリニウム、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、五塩化ニオブ、りん酸モリブデン酸アンモニウム、硫化モリブデン、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、五塩化アンチモン、三塩化アンチモン、三フッ化アンチモン、テルル酸、亜硫酸バリウム、塩化バリウム、塩素酸バリウム、過塩素酸バリウム、酢酸バリウム、硝酸バリウム、タングステン酸、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、五塩化タンタル、塩化ハフニウム、硫酸ハフニウム等を挙げることができる。
【0026】
上記有機金属化合物としては、金属酸化物膜を形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、アセチルアセトナート系錯体を挙げることができる。上記アセチルアセトナート系錯体としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、銅(II)アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、クロム(III)アセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、セリウムアセチルアセトナート、ランタンアセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート、モリブデニルアセチルアセトナート、パラジウムアセチルアセトナート等を挙げることができる。
【0027】
アセチルアセトナート系錯体以外の有機金属化合物としては、例えば、マグネシウムジエトキシド、カルシウムジ(メトキシエトキシド)、グルコン酸カルシウム一水和物、クエン酸カルシウム四水和物、サリチル酸カルシウム二水和物、チタンラクテート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタンペロキソクエン酸アンモニウム四水和物、ジシクロペンタジエニル鉄(II)、乳酸鉄(II)三水和物、銅(II)ジピバロイルメタナート、エチルアセト酢酸銅(II)、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛、ストロンチウムジピバロイルメタナート、イットリウムジピバロイルメタナート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタイソプロポキシニオブ、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、タンタル(V)エトキシド、クエン酸鉛(II)三水和物、シクロヘキサン酪酸鉛、トリフルオロメタンスルホン酸ガリウム(III)、ストロンチウムジピバロイルメタナート等を挙げることができる。
【0028】
金属酸化物膜形成用溶液における金属源の濃度としては、特に限定されるものではないが、例えば0.001〜1mol/lの範囲内、中でも0.01〜0.5mol/lの範囲内であることが好ましい。濃度が上記範囲内にあれば、比較的短時間で金属酸化物膜を形成することができるからである。
【0029】
また、本発明においては、金属酸化物膜のドーピングを目的としたドーピング金属源を添加することも可能である。ドーピング金属源を用いることにより、機能性金属酸化物膜を得ることができる。
【0030】
上記ドーピング金属源の種類は、目的とする金属酸化物膜の種類に応じて適宜選択することが好ましい。例えば固体酸化物型燃料電池の電解質として有用なイットリア安定化ジルコニア膜(YSZ膜)を得る場合は、ジルコニウム元素を有する金属源の他に、ドーピング金属源としてイットリウム元素を有する金属源を用いる。イットリウム元素を有する金属源としては、具体的には、硝酸イットリウム・六水和物等を挙げることができる。すなわち、本発明においては、上記金属源が、ジルコニウム元素を含有するジルコニウム含有金属源と、イットリウム元素を含有するイットリウム含有金属源との組み合わせであることが好ましい。所望のYSZ膜を得ることができるからである。上記ジルコニウム含有金属源としては、上述したように、ジルコニウム元素を含有する金属塩であっても良く、ジルコニウム元素を含有する有機金属化合物であっても良いが、中でも、ジルコニウム元素を含有する有機金属化合物であることが好ましい。特に本発明においては、ジルコニウム含有金属源がジルコニウムテトラアセチルアセトナートであることが好ましい。上記イットリウム含有金属源としては、イットリウム元素を含有するものであれば特に限定されるものではなく、上述したように、イットリウム元素を含有する金属塩であっても良く、イットリウム元素を含有する有機金属化合物であっても良いが、中でも、イットリウム元素を含有する金属塩であることが好ましい。特に本発明においては、イットリウム含有金属源が硝酸イットリウムであることが好ましい。金属酸化物膜形成用溶液に含まれる、ジルコニウム含有金属源およびイットリウム含有金属源の割合は、所望のYSZを得ることができれば特に限定されるものではないが、例えば、ジルコニウム含有金属源を100とした場合に、モル換算で、イットリウム含有金属源が、3〜30の範囲内、中でも5〜20の範囲内であることが好ましい。
【0031】
また、本発明においては、上記金属源が、インジウム元素を含有するインジウム含有金属源と、スズ元素を含有するスズ含有金属源との組み合わせであることが好ましい。上記インジウム含有金属源としては、インジウム元素を含有するものであれば特に限定されるものではなく、上述したように、インジウム元素を含有する金属塩であっても良く、インジウム元素を含有する有機金属化合物であっても良いが、中でも、インジウム元素を含有する金属塩であることが好ましい。特に本発明においては、インジウム含有金属源が硝酸インジウムであることが好ましい。一方、上記スズ含有金属源としては、スズ元素を含有するものであれば特に限定されるものではなく、上述したように、スズ元素を含有する金属塩であっても良く、スズ元素を含有する有機金属化合物であっても良いが、中でも、スズ元素を含有する金属塩であることが好ましい。特に本発明においては、スズ含有金属源が塩化スズであることが好ましい。
【0032】
(2)溶媒
本発明に用いられる溶媒は、上述した金属源を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール;トルエン;アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類;アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類;およびこれらの混合溶媒等を挙げることができる。中でも、水、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、アセチルアセトンまたはこれらの混合溶媒が好ましい。また、本発明においては、溶媒の全部または一部として、上記ジケトン類および上記ケトエステル類の少なくとも一方を用いることが好ましい。成膜性が向上するからである。
【0033】
(3)ホウ素化合物
次に、本発明に用いられるホウ素化合物について説明する。本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液が、ホウ素化合物を含有していても良い。ホウ素化合物を添加することにより、得られる金属酸化物膜の結晶性を低下させることができる。その結果、粒界の発生を抑制することができ、密着性や凹凸追従性に優れた金属酸化物膜を得ることができる。
【0034】
上記ホウ素化合物としては、金属酸化物膜の結晶性を低下させることができるものであれば特に限定されるものではないが、中でも金属元素を有しないものであることが好ましい。ホウ素化合物に由来する金属元素が、金属酸化物膜に取り込まれることを防止できるからである。上記ホウ素化合物としては、具体的には、ホウ酸、三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル、四ホウ酸リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、トリス(ジメチルアミノ)ホウ素、ホウ酸トリイソプロピル、ペルオキソホウ酸ナトリウム四水和物、テトラフルオロホウ酸等を挙げることができ、中でも、金属元素を有しないという観点から、ホウ酸、三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル、トリス(ジメチルアミノ)ホウ素、ホウ酸トリイソプロピル、テトラフルオロホウ酸が好ましく、特に、ホウ酸が好ましい。より効果的に、金属酸化物膜の結晶性を低下させることができるからである。
【0035】
なお、ホウ酸(HBO)は、300℃程度に加熱されると、酸化ホウ素(B)になることが知られている。詳細な原理は明らかではないが、幾つかの実験から、この酸化ホウ素が、金属酸化物膜の結晶性を低下させるための重要な要因となっている可能性がある。このような観点からは、上記ホウ素化合物は、加熱された多孔質基材と接触する際に、酸化ホウ素を生じる化合物であることが好ましい。
【0036】
金属酸化物膜形成用溶液に含まれるホウ素化合物の濃度としては、金属酸化物膜の結晶性を低下させることができる濃度であれば特に限定されるものではないが、例えば0.01mol/l以上、中でも0.05〜1mol/lの範囲内、特に0.1〜0.5mol/lの範囲内であることが好ましい。
【0037】
(4)添加剤
また、本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。上記界面活性剤は、金属酸化物膜形成用溶液と多孔質基材との界面に作用するものである。上記界面活性剤を用いることにより、金属酸化物膜形成用溶液と多孔質基材との接触面積を向上させることができ、均一な金属酸化物膜を得ることができる。なお、上記界面活性剤の使用量は、使用する金属源等に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
【0038】
上記界面活性剤の種類としては、例えば、サーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノールGA、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104PPM、サーフィノール104E、サーフィノール104PA等のサーフィノールシリーズ(以上、全て日信化学工業(株)社製)、NIKKOL AM301、NIKKOL AM313ON(以上、全て日光ケミカル社製)等を挙げることができる。
【0039】
2.多孔質基材
次に、本発明に用いられる多孔質基材について説明する。本発明に用いられる多孔質基材の材料としては、上記加熱温度に対する耐熱性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えばガラス、SUS、金属、セラミックス、耐熱性プラスチック等を挙げることができ、中でもガラス、SUS、金属、セラミックスであることが好ましい。汎用性があり、充分な耐熱性を有しているからである。
【0040】
多孔質基材の平均孔径は、例えば1nm〜500μmの範囲内、中でも10nm〜100μmの範囲内であることが好ましい。多孔質基材の平均孔径は、全自動ガス吸着量測定装置(AUTOSORB−1−AG、ユアサアイオニクス株式会社製)を用い、キャリアガスとしてNガスを用い、測定温度77Kで測定することによって求めることができる。また、多孔質部材の平均孔径が200nmを超える場合は、水銀ポロシメーター(PoreMaster、ユアサアイオニクス)により測定することができる。
【0041】
また、多孔質基材の膜厚は、特に限定されるものではなく、積層体の用途に応じて適宜選択することが好ましい。
【0042】
3.金属酸化物膜の形成方法
本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液を、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した多孔質基材に噴射することにより、多孔質基材上に金属酸化物膜を形成する。
【0043】
本発明において、「金属酸化物膜形成温度」とは、金属源に含まれる金属元素が酸素と結合し、多孔質基材上に金属酸化物膜を形成することが可能な温度をいい、金属源、溶媒等の金属酸化物膜形成用溶液の組成によって異なるものである。本発明において、このような「金属酸化物膜形成温度」は、以下の方法により測定することができる。すなわち、実際に所望の金属源を含有する金属酸化物膜形成用溶液を用意し、この金属酸化物膜形成用溶液を多孔質基材の加熱温度を変化させて接触させ、金属酸化物膜を形成することができる最低の加熱温度を測定する。この最低の加熱温度を本発明における「金属酸化物膜形成温度」とすることができる。この際、金属酸化物膜が形成したか否かは、通常、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)より得られた結果から判断し、結晶性のないアモルファス膜の場合は、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)より得られた結果から判断するものとする。
【0044】
金属酸化物膜形成温度は、上述したように、用いられる金属源等の種類により異なるものであるが、通常200〜600℃の範囲内である。また、本発明において、多孔質基材の加熱温度は、金属酸化物膜形成温度以上の温度であれば特に限定されるものではないが、例えば、金属酸化物膜形成温度+300℃以下、中でも金属酸化物膜形成温度+200℃以下、特に金属酸化物膜形成温度+100℃以下であることが好ましい。多孔質基材の加熱温度は、通常300〜600℃の範囲内である。
【0045】
また、多孔質基材の加熱方法としては、例えばホットプレート、オーブン、焼成炉、赤外線ランプ、熱風送風機を用いる方法等を挙げることができ、中でも多孔質基材の温度を保持できる方法が好ましく、具体的にはホットプレートを用いる方法が好ましい。
【0046】
次に、金属酸化物膜形成用溶液の噴射方法について説明する。本発明においては、上述した図1に示すように、金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向Dを、多孔質基材1側に向け、かつ、多孔質基材1表面の法線方向Dに対して傾ける。本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向を、多孔質基材表面の法線方向に対して、10°以上傾けることが好ましく、20°以上傾けることがより好ましく、30°以上傾けることがさらに好ましい。一方、本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向を、多孔質基材表面の法線方向に対して、90°以下で傾けることが好ましく、80°以下で傾けることがより好ましい。上記の範囲内であれば、さらに効率良く、多孔質基材の孔部を金属酸化物で埋めることができるからである。
【0047】
本発明においては、通常、スプレー装置を用いて金属酸化物膜形成用溶液を噴射する。スプレー装置に備え付けられるスプレーノズルの種類は、所定の角度で金属酸化物膜形成用溶液を噴射することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、フラットスプレーノズルおよびスリットノズル等を挙げることができる。
【0048】
また、本発明において、スプレーノズルから噴射される金属酸化物膜形成用溶液は、より液滴の径が小さいことが好ましい。液滴の径が小さければ、金属酸化物膜形成用溶液の溶媒が瞬時に蒸発し、多孔質基材の温度低下を抑制することができるからである。液滴の径としては、例えば0.01μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μ〜300μmの範囲内であることが好ましい。
【0049】
また、スプレー装置は、圧力で溶液を噴射するものであっても良く、噴射ガスで溶液を噴射するものであっても良い。噴射ガスとしては、金属酸化物膜の形成を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素等を挙げることができ、中でも不活性な気体である窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましい。また、金属酸化物膜形成用溶液の噴射量としては、例えば0.01〜50L/minの範囲内、中でも0.05〜1L/minの範囲内であることが好ましい。
【0050】
本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液を噴射する際に、スプレーノズルおよび多孔質基材の少なくとも一方を相対的に移動させることが好ましい。より均一な膜厚の金属酸化物膜を形成することができるからである。具体的には、スプレーノズルを固定し多孔質基材を移動させても良く、スプレーノズルを移動させ多孔質基材を固定しても良く、スプレーノズルおよび多孔質基材の両方を、互いに異なる動きで移動させても良い。
【0051】
4.その他
また、本発明の積層体の製造方法においては、得られた金属酸化物膜の洗浄を行っても良い。金属酸化物膜を洗浄することにより、金属酸化物膜の表面等に存在する不純物を取り除くことができる。具体的には、金属酸化物膜形成用溶液に使用した溶媒を用いて洗浄する方法等を挙げることができる。
【0052】
B.積層体の製造装置
次に、本発明の積層体の製造装置について説明する。本発明の積層体の製造装置は、多孔質基材を支持する支持手段と、上記多孔質基材を加熱する加熱手段と、上記多孔質基材表面の法線方向に対して、所定の角度で金属酸化物膜形成用溶液を噴射する噴射手段と、を有することを特徴とするものである。
【0053】
本発明によれば、所定の角度で金属酸化物膜形成用溶液を噴射することにより、多孔質基材の孔部を金属酸化物で効率良く埋めることができ、表面平滑性および緻密性等に優れた金属酸化物膜を形成することができる。
【0054】
図5は、本発明の積層体の製造装置の一例を示す概略断面図である。図5に示される積層体の製造装置は、多孔質基材1を支持する支持手段11と、多孔質基材1を加熱する加熱手段12と、多孔質基材1表面の法線方向Dに対して、所定の角度θで金属酸化物膜形成用溶液(図示せず)を噴射するスプレーノズル2を有する噴射手段13と、を有するものである。
【0055】
本発明における支持手段は、多孔質基材を支持できる手段であれば特に限定されるものではない。また、支持手段は、後述する加熱手段の機能を兼ね備えたものであっても良い。また、支持手段は、移動自由な移動手段を有していても良い。
【0056】
本発明における加熱手段は、多孔質基材を加熱できる手段であれば特に限定されるものではない。加熱手段については、上記「A.積層体の製造方法」に記載した多孔質基材の加熱方法で用いられる手段と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0057】
本発明における噴射手段は、通常、金属酸化物膜形成用溶液を噴射するスプレーノズルを有する。また、噴射手段は、スプレーノズルの角度を調整する角度調整手段、スプレーノズルの角度を連続的に変動させる角度変動手段、移動自由な移動手段を有していても良い。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0060】
[実施例1−1]
(多孔質基材の作製)
まず、一次粒径50nmのTiO微粒子(日本アエロジル社製P25)、アセチルアセトンおよびポリエチレングリコール(平均分子量3000)を用意した。次に、これらをホモジナイザーにより水およびイソプロピルアルコールに溶解および分散させて、TiO微粒子37.5重量%、アセチルアセトン1.25重量%、ポリエチレングリコール1.88重量%のスラリーを作製した。次に、ガラス基材上にドクターブレードにて上記スラリーを塗布し、室温下にて20分放置し、その後、上記スラリーを100℃、30分間の条件で乾燥させた。次に、乾燥後のスラリー塗布部材を電気マッフル炉(デンケン社製P90)に入れ、500℃、30分間、大気圧雰囲気の条件で焼成した。これにより、多孔質基材を得た。多孔質基材の表面粗さを原子間力顕微鏡(AFM、ナノピクス(SII製))を用いて測定したところ、Ra=1μmであった。
【0061】
(積層体の作製)
硝酸インジウム(関東化学社製)および塩化スズ(関東化学社製)を、それぞれの濃度が0.1mol/リットル、0.0052mol/リットルとなるように、エタノール溶媒に溶解させて金属酸化物膜形成溶液を調製した。次に、500℃に加熱した多孔質基材上に対して、金属酸化物形成用溶液(500ミリリットル)をエアレススプレー(A74エアレスオートガン、クロスカットノズル(フラットスプレーノズル)1/15、噴射液圧2MPa、ノードソン社製)を用いて噴射した。この際、金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向と、多孔質基材表面の法線方向との角度θは、10°であった。これにより、多孔質基材および金属酸化物膜を有する積層体を得た。
【0062】
[実施例1−2]
角度θを30°としたこと以外は、実施例1−1と同様にして、積層体を得た。
【0063】
[実施例1−3]
角度θを45°としたこと以外は、実施例1−1と同様にして、積層体を得た。
【0064】
[実施例1−4]
角度θを60°としたこと以外は、実施例1−1と同様にして、積層体を得た。
【0065】
[実施例1−5]
角度θを90°としたこと以外は、実施例1−1と同様にして、積層体を得た。
【0066】
[比較例1]
角度θを0°としたこと以外は、実施例1−1と同様にして、積層体を得た。
【0067】
[評価1]
実施例1−1〜実施例1−6、および比較例1で得られた積層体の表面粗さ(Ra)、および金属酸化物膜の膜厚を測定した。積層体の表面粗さ(Ra)は、原子間力顕微鏡(AFM、ナノピクス(SII製))を用いて測定した。また、金属酸化物膜の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面写真を観察することにより測定した。その結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1に示されるように、実施例1−1〜実施例1−6は、比較例1に比べて、表面粗さが小さく、表面平滑性および緻密性等に優れた金属酸化物膜を得ることができた。
【0070】
[実施例2]
ジルコニウムテトラアセチルアセトナ−ト(関東化学社製)、硝酸イットリウム(関東化学社製)およびホウ酸(関東化学製)を、それぞれの濃度が0.2mol/リットル、0.061mol/リットルおよび0.1mol/リットルとなるように、トルエン:エタノール:アセチルアセトン=50:25:25となる混合溶媒に溶解させて金属酸化物膜形成用溶液を調製した。そして、500℃に加熱した多孔質基材(燃料電池の燃料極、日本ファインセラミックス社製、サマリウムドーピングセリア&酸化ニッケル多孔質部材、平均孔径1μm、厚み800μm、平均粒子径1μm))上へ金属酸化物膜形成用溶液(1000ミリリットル)を、エアレススプレー(A74エアレスオートガン、クロスカットノズル(フラットスプレーノズル)1/12、噴射液圧2MPa、ノードソン社製)を用いて、多孔質基材表面の法線方向に対して、45°傾けて噴射した。これにより、多孔質基材上にYSZからなる金属酸化物電解質膜(多孔質基材上の厚み:3μm)を有する積層体を得た。
【0071】
[比較例2]
エアレススプレーの噴射角度を、多孔質基材表面の法線方向に対して傾けなかったこと(鉛直下向きにしたこと)以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
【0072】
[評価2]
実施例2および比較例2で得られた積層体のYSZ膜表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。その結果を図6に示す。図6に示されるように、実施例2で得られたYSZ膜は、比較例2で得られたYSZ膜と比較して、粒界が軽減されており、表面平滑性および緻密性に優れた膜であった。これは、金属酸化物膜形成用溶液を斜めから噴射することで、平面方向への膜成長が促進されたためであると考えられる。また、金属酸化物膜形成用溶液を斜めから噴射することで、多孔質基材の孔部を効率良く埋めることができ、膜厚が小さく、緻密性の高いYSZ膜を形成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の積層体の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の積層体の製造方法を説明する斜視図である。
【図3】従来の積層体の製造方法を説明する斜視図である。
【図4】本発明により得られる積層体を説明する概略断面図である。
【図5】本発明の積層体の製造装置の一例を示す概略断面図である。
【図6】実施例および比較例で得られた金属酸化物膜のSEM写真である。
【符号の説明】
【0074】
1 … 多孔質基材
1a … 孔部
2 … スプレーノズル
2a … フラットスプレーノズル
3 … 金属酸化物形成用溶液
4 … 金属酸化物膜
4a … 金属酸化物
11 … 支持手段
12 … 加熱手段
13 … 噴射手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した多孔質基材に噴射することにより、前記多孔質基材上に金属酸化物膜を形成する積層体の製造方法であって、
前記金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向を、前記多孔質基材側に向け、かつ、前記多孔質基材表面の法線方向に対して傾けることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物膜形成用溶液の噴射方向を、前記多孔質基材表面の法線方向に対して、10°以上傾けることを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記金属酸化物膜形成用溶液を、扇状に噴射することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
多孔質基材を支持する支持手段と、
前記多孔質基材を加熱する加熱手段と、
前記多孔質基材表面の法線方向に対して、所定の角度で金属酸化物膜形成用溶液を噴射する噴射手段と、
を有することを特徴とする積層体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−82561(P2010−82561A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255147(P2008−255147)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】