説明

積層板の検査方法

【課題】偏光板などの積層板の内部に存在する泡を画像検査により検出することが可能な積層板の検査方法を提供する。
【解決手段】積層板を一面側から加熱する加熱工程と、加熱した積層板の他面側を赤外線カメラにより撮影する撮影工程と、赤外線カメラにより撮影した画像に基づいて積層板の内部に存在する泡を検出する検出工程とを行う。加熱工程では、積層板16をホットプレート18上に載置し、このホットプレートにより積層板を一面側から加熱することができる。撮影工程では、赤外線カメラ20を積層板の上方に配置し、この赤外線カメラによって積層板の上面を撮影することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板などの積層板の検査方法に関し、さらに詳述すると、積層板の内部に存在する泡を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示パネルなどの表示パネルの光学部材として偏光板が使用されている。上記偏光板としては、例えば図3に示すように、偏光膜10の両面に保護膜12を積層したものがある。偏光膜10は例えばポリビニルアルコールにより形成され、保護膜12は例えばトリアセテートにより形成される。
【0003】
上述した偏光板の偏光膜10の内部には、図3に示すように微少な泡(気泡)14が存在していることがある(例えば、特許文献1参照)。なお、偏光板の偏光膜10は多層構造を有しており、泡は多層構造の層間に存在している。
【0004】
上記泡は、大きさにより偏光板の製品不良として扱われるが、通常の目視検査では検出することができず、液晶パネルに取り付けた後の点灯検査において目視により確認できるようになる。この泡の大きさが所定の大きさ以上である場合、その偏光板を取り付けた表示パネルは不良品として扱われる。したがって、偏光板の泡の検査は、偏光板を液晶パネルに取り付ける前の状態、すなわち原反または原反をカットした小片の状態で行うことが望ましい。
【0005】
【特許文献1】特開2005−316129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、偏光板の原反または小片に含まれる泡を従来の画像検査(画像処理による検査)で行う場合、検査に反射光を用いたときには光が保護膜で乱反射して泡を認識できないことがあり、検査に透過光を用いたときには泡とその周辺部分とのコントラストの差が少なく、泡を認識することが難しい。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、偏光板などの積層板の内部に存在する泡を画像検査により検出することが可能な積層板の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の目的を達成するため、積層板を一面側から加熱する加熱工程と、加熱した前記積層板の他面側を赤外線カメラにより撮影する撮影工程と、前記赤外線カメラにより撮影した画像に基づいて前記積層板の内部に存在する泡を検出する検出工程とからなることを特徴とする積層板の検査方法を提供する。
【0009】
本発明においては、積層板の一面側を加熱するとともに、温度差をとらえることができる赤外線カメラで積層板の他面側を撮影することにより、積層板の内部における泡の位置をとらえるものである。すなわち、積層板の内部に泡が存在すると、積層板を一面側から暖めたときに、泡が存在する箇所と存在しない箇所とで熱伝導が異なり、積層板の他面側の表面温度が泡が存在する箇所と存在しない箇所とで異なることから(泡が存在する箇所の方が表面温度が低くなる)、赤外線カメラでその温度差をとらえ、泡の位置を検出することができる。また、赤外線カメラは暗室内であれば純粋に赤外線だけをとらえることができるため、周辺環境の影響を受けることなく泡を検出することができる。さらに、本発明で用いる赤外線カメラは、視角によって画像の見え方が変わらないので、視角による影響を受けることなく泡を検出することができる。
【0010】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。本発明の加熱工程において、積層板の加熱方法に限定はないが、図1に示すように、積層板16をホットプレート18上に載置し、このホットプレートにより積層板を一面側(下面側)から加熱することが好ましい。ホットプレートとしては、一般的な電熱式のものを使用することができる。
【0011】
この場合、ホットプレートを30〜50℃に加熱し、積層板を30〜50℃に加熱することが適当である。積層板の加熱温度が30℃未満では、加熱温度が足りないために積層板の他面側の泡が存在する箇所と存在しない箇所の表面に赤外線カメラで検出し得る温度差が生じないことがある。積層板の加熱温度が50℃を超えると、積層板の他面側の表面全体が暖まって泡が存在する箇所と存在しない箇所の表面温度が同じになるとともに、積層板が変形するなど積層板の品質に影響を及ぼすことがある。
【0012】
また、積層板の周辺部分に反りがある場合などは、積層板の周辺部分に加重を加えることができる枠状の金属フレーム(重り)を積層板の周辺部分(表示パネルにおける非表示エリアに相当する部分)に載せることにより、積層板をホットプレート上に平らに載置することができる。
【0013】
本発明の撮影工程に用いる赤外線カメラとしては、一般に市販されているものを用いることができる。このような赤外線カメラは、通常、0.1℃の温度差を検出することができる。また、赤外線カメラによる積層板の他面側の撮影は、積層板の加熱を開始してから2〜4秒後に行うことが好ましい。撮影時間が遅くなりすぎると、積層板の他面側の表面全体が暖まって泡が存在する箇所と存在しない箇所の表面温度が同じになることがある。
【0014】
また、赤外線カメラにより積層板の他面側を撮影する場合、積層板の他面側の表面全体を一度に撮影してもよく、積層板の他面側の表面を任意箇所毎にスキャンしつつ撮影することにより積層板の他面側全体を撮影してもよい。
【0015】
前述のようにホットプレートにより積層板を下面側から加熱した場合は、図1に示すように、赤外線カメラ20を積層板16の上方に配置し、この赤外線カメラ20によって積層板16の上面を撮影すればよい。
【0016】
本発明の検出工程の構成に限定はないが、下記(a)または(b)の構成とすることが適当である。
(a)撮影工程で赤外線カメラにより撮影した画像を2値画像に変換するステップと、前記2値画像から泡の面積を取得するステップと、前記泡の面積と指定面積とを比較し、泡の面積が指定面積以上である場合には積層板を不良品と判定し、泡の面積が指定面積未満である場合には積層板を良品と判定するステップとからなる構成。
(b)撮影工程で赤外線カメラにより撮影した画像を2値画像に変換するステップと、前記2値画像から泡の最大直径を取得するステップと、前記泡の最大直径と指定最大直径とを比較し、泡の最大直径が指定最大直径以上である場合には積層板を不良品と判定し、泡の最大直径が指定最大直径未満である場合には積層板を良品と判定するステップとからなる構成。
【0017】
上記構成(a)、(b)において、指定面積は、積層板に指定面積以上の面積を有する泡が存在する場合は積層板を不良とする基準であり、指定最大直径は、積層板に指定最大直径以上の指定最大直径を有する泡が存在する場合は積層板を不良とする基準である。指定面積および指定最大直径は適宜設定することができるが、通常、指定面積は直径0.3mmの円の面積、指定最大直径は0.3mmとすることが適当である。
【0018】
前述したように赤外線カメラにより撮影した画像を2値画像に変換する(2値価する)のは、次の理由からである。すなわち、画像処理で異常箇所を特定する場合、異常箇所の形状が予め決まった形状であれば、2値化する必要はないが、積層板の泡は形状が決まっていない。しかし、積層板における泡周辺の背景は一定なので、2値化して異常箇所を検出するようにしたものである。
【0019】
本発明に係る積層板の検査方法は、層間に泡が存在するような積層板であれば、いずれのものに対しても適用することができる。このような積層板としては、例えば、図3に示した構造の偏光板、図3に示した構造以外の構造の偏光板、反射板、視覚制御フィルム等が挙げられる。
【0020】
また、本発明を用いて積層板の原反を検査した場合、その原反はその後小片に切断されて泡が存在する小片は廃棄される。本発明を用いて積層板の小片を検査した場合、泡が存在する小片は廃棄され、良品は表示パネルの組み立てに使用される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る積層板の検査方法によれば、偏光板などの積層板の内部に存在する泡を画像検査により検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。図2は本発明に係る積層板の検査方法の一実施形態を示すフロー図である。本例では、下記(1)〜(5)の工程で偏光板の検査を行った。
【0023】
(1)図1に示したように、ホットプレート18を30〜50℃に加熱するとともに、図3に示した構造の偏光板をホットプレート上に載置した(ステップ1)。偏光板の厚さは0.2〜0.4mmであった。図2に示すように、ホットプレート上に載置した直後のまだ加熱されていない偏光板の上面の赤外線カメラによる画像(原画像)30は、偏光板の上面の泡が存在する箇所と存在しない箇所とで色に差が生じていない。
【0024】
(2)偏光板をホットプレート上に載置してから2〜4秒後に、図1に示したように、赤外線カメラ20によって偏光板の上面の撮影を行い、赤外線画像32を得た(ステップ2)。偏光板は30〜50℃に加熱されているため、赤外線画像32は、偏光板の上面の泡が存在する低温箇所34と存在しない高温箇所36とで色に差が生じている。なお、撮影後は偏光板を直ちにホットプレート上から取り出した。
【0025】
(3)ステップ2で得られた赤外線画像32の2値化を行い、赤外線画像32を2値画像38に変換した(ステップ3)。2値画像38では、偏光板の上面の泡が存在する低温箇所は完全な黒色、存在しない高温箇所は完全な白色で表されている。
【0026】
(4)2値画像38における泡が存在する黒色部分の抽出(孤立点抽出)を行い、2値処理により上記黒色部分の面積、すなわち泡の面積(平面面積)Xを取得した(ステップ4)。なお、2値画像40において、42および44は黒色部分の最大直径および最小直径を取得するための座標軸を示している。
【0027】
(5)得られた泡の面積Xと指定面積Sとを比較し、泡の面積Xが指定面積S以上である場合(S≧X)には偏光板を不良品(NG)と判定し、泡の面積Xが指定面積未満(S<X)である場合には偏光板を良品(OK)と判定した(ステップ5)。この場合、本例では、指定面積Sは直径0.3mmの円の面積とし、円形泡で直径0.3mm以上のものはNGとし、不定形泡で最大直径が0.3mm以上のものは面積が直径0.3mmの円以上のものに相当するとしてNGとした。図2の画像46に泡不良抽出箇所48を示す。なお、上記ステップ3〜5はコンピュータにより行った。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ホットプレート上に載置した積層板の上面を赤外線カメラにより撮影する状態を示す概略図である。
【図2】本発明に係る積層板の検査方法の一実施形態を示すフロー図である。
【図3】偏光板の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 偏光膜
12 保護膜
14 泡
16 積層板
18 ホットプレート
32 赤外線画像
38 2値画像
40 2値画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層板を一面側から加熱する加熱工程と、加熱した前記積層板の他面側を赤外線カメラにより撮影する撮影工程と、前記赤外線カメラにより撮影した画像に基づいて前記積層板の内部に存在する泡を検出する検出工程とからなることを特徴とする積層板の検査方法。
【請求項2】
前記加熱工程において、積層板をホットプレート上に載置し、前記ホットプレートにより積層板を一面側から加熱することを特徴とする請求項1に記載の積層板の検査方法。
【請求項3】
前記加熱工程において、積層板を30〜50℃に加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の積層板の検査方法。
【請求項4】
前記検出工程は、前記赤外線カメラにより撮影した画像を2値画像に変換するステップと、前記2値画像から泡の面積を取得するステップと、前記泡の面積と指定面積とを比較し、泡の面積が指定面積以上である場合には積層板を不良品と判定し、泡の面積が指定面積未満である場合には積層板を良品と判定するステップとからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層板の検査方法。
【請求項5】
前記検出工程は、前記赤外線カメラにより撮影した画像を2値画像に変換するステップと、前記2値画像から泡の最大直径を取得するステップと、前記泡の最大直径と指定最大直径とを比較し、泡の最大直径が指定最大直径以上である場合には積層板を不良品と判定し、泡の最大直径が指定最大直径未満である場合には積層板を良品と判定するステップとからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層板の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−320046(P2007−320046A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149425(P2006−149425)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】