説明

積層電子部品の製造方法

【課題】シートアタックの発生を抑制すると共に、乾燥後のペースト層の通気抵抗を低くすることが可能な積層電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】積層電子部品の製造方法は、支持体上に載置されたセラミックグリーンシート上に形成された電極ペースト層を遠赤外線ヒータによる遠赤外線の放射により乾燥させる第1の乾燥工程(ゾーンI)と、第1の乾燥工程の後に、電極ペースト層を熱風により第1の乾燥工程における雰囲気温度よりも高い雰囲気温度にて乾燥させる第2の乾燥工程(ゾーンII)と、支持体、セラミックグリーンシート、及び電極ペースト層を冷却する冷却工程(ゾーンIII)と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層電子部品の製造方法として、バインダを含むグリーンシート上に溶剤を含むペーストを塗布してペースト層を形成する工程と、形成したペースト層を乾燥させる工程と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された積層型電解コンデンサでは、ペースト層を乾燥させる工程にて、熱風による乾燥と遠赤外線ヒータによる乾燥とが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−92587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バインダを含むグリーンシート上に形成したペースト層を乾燥させる際に、ペーストに含まれている溶剤により、グリーンシートに含まれているバインダが溶解してしまう、いわゆるシートアタックが生じてしまう懼れがある。また、乾燥後にペースト層に溶剤が残留していると、ペースト層の通気抵抗が高くなるため、当該ペースト層が形成されたグリーンシートにグリーンシートを積層する際に積層ずれが生じ易くなるという問題が生じる懼れもある。
【0005】
本発明は、シートアタックの発生を抑制すると共に、乾燥後のペースト層の通気抵抗を低くすることが可能な積層電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層電子部品の製造方法は、可撓性を有する支持体上に載置され、バインダを含むグリーンシートを準備する準備工程と、グリーンシート上に、溶剤を含むペーストを塗布し、ペースト層を形成するペースト層形成工程と、ペースト層を放射伝熱により乾燥させる第1の乾燥工程と、第1の乾燥工程の後に、ペースト層を対流伝熱により第1の乾燥工程における雰囲気温度よりも高い雰囲気温度にて乾燥させる第2の乾燥工程と、支持体、グリーンシート、及びペースト層を冷却する冷却工程と、を備えている。
【0007】
本発明に係る積層電子部品の製造方法では、第1の乾燥工程にて放射伝熱によりペースト層を乾燥させているので、ペースト層の内側部分やグリーンシートとの界面近傍部分での乾燥が促進され、シートアタックの発生を抑制することができる。また、第1の乾燥工程では、ペースト層の表面近傍部分での乾燥が抑制されることとなり、ペースト層の表面の平坦化を促進することもできる。そして、第2の乾燥工程にて対流伝熱により第1の乾燥工程における雰囲気温度よりも高い雰囲気温度にてペースト層を乾燥させるので、表面近傍部分を含んだペースト層全体での乾燥がより一層促進され、ペースト層における溶剤の残留が抑制され、乾燥されたペースト層の通気抵抗を低くすることができる。
【0008】
好ましくは、第1の乾燥工程では、放射伝熱に加え、対流伝熱によりペースト層を乾燥させており、放射伝熱による温度が対流伝熱による温度よりも高く設定されている。この場合、ペースト層の表面近傍部分での乾燥の抑制を阻害することなく、ペースト層の乾燥を全体的に促進させることができる。
【0009】
より好ましくは、第2の乾燥工程における対流伝熱での流体の移動速度が、第1の乾燥工程における対流伝熱での流体の移動速度よりも速く設定されている。この場合、第2の乾燥工程での熱置換効率がより一層高まることとなり、第2の乾燥工程での乾燥をより一層促進させることができる。
【0010】
また、好ましくは、第2の乾燥工程では、対流伝熱に加え、放射伝熱によりペースト層を乾燥さており、対流伝熱による温度が放射伝熱による温度よりも高く設定されている。この場合、雰囲気温度の過上昇を抑制して、支持体が過度の熱履歴を受けてしまうのを防ぐ一方、第2の乾燥工程での乾燥をより一層促進させることができる。
【0011】
好ましくは、第2の乾燥工程による乾燥時間が、第1の乾燥工程による乾燥時間よりも短く設定されている。この場合、雰囲気温度が高くなる第2の乾燥工程による乾燥時間を短くすることにより、支持体が受ける熱履歴を低減して、支持体の変形を防止することができる。
【0012】
好ましくは、冷却工程では、対流伝熱により冷却しており、冷却工程における対流伝熱での流体の移動速度が、第2の乾燥工程における対流伝熱での流体の移動速度よりも速く設定されている。この場合、熱置換効率がより一層高まり、支持体、グリーンシート、及びペースト層が速やかに冷却されることとなる。この結果、支持体が受けた熱履歴を解消することができる。
【0013】
好ましくは、冷却工程における雰囲気温度は、支持体のガラス転移温度未満に設定されている。この場合、支持体の冷却を極めて速やかに行なうことができる。
【0014】
好ましくは、第1の乾燥工程における雰囲気温度は、支持体のガラス転移温度未満に設定されている。この場合、第1の乾燥工程において支持体が受ける熱履歴を低減して、支持体の変形を抑制することができる。
【0015】
好ましくは、放射伝熱による乾燥が、遠赤外線の照射による乾燥であり、対流伝熱による乾燥が、熱風による乾燥である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シートアタックの発生を抑制すると共に、乾燥後のペースト層の通気抵抗を低くすることが可能な積層電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る積層電子部品の製造装置を示す模式図である。
【図2】乾燥装置及び冷却装置を示す模式図である。
【図3】支持体とセラミックグリーンシートとを示す概略平面図である。
【図4】支持体、セラミックグリーンシート、及び電極ペースト層を示す概略平面図である。
【図5】遠赤外線ヒータの温度、熱風の温度、及び電極ペースト層の雰囲気温度の変化を示す線図である。
【図6】風速の変化を示す線図である。
【図7】遠赤外線ヒータの温度、熱風の温度、及び電極ペースト層の雰囲気温度の変化を示す線図である。
【図8】風速の変化を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
まず、図1及び2を参照して、本実施形態に係る積層電子部品の製造装置について説明する。図1は、本実施形態に係る積層電子部品の製造装置を示す模式図である。図2は、積層電子部品の製造装置が備える乾燥装置及び冷却装置を示す模式図である。
【0020】
図1に示された製造装置において、一面側にセラミックグリーンシート(未焼成のセラミック層)が形成されている支持体1は、供給ロール3から、矢印F1で示す方向に引き出され、案内ローラ5を通り、印刷用のテーブル7に導かれる。支持体1は、可撓性を有する樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))からなり、帯状の長尺フィルムである。セラミックグリーンシートは、セラミック粉末(例えば、BaTiO粉等の誘電体粉末)、有機バインダ(例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂等)、及び有機溶剤(例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、キシレン、エタノール、メチルエチルケトン等)を混合してスラリー化し、スラリー化により得られたセラミックペーストを、支持体1上にドクターブレード法を用いてシート成形し、乾燥させることにより得ることができる。セラミックペーストは、上記以外に各種分散剤、可塑剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体などが必要に応じて含有されていてもよい。
【0021】
印刷用のテーブル7の上において、印刷装置9により、支持体1の一面上に形成されたセラミックグリーンシートに、所定のパターンを有する導電性のペーストが印刷されて、電極ペースト層が形成される。印刷の手法としては、例えば、スクリーン印刷等が挙げなれる。導電性のペーストは、例えば、導体粉(Ni粉、Cu粉等)を、バインダ(セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、アリール樹脂、アクリル樹脂等)及び有機溶剤(トルエン、ターピネオール、エチルセルロース等)に分散させてペースト状にしたものである。
【0022】
電極ペースト層が形成されたセラミックグリーンシートを載置した支持体1は、透過光目視検査台11及び案内ローラ13を経て、ローラ15,17間に掛けられたベルトコンベア19に乗せられ、乾燥装置21で乾燥処理が施される。その後、支持体1は、冷却装置23で冷却処理が施され、案内ローラ25を通り、巻き取りローラ27で巻き取られる。
【0023】
乾燥装置21は、図2に示されるように、未乾燥の電極ペースト層が形成されたセラミックグリーンシートを載置した支持体1を通す複数の乾燥室31,33を有している。すなわち、まず、電極ペースト層が形成されたセラミックグリーンシートを載置した支持体1は、まず乾燥室31に入り、乾燥室31にて乾燥処理が施され、その後乾燥室31から乾燥室33に入り、乾燥室33にて乾燥処理が施される。
【0024】
各乾燥室31,33は、支持体1の送り方向F1に関して、出口側となる一端側に給気路35を有し、入口側となる他端側に排気路37を有している。給気路35から乾燥室31内に矢印J1にて示されるように流入した熱風は、乾燥室31,33の内部を通過し、排気路37から矢印J2の方向に排出される。セラミックグリーンシートの上の電極ペースト層は、支持体1の送り方向F1とは逆の方向F2の方向に流れる熱風によって乾燥される。すなわち、乾燥室31,33では、対流伝熱による乾燥を行なうことが可能である。乾燥装置21は、乾燥室31,33における熱風の風速を調節可能に構成されている。
【0025】
各乾燥室31,33は、更に、遠赤外線ヒータ39を有している。したがって、給気路35から供給される熱風による乾燥作用とともに、遠赤外線ヒータ39による乾燥作用が得られる。すなわち、乾燥室31,33では、対流伝熱による乾燥に加え、放射伝熱による乾燥を行なうことも可能である。
【0026】
支持体1の搬送方向での乾燥室31の長さと乾燥室33との長さが同等に設定されている。支持体1がベルトコンベア19により乾燥室31,33を搬送されていることから、乾燥室31における支持体1の搬送時間と、乾燥室33における支持体1の搬送時間とは、ほぼ同等となる。
【0027】
冷却装置23は、乾燥処理された電極ペースト層が形成されたセラミックグリーンシートを載置した支持体1を通す冷却室41を有している。冷却室41は、支持体1の送り方向F1に関して、出口側となる一端側に給気路43を有し、入口側となる他端側に排気路45を有している。給気路43から冷却室41内に矢印J3にて示されるように流入した冷却風は、冷却室41の内部を通過し、排気路45から矢印J4の方向に排出される。支持体1及び電極ペースト層は、支持体1の送り方向F1とは逆の方向F3の方向に流れる冷却風によって冷却される。すなわち、冷却室41では、対流伝熱による冷却が可能である。
【0028】
支持体1の搬送方向での冷却室41の長さは、乾燥室31,33の長さに比して短く設定されている。これにより、冷却室41における支持体1の搬送時間は、乾燥室31,33における支持体1の搬送時間に比して短い。
【0029】
続いて、図3〜図6を参照して、本実施形態に係る積層電子部品の製造方法について説明する。
【0030】
まず、準備工程として、セラミックグリーンシートを準備する。支持体1の一面上に、上述したセラミックペーストを塗布し、乾燥することにより、セラミックグリーンシート51を形成する(図3参照)。図3は、支持体とセラミックグリーンシートとを示す概略平面図であり、支持体の一面側から見た図である。
【0031】
次に、電極ペースト層形成工程として、印刷装置9により、セラミックグリーンシート51上の所定の位置に上述した導電性のペーストを印刷、塗布して、電極ペースト層53を形成する(図4参照)。図4は、支持体、セラミックグリーンシート、及び電極ペースト層を示す概略平面図であり、支持体の一面側から見た図である。
【0032】
次に、第1の乾燥工程として、乾燥装置21の乾燥室31により、電極ペースト層53を乾燥させる。乾燥室31では、遠赤外線ヒータ39による乾燥を主体として、熱風による乾燥を補助とする。すなわち、乾燥室31では、図5のゾーンIに示されるように、遠赤外線ヒータ39の温度が熱風の温度よりも高く設定されている。遠赤外線ヒータ39の温度は、例えば60〜80℃の範囲内に設定される。熱風の温度は、例えば40〜60℃の範囲内に設定される。ゾーンIでは、更に、電極ペースト層53(支持体1)の雰囲気温度が支持体1のガラス転移温度未満に設定されるように、遠赤外線ヒータ39の温度及び熱風の温度が設定される。図5は、各ゾーンI〜IIIにおける、遠赤外線ヒータの温度、熱風の温度、及び電極ペースト層の雰囲気温度の変化を示す線図である。図5において、遠赤外線ヒータの温度は特性T1で示され、熱風の温度は特性T2で示され、電極ペースト層の雰囲気温度は特性T3で示されている。
【0033】
次に、第2の乾燥工程として、乾燥装置21の乾燥室33により、電極ペースト層53を更に乾燥させる。乾燥室33では、熱風による乾燥を主体として、遠赤外線ヒータ39による乾燥を補助とする。すなわち、乾燥室33では、図5のゾーンIIに示されるように、熱風の温度が遠赤外線ヒータ39の温度よりも高く設定されている。遠赤外線ヒータ39の温度は、例えば40〜60℃の範囲内に設定される。熱風の温度は、例えば130〜170℃の範囲内に設定される。ゾーンIIでは、電極ペースト層53(支持体1)の雰囲気温度が支持体1のガラス転移温度以上となっている。
【0034】
乾燥室31における支持体1の搬送時間と、乾燥室33における支持体1の搬送時間とがほぼ同等とされていることから、第1の乾燥工程における乾燥時間と、第2の乾燥工程における乾燥時間は、ほぼ同等に設定されることとなる。
【0035】
図6のゾーンI,IIに示されるように、乾燥室33における熱風の風速は、乾燥室31における熱風の風速よりも高く設定されている。乾燥室31における風速は、例えば、3〜8m/sの範囲内に設定される。乾燥室33における風速は、例えば、15〜30m/sの範囲内に設定される。図6は、各ゾーンI〜IIIにおける、風速の変化を示す線図である。図5及び図6におけるゾーンI,IIの長さは、それぞれ対応する乾燥室31,33又は冷却室41での処理時間(乾燥時間又は冷却時間)の長さに比例して示されている。
【0036】
以上から、第1及び第2乾燥工程では、電極ペースト層53は、乾燥室31にて乾燥された後、乾燥室33にて、乾燥温度が乾燥室31での乾燥温度よりも高く且つ熱風の風速が乾燥室31でのよりも高い条件の下で、ほぼ同時間に亘って乾燥されることとなる。この間、支持体1は、熱履歴を受ける。
【0037】
次に、冷却工程として、冷却装置23の冷却室41により、支持体1、セラミックグリーンシート51、及び電極ペースト層53を冷却する。冷却室41では、図5のゾーンIIIに示されるように、乾燥室31,33での熱風の温度よりも低い温度の冷却風により、支持体1、セラミックグリーンシート51、及び電極ペースト層53が冷却される。冷却風の温度は、例えば20〜50℃の範囲内に設定される。図6のゾーンIIIに示されるように、冷却室41における冷却風の風速は、乾燥室31,33における熱風の風速よりも更に高く設定されている。冷却室41における風速は、例えば、40〜50m/sの範囲内に設定される。
【0038】
次に、セラミックグリーンシート51を所定の位置で切断し、複数のセラミックグリーンシートに分離する。その後、分離された複数のセラミックグリーンシートは、電極ペースト層が形成されていないセラミックグリーンシートと共に積層し、シート積層体を得る(積層工程)。
【0039】
次に、得られたシート積層体を、所定の位置で切断し、複数の積層グリーンチップを得る(切断工程)。次に、積層グリーンチップに含まれる樹脂成分を除去し、焼成して、セラミック素体を得る(焼成工程)。その後、セラミック素体の側面に端子電極を形成する(端子形成工程)。以上の工程により、積層電子部品が完成する。
【0040】
以上のように、本実施形態では、第1の乾燥工程にて遠赤外線ヒータ39による遠赤外線の照射を主体として電極ペースト層53を乾燥させているので、電極ペースト層53の内側部分やセラミックグリーンシート51との界面近傍部分での乾燥が促進され、シートアタックの発生を抑制することができる。また、第1の乾燥工程では、電極ペースト層53の表面近傍部分での乾燥、すなわち溶剤の揮発が抑制されることとなる。このため、電極ペースト層53の流動性が失われ難く、電極ペースト層53の表面の平坦化を促進することができる。電極ペースト層53の表面の平坦化されると、特に積層電子部品が積層コンデンサである場合には、絶縁破壊電圧が向上する。電極の被覆率が向上すると、積層コンデンサにあっては、静電容量のばらつきが抑制される。
【0041】
本実施形態では、第1の乾燥工程における雰囲気温度は、支持体1のガラス転移温度未満に設定されている。これにより、第1の乾燥工程において支持体1が受ける熱履歴を低減して、支持体1の変形を抑制することができる。
【0042】
そして、第2の乾燥工程にて熱風を主体とし且つ第1の乾燥工程における雰囲気温度よりも高い雰囲気温度にて電極ペースト層53を乾燥させるので、表面近傍部分を含んだ電極ペースト層53全体での乾燥がより一層促進され、すなわち溶剤の揮発が促進されることとなる。これにより、電極ペースト層53における溶剤の残留が抑制され、乾燥された電極ペースト層53の通気抵抗を低くすることができる。
【0043】
第1の乾燥工程では、遠赤外線ヒータ39による遠赤外線の照射に加え、熱風により電極ペースト層53を乾燥させており、遠赤外線ヒータ39の温度が熱風の温度よりも高く設定されている。これにより、電極ペースト層53の表面近傍部分での乾燥の抑制を阻害することなく、電極ペースト層53の乾燥を全体的に促進させることができる。もちろん、ペースト層の表面の平坦化促進及びシートアタックの発生抑制という効果は保つことができる。
【0044】
本実施形態では、第2の乾燥工程における熱風の風速が、第1の乾燥工程における熱風の風速よりも速く設定されている。これにより、第2の乾燥工程における熱置換効率がより一層高まることとなり、第2の乾燥工程での乾燥をより一層促進させることができる。
【0045】
第2の乾燥工程では、熱風に加え、遠赤外線ヒータ39による遠赤外線の照射により電極ペースト層53を乾燥させており、熱風の温度が遠赤外線ヒータ39の温度よりも高く設定されている。これにより、雰囲気温度の過上昇を抑制して、支持体1が過度の熱履歴を受けてしまうのを防ぐ一方、第2の乾燥工程での乾燥をより一層促進させることができる。
【0046】
冷却工程では、支持体1、セラミックグリーンシート51、及び電極ペースト層53を冷却風により冷却しており、冷却工程における冷却風の風速が、第2の乾燥工程における熱風の風速よりも速く設定されている。これにより、冷却工程における熱置換効率がより一層高まり、支持体1、セラミックグリーンシート51、及び電極ペースト層53が速やかに冷却されることとなる。この結果、支持体1が受けた熱履歴を解消することができる。
【0047】
本実施形態では、冷却工程における雰囲気温度は、支持体1のガラス転移温度未満に設定されている。これにより、支持体1、セラミックグリーンシート51、及び電極ペースト層53の冷却を極めて速やかに行なうことができ、支持体1が受けた熱履歴を確実且つ短期間で解消することができる。
【0048】
続いて、図7及び図8を参照して、本実施形態の変形例に係る積層電子部品の製造方法について説明する。本変形例は、上述した実施形態と、第1及び第2の乾燥工程における乾燥時間の点で相違する。
【0049】
本変形例では、図7及び図8に示されように、第2の乾燥工程による乾燥時間が、第1の乾燥工程による乾燥時間よりも短く設定されている。これらの乾燥時間の設定は、例えば、支持体1の搬送方向での乾燥室33の長さを乾燥室31の長さより短くすることにより、乾燥室33における支持体1の搬送時間を乾燥室31における支持体1の搬送時間より短くすることにより実現することができる。
【0050】
第2の乾燥工程による乾燥時間が第1の乾燥工程による乾燥時間よりも短く設定されることにより、雰囲気温度が比較的高くなる第2の乾燥工程による乾燥時間が短くなる。この結果、支持体1が受ける熱履歴がより一層低減され、支持体1の変形を確実に防止することができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0052】
本実施形態では、第1及び第2の乾燥工程において、遠赤外線ヒータ39の温度及び熱風の温度は略一定となるように設定されているが、これに限られることなく、多段階に設定されていてもよく、各工程内において変化するように設定されていてもよい。第1及び第2の乾燥工程及び冷却工程における風速も、多段階に設定されていてもよく、各工程内において変化するように設定されていてもよい。
【0053】
本実施形態では、冷却工程において、冷却風により支持体1、セラミックグリーンシート51、及び電極ペースト層53を冷却しているが、これに限られない。例えば、自然冷却により、支持体1、セラミックグリーンシート51、及び電極ペースト層53を冷却してもよい。
【0054】
本実施形態では、本発明を電極ペースト層53の乾燥工程に適用しているが、これに限られない。本発明は、例えば、セラミックグリーンシート51の電極ペースト層53が形成された領域以外の余白領域にセラミックペーストを塗布して形成されたセラミックペースト層の乾燥工程にも適用することができる。
【0055】
本発明は、積層電子部品として、積層コンデンサに限らず、積層バリスタ、インダクタとコンデンサ又はバリスタの双方を有する複合部品等に適用しても同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1…支持体、9…印刷装置、21…乾燥装置、23…冷却装置、31,33…乾燥室、35…給気路、37…排気路、39…遠赤外線ヒータ、41…冷却室、43…給気路、45…排気路、51…セラミックグリーンシート、53…電極ペースト層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する支持体上に載置され、バインダを含むグリーンシートを準備する準備工程と、
前記グリーンシート上に、溶剤を含むペーストを塗布し、ペースト層を形成するペースト層形成工程と、
前記ペースト層を放射伝熱により乾燥させる第1の乾燥工程と、
前記第1の乾燥工程の後に、前記ペースト層を対流伝熱により前記第1の乾燥工程における雰囲気温度よりも高い雰囲気温度にて乾燥させる第2の乾燥工程と、
前記支持体、前記グリーンシート、及び前記ペースト層を冷却する冷却工程と、を備えていることを特徴とする積層電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記第1の乾燥工程では、放射伝熱に加え、対流伝熱により前記ペースト層を乾燥させており、
放射伝熱による温度が対流伝熱による温度よりも高く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記第2の乾燥工程における対流伝熱での流体の移動速度が、前記第1の乾燥工程における対流伝熱での流体の移動速度よりも速く設定されていることを特徴とする請求項2に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記第2の乾燥工程では、対流伝熱に加え、放射伝熱により前記ペースト層を乾燥さており、
対流伝熱による温度が放射伝熱による温度よりも高く設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記第2の乾燥工程による乾燥時間が、前記第1の乾燥工程による乾燥時間よりも短く設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記冷却工程では、対流伝熱により冷却しており、
前記冷却工程における対流伝熱での流体の移動速度が、前記第2の乾燥工程における対流伝熱での流体の移動速度よりも速く設定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記冷却工程における雰囲気温度は、前記支持体のガラス転移温度未満に設定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記第1の乾燥工程における雰囲気温度は、前記支持体のガラス転移温度未満に設定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層電子部品の製造方法。
【請求項9】
放射伝熱による乾燥が、遠赤外線の照射による乾燥であり、
対流伝熱による乾燥が、熱風による乾燥であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−199523(P2010−199523A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46106(P2009−46106)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】