説明

積層電気−機械エネルギー変換素子及び振動波駆動装置

【課題】 小型化且つ高出力化できると共にモ−タ効率を向上させることができる積層電気−機械エネルギー変換素子及び振動波駆動装置を提供する。
【解決手段】 振動波モータ50は、振動子52及び回転部53を備え、振動子52は、金属の弾性体54と、円形状圧電層1〜11から成る積層圧電素子55と、金属の弾性体57と、弾性体54と協働して積層圧電素子55及び弾性体57を挟持する金属の弾性体58とから成る。圧電層2〜11のうち偶数番目の層の圧電層の第1層側の面には、内部電極A+,B+,A−,B−が設けられ、一方、圧電層2〜11のうち奇数番目の層の圧電層の第1層側の面には、内部電AG+,BG+,AG−,BG−が設けられている。これらの内部電極は、積層圧電素子55の内部の発生すべき歪に応じて、圧電層7〜11までの内部電極に比べて、圧電層5,6の内部電極の外径は小さく、圧電層2〜4の内部電極は外径がさらに小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層電気−機械エネルギー変換素子及び振動波駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すような従来の振動波モータ90は、例えばカメラ用レンズのオートフォーカス用モータとして使用される。
【0003】
図6において、振動波モータ90は、ボルト状部材91と、ボルト状部材91の軸部に外嵌された振動子92及び回転部93と、振動子92と協働して回転部93を締め付けるべくボルト状部材91にねじ止めされたナット状部材94とから成る。
【0004】
振動子92は、ボルト状部材91の頭部91a側から順に、金属の弾性体95と、図示しない外部電源と接続する配線基板96と、積層圧電素子97と、弾性体95と協働して配線基板96及び積層圧電素子97を挟持すべくボルト状部材91にねじ止めされた金属の弾性体98とから成る。
【0005】
回転部93は、後述するナット状部材94側から順に、ナット状部材94にボールベアリングで支持されているギヤ99と、ギヤ99と一体的に回転すると共に弾性体98に接触するロータ100(移動体)と、ギア99に対してロータ100をボルト状部材91の頭部91a側に付勢するバネ101及びバネ支持体102とから成る。
【0006】
バネ101は、その付勢力によりロータ100を弾性体98に加圧接触させる。
【0007】
積層圧電素子97は、電極材料で形成された電極層(以下「内部電極」という)が一方の面に形成された電気―機械エネルギー変換機能セラミックス層(以下「圧電層」という)を複数層重ねた積層構造である(例えば、特許文献1〜3参照)。この積層構造により、低い電圧で大きな変形歪や大きな力を得ることができる。
【0008】
図7は、図6における積層圧電素子97を説明するのに用いられる図であり、(a)斜視図であり、(b)は分解斜視図である。
【0009】
図7は、具体的には、特許文献3(特許第3432321号公報)に記載の積層圧電素子を示している。
【0010】
積層圧電素子97は、図7(a)に示すように、外径10mm、内径2.8mm、厚さ約2.3mmの内径部を有する円盤状であり、図7(b)に示すように、第1層の圧電層110と、その下の第2層〜第25層において交互に配された圧電層111及び圧電層112とから成る。圧電層110,111,112は厚さが約90μmである。
【0011】
第1層側における圧電層111の面には、4分割された内部電極A+,B+,A−,B−が設けられ、一方、第1層側における圧電層112の面には、4分割された内部電極AG+,BG+,AG−,BG−が設けられている。圧電層111の内部電極A+,B+,A−,B−と、圧電層112の内部電極AG+,BG+,AG−,BG−とは、外径及び内径の寸法が等しく、その厚さは2〜3μmである。
【0012】
また、各圧電層111,112には、スルーホール113が合計8つ形成されて、スルーホール113の中には電極材料が充填されており、各内部電極の導通を図ることが可能である。このうちの4つのスルーホール113は、1枚おきに重ねられた各圧電層111における4分割の内部電極A+,B+,A−,B−を夫々独立して導通させ、他の4つは、もう一方の1枚おきに重ねられた各圧電層112における4分割された内部電極AG+、BG+、AG−、BG−を夫々独立して導通させている。第25層の圧電層112は最下層なのでスル−ホ−ルを有していない。
【0013】
圧電層110の表面にはスルーホール113内の電極材料の一端113aが達しており、これらの電極材料の一端113aは配線基板96と直接接触し、配線基板96の各電極配線(不図示)に電気的に接続されている。
【0014】
積層圧電素子97は、各圧電層111の4分割の内部電極A+、B+、A−、B−のうち互いに180°の位置関係にあるA+、A−とB+、B−との各2つが分極極性が互いに+(プラス)と−(マイナス)とに異なるように、AG+,BG+,AG−,BG−をグランドとしてA+とB+に+の電圧を印加し、A−,B−に−の電圧を印加して分極処理を行う。そして、振動波モータ90は、A+とA−のA相、A相と空間位相位置が90°異なるB+とB−のB相に、夫々対向するAG相、BG相をグランドとして、A相に振動子97の固有振動数とほぼ一致した高周波電圧を印加すると共に、B相にA相とは電気的に90°位相の異なる同一振動数の高周波電圧を印加することにより、互いに直交する2つの曲げ振動を振動子92に発生させ、発生した2つの曲げ振動の合成により得られる駆動振動により、バネ101を介して弾性体98の一方の面に加圧接触したロ−タ100を摩擦力により駆動する。
【0015】
上記従来の振動波モータ90の積層圧電素子97は、上述のように圧電層の内部電極の大きさ(外径と内径の寸法)が一様である。これは積層圧電素子97が発生する歪分布が、図8に示すように、歪みの大きさの違い((a)〜(c))は多少あるものの比較的単純な分布であるためである。
【0016】
このような振動波モータは、最近特に、各種の機器に対応できるように小型化、高効率化、高出力化が強く望まれている(例えば、特許文献4〜6参照)。
【特許文献1】特許第3311034号公報
【特許文献2】特許第3313782号公報
【特許文献3】特許第3432321号公報
【特許文献4】特開2003−134858号公報
【特許文献5】特開2003−199376号公報
【特許文献6】特開2003−209983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記小型化、高効率化、高出力した振動波モ−タは、依然として効率や出力が低く積層圧電素子に新たな課題があること、具体的には、積層圧電素子の構造解析から、小型の振動波モータの小型振動子においては、振動子を効率良く振動させるため積層圧電素子内部で発生させるべき歪が、厚さ方向や半径方向において大きな分布を有していることが分かった。
【0018】
即ち、小型の振動子に使う積層圧電素子の内部電極を従来のように、積層圧電素子の内部全体に一様に形成すると、振動子を振動させるために本来歪を必要としない領域や逆の歪であるべき領域においても、歪の発生が起こることになり、これは供給する電力の損失を引き起こす原因になり、この結果、振動波モータの効率が低下し、出力も充分に出ないことが予想される。
【0019】
本発明の目的は、小型化且つ高出力化できると共にモ−タ効率を向上させることができる積層電気−機械エネルギー変換素子及び振動波駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、請求項1記載の積層電気−機械エネルギー変換素子は、複数の電極層が夫々各一方の面に形成されると共に互いに積層された複数の電気−機械エネルギー変換機能材料層を備え、前記複数の電極層が夫々電気的に接続された積層電気−機械エネルギー変換素子において、前記複数の電極層は、形状が積層電気−機械エネルギー変換素子の内部に発生する歪分布に応じて異なることを特徴とする。
【0021】
請求項2記載の積層電気−機械エネルギー変換素子は、請求項1記載の積層電気−機械エネルギー変換素子において、前記複数の電極層は、形状が夫々実質的に円形であることを特徴とする。
【0022】
請求項3記載の積層電気−機械エネルギー変換素子は、請求項1記載の積層電気−機械エネルギー変換素子において、前記複数の電極層は、形状が夫々実質的に多角形であることを特徴とする。
【0023】
請求項4記載の積層電気−機械エネルギー変換素子は、請求項1記載の積層電気−機械エネルギー変換素子において、前記多角形は矩形であることを特徴とする。
【0024】
請求項5記載の積層電気−機械エネルギー変換素子は、請求項1記載の積層電気−機械エネルギー変換素子において、前記の複数の電極層は、積層方向に向かって外径が段階的に小さくなることを特徴とする。
【0025】
請求項6記載の積層電気−機械エネルギー変換素子は、請求項1記載の積層電気−機械エネルギー変換素子において、前記複数の電極層は、積層方向に向かって内径が段階的に小さくなることを特徴とする。
【0026】
上記目的を達成するために、請求項7記載の振動波駆動装置は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層電気−機械エネルギー変換素子、及び当該積層電気−機械エネルギー変換素子を挟持する2つの弾性体から成る振動子を有し、前記積層電気−機械エネルギー変換素子は、前記弾性体駆動用の交流電圧を受容するように構成されていることを特徴とする。
【0027】
請求項8記載の振動波駆動装置は、請求項7記載の振動波駆動装置において、前記振動子に接触して前記振動子に励起した振動波によって駆動される移動体を有し、前記積層電気-機械エネルギー変換素子の積層方向の前記移動体側に向かって、前記複数の電極層の外径が段階的に小さくなることを特徴とする。
【0028】
請求項9記載の振動波駆動装置は、請求項7記載の振動波駆動装置において、前記振動子に接触して前記振動子に励起した振動波によって駆動される移動体を有し、前記積層電気-機械エネルギー変換素子の積層方向の前記移動体側に向かって、前記複数の電極層の内径が段階的に小さくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
請求項1記載の積層電気−機械エネルギー変換素子及び請求項5記載の振動波駆動装置によれば、複数の電極層は、形状が積層電気−機械エネルギー変換素子の内部に発生する歪分布に応じて異なるので、発生する歪み分布を必要とされるものに合わせることができ、もって振動波駆動装置を小型化且つ高出力化できると共に駆動装置効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳述する。
【0031】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る振動波駆動装置の断面図である。
【0032】
図1において、振動波モータ50は、シャフト51と、シャフト51に外嵌された振動子52及び回転部53と、振動子52と協働して回転部を締め付けるべくシャフト51にねじ止めされたナット状部材62とを備え、図6に示す振動波モータ90よりも全長が短く小型である。
【0033】
振動子52は、シャフト51の一端にねじ止めされた金属の弾性体54と、弾性体54側から順に、積層電気−機械エネルギー変換素子としての積層圧電素子55(図2)と、外部電源と接続する配線基板56と、金属の弾性体57と、弾性体54と協働して積層圧電素子55、配線基板56、及び弾性体57を挟持する金属の弾性体58とから成る。
【0034】
回転体53は、弾性体58を収容すると共に、一端に弾性体57と接触する接触リング59Aが嵌められたロータ59(移動体)と、ロータ59の他端をシャフト51の軸方向に移動自在且つ回転不能に収容するギヤ60と、シャフト51に外嵌された円盤部材61と、ロータ59の内部においてロータ59とギヤ60の間に配され、且つ双方を互いに離間するように付勢するバネ63とから成る。
【0035】
バネ63は、その付勢力によりロータ59の接触リング59Aを弾性体57に加圧接触させる。
【0036】
配線基板56は、配線用にパタ−ニングされた電極配線(不図示)を有しており、積層圧電素子55の各々の電極材料の一端14(図2)と電気的に導通するように機械的に密着している。
【0037】
図2は、図1における積層圧電素子55を説明するのに用いられる図であり、(a)は斜視図であり、(b)は分解斜視図である。
【0038】
積層圧電素子55は、図2(a)に示すように、外径6mm、内径1.7mm、厚さ約0.7mmの内径部を有する円盤状であり、図2(b)に示すように、第1層の円形状電気−機械エネルギー変換機能セラミックス層(以下「圧電層」という)1と、その下の第2層〜第11層の円形状圧電層2〜11とから成る。圧電層1〜11の厚さは約60μmである。この積層圧電素子55は、従来のものに比して外径が小さく、厚さも薄い。
【0039】
圧電層2〜11のうち偶数番目の層の圧電層の第1層側の面には、十字形に形成されたスリット(未電極形成部)を介して4分割された電極材料層である電極層(以下「内部電極」という)A+,B+,A−,B−が設けられ、一方、圧電層2〜11のうち奇数番目の層の圧電層の第1層側の面には、同じく4分割された内部電極AG+,BG+,AG−,BG−が設けられている。内部電極は厚さが2〜3μmである。図7の従来の積層圧電素子97における内部電極の大きさ(外径と内径の寸法)が同一であるのに対して、図2の積層圧電素子55における内部電極は、それらの外径が圧電層5,6については圧電層7〜11のものより小さく、圧電層2〜4についてはさらに小さくなっている。この理由は後述する。
【0040】
また、各圧電層1〜11には、スルーホール13が合計8つ形成されて中に電極材料が充填されていて、分割された各内部電極の導通を図ることが可能である。このうちの4つのスルーホール13は、偶数番目の層の各圧電層2,4,6,8,10における4分割の内部電極A+,B+,A−,B−を夫々独立して導通させ、他の4つは、もう一方の奇数番目の層の各圧電層3,5,7,9,11における4分割された内部電極AG+、BG+、AG−、BG−を夫々独立して導通させている。第11層の圧電層11は最下層なのでスル−ホ−ルを有していない。
【0041】
圧電層1のスルーホール13には、電極材料の一端14が達しており、これらの電極の一端14は配線基板56の各電極配線に電気的に接続されている。
【0042】
積層圧電素子55は、各圧電層2,4,6,8,10の4分割の内部電極A+、B+、A−、B−のうち互いに180°の位置関係にあるA+、A−とB+、B−との各2つが分極極性が互いに+(プラス)と−(マイナス)とに異なるように、AG+,BG+,AG−,BG−をグランドとしてA+とB+に+の電圧を印加し、A−,B−に−の電圧を印加して分極処理を行う。そして。振動波モ−タ50は、A+とA−のA相、A相と空間位相位置が90°異なるB+とB−のB相に対向するAG相、BG相をグランドとして、A相に振動子52の固有振動数とほぼ一致した高周波電圧を印加すると共に、B相にA相とは電気的に90°位相の異なる同一振動数の高周波電圧を印加することにより、互いに直交する2つの曲げ振動を発生させ、発生した2つの曲げ振動の合成により得られる駆動振動により、バネ63を介して弾性体57の一方の面に加圧接触した接触リング59Aと一体的になったロータ59を摩擦力により駆動する。
【0043】
以下、積層圧電素子55における内部電極の外径が圧電層5,6について圧電層7〜11ものより小さく、圧電層2〜4についてはさらに小さくなっている理由を説明する。
【0044】
図3は、図2における積層圧電素子の内部で発生すべき歪の分布を説明するのに用いられる部分断面図である。
【0045】
図3の「歪」は、積層圧電素子55の、例えばA+又はAG+の振動時における厚さ方向の伸縮のうち伸びに関する歪であり、歪分布はロータ59側の積層圧電素子の上部では、内径側が最も大きく(領域(a))、積層圧電素子の外径側、且つ下部ほど小さい(領域(b)、(c)、(d))。領域(e)では歪はほとんど0(ゼロ)であり、また、上部外径側の領域(f)では、発生する歪は領域(a)〜(d)とは逆の圧縮である。このような歪分布は、積層圧電素子55や弾性体54,57,58、シャフト51の寸法、形状や、材質によるヤング率等が主要因で決まるものであり、小型化、特に図1に示すような全長の短いより扁平な振動子では発生し易くなる。
【0046】
図3によれば、領域(e)では歪を発生させる必要はなく、さらに、上部外径側の領域(f)では、積層圧電素子が本来発生すべき歪とは逆の圧縮でなければならないことを示している。特に、この領域では、素子が発生する伸びの歪は役に立たないばかりか、逆に、損失を引き起こすことが分かる。したがって、上部外径側の領域を避けるために、上部に位置するほどその外径が段階的に小さくなるように電極層を構成している。
【0047】
以上により、本実施の形態によれば、積層圧電素子55の内部電極は、それらの大きさが積層圧電素子55の内部の発生すべき歪に応じて異なっており、これにより、振動子を有効に振動させることができ、もって振動波モータ50を小型化且つ高出力化できると共にモ−タ効率を向上させることができる。
【0048】
本実施の形態では、内部電極の大きさは3種類であるが、全ての層で適切となるように互いに異なった大きさとなっていてもよい。ただし、実際の振動波モータにおいては、例えば、圧電層5,6の内部電極を圧電層2〜4の内部電極と同一とし、また、圧電層5,6の内部電極を圧電層7〜11の内部電極と同一としても効果があり、2種類ですめば積層圧電素子の製造コストを低減でき実用的である。
【0049】
上記積層圧電素子は、まず、圧電層となる圧電セラミックス粉末と有機バインダ−からなるグリ−ンシ−ト上にスルーホール用の孔を開け、その孔に銀・パラジウム粉末ペ−ストを充填し、次に、内部電極となる銀・パラジウム粉末ペ−ストをスクリ−ン印刷で形成した上で各グリーンシートを重ね、さらに、加熱しながら加圧して積層化し、そして、焼成前に内径部を機械加工で開けた後、鉛雰囲気中で約1100℃で焼成し、焼成後分極した後、両面ラップ加工を行い、最後に外径部を機械(研削)加工で加工することにより製造する。
【0050】
このように、本実施の形態の積層圧電素子55は積層圧電素子内部に発生すべき歪分布に応じて、積層方向に関して内部電極の大きさを適切に変えることで、従来例のように積層圧電素子内部の内部電極を全層を同一にした積層圧電素子に比べて、振動子を効率良くに振動させることが可能となり、もって振動波モ−タの出力(回転数×トルク)や効率を向上させることができる。
【0051】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る振動波駆動装置の断面図である。
【0052】
本第2の実施の形態は、その構成が上記第1の実施の形態と基本的に同じであり、同じ構成要素については同一の符号を付して重複した説明を省略し、以下に異なる構成要素についてのみ説明する。
【0053】
図4において、超音波モータ50’は、後述する図5の断面四角形の積層圧電素子55’を有し、配線基板56を有していない。積層圧電素子55’には、その外周面の4つの角隅部に2本ずつ計8本の外部電極42が形成され、その周りを巻回するように、外部電極42と接続すると共に、図示しない外部電源が接続されている配線基板57が取り付けられている。
【0054】
図5は、図4における積層圧電素子55’を説明するのに用いられる図であり、(a)は斜視図であり、(b)は分解斜視図である。
【0055】
図5において、図5(a)に示すように、縦横5mm、内径1.7mm、厚さ約0.7mmの四角柱であり、図5(b)に示すように、第1層の四角形状圧電層21と、その下の第2層〜第19層の四角形状圧電層22〜39とから成る。各圧電層21〜39の厚さは約35μmである。
【0056】
圧電層22〜39のうち偶数番目の層の圧電層の第1層側の面には、十字形に形成されたスリット(未電極形成部)を介して4分割された内部電極A+,B+,A−,B−が設けられ、一方、圧電層22〜39のうち奇数番目の層の圧電層の第1層側の面には、同じく4分割された内部電AG+,BG+,AG−,BG−が設けられている。
【0057】
図4の積層圧電素子55’における内部電極は、積層圧電素子55’の内部に発生すべき歪分布に適合すべく、圧電層24〜36についてはそのほぼ全体に亘っているのに対して、圧電層22〜23についてはその内側部のみであり、圧電層37〜39についてはその外側部のみである。即ち、本実施の形態では、上部外側部の領域、及び、下部内側部の領域を避けるために、上部に位置するほどその外側部の領域、及び内側部の領域が段階的に小さくなるように電極層を構成している。内部電極の厚さは約2〜3μmであり、これは第1の実施の形態のように形成したものである。
【0058】
圧電層22〜39のうち偶数番目の層の圧電層には、これらを対向する一対の角隅部における4カ所で外部電極42に接続する接続電極41aが形成されており、圧電層22〜39のうち奇数番目の層の圧電層には、これらを対向する他の一対の角隅部における4カ所で外部電極42に接続する接続電極41bが形成されている。
【0059】
本実施の形態に係る超音波モータ50’の作動及び製造方法は、第1の実施の形態のものと同じである。
【0060】
本実施の形態に係る超音波モータ50’によれば、内部電極の形状が一様な積層圧電素子を備える超音波モータに比して、小型化できると共にモ−タ効率を向上させることができる。
【0061】
上記実施の形態では、積層圧電素子は内径部を有した例で説明したが、積層圧電素子は内径部を有していなくてもよい。
【0062】
上記実施の形態では、積層圧電素子は円形、四角形以外に、他の多角形であってもよく、さらに、内部電極の形状も円形、四角形以外に、他の多角形であってもよい。そして、内部電極の形状は円形であれば外径または内径の寸法の異なる形状の電極層からなり、また、四角形や多角形では外形や内形の寸法のことなる形状の電極層で構成された積層圧電素子となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る振動波駆動装置の断面図である。
【図2】図1における積層圧電素子を説明するのに用いられる図であり、(a)は斜視図であり、(b)は分解斜視図である。
【図3】図2における積層圧電素子の内部で発生すべき歪の分布を説明するのに用いられる部分断面図であり、内部電極がA+とAG+の場合を示す。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る振動波駆動装置の断面図である。
【図5】図4における積層圧電素子を説明するのに用いられる図であり、(a)は斜視図であり、(b)は分解斜視図である。
【図6】従来の超音波モータの断面図である。
【図7】図7は、図6における積層圧電素子97を説明するのに用いられる図であり、(a)斜視図であり、(b)は分解斜視図である。
【図8】従来の積層圧電素子の内部で発生する歪の分布を説明するのに用いられる部分断面図であり、内部電極がA+とAG+の場合を示す。
【符号の説明】
【0064】
55、55’ 積層圧電素子
1〜11、21〜39 圧電層
13 スル−ホ−ル
14 表面電極
41 接続用電極
42 外部電極
50、50’ 振動波モータ
52 振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極層が夫々各一方の面に形成されると共に互いに積層された複数の電気−機械エネルギー変換機能材料層を備え、前記複数の電極層が夫々電気的に接続された積層電気−機械エネルギー変換素子において、前記複数の電極層は、形状が積層電気−機械エネルギー変換素子の内部に発生する歪分布に応じて異なることを特徴とする積層電気−機械エネルギー変換素子。
【請求項2】
前記複数の電極層は、形状が夫々実質的に円形であることを特徴とする請求項1記載の積層電気−機械エネルギー変換素子。
【請求項3】
前記複数の電極層は、形状が夫々実質的に多角形であることを特徴とする請求項1記載の積層電気−機械エネルギー変換素子。
【請求項4】
前記多角形は矩形であることを特徴とする請求項3記載の積層電気−機械エネルギー変換素子。
【請求項5】
前記の複数の電極層は、積層方向に向かって外径が段階的に小さくなることを特徴とする請求項1記載の積層電気-機械エネルギー変換素子。
【請求項6】
前記複数の電極層は、積層方向に向かって内径が段階的に小さくなることを特徴とする請求項1記載の積層電気-機械エネルギー変換素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層電気−機械エネルギー変換素子、及び当該積層電気−機械エネルギー変換素子を挟持する2つの弾性体から成る振動子を有し、前記積層電気−機械エネルギー変換素子は、前記弾性体駆動用の交流電圧を受容するように構成されていることを特徴とする振動波駆動装置。
【請求項8】
前記振動子に接触して前記振動子に励起した振動波によって駆動される移動体を有し、前記積層電気-機械エネルギー変換素子の積層方向の前記移動体側に向かって、前記複数の電極層の外径が段階的に小さくなることを特徴とする請求項7記載の振動波駆動装置。
【請求項9】
前記振動子に接触して前記振動子に励起した振動波によって駆動される移動体を有し、前記積層電気-機械エネルギー変換素子の積層方向の前記移動体側に向かって、前記複数の電極層の内径が段階的に小さくなることを特徴とする請求項7記載の振動波駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−4980(P2006−4980A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176707(P2004−176707)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】