説明

空気タイヤの型成形/離型用のシロキサンをベースとする組成物

本発明は、空気タイヤの製造の際に加硫ブラダーに接着用下塗りとして塗布されるべきシリコーンオイルエマルションの形の組成物に関する。本発明はまた、本発明の接着用下塗りによって被覆された加硫ブラダーにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分の蒸発及び架橋によって硬化してエラストマーになることができ、空気タイヤの製造の際に接着用下塗り(ボンディングプライマー)(primaire d'accrochage)として加硫ブラダーに塗布されることが予定される、シリコーンエマルションの形の組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、本発明に従う接着用下塗りで被覆された加硫ブラダーにも関する。
【背景技術】
【0003】
乗物用のゴム製空気タイヤは通常、生ゴム又は加硫しておらず且つ造形されていないゴムから作られたカバー(enveloppe)をベースとする組立て品(construction)を、成形プレスを用い、内部流体(スチーム、窒素等)によって膨張させることができるブチルゴム製ブラダーによって未加工カバー(enveloppe crue)を成形型の表面に対して外向きにプレスすることによって型成形し且つ加硫させることによって製造される。この方法に依れば、未加工カバーは成形型の外側面に対して造形されて、これがカバーのトレッドのパターン及び側壁の形態を画定する。カバーは加熱することによって加硫される。一般的に、ブラダーは、加硫についての熱移動にも関与する圧縮ガス(ホット)、熱水及び/又はスチームのような流体によって提供される内部圧によって膨張する。カバーは次いで成形型中で僅かに冷却され、この冷却は時としてブラダー中に冷水又はもっと冷たい水を導入することによって促進される。次いで成形型を開き、内部流体の圧力を解放することによってブラダーをしぼませ、カバー成形型からカバーを取り出す。この加硫ブラダーの利用は、当技術分野においてよく知られている。
【0004】
カバーの完全な加硫の前にブラダーの膨張段階の際にブラダーの外側接触面とカバーの内側面との間で有意の相対運動が起こることが認められている。同様に、カバーが型成形されて加硫した後に、ブラダーをしぼませて空気タイヤから取り出す際にも、ブラダーの外側接触面とカバーの加硫した内側面との間でかなりの相対運動が起こる。
【0005】
ブラダーとカバーの内側面との間で適切な潤滑性が提供されない場合には、一般的にブラダーが反ってしまう傾向があり、これは成形型中でのカバーの変形をもたらし、ブラダー自体の表面の過度の摩耗及び過度の変色をももたらす。ブラダーの表面はまた、カバーの加硫の後及びカバー加硫サイクルの一部としてブラダーをしぼませる際に、カバーの内側面に粘着する傾向もある。さらに、ブラダーの表面とカバーの表面との間に気泡が捕捉され、この気泡が熱移動を不完全なものにする結果としてカバーの加硫不足の発現を促進することがある。
【0006】
型成形/離型操作が進行するにつれて、ブラダーが損傷し且つ潤滑剤の耐粘着性能が低下し、かくして空気タイヤ産業にとって臨界的なファクターである型成形/離型の回数が大幅に制限される。
【0007】
この理由で、潤滑用組成物を使用する前に、ブラダーを保護して型成形/離型の回数を最適化するために、ブラダーの外側面に接着用下塗りを塗布するのが有利である。
【0008】
さらに、第1の型成形/離型サイクルの前に、前記下塗りで被覆されたブラダーは大抵の場合、その弾性性能を最適化するために、ホットガスを注入することによって膨らまされる。前記下塗りはその際に約300%の伸びに付される。
【0009】
使用の際に、ブラダーの寿命に応じて型成形/離型サイクルが数回繰り替えられ、これが前記下塗りに対して有意の物理的ストレスをもたらす。従って、伸び耐性は接着用下塗りにとっての重要な基準の1つであり、接着用下塗りは、ブラダー当たりの型成形/離型の回数を最適化するために用いられる潤滑用組成物との良好な親和性を提供しながら、物理的に劣化することなく膨張性ブラダー上で300%の伸びに耐えることができなければならない。前記下塗りはまた、脱着現象を回避するために、ブラダーに対して良好な接着特性を示さなければならない。用語「良好な親和性」とは、数回の型成形/離型サイクルにわたってその作用を保証するために潤滑剤が下塗りに接着しなければならないことを意味する。
【0010】
国際公開WO03/087227号パンフレットには、水素を放出しないシロキサンをベースとする水中のシリコーンオイルのエマルションの形にあり、空気タイヤの型成形/離型に有用な組成物であって、
(a)随意としての、25℃において約5×10-2〜30×102Pa・sの動的粘度(粘性係数)を示し、潤滑特性を有する少なくとも1種の非反応性線状ポリオルガノシロキサンオイル;
(a')1分子当たり少なくとも2個のOH基を有し且つ25℃において5×10-2〜200000の範囲、特に5×10-2〜150000の範囲、好ましくは5×10-2〜3000Pa・sの範囲の動的粘度を示す少なくとも1種の反応性線状ポリオルガノシロキサンオイル;
(b)縮合性ヒドロキシル置換基を有し且つ少なくとも2個のシロキシル単位を有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン樹脂;
(c)前記ポリオルガノシロキサン樹脂(b)と反応することができる少なくとも2個の官能基を含み、シリコーン相中に可溶の少なくとも1種の架橋剤;
(d)前記成分(b)と前記成分(c)との反応を触媒することができる少なくとも1種の縮合触媒;
(e)少なくとも1種の界面活性剤;及び
(f)水:
を含み、成分(a)/成分(a')の重量比が0〜10の範囲内にある前記組成物が記載されている。
【0011】
この組成物は、ブラダー上で架橋させた時に、潤滑用組成物としての働き、又は充分な潤滑特性を有し従って追加の潤滑用組成物を塗布することを回避する接着用下塗りとしての働きをすることができる。
【0012】
しかしながら、このタイプの組成物は、潤滑性付与の点に関しては有利であるが、特にブラダーの性能を最適化するためにその最初の使用の前にブラダーを膨らませる時に、依然として不充分な接着用下塗り特性を示す。この場合、この下塗りは、周囲温度から150℃超であり得る温度までの範囲の温度において300%の伸びに耐えることができなければならない。
【0013】
また、ブラダー上での良好なボンディング特性及び用いられる潤滑用組成物との良好な親和性を有する下塗りを開発することも有用である。
【特許文献1】国際公開WO03/087227号パンフレット
【特許文献2】米国特許第2891920号明細書
【特許文献3】米国特許第3294725号明細書
【特許文献4】フランス国特許第2697021号明細書
【特許文献5】ヨーロッパ特許公開第0359676A号公報
【特許文献6】米国特許第4028339号明細書
【特許文献7】米国特許第4052331号明細書
【特許文献8】米国特許第4056492号明細書
【特許文献9】米国特許第4525502号明細書
【特許文献10】米国特許第4717599号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
かくして、空気タイヤ産業界は、
・ブラダーに対する良好な接着性を有する連続フィルムの形成を保証し、従ってブラダーの表面の保護をもたらし、従って用いられるそれぞれのブラダーについて型成形/離型の回数を増加させることができ(寿命増加)、且つ
・(特に最初の使用の前にブラダーを可撓性にするためのサイクルの間に)周囲温度から150℃超であり得る温度までの範囲の温度において300%の伸びに耐えることができ、且つ
・型成形/離型サイクルの際の潤滑剤との良好な親和性を保証し、従って離型/潤滑用物質のそれぞれの塗布についての型成形/離型の回数を増加させることができる
接着用下塗りを依然として探し求めている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明の目的は、空気タイヤの製造用の膨張性加硫ブラダー上に、
・周囲温度(約20℃)及び/又は150℃以上の温度において300%の伸びに耐え、
・ブラダーに対する良好な接着性を有し、且つ
・型成形/離型サイクルの際の潤滑剤との良好な親和性を保証する
ことができる接着用下塗りを形成させるための、水分の蒸発及び架橋によって硬化してエラストマーになることができる水性シリコーンエマルションの新たな使用を提供することにあり、
該エマルションは、次の(i)、(ii)及び(iii):
(i)次の成分:
・ヒドロキシル及び/又はアルコキシル官能基を含み、20000〜2×106mPa・sの範囲、好ましくは70×103〜1.1×106mPa・sの範囲、さらにより一層好ましくは100×103〜300×103mPa・sの範囲の動的粘度を有する、少なくとも1種の架橋性(即ち架橋可能な)線状ポリオルガノシロキサンオイルA、
・例えばヒドロキシル化され且つ/若しくはアルコキシル化されたポリオルガノシロキサン樹脂又はヒドロキシル及び/若しくはアルコキシル架橋用官能基を有するケイ素含有粘着促進剤のような、ヒドロキシル及び/又はアルコキシル官能基を含む少なくとも1種の架橋剤D、
・前記架橋剤Dがヒドロキシル及び/若しくはアルコキシル架橋用官能基を有するケイ素含有粘着促進剤ではない場合に随意に存在させる少なくとも1種のケイ素含有粘着促進剤B
から成り、
成分A、B及びDの少なくとも1つが1分子当たり少なくとも3個の架橋用官能基を有するものとする、シリコーン相、
(ii)次の成分:
・前記エマルションの総重量に対して少なくとも5重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲の割合で水相中に分散可能な少なくとも1種の充填剤FI;
・少なくとも1種の界面活性剤SU、並びに
・随意としての少なくとも1種の重縮合触媒C及び/又は少なくとも1種の水溶性粘着促進剤B'
から成る親水性非シリコーン相、並びに
(iii)水
から成り且つ随意に追加の添加剤として少なくとも1種の可塑剤G及び/又は少なくとも1種の殺細菌剤Hを含むものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
エマルションの成分は、それらの初期化学構造、即ち乳化前にそれらを特徴付けるものに関して規定される。水性媒体中に入れられると、加水分解及び縮合反応の結果としてそれらの構造が大いに変化することがある。
【0017】
用語「動的粘度」とは、本発明においては、ニュートンタイプの粘度、即ちそれ自体周知の方法で、所定の温度において、測定される粘度が速度勾配から独立したものとなるのに充分低い剪断速度勾配で測定された動的粘度を意味するものとする。
【0018】
エマルションの重量に関する主成分はポリオルガノシロキサンAであり、これは架橋剤Dとの組合せにおいて重縮合反応によって架橋した三次元網状構造を形成することができる少なくとも1種の粘性且つ反応性のシリコーンホモポリマー又はコポリマーを含むのが好ましい。懸案下の官能基は、架橋への道を与える官能基である(好ましくは(加水分解)/縮合による)。これらの官能基は、ヒドロキシル又はアルコキシルである。
【0019】
有利な別形態に依れば、
・架橋性ポリオルガノシロキサンAは、1分子当たり少なくとも2個の縮合性又は加水分解性基SiORa(ここで、RaはH又はアルキル、好ましくはRaはHである)を有するポリジオルガノシロキサンオイルであり;
・このポリオルガノシロキサンAは、縮合又は加水分解/縮合(随意に縮合触媒Cの存在下で)によって架橋するものであり;
・架橋剤Dは、少なくとも1個のヒドロキシル化され且つ/又はアルコキシル化されたシリコーン樹脂及び随意としての少なくとも1種のアルコキシシランEを含む。アルコキシシランEの例としては、ViSi(OEt)3、ViSi(OMe)3、Si(OEt)4、MeSi(OMe)3及びSi(OMe)4を挙げることができる。
【0020】
好ましい成分として、架橋性ポリオルガノシロキサンAは、次式(I)を有する。
【化1】

(式中、
fは水素又は随意に直鎖状若しくは分岐鎖状C1〜C3アルキルで置換された直鎖状若しくは分岐鎖状C1〜C4アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル若しくはエトキシエチルに相当し;
3、R4、R5、R6、R7及びR8は直鎖状又は分岐鎖状C1〜C30アルキル、好ましくはメチル、直鎖状又は分岐鎖状C2〜C20アルケニル、随意に1〜3個の直鎖状又は分岐鎖状C1〜C3アルキルで置換されたC6〜C12アリール、アリール部分がC6〜C8炭素原子を有し且つアルキル部分が直鎖状又は分岐鎖状であってC1〜C4炭素原子を有するアラルキル、例えばベンジル、フェネチル
【化2】

又は次式(II):
【化3】

の基、及びアリール部分がC6〜C8炭素原子を有し且つアルケニル部分が直鎖状又は分岐鎖状であってC2〜C4炭素原子を有するアリールアルケニルより成る群から選択される同一の又は異なる基であり、
Nはアミノ化基、好ましくはアミノアルキル、又は1個以上のエポキシド及び/若しくはカルボキシル及び/若しくはメタクリロイルオキシ及び/若しくはメルカプト及び/若しくはイソシアネート及び/若しくはイソシアヌレート及び/若しくはシアノ官能基を含むアルキル基と定義される互いに同一の又は異なる基に相当し;
eはR3〜R8について上に与えたものと同じ定義に相当する基及び/又はRNについて上に与えたものと同じ定義に相当する基と定義される互いに同一の又は異なる基を表わし;
aは1、2又は3であり、そして
m、n、o及びpは0以上であって、m+n+o+pは500以上、好ましくはm+n+o+pは650以上である。)
【0021】
有利な形態に従えば、架橋性ポリオルガノシロキサンAは、上記の式(I)において、
fが水素に相当し、
a=1であり、p=0であり、
e及びR3〜R8が直鎖状又は分岐鎖状のC1〜C15アルキル、好ましくはメチル、エチル若しくはプロピル、フェニル、トリル、ベンジル基、フェネチル、スチリル及び次式:
【化4】

の基より成る群から選択される互いに同一の又は異なる基である
ホモポリマー又はコポリマーによって構成されるシリコーンオイルである。
【0022】
架橋性ポリオルガノシロキサンオイルAについての好ましい成分の中では、次式の線状ポリオルガノシロキサンを挙げることができる。
【化5】

(ここで、nは500以上の整数であり、
9及びR10は同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6アルキル;C3〜C8シクロアルキル;C2〜C8アルケニル;C5〜C8シクロアルケニル;アリール;アルキルアリーレン及びアリールアルキレンを表わし;これらの基はそれぞれ随意にハロゲン原子(好ましくはフッ素)又はシアノ残基で置換されていてよい。)
【0023】
工業製品における入手容易性のために最も広く用いられるオイルは、R9及びR10がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル、ビニル、フェニル及び3,3,3−トリフルオロプロピルより成る基の群から独立的に選択されるものである。これらの基の少なくとも約80%(数を基準)がメチル基であるのが特に好ましい。
【0024】
実際上、架橋性ポリオルガノシロキサンオイルAとして、α,ω−ジヒドロキシポリ(ジメチル)(メチルフェニル)シロキサンオイル、特にこのタイプのオイルであって上記米国特許第2891920号明細書及び特に米国特許第3294725号明細書(これらを参考として引用する)に記載されたアニオン重合法によって調製されるものが好ましい。この乳化重合法は、ポリシロキサンAを含むエマルションを直接得ることを可能にするので、特に有利である。この方法はさらに、高粘度のエマルション状のポリオルガノシロキサンオイルAを困難なく得ることを可能にする。
【0025】
しかしながら、本発明に従えば、予備重合されたポリオルガノシロキサンオイルAから出発し、例えばフランス国特許第2697021号明細書に記載されたシリコーン相の乳化のための技術を用いて、エマルションを調製するが好ましい。
【0026】
さらに、これらのポリオルガノシロキサンAの25℃における動的粘度ηが20000〜2×106mPa・sの範囲、好ましくは70×103〜1.1×106mPa・sの範囲、さらにより一層好ましくは100×103〜300×103mPa・sの範囲であることが必要である。
【0027】
ポリオルガノシロキサンAの動的粘度ηは、好適な機械的特性の組合せ、特に破断点伸び及びブラダーへの接着性について好適な組合せを示す接着用下塗りを製造するという点において、必須の特徴の1つである。
【0028】
破断点伸びに関する機械的特性については、充填剤FIが重要な役割を果たす。用いられる充填剤FIは、例えば補強用ケイ質充填剤FIであることができる。かかるケイ質充填剤は、一般的に数nm〜300μmの範囲の粒子寸法及び50m2/g超のBET比表面積を有する。これらのケイ質充填剤は、例えばコロイドシリカ、ヒュームドシリカ粉末、沈降シリカ粉末又はそれらの混合物から選択される。これらのシリカはよく知られている。これらは特に、熱硬化してシリコーンゴムとなることができるシリコーンエラストマー組成物中の充填剤として用いられる。これらのシリカは、一般的に0.1μm未満の平均粒子寸法及び好ましくは100〜350m2/gのBET比表面積を示す。
【0029】
また、場合によってはケイ藻土、石英粉末、雲母のような半補強用ケイ質充填剤、又は場合により水和アルミナ若しくは二酸化チタンを用いることも可能である。
【0030】
好ましくは、水相中に分散可能な充填剤FIは、コロイドシリカ、ヒュームドシリカ粉末、沈降シリカ粉末、炭酸カルシウム及びそれらの混合物から選択される。
【0031】
これらの充填剤FIは、乾燥粉末の形又はコロイドエマルションの形で前記エマルション中に、例えば単純に混合することによって、導入される。
【0032】
架橋剤Dとしては、ヒドロキシル及び/又はアルコキシル基の重量含有率が0.1〜10%の範囲、好ましくは0.2〜5%の範囲であるヒドロキシル化され且つ/又はアルコキシル化されたシリコーン樹脂を挙げることができる。この樹脂Dは、式M、D、T及びQ:
M=(R11)3SiO1/2
D=(R11)2SiO2/2
T=R11SiO3/2及び
Q=SiO4/2
(ここで、R11基は同一であっても異なっていてもよく、一価有機置換基を表わす)
のものから選択される少なくとも2個の異なる単位を1分子中に有し、その内の少なくとも1つがT又はQ単位である。これらの単位の一価有機置換基の例としては、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−ヘキシル及びフェニル基を挙げることができる。
【0033】
これらのシリコーン樹脂はよく知られた分岐鎖状オルガノポリシロキサンポリマーであり、その製造方法は非常に多くの特許明細書中に記載されている。用いることができる樹脂の例としては、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂及びMDT樹脂を挙げることができる。周囲温度において固体状又は液体状の樹脂を用いることができる。これらの樹脂は、ポリオルガノシロキサンA中にエマルション状で、有機溶剤若しくはシリコーンオイル中の溶液状で、又は水性エマルションの形で(ヨーロッパ特許公開第0359676A号公報)、導入することができる。
【0034】
用いることができるシリコーン樹脂の水性エマルションは、例えば米国特許第4028339号、同第4052331号、同第4056492号、同第4525502号及び同第4717599号の各明細書に記載されているので、これらを参考として引用する。
【0035】
上記のように、この樹脂Dは、シリコーンオイルAの架橋性基と縮合によって反応することができるそのヒドロキシル及び/又はアルコキシル官能基のおかげで架橋剤としての働きをすることができる。
【0036】
好ましい態様に従えば、架橋剤Dは、縮合性ヒドロキシル置換基を有し且つ式(R11)3SiO1/2(M)、(R11)2SiO2/2(D)、R11SiO3/2(T)及びSiO4/2(Q)のものから選択される少なくとも2個の異なるシロキシル単位を含み、これらの単位の内の少なくとも1個がT又はQ単位であり、これらの式中のR11が上で定義した通りの一価有機置換基を表わすポリオルガノシロキサン樹脂であって、ヒドロキシル置換基の重量含有率が0.1〜10重量%の範囲、好ましくは0.2〜5重量%の範囲である前記ポリオルガノシロキサン樹脂である。
【0037】
用いることができる樹脂の具体例としては、ヒドロキシル化されたMQ、MDQ、DQ、DT及びMDT樹脂並びにこれらの混合物を挙げることができる。これらの樹脂において、各OH基は、M、D又はT単位に属するケイ素原子が有する。
【0038】
好ましくは、用いることができる樹脂の例として、構造中にQ単位を含まないヒドロキシル化オルガノポリシロキサン樹脂を挙げることができる。より一層好ましくは、T単位を少なくとも20重量%含み、ヒドロキシル基の重量含有率が0.1〜10%の範囲、より一層好ましくは0.2〜5%の範囲であるヒドロキシル化DT及びMDT樹脂を挙げることができる。この特に好ましい群の樹脂の中でも、ケイ素原子についてのR11置換基の平均数が1分子当たり1.2〜1.8の範囲であるものがさらに特に好適である。さらにより一層有利には、このタイプの樹脂であってその構造中のR11置換基の少なくとも80%(数基準)がメチル基であるものを用いる。
【0039】
前記の樹脂は、周囲温度において液状である。好ましくは、この樹脂は、25℃において0.2〜200Pa・sの範囲、特に0.5〜50Pa・sの範囲、さらにより一層好ましくは0.8〜5Pa・sの範囲の動的粘度を示す。
【0040】
好ましい実施態様に従えば、前記エマルションは、圧縮空気吹付によって塗布するために、水の量が前記エマルションの総重量に対して0.5〜55重量%の範囲、好ましくは1.5〜45重量%の範囲、さらにより一層好ましくは30〜45重量%の範囲となるように希釈する。
【0041】
本発明において用いることができる重縮合触媒Cの例には、有機金属塩及びチタネート、例えばオルトチタン酸テトラブチルがある。有機金属塩としては、ナフテン酸ジルコニウム及びオクチル酸ジルコニウムを挙げることができる。
【0042】
前記触媒は、触媒作用を有するスズ化合物、一般的に有機スズ塩であるのが好ましい。用いることができる有機スズ塩は、特にNollの著書「Chemistry and Technology of Silicones」、Academic Press社(1968年)、第397頁に記載されている。また、触媒作用を有するスズ化合物として、ジスタノキサン若しくはポリオルガノスタノキサン又はスズ塩(特にジカルボン酸スズ)とポリケイ酸エチルとの反応生成物(例えば米国特許第3862919号明細書に記載されたもの)を挙げることもできる。
【0043】
また、ベルギー国特許第842305号明細書に記載されたようなケイ酸アルキル又はアルキルトリアルコキシシランとジブチルスズジアセテートとの反応生成物も好適であり得る。
【0044】
別の可能性に従えば、スズ(II)塩、例えばSnCl2又はオクタン酸第一スズが用いられる。
【0045】
有利には、前記触媒は、有機酸のスズ塩、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート又はジブチルスズジオクトエート、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸コバルト及びジオクチルスズジ(イソメルカプトアセテート)である。
【0046】
好ましいスズ塩は、スズビスキレート(ヨーロッパ特許公開第147323A号及び同第235049A号の各公報)、ジオルガノスズジカルボキシレート及び特に英国特許第1289900号明細書に記載された触媒、例えばジブチルスズ若しくはジオクチルスズジアセテート、ジブチルスズ若しくはジオクチルスズジラウレート、又は上記の種の加水分解生成物(例えばジオルガノ−及びポリスタノキサン)である。
【0047】
重縮合触媒Cは一般的に、前記エマルションの総重量に対して0.05〜5重量部の割合でエマルション中に導入される。ジオクチルスズジラウレート又はジ−(2−エチルヘキシル)スズジラウレートが特に好ましい。
【0048】
界面活性剤SUの性状は当業者に容易に決定され、その目的は安定エマルションを調製することである。アニオン性、カチオン性、非イオン性及び双性(ツビッター)イオン性界面活性剤を単独で又は混合物として用いることができる。
【0049】
アニオン性界面活性剤としては、芳香族炭化水素スルホン酸のアルカリ金属塩又はアルキル硫酸のアルカリ金属塩を挙げることができる。本発明においては、より特定的には非イオン性界面活性剤が好ましい。これらの中では、ポリ(アルキレンオキシド)のアルキル若しくはアリールエーテル、ポリオキシエチレン化ソルビタンヘキサステアレート、ポリオキシエチレン化ソルビタンオレエート(鹸化価102〜108、ヒドロキシル価25〜35のもの)、及びポリ(エチレンオキシド)セテアリルエーテルを挙げることができる。
【0050】
ポリ(アルキレンオキシド)アリールエーテルとしては、ポリオキシエチレン化アルキルフェノールを挙げることができる。ポリ(アルキレンオキシド)アルキルエーテルとしては、ポリエチレングリコールイソデシルエーテル及びポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル(1分子当たり3〜15個のエチレンオキシド単位を含むもの)を挙げることができる。
【0051】
また、エトキシル化イソトリデシルアルコール、例えばイソトリデシルアルコール1モル当たりエチレンオキシド8〜9モルを有するものを挙げることもできる。
【0052】
界面活性剤SUの量は、存在する各成分のタイプ及び用いられる界面活性剤の実際の性状に依存する。一般的に、前記エマルションは0.5〜10重量%(より好ましくは0.5〜5重量%)の界面活性剤を含む。別の好ましい実施態様に従えば、界面活性剤SUは、前記エマルションの総重量に対して3重量%までの量で存在させる。
【0053】
別の好ましい実施態様に従えば、本発明に従うエマルションは、重量部で表わして次の組成を有する:
・少なくとも1種のα,ω−ジヒドロキシル化ポリジオルガノシロキサンシリコーンオイルA:100部、
・アミノアルキルトリアルコキシシラン、ビスアミノアルキルトリアルコキシシラン及び/若しくはトリスアミノアルキルトリアルコキシシランの加水分解生成物、又はD、T及び/若しくはQシロキシル単位及び随意としてのMシロキシル単位を含み且つD、T及びM単位の少なくとも一部が1個以上のアミン官能基を有するアミノ化シリコーンオリゴマー若しくは樹脂:より成る群から選択される少なくとも1種の粘着促進剤B及び/又はB':0〜10部、
・ヒドロキシル化シリコーン樹脂、好ましくはT(OH)、DT(OH)、DQ(OH)、DT(OH)、MQ(OH)、MDT(OH)、MDQ(OH)タイプの樹脂及びそれらの混合物{これらの樹脂は、ビニル及び/又はフェニル及び/又は3,3,3−トリフルオロプロピル及び/又は直鎖状若しくは分岐鎖状C1〜C6(有利にはC1)アルキル基で置換されたケイ素を有する}から選択される少なくとも1種の架橋剤D:1〜20部、並びに/或は
・次式:
【化6】

(ここで、RaはH又はアルキル、好ましくはRaはHであり、
bは随意に置換されたC1〜C6(シクロ)アルキル又はアルケニルであり、
t=1、2又は3である)
の少なくとも1種のアルコキシシランE:0〜5部;
・少なくとも1種の縮合触媒C:0〜2部;
・少なくとも1種の界面活性剤SU:0.5〜10部、
・少なくとも1種のケイ質充填剤FI、好ましくは沈降又は非沈降シリカ、コロイドシリカ、粉末形態のシリカ、雲母及びこれらの物質の混合物から選択されるもの:2〜40部、
・水:0.5〜50部、並びに
・有機ケイ酸塩又はケイ酸ナトリウムのような少なくとも1種のケイ質添加剤SA:0〜20部。
【0054】
粘着促進剤B又はB'は当業者に周知であり、それらの性状に応じて水相又はシリコーン相中に優先的に可溶のものである。これらは、1分子当たりに、少なくとも1個のOH基に加えて、官能基Frを含む有機基を少なくとも1個有するシランであるのが有利である。ここで、Frは随意に置換されたアミノ、エポキシ、随意に置換されたアクリロイル(CH2=CH−CO−)、随意に置換されたメタクリロイル(CH2=C(CH3)−CO−)、随意に置換されたウレイド(NH2−CO−NH−)、随意に置換されたチオール又はハロゲン官能基を表わす。
【0055】
粘着促進剤B又はB'の随意としての有機置換基であってOH基及び官能基Frを含む有機基以外のものには、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基、3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、2〜8個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルケニル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基、6〜15個の炭素原子を有するアルキルアリーレン基、又は6〜15個の炭素原子を有するアリールアルキレン基がある。シリコーン相及び/又は親水性相中の溶解度は機能である
【0056】
本発明の好ましい実施態様に従えば、Frは随意に置換されたアミノ官能基である。
【0057】
本発明のより一層好ましい実施態様に従えば、水溶性粘着促進剤B'は次式:
【化7】

(ここで、RgはC1〜C10アルキレン基を表わし、
12及びR13は独立的に水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を表わす)
を有する。
【0058】
例として、3−アミノプロピルトリヒドロキシシランを挙げることができる。
【0059】
エマルション中に存在させる場合、この成分は、前記エマルションの総重量に対して0.5〜15重量部の割合、好ましくは0.6〜5重量部の割合、さらにより一層好ましくは0.8〜3重量部の割合で用いられる。
【0060】
可塑剤Gの例としては、これは限定的なものではないが、アルキルベンゼン、特にフランス国特許第2446849号明細書に記載されたものを挙げることができる。
【0061】
有利な別形態に従えば、上で規定した本発明のエマルションは、少なくとも部分的に架橋した形で存在するシリコーン分散相の液滴を含むことを追加的に特徴とする。
【0062】
前記エマルションは、使用前にこの形で、空気から隔離して適切に包装して貯蔵することができる。シリコーン分散相の液滴が合体によって融合して均質材料を形成し、これが次いで架橋及び水の除去(蒸発)によってそのエラストマーに転化し終えるのは、ブラダーに塗布した後だけである。
【0063】
水性シリコーンエマルションの調製は、親水性相(ii)の少なくとも一部及び/又は水を含む水相中にシリコーン相(i)の少なくとも一部を含有させたエマルションから出発して、機械式撹拌手段を用いて実施することができる。
【0064】
従って、水相中に乳化させるシリコーン相(i)には、水相(親水性非シリコーン相(ii))を用いた本来の乳化工程(混合/均質化−撹拌)が行われる前に、その成分の全部又は一部(特にA、B、D)を含ませる。
【0065】
親水性非シリコーン相の充填剤FIは、乳化の後に混合物に添加するのが好ましい。この乳化は、慣用の均質化及び撹拌手段、例えばニーダー、遊星形ミキサー、コロイドミル、一軸若しくは二軸タイプの押出機、又はホモジナイザーを用いて、例えば10〜50℃の範囲の温度において実施するのが有利である。随意に、有機又は無機酸又は塩基(例えば水酸化カリウム又はアミン)を添加することによってpHを4〜13の範囲に調節する。
【0066】
得られる最終エマルションは、均質化され、次いで随意にガス抜きされ、そして空気及び水蒸気を通さない包装体中に包装される。
【0067】
前記エマルションは、使用前にこの形で、空気から隔離して適切に包装して貯蔵することができる。
【0068】
このエマルションは、潤滑用組成物の使用前に膨張性ブラダーに塗布することが意図される。このエマルションの塗布は、慣用の方法、例えば吹付、ブラッシング、スポンジを用いた塗布又は刷毛を用いた塗布によって実施することができる。シリコーン相(i)の液滴が合体によって融合して均質材料を形成し、これが次いで架橋及び水の除去(蒸発)によってそのエラストマーに転化し終えるのは、ブラダーに塗布した後だけである。エマルションは水の除去(好ましくは周囲温度におけるもの)を伴う架橋(例えば重縮合)によってブラダー上に粘着性エラストマーを形成させる。
【0069】
この接着用下塗りは、SiH基を持たない潤滑用組成物(又は離型剤)との組合せ(特にフランス国特許第2802546号、同第2825099号及び同第2838447号の各明細書並びに国際公開WO03/087227号パンフレットに記載された潤滑用組成物との組合せ)において特に有用であることが証明された。
【0070】
離型剤は、下塗りで被覆されたブラダー又は未硬化空気タイヤの内側面(インナーライナー)に塗布される。この組合せは、成形型からの硬化(加硫)した空気タイヤの取り出し工程がうまく行われるのを保証しながら、プレス機が閉じられた時にブラダー上を未硬化空気タイヤがスライドするのを可能にする。本発明に従う下塗り/離型剤システムは、加硫した空気タイヤとブラダーとが粘着するのを防止することができる。従って、離型剤を塗布することによって可能になる離型の回数だけではなくてブラダー当たりに可能になる離型の回数も増加する一方で、加硫した空気タイヤの品質、特にこうして得られる空気タイヤの対称性に関する品質を損なうこともない。
【0071】
従って、本発明の別の主題事項は、ちょうど上記した水中油エマルションを膨張性ブラダーの表面に接着用下塗りとして塗布することから成る方法にもある。塗布後に、周囲温度において乾燥させることによって架橋を実施する。この架橋は、加熱、特に80〜180℃、好ましくは120〜170℃に加熱することによって促進することができる。
【0072】
本発明の別の主題事項は、空気タイヤ又は半空気タイヤの造形及び加硫のための、上記の水分の蒸発及び架橋によって硬化してエラストマーになることができる水性シリコーンエマルションで外側面を被覆された膨張性ゴムブラダーにある。こうして得られるこのブラダーは寿命が延びたことがわかった。
【0073】
本発明の別の主題事項は、20〜180℃の温度においてブラダーを乾燥させ且つ/又は加熱することによって得ることができる、本発明に従う接着用下塗りで被覆された膨張性ゴムブラダーにある。
【0074】
本発明の最後の主題事項は、本発明に従う接着用下塗りで被覆された膨張性ゴムブラダーを、内側面を潤滑用組成物で処理された未加硫空気タイヤと組み合わせて、空気タイヤの製造のために使用することにもある。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を例示する実施例によって、本発明に従うエマルションから出発して接着用下塗りの優れた特性を証明する。
【0076】
例1
【0077】
この例は、本発明に従うエマルションを例示する。この水中油エマルションである組成物の配合を下記の表1に与える。
【0078】
【表1】

(1)ポリビニルアルコールを界面活性剤として用いて調製した水中の37.5重量%ジオクチルスズジラウレートエマルション。
(2)水15%と、イソトリデシルアルコール1モル当たり8〜9モルのエチレンオキシドでエトキシル化されたイソトリデシルアルコール85%との混合物。
【0079】
促進剤B'は、40%γ−アミノプロピルトリエトキシシラン水溶液を調製し、次いで加水分解によって生成したエタノールをストリッピングすることによって調製したアミノ化T(OH)樹脂の水溶液である。この溶液は完全に澄んでおり、23%の固体含有率を示す。
【0080】
本発明に従うエマルションの調製
【0081】
組成物の詳細は表1に記載したものである。
【0082】
ビーカー中で(アンカー型撹拌機を用いて)、成分A、ヒドロキシル化シリコーン樹脂D及び可塑剤Gの混合物を調製する。
【0083】
1.5リットルIKA反応器中に水、界面活性剤SU及び充填剤FIを導入し、次いで100回転/分で10分間撹拌を実施する。
【0084】
界面活性剤SU、シリカFI及び水を含む前記のIKA反応器中に、滴下漏斗を用いて且つ撹拌(150回転/分)しながら、上記シリコーン相(i)を徐々に導入する。
【0085】
次いで、粘着促進剤B'及び触媒Cを添加し、さらに10分間撹拌を続ける。次いでこのエマルションに殺生物剤を添加し、次いで10分間撹拌する。水中油エマルションが得られる。吹付による塗布のために、このエマルションをその固体含有率が60%になるまで水で希釈する。
【0086】
比較例:国際公開WO03/087227号パンフレットの例7に従って得られたエマルションB
【0087】
国際公開WO03/087227号パンフレットの例7に記載されたエマルションを比較例として再現した。このエマルションBの組成は、下記の表2に記載したものである。
【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
エマルションC(比較例)の調製
【0091】
エマルションの詳細は表3に記載したものである。
【0092】
ビーカー中で(アンカー型撹拌機を用いて)、成分A3、ヒドロキシル化シリコーン樹脂D及び可塑剤Gの混合物を調製する。
【0093】
1.5リットルIKA反応器中に水、界面活性剤SU及び充填剤FIを導入し、次いで100回転/分で10分間撹拌を実施する。
【0094】
界面活性剤SU、充填剤FI及び水を含む前記のIKA反応器中に、滴下漏斗を用いて且つ撹拌(150回転/分)しながら、上記シリコーン相(i)を徐々に導入する。
【0095】
次いで、粘着促進剤B'及び触媒Cを添加し、さらに10分間撹拌を続ける。水中油エマルションが得られる。吹付による塗布のために、このエマルションをその固体含有率が60%になるまで水で希釈する。
【0096】
例2
【0097】
(a)ブラダーから由来するゴム(ブチルタイプのゴム)のシートに、圧縮エアガンを用いて、エマルションA(本発明)、B(比較例)又はC(比較例)を塗布する。周囲温度において1時間乾燥させた後に、水を完全に蒸発させ且つ架橋を促進するために、このシートを170℃のオーブン中に10分間入れる。重量差によって物質の塗布量を測定する(約5mg/cm2の層)。
【0098】
(b)試験下塗りで被覆されたブラダーのそれぞれのシートを、次いで300%の伸張に付す。
【0099】
(c)次いで下塗りの層を双眼拡大鏡(20倍)を用いて検査して、伸張の際及び/又は伸張の後に、下塗り中に亀裂ができたかどうかを調べる。
【0100】
エマルションA(本発明)から得られた下塗りは亀裂を何ら示さなかった。
【0101】
エマルションB(比較例)から得られた下塗りは亀裂を示し、300%の伸びを記録しなかった。
【0102】
エマルションC(比較例)から得られた下塗りは亀裂を何ら示さなかった。
【0103】
例3:耐久性試験
【0104】
(a)本発明
【0105】
例2に記載したプロトコル(工程(a)及び(b))に従って得られたエマルションA(本発明)から得られた下塗りで被覆されたブラダーを、標準的な潤滑用組成物(Rhodia社より供給される潤滑用シリコーン組成物XR3900 RTU)を吹付することによって処理する。
【0106】
エマルションC(比較例)から得られた下塗りで被覆されたブラダーを用いて操作を繰り返す。
【0107】
ブラダー/下塗り系の耐久性は、膨張性ブラダーの表面に損傷がもたらされることなく製造された空気タイヤの数に相当する。工業装置を用いた空気タイヤの製造工程をシミュレートする一連の圧力及び温度サイクルに従って、試験ブラダーを非架橋空気タイヤカバーフィルムと接触させてプレスする(典型的には自家用車空気タイヤについてのそれぞれの型成形/離型サイクルについて170℃において7分間の硬化)。
【0108】
空気タイヤカバーフィルムは、それぞれの型成形において取り替える。接触させた2つの面が互いに張り付いたままの時に試験が終わる。
【0109】
エマルションA(本発明)から得られた下塗りで被覆されたブラダーは、空気タイヤが張り付くことなく40回以上の型成形/離型サイクルが可能だった。また、40回以上の型成形/離型サイクルの後にさえ、下塗りのブラダーに対する接着性が良好だった。
【0110】
(b)比較例
【0111】
例2に従って得られたエマルションC(比較例)から得られた下塗りで被覆されたブラダーを、標準的な潤滑用組成物(Rhodia社より供給される潤滑用シリコーン組成物XR3900 RTU)を吹付することによって処理する。エマルションCから得られた下塗りで被覆されたブラダーは、下塗りとブラダーとの間の剥離の問題を示した。下塗りとブラダーとの間の接着性は、型成形/離型サイクルを保証するのには不充分だった。
【0112】
添付した特許請求の範囲によって規定される本発明は上記の説明に示した特定的な具体例に限定されるものではなく、本発明の範囲や技術思想から逸脱しない別形態を包含するものであることをはっきり理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気タイヤの製造用の膨張性加硫ブラダー上に、
・周囲温度(約20℃)及び/又は150℃以上の温度において300%の伸びに耐え、
・ブラダーに対する良好な接着性を有し、且つ
・型成形/離型サイクルの際の潤滑剤との良好な親和性を保証する
ことができる接着用下塗りを形成させるための、水分の蒸発及び架橋によって硬化してエラストマーになることができる水性シリコーンエマルションの使用であって、
該エマルションが、次の(i)、(ii)及び(iii):
(i)次の成分:
・ヒドロキシル及び/又はアルコキシル官能基を含み、20000〜2×106mPa・sの範囲、好ましくは70×103〜1.1×106mPa・sの範囲、さらにより一層好ましくは100×103〜300×103mPa・sの範囲の動的粘度を有する、少なくとも1種の架橋性線状ポリオルガノシロキサンオイルA、
・例えばヒドロキシル化され且つ/若しくはアルコキシル化されたポリオルガノシロキサン樹脂又はヒドロキシル及び/若しくはアルコキシル架橋用官能基を有するケイ素含有粘着促進剤のような、ヒドロキシル及び/又はアルコキシル官能基を含む少なくとも1種の架橋剤D、
・前記架橋剤Dがヒドロキシル及び/若しくはアルコキシル架橋用官能基を有するケイ素含有粘着促進剤ではない場合に随意に存在させる少なくとも1種のケイ素含有粘着促進剤B
から成り、
成分A、B及びDの少なくとも1つが1分子当たり少なくとも3個の架橋用官能基を有するものとする、シリコーン相;
(ii)次の成分:
・前記エマルションの総重量に対して少なくとも5重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲の割合で水相中に分散可能な少なくとも1種の充填剤FI;
・少なくとも1種の界面活性剤SU、並びに
・随意としての少なくとも1種の重縮合触媒C及び/又は少なくとも1種の水溶性粘着促進剤B'
から成る親水性非シリコーン相;並びに
(iii)水:
から成り且つ随意に追加の添加剤として少なくとも1種の可塑剤G及び/又は少なくとも1種の殺細菌剤Hを含む、前記使用。
【請求項2】
前記の水相中に分散可能な充填剤FIがコロイドシリカ、ヒュームドシリカ粉末、沈降シリカ粉末、炭酸カルシウム、雲母及びそれらの混合物より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記エマルションを、水の量が前記エマルションの総重量に対して0.5〜55重量%の範囲、好ましくは1.5〜45重量%の範囲、さらにより一層好ましくは30〜45重量%の範囲となるように希釈することを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記界面活性剤SUを前記エマルションの総重量に対して3重量%まで存在させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記架橋性ポリオルガノシロキサンAが1分子当たり少なくとも2個の縮合性又は加水分解性基SiORa(ここで、RaはH又はアルキル、好ましくはRaはHである)を有するポリジオルガノシロキサンオイルであり、
このポリオルガノシロキサンAが随意に縮合触媒Cの存在下で縮合又は加水分解/縮合によって架橋することができるものであり、
前記架橋剤Dが、少なくとも1個のヒドロキシル化され且つ/又はアルコキシル化されたシリコーン樹脂及び随意としての少なくとも1種のアルコキシシランEを含む、
請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記架橋性ポリオルガノシロキサンAが次式(I):
【化1】

(式中、
fは水素又は随意に直鎖状若しくは分岐鎖状C1〜C3アルキルで置換された直鎖状若しくは分岐鎖状C1〜C4アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル若しくはエトキシエチルに相当し;
3、R4、R5、R6、R7及びR8は直鎖状又は分岐鎖状C1〜C30アルキル、好ましくはメチル、直鎖状又は分岐鎖状C2〜C20アルケニル、随意に1〜3個の直鎖状又は分岐鎖状C1〜C3アルキルで置換されたC6〜C12アリール、ベンジル、フェネチル
【化2】

又は次式(II):
【化3】

の基のような、アリール部分がC6〜C8炭素原子を有し且つアルキル部分が直鎖状又は分岐鎖状であってC1〜C4炭素原子を有するアラルキル、及びアリール部分がC6〜C8炭素原子を有し且つアルケニル部分が直鎖状又は分岐鎖状であってC2〜C4炭素原子を有するアリールアルケニルより成る群から選択される同一の又は異なる基であり、
Nはアミノ化基、好ましくはアミノアルキル、又は1個以上のエポキシド及び/若しくはカルボキシル及び/若しくはメタクリロイルオキシ及び/若しくはメルカプト及び/若しくはイソシアネート及び/若しくはイソシアヌレート及び/若しくはシアノ官能基を含むアルキル基と定義される互いに同一の又は異なる基に相当し;
eはR3、R4、R5及びR6について上に与えたものと同じ定義に相当する基並びに/又はRNについて上に与えたものと同じ定義に相当する基と定義される互いに同一の又は異なる基を表わし;
aは1、2又は3であり、そして
m、n、o及びpは0以上であって、m+n+o+pは500以上、好ましくはm+n+o+pは650以上である)
を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記架橋性ポリオルガノシロキサンAが請求項6に記載の式(I)において
fが水素に相当し、
a=1であり、
e及びR3〜R8が直鎖状又は分岐鎖状のC1〜C15アルキル、好ましくはメチル、エチル若しくはプロピル、フェニル、トリル、ベンジル基、フェネチル、スチリル及び次式:
【化4】

の基より成る群から選択される互いに同一の又は異なる基である
ホモポリマー又はコポリマーによって構成されるシリコーンオイルである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記エマルションが重量部で表わして次の組成:
・少なくとも1種のα,ω−ジヒドロキシル化ポリジオルガノシロキサンシリコーンオイルA:100部、
・アミノアルキルトリアルコキシシランの加水分解生成物、又はD、T及び/若しくはQシロキシル単位及び随意としてのMシロキシル単位を含み且つD、T及びM単位の少なくとも一部が1個以上のアミン官能基を有するアミノ化シリコーンオリゴマー若しくは樹脂より成る群から選択される少なくとも1種の粘着促進剤B及び/又はB':0〜10部、
・ヒドロキシル化シリコーン樹脂、好ましくはT(OH)、DT(OH)、DQ(OH)、DT(OH)、MQ(OH)、MDT(OH)、MDQ(OH)タイプの樹脂及びそれらの混合物{これらの樹脂は、ビニル及び/又はフェニル及び/又は3,3,3−トリフルオロプロピル及び/又は直鎖状若しくは分岐鎖状C1〜C6(有利にはC1)アルキル基で置換されたケイ素を有する}から選択される少なくとも1種の架橋剤D:1〜20部、並びに/或は
・次式:
【化5】

(ここで、RaはH又はアルキル、好ましくはRaはHであり、
bは随意に置換されたC1〜C6(シクロ)アルキル又はアルケニルであり、
t=1、2又は3である)
の少なくとも1種のアルコキシシランE:0〜5部;
・少なくとも1種の重縮合触媒C:0〜2部;
・少なくとも1種の界面活性剤SU:0.5〜10部、
・少なくとも1種のケイ質充填剤FI、好ましくは沈降又は非沈降シリカ、コロイドシリカ、粉末形態のシリカ、雲母及びこれらの物質の混合物から選択されるもの:2〜40部、
・水:0.5〜50部、並びに
・有機ケイ酸塩又はケイ酸ナトリウムのような少なくとも1種のケイ質添加剤SA:0〜20部:
によって特徴付けられる、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記エマルションが部分的に架橋した形で存在するシリコーン分散相の液滴を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
空気タイヤ又は半空気タイヤの造形及び加硫のための、請求項1〜9のいずれかに記載の水分の蒸発及び架橋によって硬化してエラストマーになることができる水性シリコーンエマルションで外側面を被覆された膨張性ゴムブラダー。
【請求項11】
請求項10に記載のブラダーを20〜180℃の温度において乾燥させ且つ/又は加熱することによって得ることができる、接着用下塗りで被覆された膨張性ゴムブラダー。
【請求項12】
潤滑用組成物を塗布された、請求項11に記載の接着用下塗りで被覆された膨張性ゴムブラダー。
【請求項13】
空気タイヤの製造のための、内側面を潤滑用組成物で処理された未加硫空気タイヤとの組合せとしての、請求項11に記載の接着用下塗りで被覆された膨張性ゴムブラダーの使用。

【公表番号】特表2008−536967(P2008−536967A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504805(P2008−504805)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000764
【国際公開番号】WO2006/106236
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(507421304)ブルースター シリコーン フランス (62)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES FRANCE
【住所又は居所原語表記】21,AVENUE GEORGES POMPIDOU F−69486 LYON CEDEX 03 FRANCE
【Fターム(参考)】