説明

空気急冷ブロンフィルム用のポリプロピレン組成物

本発明は、空気急冷ブロンフィルムを製造するのに好適なポリプロピレン樹脂を指向する。この樹脂は、5g/10分以上のメルトフローレート、2%未満のキシレン可溶部、95%以上の立体規則性ペンタッド分率、95%以上の立体規則性ペンタッド/トライアッド比、少なくとも65%の結晶度、および少なくとも127℃の結晶化温度を有する。このポリプロピレンは500ppm〜2500ppmの結晶核剤/清澄添加剤を含有する。この樹脂から作製される急冷ブロンフィルムは、200℃/分の走査速度のDSC分析を用いると、少なくとも116℃の結晶化開始温度と4.1秒又はそれ以下の結晶化半減時間を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィンに関し、特に空気急冷ブロンフィルムの製造方法を用いるフィルムの製造に好適な高結晶性プロピレンベースのポリマー組成物、かかるフィルムの作製方法、およびかかるポリマーから作製されるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ブロンフィルムは主としてエチレンポリマーから作製される。プロピレンポリマーの吹き付けフィルムに関する参考文献は存在するが、どれも商業的に成功していると見なされるものはない。歴史的には、プロピレンポリマーの溶融強度が低いことによって、ポリエチレンの加工に使用される標準的な装置で商業的に実行可能な速度でかかるポリマーのブロンフィルムの製造が阻害されたと考えられる。それゆえ、プロピレンベースのポリマーの溶融強度を増大させて、かかるポリマーにより空気急冷ブロンフィルムを製造する能力を増強することが望まれてきた。
【0003】
プロピレンベースのポリマーの溶融強度を増大させる最も普通の方法は、高分子量(Mw)ポリマー、好ましくは230℃の温度および2.16kg重量を使用するASTM D 1238−01により測定して2g/10分未満の、更に好ましくは1g/10分未満のメルトフローレートを有するポリマーを使用することであった。プロピレンベースのポリマーの溶融強度を増大させるためのもう一つの方法は、当該技術当業者に既知の方法によってこのポリマー鎖の中に分岐を導入することである。
【0004】
Scheveらは、米国特許第5,519,785号において、1つ未満の分岐指数を有し、ひずみ硬化伸張粘度を有するポリプロピレンを使用して、フィルムをブローすることを開示した。このポリマーは、重合後の段階において特殊な装置を含む多段階工程において特定の条件下で輻射線により処理された。かかる方法は、多段階であって難しく、好ましくは回避される。更には、重度に分岐したプロピレンベースのポリマー鎖を含有するポリプロピレン樹脂は、非分岐ポリプロピレンよりもヘーズおよび透明性などの光学的性質が低下する傾向があることが見出された。
【0005】
GiacobbeとPufkaは、米国特許第5,641,848号において、広い分子量分布(約4−160のMWD)、約0.5〜50dg/分のメルトフローレートおよび94パーセント又はそれ以上のキシレン不溶部(25℃における)のプロピレンポリマー材料であって、広分子量分布のプロピレンホモポリマーとエチレンプロピレンゴム衝撃変成の広分子量ホモポリマーから選択されるものからブロンフィルムを作製することを開示している。しかし、このブレンドは、ポリエチレンブロンフィルムに対して商業的に使用されるものよりも低い速度でブロンフィルムを形成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
驚くべきことには、高い溶融強度を示さず、および/またはそれに依存する必要のない比較的高いメルトフローレートプロピレンベースのポリマー(ホモポリマーおよびコポリマー)を用いて、機械的および物理的性質、例えば剛性および光学的性質のバランスの優れたプロピレンベースのフィルムが商業的に許容可能な速度で製造可能であるということを本発明者らは見出した。更には、ポリエチレンベースのフィルムの製造に通常使用される市販の空気急冷ブロンフィルム装置を用いて、これらのプロピレンベースの樹脂を単層フィルムおよび共押し出しされたフィルム構造物に製造することができることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの態様においては、本発明は、ASTM D 1238−01の試験方法により230℃および2.16kgの荷重で測定して5g/10分よりも大きいメルトフローレート(MFR)を有する高結晶性プロピレンベースのポリマーである。好ましくは、この高結晶性プロピレンベースのポリマーのMFRは、50g/10分未満、更に好ましくは25g/10分未満である。更に好ましくは、この高結晶性プロピレンベースのポリマーのMFRは、6.0〜20g/10分、更に好ましくは6.0〜16g/10分、最も好ましくは7〜14g/10分、ある場合には8〜13g/10分である。この高結晶性ポリプロピレンは、また、10℃/分の走査速度で測定して、少なくとも127℃の、好ましくは少なくとも128℃の、更に好ましくは少なくとも129℃の、なお更に好ましくは少なくとも130℃の、最も好ましくは少なくとも133℃のピーク結晶化温度も有する。この高結晶性プロピレンベースのポリマーは、好ましくは結晶核剤/清澄添加剤を含有する。この樹脂から作製されるフィルムの剛性を増大させるために、空気急冷ブロンフィルムの作製時に高結晶性プロピレンベースのポリマーの結晶化速度を増大させるためにも、結晶核剤/清澄添加剤が好ましくは使用される。この結晶核剤/清澄添加剤は得られるフィルムの剛性/透明性のバランスも改善させる。同時に透明化し、核形成するいかなる添加物も使用可能である。結晶核剤/清澄添加剤、例えばADK NA−11(メチレン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩)およびADKNA−21(アルミニウムヒドロキシビス[2,4,8,10−トラキス(1,1−ジメチルエチル)−6−ヒドロキシ−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン6−オキシダト])がAsahi Denka Kokaiから市販されていて、好ましくは本発明の高結晶性プロピレンベースのポリマーに添加される。Milliken & Companyから入手し得るMillad 3988(3,4−ジメチルベンジリジンソルビトール(3,4-Dimethylbenzylidine Sorbitol))が本発明で使用可能な結晶核剤/清澄添加剤のもう一つの例である。この結晶核剤/清澄添加剤は、好ましくは少なくとも500ppmの、2500ppm未満の濃度で高結晶性プロピレンベースのポリマー内に存在する;更に好ましくは、この結晶核剤/清澄添加剤は少なくとも650ppmおよび2000ppm未満の濃度で存在し、更に好ましくは、この結晶核剤/清澄添加剤は少なくとも750ppmおよび1250ppm未満の濃度で存在し、最も好ましくは、この結晶核剤/清澄添加剤は800ppm〜1250ppmの濃度で存在する。
【0008】
このプロピレンベースのポリマー組成物を後に述べる好ましい性質を有するブロンフィルム構造物に有効に成形するためには、この組成物は空気急冷ブロンフィルム法で経験されるものに類似の条件下で充分に高い結晶化開始温度と比較的急速な結晶化速度をもたらすことが重要である。
【0009】
少なくとも8ポンド/時−インチ・ダイ円周の製造速度で空気急冷ブロンフィルムに成形可能である組成物に対しては、メチレン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩は、これを組み込んだ本発明の組成物が示す結晶化温度が高いために、急速な冷却条件(200℃/分以上)下で比較的低い濃度(通常、1000ppm未満の)で使用した場合にも、かかる組成物により得られる結晶化速度が急速であるために最も好ましい結晶核剤/清澄添加剤である。加えて、上述の濃度で使用される場合この組成物が200℃/分の冷却速度から少なくとも116℃の、好ましくは少なくとも120℃の結晶化開始温度を示す限り、実施例で述べる方法を用いて200℃の速度で冷却される場合4.1秒又はそれ以下の、好ましくは4.0秒又はそれ以下の結晶化半減時間(crystallization half-life time)(秒)を示す限り、他の結晶核剤/清澄添加剤が本発明で好ましくは使用され得る。更には、実施例に述べるように200℃の冷却速度を用いて測定する場合、この組成物は、−900W/グラム−分(900W/グラム−分以上の勾配の絶対値)未満の、更に好ましくは−1000W/グラム−分未満の最も急峻な開始勾配を好ましくは示す。
【0010】
この高結晶性プロピレンベースのポリマーは、下記の方法により測定して少なくとも65%の、好ましくは70%を超える、最も好ましくは73%を超える、ある場合には75%を超える結晶度を示す。この高い結晶度は、急速な結晶化速度と一緒になって、ブロンフィルムの製造時のフィルムバブルを支持することを助けると考えられる。この高結晶性プロピレンベースのポリマーは、また、好ましくは下記の方法により測定されるMWDと時々呼ばれる比較的狭い分子量分布(Mw/Mn)も有する。この分子量分布は、好ましくは6未満、更に好ましくは5.5未満、更に更に好ましくは5未満である。
【0011】
空気急冷ブロンフィルムを商業的に許容し得る速度で効果的に製造することができないほど、このエチレンがポリマーの結晶化速度に悪影響を及ぼさない限り、この高結晶性プロピレンベースのポリマーは少量のエチレンから誘導される単位を含有し得る。本発明の高結晶性プロピレンベースのポリマーがエチレンから誘導される単位を含有する場合には、かかる単位は、通常、このポリマーの2重量%未満の、好ましくは1重量%未満の、更に好ましくは0.1と0.7重量%の間の、最も好ましくは0.5重量%未満の濃度で存在する。当該技術当業者には既知の方法により測定されるこのフィルムの光学的性質(透明性およびヘーズなどの)および靭性、例えば引き裂き、ダート衝撃およびパンクを改善するために、エチレンをこの高結晶性プロピレンをベースとするポリマーに添加する。
【0012】
この高結晶性プロピレンベースのポリマーは、通常のポリエチレンブロンフィルム製造装置により商業的に許容し得る速度で空気急冷ブロンフィルムに製造可能である。特に、この高結晶性プロピレンベースのポリマーは、従来のポリエチレンの空気急冷ブロンフィルム製造装置を用いて、少なくとも8ポンド/時−インチ・ダイ円周の、更に好ましくは少なくとも9ポンド/時−インチ・ダイ円周の速度で製造可能である。この製造段階において、このフィルムは、少なくとも1.5のブローアップ比、好ましくは少なくとも2.0のブローアップ比、更に好ましくは少なくとも2.5のブローアップ比を用いて作製され、ある場合には、このブローアップ比は3を超え、時には4を超える。この大きなブローアップ比はこのフィルムのバランスのとれた配向をもたらし、それゆえフィルムの性質、例えばマシン方向の引き裂きおよびダート特性を改善する。好ましくは、この溶融強度は8cN未満、更に好ましくは6cN未満、更に好ましくは4cN未満、ある場合には2cN未満である。溶融強度は2002年10月29日Ansemsらに発行された米国特許第6,472,473Bl号に述べられている方法により190℃の温度で測定される。
【0013】
高結晶性プロピレンベースのホモポリマーを用いて商業的に許容し得る速度で作製される空気急冷ブロンフィルムに対しては、このフィルムは、ASTM D 882で測定して少なくとも200,000psi(交差方向(CD)およびマシン方向(MD)で測定して)の、好ましくは220,000p.s.i.以上の、更に好ましくは240,000p.s.i.以上の、なお更に好ましくは250,000p.s.i.以上の、ある場合には260,000p.s.i.以上の1%割線係数を示す。
【0014】
高結晶性プロピレンベースのコポリマーを用いて商業的に許容し得る速度で作製される空気急冷ブロンフィルムに対しては、このフィルムは、好ましくは1重量%未満のエチレンから誘導される単位を有するコポリマーを用いて、少なくとも150,000psiの、好ましくは165,000p.s.i.を超え、更に好ましくは180,000p.s.i.を超え、最も好ましくは200,000p.s.i.を超える1%割線係数を示し、高結晶性プロピレンベースのホモポリマーから作製されるフィルムと比較して引き裂き、靭性および光学的性質の改善された値も示す。
【0015】
驚くべきことには、本発明のポリマーから作製されるフィルムの光学的性質は優れている。特に、このフィルムに対して測定されるヘーズ値は優れていて、驚くべきことには、0.5と6ミルの間の厚さのフィルムに対して、本発明のポリマーから作製されるフィルムの透明性の値はフィルム厚さと共に直線的に低下しない。このことは、実施例1の高結晶性プロピレンベースのホモポリマーから形成されるいくつかの異なる単層フィルムに対してヘーズおよび透明性の値を示す図1により図示される。
【0016】
好ましくは、本発明の高結晶性プロピレンベースのホモポリマーのキシレン可溶部含量は、2重量%未満、更に好ましくは1重量%未満である。本発明のコポリマーに対しては、キシレン可溶部重量パーセントは、3重量%未満、更に好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1.5重量パーセント未満である。
【0017】
高結晶性プロピレンベースのホモポリマーおよびコポリマーを用いて商業的に許容し得る速度で作製される単層の空気急冷ブロンフィルムに対しては、このフィルムは次の性質を示す。
1)このフィルムは著しいしわ無しで巻き取りロール上に平らに巻き付く。
2)10%未満の、好ましくは5%未満のゲージ変動。
3)1ミルのフィルムは、ASTM D 1003により測定して10未満の、好ましくは9未満の、更に好ましくは8未満の、最も好ましくは7未満のヘーズ値を示す。
4)1ミルフィルムは、ASTM D 1746により定量して96%以上の、好ましくは97%以上の、更に好ましくは98%を超える透明性を示す。
【0018】
第2の態様においては、本発明は、本発明の第1態様に述べたような高結晶性プロピレンベースのポリマーを用いて8ポンド/時−インチ・ダイ円周を超える製造速度で空気急冷ブロンフィルムの製造方法を含んでなる。
【0019】
この第2の態様においては、本発明は、上記においておよびこの用途において更に述べるように高結晶性プロピレンベースのポリマーを用いて、空気急冷ブロンフィルムの製造方法を含んでなる。この第2の態様においては、このフィルム方法は、本発明の高結晶性プロピレンベースのポリマー以外のポリマーから作製される層を有する単層フィルムまたは共押し出しされたフィルム構造物を製造することを含む。好ましくは、かかる共押し出しされたフィルム構造物の少なくとも1つの層は、ポリオレフィンポリマー、好ましくは主成分がエチレンから誘導される単位を含むポリマーを含む。前に述べたように、このフィルムは、8ポンド/時−インチ・ダイ円周の商業的に許容し得る速度で、少なくとも1.5の、好ましくは少なくとも2.0の、更に好ましくは少なくとも2.5のブローアップ比を用いて作製される。再度になるが、3.0および4.0等の高ブローアップ比を使用して、得られるフィルムの物理的性質を改善することができる。特に、本発明のポリマーによりフィルムをブローするのに使用される高ブローアップ比は、ポリプロピレンベースの一軸延伸(OPP)および二軸延伸(BOPP)のフィルムの置き換えを可能とせしめる物理的性質を有する単層フィルムを生じる。この第2の態様においては、このフィルムは10%未満のゲージ変動で製造され、製造時にこのフィルムはダイ以上の均一なフロストライン高さを持つ安定なバブルと共に形成される。
【0020】
第3の態様においては、本発明は、高結晶性プロピレンベースのポリマーおよびこの明細書に述べられている方法を用いて作製される単層および共押し出しのフィルム構造物を含んでなる。
【0021】
比較的高い剛性およびバリア性を要求する共押し出しされたフィルム用途、例えば立食用ポーチ、可撓性ジュース容器、スナック食品包装、冷凍食品包装(冷凍および非冷凍)、ペット食品包装、およびシリアル食品包装に対しては、この高結晶性プロピレンベースのポリマーは、好ましくはフィルム構造物全体の少なくとも30重量%、更に好ましくは少なくとも40重量%、なお更に好ましくは少なくとも50重量%を占める。かかる構造物の靭性とパンク抵抗性を改善するために、この高結晶性プロピレンベースのポリマーは、好ましくは90重量%未満、更に好ましくは85重量%未満を占め、この構造物の残りがエチレンベースのポリマーを含む。
【0022】
本発明の高結晶性プロピレンベースのポリマーから作製されるフィルムは極めて平滑な表面を有する。また、この高結晶性プロピレンベースのポリマーを使用する共押し出しされた構造物は、高い熱安定性と良好な透明性も有する。これらの特性は、エチレンベースの層と一緒になって、ポリプロピレンベースのBOPP層をエチレンベースの層に積層することにより作製される相当する多層の積層フィルム構造物よりも安価で効率的な製造方法(すなわち、少ない段階を必要とする)を用いて作製可能な多層ブロンフィルム構造物をもたらす。
【0023】
高結晶性プロピレンベースのポリマーと共に共押し出し可能なポリマーのいくつかの例は、EVOH、PVDC、サラン、EVA、EAA、マレイン酸無水物グラフトのポリプロピレンまたはポリエチレン、EMA、および他のエチレン−アクリレートおよびアクリル酸のコポリマーを含む。
【0024】
結晶度が高いことにより、本発明から作製される均一な二軸配向のフィルムは、優れた水蒸気透過速度(比較的低い)の性質と、許容し得る酸素透過速度の性質を有する。好ましくは、本発明の単層フィルムは、0.7g−ミル/l00インチ2−日@38℃未満の、更に好ましくは0.6g−ミル/100インチ2−日@38℃未満の、なお更に好ましくは0.5g−ミル/100インチ2−日@38℃未満の水蒸気透過速度(WVTR)を有する。本発明のこれらの単層フィルムはポリエチレンから作製されるフィルムに類似した酸素透過速度を有する。これらのタイプの性質は、シリアル包装、ポテトチップおよびコーンチップ包装および食品包装一般などの用途に重要であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の高結晶性プロピレンベースのポリマーは、好ましくは、式(1)
式(1):FM/((XS−0.74%E)*MWD)≧30,000p.s.i
で特徴付けられるポリマーを含む。
式中、XS≦2wt%+%Eであり;および
MWD≦6であり;および
このポリマーのメルトフローレートは5g/10分を超え、好ましくは6g/10分を超え;および
ここで、FMはASTM D 790−00の方法により測定される1%割線曲げ係数であり、
XSは下記の方法により測定されるこの樹脂のキシレン可溶部含量の重量パーセントであり、
MWDはMw/Mnと定義される。%Eはこのポリプロピレン中のエチレンから誘導される単位の重量パーセントである。好ましくは、このポリプロピレンホモポリマーのMWDは5.5未満、更に好ましくは5未満である。好ましくは、XS≦2重量%+%E/2である。このポリプロピレン樹脂は、結晶核剤/清澄添加剤により好ましくは核形成され/透明化される。
【0026】
前述した性質に加えて、本発明の高結晶性プロピレンベースのポリマーは、5を超える230℃におけるメルトフローレートと、好ましくは95%を超え、更に好ましくは96%を超え、なお更に好ましくは98%を超え、最も好ましくは99%を超える立体規則性ペンタッド/トライアッド比(isotactic pentad/triad ratio)を有する。本発明の高結晶性プロピレンベースのホモポリマーの立体規則性ペンタッド分率は、好ましくは少なくとも95%、更に好ましくは少なくとも96%、なお更に好ましくは少なくとも97%、最も好ましくは少なくとも98%である。本発明の高結晶性プロピレンベースのコポリマーの立体規則性ペンタッド分率は、好ましくは少なくとも91%であり、好ましくは少なくとも92%、更に好ましくは少なくとも94%、なお更に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも96%である。
【0027】
フィルム成形
本発明の組成物はブロンフィルムの作製に関して有利に有用である。ブロンフィルム押し出し法は、薄いプラスチックフィルムを製造においてよく知られている。有利な方法においては、プラスチック、例えば低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、および高密度ポリエチレン(LDPE、LLDPE、およびHDPE)をサーキュラ・ダイから押し出して、フィルムを形成する。空気をこのダイの中心から導入して、バブルの形でこのフィルムを維持し、このフィルムの直径を約1.5〜6倍増加させ、その後ローラー上でこのバブルを潰す。当該技術にはかかる方法の多数の変形が存在し、例えば米国特許第3,959,425号;第4,820,471号(ここでは、高(その明細書では「長ストーク」と呼ばれている)および低ストークフィルムブローの差異が第1欄で議論されている);第5,284,613号;W. D. Harrisら「Effects of Bubble Cooling on Performance and Properties of HMW-HDPE Film Resins」, Polymers, Laminations & Coatings Conference, Book1, 1990, pages 306-317;およびMoore, E. P., Polypropylene Handbook, Hanser, New York, 1996, pages 330-332などの参考文献で述べられている。用語「ストーク」は、空気急冷ブロンフィルムライン上でフィルムに成形中のポリマーのバブルのネック高さを表すのに使用される。ポリオレフィンフィルムのブローの参考文献は大部分ポリエチレンに使用される方法を開示しているが、これらはさほどの実験をせずに当該技術内で僅かに改変を加えることにより本発明の高結晶性プロピレンベースのポリマーに適用可能である。例えば、有利なこととしては、当分野はポリプロピレンがポリエチレンと異なる速度で冷却し、結晶化することを認識しているために、冷却がしばしば改変される。それゆえ、冷却パラメーターへの調整によって更に安定な所望の押し出し量でバブルが作られる。
【0028】
ブロンフィルムの形成においては、溶融ポリマー(メルト)は底部または側部のいずれかから環状ダイに入る。メルトはこのダイの内側のマンドレルの表面の周りのらせん溝から押し込まれ、厚壁のチューブとしてダイ開口から押し出される。このチューブは前述のように所望の直径と、対応する減少された厚さのバブルに膨らむ。
【0029】
好ましくは、本発明の組成物は、低ストークフィルム装置(すなわち、低ストーク)で少なくとも約6ポンド/時/インチ・ダイ円周(0.298g/秒/cm・ダイ円周)の、更に好ましくは少なくとも約8ポンド/時/インチ・ダイ円周(0.397g/秒/cm・ダイ円周)、最も好ましくは少なくとも約10ポンド/時/インチ・ダイ円周(0.496g/秒/cm・ダイ円周)の速度で場合によってはブローされる。
【0030】
共押し出しされたブロンフィルムの成形は当分野で既知であり、本発明に適用可能である。当分野を例示する論文は、Han and Shetty,「Studies on Multilyer Film Coextrusion III, The Rheology of Blown Film Coextrusion」, Polymer Engineering and Science, February(1978), vol. 18, No.3 pages 187-199; and Morris,「Peel Strength Issues in the Blown Film Coextrusion Process」1996 Polymers, Laminations & Coatings Conference, TAPPI Press, Atlanta, Ga.(1996), pages 571-577を含む。用語「共押し出し」は、好ましくは冷却または急冷の前に押し出し物を一緒に合体して、積層構造物になるように配列された2つ以上のオリフィスを持つ単一のダイから2つ又はそれ以上の材料を押し出す方法を指す。多層フィルムを作製するための共押し出し系は、共通のダイ組み立て体に供給する少なくとも2つの押し出し機を使用する。押し出し機の数は、共押し出しされたフィルムを含んでなる異なる材料の数に依存する。各々の異なる材料に対して、有利なことととしては、異なる押し出し機が使用される。このように、2つ又はそれ以上の層が同一の材料からできている場合には、更に少ない数を使用し得るが、5層の共押し出しは5台までの押し出し機を必要とすることがある。
【0031】
共押し出しダイを使用して、共押し出しされたブロンフィルムが成形される。これらは、このサーキュラ・ダイのリップに異なるメルト流を供給する多数個のマンドレルを有する。2つ又はそれ以上の押し出し機からのメルト層を積み重ねるのにフィードブロックを使用する場合には、得られる多層化されたメルト流がフィルムダイに供給される。
【0032】
本発明の共押し出しされたブロンフィルムは、当該技術内の包装機、例えばマンドレルを用いるヒートシール機を用いてポーチ、バッグ、容器などに成形可能である。材料のこの組み合わせから作製されるポーチ、バッグおよび他の容器は、優れた剛性、光学的性質および耐熱性をもたらし、更にはグリースおよびオイルとテレピン油などの軽質炭化水素に対する優れたバリア性をもたらす。本発明の共押し出しされたブロンフィルムは、包装基材単独として、または食品包装業界で使用されるポリエチレンと共に多壁のバッグにおけるライナーまたは積層構造物における強度プライとして使用可能である。
【0033】
多層フィルムにおいては、有利なこととしては、各々の層は、所望の特性、例えば耐候性、ヒートシール、接着、耐薬品性、バリア層(例えば水または酸素に対する)、弾性、収縮、耐久性、手触り性、騒音また騒音低減、テクスチュア、エンボス、装飾要素、不透過性、剛性などを付与する。隣接する層は場合によっては直接接着されるか、または別法としては特にその間に接着を行う目的で接着剤、これらの間の結合層または他の層を有する。この層の構成成分は所望の目的を得るように選択される。
【0034】
剛性、靭性、光学的性質、および/またはヒートシール性能が重要である本発明の一つの態様においては、高結晶性プロピレンベースのポリマーを用いる共押し出しされたフィルムがかかる多層フィルムの一方の層中に使用され、エチレンポリマーが少なくとももう一方の層中に使用される。このエチレンポリマー層はこのフィルム構造物の全体の靭性を改善する。この高結晶性プロピレンベースのポリマーは、上述のように本発明のコポリマーまたはホモポリマーを含んでなることを得る。本発明の一つの好ましい態様においては、3層のフィルム構造物が使用され、本発明の高結晶性プロピレンベースのポリマーがコア層に使用される。このコア層は2つのエチレンポリマースキン層の間にサンドイッチされる。これらのスキン層は、LDPE、LLDPE、HDPE、実質的に直鎖のポリエチレン、均質に分岐した直鎖ポリエチレン、およびこれらのブレンドを含み得る
【0035】
有利なこととしては、本発明の組成物から作製されるフィルムは大きな剛性を有する。
【0036】
添加物
前に述べた結晶核剤/清澄添加剤に加えて、プロピレンベースのポリマーと共に通常使用される添加物が本発明の高結晶性プロピレンベースのポリマー中に包含され得る。
【0037】
使用
本発明は、限定はされないが、コンシューマーライナー、重輸送袋、野菜袋、バッチ・インクルージョン袋、ポーチ、食料品袋、商品袋、フォーム包装用袋(特に、フォームがバッグ中に形成される場合)、シリアルライナー、柔質紙上包み、多壁袋、こん包バッグ、バンドリングフィルム、圧縮フィルムおよび積層物などの用途における本発明のフィルムの使用を含む。
【0038】
本発明のフィルムは、ヒートシールフィルム、ポーチまたはバッグとしてや、レトルト用途用のフィルムとしても使用可能である。
【実施例】
【0039】
次の試験方法を使用して、実施例と用途に全体として開示された性質を求めた。
【0040】
Q 1000 TA Instrumentを用いて示差走査熱量分析(DSC)により結晶化度を定量する。この測定においては、このプロピレンポリマーの小さい10ミリグラム試料をアルミニウムDSC皿の中に封入する。この試料を1分当たり25センチメートルで窒素掃気しながらDSCセルの中に置き、約−100℃まで冷却する。1分当たり10℃で225℃まで加熱することにより、この試料に対して標準の熱履歴を確定する。この試料を225℃で3分間保持して、確実に完全に融解させる。次に、この試料を1分当たり10℃で約−100℃まで冷却する。再度、この試料を−100℃で3分間等温に保って、安定化させる。次に、これを1分当たり10℃で225℃まで再加熱する。80−180℃の範囲にわたる2回目の走査に対して実測される融解熱(ΔH実測)を記録する。実測される融解熱は、ポリプロピレン試料の重量基準の重量パーセントの結晶化度と式
結晶度%=(ΔH実測)/(ΔH立体規則性pp)×100
により関連付けられる。式中、立体規則性ポリプロピレンに対する融解熱(ΔH立体規則性pp)は、B. Wunderlich, Macromolecular Physics, Volume 3, Crystal Melting, Academic Press, New York, 1960, p48に報告されているものであり、ポリマー1グラム(J/g)当たり165ジュールである。このメルトからの結晶化ピーク温度を上記のようにDSCにより10℃/分の冷却速度で定量するピーク結晶化温度(この明細書では結晶化温度とも呼ばれる)は最大の示差熱流が起こる温度である。融解温度は融解転移のピークにより求められる。
【0041】
急速DSC分析
この組成物の結晶化の性質を200℃/分の冷却速度で求めるために、急速示差走査熱量分析(DSC)実験を行う。急速DSCに使用される装置は、クライオフィル冷却ユニットとモデルTAGSガス切り替え付属品を備えたPerkin ElmerのモデルPyris Diamond入力補償DSCである。50mL/分の流量のHe:Neの50:50混合物を掃気ガスとして使用して、冷却性能を増強し、安定な再現性のあるベースラインを可能とする。
【0042】
n−オクタデカン(Mp=28.24℃)とインジウム(Mp=156.60℃)を用いて、温度目盛を較正し、エンタルピーをインジウム(ΔHf=28.45J/g)により較正する。これらの較正を10℃/分の走査速度で行う。この較正を低走査速度で行っても、急速DSCの試験には低減された試料サイズを使用するので、この較正は200℃/分などの高走査速度試験に対しても有効である。装置の較正と、この較正が異なる走査速度にどのように影響するかに関する詳細は、Macromolecules, 35, 3601,(2002) by T. F. J. Pijpers, V. B. F. Mathot, B. Goderis, R. L. Scherrenberg and E. W. van der Vegteに報告されている。
【0043】
実施例1a,2、3、5および8のブロンフィルムから分析用の試料を切断する。紙パンチ(6mm直径)とかみそりの刃を用いて始めにこの試料を切断する。6mm直径の平坦化されたフィルム試料の中央近くで2つの円板を切断する。これらの円板をかみそりの刃によりトリミングして、試料重量を2.2mgまで減らす。すべての試料をPerkin Elmerから入手可能な平らなアルミニウム皿の中にクリンプシ−ルする。クリンプシ−ルは試料からの熱の出入りを最適化する。
【0044】
220℃まで加熱し、始めにこの温度で2分間保持することにより、この試料を分析する。この保持期間が完了したら、この温度を220℃から−50℃まで200℃/分の速度で低下させる。この急速DSC試験時試験の温度および熱流データを1秒当たり20試料ポイントの速度で取得する。この2つの別々な試料は再現性を改善するために、各組成物用のものであった。試料パンの熱流に及ぼす影響を補正するために、この試料に対して使用されたのと同一の温度プロフィールを用いてその日の初めにベースラインファイル(2つの空の試料皿)を収集する。このベースラインファイルを試料から収集されるデータから差し引いて、下記に討論する結晶化の性質の決定に使用される熱流および温度の補正データを得る。
【0045】
試験の開始前に、DSC炉の下の液体窒素冷却リザバを充填し、平衡に達することができるように、この系を60分間安定化させる。この60分の期間の開始時にこの炉を大気に開放し、500℃の温度まで加熱する。この熱処理は、炉の下のセラミックに埋め込まれたセンサーのコンディショニングを助け、平坦で更に再現性のあるベースラインを生じる。
【0046】
この急速DSC分析に対しては、このピーク結晶化温度(Tc)は、熱流および温度の補正データから最大の示差熱流が観察される温度である。結晶化開始温度(To)は、結晶化ピークの高温度側から引いた接線が熱流対温度プロット上でピークベースラインを切る温度である。結晶化半減時間は、Toで開始した後最終結晶度の50%に達するのに必要とされる時間である。結晶化半減時間は、A. Krumme, A. Lehtinen and A. Viikna, Eur. Polym. J., 40, 371(2004)により述べられている、動的実験における信頼し得るおよび単純な結晶化速度の尺度である。
【0047】
最も急峻な開始勾配はこの結晶化速度のもう一つの尺度である。最小自乗法分析を用いて、結晶化ピークに先行するDSC曲線の高温区分の最も急な直線の区分として最も急峻な開始勾配を測定する。
【0048】
ポリプロピレンホモポリマーに対する分子量分布(MWD)をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により次のように求める。300×7.5mmの4つの直線混合床カラム(Polymer Laboratories PL gel Mixed A(20ミクロン粒子サイズ))を備えたPolymer LaboratoriesのPL−GPC−220高温クロマトグラフユニットでのゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりこのポリマーを分析する。オーブン温度は160℃であり、オートサンプラー高温域が160℃で、中温域が145℃である。溶剤は200ppmの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを含有する1,2,4−トリクロロベンゼンである。流量は1.0ミリリットル/分であり、注入サイズは100マイクロリットルである。穏やかに混合しながら、200ppmの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを含有する窒素掃気した1,2,4−トリクロロベンゼン中に試料を160℃で2.5時間溶解することにより、試料の0.2重量%溶液を注入用に調製する。
【0049】
10個の狭い分子量分布のポリスチレン標準(Polymer Laboratoriesからの、580−7,500,000g/モルの範囲のEasiCal PS1)を使用することにより、溶離容積と連携して分子量を推定する。ポリプロピレン(引用により本明細書に組み込まれている、Th. G. Scholte, N. L. J. Meijerink, H. M. Schoffeleers, and A. M. G.Brands, J. Appl. Polym. Sci., 29, 3763-3782(1984)により述べられているような)およびポリスチレン(引用により本明細書に組み込まれている、E. P. Otocka, R. J. Roe, N. Y. Hellman, P. M. Muglia, Macromolecules, 4, 507(1971)により述べられているような)に対する適切なMark−Houwink係数をMark−Houwinkの式
{η}=KMa
で使用することにより、等価のポリプロピレン分子量を求める。式中、Kpp=1.90E−04、app=0.725およびKps=1.26E−04、aps=0.702である。
【0050】
プロピレンベースのポリマーについてメルトフローレートをASTM D 1238−01の試験方法により230℃において2.16kgの重量で測定する。
【0051】
4±0.1000gの試料を250mlのエルレンマイヤーフラスコの中に溶解し、ピペットにより200mlの禁止剤入りのキシレンを添加することにより、キシレン可溶部を求める。禁止剤入りのキシレンを作製するために、ビーカー中で200mlのキシレンに18.35gのIrganox 1010を添加し、溶解するまで撹拌する。Irganox 1010を溶解した後、この溶液を4.9ガロンのキシレンの中に注ぎ、この溶液を充分に混合する。撹拌棒を入れ、フラスコ上に水冷コンデンサーを取り付け、マグネチックスターラー/ホットプレート上にこのフラスコ組み立て体を置く。激しく撹拌し、加熱を調整して、試料が完全に溶解するまで穏やかに沸騰させる。この手順の間窒素ブランケットをコンデンサー上に維持しなければならない。試料を溶解した後、フラスコ組み立て体をマグネチックスターラー/ホットプレートから下ろして、撹拌棒を取り出し、蓋をする。このフラスコを室温(30℃、冷却はほぼ1時間かかる)近くまで冷却する。フラスコ上に鉛環を置き、定温水浴中に漬ける。フラスコ内部の温度が25±0.5℃に達した後、水中に更に30分放置する。冷却時、不溶部が沈澱する。この溶液を濾過し;次に、この濾液の100mlをアルミニウム皿中に入れ、窒素流下で乾燥するまで蒸発させる。残存ポリマーを秤量することにより、存在する可溶部を求める。
【0052】
立体規則性ペンタッド(isotactic pentad)パーセント、立体規則性トライアッド(isotactic tirad)パーセントおよび立体規則性ペンタッド/トライアッド比を当該技術当業者に既知の次の方法により求める。13C核磁気共鳴(NMR)はポリ(プロピレン)ホモポリマーのタクチシティの直接的な尺度をもたらす。ここで使用される分析は鎖末端と逆の挿入を無視する。
【0053】
下記の図は通常のポリプロピレントライアッドとこれらの関連の13C化学シフトを示す。トライアッドの名称(mm、mr、およびrr)に対して、「m」はメソを表し、「r」はラセミを表す。この立体規則性トライアッドパーセントはmmトライアッドの尺度である。
【化1】

【0054】
立体規則性ペンタッドパーセントはmmmmペンタッドの尺度である。mmmmペンタッドに対する化学シフトは22.0−21.7ppmである。
【0055】
V. Busico, R. Cipullo, G. Monaco, M. Vacatello, A. L. Segre, Macromolecules 1997, 30, 6251-6263は、NMR分析を用いて立体規則性ペンタッドとトライアッドを定量するための方法を述べている。
【0056】
立体規則性ペンタッド/トライアッド比は、立体規則性トライアッドパーセントに対する立体規則性ペンタッドパーセントの比である。
【0057】
立体規則性ペンタッドおよびトライアッドの値の定量においては、0.5gのポリプロピレンホモポリマーを1.75gのテトラクロロエタン−d2(TCE−d2)と1.75gの1,2−オルトジクロロベンゼンの混合物中に溶解することにより、試料を作製する。試料を加熱ブロック中150℃でホモゲナイズし、加熱ガンにより加熱して、混合を促進する。1.32秒の取得時間、0.7秒の反復遅延、4000個の取得および連続的なプロトンデカップリング(fm−fm変調)を用いて、試料のスピニングの有および無のNMR実験をVarian Unity+400MHz120℃で行う。使用される合計走査時間は2.25時間である。
【0058】
次の実施例は本発明を例示するためのものであって、制約するものでない。比、部、およびパーセントは特記しない限り重量によるものである。
<実施例1>
【0059】
表1および2の性質を有するポリプロピレンホモポリマー、実施例1を単一連続バルク相(凝縮プロピレン)の撹拌タンク反応器中で製造する。Toho Series C,Group JCから市販され、Toho Titanium Ltd.から購入し得る、塩化マグネシウム担体上に担持されているチタン触媒活性金属種を含むチーグラー・ナッタ触媒をWitcoから購入したKaydol白色鉱油中に38重量%で懸濁し、撹拌した触媒供給タンク中で貯蔵する。この懸濁した触媒を液体プロピレンによりほぼ2/3の容量まで充填された公称25,000ガロンの連続撹拌タンク反応器の中に直接にポンプ送入する。プロピレン蒸気を別々の組の熱交換器中で凝縮させ、この液体流を非凝縮性区分と共に反応器に戻すことにより、反応器の所望の温度を65−68℃に制御する。キシレン抽出性区分をASTM D 790−00の方法により測定して1%未満まで低下させるのに必要とされる量で、Degussa−Huelsから市販されている外部アルコキシシラン供与体の[(CH24CH]2Si(OMe)2を反応器に連続的に供給する。液体プロピレン中でのこの外部供与体の標的濃度は固体に対して補正して150ppmである。非希釈のアルミニウムアルキル共触媒、(トリエチルアルミニウムAlEt3、普通TEALと呼ばれる)をこのプロピレン供給流に添加して、液体プロピレン中のTEAL濃度を液体プロピレン中で150ppmのコントロール標的に調整する。
【0060】
ポリプロピレン重合を約40−42重量%の反応器のポリマー固体で行う。連鎖移動剤の水素を反応器に連続的に供給して、ASTM D 1238−01@230℃で測定して8g/10分MFRのプロピレンポリマーを製造する。この反応器の排出流を一連の3つの容器中で脱ガスして、液体プロピレンおよびポリプロピレン粉末製品からの工程軽質分を分離する。次に、この脱ガスされた粉末をリボンブレンダー/ヒーターに4000ポンドのバッチで送る。結晶核剤/清澄添加剤または有機ホスフェート金属錯塩である薬剤のADK NA−11がAmfine Chemical Corp.,North American joint venture of Asahi Denka Kogyo K.K.and Mitsubishi Corp.から市販されている。酸化防止剤のIrgafos 168(トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト)とIrganox 1010(トラキスメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタン)がCIBA Specialty Chemicalから市販されている。ADK NA−11を850ppmで、DHT−4Aを400ppmで、Irgafos 168を1000ppmで、Irganox 1010を1000ppmでリボンブレンダーに添加し、混合する。DHT−4Aはポリオレフィンおよび他のプラスチック用の安定剤(ハロゲン掃去剤)として開発されたヒドロタルサイト様の化合物のMg4.3Al2(OH)12.6CO3−mH2Oである。DHT−4AはKyowa Chemical Industry Co.,Ltd.により市販されている。次に、このポリプロピレン粉末をサージ容器の中に投げ込む。次に、この粉末を混練およびペレット化するために一組の単軸押し出し機に連続的に供給する。この製品ホモポリマーを製造し、軌道車のホッパーに入れる。
【0061】
(比較例1)
連鎖移動剤の水素を反応器に連続的に供給して、1.8g/10分のMFRのポリプロピレンポリマーを製造することを除いて、表1および2に示す性質を有する比較例1のポリプロピレンホモポリマーを実施例1と同一の方法で製造する。
【0062】
(比較例2)
表1および2に示す性質を有する商品名5E40でThe Dow Chemical Companyから入手し得るプロピレンベースのホモポリマー。
【0063】
(比較例3)
表1および2に示す性質を有する商品名5A97でThe Dow Chemical Companyから入手し得るプロピレンベースのホモポリマー。
【表1】

【表2】

【0064】
プロピレンホモポリマーおよびコポリマーから成形される単層フィルム
LD/LLDPE押し出し機でのフィルムのブロー成形
Macro Engineering Companyから商品名DC2900で市販されている2.5インチ(6.35cm)のスクリュー直径、6インチ(15.24cm)のダイ直径を有するブロンフィルム押し出し機に、実施例1の樹脂に対しては450°Fの、比較例1の樹脂に対しては480°Fのメルト温度、実施例1の樹脂に対しては約450°F、比較例1の樹脂に対しては約480°Fのダイ温度、2.5(仕上がりフィルムに対して23.5インチのレイフラット幅を与える)のブローアップ比(BUR)で、その他の点はメーカーの指定により、実施例1および比較例1−3の樹脂を別々かつ独立に供給した。低密度ポリエチレンまたは直鎖低密度ポリエチレンからフィルムをブローするのに普通使用するために、このブロンフィルム装置をこの明細書では「LDPE/LLDPE」または「低ストーク」と呼ぶ。この押し出し機は152.4cm長であり、375°F以上の温度に保たれる。供給部においては400°F、圧縮部においては425°F、計量部においては375°Fの温度で、いわゆる「こぶ形の温度」プロフィール(供給部および計量部よりも圧縮部の温度が高いということを意味する)を使用する。
【0065】
実施例1および比較例1−3の樹脂から単層フィルムを作製するための加工パラメーターに関する詳細を下記で表3および4に示す。
【表3】

【表4】

【0066】
図2、3、および4は、実施例1、比較例1および比較例2から得られるフィルムについて光学顕微鏡(Olympus Company(Tokyo,Japan)からのOlympus Vanox−Smodel AHBS研究用顕微鏡シリ−ズ#808002)を用いて得られるフィルム表面のノルマルスキー像を示す。これらの図から分かるように、実施例1の樹脂から作製されるブロンフィルムは、平滑性の優れた表面を有し、良好な光学的性質をもたらす。特に、意外にも、実施例1の樹脂から作製されるフィルムにおいて測定される透明性はフィルム厚さと共に直線的に低下しない。この有利な性質は、許容し得る透明性をなお維持する更に厚いフィルムを提供する。実施例1の樹脂から作製される単層ブロンフィルムについての透明性とヘーズに対するデータも図1に示す。
【0067】
下記の表5は、上記に示した説明により作製した実施例1と比較例1の樹脂から製造される1.0ミル単層ブロンフィルムが呈する機械的性質を示す。この明細書中のすべてのフィルムに対する1%および2%割線係数をASTM D 882により測定する。これらの1.0ミルフィルムに対する加工情報はこの樹脂の各々について表3に示す加工条件によるものである。
【表5】

【0068】
表5から分かるように、本発明の樹脂は、更に良好なフィルム係数(類似の高結晶性であるが、低メルトフローレートのポリマーから作製されるフィルムと比較した交差方向およびマシン方向の両方における1%および2%係数)を有するブロンフィルムを生じる。加えて、図2および3から分かるように、実施例1の樹脂から作製されるフィルムは、比較例1から作製されるフィルムよりも平滑な表面を有する。更には、実施例1の樹脂から作製される単層ブロンフィルムは、比較例2および3の樹脂から作製される単層ブロンフィルムよりも平坦であり、しわが無い(巻き取りフィルムロール上で)。また、図5から分かるように、比較例1の樹脂から作製される単層ブロンフィルムは、フィルム全体に対して劣った光学的性質を生じる規則的および不規則的なクロスハッチ模様の混合物を示し、それゆえ大多数のフィルム用途に許容し得ない。実施例1の樹脂から作製されるフィルムは、かかる規則的および不規則的なクロスハッチ模様を示さない。最後に、図6および6bから分かるように、実施例1の樹脂は、比較例2の樹脂に比較して均一なゲージ変動を有するフィルムに容易に加工される。加工時実施例1の樹脂の単層ブロンフィルムは、比較例2の樹脂から作製される匹敵するフィルム(図7aおよび7bに示すように)よりも均一なフロストライン高さを呈する。
【0069】
実施例1の樹脂から成形される共押し出しされたフィルム
次の樹脂をこの実施例に使用した。
EO1:商品名DOWLEX 2045GでThe Dow Chemical Companyから入手し得る1MI、0.920g/cc、直鎖の低密度エチレン/1−オクテンコポリマー樹脂である。
EO2:商品名Affinity PL 1880でThe Dow Chemical Companyから入手し得る1MI、0.902g/ccの実質的に直鎖のエチレン/1−オクテンコポリマー樹脂である。
【0070】
PP1:実施例1の樹脂である。
【0071】
下記の表6は、実施例1の樹脂と上記に挙げたポリエチレンコポリマーから作製されるいくつかの共押し出しされたフィルムについての物理的および機械的性質を示す。この表は、本発明のポリマーによって、本発明のポリプロピレン単独から作製される単層フィルム構造物から得られるよりも良好な靭性、引き裂き、ダート衝撃、パンク、およびヒートシールおよび高温タック性能と共に高係数を呈する共押し出しのフィルム構造物が作製可能であるということを示す。これらの構造物は、従来のポリプロピレン樹脂により作製される共押し出しのフィルム構造物よりも高い係数も有する。本発明の共押し出しのフィルム構造物は、BOPPポリプロピレンフィルムをポリエチレンフィルムと積層することにより作製される積層構造物との競合に充分な物理的および機械的性質を示す。本発明の共押し出しフィルム構造物は、製造段階が少なく、全体のスクラップ率が低いことにより高効率で作製可能であり、匹敵する積層BOPPフィルム構造物よりも低い製造コストをもたらす。表6に示す共押し出しに対しては、Affinity PL1880が通常シーラント層として使用される。
【表6】

【0072】
表7のフィルム用のポリマー(実施例2−8)
プロピレンのホモポリマーを単一連続バルク相(凝縮プロピレン)のループ反応器中で製造する。Toho Series C,Group JCから市販されている塩化マグネシウム担体上に担持されているチタン触媒活性金属種を含むチーグラー・ナッタ触媒をWitcoから入手し得るKaydol白色鉱油中に懸濁し、撹拌した触媒供給タンク中で貯蔵する。この懸濁した触媒を公称150ガロンの連続の撹拌タンク反応器の中に直接にポンプ送入する。この反応器の所望の温度は70−76℃であり、ループ反応器で外部冷却により制御される。Degussa−Huelsから市販されている外部アルコキシシラン供与体の[(CH24CH]2Si(OMe)2(D−供与体ともしばしば呼ばれる)を流量制御を容易とするのに適切なヘキサンにより希釈し、キシレン抽出性区分を上述のように測定して1%未満まで低下させるのに必要とされる量で反応器に連続的に供給する。液体プロピレン中でのこの外部供与体の標的濃度は固体に対して補正して150ppmである。流量制御を容易とするのに適切なヘキサンにより希釈したアルミニウムアルキル共触媒、(トリエチルアルミニウムAlEt3、普通TEALと呼ばれる)をこのプロピレン供給流に添加して、液体プロピレン中のTEAL濃度を液体プロピレン中で150ppmのコントロール標的に調整する。
【0073】
ポリプロピレン重合を20−45重量%の範囲の反応器のポリマー固体で行う。連鎖移動剤の水素をこの反応器に連続的に供給して、ASTM D 1238−01で測定して10g/10分のMFRのプロピレンポリマーを製造する。この反応器排出流を容器中で脱ガスして、液体プロピレンとポリプロピレン粉末製品からの工程軽質分を分離する。次に、この脱ガスされた粉末をHosokawa Bepex Torus円板熱交換器に、次にパージカラムに連続的に送り、ここで加湿窒素の対向流が残存モノマーを除去する。反応器の粉末を箱に収集し、別の混練設備に送る。
【0074】
生成したホモポリマーを表7に示す種々の量の結晶核剤/清澄添加剤と共にペレット化する。CIBA Specialty Chemicalから商品名Irganox B225で市販されている、酸化防止剤のIrgafos 168(トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト)とIrganox 1010(トラキスメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタン)の等重量混合物を2000ppmの濃度で添加する。30mm二軸スクリュー押し出し機を用いて、この結晶核剤/清澄添加剤とB225をこのポリプロピレン粉末に添加し、ペレット化し、箱に入れる。
【0075】
表7の単層フィルム(実施例1A、1Bおよび2から8)
実施例1aおよび1b用の樹脂は、前に述べた実施例1に使用される樹脂と同一である。実施例2−8用の樹脂を「表7のフィルム用のポリマー(実施例2−8)」と題する項で上述したように作製する。70ミルダイギャップの代わりに40ミルダイギャップを使用することを除いて、表7のすべてのフィルムを表3、4、および5の単層フィルムに類似の方法で作製する。フィルムのブロー時に得られる結果とこのフィルムの物理的性質を表7に示す。
【表7】

表7に示すバブル安定性については、
極めて良好なバブル安定性は、1時間の連続したフィルムブロー加工操作時に実質的に観察し得る垂直の変動無しで維持される一貫したフロストライン高さと共に優れた寸法安定性を示し、
良好なバブル安定性は、1時間の連続したフィルムブロー加工操作時に最小の垂直の変動で維持されるフロストライン高さと共に商品として許容し得る寸法安定性を示し、
劣ったバブル安定性は、フロストラインが垂直方向に変動し、バブルが劣った寸法安定性を有するが、低下した速度でブロンフィルムを製造することができたということを示し、極めて劣ったバブル安定性は、フロストラインが激しく変動し、および/またはバブルが寸法的に不安定であって、バブルつぶれを防止するためには、極端な手段が必要であったことを示す。
【0076】
表7から分かるように、すべての核形成樹脂は、非核形成樹脂よりもフィルムをブローするのに有効(高生産速度、良好な光学的性質、および増大されたフィルム係数)であった。加えて、NA−11は、一定の量の結晶核剤/清澄添加剤に対してNA−21またはMillad 3988よりも有効であった。ADK NA−11を用いて良好な品質フィルムが製造されるのみならず、NA−11の使用によって本発明の実施コストが他の結晶核剤/清澄添加剤に対して減少することが可能となる。それゆえ、ADK NA−11とこれらの化学的誘導体が本発明での使用に最も好ましい結晶核剤/清澄添加剤である。
【0077】
上記に加えて、表7のデータは、フィルム厚さが増加するのに従って、他の結晶核剤/清澄添加剤を超えるNA−11の利点が一層明確になるということを示す。本発明をどのような特別の理論にも限定することを望まないが、この利点は、他の結晶核剤/清澄添加剤に対してNA−11から生じる急速な結晶化速度から生じると考えられる。また、このデータは、本発明のフィルムにおいて、約8g/10分のメルトフローレートを有する樹脂が10〜11g/10分のメルトフローレートを有する類似の樹脂を凌駕するということを示す傾向がある。表7のフィルムの急速示差走査熱量分析分析:上述の方法により200℃/分の速度で急速DSC走査を用いて、表7の実施例1a、2、3、5および8のフィルムを試験する。下記および図8−10に掲げる実施例は表7のフィルム試料に対応する。
【0078】
実施例1a、2、3、5、および8のフィルム試料についての結晶化開始温度の値対結晶化半減時間を図8にグラフ表示する。結晶化半減時間が急速である程、ブロンフィルム成形操作時の結晶化速度(急速結晶化)を大きくする。および、結晶化開始温度が高い程、この組成物は押し出し機ダイを出た直後に結晶化を始めるということを意味する。
【0079】
実施例1a、2、3、5および8のフィルム試料についての結晶化開始温度の値対開始勾配を図9にグラフ表示する。前に議論したように、最も急峻な開始勾配の大きな絶対値がブロンフィルム成形操作時の大きな結晶化速度(急速結晶化)に対応する。
【0080】
試料がピーク結晶化温度(Tc)に達する時間と試料が結晶化開始温度(To)に達する時間の間の差を急速DSC試験から取得される補正データから計算することができる。実施例1a、2、3、5、および8の試料の各々に対するこの時間差を結晶化開始温度の値対(tc−to)を示す図10にグラフ表示する。図10に対しては、(tc−to)に対する短い値は、ブロンフィルム成形操作時に大きな結晶化速度と急速な結晶化を示す組成物を示している。
【0081】
図8−10から分かるように、ADK NA−11とADK NA−21を含有する組成物は、高い結晶化温度を示し、ブロンフィルム成形操作時に大きな結晶化速度(急速結晶化)も示す。これは、許容し得る製造速度で製造可能な高品質フィルムを生じる更に安定な製造方法をもたらす。特に、実施例1aの組成物(850ppmのADK NA−11を含有し、最高のピーク結晶化温度(115.3℃)、最高の結晶化開始温度(120.8℃)、最速の結晶化半減時間(3.93秒)および1.66秒の最短の(tc−to)、および最も急峻な開始勾配(−1029W/グラム−分)を示す)は、8ポンド/インチダイ円周以上の製造速度で優れたブロンフィルムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は実施例1の樹脂から作製される単層フィルムについてのヘーズおよび透明性の値対フィルムゲージを図示するグラフである。ヘーズはASTM D 1003により測定され、透明性はASTM D 1764により測定される。
【図2】図2は実施例1の樹脂から作製される単層ブロンフィルムの表面の光学顕微鏡写真である。
【図3】図3は比較例1の樹脂から作製される単層ブロンフィルムの表面の光学顕微鏡写真である。
【図4】図4は比較例2の樹脂から作製される単層ブロンフィルムの表面の光学顕微鏡写真である。
【図5】図5は比較例1の樹脂から作製される単層ブロンフィルムの表面の光学顕微鏡写真であり、このフィルムが示す規則的および不規則的なクロスハッチパターンを示す。
【図6】図6aおよびbは実施例1および比較例2の樹脂から作製されるフィルムについてゲージ変動を示すグラフである。ゲージ変動はMocon容量検量系を用いて測定され、交差方向に沿ってフィルムのゲージが測定され、ゲージ(すなわち、フィルムの厚さ)がフィルム円周でどのように変動するかを示す。
【図7】図7aおよびbは実施例1および比較例2の樹脂から作製されるフィルムについてダイ以上のフロストライン高さの変動を示す図である
【図8】図8は実施例1a、2、3、5および8のフィルム試料についての200℃/分のDSC走査速度で測定した結晶化開始温度対結晶化半減時間のグラフ表示である。
【図9】図9は実施例1a、2、3、5および8のフィルム試料についての200℃/分のDSC走査速度で測定した結晶化開始温度対開始勾配のグラフ表示である。
【図10】図10は実施例1a、2、3、5および8のフィルム試料についての200℃/分のDSC走査速度で測定した結晶化開始温度対(tc−to)の値のグラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロンフィルムを成形するのに好適なポリプロピレンであって、前記ポリプロピレンが6.0未満のMw/Mn、5g/10分を超えるメルトフローレート、2%未満のキシレン可溶部、95%を超える立体規則性ペンタッド分率、95%を超える立体規則性ペンタッド/トライアッド比、少なくとも65%の結晶度、および少なくとも127℃の結晶化温度を有するホモポリマーポリプロピレンを含んでなり、前記ポリプロピレンが500ppm〜2500ppmの結晶核剤/清澄添加剤を含有し、ここで、ブロンフィルムが少なくとも6ポンド/時−インチ・ダイ円周の速度でこの樹脂から製造可能であり、少なくとも1.5のブローアップ比を用いて前記ポリプロピレンから製造される1ミル厚のブロンフィルムがASTM D 882による少なくとも200,000psiの1%割線係数、ASTM D 1003により測定して10未満のヘーズ、および96%を超える透明性を示すポリプロピレン。
【請求項2】
前記ポリプロピレンが6.0〜20g/10分のメルトフローレートを有し前記の1ミル厚のフィルムが少なくとも2.5ブローアップ比を用いて製造される請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項3】
前記ポリプロピレンが5.5未満のMw/Mn、1%未満のキシレン可溶部、98%を超える立体規則性ペンタッド分率、98%を超える立体規則性ペンタッド/トライアッド比、少なくとも75%の結晶度、および少なくとも130℃の結晶化温度を有する請求項2に記載のポリプロピレン。
【請求項4】
前記ポリプロピレンから作製される1ミルのブロンフィルムが少なくとも220,000psiの1%割線係数を示す請求項2に記載のポリプロピレン。
【請求項5】
前記ポリプロピレンが650〜2000ppmの結晶核剤/清澄添加剤を含有する請求項4に記載のポリプロピレン。
【請求項6】
前記ポリプロピレンから作製される1ミルのブロンフィルムが少なくとも240,000psiの1%割線係数を示す請求項5に記載のポリプロピレン。
【請求項7】
前記ポリプロピレンが750〜1250ppmの結晶核剤/清澄添加剤を含有し、1ミルのブロンフィルムが少なくとも8ポンド/時−インチ・ダイ円周の速度でこのポリプロピレンから製造可能である請求項4に記載のポリプロピレン。
【請求項8】
前記ポリプロピレンが少なくとも70%の結晶度を示し、前記ポリプロピレンから作製される1ミル厚のブロンフィルムが少なくとも240,000psiの1%割線係数、ASTM D 1003により測定して8未満のヘーズ、および98%を超える透明性を示す請求項7に記載のポリプロピレン。
【請求項9】
前記ポリプロピレンが少なくとも75%の結晶度を示す請求項8に記載のポリプロピレン。
【請求項10】
前記ポリプロピレンから製造される1ミル厚のフィルムが著しいしわ無しで巻き取りロール上に巻き付き、10%未満のゲージ変動を有する請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項11】
前記1ミル厚のフィルムが少なくとも2.5ブローアップ比を用いて製造され、前記フィルムが5%未満のゲージ変動を有する請求項10に記載のポリプロピレン。
【請求項12】
前記結晶核剤/清澄添加剤がメチレン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩、アルミニウムヒドロキシビス[2,4,8,10−トラキス(1,1−ジメチルエチル)−6−ヒドロキシ−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン6−オキシダト]、ソルビトール、これらの化合物のいずれかの化学的誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項13】
前記ソルビトールが3,4−ジメチルベンジリジンソルビトールまたはこれらの化学的誘導体である請求項12に記載のポリプロピレン。
【請求項14】
前記結晶核剤/清澄添加剤がメチレン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩、アルミニウムヒドロキシビス[2,4,8,10−トラキス(1,1−ジメチルエチル)−6−ヒドロキシ−12H−ジベンゾ[d,g]、これらの化合物のいずれかの化学的誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項15】
前記結晶核剤/透明化剤がメチレン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩またはこれらの化学的誘導体である請求項12に記載のポリプロピレン。
【請求項16】
前記ポリプロピレンが750〜1250ppmの結晶核剤/清澄添加剤を含有し、1ミルのブロンフィルムが前記ポリプロピレンから少なくとも8ポンド/時−インチ・ダイ円周の速度で製造可能である請求項15に記載のポリプロピレン。
【請求項17】
ブロンフィルムを成形するのに好適なポリプロピレンであって、前記ポリプロピレンが2重量%未満のエチレンから誘導される単位を含有し、6.0未満のMw/Mn、5g/10分以上のメルトフローレート、3%未満のキシレン可溶部、91%を超える立体規則性ペンタッド分率、95%を超える立体規則性ペンタッド/トライアッド比、少なくとも65%の結晶度、および少なくとも127℃の結晶化温度を有するポリプロピレンコポリマーを含んでなり、前記ポリプロピレンが500ppm〜2500ppmの結晶核剤/清澄添加剤を含有し、前記プロピレンからブロンフィルムが少なくとも6ポンド/時−インチ・ダイ円周の速度で製造可能であり、少なくとも1.5のブローアップ比を用いて前記ポリプロピレンから製造される1ミル厚のブロンフィルムがASTM D 882による少なくとも150,000psiの1%割線係数、ASTM D 1003により測定して10未満のヘーズ、および96%を超える透明性を示すポリプロピレン。
【請求項18】
前記ポリプロピレンが5.5未満のMw/Mn、2%未満のキシレン可溶部、95%を超える立体規則性ペンタッド分率、98%を超える立体規則性ペンタッド/トライアッド比、少なくとも67%の結晶度、および少なくとも128℃の結晶化温度を有する請求項17に記載のポリプロピレン。
【請求項19】
前記ポリプロピレンコポリマーが0.1〜0.7重量%のエチレンから誘導される単位を含有し前記このポリプロピレンから製造される1ミル厚のブロンフィルムがASTM D 882による少なくとも165,000psiの1%割線係数を示す請求項18に記載のポリプロピレン。
【請求項20】
前記ポリプロピレンから製造される1ミル厚のブロンフィルムがASTM D 882による少なくとも180,000psiの1%割線係数を示す請求項18に記載のポリプロピレン。
【請求項21】
前記ポリプロピレンから製造される1ミル厚のブロンフィルムがASTM D 882による少なくとも200,000psiの1%割線係数を示す請求項18に記載のポリプロピレン。
【請求項22】
前記ポリプロピレンから製造される1ミル厚のフィルムが著しいしわ無しで巻き取りロール上に巻き付き、10%未満のゲージ変動を有する請求項17に記載のポリプロピレン。
【請求項23】
前記結晶核剤/清澄添加剤がメチレン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩、アルミニウムヒドロキシビス[2,4,8,10−トラキス(1,1−ジメチルエチル)−6−ヒドロキシ−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン6−オキシダト]、ソルビトール、これらの化合物のいずれかの化学的誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項17に記載のポリプロピレン。
【請求項24】
前記ソルビトールが3,4−ジメチルベンジリジンソルビトールまたはこれらの化学的誘導体である請求項17に記載のポリプロピレン。
【請求項25】
前記結晶核剤/清澄添加剤がメチレン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩、アルミニウムヒドロキシビス[2,4,8,10−トラキス(1,1−ジメチルエチル)−6−ヒドロキシ−12H−ジベンゾ[d,g]、これらの化合物のいずれかの化学的誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項17に記載のポリプロピレン。
【請求項26】
前記ポリプロピレンが750〜1250ppmのメチレン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩またはこれらの化学的誘導体を含有する請求項17に記載のポリプロピレン。
【請求項27】
請求項1から26のうちのいずれか1項に記載のポリプロピレンから作製される空気急冷ブロンフィルム。
【請求項28】
前記フィルムが単層フィルムを含んでなる請求項27に記載のフィルム。
【請求項29】
前記フィルムが多層の共押し出しされたブロンフィルムを含んでなり、前記フィルムが少なくとも第1および第2層を含み、請求項1から26のいずれかに記載のポリプロピレンがこの第1層中に含有される請求項27に記載のフィルム。
【請求項30】
前記第2層が熱可塑性プラスチックを含んでなる請求項29に記載のフィルム。
【請求項31】
前記第2層がエチレンから誘導されるモノマー単位を主に有するエチレンベースのポリマーを含んでなる請求項29に記載のフィルム。
【請求項32】
前記フィルムが少なくとも1.5のブローアップ比を用いて少なくとも6ポンド/時−インチ・ダイ円周の速度で製造される請求項27から31のうちのいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項33】
前記フィルムが少なくとも1.5のブローアップ比を用いて少なくとも8ポンド/時−インチ・ダイ円周の速度で製造される請求項27から31のうちのいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項34】
前記フィルムが少なくとも2.5のブローアップ比を用いて製造される請求項32または33に記載のフィルム。
【請求項35】
前記第2層がEVOH、PVDC、サラン、EVA、EAA、マレイン酸無水物グラフトのポリプロピレンまたはポリエチレン、EMA、エチレン−アクリレートコポリマー、アクリル酸コポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含む請求項30に記載のフィルム。
【請求項36】
請求項27から35に記載のフィルムのいずれかの作製に使用される空気急冷ブロンフィルム法。
【請求項37】
空気急冷ブロンフィルムを形成するのに好適なポリプロピレン組成物であって、前記ポリプロピレンが5g/10分以上のメルトフローレート、2%未満のキシレン可溶部、95%を超える立体規則性ペンタッド分率、95%を超える立体規則性ペンタッド/トライアッド比、少なくとも65%の結晶度、および少なくとも127℃の結晶化温度を有するポリプロピレンを含んでなり、このポリプロピレン組成物が500ppm〜2500ppmの結晶核剤/清澄添加剤を含有し、200℃/分のDSC走査速度で試験される場合、組成物から作製される空気急冷ブロンフィルムが少なくとも116℃の結晶化開始温度と4.1秒又はそれ未満の結晶化半減時間を示すポリプロピレン組成物。
【請求項38】
200℃/分のDSC走査速度で試験される場合、前記組成物から作製される空気急冷ブロンフィルムが−900ワット/グラム−分未満の最も急峻な開始勾配を更に示す請求項37に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項39】
前記フィルムが少なくとも120℃の結晶化開始温度を示す請求項37に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項40】
前記フィルムが4.0秒又はそれ未満の結晶化半減時間を示す請求項37に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項41】
前記結晶核剤/清澄添加剤がメチレン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩を含んでなる請求項37に記載のポリプロピレン組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−508423(P2007−508423A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534343(P2006−534343)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/033121
【国際公開番号】WO2005/035598
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】