説明

空気紡績機および紡績システム

【課題】空気紡績機において、紡績速度の高速化を図ろうとすると、糸継ぎの継ぎ目品質の低下を招くだけでなく、糸継ぎ成功率の低下により機械効率が低下して高速化に反する結果を招くだけでなく、糸欠点除去等の糸継ぎ動作に要する時間自体が、高速化に反する要因となる。
【解決手段】糸欠点を除去した完成品としての二次パッケージを形成する材料としての一次パッケージ、を製造する空気紡績機であって、紡績糸8を製造する空気式紡績装置10と、紡績糸8の有無を検出する糸検出装置20と、紡績糸8を巻き取って一次パッケージ1を形成する一次巻取り装置40と、一次パッケージ1の満巻時もしくは糸検出装置20による糸無し検出時に、一次巻取り装置40より一次パッケージ1を払い出させる玉揚げ台車6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気式紡績ノズルを用いた紡績を行なう空気紡績機と、その空気紡績機を用いる紡績システムと、の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
空気式紡績ノズルを用いた紡績を行なう空気紡績機は、糸の製造速度が300〜400m/min(分)と高速化が実現されており、従来のリング空気紡績機に比べて、生産性の点で大きく優位性がある。
このような空気紡績機は、一錘の紡績糸を製造する紡績ユニットを複数備え、各紡績ユニットにおいて、糸欠点を監視しつつ巻き取ってパッケージを形成する。ここで、糸欠点を検出すると糸切断し、新たに紡績される糸と、既に巻き取ったパッケージ側の糸とを、ピーサ装置やスプライス装置といった糸継ぎ装置によって自動糸継ぎを行う。そして、所定の糸量を巻き取って満巻きになると、当該紡績ユニットでの紡績を一時停止し、満巻パッケージを払い出し、新たな空ボビンを供給して巻取を再開するようになっている。例えば、特許文献1に開示される技術である。
通常、このようにして生産されるパッケージは、糸欠点が除去され、織機・編機等での後工程に適した糸量・形状に完成したパッケージとなっている。
【特許文献1】特開2001−40532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
空気紡績機における糸継ぎ動作においては、紡績されつつある糸と、既に巻き取ったパッケージ側の糸と、を繋ぐ必要があり、糸継ぎ動作中に紡糸される糸を一旦貯溜しておくための貯溜装置が必要となる。ここで、空気紡績機においては、経済性追求の観点から、紡績速度の高速化が望まれている。
そうすると、紡績速度が高速化されるのに応じて、糸継ぎ速度を早くするか、糸の貯溜装置を大型化する必要がある。しかし、安定して糸継ぎを行なうには、糸継ぎ動作時間におのずと限界があり、無理な糸継ぎ動作の高速化は、糸継ぎ成功率の低下と継ぎ目品質の低下を招く。糸継ぎの成功率低下は、糸継ぎ動作の繰り返し回数の増加を招き、糸継ぎ動作の繰り返しの結果、自動糸継ぎが不可能な状態となった場合は、オペレータによる処置を待たねばならない。このように、糸継ぎ成功率の低下は、機械効率の低下を誘発する。また、貯溜装置の大型化も、貯溜された糸同士の相互接触作用の増大を招き、紡績中の糸切れの発生を増大させる懸念がある。
【0004】
さらに、高速化された空気紡績機においては、糸欠点除去のために切断された糸をパッケージから確実に除去するための除去動作時間が、機械効率の低下に大きく影響するものとなっている。
【0005】
つまり、解決しようとする問題点は、空気紡績機において、紡績速度の高速化を図ろうとすると、糸継ぎの継ぎ目品質の低下を招くだけでなく、糸継ぎ成功率の低下により機械効率が低下して高速化に反する結果を招くだけでなく、糸欠点除去等の糸継ぎ動作に要する時間自体が、高速化に反する要因となる点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、
空気紡績機は、
糸欠点を除去した完成品としての二次パッケージを形成する材料としての一次パッケージ、を製造する空気紡績機であって、
紡績糸を製造する空気式紡績装置と、
前記紡績糸の有無を検出する糸検出装置と、
前記紡績糸を巻き取って一次パッケージを形成する一次巻取り装置と、
前記一次パッケージの満巻時もしくは前記糸検出装置による糸無し検出時に、前記一次巻取り装置より前記一次パッケージを払い出させる玉揚げ装置と、
を備える、ものである。
【0008】
請求項2においては、
前記空気紡績機では、
前記一次パッケージの糸量は、前記二次パッケージの糸量よりも小さくする、ものである。
【0009】
請求項3においては、
前記空気紡績機では、
前記一次巻取り装置による前記一次パッケージの巻取りは、リボン巻きの発生しない範囲内で行う、ものである。
【0010】
請求項4においては、
前記空気紡績機は、
前記空気式紡績装置と、前記糸検出装置と、前記一次巻取り装置と、を少なくとも備える一錘用の紡績ユニットを複数備えると共に、
前記一次巻取り装置からの前記一次パッケージの払出しが、前記各紡績ユニット毎にランダムで可能に構成される、ものである。
【0011】
請求項5においては、
前記空気紡績機と、巻返し機と、を備える紡績システムであって、
前記巻返し機は、
前記一次パッケージより前記紡績糸を巻き出す巻出し装置と、
前記紡績糸の糸欠点を検出する糸欠点検出装置と、
前記紡績糸の糸継ぎを行なう糸継ぎ装置と、
前記紡績糸を巻取って前記二次パッケージを形成する二次巻取り装置と、
を備える、ものである。
【0012】
請求項6においては、
前記紡績システムは、
前記一次巻取り装置より払い出された前記一次パッケージを、前記巻出し装置に移載するパッケージ搬送装置を備える、ものである。
【0013】
請求項7においては、
前記紡績システムは、
前記空気式紡績装置と、前記糸検出装置と、前記一次巻取り装置と、を少なくとも備える一錘用の紡績ユニットを複数備えると共に、
前記巻出し装置と、前記糸欠点検出装置と、前記二次巻取り装置と、を少なくとも備える一錘用の巻返しユニットを一または複数備え、
前記各巻返しユニットには、複数の前記紡績ユニットから払い出された前記一次パッケージが供給され、これらの複数の前記一次パッケージが前記糸継ぎ装置により糸継ぎされて、前記二次パッケージが形成される、ものである。
【0014】
請求項8においては、
前記紡績システムでは、
前記一次巻取り装置からの前記一次パッケージの払出しが、前記各紡績ユニット毎にランダムで可能に構成される、ものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1においては、
紡績速度を高速化しても、紡績しつつ糸継ぎを行なうことによる継ぎ目品質の悪化や、糸継ぎ成功率の低下による機械効率の低下、糸欠点除去に要する動作時間による機械効率の低下、が発生しない。加えて、装置構成がシンプル化する。
【0017】
請求項2においては、請求項1の効果に加えて、
後工程において、一次パッケージからの口出し成功率が安定し、機械効率の低下を招くことがない。
【0018】
請求項3においては、請求項1または請求項2の効果に加えて、
後工程での一次パッケージからの口出しにおいて、解舒性の不良なリボン巻き部分による口出し成功率の低下が防止される。
【0019】
請求項4においては、請求項1から請求項3のいずれかの効果に加えて、
一次パッケージの形成が終了した一次巻取り装置より順次、一次パッケージの払出しを行なうことができ、生産効率の向上に繋がる。
【0020】
請求項5においては、
糸継ぎ成功率の低下による機械効率の低下、糸欠点除去に要する動作時間による機械効率の低下、継ぎ目品質の悪化を招くこともなく、空気紡績機の紡績速度が高速化される。
【0021】
請求項6においては、請求項5の効果に加えて、
生産効率の向上に繋がる。
【0022】
請求項7においては、請求項5または請求項6の効果に加えて、
原材料たるスライバの品質にムラがあって、製造された紡績糸の品質に各錘毎にムラが発生するような場合でも、このムラが平均化されて糸品質の安定した二次パッケージを製造することができる。
【0023】
請求項8においては、請求項7の効果に加えて、
各錘からの一次パッケージの払い出しに時間差を設けることで、一次巻取り装置から巻出し装置へと至る一次パッケージの搬送がより効率的となり、生産効率の向上に繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の空気紡績機および紡績システムの実施の形態を、図面を用いて説明する。
本発明の空気紡績機の一実施の形態を、空気紡績機100とする。
本発明の紡績システムの三つの実施の形態を、紡績システム1000・2000および繊維機械3000とする。紡績システム1000および繊維機械2000には、前記空気紡績機100が備えられるものとなっている。
【0025】
図1から図3を用いて、紡績システム1000を説明する。
この紡績システム1000は、紡績糸のパッケージ(一次パッケージ)1を製造する空気紡績機100と、一次パッケージ1を巻き返しつつ糸継ぎして二次パッケージ2を製造する巻返し機200と、を備えている。
また、この紡績システム1000には、空気紡績機100から巻取り機200に一次パッケージ1を搬送するパッケージ搬送手段300が、付設されている。
【0026】
空気紡績機1が製造する一次パッケージ1は、それ自体が、適正糸量で適正品質のパッケージとして完成されるものではなく、後工程を担当する巻返し機200に提供するための材料として、製造されるものである。この一次パッケージ1は、糸量が必ずしも一定でなければ、糸欠点の除去も行なわれていない紡績糸8により形成されている。
そして、巻返し機200において、複数の一次パッケージを糸継ぎにより繋ぐことで糸量を一定に整えると共に、糸欠点がある場合には、糸を切断して繋ぎ直すことで糸欠点の除去を行って、適正糸量で適正品質の二次パッケージ2が製造される。
この二次パッケージ2は、一次パッケージ1とは異なり、それ自体が商品として、もしくは染色等の他工程への受渡し用として、適切なパッケージである。
【0027】
つまり、空気紡績機100は、純粋に紡績に特化した機械として構成されており、糸欠点の検出機能や、パッケージの糸量を調整する機能、を有しておらず、その分構成が単純化されている。
【0028】
図1、図2を用いて、空気紡績機100の構成を説明する。
空気紡績機100は、一錘の紡績を担当する紡績ユニット3を複数備えると共に、各紡績ユニット3間で共用の玉揚げ装置である玉揚げ台車6や、各紡績ユニット3を駆動する駆動装置4、各紡績ユニット3や玉揚げ台車6の駆動を制御する制御装置5、を備えている。
【0029】
各紡績ユニット3は、空気式紡績装置10、糸検出装置20、パッケージ糸量算出装置30、一次巻取り装置40、を備えている。特に、空気式紡績装置10は、ドラフト装置11と、空気精紡装置12と、を備えている。
【0030】
図2を用いて、紡績ユニット3を、より詳しく説明する。
紡績ユニット3には、上から下に向けてスライバ7や紡績糸8の搬送経路が形成されており、この搬送経路に沿って、スライバ収容器であるケンス(図示せず)、ドラフト装置11、空気精紡装置12、糸送り装置15、糸検出装置20、一次巻取り装置40、が配置されている。
【0031】
ケンスより供給されるスライバ7は、ドラフト装置11で延伸されて、空気精紡装置12に供給される。空気精紡装置12は、このスライバ7に旋回空気流をあてることにより、スライバ7を構成する繊維を絡み合わせて紡績糸8を紡出する。空気精紡装置12で製造された紡績糸8は、糸送り装置15により一次巻取り装置40へと送られる。この糸送り装置15は、紡績糸8をニップして送り出す一対のローラよりなっている。一次巻取り装置40には、ボビン41を支持するクレードル43や、ボビン41上のパッケージ(一次パッケージ1)に接触して回転させるフリクションローラ42が備えられており、このボビン41上に紡績糸8が巻き取られて一次パッケージ1が形成される。
【0032】
一次巻取り装置40は、自らが巻き取っている一次パッケージ1が所定の満巻に到達するか、巻取りの途中に糸切断が発生するか、した場合には、巻取りを中断する。巻取りの終了した一次パッケージ1は、詳しくは後述するが、玉揚げ台車6により一次巻取り装置40より払い出される。
【0033】
巻取り途中の糸切断の判定に係る機構を説明する。
前記糸検出装置20は、自らの正面を通過する糸の有無を検出する手段であり、空気精紡装置12と一次巻取り装置40との間に配置されている。この糸検出装置20で糸無し状態が検出されると、糸切断が発生したと判断され、その糸無し検出信号に基づいて、一次巻取り装置40での巻取り駆動(フリクションローラ42の回転)が停止される。
なお、この糸検出装置20は、糸の有無検出さえ可能であれば良く、太さムラ等の糸欠点の検出までは可能でなくても良い。
【0034】
一次パッケージ1の満巻状態の判定に係る機構を説明する。
一次パッケージ1の糸量は、前記糸検出装置20で糸有り状態が検出された時間と、一次巻取り装置40でのフリクションローラ42の回転数と、に基づいて算出可能である。この算出処理は、前記パッケージ糸量算出装置30において行なわれる。そして、パッケージ糸量算出装置30において、一次パッケージ1の糸量が、所定の満巻状態に達していることが判定されると、一次巻取り装置40での巻取り駆動(フリクションローラ42の回転)が停止される。
【0035】
一次パッケージ1について説明する。
この一次パッケージ1は、二次パッケージ1に巻き返される際に、巻き出されるものであるが、この巻出しに際して口出し(パッケージからの糸端の取出し)を行なう必要がある。この口出しは、口出し装置により自動的に行なわれるものであり、本実施の形態では、エア吸引を行なうサクションノズルを備える下糸捕捉装置142が、この口出し装置に該当する。
【0036】
ここで、空気紡績機100で製造される一次パッケージ1の糸量(径)は、糸切断の場合はその時点で巻取りが中断されるため、必ずしも一定していない。このため、後工程の口出し装置は、径がまちまちの一次パッケージ1より口出しを行なうことになる。このように、口出し対象の一次パッケージ1の糸量に相違があると、糸量(径)の異なるパッケージに対応可能な口出し装置であっても、口出し成功率にバラツキを発生させることになる。
【0037】
そこで、製造される一次パッケージ1の糸量の標準偏差(糸量のバラツキ具合)が低くなるように、少なくとも、満巻時の一次パッケージ1の糸量が、二次パッケージ2の糸量よりも少なくなるようにしている。そして、後工程での口出し装置による一次パッケージ1からの口出し成功率が安定するようにしている。
また、満巻時の一次パッケージ1の糸量を、二次パッケージ2の糸量よりも少なくしておくことで、糸欠点がない場合には、一次パッケージ1を継ぎ足すだけで、二次パッケージ2を形成することができ、効率的である。
【0038】
また、一次パッケージ1は、解舒性を良好とすべく、ボビン41上に紡績糸8は、綾巻きで巻き取られる。綾巻きで巻取るには、ボビン41上への巻取りに伴って、ボビン41の軸方向に沿って紡績糸8を振り動かす(トラバースする)ことが必要である。
本実施の形態では、フリクションローラ41に糸案内用の溝を所定の綾角(ボビンの径方向に対する巻取りの角度)で形成して、巻取り手段とトラバース手段とを兼用させており、一定の綾角でボビン上にパッケージを巻き取らせることが可能である。
あるいは、フリクションローラは単に巻取り手段とし、糸案内用のトラバース装置を別設する構成でもよいが、この場合は、パッケージの径変化に応じて、トラバース装置の駆動速度(糸案内の振り速度)を制御する機構が必要となる。
【0039】
ところが、一定の綾角でトラバースしつつ巻取りを行なうと、パッケージ上への紡績糸8の巻き数(ボビンの一端から他端に至るまでの巻き数)が、(N+1)/2(Nは自然数)に近い領域で、リボン巻きが発生する。リボン巻きとは、糸の巻き位置が分散されず偏り、ボビン上に太いリボンを何回か綾巻きしたような状態に、糸が集合して巻かれた状態を意味する。これは、巻き数がN/2に近い領域では、パッケージ上への糸の巻き付け位置が、パッケージの一回転毎に殆ど変化しないことによる。
なお、N=1となる場合は、棒巻きの状態であって、これより小さな巻き数で巻取りを行なうことはできない。
【0040】
そこで、本各実施の形態では、一次巻取り装置40において、一次パッケージ1の巻き数が(N+1)/2(N:自然数)から(N+2)/2となる範囲で、巻取りが行なわれるように、構成されている。例えば、巻き数が2から2.5の範囲内である。この範囲内で巻取りが行なわれる場合には、リボン巻きが発生しない。リボン巻きが発生すると、その発生部位で解舒性が低下し、前述した口出しの成功率も低下することになる。
【0041】
このようにパッケージの巻取り範囲を限定した場合は、巻取りの糸量もそれに応じて小さなものとなり、満巻状態における一次パッケージ1の径が、通常(リボン巻きの発生する巻き数を越えて巻取りを行なう場合)に比べて、小さなものとなる。
つまり、リボン巻きの発生を回避すべく巻取り範囲を限定することで、口出し成功率の低下を招くリボン巻き部位をなくすことができるだけでなく、一次パッケージ1の糸量自体が制限されて糸量の違いの偏差が小さくなるので、糸量のバラツキによる口出し成功率の低下も、同時に防止される。
【0042】
なお、満巻時の一次パッケージ1の径は、前記巻き数の範囲の設定(巻き数2.0から巻き数2.5等)や、ボビン41やフリクションローラ42の径に基づいて、算出可能である。
【0043】
また、フリクションローラは単に巻取り手段とし、糸案内用のトラバース装置を別設する構成(前述)の場合は、リボン巻きの発生を防止すべく、適宜綾角を変更して、巻き数が常にN/2の周辺から外れるように巻取りを行なうことが可能であるが、装置構成が複雑となってしまう。
【0044】
図2において、前記玉揚げ台車6は、紡績ユニット3・3・・・の(図2の紙面に対する)手前側に位置し、紡績ユニット3・3・・・並設方向に沿って移動可能である。この玉揚げ台車6は、紡績ユニット3の正面に停止した状態で、その紡績ユニット3に対して玉揚げ作業を行なう。
【0045】
玉揚げ台車6による玉揚げ作業は、第一には、紡績ユニット3からの一次パッケージ1の払出し作業であるが、この払出しに応じて必要となる、ボビン41の交換作業や、交換後のボビン41への糸掛け作業をも、含むものとする。
ここで、玉揚げ台車6は、制御装置4より、一次パッケージ1の払出しが必要となった紡績ユニット3に向けて移動するように指令を受け、その正面に到着した状態で、玉揚げ作業を開始するものである。
【0046】
玉揚げ台車6は、紡績ユニット3・3・・・並設方向に沿って走行するための走行装置に加えて、払出し操作装置51、ボビン交換装置52、糸捕捉装置53、を備えている。
払出し操作装置51は、一次巻取り装置40に備えるクレードル43の操作手段であり、クレードル43によるボビン41の保持を解除させて、一次パッケージ1の払出しを行なわせることが可能である。
ボビン交換装置53は、クレードル43へボビン41を供給するアーム装置やボビン41の保管装置、等を備えており、払出し操作装置51によるクレードル43の保持・解除に連動して、クレードル43へのボビン41の供給を行なう。
糸捕捉装置52は、エア吸引を行なうサクションノズルと、このサクションノズルを移動させるアーム装置や、糸を引っ掛けて保持する保持装置などを備えており、クレードル43に保持された交換後の空のボビン41に、糸掛けを行なう。このとき、前記フリクションローラ42の駆動により、ボビン41を回転させた状態で、糸掛けを行なう。
【0047】
次に、図1、図3を用いて、巻返し機200の構成を説明する。
巻返し機200は、一錘の巻返しを担当する巻返しユニット103を複数備えると共に、各巻返しユニット103間で共用の玉揚げ装置である玉揚げ台車106や、各巻返しユニット103を駆動する駆動装置104、各巻返しユニット103や玉揚げ台車106の駆動を制御する制御装置105、を備えている。
【0048】
各巻返しユニット103は、巻出し装置110、糸欠点検出装置120、糸切断装置130、糸継ぎ装置140、パッケージ糸量算出装置150、二次巻取り装置160、を備えている。
【0049】
図3を用いて、巻返しユニット103をより詳しく説明する。
巻返しユニット103には、下から上に向けて紡績糸8の搬送経路が形成されており、この搬送経路に沿って、巻出し装置110、糸継ぎ装置140、糸欠点検出装置120および糸切断装置130、二次巻取り装置160、が配置されている。
【0050】
巻出し装置110には、巻出し用のパッケージとして、前記一次パッケージ1が、トレイ111上にボビン41が縦置きされた姿勢で供給される。この巻出し装置110は、ボビンの軸方向よりパッケージの糸を解舒する装置であり、この一次パッケージ1から解除される紡績糸8に解舒張力を付与するための解舒張力付与器112が備えられている。
巻出し装置110の一次パッケージ1より巻き出された紡績糸8は、二次巻取り装置160で巻き取られて、二次パッケージ2が形成される。この二次巻取り装置160は、基本的には、前記一次巻取り装置40と同様の構成でありパッケージに接触して回転させるフリクションローラ162や、ボビンを保持するクレードル163、を備えている。
【0051】
一次パッケージ1の巻き返しによる二次パッケージ2の製造に際しては、パッケージ糸量の均一化と、糸欠点の除去と、が行なわれる。
前述したように、二次パッケージ2が適正糸量で適正品質のパッケージとして完成されるパッケージであるのに対して、一次パッケージ1は、巻き返しを前提として製造されたパッケージである。一次パッケージ1には、糸切断により巻取りが満巻前に中断されたパッケージなど、糸量が不均一なものも含まれている。また、紡績ユニット3においては、糸欠点の除去は行われてないので、一次パッケージ1には、糸欠点が含まれている場合がある。
【0052】
パッケージ糸量の均一化は、不均一な一次パッケージ1の糸量と、均一とされる目的の二次パッケージ2の糸量とに応じて、適宜、糸継ぎや糸切断を行なうことで、達成可能である。
特に、本実施の形態では、一次パッケージ1は、糸量偏差の縮小やリボン巻き(つまり口出し成功率低下)を避けるべく、満巻であっても、二次パッケージ2よりも小径(糸量が小)に形成されている。このため、一次パッケージ1の複数を糸継ぎして糸量を増大させると共に、二次パッケージ2の所定の満巻に達すると糸切断して糸量を整えることで、二次パッケージ2が製造される。
【0053】
巻返しユニット103において、巻出し装置110にある一次パッケージ1と、二次巻取り装置160にある二次パッケージ2と、の糸継ぎは、前記糸継ぎ装置140により、両パッケージ1・2の回転を停止した状態で行なわれる。
この糸継ぎ装置140には、旋回空気流を利用して紡績糸8を構成する繊維同士を絡ませて糸継ぎを行なう糸継ぎ用ノズル141や、エア吸引を行なうサクションノズルを備える下糸捕捉装置142および上糸捕捉装置143が、備えられている。下糸捕捉装置142により一次パッケージ1の糸端を捕捉し、上糸捕捉装置143により二次パッケージ2の糸端を捕捉して、糸継ぎ用ノズル141へと案内し、この糸継ぎ用ノズル141において、両パッケージ1・2の糸端が糸継ぎされる。
巻返し機200においては、空気紡績機100のように、紡績を行ないつつ糸継ぎを行なう必要がないので、本体の巻返し速度(巻出し速度や巻取り速度)の高速化が、継ぎ目品質の低下に繋がることがない。
【0054】
一次パッケージ1の巻返しの途中において、前記糸欠点検出装置120において糸欠点が検出された場合は、糸切断装置130により、糸欠点部位で紡績糸8が切断される。
糸欠点のため切断された紡績糸8も、前記糸継ぎ装置140により糸継ぎされる。そして、糸欠点の除去された状態で、この紡績糸8が二次パッケージ2に巻き取られる。
【0055】
二次パッケージ2の満巻状態の判定に係る機構を説明する。
二次パッケージ2の糸量の算出も、前記一次パッケージ1の糸量の算出と同様にして行なわれる。パッケージ糸量算出装置150において、前記糸欠点検出装置120で糸有り状態が検出された時間と、二次巻取り装置160に備えるフリクションローラの回転数と、に基づいて、二次パッケージ2の糸量を算出可能である。そして、パッケージ糸量算出装置150において、二次パッケージ2の糸量が、所定の満巻状態に達していることが判定されると、二次巻取り装置160での巻取り駆動(フリクションローラの回転)が停止される。
【0056】
巻返し機200に備える玉揚げ台車106も、空気紡績機100に備える玉揚げ台車6と、基本的に同様の装置である。玉揚げ台車106は、巻返しユニット103・103・・・の(図3の紙面に対する)手前側に位置し、巻返しユニット103・103・・・の並設方向に沿って移動可能な玉揚げ装置である。この玉揚げ台車106は、巻返しユニット103の正面に停止した状態で、その巻返しユニット103に対して玉揚げ作業を行なう。
【0057】
玉揚げ台車106による玉揚げ作業は、第一には、巻返しユニット103からの二次パッケージ2の払出し作業であるが、この払出しに応じて必要となる、ボビンの交換作業や、交換後のボビンへの糸掛け作業をも、含むものとする。
ここで、玉揚げ台車106は、制御装置104より、二次パッケージ2の払出しが必要となった巻返しユニット103に向けて移動するように指令を受け、その正面に到着した状態で、玉揚げ作業を開始するものである。
【0058】
玉揚げ装置106にも、払出し操作装置(前記払出し操作装置51に相当)、ボビン交換装置(前記ボビン交換装置52に相当)、糸捕捉装置(前記糸捕捉装置53に相当)、が備えられている。加えて、玉揚げ装置106には、二次巻取り装置160より払い出された二次パッケージ2の収容庫も、備えられている。
【0059】
図1に示す前記パッケージ搬送手段300を説明する。
パッケージ搬送手段300は、本実施の形態では、人力を伴う運搬作業により一次パッケージ1を搬送するもの、としている。このパッケージ搬送手段300としては、空気紡績機100から巻取り機200に一次パッケージ1を搬送する手段であれば、限定するものではない。つまり、一部および全部を人力により一次パッケージ1を搬送するものであっても、コンベア等の自動化された装置を利用して、空気紡績機100の一次巻取り装置40と、巻取り機200の巻出し装置110とが、連結されたものであってもよい。
【0060】
次に、図4、図5を用いて、紡績システム2000を説明する。
この紡績システム2000は、紡績糸のパッケージ(一次パッケージ)1を製造する空気紡績機100と、一次パッケージ1を巻き返しつつ糸継ぎして二次パッケージ2を製造する巻返し機200と、空気紡績機100から巻取り機200に一次パッケージ1を自動的に搬送するパッケージ搬送装置1300と、を備えている。
つまり、紡績システム2000は、前記紡績システム1000と同様に、前記空気紡績機100と、前記巻返し機200と、を備えるものである。
一方、紡績システム2000と紡績システム1000との相違点は、紡績システム2000が、一次パッケージ1の自動搬送手段であるパッケージ搬送装置1300を備えている点にある。
以下において、同一の部材・装置に関しては同符号を用いると共に、その部分に関する説明を省略する。
【0061】
図4、図5に示すように、パッケージ搬送装置1300は、横置きパッケージ搬送コンベア310と、パッケージ姿勢変換装置320と、縦置きパッケージ搬送コンベア330と、を備えている。
【0062】
横置きパッケージ搬送コンベア310は、各紡績ユニット3の一次巻取り装置40より払い出された一次パッケージ1を、クレードル43に支持された姿勢に等しい横置き(ボビン41の軸方向が水平方向)の状態で、搬送する装置である。
パッケージ姿勢変換装置320は、横置き姿勢の一次パッケージ1を、縦置き姿勢(ボビン41の軸方向が鉛直方向)となるように、一次パッケージ1の姿勢を変える装置である。このパッケージ姿勢変換装置320は、横置きパッケージ搬送コンベア310上を搬送される一次パッケージ1をすくい上げて姿勢を変換して、トレイ111上に載置する。
縦置きパッケージ搬送コンベア330は、縦置き姿勢の一次パッケージ1を、各巻返しユニット103の巻出し装置110へと搬送する。
【0063】
また、図5に示すように、紡績システム2000には、空のボビン41の自動回収に係る空ボビン搬送装置1400も、備えられている。
この空ボビン搬送装置1400は、空ボビン搬送コンベア410と、空ボビン移載装置420と、を備えている。空ボビン搬送コンベア410は、巻出し装置110より払い出された空のボビン41を搬送する装置である。空ボビン移載装置420は、空ボビン搬送コンベア410上を搬送されるボビン41をすくい上げて、空気紡績機100の玉揚げ台車6に、ボビン41を供給する。
なお、空のボビン41は、空ボビン搬送コンベア410上を、トレイ111上に載置された縦置きの姿勢で搬送される。また、空ボビン搬送コンベア410と縦置きパッケージ搬送コンベア330とは、連結されている。そして、空ボビン移載装置420によりボビン41が移載された後のトレイ111は、空ボビン搬送コンベア410から縦置きパッケージ搬送コンベア330へと受け渡される。
【0064】
パッケージ搬送装置1300による、一次パッケージ1群の各巻返しユニット103に分配方法について説明する。
二次パッケージ2は、前述したように、複数の一次パッケージ1を糸継ぎして形成されるものである。ここで、各巻返しユニット103には、一次パッケージ1が複数供給されるが、この供給先となる紡績ユニット3は同一ではなく、異なるものとなっている。つまり、異なる紡績ユニット3より払い出された一次パッケージ1が、一つの巻返しユニット103へと供給される。
【0065】
パッケージ搬送装置1300は、一次パッケージ1の搬送が自動化された装置である。このため、パッケージ搬送装置1300に、各一次パッケージ1の識別システムを別設することで、所望の分配を正確に実現すること可能である。
このような識別システムは、例えば、各ボビン41にIDタグ(自己識別票)を設けると共に、一次パッケージ1の搬送経路上にIDタグの検出装置を配置し、一次パッケージ1の搬送先や位置情報を管理するデータベース等を設けることで、実現可能である。
もちろん、一次パッケージ1の搬送手段を限定しない構成の紡績システム1000において、人力等により前述の分配を行なうものとしても良い。
【0066】
複数の異なる紡績ユニット3で形成された一次パッケージ1を用いて、一つの二次パッケージ2を形成することで、各錘(各紡績ユニット3)間での糸品質のムラを除去して平均化することが可能である。例えば、原材料たるスライバ7の品質にムラがある場合などには、各紡績ユニット3間で、製造された一次パッケージ1にムラが生じることがある。以上の分配方法を採用することで、このようなムラが、各二次パッケージ2間で平均化される。
【0067】
空気紡績機100における各錘間のランダム玉揚げについて説明する。
リング紡績機においては、その構造上、全錘で同時に玉揚げ(巻取りパッケージの払出し)が行なわれる構成である。これに対して空気紡績機においては、各錘で巻取り装置が独立駆動される方式とすれば、各錘で独立して玉揚げを行なうことが可能である。ここで、この各錘で独立して玉揚げを行なうことを、ランダム玉揚げ、と称している。
本実施の形態である空気紡績機100の各紡績ユニット3においては、一次巻取り装置40は、各錘(各紡績ユニット3)で独立駆動される構成である。加えて、各一次巻取り装置40は、全錘で共用の玉揚げ台車6による操作を受けて、玉揚げ(一次パッケージ1の払出し)が行われる構成である。
【0068】
本実施の形態では、各錘の一次巻取り装置40が、全錘で共用の玉揚げ台車6の操作を受けて初めて、玉揚げが可能とされる構成であるが、各錘の一次巻取り装置40毎に、玉揚げ装置が設けられている構成の場合であっても、もちろんランダム玉揚げが可能である。
【0069】
以上のように、ランダム玉揚げを可能に構成することで、パッケージ搬送装置1300による一次パッケージ1群の搬送の渋滞や、巻取り機200の各錘(各巻取りユニット103)における一次パッケージ1の供給待ち時間の無駄、を防止することができる。
具体的には、空気紡績機100の各錘で、紡績作業の開始時点を、一定の時間間隔を空けるなどしてズラして、一次パッケージ1の形成完了時期に時間差が生じるようにし、全錘からの一次パッケージ1がパッケージ搬送装置1300内の搬送経路上に同時に流れ込まないようにする。
【0070】
このようにすることで、空気紡績機100の各紡績ユニット3から払い出された一次パッケージ1が、巻返し用の一次パッケージ1の供給を待っている巻取りユニット103へ、スムーズに搬送される。
特に、IDタグを利用した識別システムを用いて、各一次パッケージ1の搬送先となる巻取りユニット103が予め設定されているような場合には、紡績ユニット3からの一次パッケージ1の払い出しに時間差を設けることで、設定された搬送先への一次パッケージ1の搬送がより一層、効率的となる。
【0071】
なお、一次パッケージ1は、糸切断の発生時にも、その形成が中断されて払い出される構成のため、積極的に払い出しの時間差を設けなくても、空気紡績機100の運転を限りなく継続すれば、各錘でバラバラに払い出されることになる。
しかしながら、運転の開始時から一定時間が経過するまでは、このような状態にはならないため、予め積極的に時間差を設ける方が、一次パッケージ1の搬送を効率的とすることができる。
【0072】
次に、図6、図7を用いて、繊維機械3000(本発明の紡績システムの第三の実施の形態)を説明する。
この繊維機械3000も、前記紡績システム1000・2000と類似の構成であり、基本的には、空気紡績機と、巻返し機と、一次パッケージ1の搬送手段と、を備える構成である。
以下において、同一の部材・装置に関しては同符号を用いると共に、その部分に関する説明を省略する。
【0073】
繊維機械3000には、複数の紡績ユニット3と、複数の巻取りユニット103と、作業台車506と、玉揚げ台車106と、駆動装置504と、制御装置505と、が備えられている。
作業台車506は、各紡績ユニット503および各巻取りユニット103で共用される。駆動装置604は、各紡績ユニット503および各巻取りユニット103を駆動する。制御装置605は、各紡績ユニット503、各巻取りユニット103、作業台車506、玉揚げ台車106の駆動を制御する。
【0074】
前記作業台車506は、前記玉揚げ台車6の機能に加えて、各紡績ユニット3から各巻出しユニット103へ、一次パッケージ1の移載が可能な機能を備えている。
この作業台車506は、前記玉揚げ台車6と同様に、紡績ユニット3や巻返しユニット103の並設方向に沿って走行するための走行装置に加えて、払出し操作装置51、ボビン交換装置52、糸捕捉装置53、を備えると共に、パッケージ移載装置560を備えている。前記パッケージ移載装置560は、ボビン17を把持するチャック装置と、このチャック装置を移動させるアーム装置と、を備えており、一次巻取り装置40より払い出された一次パッケージ1を把持した状態で移動させることが可能に構成されている。
【0075】
ここで、紡績ユニット3の全体と、巻返しユニット103の全体とが、共に、一方向に沿って並設されている。また、作業台車506および玉揚げ台車106は、紡績ユニット3・3・・・や巻返しユニット103の列の(図7の紙面に対する)手前側に位置すると共に、上下位置は相違するため互いに接触することはない。
そして、作業台車506や玉揚げ台車106は、自らに備える前記走行装置により、紡績ユニット3の正面だけでなく、巻返しユニット103の正面にも停止することが可能である。
【0076】
紡績ユニット3から作業台車506への一次パッケージ1の受渡しは、次のようにして行なわれる。
一次巻取り装置40の手前側(作業台車506側)には、ボビン41を転がせて案内するための一対のガイドレール(図示せず)が設けられており、一次巻取り装置40より払い出された一次パッケージ1は、前記一対のガイドレールに沿って、作業台車506へと転がってくる。この一対のガイドレールは作業台車506側で低くなるように傾斜しており、一次パッケージ1は自重で転がるものである。
このようにして、一次巻取り装置40より払い出された一次パッケージ1が、作業台車506側に転がってきて、パッケージ移載装置560により把持される。
【0077】
ここで、作業台車506によって行なわれる作業は、紡績ユニット3からの一次パッケージ1の払出し作業、一次パッケージ1の受取り作業、ボビン41の交換作業や、交換後のボビン41への糸掛け作業、である。
作業台車506は、払出し作業と受取り作業とが終了すると、前記玉揚げ台車6と同じく、一次巻取り装置40に対して、ボビン41の交換作業やボビン41への糸掛け作業を行なうものである。
【0078】
作業台車506は、紡績ユニット3より一次パッケージ1を受け取ると、パッケージ移載装置560により一次パッケージ1を把持した状態で、前記並設方向に沿って走行可能であり、いずれかの巻取りユニット103へと移動する。
【0079】
また、作業台車506から巻取りユニット103への一次パッケージ1の受渡しは、次のようにして行なわれる。
パッケージ移載装置560は、前述したように、一次パッケージ1を把持した状態で移動させることが可能な装置であり、一次巻取り装置40から供給されて把持している一次パッケージ1を、巻出し装置110へと移載する。ここで、一次パッケージ1は一次巻取り装置40に横置きの姿勢で保持されているが、巻出し装置110では縦置きの姿勢で保持される。そこで、パッケージ移載装置560は、前記アーム装置を回転させて、一次パッケージ1の姿勢を横置き姿勢から縦置き姿勢に変化させた状態で、巻出し装置110へ一次パッケージ1を供給する。
【0080】
本発明の空気紡績機をまとめる。
糸欠点を除去した完成品としての二次パッケージを形成する材料としての一次パッケージ、を製造する空気紡績機であって、次の各装置を備えるものである。
この空気紡績機は、紡績糸を製造する空気式紡績装置と、前記紡績糸の有無を検出する糸検出装置と、前記紡績糸を巻き取って一次パッケージを形成する一次巻取り装置と、前記一次パッケージの満巻時もしくは前記糸検出装置による糸無し検出時に、前記一次巻取り装置より前記一次パッケージを払い出させる玉揚げ装置と、を備える。
【0081】
前記空気式紡績装置は、空気紡績機100(第一から第三の空気紡績機の発明の一実施の形態)では、ドラフト装置7および空気精紡装置12よりなるものとしているが、少なくとも、旋回空気流を利用して精紡を行なう装置であれば、その構成を問うものではない。
前記糸検出装置は、糸の有無検出が可能な装置であればよく、糸欠点の検出ができない装置であってもよい。
前記玉揚げ装置は、空気紡績機100では、玉揚げ台車6に備える払出し操作装置51として、一次巻取り装置40とは別体の装置としているが、玉揚げ装置と一次巻取り装置とが一体に構成される装置としても良い。つまり、前記一次巻取り装置が、前記一次パッケージの満巻時もしくは前記糸検出装置による糸無し検出時に、一次パッケージ1の払い出しを可能とする構成であれば、前記玉揚げ装置の構成を問うものではない。
【0082】
以上構成により、糸欠点の除去や糸継ぎを行なうことなく、紡績糸のパッケージが製造される。
このため、紡績速度を高速化しても、紡績しつつ糸継ぎを行なうことによる継ぎ目品質の悪化や、糸継ぎ成功率の低下による機械効率の低下、糸欠点除去に要する動作時間による機械効率の低下、が発生しない。加えて、装置構成がシンプル化する。
【0083】
第二の空気紡績機の発明は、第一の空気紡績機の発明において、次の構成としたものである。
前記一次パッケージの糸量は、前記二次パッケージの糸量よりも小さくする、ものである。
【0084】
以上構成により、後工程において、口出し装置による一次パッケージからの口出しに際して、糸量の相違による口出し成功率のばらつきの拡大が防止される。
このため、後工程において、一次パッケージからの口出し成功率が安定し、機械効率の低下を招くことがない。
【0085】
第三の空気紡績機の発明は、第一または第二の空気紡績機の発明において、次の構成としたものである。
前記一次巻取り装置による前記一次パッケージの巻取りは、リボン巻きの発生しない範囲内で行う、ものである。
【0086】
リボン巻きの発生しない範囲とは、前記一次巻取り装置において、一次パッケージの巻き数が(N+1)/2(N:自然数)から(N+2)/2となる範囲のことである。この範囲内で巻取りが行なわれる場合、リボン巻きは発生しない。
【0087】
以上構成により、解舒性の不良なリボン巻き部位のない一次パッケージが製造される。
このため、後工程での一次パッケージからの口出しにおいて、解舒性の不良なリボン巻き部分による口出し成功率の低下が防止される。
【0088】
第四の空気紡績機の発明は、第一から第三のいずれかの空気紡績機の発明において、次の構成としたものである。
前記空気式紡績装置と、前記糸検出装置と、前記一次巻取り装置と、を少なくとも備える一錘用の紡績ユニットを複数備えると共に、
前記一次巻取り装置からの前記一次パッケージの払出しが、前記各紡績ユニット毎にランダムで可能に構成される、ものである。
【0089】
空気紡績機100には、紡績糸8の各錘に対する紡績ユニット3が複数備えられると共に、各紡績ユニット3で独立駆動される一次巻取り装置40が備えられており、他の錘の運転と関わりなく、巻取りや、玉揚げ台車106の操作に連動する一次パッケージ1の払出しが可能である。つまり、各紡績ユニット3よりランダムに一次パッケージ1の払出しが可能である。
【0090】
このため、一次パッケージの形成が終了した一次巻取り装置より順次、一次パッケージの払出しを行なうことができ、生産効率の向上に繋がる。
【0091】
第一の紡績システムの発明は、前記第一から第三の空気紡績機の発明と、巻返し機と、を備えるものである。
ここで、前記巻返し機は、前記一次パッケージより前記紡績糸を巻き出す巻出し装置と、前記紡績糸の糸欠点を検出する糸欠点検出装置と、前記紡績糸の糸継ぎを行なう糸継ぎ装置と、前記紡績糸を巻取って前記二次パッケージを形成する二次巻取り装置と、を備えるものである。
【0092】
紡績システム1000(第一の紡績システムの発明の一実施の形態)や、紡績システム2000(第一または第二の紡績システムの発明の一実施の形態)は、共に、空気紡績機100(第一から第三の紡績システムの発明の一実施の形態)と、巻返し機200と、を備えている。
また、繊維機械3000(第一または第二の紡績システムの発明の一実施の形態)においては、紡績ユニット3と作業台車506との集合体が前記空気紡績機に相当し、巻返しユニット103が前記巻返し機に相当する。
また、紡績システム1000・2000は、一つの空気紡績機100と、一つの巻返し機200と、を備えるのみであるが、複数の空気紡績機100や複数の巻返し機200を備えるものであっても良い。
【0093】
以上構成により、糸の送出を止めた状態で糸継ぎの可能な巻取り機において、糸継ぎや糸欠点除去、パッケージ形成における糸量調整が、行なわれる。
このため、糸継ぎ成功率の低下による機械効率の低下、糸欠点除去に要する動作時間による機械効率の低下、継ぎ目品質の悪化を招くこともなく、空気紡績機の紡績速度が高速化される。
【0094】
第二の紡績システムの発明は、第一の紡績システムの発明において、次の構成としたものである。
この紡績システムは、前記一次巻取り装置より払い出された前記一次パッケージを、前記巻出し装置に移載するパッケージ搬送装置を備える、ものである。
【0095】
紡績システム2000(第一または第二の紡績システムの発明の一実施の形態)に備えるパッケージ搬送装置1300は、前記パッケージ搬送装置に該当する。
また、繊維機械3000(第一または第二の紡績システムの発明の一実施の形態)に備える作業台車506も、前記パッケージ搬送装置に該当する。より詳しくは、作業台車506に備える前記走行装置とパッケージ移載装置560との集合体が、前記パッケージ搬送装置に該当する。
前記パッケージ搬送装置は、自動化された搬送手段により構成されるものであれば、コンベアであるか、移載装置を備える車両であるか、等を問うものではない。
【0096】
以上構成により、紡績糸の製造から一次パッケージの形成を経て、完成品たる二次パッケージの製造までが、自動化される。
このため、生産効率の向上に繋がる。
【0097】
第三の紡績システムの発明は、第一または第二の紡績システムの発明において、次の構成としたものである。
この紡績システムは、前記空気式紡績装置と、前記糸検出装置と、前記一次巻取り装置と、を少なくとも備える一錘用の紡績ユニットを複数備えると共に、前記巻出し装置と、前記糸欠点検出装置と、前記二次巻取り装置と、を少なくとも備える一錘用の巻返しユニットを一または複数備える。
また、前記各巻返しユニットには、複数の前記紡績ユニットから払い出された前記一次パッケージが供給され、これらの複数の前記一次パッケージが前記糸継ぎ装置により糸継ぎされて、前記二次パッケージが形成されるものである。
【0098】
紡績システム1000・2000に備える巻取りユニット103は、糸継ぎ装置140を備える構成であるが、糸継ぎ装置に関しては移動式に構成して、各巻取りユニット103で共用されるものとしてもよい。
また、一次巻取り装置で製造された一次パッケージ群を各巻出し装置に分配する方法も一つの巻出し装置に、異なる一次巻取り装置で製造された一次パッケージが供給される分配方法であれば、特に、限定されるものではない。
【0099】
このため、原材料たるスライバの品質にムラがあって、製造された紡績糸の品質に各錘毎にムラが発生するような場合でも、このムラが平均化されて糸品質の安定した二次パッケージを製造することができる。
【0100】
第四の紡績システムの発明は、第三の紡績システムの発明において、次の構成としたものである。
前記一次巻取り装置からの前記一次パッケージの払出しが、前記各紡績ユニット毎にランダムで可能に構成される、ものである。
【0101】
紡績システム1000・2000や繊維機械3000に備える紡績ユニット3には、各錘(各紡績ユニット3)で独立駆動される一次巻取り装置40が備えられており、他の錘の運転と関わりなく、巻取りや、玉揚げ台車106の操作に連動する一次パッケージ1の払出しが可能である。つまり、各紡績ユニット3よりランダムに一次パッケージ1の払出しが可能である。
【0102】
このため、各錘からの一次パッケージの払い出しに時間差を設けることで、一次巻取り装置から巻出し装置へと至る一次パッケージの搬送がより効率的となり、生産効率の向上に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】製造システムの第一の実施形態の概略構成図である。
【図2】空気紡績機の本実施の形態の正面図である。
【図3】巻返し機の正面図である。
【図4】製造システムの第二の実施形態の概略構成図である。
【図5】製造システムの第二の実施形態の平面図である。
【図6】製造システムの第三の実施形態である繊維機械の概略構成図である。
【図7】製造システムの第三の実施形態である繊維機械の正面図である。
【符号の説明】
【0104】
1 一次パッケージ
2 二次パッケージ
3 紡績ユニット
6 玉揚げ台車
10 空気式紡績装置
20 糸検出装置
40 一次巻取り装置
51 払出し操作装置
100 空気紡績機
103 巻返しユニット
110 巻出し装置
120 糸欠点検出装置
140 糸継ぎ装置
160 二次巻取り装置
200 巻返し機
506 パッケージ把持装置
1000・2000 紡績システム
1300 パッケージ搬送装置
3000 繊維機械

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸欠点を除去した完成品としての二次パッケージを形成する材料としての一次パッケージ、を製造する空気紡績機であって、
紡績糸を製造する空気式紡績装置と、
前記紡績糸の有無を検出する糸検出装置と、
前記紡績糸を巻き取って一次パッケージを形成する一次巻取り装置と、
前記一次パッケージの満巻時もしくは前記糸検出装置による糸無し検出時に、前記一次巻取り装置より前記一次パッケージを払い出させる玉揚げ装置と、
を備える、
ことを特徴とする空気紡績機。
【請求項2】
前記一次パッケージの糸量は、前記二次パッケージの糸量よりも小さくする、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気紡績機。
【請求項3】
前記一次巻取り装置による前記一次パッケージの巻取りは、リボン巻きの発生しない範囲内で行う、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気紡績機。
【請求項4】
前記空気式紡績装置と、前記糸検出装置と、前記一次巻取り装置と、を少なくとも備える一錘用の紡績ユニットを複数備えると共に、
前記一次巻取り装置からの前記一次パッケージの払出しが、前記各紡績ユニット毎にランダムで可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の空気紡績機。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の空気紡績機と、巻返し機と、を備える紡績システムであって、
前記巻返し機は、
前記一次パッケージより前記紡績糸を巻き出す巻出し装置と、
前記紡績糸の糸欠点を検出する糸欠点検出装置と、
前記紡績糸の糸継ぎを行なう糸継ぎ装置と、
前記紡績糸を巻取って前記二次パッケージを形成する二次巻取り装置と、
を備える、
ことを特徴とする紡績システム。
【請求項6】
前記一次巻取り装置より払い出された前記一次パッケージを、前記巻出し装置に移載するパッケージ搬送装置を備える、
ことを特徴とする請求項5に記載の紡績システム。
【請求項7】
前記空気式紡績装置と、前記糸検出装置と、前記一次巻取り装置と、を少なくとも備える一錘用の紡績ユニットを複数備えると共に、
前記巻出し装置と、前記糸欠点検出装置と、前記二次巻取り装置と、を少なくとも備える一錘用の巻返しユニットを一または複数備え、
前記各巻返しユニットには、複数の前記紡績ユニットから払い出された前記一次パッケージが供給され、これらの複数の前記一次パッケージが前記糸継ぎ装置により糸継ぎされて、前記二次パッケージが形成される、
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の紡績システム。
【請求項8】
前記一次巻取り装置からの前記一次パッケージの払出しが、前記各紡績ユニット毎にランダムで可能に構成される、
ことを特徴とする請求項7に記載の紡績システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−241616(P2006−241616A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56413(P2005−56413)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】