説明

立体カメラ用のレンズシステム

【課題】立体撮像に使用する複数のレンズ装置が適している組み合わせかどうか判断することができる立体カメラ用のレンズシステムを提供する。
【解決手段】レンズシステムは、2つのレンズ装置と、2つのレンズ装置を互いに通信可能に接続する通信手段と、通信手段によって接続された2つのレンズ装置それぞれに予め設定されている諸元を参照するための参照用データが記憶された記憶部と、参照用データに基づいて、2つのレンズ装置の諸元の重複範囲を演算する演算部と、諸元の重複範囲をユーザに通知する通知手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体カメラ用のレンズシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2台のテレビカメラを並列に配置して、右目用と左目用の視差画像を撮影することにより、立体画像を取得する立体カメラが開発されている。このような立体カメラに使用される2台のレンズ装置は、フォーカス、ズーム(焦点距離)、絞りなど制御対象の状態(位置)によって変化する撮影条件が常に一致するように同時に駆動されるようになっている。
【0003】
2台のレンズ装置の撮影条件が同一になるように制御する立体カメラ用のレンズ制御装置としては、特許文献1に示すものがある。特許文献1に記載された立体カメラ用のレンズシステムは、完全に同一の仕様である右目用のレンズと左目用各レンズを備え、立体撮像時に右目用のレンズ装置及び左目用のレンズ装置のそれぞれの画角を略同一にするように制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−139015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
諸元の異なる2つのレンズ装置を用いて立体撮像を行うには、撮影条件が同一になるように各レンズ装置を制御する必要がある。このような制御を行う際に、2つのレンズ装置のそれぞれの諸元が全く異なると、各レンズ装置の撮影条件を同一にすることができないため、良好な立体画像を得ることができない。しかし、ユーザは、任意の2つのレンズ装置を用いて立体撮像を行うときに、これら2つのレンズ装置が立体撮像用として適した組み合わせであるかどうか判断することができない。
【0006】
本発明は、立体撮像に使用する複数のレンズ装置が適している組み合わせかどうか判断することができる立体カメラ用のレンズシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の立体カメラ用のレンズシステムは、
2つのレンズ装置と、
前記2つのレンズ装置を互いに通信可能に接続する通信手段と、
前記通信手段によって接続された前記2つのレンズ装置それぞれに予め設定されている諸元を参照するための参照用データが記憶された記憶部と、
前記参照用データに基づいて、前記2つのレンズ装置の前記諸元の重複範囲を演算する演算部と、
前記諸元の重複範囲をユーザに通知する通知手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、立体撮像に使用する複数のレンズ装置が適している組み合わせかどうか判断することができる立体カメラ用のレンズシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】立体カメラ用のレンズシステムを説明するためのカメラシステムの全体構成を示すブロック図
【図2】レンズシステムを構成する2つのレンズ装置のうちの一方のレンズ装置の構成を示すブロック図
【図3】レンズ装置の外観図
【図4】レンズシステムにおいて、2つのレンズ装置の相性を判断する手順を示すフローチャート
【図5】2つのレンズ装置の諸元である焦点距離の重複範囲を説明する図
【図6】2つのレンズ装置の諸元の重複範囲を表示部に表示させたときの表示画面の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の立体カメラ用のレンズシステムの実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、立体カメラ用のレンズシステムを説明するためのカメラシステムの全体構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、カメラシステム1は、カメラ本体100A,100Bと、立体カメラ用のレンズシステム10とを含んで構成される。カメラシステム1は、立体画像の撮影に用いられるものである。
【0013】
レンズシステム10は、2台のレンズ装置10A及びレンズ装置10Bを含んでいる。レンズ装置10Aは、カメラ本体100Aに装着され、レンズ装置10Bは、カメラ本体100Bに装着される。例えば、レンズ装置10Aは左目の映像の撮影用として使用され、レンズ装置10Bは右目の映像の撮影用として使用される。
【0014】
レンズシステム10において、2台のレンズ装置10A及び10Bは通信手段として機能する接続ケーブル2を用いて互いに接続されている。
【0015】
カメラ本体100Aには、撮像素子(例えばCCD撮像素子)や所要の信号処理回路等が搭載されており、レンズ装置10Aにより結像された像は、撮像素子により光電変換された後、信号処理回路によって所要の信号処理が施されてHDTV方式の映像信号(HDTV信号)として、カメラ本体100Aの映像信号出力端子等から外部に出力される。
【0016】
図2は、立体カメラ用のレンズシステムの要部構成を示したブロック図である。図1に示すように、レンズ装置10A及びレンズ装置10Bはいずれも、光学系(撮影レンズ)と制御系(制御部)とから構成される。レンズ装置10A及びレンズ装置10Bは、光学系及び制御系のいずれについても同一の構成である。同図では、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bの同じ構成要素には同じ符号を付している。以下において、レンズ装置10Aの構成のみについて説明し、レンズ装置10Bの構成についてはレンズ装置10Aと同一として説明を省略する。
【0017】
レンズ装置10Aの光学系(撮影レンズ)には、鏡胴内部においてフォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL、絞りIR、マスターレンズ群(図示せず)等の光学部品が配置されている。フォーカスレンズ群FLやズームレンズ群ZLは光軸に沿って前後移動可能に配置されており、フォーカスレンズ群FLの位置を調整することによってフォーカス調整(被写体距離の調整)が行われ、ズームレンズ群ZLの位置を調整することによってズーム調整(焦点距離の調整)が行われる。また、絞りIRの位置(開口度)を調整することによって光量調整が行われる。撮影レンズに入射してこれらのレンズ群等を通過した被写体光は、図1に示したカメラ本体100Aに配置された撮像素子の撮像面に結像される。
【0018】
レンズ装置10Aの制御系には、制御系全体を統括するCPU30と、フォーカスレンズ群FLの位置を調整するための駆動力を供給するフォーカスレンズ駆動部32Fと、ズームレンズ群ZLの位置を調整するための駆動力を供給するズームレンズ駆動部32Zと、絞りIRの位置を調整するための駆動力を供給する絞り駆動部32Iが配置されている。各駆動部には、図示しないが、駆動モータと、該駆動モータに駆動電力を供給するアンプとが設けられている。
【0019】
レンズ装置10Aには、通信ケーブル2が接続される通信接続部42と、メモリ等の記憶部44と、表示部46と、が設けられている。
【0020】
通信接続部42は、レンズ装置10Bと接続するためのインターフェースであって、RS−232等のシリアル通信方式を採用することができる。なお、通信接続部42は、他の外部装置と接続するための通信ケーブルが接続可能であってもよい。
【0021】
記憶部44は、レンズ装置10A及びレンズ装置10Bを接続した際に使用する参照用データが予め記憶されている。参照用データは、製品として提供されている全てのレンズ装置又はその一部のレンズ装置のそれぞれの型名と、これら型名に識別されるレンズ装置の諸元とが関連付けられたテーブルを含む。以下、このテーブルをデータテーブルともいう。参照用データは、レンズ装置10AをPC等の外部装置と接続することで、外部装置を用いて予めレンズ装置10Aに入力されたデータであってもよい。又は、参照用データが記録された図示しない記録媒体をレンズ装置10Aに接続すること、該記録媒体から記録部44に書き込まれたものであってもよい。
【0022】
ここで、参照用データに示されるレンズ装置の諸元とは、各レンズ装置の構成や仕様によって予め設定されているものであって、例えば該レンズ装置を運用することが可能な焦点距離の範囲、被写体距離の範囲である。また、この諸元としては、F値(レンズの明るさを示す値であり、Fナンバーともいう。)やFドロップ量(ワイド側でF値が低下する、所謂、Fドロップが生じるとき、そのF値の低下量)を含んでいてもよい。以下では、レンズ装置の諸元として焦点距離と被写体距離を用いた場合について説明する。
【0023】
また、記憶部44には、レンズ装置10Aに固有の識別データ(型名やIDを含むデータ)とレンズ装置10A自体の諸元を示す自己諸元データが記憶されている。
【0024】
なお、記憶部44には、撮影時にレンズ装置10Aを制御するために必要となる所定の設定情報や、立体画像の撮像時又は再生時に使用する補正データなどが記憶されていてもよい。記憶部44は、CPU30の制御によって、記憶されているデータが読み出される。
【0025】
表示部46は、CPU30の制御によって、後述するように、レンズ装置10Aの諸元とレンズ装置10Bの諸元との重複範囲が表示される。また、表示部46には、レンズ装置10Aのフォーカスやズームなどの動作状態やその他の状態を示す情報が表示されてもよい。表示部46は、例えば、LCDやLEDを採用することができる。
【0026】
また、レンズ装置10Aの制御系には、フォーカスレンズ群FLに連結されたエンコーダ34Fと、ズームレンズレンズ群ZLに連結されたエンコーダ34Zが配置されている。
【0027】
フォーカスレンズ群FL、ズームレンズ群ZL及び絞りIRは、CPU30からの制御信号に基づいてフォーカスレンズ駆動部32F、ズームレンズ駆動部32Z、絞り駆動部32Iが駆動し、目標とする撮影条件に従った状態に制御されるようになっている。
【0028】
図3は、レンズシステムを構成する1つのレンズ装置を示す外観図である。なお、図3では、レンズ装置10Aのみを示しているが、及びレンズ装置10Bの構成についてもレンズ装置10Aと同じである。
【0029】
図3に示すように、レンズ装置10Aは、レンズ鏡胴11を備える。レンズ鏡胴11はレンズフード12、フォーカスリング14、ズームリング16、アイリスリング18が設けられており、更にレンズ鏡胴11の後端部にはエクステンダ装置20が設けられ、レンズ鏡胴11の側部にはドライブユニット22が設けられている。
【0030】
レンズ鏡胴11内には、上述した撮影レンズを含む光学系が配置される。フォーカスリング14を回動することによりフォーカス調整がなされ、ズームリング16を回動することによりズーム調整がなされ、アイリスリング18を回動することによりアイリス絞り径が調整されるようになっている。ドライブユニット22は箱状のケースを有し、このケースはビスを介してレンズ鏡胴11に固着されている。
【0031】
ドライブユニット22には、図示しないが、被写体距離を調整するのに用いられる画角操作部と、焦点距離を調整するのに用いられるフォーカス操作部とが設けられている。画角操作部及びフォーカス操作部は、ユーザによってマニュアル操作が可能なスイッチであってもよい。
【0032】
レンズ装置10AのCPU30等を含む制御系のうちその一部又は全部がドライブユニット22に設けられていてもよい。
【0033】
画角操作部は、テレ(T)側又はワイド(W)側に操作されると、ズームリング16をテレ側又はワイド側に回動し、ズームレンズ群ZLの位置を調整することによって、ズーム調整することができる。
【0034】
フォーカス操作部は、操作することによりフォーカスリング14を回動し、フォーカスレンズ群FLの位置を調整することによって、フォーカス調整することができる。
【0035】
また、ドライブユニット22には、図示しないオート/マニュアルスイッチが設けられ、アイリス絞り径をマニュアル調整又は自動調整できるようになっている。
【0036】
レンズ装置10Aは、立体画像の撮影を行わない場合には、レンズ装置10Bと接続させずに、カメラ本体100Aに装着されることで、ビデオカメラのレンズ装置として単体で使用することができる。
【0037】
CPU30は、レンズシステム10は、レンズ装置10Aとレンズ10Bとが接続ケーブル2で互いに接続されたとき、レンズ装置10Aとレンズ10Bが、立体画像の撮影を行う組み合わせとして適しているかを判断する適性判断モードを実行する。
【0038】
適性判断モードは、レンズ装置10A及びレンズ装置10Bのうちいずれか一方をメイン側として、メイン側のCPU30で行う。レンズ装置10A及びレンズ装置10Bのうちいずれをメイン側とするかは予め設定によって決められていてもよい。又は、ユーザによって、レンズ装置10A及びレンズ装置10Bのうちいずれをメイン側とするか選択されてもよい。以下の説明では、レンズ装置10Aをメイン側とする例について説明する。
【0039】
図4は、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bが接続されたときの処理手順を示したフローチャートである。
【0040】
レンズ装置10Aとレンズ装置10Bとが接続されると、先ず、CPU30は、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bとの組み合わせの適性の判断を過去に行ったことがあるかどうかを判断する(ステップS10)。そして、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bとの組み合わせの適性の判断を過去に行ったことがない場合には、ステップS12の処理手順へ進む。レンズ装置10Aとレンズ装置10Bとの組み合わせの適性の判断を既に行ったことがある場合には、本フローの最初の状態に戻る。
【0041】
ステップS12において、レンズ装置10AのCPU30は、接続先であるレンズ装置10Bから該レンズ装置10Bに固有の識別データを受信する制御を実行する。そして、CPU30は、受信した識別データに含まれる型名に基づき、記憶部44に記憶された参照用データからレンズ装置10Bの型名に関連付けられた諸元(ここでは焦点距離と被写体距離)を抽出する。その後、ステップS14の処理手順に進む。
【0042】
ステップS14において、CPU30は、自己諸元データに基づくレンズ装置10Aの焦点距離及び被写体距離と、抽出したレンズ装置10Bの焦点距離及び被写体距離とを比較し、焦点距離及び被写体距離それぞれついて重複範囲を演算する。その後、ステップS16の処理手順に進む。
【0043】
図5は、2つのレンズ装置の諸元である焦点距離の重複範囲を説明する図である。図5に示す例では、レンズ装置10Aの焦点距離とレンズ装置10Bの焦点距離とが一部の範囲で重複している状態を示している。
【0044】
図5において、レンズ装置10Aの諸元の焦点距離を40mm〜100mmの範囲とし、レンズ装置10Bの諸元の焦点距離を60mm〜120mmの範囲とした場合、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bの焦点距離の重複範囲が60mm〜100mmとなる。
【0045】
レンズ装置10Aの諸元の焦点距離を50mm〜100mmの範囲とし、レンズ装置10Bの諸元の焦点距離を50mm〜100mmの範囲とした場合、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bの焦点距離は完全に一致しており、重複範囲が50mm〜100mmとなる。
【0046】
レンズ装置10Aの諸元の焦点距離を50mm〜70mmの範囲とし、レンズ装置10Bの諸元の焦点距離を80mm〜100mmの範囲とした場合、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bの焦点距離は全く重複しないため、重複範囲が存在しない。
【0047】
被写体距離の重複範囲についても、上述した焦点距離の重複範囲の決定の仕方と同じである。
【0048】
図4のフローチャートの処理手順の説明に戻り、ステップS16において、CPU30は、焦点距離の重複範囲が閾値以上であるかを判断する。焦点距離の重複範囲が閾値以上である場合には、ステップS18の処理手順へ進む。焦点距離の重複範囲が閾値未満である場合には、ステップS20の処理手順へ進む。
【0049】
閾値は、例えば、レンズ装置10Aの焦点距離とレンズ装置10Bの焦点距離との少なくとも一方を含む全範囲の長さに対する重複範囲の割合である。ここでは、全範囲の10%とする。例えば、レンズ装置10Aの諸元の焦点距離を40mm〜100mmの範囲とし、レンズ装置10Bの諸元の焦点距離を60mm〜120mmの範囲とした場合、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bの焦点距離の全範囲は40mm〜120mmであり、全範囲の長さは80mmであり、閾値は8mm(=80mm×10%)となる。なお、閾値は、この例のものに限定されず、他の所定値を用いてもよい。
【0050】
ステップS18において、CPU30は、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bの焦点距離の重複範囲が閾値以上であり、レンズ装置10A及びレンズ装置10Bの組み合わせが適性であってことをユーザに通知する。ここでは、CPU30は、レンズ装置10Aの焦点距離とレンズ装置10Bの焦点距離を重複範囲に同期させる制御を行い、レンズ装置10Aのズームリングを回転駆動し、重複範囲におけるワイド側の端からテレ側の端まで往復させる制御を行う。そして、CPU30は、ズームリングを往復駆動させた後で重複範囲におけるワイド側の端で停止する。その後、ステップS22の処理手順へ進む。
【0051】
ステップS18では、CPU30は、レンズ装置10Aの焦点距離とレンズ装置10Bの焦点距離を重複範囲に同期させる制御を行った際に、同期信号をレンズ装置10Bに出力してもよい。そして、レンズ装置10BにおけるCPU30は、同期信号に基づいて、レンズ装置10Aのズームリングの駆動と同様に、レンズ装置10Bのズームリングを重複範囲のワイド側の端からテレ側の端まで往復させる制御を行ってもよい。
【0052】
ステップS20では、CPU30は、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bの焦点距離の重複範囲が閾値未満であり、レンズ装置10A及びレンズ装置10Bの組み合わせが不適性であることをユーザに通知する。ここでは、CPU30は、レンズ装置10Aのズームリングを駆動させることができる最大限の範囲においてワイド側の端からテレ側の端まで往復させる制御を行う。このとき、CPU30は、ズームリングの往復駆動を停止することなく、ループさせてもよい。その後、ステップS22の処理手順へ進む。
【0053】
続いて、ステップS22では、CPU30は、被写体距離の重複範囲が閾値以上であるかを判断する。被写体距離の重複範囲が閾値以上である場合には、ステップS24の処理手順へ進む。被写体距離の重複範囲が閾値未満である場合には、ステップS26の処理手順へ進む。
【0054】
閾値は、例えば、レンズ装置10Aで撮影可能な被写体距離とレンズ装置10Bで撮影可能な被写体距離との少なくとも一方に含まれる全範囲の長さに対する重複範囲の割合である。ここでは、全範囲の10%とする。例えば、レンズ装置10Aの諸元の被写体距離を1m〜3mの範囲とし、レンズ装置10Bの諸元の被写体距離を2m〜4mの範囲とした場合、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bの被写体距離の全範囲は2m〜3mであり、全範囲の長さは1mであり、閾値は0.1m(=1m×10%)となる。なお、閾値は、この例のものに限定されず、他の所定値を用いてもよい。
【0055】
ステップS24において、CPU30は、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bの被写体距離の重複範囲が閾値以上であり、レンズ装置10A及びレンズ装置10Bの組み合わせが適性であってことをユーザに通知する。ここでは、CPU30は、レンズ装置10Aの被写体距離とレンズ装置10Bの被写体距離を重複範囲に同期させる制御を行い、レンズ装置10Aのフォーカスリングを回転駆動し、重複範囲におけるニア端からインフ端まで往復させる制御を行う。そして、CPU30は、フォーカスリングを往復駆動させた後で重複範囲におけるワイド側の端で停止する。その後、ステップS10の処理手順へ戻る。
【0056】
ステップS24では、CPU30は、レンズ装置10Aの被写体距離とレンズ装置10Bの被写体距離を重複範囲に同期させる制御を行った際に、同期信号をレンズ装置10Bに出力してもよい。そして、レンズ装置10BにおけるCPU30は、同期信号に基づいて、レンズ装置10Aのフォーカスリングの駆動と同様に、レンズ装置10Bのフォーカスリングを重複範囲におけるニア端からインフ端まで往復させる制御を行ってもよい。
【0057】
ステップS26では、CPU30は、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bの被写体距離の重複範囲が閾値未満であり、レンズ装置10A及びレンズ装置10Bの組み合わせが不適性であってことをユーザに通知する。ここでは、CPU30は、レンズ装置10Aのフォーカスリングを駆動させることができる最大限の範囲においてニア端からインフ端まで往復させる制御を行う。このとき、CPU30は、フォーカスリングの往復駆動を停止することなく、ループさせてもよい。その後、ステップS10の処理手順へ戻る。
【0058】
上述したレンズシステムによれば、ユーザは、立体画像の撮影に任意の2つのレンズ装置を用いる際に、これら2つのレンズ装置の組み合わせが立体画像の撮影を行う上で適しているかどうかを容易に判断することができる。
【0059】
また、ユーザは、同一の諸元である2つのレンズ装置を所有している必要がない。例えば、ユーザは、予め1つのレンズ装置を所有している場合に、所有しているレンズ装置と組み合わせて立体画像の撮影で用いるための候補のレンズ装置を、レンズシステムにおける上述した適性判断モードによって、他の複数のレンズ装置の群から選択することができる。
【0060】
更に、ユーザは、2つのレンズ装置の組み合わせの適性を判断する際に、各レンズ装置をカメラ本体に取り付けたり、実際に立体画像の撮影を行ったうえで立体画像を再生して確認したりする必要がない。
【0061】
次に、本発明に係るレンズシステムの変形例について説明する。
【0062】
CPU30は、諸元の重複範囲をユーザに通知する場合に、その重複範囲をレンズ装置10Aの表示部46に表示させてもよい。
【0063】
図6は、諸元の重複範囲を表示部に表示させたときの表示画面の一例を示す図である。図6の例は、表示部46がLCDで構成され、そのLCDの画面300を示している。CPU30は、画面300に、レンズ装置10Aの焦点距離と、レンズ装置10Bの焦点距離とを同時に表示させる。こうすれば、ユーザは、組み合わせた2つのレンズ装置10Aとレンズ装置10Bそれぞれの焦点距離とともに、これら焦点距離の重複範囲を視覚的に判断することができる。図6の例では、画面300にレンズ装置10A及びレンズ装置10Bの焦点距離と重複範囲をグラフで示されているが、数値やその他の図形や記号を用いて表示されてもよい。
【0064】
また、図6に示すように、表示部46におけるレンズ装置10A及びレンズ装置10Bの諸元の重複範囲を示す表示は、諸元によって切り換えることが可能であってもよい。図6に示す例では、焦点距離が選択され、その表副範囲が表示されているが、ユーザの操作によって表示切替ボタン302を「被写体距離」や「Fno(ここでは、Fナンバーを意味する。)」に切り換えにより、画面300に、被写体距離の重複範囲や、Fナンバーの重複範囲が切り換えて表示されてもよい。
【0065】
図4に示す処理手順では、先に焦点距離及び被写体距離の重複範囲の演算を行い、その後で、重複範囲に基づく適性の通知を行い、その後で、被写体距離の重複範囲に基づく適性の通知を行った。しかし、先に被写体距離の重複範囲に基づく適性の通知を行い、その後で、焦点距離の重複範囲に基づく適性の通知を行ってもよい。
【0066】
なお、諸元の重複範囲をユーザに通知する場合に、重複範囲がないことを示すメッセージを表示部46に表示させてもよい。表示部46にLEDを用いる場合には、諸元の重複範囲がない場合には、LEDの点滅のみでユーザに表示を行ってもよい。
【0067】
諸元の重複範囲をユーザに通知する場合には、ズームリング16等の動作と表示部44の表示との両方を実行してもよい。
【0068】
図4に示す処理手順において、CPU30は、レンズ装置10Aの諸元として、焦点距離及び被写体距離のうち少なくとも一方を使用して、重複範囲を演算し、ユーザに通知してもよい。
【0069】
図4に示す処理手順において、CPU30は、レンズ装置10Aの諸元として、焦点距離及び被写体距離だけでなく、F値やFドロップを使用し、これらの重複範囲を演算し、ユーザに通知してもよい。
【0070】
上述のように、レンズ装置10A及びレンズ装置10Bの組み合わせの適性の判断結果に基づきズームリング16やフォーカスリング14の動作によってユーザに通知を行う場合、その動作は特に限定されず、ユーザに通知することができる範囲で変更することが可能である。例えば、CPU30は、通知を行う場合に、ズームリング16やフォーカスリング14を間断的に回転駆動させるように制御してもよい。
【0071】
上述のレンズシステムの構成において、CPU30が焦点距離及び被写体距離それぞれついて重複範囲を演算する演算部を兼ねているが、CPU30とは別に演算部を設けてもよい。
【0072】
または、CPU30は、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bとの組み合わせの判断の履歴を示す履歴情報を記憶部に記憶させておき、この履歴情報に基づいて、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bとの組み合わせの適性の判断を過去に行ったことがあるかどうか判断することができる。こうすれば、例えば、図4に示す処理手順のステップS10において、CPU30は、レンズ装置10Bから該レンズ装置10Bに固有の識別データを参照しなくても、記憶部44に記憶されている履歴情報に基づいて、レンズ装置10Aとレンズ装置10Bとの組み合わせの適性の判断を過去に行ったことがあるかどうか判断することができる。
【0073】
本明細書は次の事項を開示する。
(1)立体画像を撮影する立体カメラ用のレンズシステムであって、
2つのレンズ装置と、
前記2つのレンズ装置を互いに通信可能に接続する通信手段と、
前記通信手段によって接続された前記2つのレンズ装置それぞれに予め設定されている諸元を参照するための参照用データが記憶された記憶部と、
前記参照用データに基づいて、前記2つのレンズ装置の前記諸元の重複範囲を演算する演算部と、
前記諸元の重複範囲をユーザに通知する通知手段と、を備える立体カメラ用のレンズシステム。
(2)(1)に記載のレンズシステムであって、
前記レンズ装置は、レンズ群と、前記レンズ群を駆動して該レンズ装置の撮影条件を調整するレンズ駆動部と、を備え、
前記通知手段は、前記レンズ駆動部が前記諸元の重複範囲に基づいて前記レンズ群を駆動する動作であるレンズシステム。
(3)(1)に記載のレンズシステムであって、
前記通知手段は、前記2つのレンズ装置の少なくとも一方に設けられた表示部であるレンズシステム。
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載のレンズシステムであって、
前記諸元は、焦点距離、被写体距離の少なくとも1つを含むレンズシステム。
【符号の説明】
【0074】
10 立体カメラ用のレンズシステム
10A,10B レンズ装置
30 CPU
42 通信接続部
44 記憶部
46 表示部
FL フォーカスレンズ群
ZL ズームレンズ群
IR 絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体画像を撮影する立体カメラ用のレンズシステムであって、
2つのレンズ装置と、
前記2つのレンズ装置を互いに通信可能に接続する通信手段と、
前記通信手段によって接続された前記2つのレンズ装置それぞれに予め設定されている諸元を参照するための参照用データが記憶された記憶部と、
前記参照用データに基づいて、前記2つのレンズ装置の前記諸元の重複範囲を演算する演算部と、
前記諸元の重複範囲をユーザに通知する通知手段と、を備える立体カメラ用のレンズシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズシステムであって、
前記レンズ装置は、レンズ群と、前記レンズ群を駆動して該レンズ装置の撮影条件を調整するレンズ駆動部と、を備え、
前記通知手段は、前記レンズ駆動部が前記諸元の重複範囲に基づいて前記レンズ群を駆動する動作であるレンズシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のレンズシステムであって、
前記通知手段は、前記2つのレンズ装置の少なくとも一方に設けられた表示部であるレンズシステム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のレンズシステムであって、
前記諸元は、焦点距離、被写体距離の少なくとも1つを含むレンズシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−159687(P2012−159687A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19323(P2011−19323)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】