説明

立体像撮影方法及びその装置

【課題】 正確に距離測定、明るさ測定を直接に実行でき、最適なピント調整、絞り調整、シャッタースピード調整等を行えることにより、最適な撮影が可能となる撮影方法と、その装置を提供すること。
【解決手段】 採光窓44から入射する左眼用の映像光Lをミラーで反射させないで、左眼用の映像に対応した撮影レンズ2の略一半部に直接取り込み、
採光窓44と撮影レンズ2との間に、左眼用の映像光Lを介してミラー13、14を対向配置し、
採光窓44から入射する右眼用の映像光Rが反射により撮影レンズ2の略他半部に取り込まれる角度に、ミラー13、14の角度をそれぞれ設定し、
左眼用の映像光Lによりデジタルカメラ37の動作(ピント合せ等)を調整し、この際、CPU61から制御信号を撮影レンズ2の位置調整手段62に入力して、この撮影レンズ位置調整手段により撮影レンズ2の位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子(CCD:Charge Coupled Device)を内蔵したビデオカメラ等の撮影装置による立体像(三次元像)撮影方法、及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、立体像の撮影に用いる立体像取り込み装置としては、特開平11−146424号公報等に示されている4枚ミラー方式が知られている。
【0003】
この4枚ミラー方式は、静止画又は動画等の立体像撮影用の光学アタッチメントを1台のビデオカメラに取り付けて視差のある映像を取り込むに際し、4枚のミラーを組み合わせ、撮影レンズの中央に、視差のある映像を左右に分けて図11(a)のように取り込むものである。そして、この左右一対の立体映像を画像処理によって図11(b)、(c)のようにそれぞれ2倍に拡大し(AL、AR)、フィールドシーケンシャルな立体映像信号に変換してディスプレイ画面に再生し、シャッターメガネ等により立体視することができる。
【0004】
このように画像処理により、左右の映像を2倍に拡大すると、視差も2倍に強調されるので、目の疲れの原因になり、またディスプレイのサイズによっても視差量は変わり、大型化により一層視差量が大きくなってしまう。
【0005】
本出願人は、特開平11−46373号(特許文献1)において既に、視差量を必要最低限に抑えて眼に負担がかからない立体映像を得ることができる立体像取り込み装置(以下、これを先願装置と称する。)を提起した。
【0006】
この先願装置の一例を図12〜図15について説明すると、まず図12は、ビデオカメラに装着される光学アタッチメントに収納された内部部品を表しており、入射瞳の中心点10にて2θの画角をもって撮影されるカメラにより、L映像11は直接中心点10に向かって入射し、左眼用のL映像として取り入れられる。
【0007】
一方、R映像12はミラー13、14で2回反射して、中心点10に向かって入射し、右眼用のR映像として取り入れられる。この場合、R映像12は破線の交点15に向かって入射したのと等価になる。このとき、RとLとの距離dは上記した4枚ミラー方式に比べて約1/4に減少する。
【0008】
ここで、ミラー14の右端部14Rは撮影レンズ2の光軸16上にあり、その傾斜角は、ミラー13の傾斜角とともに、L映像11とほぼ同じ角度で入射するR映像12が中心点10に入射するように設定されている。また、ミラー13の左端部13LはL側映像情報の左側の光線17を妨げない限り光軸16に近づけられ、光学アタッチメントの大幅な小型化が可能となる。
【0009】
そして、具体的な例として、焦点距離:6mm(1/3インチCCDにて水平画角43度)、入射瞳の位置:撮影レンズの前面より35mmのカメラ用に設計すると、dは約20mmとなる。即ち、2台のカメラを20mm離して撮影したのと同じ視差が得られる。このアタッチメントによって得られた映像は、特願平7−334423号に開示されている画像処理により、左右半分ずつの画像がそれぞれ2倍に拡大されるので、視差も2倍に拡大される。このため、2台のカメラを40mm離して撮影したのと等価になる。これは、人の左右の平均眼幅は65mmであるので、幾分少なめであるが、立体視の効果は十分に得られる。
【0010】
また、ディスプレイの大きさによっても視差量は変わるが、これを図13〜図15について説明する。図13は、2台のカメラ20L、20Rの間隔をdとし、カメラ20L、20Rに近い順にA、C、Bと並んだ被写体を撮影するときの位置関係を示している。
【0011】
そして、コンバーゼンス(左右のカメラの光軸中心の交点)をCに合せると、図13(b)、(c)のように、それぞれのカメラからL、Rの映像が得られる。これらをフィールドシーケンシャルな信号に変換して、図14のようにディスプレイ21上に再生し、シャッターメガネ22にてL映像は左眼だけに、R映像は右眼だけに入るようにして見ると、Cはディスプレイ21上に、Aはディスプレイ21の手前に、Bはディスプレイ21の奥に定位する。
【0012】
ここで、映像情報はそのままであって図15のように、より大きなディスプレイ23に再生させると、視差は全て水平方向に拡大されてしまうことが分かる。これにより、像の位置は図示矢印方向に移るが、この場合、Bの映像の間隔bが人の眼幅(約65mm)を超えると、融像が難しくなる。視差量が適切でないと、立体視での疲れの原因となる。
【0013】
この点については、左右方向に動きのある映像に対してプルフリッヒ効果を利用して、奥行き感をもたらす方式での視差量を参考にすればよい。即ち、一方の眼にNDフィルタを付けて光を弱めると、その分、大脳への伝達遅れが生じ、左右の眼で時間差のある映像が大脳で処理され、立体視される。その遅れは10msec程度であるが、秒速1mの動きでも自然な立体感が得られている。この場合、100×0.01=1cmのカメラ間隔と等価となる。このことから、立体視のためには、必要最低限の視差量でよいことが分かる。レンズの大きさ、その水平画角により制限されているものの、先願装置を適用した3D(三次元)光学アタッチメント以下の視差量での撮影は、他の手段では実行不可能である。
【0014】
このように、先願装置によれば、立体映像を撮影する映像機器において、単一の採光窓から入射するいずれか一方の眼用の映像をミラーに反射させることなしに撮影レンズの右半分に直接取り込み、前記採光窓と撮影レンズとの間に、前記一方の眼用の映像光を介して第1及び第2のミラーを対向配置し、前記採光窓から入射する他方の眼用の映像光が反射により前記撮影レンズの左半分に取り込まれる角度に、前記第1及び第2のミラーの角度を各々設定している。これによって、視差量を4枚ミラー方式に比べて1/3〜1/4に減らすことができ、無調整で近距離から無限遠まで±1.5cm(32インチモニタ上)のズレで撮影できるので、眼に負担の少ない立体映像が得られるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
先願発明は上記した優れた特長を有するが、その光学アタッチメント(立体像取り込み装置)からの入射光によってカメラのピント(焦点)等を調整する場合に、次のような問題点があることが判明した。
【0016】
即ち、左眼用の映像光Lは、ミラー13、14を介さないで直接に入射する(スルー画像を形成する)のに対し、右眼用の映像光Rは、ミラーを2回反射しかつ光路長も大きいことから、入射光量が減少し易い。このために、仮に右眼用の映像光Rを用いてカメラのピント(焦点)や明るさを調整すると、誤差要因が多くなり、調整を良好に行えず、誤作動の原因となる可能性がある。
【0017】
本発明の目的は、正確に距離測定、明るさ測定等を行え、最適なピント調整、絞り調整、シャッタースピード調整、更にはホワイトバランス調整を行えることにより、最適な撮影が可能となる撮影方法と、その装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
即ち、本発明は、立体像取り込み手段を用いて、一方の眼用の映像が画面の略一半部に、他方の眼用の映像が画面の略他半部に位置するようにして、撮影装置により立体像を撮影する方法において、
単一の採光窓から入射する前記一方の眼用の映像光をミラーで反射させることなしに 、前記一方の眼用の映像に対応した撮影レンズの略一半部に直接取り込み、
前記採光窓と前記撮影レンズとの間に、前記一方の眼用の映像光を介して複数のミラ ーを対向配置し、
前記採光窓から入射する前記他方の眼用の映像光が反射により前記撮影レンズの略他 半部に取り込まれる角度に、前記複数のミラーの角度をそれぞれ設定する
ように前記立体像取り込み手段を構成し、
前記一方の眼用の映像光を用いて前記撮影装置の動作を調整する
ことを特徴とする立体像撮影方法、及びこの撮影方法に用いる撮影装置に係るものである。
【0019】
本発明によれば、撮影装置への入射光のうち前記一方の眼用の映像光(例えば左眼用の映像光)はミラーを介さずに短い光路長で入射するので、これを撮影装置のピント合せ等の動作の調整用に用いることにより、正確に距離測定、明るさ測定を直接に実行でき、最適なピント調整、絞り調整、シャッタースピード調整を行えることになり、光学アタッチメント(立体像取り込み手段)装着時でもピンボケ、露光不足、露光オーバーのない最適な撮影が可能となり、またミラー上に付着した薄膜(油膜など)による色ずれが発生した際にも、前記一方の眼用の映像光を直接観察し、この部分においてホワイトバランスを調整できるので、実物に忠実な色再現が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、撮影装置への入射光のうち前記一方の眼用の映像光(例えば左眼用の映像光)はミラーを介さずに短い光路長で入射するので、これを撮影装置のピント合せ等の動作の調整用に用いることにより、正確に距離測定、明るさ測定を直接に実行でき、最適なピント調整、絞り調整、シャッタースピード調整を行えることになり、光学アタッチメント(立体像取り込み手段)装着時でもピンボケ、露光不足、露光オーバーのない最適な撮影が可能となり、またミラー上に付着した薄膜(油膜など)による色ずれが発生した際にも、前記一方の眼用の映像光を直接観察し、この部分においてホワイトバランスを調整できるので、実物に忠実な色再現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態による光学アタッチメント(立体像取り込み手段)の光学系とカメラ動作の調整方法を示す概略図である。
【図2】同、ファインダ中のピント等の調整手段の概略図(a)、(b)、(c)である。
【図3】同、光学アタッチメント装着用のアダプタの正面図(a)、底面図(b)、背面図(c)である。
【図4】同、アダプタを用いて光学アタッチメント(立体像取り込み手段)をカメラに装着するときの分解斜視図である。
【図5】同、装着状態の斜視図である。
【図6】同、光学アタッチメント(立体像取り込み手段)の概略縦断面図である。
【図7】同、アダプタをカメラに取付けたときの正面図(a)、カメラの鏡筒部に内接するアダプタの内周面を示す概略図(b)、(c)である。
【図8】同、アダプタをカメラに取付けたときの図3のVIII−VIII線断面図である。
【図9】同、アダプタをカメラに取り付けたときの正面図(a)、光学アタッチメント(立体像取り込み手段)も含めた側面図(b)である。
【図10】同、再生された左右の眼用の映像の概略図である。
【図11】従来の立体像撮影時の映像において、左右の映像を切り取る際の説明図(a)、切り取られて拡大された左眼用の映像の説明図(b)、切り取られて拡大された右眼用の映像の説明図(c)である。
【図12】先願装置による光学アタッチメント(立体像取り込み装置)の光学系を示す概略断面図である。
【図13】同、撮影時の被写体の位置関係を表す説明図である。
【図14】同、ディスプレイ上に再生したときの視差量を表す説明図である。
【図15】同、大きいディスプレイ上に再生したときの視差量を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明においては、前記調整に基づいて、前記他方の眼用の映像光(例えば右眼用の映像光)についても同様の調整を行うのがよく、例えば、スルー側(左眼用の映像)のピント位置よりやや遠方としたり、画像の輝度を高くしてスルー側の画像と輝度をあわせたり、またスルー側でのホワイトバランス調整の結果をミラー側に反映してミラー側のホワイトバランスを調整してもよい。
【0023】
また、前記撮影装置のファインダにおいて、前記一方の眼用の映像に相当する画像と前記他方の眼用の映像に相当する画像との境界以外、特に前記一方の眼用の映像に相当する画像中に、測光領域を設けるのがよい。
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態による撮影方法を概略的に示すものであるが、図12で示したと同様に光学アタッチメント(立体像取り込み手段)31においては、入射瞳の中心点10にて2θの画角をもって撮影されるカメラにより、L映像11は直接中心点10に向かって入射し、左眼用のL映像として取り入れられると共に、R映像12はミラー13、14で2回反射して、中心点10に向かって入射し、右眼用のR映像として取り入れられる。
【0026】
その他の構成も図12と同様であるが、この光学アタッチメント31により、単一の採光窓44から入射する左眼用の映像Lをミラーに反射させることなしに撮影レンズ2の右半分に直接取り込み、採光窓44と撮影レンズ2との間に、左眼用の映像光がLを介してミラー13、14を対向配置し、採光窓44から入射する右眼用の映像光Rが反射により撮影レンズ2の左半分に取り込まれる角度に、ミラー13、14の角度を各々設定していることによって、視差量を4枚ミラー方式に比べて1/3〜1/4に減らすことができ、無調整で近距離から無限遠まで±1.5cm(32インチモニタ上)のズレで撮影できるので、眼に負担の少ない立体映像が得られるようになる。
【0027】
この場合、左眼用の映像光Lは、ミラーを介さないで直接に入射する(スルー画像を形成する)のに対し、右眼用の映像光Rは、ミラーを2回反射しかつ光路長も大きいことから、光量が減少し易い。このために、仮に右眼用の映像光Rを用いてカメラのピント(焦点)や明るさを調整すると、誤差要因が多く、調整を良好に行えず、誤作動の原因となる可能性がある。
【0028】
しかし、上記のように、カメラ調整用の入射光を左眼用の映像光Lとすることにより、この入射光はミラーを介さずに短い光路長で入射するので、正確に距離測定、明るさ測定を直接に実行でき、最適なピント調整、絞り調整、シャッタースピード調整を行えることになり、光学アタッチメント装着時でもピンボケ、露光不足、露光オーバーのない最適な撮影が可能となる。また、ミラー上に付着した薄膜(油膜など)による色ずれが発生した際にも、左眼用の映像光を直接観察し、この部分においてホワイトバランスを調整できるので、実物に忠実な色再現が可能となる。
【0029】
この場合、スルーでない側(右眼用の映像)については、スルー側(左眼用の映像)のピント位置よりやや遠方(距離データでac30mm程度)としたり、スルーでない側の画像の輝度を1.25倍ぐらいにする(スルーの側の画像と輝度をあわせる)ことが可能であり、またスルー側でのホワイトバランス調整の結果をミラー側に反映してミラー側のホワイトバランスを調整してもよい。
【0030】
こうした調整を行うためには、例えば、左眼用の映像光Lを受光するCCD60から、その映像光のピントや露光量等の測定値をCPU(中央演算ユニット)61に入力し、このCPUから例えば撮影レンズ2の位置を調整する制御信号をレンズ駆動モータ62に入力する。これらの各構成部品は、カメラ筐体内に組み込まれている。
【0031】
このように左眼用の映像光Lを調整用として用いる場合、図2(a)、(b)、(c)に示すように、ピントや明るさを調整するために、ファインダのスルー画像(左眼用の映像)の中心部分に十字、四角のエリア、多点などの測光領域を表示してよい。但し、この調整位置は、左右の映像の境界を避ける必要があり、特にズーム撮影のときはミラー側の映像光の影響も顕著となるので、境界を確実に避けることが望ましい。その境界は、図1に示したミラー14の端部14Rに相当していて左右の画像の境界となり、左眼用の入射光が乱されるからである。なお、図2(c)の多点式の場合は、入射光を平均的に検出可能であるので、左側で調整する以外にも、境界を避ければ右側(ミラー側)でも調整することもできる。
【0032】
図3〜図6は、本実施の形態による光学アタッチメント(立体像取り込み手段)31の装着用のアダプタと、このアダプタを用いたビデオカメラ(ここではデジタルスチルカメラ:以下、デジタルカメラと略記するが、静止画は勿論、動画も撮影可能なものである。)への立体像取り込み手段31の装着機構を示すものである。
【0033】
アダプタ30は、図3〜図5に示すように、全体がほぼ透光性又は透明のプラスチックで形成されていて、このアダプタ30に光学アタッチメント(立体像取り込み手段)31が取り付けられる。
【0034】
この取り付けに際しては、図4に示すように、光学アタッチメント31の円形のリング部32の円筒形状に対応してアダプタ30に形成された円形のリング部33の内周に形成された切欠き34に、光学アタッチメント31のリング部32の外周に形成された突起35を嵌め込んだ後に、光学アタッチメント31を光軸16の回りに幾分回動させて位置固定することにより、アダプタ30に対して光学アタッチメント31を図5に示すように正規の位置に固定する。そして、この逆の操作により、光学アタッチメント31をアダプタ30から取り外せる。
【0035】
光学アタッチメント31は、図6にその断面を概略図示するが、内部構造と機能は図12に示したものと同様である。即ち、この光学アタッチメント31により、デジタルカメラ37に対し、一方の眼用(ここでは左眼用)の映像が画面の略一半部に、他方の眼用(ここでは右眼用)の映像が画面の略他半部に位置するように各映像光が入射するが、単一の採光窓44から入射する前記一方の眼用の映像光をミラーで反射させることなしに撮影レンズ2の略一半部に直接取り込み、採光窓44と撮影レンズ2との間に、前記一方の眼用の映像光を介して複数のミラー13、14を対向配置し、採光窓44から入射する前記他方の眼用の映像光が反射により撮影レンズ2の略他半部に取り込まれる角度に、複数のミラー13、14の角度をそれぞれ設定している。
【0036】
アダプタ30は、図3及び図4に示すように、円形のリング部(環状部)33を設けた立板部36を有し、この立板部36は図3に示すように、デジタルカメラ37の筐体49の前面に当てがわれる。そして、この立板部36に対し前後方向にほぼ直角に、デジタルカメラ37の筐体49の底面に接当して固定される固定板部38が連設され、アダプタ30は全体が断面ほぼL字形をなしている。
【0037】
そして、アダプタ30のリング部33は、デジタルカメラ37のレンズ内蔵の鏡筒部39を出入り可能に容したリング部40の外周面41に内接して嵌入される内周面42を有している。この内周面42は、デジタルカメラ37の機種によって鏡筒部39の高さ位置が異なるのに対応して、図7に明示するように、鏡筒部が上方位置にある場合のリング部40の外周面に一致した中心43Aの第1の円弧面42Aと、鏡筒部が下方位置にある場合のリング部40の外周面に一致した中心43Bの第2の円弧面42Bとからなっていて、いずれかの円弧面が対応する所定高さのリング部40の外周面41に内接するように構成されている。
【0038】
これによって、デジタルカメラ37の機種によって鏡筒部39、即ちリング部40の高さが異なっても、これに応じてそのリング部40の外周をアダプタ30のリング部33のいずれかの内周42A又は42Bに接合されるだけで、常に正規の鏡筒中心にアダプタ30のリング部33の中心を容易かつ正確に合せることができる。
【0039】
また、アダプタ30の底部に設けた固定板部38には、ねじ孔47A、47Bが形成されているが、これらのねじ孔47A、47Bは、本来はデジタルカメラ37の三脚を固定するためのものであり、カメラ機種によって異なる位置に形成されている。そして、三脚を用いない状態で、図8に示すように、例えば一方のねじ孔47Aからねじ48をデジタルカメラ37の筐体49にねじ込み、これによって固定板部38をカメラ筐体49の底面に着脱可能にねじ止めする。固定板部38には、カメラ筐体に設けた小突起(図示せず)と凹凸嵌合する位置決め用の小孔55が形成されている。
【0040】
この場合、カメラ機種に応じてねじ止め位置を変更すれば、常にカメラ機種に応じて固定板部38をカメラ筐体49に固定することができる。そして、固定板部38のカメラ筐体側の角部には予め、位置決め用の突条部50がL字状に形成されており、図8に示すように、この突条部50がカメラ筐体49の突起部51と凹凸嵌合することによって、両者間の位置関係を定めて上記のねじ止めを行う。これによって、固定板部38をカメラ筐体49に対し常に正規の位置に固定することができる。
【0041】
また、この固定板部38において、リング部33の下部に、下方へほぼ直角に突出した突出板部52が一体に設けられている。この突出板部52は、図9(a)のようにアダプタ30をカメラ筐体49に取り付けて図9(b)のように載置面53上に載置した際の脚部となるものであって、載置面53と接する下端面54を固定板部38と平行に有している。
【0042】
従って、載置面53上では突出板部52の下端及び固定板部38の下端が接して支持されるので、ミラー内蔵の光学アタッチメント31は、載置面53に接することによりミラー13、14が衝撃力等を受けることがないため、これらのミラーを常に正規の状態に保持することができる。
【0043】
また、アダプタ30の立板部36の上部には、デジタルカメラ37のファインダ45に対向した窓部46が設けられ、例えば右眼用の映像光に対応した窓部46の一半部46Aに、遮光処理若しくは透過光量を低減する処理、例えばエンボス加工又は黒色化処理が施され、他半部46Bはそうした処理が施されずに十分な透光性を有している。
【0044】
即ち、デジタルカメラ37に光学アタッチメント31を装着した状態でファインダ45から目的とする像を見たときに、例えば左眼用の映像光がアダプタ30の窓部46の透光部46Bを通して入射するが、右眼用の映像光は遮光処理若しくは透過光量低減処理された一半部46Aからは入射しないか若しくは低い光量でしか入射しないことになる。図10には、その状態を映像で概略図示している。
【0045】
従って、アダプタ30をカメラに取り付けて使用するときは、撮影時に左眼用の映像にピント(焦点)を合せて撮影できるので、ディスプレイの画面には常に良好な映像を再生でき、その撮影状態を確認することができる。また、カメラからアダプタ30を取り外せば、立体像を再生しない通常のデジタルカメラとして使用可能となることは勿論である。
【0046】
また、アダプタ30は透光性の材質からなっているので、アダプタ30の内側の状態が外部から確認することができ、取り扱いやカメラへの取付け作業を行い易く、また取り付け状態のチェックも行い易い。
【0047】
以上に説明した実施の形態は、本発明の技術的思想に基づいて種々に変形可能である。
【0048】
例えば、上述のカメラの動作を調整するための機構の構成部品や配置等は種々変更してよく、また、調整用の入射光として、スルー画像を形成するように変更すれば右眼用の映像光を用いてもよい。
【0049】
また、アダプタ30の形状、サイズや材質等は様々に変化させてよく、特にカメラへの取付け時の位置規定手段や固定手段は上述したものに限定されることはない。また、アダプタ30と光学アタッチメント31とを一体にしてよく、例えば一体成形してよい。この場合は、成形時に光学アタッチメント31を設計通りの正規の位置に配置することができ、有利である。ねじ孔47A、47Bは、個別に形成せず、長孔状として、この長孔内で所望の位置をねじ止めしてよい。
【0050】
また、アダプタ30や光学アタッチメント31の取付け対象は、上述のデジタルカメラに限らず、CCD又は磁気ディスク、磁気テープ方式の録画機能を有していれば、他のビデオカメラであってもよい。
【0051】
また、上述した各眼用の映像は、カメラと別体のディスプレイに再生するだけでなく、カメラに取り付けたモニタ画面で再生し、このモニタに図2で述べたようなファインダ機能をもたせ、例えば左眼用の映像をモニタできるようにしてもよい。
【0052】
更に、本発明は、静止画に限らず、動画撮影にも有効である。また、上述したシャッターメガネ方式による立体像観察に限らず、偏光等による視差等を用いる公知の立体像観察一般にも適用できる。
【符号の説明】
【0053】
2…レンズ、10…中心点、11…L映像、12…R映像、13、14…ミラー、
15…交点、16…レンズの光軸、17…光線、20L、20R…カメラ、
21、23…ディスプレイ、22…シャッターメガネ、30…アダプタ、
31…光学アタッチメント(立体像取り込み手段)、37…デジタルカメラ、
39…鏡筒部、60…CCD、61…CPU、62…モータ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開平11−46373号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体像取り込み手段を用いて、一方の眼用の映像が画面の略一半部に、他方の眼用の映像が画面の略他半部に位置するようにして、撮影装置により立体像を撮影する方法であって、
単一の採光窓から入射する前記一方の眼用の映像光をミラーで反射させることなしに 、前記一方の眼用の映像に対応した撮影レンズの略一半部に直接取り込み、
前記採光窓と前記撮影レンズとの間に、前記一方の眼用の映像光を介して複数のミラ ーを対向配置し、
前記採光窓から入射する前記他方の眼用の映像光が反射により前記撮影レンズの略他 半部に取り込まれる角度に、前記複数のミラーの角度をそれぞれ設定する
ように前記立体像取り込み手段を構成した立体像撮影方法において、
前記他方の眼用の映像光と比べて前記反射なしに短い光路長で前記撮影レンズの略一 半部に直接入射する前記一方の眼用の映像光を撮像素子に入射させて、前記一方の眼用 の映像光のピント(焦点)又は露光量を測定し、この測定値をCPU(中央演算ユニッ ト)に入力し、
前記一方の眼用の映像光を用いて、前記撮影装置のピント(焦点)、絞り、シャッタ ースピード又はホワイトバランスを調整し、前記ピントを調整するに際し、前記CPU から制御信号を前記撮影レンズの位置調整手段に入力して、この撮影レンズ位置調整手 段により前記撮影レンズの位置を調整する
ことを特徴とする立体像撮影方法。
【請求項2】
前記撮影装置のファインダにおいて、前記一方の眼用の映像に相当する画像と前記他方の眼用の映像に相当する画像との境界以外に測光領域を設ける、請求項1に記載した立体像撮影方法。
【請求項3】
前記一方の眼用の映像に相当する画像中に前記測光領域を設ける、請求項2に記載した立体像撮影方法。
【請求項4】
立体像取り込み手段を用いて、一方の眼用の映像が画面の略一半部に、他方の眼用の映像が画面の略他半部に位置するようにして、立体像を撮影する撮影装置であって、
前記立体像取り込み手段が、
単一の採光窓から入射する前記一方の眼用の映像光をミラーで反射させることなしに 、前記一方の眼用の映像に対応した撮影レンズの略一半部に直接取り込み、
前記採光窓と前記撮影レンズとの間に、前記一方の眼用の映像光を介して複数のミラ ーを対向配置し、
前記採光窓から入射する前記他方の眼用の映像光が反射により前記撮影レンズの略他 半部に取り込まれる角度に、前記複数のミラーの角度をそれぞれ設定する
ように構成された立体像撮影装置において、撮影装置の動作を調整する調整手段を有し、この調整手段においては、
前記他方の眼用の映像光と比べて前記反射なしに短い光路長で前記撮影レンズの略一 半部に直接入射する前記一方の眼用の映像光を撮像素子に入射させて、前記一方の眼用 の映像光のピント(焦点)又は露光量を測定し、この測定値をCPU(中央演算ユニッ ト)に入力し、
前記一方の眼用の映像光を用いて、撮影装置のピント(焦点)、絞り、シャッタース ピード又はホワイトバランスを調整し、前記ピントを調整するに際し、前記CPUから 制御信号を前記撮影レンズの位置調整手段に入力して、この撮影レンズ位置調整手段に より前記撮影レンズの位置を調整する
ことを特徴とする立体像撮影装置。
【請求項5】
前記撮影装置のファインダにおいて、前記一方の眼用の映像に相当する画像と前記他方の眼用の映像に相当する画像との境界以外に測光領域が設けられている、請求項4に記載した立体像撮影装置。
【請求項6】
前記一方の眼用の映像に相当する画像中に前記測光領域が設けられている、請求項5に記載した立体像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−271733(P2010−271733A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163602(P2010−163602)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【分割の表示】特願2002−260853(P2002−260853)の分割
【原出願日】平成14年9月6日(2002.9.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】