説明

立体映像表示装置及び立体映像観賞用メガネ

【課題】左右用の映像を同一方向の偏光で時分割によって交互に表示する立体映像を分離視するとともに観賞者が頭を傾けて観た場合であっても左右の視野がクロストークすることを防止する。
【解決手段】立体映像観賞用メガネ30には左右の視野に偏光板33R、33Lを並設し、その前面夫々に視野開閉用液晶セル31R、31Lと傾斜補正用液晶セル32R、32Lとを重ねて設置し、立体映像表示装置の赤外線同期信号放射器から放射された偏光赤外線同期信号をメガネフレーム上に載置した同期信号受信器37によって受信し、視野開閉用液晶セルを同期駆動し、立体映像表示装置の表示光に対して、左右の視野を交互に開閉するとともに、メガネフレーム上に載置した傾斜角検出器によって検出した傾斜角データによってメガネの傾きに応じて制御した電圧を傾斜補正用液晶セルに印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体映像の左右用の映像を同一方向の直線偏光で時分割によって交互に表示する立体映像表示装置及び、その表示された立体映像の左右の視野を分離して立体視するための立体映像観賞用メガネであり、特に直線偏光を使用する場合に起こり得るクロストークの防止を図ったものである。
【背景技術】
【0002】
従来、立体映像の左右の視野を分離するためには、左右互いに直交する直線偏光、或いは左右互いに反対方向に旋回する円偏光によって重ねて表示(投影による)し、観賞には、表示方式に応じて、左右互いに直交する偏光メガネ、又は、互いに反対方向の円偏光メガネを使用して分離視していた。 しかし、近年、直視型ディスプレイ(特にLCD)の書き換え速度が高速化されるに伴って、直視型のLCDTV等においても立体映像の左右用の映像を時分割によって交互に表示し、視野分離用メガネ(例えば液晶シャッターメガネ等)によって左右の視野を分離して立体視することが試みられている。
【0003】
しかし、液晶シャッターメガネは二枚の偏光板を重ねて使用するために透過光の減衰が著しく視野が暗くなる欠点がある。 その上、シャッターメガネは視野閉時において前面の偏光板を透過した光線(偏光光線)を後面の偏光板の方向に対して直交方向に導くことによって視野を交互に開閉する、そのシャッター作用のために開口時間が1/2以下になり更に光量が減衰する。また、この、シャッター作用は立体映像のみならず周囲の環境光をも断続するので商用周波数で点灯している照明下においてフリッカを生じるという問題も指摘されている。
【0004】
また、直視型ディスプレイにおいては左右用の映像を同時に表示することが難しいために(但し、1ライン毎に異なる方向の偏光で表示するものは現存する)同一方向の直線偏光によって時分割表示し、観賞側のメガネを工夫して分離視することも提案されている。 しかし、直線偏光を用いる宿命として観賞者が頭を傾けた場合、クロストークの問題を避けることは困難である(例えば、特許文献1)。
【0005】
更に、人の視力(視度)は個々の人々により、夫々異なっているが、現行の立体映像観賞用メガネには視度補正レンズを備えたものが無い。 そのために普段使用するメガネの上に立体映像メガネを重ねて使用しているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−82307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記〔背景技術〕の欄で説明したように、同一画面上に時分割表示する方式の立体映像を観るための観賞用メガネの問題点は、液晶シャッターメガネに見られるように、
a:視野が暗い。
b:フリッカを生ずる。
ことの上記二点である。特許文献1に記載されている方法は、液晶シャッターメガネにおいて生じる上記二点の問題は解消しているものの、新たに下記の問題が浮上する。
c: クロストークが発生する。
これは観賞者が頭を傾けた場合に生ずるもので、シャッターメガネが視野閉時において直交する二枚の偏光板によって完全に視野を遮蔽しているのに対し、特許文献1記載の方法はテレビに備えられた偏光板(LCDTVに於いては表示光自体が偏光であるので特許文献1のようにメガネの前面に新たに偏光板を設ける必要はない)と、メガネの偏光板とによって視野閉時の遮蔽を行っているので観賞者が頭を傾けた場合には、LCDからの偏光と、観賞用メガネの偏光板との直交状態が崩れるためであり、よってクロストークの発生を回避することができない。
【0008】
そこで、時分割表示方式の立体映像を観賞する場合において、上記三つの問題を同時に解決して正常な立体視を可能にする立体映像観賞用メガネを開発すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は、この課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は立体映像表示装置であって、左右用の映像を同一方向の偏光で時分割によって交互に表示する立体映像表示装置に視野開閉用の同期信号用赤外線放射器を備え、更に立体映像観賞用メガネの傾斜補正用の基準として視野開閉用赤外線同期信号放射器に赤外線用偏光フィルタを付設するか、又は傾斜補正用の偏光赤外線放射器を別に設置して、傾斜補正用の基準とする偏光赤外線を放射するように構成した立体映像表示装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、立体映像観賞用メガネの傾き補正の基準として偏光赤外線を利用することが可能となり、偏光赤外線を利用して傾斜補正をする立体映像観賞用メガネによって観賞すれば、観賞者が頭を傾けた場合であってもクロストークの発生を防止できる。
【0011】
請求項2記載の発明は、左右用の映像を振幅方向が同一方向の直線偏光で時分割方式によって交互に表示する立体映像を観賞するための立体映像観賞用メガネであって、メガネの左右の視野夫々に同一方向の偏光板を並設し、該偏光板夫々の前面に視野開閉用液晶セルと、メガネの傾きを補正するための傾斜補正用液晶セルとを重ねて設置して、立体映像表示装置からの偏光赤外線同期信号(同期信号のみならば偏光は不要)をメガネに載置した同期信号受信器によって受信し、その同期信号によって前記視野開閉用液晶セルを同期駆動するとともに、メガネフレーム上に載置した傾斜角検出器の検出データによって前記メガネの左右の視野上に設置した傾斜補正用液晶セルを駆動調整して観賞時にメガネを傾けた場合であっても視野閉時の遮光状態が常に最大となるように構成することによってクロストークの発生を防止した立体映像観賞用メガネを提供する。
【0012】
この構成によれば、立体映像表示装置の表示映像に対するメガネの傾きは傾斜角検出器によって自動的に検出され、その検出値に応じて傾斜補正用液晶セルによって表示映像が旋光調整され傾斜状態は自動的に水平状態と同等な状態に補正される。
【0013】
請求項3記載の発明は左右用の映像を振幅方向が同一方向の直線偏光で時分割方式によって交互に表示する立体映像を観賞するための立体映像観賞用メガネであって、メガネの左右の視野夫々に同一方向の偏光板を並設し、該偏光板夫々の前面に液晶セルを設置し、立体映像表示装置からの偏光赤外線同期信号をメガネフレーム上に載置した赤外線同期信号受信器によって受信した同期信号データと、メガネフレーム上に載置した傾斜角検出器の検出データとを演算し、そのデータによる電圧をメガネ前面の液晶セルに印加して同期駆動し、立体映像に対して左右の視野を交互に開閉して分離視するとともに、観賞時にメガネを傾けた場合であっても、視野閉時の遮光状態が常に最大となるように構成することによってクロストークの発生を防止する立体映像観賞用メガネを提供する。
【0014】
この構成によれば、前記請求項2記載の立体映像観賞用メガネよりも構造を簡素化できる。
【0015】
請求項4記載の発明は左右用の映像を振幅方向が同一方向の直線偏光で時分割方式によって交互に表示する立体映像を観賞するための立体映像観賞用メガネであって、メガネの左右の視野夫々に同一方向の偏光板を並設し、該偏光板夫々の前面に視野開閉用液晶セルと、左傾斜用補正用液晶セルと右傾斜補正用液晶セルとの三枚の液晶セルを重ねた左右計六枚の液晶セルを設置して、立体映像表示装置に付設した赤外線同期信号放射器から放射される同期信号をメガネフレーム上に載置した赤外線同期信号受信器によって受信して視野開閉用液晶セルを同期駆動し、立体映像に対して左右の視野を交互に開閉して分離視するとともに、メガネフレーム上に載置した傾斜角検出器の検出データによって前記メガネの左右の視野上に重ねて設置した左傾斜補正用液晶セル又は右傾斜補正用液晶セルを適宜駆動調整することによって観賞時にメガネを傾けた場合であっても、視野閉時の遮光状態が常に最大となるようにしてクロストークの発生を防止するように構成した立体映像観賞用メガネを提供する。
【0016】
この構成によれば、傾斜補正範囲を広範囲に拡張できる。
【0017】
請求項5記載の発明は、立体映像観賞用メガネの傾き補正用の傾斜角検出器であって、
該傾斜角検出器は傾斜角検出用液晶セル・赤外線用偏光フィルタ・赤外線センサによって構成され、その作用は、該傾斜角検出器の液晶セルに電圧を印加する。即ち、検査用電圧を次第に上昇させ、傾斜角検出用液晶セルによって旋光される偏光赤外線の振幅方向が赤外線用偏光フィルタの偏光方向と直交状態になった時点に於いて赤外線センサの出力が急速に低下して無出力状態になる。その時点の傾斜角検出用液晶セルへの印加電圧をサンプリングすることによって傾斜角を検知するように構成した傾斜角検出器を提供する。
【0018】
この構成によれば、広範囲(大きな角度)の傾斜角を正確に検出できる。
【0019】
請求項6記載の発明は、立体映像観賞用メガネの傾き補正用の傾斜角検出器であって、 該傾斜角検出器は作動範囲を拡張するべく傾斜角検出用第一液晶セルと傾斜角検出用第二液晶セルを重ねて設置していて、その後側には赤外線用偏光フィルタ・赤外線センサの順で配列されている。前記傾斜角検出用第一液晶セルの電極と傾斜角検出用第二液晶セルの電極とを直列又は並列に結線して電圧を印加するか、又は傾斜角検出用第一液晶セルの電極と斜角検出用第二液晶セルの電極に順次電圧を印加することによって立体映像表示装置の偏光赤外線同期信号放射器から放射された偏光赤外線は傾斜角検出用第一液晶セル及び傾斜角検出用第二液晶セルによって旋光調整されて透過する。印加電圧を次第に上昇させ、偏光赤外線の振幅方向が赤外線用偏光フィルタの偏光方向と直交状態になった時点に於いて赤外線センサの出力が急速に低下して無出力状態になる。その時点の液晶セルへの印加電圧をサンプリングすることによって傾斜角を検出するように構成した傾斜角検出器を提供する。
【0020】
この構成によれば、前記請求項5記載の傾斜角検出器よりも作動範囲をさらに広範囲に拡張することができる。
【0021】
請求項7記載の発明は、立体映像観賞用メガネの傾き補正用の傾斜角検出器であって、該傾斜角検出器は鉛直線を対称軸とし偏光方向が互いに反対方向に傾斜する状態で並置した赤外線用偏光板と、その直後の夫々の位置に設置した赤外線センサとによって構成され、メガネが傾いた場合には前記赤外線用偏光板の傾きの対称性が崩れることによって立体映像表示装置から放射された傾斜補正用の基準の偏光赤外線の透過量に差が生じ、その差を前記赤外線センサによって電気的出力として傾斜角を検出するように構成した傾斜角検出器を提供する。
【0022】
この構成によれば極めて簡単な構造によって傾斜角検出器を実現できる。
【0023】
請求項8の記載の発明は、メガネの前面又は後面に視度補正レンズホルダ用スロット及びレンズ押さえ用スプリングを設けた立体映像観賞用メガネを提供する。
【0024】
この構成によれば、視度補正レンズを交換することによって、個々の観察者の視度に合った立体映像用メガネを用意することができる。
【0025】
請求項9記載の発明は、レンズの両端部を円弧形に形成し、下端部を両端の円弧形よりも曲率の大きい曲線か又は直線形状の視度補正レンズを提供する。
【0026】
この構成によれば視度補正レンズの着脱を容易にするとともにレンズの回転を防止できる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明は、左右用の映像を同一方向の偏光で時分割によって交互に表示する方式の立体映像表示装置に偏光赤外線放射器を設置するか、又は同期用赤外線放射器に赤外線用偏光フィルタを付設するのみの簡易な構造にてクロストークを防止する立体映像表示装置を具現化できる。そして、偏光赤外線を立体映像観賞用メガネの傾斜補正用の基準として利用することによって電気光学的作用によって正確な傾斜角検出及び傾斜補正を実現できるという効果がある。
【0028】
請求項2記載の発明は、立体映像の表示光に直線偏光を使用してもクロストークが生じないという効果がある。また、メガネに使用する偏光板は一枚のみであるので光量の減衰が少なく、その上、周囲の環境光は非偏光であるのでメガネの作用は周囲の環境光には及ばないことである。このことは、周囲の照明光等の照度が低下せず、立体ディスプレイを見ながら行う作業に於いてメガネを掛け外ししなくても済むという効果がある。また、商用周波数で点灯する放電灯による照明の下でもフリッカの発生がないという効果もある。 更に傾斜補正用液晶セルを別に設けたことにより傾斜補正の作動範囲を大きく設定しても安定した作動が保証されるという利点がある。
【0029】
請求項3記載の発明は、前記請求項2と同様の効果があり、使用する構成要素、例えば液晶セルの個数を少なくできるという効果がある。但し、傾斜補正の作動範囲が狭くなることは免れない。
【0030】
請求項4記載の発明は、メガネが左に傾斜した場合の左傾斜補正用液晶セルと、メガネが右に傾いた場合の右傾斜補正用液晶セルとを備え、傾き方向によって別々の液晶セルを使用することによって前記請求項2の効果に加え更に傾斜補正の作動範囲を広範囲(90°以上)に拡張できるという効果がある。
【0031】
請求項5記載の発明は、メガネを大きく傾けた場合であっても正確な傾斜角を迅速に検出できる。したがって、広範囲の補正が安定して維持できるこという効果がある。また、メカニカル方式の傾斜角検出器に見られる製造時及び使用時の微調整が不要で、なお、余分な揺れ等もないという効果もある。
【0032】
請求項6記載の発明は、傾斜角検出用としての傾斜角検出用第一液晶セルと傾斜角検出用第二液晶セルとを重ねて設置し制御電圧を直列又は並列に印加するか、又は傾斜角検出用第一液晶セルの電極と斜角検出用第二液晶セルの電極に順次電圧を印加することによって前記請求項5の傾斜角検出器の効果に加え更に傾斜角検出の作動範囲を広範囲(90°以上)に拡張できるという効果がある。
【0033】
請求項7記載の発明は、簡素な構成であっても傾斜状態を検出しクロストークの発生を完全に防止できるという効果がある。
【0034】
請求項8記載の発明は、前記請求項2,3及び4の発明に加え、更に視度補正レンズを必要とする人に対して、視度補正レンズ(通常使用しているメガネ)と立体映像観賞用メガネとを重ねて使用することを不要にしたことにある。また、観る対称物体距離に応じて最適な視度補正レンズを選択できるという効果もある。
【0035】
請求項9記載の発明は、視度補正レンズの両端部を円弧形にすることによって立体映像観賞用メガネの視度補正レンズホルダ用スロットに挿入することを容易にする効果がある。また、円弧形状はメガネのホルダ部に設置したスプリングと相まってスロットからレンズが脱落することを防止する効果がある。更にレンズ下端部を両端の円弧よりも曲率の大きな曲線又は直線にすることによってレンズ自体が回転することを防止している。これは乱視用レンズを使用する場合、乱視軸が変化しないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の立体TVの斜視図。
【図2】本発明の立体映像観賞用メガネの正面図。
【図3】本発明の立体映像観賞用メガネの構成を示す解説図。
【図4】本発明の立体映像観賞用メガネの作動状態を示す解説図。
【図5】本発明の立体映像観賞用メガネの他の実施例を示す解説図。
【図6】本発明の立体映像観賞用メガネの更に他の実施形態を示す解説図。
【図7】(a)本発明の立体映像観賞用メガネの他実施形態を示す正面図。 (b)上記、図7(a)の傾斜角検出器の構成を示す解説図。
【図8】視度補正レンズホルダを付設した立体映像観賞用メガネの実施形態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の概念を図によって説明する。図1の立体映像表示装置を示し、該立体映像表示装置は、例えばLCD立体テレビ(以下、「立体TV」という)から成り、ディスプレイ14上に左右用の映像を時分割で交互に表示している。同時に、立体TV10の本体11上に設置されている偏光赤外線同期信号放射器12は表面に赤外線用偏光フィルタ13を付設し、偏光赤外線同期信号を発している。
【0038】
図2は、本発明の立体映像観賞用メガネの一実施例で、該立体映像観賞用メガネ20の正面図である。メガネの左右の視野には図示の如く、前記立体TV10のディスプレイ14の偏光方向に対し偏光方向が45°傾斜した左右同一の偏光板23及び23が並置されている。 更に、各偏光板23,23の前面に視野開閉用液晶セル21,21及び傾斜補正用液晶セル22,22の二枚の液晶セルを重ねて設置している。また、メガネフレーム上には赤外線同期信号受信器27及び傾斜角検出器(傾斜角検出用液晶セル24、赤外線用偏光フィルタ25及び赤外線センサ26)設けられている。
【0039】
図3は、図2に図示の立体映像観賞用メガネの構成を示す解説図であり、前記立体TV10の赤外線用偏光フィルタ13を通して放射された偏光赤外線による同期信号(同期信号は偏光であることは不要)を図示の赤外線同期信号受信器37によって受信し、受信した同期信号をコントローラC1に送り制御電圧に変換して視野開閉用液晶セル31,31に印加することによって立体映像観賞用メガネ30の視野を、前記立体TV10のディスプレイ14上に時分割で交互に表示される表示映像に対し同期して開閉している。
【0040】
また、観賞者が頭を傾けた場合には、前記視野開閉のため旋光調整された表示映像の振幅方向と偏光板33,33の直交状態が崩れクロストークが発生する状態になるが、 図3に図示の本発明の傾斜角検出器(傾斜角検出用液晶セル34、赤外線用偏光フィルタ35、赤外線センサ36で構成される)傾斜補正用液晶セル32,32による構成はメガネの傾斜を補正してクロストークの発生を防止すべく提案するものであり、前記立体TV10の赤外線用偏光フィルタ13から発せられた偏光赤外線同期信号を傾斜角検出用液晶セル34で旋光調整し、赤外線用偏光フィルタ35で検光して傾斜角を検出するもので、その作用を説明すれば、先ず、コントローラC2によって傾斜角検出用液晶セル液晶セル34に定期的(例えば一秒当たり数回程度)に電圧を印加する。印加電圧を次第に上昇させた場合、傾斜角検出用液晶セル34による旋光状態が変化し、傾斜角検出用液晶セル34を透過した偏光赤外線の振幅方向は赤外線用偏光フィルタ35の偏光方向に直交状態になる。この直交状態になった場合に赤外線センサ36の出力が急激に低下して無出力状態になることで傾斜角を検知する。この時点のコントローラC2による傾斜角検出用液晶セル34への印加電圧をサンプリングすることによって傾斜角を検出する。
【0041】
上記の検出した傾斜補正用の傾斜角データはコントローラC2によって制御用電圧に変換され傾斜補正用液晶セル32,32に印加される。観察者が頭を傾けた場合、視野閉時に於いての直交状態が崩れ遮光されるはずの光線が偏光板33,33を僅かにすり抜けてクロストークを発生することになる。しかし、本発明によれば、このクロストーク即ち漏光は、傾斜補正用液晶セル32,32によって補正され偏光板33,33に対して完全直交状態になり視野閉時の遮光状態は常に最大に維持される。
【0042】
図4は、立体映像観賞用メガネ30の旋光状態の説明図で、例えば、前記図1の立体テレビのディスプレイ14による表示光を水平方向に振幅する偏光とすれば、図4において図示のメガネの左右の視野に入射する表示光は、左の視野に於いて図示のスイッチが開状態のため視野開閉用液晶セル41に電圧が印加されず、水平方向に振幅する表示光は視野開閉用液晶セル41内で90°旋光されて透過し立て(上下)方向に振幅する。一方、右の視野に於いては図示のスイッチが閉状態のため視野開閉用液晶セル41に電圧が印加され表示光は水平方向に振幅する状態のままで視野開閉用液晶セル41を透過する。左右のスイッチは実際には前記赤外線同期信号によって表示光に同期して自動的に交互に開閉するように設定されているために、視野開閉用液晶セル41又は41を透過後の表示光は左右の視野間に於いて常に互いに直交状態になっている。(但し、立体テレビのLCD上に時分割によって交互に表示される左右用映像の切り替えと同時に立体映像観賞用メガネの左右の視野も切り替えた場合には、立体テレビの左右用映像が干渉する場合がある。この干渉を回避するために、立体テレビの左右用映像を切り替える時点に於いて、メガネの左右の視野を一定期間(立体テレビの左右用の映像が切り替わる時間よりも僅かに永い期間)同時に閉にする必要がある。従って瞬間的には直交状態で無い場合もある)。また、メガネの視野の切り替え時に立体テレビのバックライトを消灯する方法も実施されている。なお、表示光の振幅方向を示す矢印は、各液晶セルの手前側に於ける振幅方向を実線で表し、向こう側における振幅方向を破線で表している。
【0043】
上述のように視野開閉用液晶セル41を透過した左右用の表示光の振幅方向は互いに直交状態になって傾斜補正用液晶セル42に入射する。例えば図4に図示するように、左の視野に於いて立て(上下)方向に振幅する状態で入射する。このとき右の視野に於いては水平(左右)方向に振幅する状態で入射する。傾斜補正用液晶セル42は例えばTNモード液晶で、その作動範囲(角度)を90°とすれば、傾斜補正用液晶セル42には90°の1/2の45°の旋光状態になるように常にバイアス電圧を印加する。そして前記、検出した傾斜角データをコントローラC2によって制御用電圧に変換してバイアス電圧に加減して傾斜補正用液晶セル42を駆動する。傾斜補正用液晶セル42,42は並列(左右同一方向に且つ同時に)駆動されているため左右の視野の表示光は傾斜補正用液晶セル42を透過後も互いに直交状態は維持されている。例えば、左の視野に於いて視野開閉用液晶セル41を透過した表示光は上下方向に振幅し、傾斜補正用液晶セル42によって45°旋光された(バイアス電圧によって45°に維持されている)状態で偏光板43に向かう。偏光板43は、偏光方向が傾斜補正用液晶セル42を透過した表示光の振幅方向と平行な45°に固定されているため表示光は偏光板43を透過して視野開状態になる。一方、右の視野に於いて傾斜補正用液晶セル42を透過した表示光の振幅方向は左の視野に対し直交状態になっているために偏光方向が左の偏光板43と平行状態に配設されている右の偏光板43に対して直交状態になるために偏光板43を透過できず視野閉状態になる。
【0044】
以上のように本発明の図3に図示の立体映像観賞用メガネ30は、図1に図示の立体テレビ10の立体映像の表示光に対してシャッター作用を果たす。しかし、定常光(周囲の環境光)は非偏光であり、進行方向に対し垂直を為すあらゆる方向に振幅しているため視野開閉用液晶セル31,31及び傾斜補正用液晶セル32,32のどちらにも影響されない。 その為、シャッター作用による光量低下がない(従来の液晶シャッターメガネは環境光にもシャッター作用があり左右交互に開閉させれば左右夫々の視野の光量は1/2以下になる)。また、周囲の環境光にシャッター作用が無いことは照明光との干渉によるフリッカを生じ無いという効果もある。その上、偏光板を一枚しか使わないため立体TVのみならず周囲の環境も含めた全視野が明るく見える。従って、作業を伴う立体視において極めて有利である。
【0045】
なお、振幅方向が水平方向の立体映像表示光が視野開閉用液晶セル31,31を透過した場合、左右の視野において透過光の振幅方向は水平方向か又は上下方向の何れかの方向になる。即ち、視野は、開か或いは閉の二値になる。二値以外の中間値は視野が暗くなるか又はクロストークが発生するので好ましくない。よって視野開閉用液晶は応答速度の速いことが必要で、このような用途にはΠ型(OCB)液晶、または強誘電性液晶(SSFLCD,PSS−LCD)等が適している。
【0046】
上述の説明は、メガネが水平に置かれている場合であって、メガネを傾けた状態に於いて偏光板33,33もメガネと一緒に傾いて前記45°とは異なる傾斜角度になるために視野閉時の直交状態が崩れ、このままではクロストークが発生することになる。そこでメガネが傾いた場合には前記段落〔0040〕〜〔0044〕項に説明のとおり、メガネに載置した傾斜角センサによって傾き角を検出し傾き補正用制御電圧をバイアス電圧に加減して視野閉時に偏光板33,33に向かう表示光の振幅方向を偏光板33,33の偏光方向に対して常に直交状態になるように補正することによって視野閉時の遮光状態は常に最大に維持される。
【0047】
なお、メガネの傾斜補正は傾斜角を検出して傾斜補正用液晶セル32,32による旋光状態を調整して補正を行っているが、傾斜角検出用液晶セル34に検査用電圧を印加する(コントローラC2による)のは秒間数回程度の頻度で行えばよい。これは、人が頭を傾ける場合、然程速い速度で頭を振らないからである。しかし、傾斜角検出は間欠的に行っているために傾斜角検出用液晶セル34に検査用電圧が印加されていない期間であっても傾斜補正用液晶セル32,32の補正状態は、ある一定の状態にホールドしておかなければならない。そして、傾斜角検出時に更新された補正状態を、その次の傾斜角検出時までホールドし、この作動状態を常に繰り返し続行することで立体映像観賞用メガネがどの方向に傾いた場合であっても視覚的傾斜状態は常に水平状態に維持されクロストークの発生は防止される。
【0048】
本発明の図3にて説明の実施例に於いて視野開閉用液晶セル31,31の後ろ側に傾斜補正用液晶セル32,32を配設しているが、どちらの液晶セルを前後に配設しても差し支えない。
【0049】
また、傾斜補正用液晶セル32,32には、速い応答速度は要求されない。 それは、前述したように、人が頭を傾けるときの速度は液晶の応答速度に比べれば非常に遅いからである。従って従来のTNモード液晶で十分である。また、TNモード液晶の作動範囲(旋光の)は90°であるため、頭を右に傾けた場合と、左に傾けた場合との中間位置を水平位置にすれば、傾斜補正用液晶セル32はメガネを水平にした状態で中間値の45°の旋光状態になるように電圧を印加(バイアス電圧)すればよい。
【0050】
なお、傾斜角検出用液晶セル34と傾斜補正用液晶セル32,32とで印加電圧と旋光状態の特性が比例しない場合があるが、その場合、コントローラC2内のパラメータによって補正値を加減したプログラムによって旋光角を正確に制御できる。
【0051】
図5は立体映像観賞用メガネの他の実施形態で、図5に図示の立体映像観賞用メガネ50のフレーム上には傾斜角検出用液晶セル54、赤外線用偏光フィルタ55、赤外線センサ56によって構成される傾斜角検出器が載置され、該傾斜角検出器による検出データと同期信号受信器57による同期信号データ(傾斜角検出方法及び同期信号受信の方法自体は前記請求項2によるものと同一に構成されている)とをコントローラCによって演算し、視野開閉用兼傾斜補正用液晶セル51,51を同期駆動し、立体映像表示装置10の表示光に対し視野を交互に開閉して立体視するとともに視野閉時には視野開閉用兼傾斜補正用液晶セル51,51を透過した立体映像表示装置の表示光が偏光板53,53の偏光方向に対し常に直交状態になるように制御することによって視野閉時の遮光状態が常に最大となるようにしてクロストークの発生を防止するように構成したものである。
【0052】
上記構成の立体映像観賞用メガネの視野開閉用兼傾斜補正用液晶セル51,51の材料として高速応答性は求められるがSSFLCDは使用できない。それは、SSFLCDは作用が急峻で中間値を表示できない(傾斜補正ができない)からである。なお、この請求項3の構成による立体映像観賞用メガネは前記請求項2記載のものに比して部品点数が少なくできるものの傾き補正範囲は多少狭くなる。
【0053】
前述の本発明の図3の傾斜補正用液晶セル32,32及び図5の液晶セル51,51に補正用電圧を印加するために必要な傾斜角検出器として、重力センサ(振り子等の角度を検出し最終的に電気的出力に変換する方式や、液面を使用して液面の変化を最終的に電気的出力に変換する方式)やジャイロセンサ(例えば圧電ジャイロ等)を利用できる。これらのセンサは単独でメガネの傾き角度を検出できるので、傾き補正用の基準となる偏光赤外線は不要である。 従って、その場合には図1に図示の立体テレビ10の赤外線用偏光フィルタ13も不要となる。
【0054】
図6は、本発明の立体映像観賞用メガネの他の実施形態で、メガネの左右の視野に偏光板63を並置している。 偏光板63の前面には互いにネジレ方向が反対の左傾斜補正用液晶セル62及び右傾斜補正用液晶セル68を重ねて設置している。更にその前面に視野開閉用液晶セル61を設置している。図1の立体テレビ10の偏光赤外線同期信号放射器12から放射された赤外線同期信号を同期信号受信器67によって受信し、コントローラC1によって同期信号を制御電圧に変換して前記視野開閉用液晶セル61,61に印加することによって左右の視野を開閉する。この場合の左右の映像表示光の状態は前記図4よる説明の視野開閉用液晶セル41,41を透過した場合と等しい状態である。この状態において左右の映像表示光は常に互いの振幅方向が直交状態になっている。その左右互いに直交状態に振幅している偏光の表示光が左傾斜補正用液晶セル62,62及び右傾斜補正用液晶セル68,68を透過するが、該左傾斜補正用液晶セル62,62及び右傾斜補正用液晶セル68,68に電圧を無印加の場合、表示光は左傾斜補正用液晶セル62,62によって一旦旋光されるがネジレ方向が反対の右傾斜補正用液晶セル68,68によって戻されるため、左傾斜補正用液晶セル62,62及び右傾斜補正用液晶セル68,68は設置されていない状態と同等になり、偏光板63,63によって検光され立体テレビ10のディスプレイ14に時分割表示される左右用の映像が分離される。
【0055】
上述の状態に於いて、もし、メガネを傾けた場合、視野閉時の表示光の振幅方向と偏光板63,63の偏光方向の直交状態が崩れクロストークが発生する恐れがある。このような場合、例えば、左傾斜補正用液晶セル62,62及び右傾斜補正用液晶セル68,68にTNモード液晶を使用し、メガネを左に傾けた場合の補正を左傾斜補正用液晶セル62,62で行い、メガネを右に傾けた場合を右傾斜補正用液晶セル68,68で行うことによって左右夫々の方向に90°計180°の傾き補正ができる。なお、この場合、左傾斜補正用液晶セル62,62及び右傾斜補正用液晶セル68,68にバイアスを印加することは不要となる。また、このように二枚のTNモード液晶を重ねて使用する場合に替えてSTNモード液晶を使用すれば一枚の液晶セルで済むが、メガネの姿勢が水平状態に於いてバイアスを印加する必要とSTNモード液晶の特徴である色変位の問題及び傾きが急峻で微細な調整が難しい点とを考慮すればTNモード液晶を二枚重ねて利用すべきである。
【0056】
上記の左右計180°の傾斜補正を行うには、180°の傾斜角検出が必要で、図6の傾射角検出器として図示の斜角検出用第一液晶セル64及び傾斜角検出用第二液晶セル69も、一枚のSTNモード液晶にすれば180°旋光が可能であり、傾斜角検出用であれば色変位の問題は不問であるが、STNモード液晶は傾きが急峻のため微細な調整が難しいため不向きである。そこで、図示の傾斜角検出用第一液晶セル64及び傾斜角検出用第二液晶セル69を図示の状態に重ねるとともに傾斜角検出用第一液晶セル64と傾斜角検出用第二液晶セル69の電極を直列状態又は並列状態に結線してコントローラC2によって電圧を印加する。印加電圧を次第に上昇させることによって二枚に重ねた傾斜角検出用第一液晶セル64及び傾斜角検出用第二液晶セル69を透過する偏光赤外線は0〜180°まで旋光調整される。よって、傾斜角検出用第一液晶セル64と傾斜角検出用第二液晶セル69とを直列又は並列に結線して電圧を印加し、図示の赤外線センサ66の出力が急激に低下して無出力状態になった時点の電圧サンプリングすることによって傾斜角を検出して、前記図3の構成による立体映像観賞用メガネの傾斜角検出方法と同等な作用で左右90°計180°の傾斜角を検出できる。当然ながら、傾斜角検出用第一液晶セル64と傾斜角検出用第二液晶セル69を直列に結線した場合の印加電圧は並列に結線した場合の2倍の値になる(旋光作用が同等の場合に於いて)。また、傾斜角検出用第一液晶セル64又は傾斜角検出用第二液晶セル69の何れかの片方に電圧を印加して、その印加電圧が規定の最大値に達した状態(超えた)とき、もう一方の傾斜角検出用液晶セルに電圧が印加されるように順次印加しても直列又は並列結線と同様の作用を為す。
【0057】
なお、メガネの視野に設置する左傾斜補正用液晶セル62,62及び右傾斜補正用液晶セル68, 68は水平状態から左又は右に傾いた場合に於いて、左傾き用又は右傾き用として別々に動作するように設定されているためバイアスを掛ける必要はない。
【0058】
図7は本出願人が先に出願した特願2009−274002(立体映像観賞用メガネ)に記載した内容であり、図7(a)のメガネの左右の視野には立て(上下)方向の偏光板72が設置されている。 その前面には液晶セル71,71が取り付けてある。図7(b)は立体テレビジョンに対する表示映像と同期してメガネの視野を開閉するための同期信号受信器73の詳細図であり、傾斜角を検出する一方法である。以下にその作用を説明する。 図1の立体映像表示装置10に付設した赤外線同期信号放射器12の放射面の赤外線用偏光フィルタ13によって同期用赤外線は偏光赤外線になっている。同期信号受信器73の赤外線用偏光フィルタ74及び74の偏光方向はメガネが水平に置かれている場合、図7(a)に図示の如く左右対称に傾く状態で配置されている。この場合、赤外線センサ75と75の出力は等しくなる。この状態からメガネが左右何れかの方向に傾いた場合に赤外線センサ75と75との出力に差が生じ、両者の出力差と傾きの関係を予め調べておくことによって傾斜角度が検出できる。
【0059】
図8は、立体映像観賞用メガネに補助的に付設する視度補正レンズ及び取り付け部の説明図である。人は個々によって、夫々視力(視度)が異なっている。通常の生活においても視度補正用メガネを常用する人も多い。また、見る対象物においても、例えばパソコンのような小画面を近くで視る場合と、比較的大きなテレビジョンを、やや遠い距離で視る場合とがあり、対称物の距離に応じてメガネを替える必要も生ずる。特に、老眼鏡を使う人は見る対象物の距離によって補正レンズのジオプターを変える(普段使うメガネを交換する)必要がある。よって、立体映像観賞用メガネ、即ち、視野分離用メガネに於いても、人個々によって、視度補正メガネを使用する必要があるが、実際の状況は、普段使用しているメガネの上に立体映像観賞用メガネを被せて使用しているのが現状である。しかし、メガネを重ねて使用するのは不安定であり、また、煩わしいため個々の人々に合わせた視度補正レンズを組み込んだ個人用の立体映像観賞用メガネを用意することも考えられるが、個々の人々に合わせて視度補正レンズを固定した場合の問題は、個人用の立体映像観賞用メガネを他人用に転用できない点にある(視度が合わない)。また、個人使用においても観る対称物(TVかPCかの)によって立体映像観賞用メガネを変えなければならないという問題もある。
【0060】
上記問題を解決する最も良い方法は、立体映像観賞用メガネの前面又は後面にレンズホルダ用スロットを設け必要に応じて視度補正レンズを適宜挿入することである。図8は立体映像観賞用メガネの前面に視度補正レンズを保持するためのホルダ(スロット)でメガネフレームと一体に成型(図示は本体部分は省略している)されていて、図示のホルダ部80には視度補正レンズ81,81を挿入するスロット84が設けられている。スロット84に挿入された視度補正レンズ81,81はリーフスプリング82によってスロット84に押圧され、同時に一度挿入された視度補正レンズ81,81はリーフスプリング82の形状とスプリング効果によって、メガネを逆さまにした場合であっても容易に脱落しない構造になっている。
【0061】
また、視度補正レンズ81は左右端が円弧形に形成されている。この円弧形状はスロット84への挿入を容易にしている。更に上下端を直線状に形成することによって、視度補正レンズ81,81の回転を防止している(機能的には下端のみで良い)。この回転防止作用は視度補正レンズに乱視用を必要とする場合に非常に効果的である。何故ならば、乱視補正は特定の方向(角度)に補正が行われるため視度補正レンズを回転方向に特定の位置で固定する必要からである。図示のツマミ83は、例えば、アルミニュームを折り畳んで挟むか、又は接着した構造であって、スロット84への着脱時に指との摩擦力を増強することと、レンズの汚染防止のみならず、このツマミ83部にマーキングすることによってレンズを識別することができる。
【0062】
また、本発明の立体映像観賞用メガネは、定常光には反応しないので立体映像を観察しつつ行う作業において作業環境視野が明るく見えるためモニタを見る以外の作業時にもメガネを外して見る必要がない。この構成の立体映像観賞用メガネの作用効果は絶大である。
【0063】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明による立体映像観賞用メガネは特にLCD製のテレビジョン又はパーソナルコンピュータに時分割表示する立体映像の左右の視野を分離視して立体視するための視野分離用めがねであって、一般的な立体映像観賞から、各種のシュミレイション、教育訓練、検査、医療、宣伝等の立体映像を観賞する用途において今後不可欠である。
【符号の説明】
【0065】
10 立体映像表示装置
11 立体映像表示装置本体
12 偏光赤外線同期信号放射器
13 赤外線用偏光フィルタ
14 ディスプレイ
20 立体映像観賞用メガネ
21,21 視野開閉用液晶セル
22, 22 傾斜補正用液晶セル
23,23 偏光板
24 傾斜角検出用液晶セル
25 赤外線用偏光フィルタ
26 赤外線センサ
27 同期信号受信器
C1 視野開閉用コントローラ
C2 傾斜補正用コントローラ
30 立体映像観賞用メガネ
31,31 視野開閉用液晶セル
32,32 傾斜補正用液晶セル
33,33 偏光板
34 傾斜角検出用液晶セル
35 赤外線用偏光フィルタ
36 赤外線センサ
37 同期信号受信機
41,41 視野開閉用液晶セル
42,42 傾斜補正用液晶セル
43,43 偏光板
50 立体映像観賞用メガネ
C 視野開閉及び傾斜補正用コントローラ
51,51 視野開閉用兼傾斜補正用液晶セル
53,53 偏光板
54 傾斜角検出用液晶セル
55 赤外線用偏光板
56 赤外線センサ
57 同期信号受信器
60 立体映像観賞用メガネ
61,61 視野開閉用液晶セル
62,62 左傾斜補正用液晶セル
63,63 偏光板
64 傾斜角検出用第一液晶セル
65 赤外線用偏光フィルタ
66 赤外線センサ
67 同期信号受信器
68,68 右傾斜補正用液晶セル
69 傾斜角検出用第二液晶セル
71,71 視野開閉用兼傾斜補正用液晶セル
72,72 偏光板
73 赤外線同期信号受信器
74R,74 赤外線用偏光板
75,75 赤外線センサ
80 レンズホルダ
81,81 視度補正レンズ
82 リーフスプリング
83 ツマミ
84 スロット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右用の映像を同一方向の偏光で時分割によって交互に表示する立体映像表示装置であって視野開閉用の同期信号用赤外線放射器を備え、更に立体映像観賞用メガネの傾斜補正用の基準として視野開閉用赤外線同期信号放射器に赤外線偏光フィルタを付設するか、又は傾斜補正用の偏光赤外線放射器を別に設置して、傾斜補正用の基準とする偏光赤外線を放射するように構成した立体映像表示装置。
【請求項2】
立体映像の左右用の映像を振幅方向が同一方向の直線偏光で時分割によって交互に表示する方式の立体映像表示装置による立体映像を観賞するための立体映像観賞用メガネであって、メガネの左右の視野夫々に同一方向の偏光板を並設し、該偏光板夫々の前面に視野開閉用液晶セルと、メガネの傾きを補正するための傾斜補正用液晶セルとを重ねて設置して、立体映像表示装置に付設した赤外線同期信号放射器から放射される同期信号をメガネフレーム上に載置した赤外線同期信号受信器によって受信して視野開閉用液晶セルを同期駆動し、立体映像に対して左右の視野を交互に開閉して分離視するとともに、メガネフレーム上に載置した傾斜角検出器の検出データによって前記メガネの左右の視野上に設置した傾斜補正用液晶セルを駆動調整して観賞時にメガネを傾けた場合であっても、視野閉時の遮光状態が常に最大となるようにしてクロストークの発生を防止するように構成した立体映像観賞用メガネ。
【請求項3】
立体映像の左右用の映像を振幅方向が同一方向の直線偏光で時分割によって交互に表示する方式の立体映像表示装置による立体映像を観賞するための立体映像観賞用メガネであって、メガネの左右の視野夫々に同一方向の偏光板を並設し、該偏光板夫々の前面には、左右夫々に一枚の液晶セルを設置し、立体映像表示装置に付設した赤外線同期信号放射器から放射される同期信号をメガネフレーム上に載置した赤外線同期信号受信器によって受信した同期信号と、メガネフレーム上に載置した傾斜角検出器の検出データとを演算し、その演算データによる電圧をメガネ前面の液晶セルに印加して同期駆動し、立体映像に対して左右の視野を交互に開閉して分離視するとともに、観賞時にメガネを傾けた場合であっても、視野閉時の遮光状態が常に最大となるようにしてクロストークの発生を防止するように構成した立体映像観賞用メガネ。
【請求項4】
立体映像の左右用の映像を振幅方向が同一方向の直線偏光で時分割によって交互に表示する方式の立体映像表示装置による立体映像を観賞するための立体映像観賞用メガネであって、メガネの左右の視野夫々に同一方向の偏光板を並設し、該偏光板夫々の前面に視野開閉用液晶セルと、メガネが左に傾斜した場合に補正するための左傾斜補正用液晶セル及びメガネが右に傾いた場合に補正するための右傾斜補正用液晶セルとの三枚の液晶セルを重ねた左右計六枚の液晶セルを設置して、立体映像表示装置に付設した赤外線同期信号放射器から放射される同期信号をメガネフレーム上に載置した赤外線同期信号受信器によって受信して視野開閉用液晶セルを同期駆動し、立体映像に対して左右の視野を交互に開閉して分離視するとともに、メガネフレーム上に載置した傾斜角検出器の検出データによって前記メガネの左右の視野上に重ねて設置した左傾斜補正用液晶セル又は右傾斜補正用液晶セルを適宜駆動調整して観賞時にメガネを傾けた場合であっても、視野閉時の遮光状態が常に最大となるようにしてクロストークの発生を防止するように構成した立体映像観賞用メガネ。
【請求項5】
立体映像観賞用メガネの傾き補正用の傾斜角検出器であって、該傾斜角検出器は傾斜角検出用液晶セル・赤外線用偏光フィルタ・赤外線センサによって構成されている。その作用は、傾斜角検出用液晶セルに電圧を印加することによって、立体映像表示装置から放射され液晶セルに入射した偏光赤外線の振幅方向を赤外線用偏光フィルタの偏光方向に対し直交状態に制御する。前記傾斜角検出用液晶セルに印加する電圧、即ち検査用電圧はメガネの傾きに応じて変化する。印加電圧を次第に上昇させ、偏光赤外線の振幅方向が赤外線用偏光フィルタの偏光方向と直交状態になった時点に於いて赤外線センサの出力が急速に低下して無出力状態になる。その時点の液晶セルへの印加電圧をサンプリングすることによって傾斜角を検出するように構成した傾斜角検出器。
【請求項6】
立体映像観賞用メガネの傾き補正用の傾斜角検出器であって、該傾斜角検出器は作動範囲を拡張するべく傾斜角検出用第一液晶セルと傾斜角検出用第二液晶セルを重ねて設置していて、その後側には赤外線用偏光フィルタ・赤外線センサの順で配列されている。前記傾斜角検出用第一液晶セルの電極と傾斜角検出用第二液晶セルの電極とを直列又は並列に結線して電圧を印加するか、又は傾斜角検出用第一液晶セルの電極と斜角検出用第二液晶セルの電極に順次電圧を印加することによって立体映像表示装置の偏光赤外線同期信号放射器から放射された偏光赤外線は傾斜角検出用第一液晶セル及び傾斜角検出用第二液晶セルによって旋光調整されて透過する。印加電圧を次第に上昇させ、偏光赤外線の振幅方向が赤外線用偏光フィルタの偏光方向と直交状態になった時点に於いて赤外線センサの出力が急速に低下して無出力状態になる。その時点の液晶セルへの印加電圧をサンプリングすることによって傾斜角を検出するように構成した傾斜角検出器。
【請求項7】
立体映像観賞用メガネの傾き補正用の傾斜角検出器であって、該傾斜角検出器は鉛直線を対称軸として偏光方向が互いに反対方向に傾斜する状態で並置した赤外線偏光板と、その直後の夫々の位置に設置した赤外線センサとによって構成され、メガネが傾いた場合には前記赤外線用偏光板の傾きの対称性が崩れることによって立体映像表示装置から放射された傾斜補正用の基準の偏光赤外線の透過量に差が生じ、その差を前記赤外線センサによって電気的出力として傾斜角を検出するように構成した傾斜角検出器。
【請求項8】
メガネの左右夫々の視野の前面又は後面に視度補正レンズホルダ用スロット及びレンズ押さえ用スプリングを設けた前記請求項2,3又は4の立体映像観賞用メガネ。
【請求項9】
立体映像観賞用メガネの視度補正レンズホルダ用スロットに取り付ける視度補正用レンズであって、正面から観た両端部を円弧形状に形成し、且つ下端部を両端部の円弧よりも大きい曲率又は直線形上の視度補正用レンズを着脱可能構造とした前記請求項2,3または4の立体映像観賞用メガネ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−68312(P2012−68312A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211006(P2010−211006)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【特許番号】特許第4804586号(P4804586)
【特許公報発行日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(591274510)
【Fターム(参考)】