説明

立体画像撮像装置、立体画像表示装置、および立体画像撮像表示装置

【課題】インテグラル・フォトグラフィ方式において、高精細な立体画像を再現する。
【解決手段】被写体Oから到来する光束を2系統に分離するビームスプリッタ120と、分離した一方の光束を、視差画像群の光束に変換する撮像系レンズアレイ130と、視差画像群の光束を撮像して視差画像群を得る視差画像群撮像素子140と、分離した他方の光束を撮像して平面画像を得る平面画像撮像素子150と、視差画像群を表示する視差画像群表示素子240と、視差画像群の光束を立体像の光束に変換する表示系レンズアレイ250と、平面画像を表示する平面画像表示素子260と、立体像の光束と平面画像の光束とをあわせて出射するビームミキサ270とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像撮像装置、立体画像表示装置、および立体画像撮像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の要素レンズを配列し構成したレンズアレイを撮影装置と表示装置との両方に用いて立体画像を撮影および再生するインテグラル・フォトグラフィ(Integral Photography)方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。このインテグラル・フォトグラフィ方式では、撮影時においては、撮影装置が撮影系レンズアレイを介してとらえた被写体像を撮像する。撮影系レンズアレイを通して得られる撮像画像には、互いに視差がある多数の要素画像が含まれる。要素画像とは、要素レンズ単体を通して得られる画像である。そして、表示時においては、表示面側に表示系レンズアレイを配置した表示装置が、上記の撮像画像を表示する。これにより、観察者は、表示系レンズアレイを通して結像される多数の要素画像による被写体像を立体的に観察することができる。
【0003】
インテグラル・フォトグラフィ方式では、撮影系レンズアレイから近距離にある被写体についての像の解像度は、撮影系レンズアレイの要素レンズの数(密度)に比例して変化する。すなわち、撮影系レンズアレイから近距離にある被写体についての像の解像度を高くするためには、要素レンズの配置密度が高い撮影系レンズアレイを用いる必要がある。
また、撮影系レンズアレイから遠距離にある被写体についての像の解像度は、各要素画像を構成する画素の画素数(要素画像における画素密度)に依存する。すなわち、撮影系レンズアレイから遠距離にある被写体についての像の解像度を高くするためには、各要素画像の画素密度が高くなるように撮像可能な高精細の撮像素子を用いる必要がある。
【0004】
また、表示系レンズアレイから近距離の位置に結像する像の解像度は、表示系レンズアレイの要素レンズの数に比例して変化する。すなわち、表示系レンズアレイから近距離の位置に結像する像の解像度を高くするためには、要素レンズの配置密度が高い表示系レンズアレイを用いる必要がある。
また、表示系レンズアレイから遠距離の位置に結像する像の解像度は、各要素画像を構成する画素の画素数に依存する。すなわち、表示系レンズアレイから遠距離の位置に結像する像の解像度を高くするためには、各要素画像の画素密度が高くなるように表示可能な高精細の表示素子を用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−228974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、インテグラル・フォトグラフィ方式において、撮像解像度および表示解像度を高めようとすると、要素レンズの配置密度が高い撮影系レンズアレイおよび表示系レンズアレイを用い、且つ要素画像の解像度を高くすることが必要となる。しかしながら、その場合に、要求する撮像解像度および表示解像度に見合う画素密度の要素画像を得ることのできる撮像素子および表示素子は現状ではなく、従来のインテグラル・フォトグラフィ方式では、高精細な立体画像を再現することができていない。
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、インテグラル・フォトグラフィ方式において、高精細な立体画像を撮影および表示することができる、立体画像撮像装置、立体画像表示装置、および立体画像撮像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である立体画像撮像装置は、被写体から到来する光束を2系統に分離するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタが分離した一方の光束を、互いに視差がある視差画像群の光束に変換するレンズアレイと、前記レンズアレイを通して得られる前記視差画像群の光束を撮像して視差画像群を得る視差画像群撮像素子と、前記ビームスプリッタが分離した他方の光束を撮像して平面画像を得る平面画像撮像素子と、を備えることを特徴とする。
[2]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である立体画像表示装置は、それぞれ同一被写体の画像データであり、互いに視差がある視差画像群データと二次元の平面像である平面画像データとを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記視差画像群データを表示する視差画像群表示素子と、前記視差画像群表示素子が表示した視差画像群の光束を、立体像の光束に変換するレンズアレイと、前記取得部が取得した前記平面画像データを表示する平面画像表示素子と、前記レンズアレイを通して得られる前記立体像の光束と前記平面画像表示素子が表示した平面画像の光束とをあわせて出射するビームミキサと、を備えることを特徴とする。
[3]上記[2]記載の立体画像表示装置において、前記視差画像群データのレベル値と前記平面画像データのレベル値との重みを変更する信号レベル変更部をさらに備えることを特徴する。
[4]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である立体画像撮像表示装置は、被写体から到来する光束を2系統に分離するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタが分離した一方の光束を、互いに視差がある視差画像群の光束に変換する撮像系レンズアレイと、前記撮像系レンズアレイを通して得られる前記視差画像群の光束を撮像して視差画像群を得る視差画像群撮像素子と、前記ビームスプリッタが分離した他方の光束を撮像して平面画像を得る平面画像撮像素子と、前記視差画像群撮像素子が得た前記視差画像群を表示する視差画像群表示素子と、前記視差画像群表示素子が表示した視差画像群の光束を、立体像の光束に変換する表示系レンズアレイと、前記平面画像撮像素子が得た前記平面画像を表示する平面画像表示素子と、前記表示系レンズアレイを通して得られる前記立体像の光束と前記平面画像表示素子が表示した平面画像の光束とをあわせて出射するビームミキサと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
インテグラル・フォトグラフィ方式において、高精細な立体画像を撮影および表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態である立体画像撮像表示装置の機能構成を表すブロック図である。
【図2】撮像系レンズアレイおよび表示系レンズアレイを光束の入射側から見たときの要素レンズの配列を模式的に表した図である。
【図3】屈折率分布レンズによる要素レンズの側面図であり、要素レンズ中の光路を模式的に表した図である。
【図4】本発明の第2実施形態である立体画像撮像表示装置の機能構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1実施形態である立体画像撮像表示装置の機能構成を表すブロック図である。同図に示すように、立体画像撮像表示装置1は、立体画像撮像装置10と立体画像表示装置20とを含んで構成される。
【0011】
立体画像撮像装置10は、被写体Oから到来する光束を2系統(第1系統の光束および第2系統の光束)に分離し、第1系統の光束を撮像して得られるインテグラル・フォトグラフィ方式による視差画像群データを記録するとともに、第2系統の光束を撮像して得られる平面画像データを記録する装置である。視差画像群データは、互いに視差がある視差画像群を有するフレーム画像データである。平面画像データは、単一の二次元的な画像(平面画像)を有するフレーム画像データである。
【0012】
立体画像撮像装置10は、例えば、動画像を撮像して記録するデジタルビデオカメラである。立体画像撮像装置10は、例えば60フレーム/秒または30フレーム/秒の所望のフレームレートで視差画像群および平面画像をそれぞれ撮像し、一連の動画像ごとに、一群の視差画像群データおよび一群の平面画像データを記録する。
ここで、一群の視差画像群データは、複数の時系列の視差画像群データのことであり、一群の平面画像データは、複数の時系列の平面画像データのことである。
【0013】
なお、立体画像撮像装置10は、例えば、静止画像を撮像して記録するデジタルスチルカメラとして機能することもできる。この場合、立体画像撮像装置10は、一静止画像ごとに、一対の視差画像群データおよび平面画像データを記録する。
本実施形態では、立体画像撮像装置10が動画像を撮像して記録する例について具体的に説明する。
【0014】
立体画像表示装置20は、立体画像撮像装置10に記録された視差画像群データと平面画像データとをそれぞれ読み込み、視差画像群データを視差画像群の光束に変換するとともに、平面画像データを平面画像の光束に変換し、これら視差画像群の光束と平面画像の光束とを1系統の光束にあわせて出力する装置である。立体画像表示装置20が出力する光束によって再現される再現像Iは、インテグラル・フォトグラフィ方式による立体像と二次元の平面像との合成像であり、観察者には立体像として知覚される。知覚とは、観察者の眼球を通して網膜に結像した像が電気的信号に変換され、その信号が視神経を通して脳に到達し、脳の作用により立体像を認識することである。
【0015】
立体画像表示装置20は、例えば、立体動画像を再生して表示するディスプレイ装置である。立体画像表示装置20は、立体画像撮像装置10から一連の動画像ごとに一群の視差画像群データおよび一群の平面画像データを取得し、撮像の際のフレームレートと同一のフレームレートで再生して表示する。
ここでも、一群の視差画像群データは、複数の時系列の視差画像群データのことであり、一群の平面画像データは、複数の時系列の平面画像データのことである。
【0016】
なお、立体画像表示装置20は、例えば、立体静止画像を表示するディスプレイ装置として機能することもできる。この場合、立体画像表示装置20は、立体画像撮像装置10から一静止画像ごとに一対の視差画像群データおよび平面画像データを取得して表示する。
本実施形態では、立体画像表示装置20が立体動画像を再生して表示する例について具体的に説明する。
【0017】
次に、立体画像撮像装置10の詳細な機能構成について説明する。
立体画像撮像装置10は、撮像レンズ110と、ビームスプリッタ120と、撮像系レンズアレイ130と、視差画像群撮像素子140と、平面画像撮像素子150と、視差画像群記録制御部160と、平面画像記録制御部170と、記録部180とを備える。
ただし、図1において、撮像レンズ110とビームスプリッタ120と撮像系レンズアレイ130と視差画像群撮像素子140と平面画像撮像素子150とは、主に光路を説明するために模式的に配置して表したものである。
【0018】
撮像レンズ110は、被写体Oから到来する光束を集光するレンズ光学系である。撮像レンズ110は、対物レンズや集束レンズにより構成される。撮像レンズ110が集光した光束は、ビームスプリッタ120に入射する。
【0019】
ビームスプリッタ120は、撮像レンズ110からの入射光束を2系統(第1系統の光束および第2系統の光束)に分離して出射する光束分離器である。本実施形態におけるビームスプリッタ120は、二つの直角プリズムを貼り合わせてキューブ状に形成したキューブビームスプリッタである。キューブビームスプリッタを構成する二つの直角プリズムの接合面121には、例えば誘電体多層膜が蒸着されている。ビームスプリッタ120は、入射光束の一部を、接合面121を通して第1系統の光束として出射するとともに、入射光束の他の一部を、接合面121で反射させて第2系統の光束として出射する。
【0020】
図1において、撮像レンズ110を通からビームスプリッタ120に入力されている一点鎖線の矢印は、撮像レンズ110の光軸上の入射光線を表している。ビームスプリッタ120の接合面121を通過して直進している破線の矢印は、前記光軸上の入射光線のうちの第1系統の光線(第1系統の光束の光線)を表している。また、ビームスプリッタ120の接合面121で進行方向が変わり、前記光軸上の入射光線に対して直角に進行している実線の矢印は、前記光軸上の入射光線のうちの第2系統の光線(第2系統の光束の光線)を表している。
【0021】
なお、ビームスプリッタ120には、ハーフミラーや偏光ビームスプリッタを適用することもできる。
【0022】
撮像系レンズアレイ130は、多数の要素レンズを、各要素レンズの光軸が平行となるように二次元状に配列して形成したレンズ板である。撮像系レンズアレイ130は、ビームスプリッタ120が出射する第1系統の光束を各要素レンズで集光して視差画像群撮像素子140に出射する。
【0023】
視差画像群撮像素子140は、撮像面を有し、この撮像面に結像する光束を撮像して画像データに変換する光電変換素子である。具体的には、視差画像群撮像素子140は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の固体撮像素子である。視差画像群撮像素子140は、撮像系レンズアレイ130の各要素レンズで集光された光束が撮像面に結像する位置に設けられる。視差画像群撮像素子140の撮像面に結像する像は、視差画像群である。視差画像群撮像素子140は、撮像系レンズアレイ130を通して得られる複数の光束を撮像し視差画像群データを出力する。
【0024】
平面画像撮像素子150は、撮像面を有し、この撮像面に結像する光束を撮像して画像データに変換する光電変換素子である。具体的には、平面画像撮像素子150は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の固体撮像素子である。平面画像撮像素子150は、ビームスプリッタ120が出射する第2系統の光束が撮像面に結像する位置に設けられる。平面画像撮像素子150の撮像面に結像する像は、平面画像である。平面画像撮像素子150は、第2系統の光束を撮像して平面画像データを出力する。
【0025】
視差画像群記録制御部160は、視差画像群撮像素子140が出力する視差画像群データを取り込んで記録部180に記録させる。
平面画像記録制御部170は、平面画像撮像素子150が出力する平面画像データを取り込んで記録部180に記録させる。
視差画像群記録制御部160および平面画像記録制御部170は、一連の動画像ごとに、一群の視差画像群データおよび一群の平面画像データを記録部180に記録させる。このとき、視差画像群記録制御部160は、その動画像に含まれる視差画像群データをタイムスタンプ付の一群のフレーム画像データとして記録部180に記録し、平面画像記録制御部170は、その動画像に含まれる平面画像データをタイムスタンプ付の一群のフレーム画像データとして記録部180に記録する。これら一対のフレーム画像データはタイムスタンプによって互いに対応付けられているが、タイムスタンプ以外の手段でこれらを互いに対応付けるようにしてもよい。
【0026】
記録部180は、上記のとおり視差画像群データおよび平面画像データを記録する、磁気ハードディスク装置やメモリカード等の記録装置である。
【0027】
立体画像撮像装置10において、光束を分離する接合面121上の一点から撮像系レンズアレイ130の中心面までの距離Lと、上記一点から平面画像撮像素子150の撮像面までの距離Lとの比率をA=L/Lとすると、Aが“1”となるように立体画像撮像装置10は構成される。
【0028】
次に、立体画像表示装置20の詳細な機能構成について説明する。
立体画像表示装置20は、取得部210と、視差画像群再生部220と、平面画像再生部230と、視差画像群表示素子240と、表示系レンズアレイ250と、平面画像表示素子260と、ビームミキサ270とを備える。
ただし、図1において、視差画像群表示素子240と表示系レンズアレイ250と平面画像表示素子260とビームミキサ270とは、主に光路を説明するために模式的に配置して表したものである。
【0029】
取得部210は、立体画像撮像装置10の記録部180から一連の動画像における一群の視差画像群データおよび一群の平面画像データを読み込んで取得し、これらのうち、一群の視差画像群データを視差画像群再生部220に供給するとともに、一群の平面画像データを平面画像再生部230に供給する。
【0030】
なお、取得部210は、記録部180から一対の視差画像群データおよび平面画像データを順次取り込んで一時記憶(バッファリング)しながら、これら一時記憶された一対の視差画像群データおよび平面画像データをFIFO(First−In First−Out)形式で読み出して視差画像群再生部220と平面画像再生部230とのそれぞれに供給するようにしてもよい。言い換えると、取得部210が記録部180から読み込む速度と、取得部210が視差画像群再生部220および平面画像再生部230に供給する速度との差を、取得部210のバッファリングによって吸収するようにしてもよい。
【0031】
視差画像群再生部220は、取得部210から供給される一群の視差画像群データを、視差画像群データごとに所定の周期的なタイミングで視差画像群表示素子240に供給する。この所定の周期的なタイミングは、立体画像撮像装置10が撮像した際のフレームレートと同一のフレームレートに基づくタイミング(例えば、撮像時のフレームレートが60フレーム/秒である場合は、1/60秒ごと)である。
平面画像再生部230は、取得部210から供給される一群の平面画像データを、平面画像データごとに上記所定の周期的なタイミングと同一のタイミングで平面画像表示素子260に供給する。
つまり、視差画像群再生部220と平面画像再生部230とは、上記所定の周期的なタイミングで同期しながら、視差画像群再生部220が視差画像群データを視差画像群表示素子240に供給するとともに、平面画像再生部230が平面画像データを平面画像表示素子260に供給する。
【0032】
視差画像群表示素子240は、表示面を有し、この表示面に視差画像群再生部220から供給される視差画像群データの視差画像群を表示する。具体的には、視差画像群表示素子240は、例えば液晶表示素子である。視差画像群表示素子240としては、反射型表示素子や透過型表示素子を適用することができる。
【0033】
表示系レンズアレイ250は、多数の要素レンズを、各要素レンズの光軸が平行となるように二次元状に配列して形成したレンズ板である。表示系レンズアレイ250は、視差画像群表示素子240が表示する視差画像群の光束を各要素レンズで集光してビームミキサ270に出射する。
【0034】
平面画像表示素子260は、表示面を有し、この表示面に平面画像再生部230から供給される平面画像データの平面画像を表示する。具体的には、平面画像表示素子260は、例えば液晶表示素子である。平面画像表示素子260としては、反射型表示素子や透過型表示素子を適用することができる。
【0035】
ビームミキサ270は、表示系レンズアレイ250からの要素画像群の入射光束と、平面画像表示素子260の表示による平面画像の入射光束とを1系統の光束にあわせて出射する光束混合器である。本実施形態におけるビームミキサ270は、二つの直角プリズムを貼り合わせてキューブ状に形成したキューブビームミキサである。キューブビームミキサを構成する二つの直角プリズムの接合面271には、例えば誘電体多層膜が蒸着されている。ビームミキサ270は、表示系レンズアレイ250からの要素画像群の入射光束のうち接合面271を通過する第1光束と、平面画像表示素子260の表示による平面画像の入射光束のうち接合面271で反射する第2光束とを合成して出射する。
【0036】
図1において、表示系レンズアレイ250からビームミキサ270に入力されている波線の矢印は、表示系レンズアレイ250の中心軸上の入射光線を表している。平面画像表示素子260からビームミキサ270に入力されている実線の矢印は、平面画像表示素子260の表示面の中心軸上の入射光線を表している。これら破線の矢印と実線の矢印との接点から進行している一点鎖線の矢印は、第1光線(第1光束の光線)と第2光線(第2光束の光線)とをあわせた光束を表している。
【0037】
なお、ビームミキサ270には、ハーフミラーや偏光ビームスプリッタを適用することもできる。
【0038】
立体画像表示装置20において、表示系レンズアレイ250の中心面から2系統の光束を併せる接合面271上の一点までの距離Lと、上記一点から平面画像表示素子260の表示面から上記一点までの距離Lとの比率をB=L/Lとすると、Bが“1”となるように立体画像表示装置20は構成される。
【0039】
なお、上記説明においては、立体画像撮像装置10における比率Aと、立体画像表示装置20における比率Bとがともに“1”である場合について述べたが、比率Aおよび比率Bは“1”でなくてもよく、比率Aと比率Bとが一致していればよい。このように比率Aと比率Bとを同一値とすることにより、再現像Iは正しく再現される。
比率A=比率B>1である場合、要素画像群撮像素子140が撮像する各要素画像は、平面画像撮像素子150が撮像する平面画像と比べて被写体Oからの距離が相対的に長くなる。つまり、比率A=比率B>1である場合、各要素画像の撮像位置は平面画像の撮像位置と比べて被写体Oから相対的に遠くなる。すなわち、比率A=比率B>1である場合に、立体画像表示装置20が表示する再現像Iの特に表示系レンズアレイ250上に位置する像は、平面像より遠くに位置する。よって、比率A=比率B>1である場合は、観察者から見る奥行き方向における手前側の解像度が高い。
また、比率A=比率B<1である場合、要素画像群撮像素子140が撮像する各要素画像は、平面画像撮像素子150が撮像する平面画像と比べて被写体Oからの距離が相対的に短くなる。つまり、比率A=比率B<1である場合、各要素画像の撮像位置は平面画像の撮像位置と比べて被写体Oから相対的に近くなる。すなわち、比率A=比率B<1である場合に、立体画像表示装置20が表示する再現像Iの特に表示系レンズアレイ250上に位置する像は、平面像より近くに位置する。よって、比率A=比率B<1である場合は、観察者から見る奥行き方向における奥側の解像度が高い。
【0040】
次に、撮像系レンズアレイ130および表示系レンズアレイ250について説明する。撮像系レンズアレイ130および表示系レンズアレイ250は、主にデルタ配列または正方格子配列により要素レンズを配列する。
図2は、撮像系レンズアレイ130および表示系レンズアレイ250を光束の入射側から見たときの要素レンズの配列を模式的に表した図である。同図(a)はデルタ配列を表した図であり、同図(b)は正方格子配列を表した図である。同図(a)のデルタ配列の場合、要素レンズのX軸方向のピッチをRとすると、X軸に直交するY軸方向のピッチRは、(√3)×R/2である。また、同図(b)の正方格子配列の場合、要素レンズのX軸方向のピッチRとY軸方向のピッチRとは等しい。
【0041】
撮像系レンズアレイ130の要素レンズは、屈折率分布レンズ(GRIN Lens;Gradient Index Lens)を用いて構成してもよい。撮像系レンズアレイ130の要素レンズを屈折率分布レンズとすることにより、再生像である立体像の奥行きが被写体Oに対して反転する逆視現象を解消することができる。
下記の式(1)に示すように、屈折率分布レンズは、半径方向に屈折率が変化するラジアルタイプである。この屈折率分布レンズの屈折率nは、レンズの中心位置で最大となり、外側ほど減少する特性を有する。ただし、nは中心軸上の屈折率、Aは要素レンズの材料によって定まる屈折率分布定数、rは中心からの半径方向の距離である。
【0042】
【数1】

【0043】
屈折率分布レンズの光軸方向の長さは、当該屈折率分布レンズの端面に無限遠物体の正立実像を結像させることのできる長さとする。この長さについて具体的に説明する。
図3は、屈折率分布レンズによる要素レンズの側面図であり、要素レンズ中の光路を模式的に表した図である。同図に示すように、屈折率分布レンズによる要素レンズ3の光軸方向の長さLを、蛇行周期Tの4分の3倍(0.75ピッチ)とすることにより、要素レンズ3は、十分遠方に位置する被写体Oに対して、出射端面に小さな正立実像Iを得ることができる。
【0044】
よって、撮像用レンズアレイ130をラジアルタイプの屈折率分布レンズで構成する場合、撮像用レンズアレイ130の要素レンズ群の出射端面に要素画像群撮像素子140の撮像面を配置する。
なお、上記のように撮像系レンズアレイ130の直後に視差画像群撮像素子140を配置する構成においては、撮像系レンズアレイ130の隣り合う要素レンズの隙間に遮光部材を設けるのがよい。例えば、撮像系レンズアレイ130を構成する要素レンズ間に黒色の樹脂等を充填する。このように遮光部材を設けることにより、一の要素レンズを通した光束が隣り合う他の要素レンズを通した光束に漏れ入ることを防止するまたは少なくすることができる。これにより、要素画像群撮像素子140が撮像する要素画像群について黒浮き(フレア現象)による画質劣化を防止するまたは抑制することができる。
【0045】
立体画像撮像装置10は、被写体Oから到来する光束を2系統の光束に分離し、第1系統の光束をインテグラル・フォトグラフィ方式の視差画像群データとして記録するとともに、第2系統の光束を平面画像データとして記録する。すなわち、立体画像撮像装置10は、被写体Oの立体感を表す奥行情報が含まれる視差画像群データを記録するとともに、被写体Oの高精細な解像度が含まれる平面画像データを記録する。
【0046】
以上説明したように、立体画像表示装置20は、立体画像撮像装置10が記録した視差画像群データと平面画像データとを読み込み、視差画像群データから視差画像群の光束に変換するとともに、平面画像データから平面画像の光束に変換し、これら2系統の光束をあわせて出力する。すなわち、立体画像表示装置20は、インテグラル・フォトグラフィ方式の立体像と高精細な平面像とを合成した再現像Iを表示する。
立体画像表示装置20が表示する再現像Iは、奥行感があり且つ高精細な立体像である。ただし、再現像Iは立体像と平面像とが合成された像であるため、観察者が正面から再現像Iを観察した場合に得る立体感は、立体像における立体感と平面像における立体感の中間的なものとなる。また、観察者が再現像Iを観察する場合に得る高精細感は、立体像における高精細感と平面像における高精細感の中間的なものとなる。言い換えると、観察者が知覚する再現像Iは、立体感を保ちながら、従来のインテグラル・フォトグラフィ方式と比べて高精細な像とすることができる。
【0047】
[第2の実施の形態]
本発明の第2実施形態は、再現像の奥行感を調整することのできる立体画像撮像表示装置である。
図4は、本実施形態である立体画像撮像表示装置の機能構成を表すブロック図である。
なお、本実施形態において、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
同図に示すように、立体画像撮像表示装置1aは、立体画像撮像装置10と立体画像表示装置20aとを含んで構成される。
【0048】
立体画像表示装置20aは、立体画像撮像装置10に記録された視差画像群データと平面画像データとをそれぞれ読み込み、視差画像群データに第1の重み付けをして視差画像群の光束に変換するとともに、平面画像データに第2の重み付けをして平面画像の光束に変換し、これら視差画像群の光束と平面画像の光束とを1系統の光束にあわせて出力する装置である。立体画像表示装置20aが出力する光束によって再現される再現像Iは、インテグラル・フォトグラフィ方式による立体像と二次元の平面像との合成像であり、観察者には立体像として知覚される。
立体画像表示装置20aは、第1および第2の重み付けによって、再現像Iの立体感と解像度とのトレードオフを調整するものである。
【0049】
立体画像表示装置20aの機能構成について説明する。
立体画像表示装置20aは、第1実施形態における立体画像表示装置20に対して、信号レベル変更制御部310が新たに追加されるとともに、視差画像群再生部220が視差画像群再生部220aに変更され、平面画像生成部230が平面画像再生部230aに変更されたものである。
【0050】
信号レベル変更制御部310は、視差画像群データのレベル値を変化させるための変更重み係数Wと、平面画像データのレベル値を変化させるための変更重み係数Wとをそれぞれ計算し、変更重み係数Wを視差画像群再生部220aに供給するとともに、変更重み係数Wを平面画像再生部230aに供給する。
変更重み係数Wは、その値が大きいほど、視差画像群データのレベル値を大きくする係数である。変更重み係数Wは、その値が大きいほど、平面画像データのレベル値を大きくする係数である。例えば、信号レベル変更制御部310は、W=S,W=1−S,0≦S≦1を計算することにより、0≦S≦1の範囲において、Sが小さいほど変更重み係数Wが相対的に大きくなり、Sが大きいほど変更重み係数Wが相対的に大きくなる。
【0051】
信号レベル変更制御部310は、表示されるシーンに応じて変更重み係数Wおよび変更重み係数Wを変更する。例えば、信号レベル変更制御部310は、立体画像表示装置20aの外部から供給されるシーンチェンジのタイミングを示す信号にしたがって、切り替わったシーンに適した新たな変更重み係数Wおよび変更重み係数Wの供給を外部から受けて取り込み、これらの新たな変更重み係数Wおよび変更重み係数Wで現在の変更重み係数Wおよび変更重み係数Wを更新する。シーンチェンジの検出は、フレーム画像全体の輝度変化の検出やオブジェクト検出等の従来技術を用いて、外部装置によって行われる。
【0052】
視差画像群再生部220aは、信号レベル変更制御部310から供給される変更重み係数Wに基づいて、取得部210から供給される視差画像群データのレベル値を変更する。具体的には、例えば、視差画像群再生部220aは、変更重み係数Wと取得部210から供給される視差画像群データの輝度値とを掛け合わせる。そして、視差画像群再生部220aは、変更後の視差画像群データを、第1実施形態と同様に所定の周期的なタイミングで視差画像群表示素子240に供給する。
【0053】
平面画像再生部230aは、信号レベル変更制御部310から供給される変更重み係数Wに基づいて、取得部210から供給される平面画像データのレベル値を変更する。具体的には、例えば、平面画像再生部230aは、変更重み係数Wと取得部210から供給される平面画像データの輝度値とを掛け合わせる。そして、平面画像再生部230aは、変更後の平面画像データを、上記所定の周期的なタイミングと同一のタイミングで平面画像表示素子260に供給する。
【0054】
すなわち、信号レベル変更制御部310と視差画像群再生部220aと平面画像再生部230aとを併せた機能は、視差画像群データのレベル値と平面画像データのレベル値とを変更する信号レベル変更部の機能を含むものである。
【0055】
立体画像表示装置20aが表示する再現像Iは、第1実施形態と同様に奥行感があり且つ高精細な立体像である。再現像Iは立体像と平面像とが合成された像であるため、観察者が正面から観察する場合に得る立体感と解像度感とは中間的なものとなる。しかし、変更重み係数Wおよび変更重み係数Wに基づく要素画像群データと平面画像データとのレベル値の調整によって、知覚する立体感と解像度感とは変化する。
【0056】
具体的には、立体画像表示装置20aが変更重み係数Wを変更重み係数Wよりも大きくして、要素画像群データのレベル値を平面画像データのレベル値よりも大きくするにしたがって、観察者が知覚する立体感は強くなる。例えば、立体画像表示装置20aが変更重み係数Wを変更重み係数Wよりも大きくして、要素画像群データの輝度値を平面画像データの輝度値よりも大きくするにしたがって、立体像の輝度が平面像の輝度よりも高くなり、よって立体感が強くなる。
一方、立体画像表示装置20aが変更重み係数Wを変更重み係数Wよりも大きくして、平面画像データのレベル値を要素画像群データのレベル値よりも大きくするにしたがって、観察者が知覚する解像度は高くなる。例えば、立体画像表示装置20aが変更重み係数Wを変更重み係数Wよりも大きくして、平面画像データの輝度値を要素画像群データの輝度値よりも大きくするにしたがって、平面像の輝度が立体像の輝度よりも高くなり、よって解像度感が高くなる。
【0057】
以上説明したように、立体画像表示装置20aは、立体画像撮像装置10が記録した視差画像群データと平面画像データとを読み込み、視差画像群データに第1の重み付けをして視差画像群の光束に変換するとともに、平面画像データに第2の重み付けをして平面画像の光束に変換し、これら2系統の光束を合わせて出力する。立体画像表示装置20aは、表示するシーンに応じて第1および第2の重み付けを決定する。これにより、立体画像表示装置20aは、表示するシーンにしたがって、第1および第2の重み付けによって立体感と解像度とのトレードオフを任意に調整することができる。
【0058】
なお、上述した第2実施形態において、信号レベル変更制御部310は、平面画像データの画像の複雑さに応じて変更重み係数Wおよび変更重み係数Wを変更してもよい。例えば、信号レベル変更制御部310は、平面画像データを解析し、この平面画像データが精細な画像、言い換えると、平面画像内で輝度および色またはいずれかの変化が大きな画像であると判定した場合は、変更重み係数Wを変更重み係数Wよりも大きくする。これにより、立体画像表示装置20aは、平面像の輝度を立体像の輝度よりも高くすることができ、解像度感の高い再現像Iを表示することができる。
また、信号レベル変更制御部310は、要素画像群データの奥行きの度合いに応じて変更重み係数Wおよび変更重み係数Wを変更してもよい。例えば、信号レベル変更制御部310は、要素画像群データから奥行き情報を抽出し、奥行きが大きな画像、言い換えると立体感の際立つ画像であると判定した場合は、変更重み係数Wを変更重み係数Wよりも大きくする。これにより、立体画像表示装置20aは、立体像の輝度を平面像の輝度よりも高くすることができ、立体感の強い再現像Iを表示することができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はその実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1,1a 立体画像撮像表示装置
10 立体画像撮像装置
20,20a 立体画像表示装置
110 撮像レンズ
120 ビームスプリッタ
121 接合面
130 撮像系レンズアレイ
140 視差画像群撮像素子
150 平面画像撮像素子
160 視差画像群記録制御部
170 平面画像記録制御部
180 記録部
210 取得部
220,220a 視差画像群再生部
230,230a 平面画像再生部
240 視差画像群表示素子
250 表示系レンズアレイ
260 平面画像表示素子
270 ビームミキサ
271 接合面
310 信号レベル変更制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体から到来する光束を2系統に分離するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタが分離した一方の光束を、互いに視差がある視差画像群の光束に変換するレンズアレイと、
前記レンズアレイを通して得られる前記視差画像群の光束を撮像して視差画像群を得る視差画像群撮像素子と、
前記ビームスプリッタが分離した他方の光束を撮像して平面画像を得る平面画像撮像素子と、
を備えることを特徴とする立体画像撮像装置。
【請求項2】
それぞれ同一被写体の画像データであり、互いに視差がある視差画像群データと二次元の平面像である平面画像データとを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記視差画像群データを表示する視差画像群表示素子と、
前記視差画像群表示素子が表示した視差画像群の光束を、立体像の光束に変換するレンズアレイと、
前記取得部が取得した前記平面画像データを表示する平面画像表示素子と、
前記レンズアレイを通して得られる前記立体像の光束と前記平面画像表示素子が表示した平面画像の光束とをあわせて出射するビームミキサと、
を備えることを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項3】
前記視差画像群データのレベル値と前記平面画像データのレベル値との重みを変更する信号レベル変更部を
さらに備えることを特徴する請求項2記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
被写体から到来する光束を2系統に分離するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタが分離した一方の光束を、互いに視差がある視差画像群の光束に変換する撮像系レンズアレイと、
前記撮像系レンズアレイを通して得られる前記視差画像群の光束を撮像して視差画像群を得る視差画像群撮像素子と、
前記ビームスプリッタが分離した他方の光束を撮像して平面画像を得る平面画像撮像素子と、
前記視差画像群撮像素子が得た前記視差画像群を表示する視差画像群表示素子と、
前記視差画像群表示素子が表示した視差画像群の光束を、立体像の光束に変換する表示系レンズアレイと、
前記平面画像撮像素子が得た前記平面画像を表示する平面画像表示素子と、
前記表示系レンズアレイを通して得られる前記立体像の光束と前記平面画像表示素子が表示した平面画像の光束とをあわせて出射するビームミキサと、
を備えることを特徴とする立体画像撮像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−88549(P2012−88549A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235506(P2010−235506)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【Fターム(参考)】