説明

立体画像表示装置

【課題】レンズ−2次元表示装置間の光線の軌跡が長くなっても立体表示特性の劣化をなくすことのできる立体画像表示装置を提供することを可能にする。
【解決手段】複数の画素がマトリクス状に配列された表示面を有する平面表示装置1と、平面表示装置の表示面の前面に並んで配置され内部に一軸性の複屈折性物質が挿入された複数のレンズを有し、画素からの光線を制御する光線制御素子2,3,4と、平面表示装置と光線制御素子との間に設けられ、光線の偏光方向を揃える偏光板15と、を備え、複屈折性物質は、屈折率の最大主軸が前記複数のレンズの稜線に平行でかつ最大主軸方向が観測者と相対する方向に傾いていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像を表示する立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の視差画像を表示するインテグラルフォトグラフィー法(以下、IP法)あるいは光線再生法と呼ばれ、立体像を何らかの方法で記録しこれを立体像として再生する方法が知られている。左右の眼から物体を見たときに、近い距離にあるA点をみた時の左右の眼と成す角度をα、遠い距離にあるB点をみた時の左右の眼となす角度をβとすると、αとβはその物体と観察者の位置関係に応じて異なる。この(α―β)を両眼視差と呼び、人はこの両眼視差に敏感で立体視をすることができる。
【0003】
近年、眼鏡無しの立体画像表示装置の開発が進んでいる。これらの多くは通常の2次元の平面表示装置(例えば、液晶表示装置)を用い、その平面表示装置の前面あるいは背面に、レンチキュラーレンズまたはスリットからなる光線制御素子を置くことにより、先に述べた両眼視差を利用し、観察者から見た時、あたかも平面表示装置から前後数cmの距離の位置の物体から光線が出ているように、平面表示装置からの光線の角度を制御することにより、可能となる。背景には平面表示装置の高精細化により、平面表示装置の光線を数種類の角度(視差と呼ぶ)に振り分けても、ある程度高精細の画像を得ることができるようになったためである。このように、IP法を平面表示装置に適用した3次元(以下3Dともいう)表示方法をII(インテグラルイメージング)方式と呼ぶ。II方式において、一つのレンズから射出される光線の数は要素画像群の数に相当する。この要素画像群の数は通常、視差数と呼び、それぞれのレンズにおいて、視差光線は平行に射出される。II方式においては、観測者の位置あるいは観測者の見る角度によって、1視差の画像であるγ、2視差の画像であるβ、3視差の画像であるαという異なる画像を見ることになる。そのため、観測者は右目と左目に入る視差により、立体を知覚する。レンチキュラーレンズを光線制御素子として用いた場合、スリットに比べて、光の利用効率が高いためディスプレイが明るいというメリットがある。
【0004】
一般に、立体画像表示装置に係る平面表示装置として、液晶表示装置がよく用いられる。液晶中での光の伝播に関する基本的な性質は、例えば非特許文献1に示されているが、以下簡単に説明する。液晶は分子が細長い形をしており、その分子の長手方向のダイレクタと呼ばれる分子の方向に屈折率の異方性が生じる。例えば、ネマティック液晶の分子の多くは細長い分子であり、その長軸方向をそろえ、配向しているが、分子の位置関係はランダムである。分子の配向方向がそろっているといっても、絶対零度ではないので完全に平行ではなく、ある程度ゆらぎがあり、局所領域をみればほぼ一方向を向いているといえる。そこで、巨視的には十分小さいが、液晶分子の大きさに比べれば十分に大きな領域を考えた時、その中での平均的な分子の配向方向は単位ベクトルを用いて表され、それをダイレクタまたは配向ベクトルという。ダイレクタが基板にほぼ平行となる配向をホモジニアス配向という。
【0005】
光学的に一軸性の液晶中にその伝播方向が光学軸とθの角度をなすように光が入射した場合を考える。媒質の外の等方性屈折率nの部分では光は波面と垂直方向に光は伝播し、媒質内においても、常光線は、媒質の外と同様に波面法線方向に光は伝播する。ところが、異常光線は、媒質中では光学軸に対して、エネルギー伝播方向はφの方向となる。したがって、媒質面内では偏光方向のθ―φの方向に光が伝播することになる。すなわち、媒質内では偏光方向の互いに直交した常光線と異常光線とが異なった方向に伝播することとなる。
【0006】
また、液晶の最大の特徴のひとつが光学的な異方性にある。特に、結晶などの他の異方性媒質に比べて分子の配列の自由度が高いため、複屈折性の目安である長軸と短軸の屈折率の差が大きい。
【0007】
特許文献1に記載のように、異方性レンズと偏光方向を制御する手段を平面表示装置に付加することにより、レンズの効果を電気的に消失する2次元画像/3次元画像の切り替え表示装置がある。複屈折を持つ物質をレンズ形状の中に入れ、対向する位置に等方性物質を入れることにより、屈折率差のある方向の光に関してはレンズにより集光し、屈折率差のない方向の光に関しては2次元画像となる。しかし、特許文献1には、レンズ稜線方向の観測者の見る角度に対して、3次元画像表示の劣化しない方法について述べられていない。
【0008】
特許文献2には、行列配置の画素からなる表示面を有する表示デバイス(例えばマトリクス型液晶表示パネル)を備えるとともに、表示デバイスの出力側に配置され、種々の画素群の出力を通すレンチキュラー素子のアレーを有し1以上の立体視ビューを形成し観察者のそれぞれの眼に見えるようにするレンチキュラー手段を備えた立体画像表示装置が開示されている。この立体画像表示装置においては、レンチキュラー手段は電気的に可変の屈折率を有する電気光学材料を含み、その屈折率をレンチキュラー素子の作用を除去するように選択的にスイッチして高解像度の2次元画像を表示することが可能となっている。しかし、この特許文献2は、レンズ稜線方向の観測者の見る角度に対して、3次元画像表示の劣化しない方法について述べられていない。
【非特許文献1】吉野勝美著、「液晶とディスプレイ応用の基礎」、第43−44頁、コロナ社
【特許文献1】国際公開第03/015424号パンフレット
【特許文献2】特表2000−503424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
立体画像表示装置において、1次元インテグラルイメージング方式を利用した場合、3次元画像は観測者の左右方向のみ、すなわち複数のレンズアレイの稜線を縦方向に置き、左右の視差方向のみ光線を制御した立体画像表示装置となる。ここで、立体画像表示装置が大きくかつ画角の範囲が広いときに、立体画像表示装置を観測者が立ってみることにより、身長によって俯角が変わる場合、すなわち、机上に平面画像表示装置をおき、俯角方向に表示画面をみた場合を想定する。観測者は立体画像表示装置を正面だけではなく、斜め上方から見るため、立体画像表示装置の光線制御素子として用いられるレンズ面からその背面にある要素画像を表示する平面表示装置までのギャップ(距離)が、表示面を正面に見た場合より長くなる。このため、レンズの焦点距離よりもギャップが大きくなり、クロストークが増大し、良好な3次元画像を見ることが可能な視域角が減少するという問題が生じる。
【0010】
一方、立体画像表示装置はレンズの背後にある平面表示装置において、レンズと平面表示装置との間隔をほぼ焦点距離に合致させると、観測者側から立体画像表示装置を見た場合、隣接要素画像の混ざらない良好な立体画像が得られる。
【0011】
そこで、本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、レンズ―2次元表示装置間の光線の軌跡が長くなっても、立体表示特性の劣化をなくすことができる立体画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様による立体画像表示装置は、複数の画素がマトリクス状に配列された表示面を有する平面表示装置と、前記平面表示装置の前記表示面の前面に並んで配置され内部に一軸性の複屈折性物質が挿入された複数のレンズを有し、前記画素からの光線を制御する光線制御素子と、前記平面表示装置と前記光線制御素子との間に設けられ、光線の偏光方向を揃える偏光板と、を備え、前記複屈折性物質は、屈折率の最大主軸が前記複数のレンズの稜線に平行でかつ前記最大主軸方向が観測者と相対する方向に傾いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、立体表示装置における垂直方向における俯角、言い換えるとレンズアレイの稜線方向において立体表示装置を観測する角度が浅くなっても、立体表示が劣化しないようにすることができる。すなわち、レンズ―2次元表示装置間の光線の軌跡が長くなっても、その伸び率に応じてレンズの焦点距離の伸び率を合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による立体画像表示装置の構成を図1に示し、図1に示す切断面ABCDで切断した本実施形態による立体画像表示装置の断面を図2に示す。
【0016】
本実施形態の立体画像表示装置は、平置きされた例えば液晶ディスプレイからなる平面表示装置1を備えている。この平面表示装置1上に位相差フィルム15が設けられ、この位相差フィルム15上に透明な基板4が設けられている。この基板4上には一軸性の複屈折性物質2が載置され上側がレンズアレイ3によって覆われている。すなわち、複屈折性物質2は、基板4と、レンズアレイ3との間に挿入された構成となっており、レンズアレイ3、複屈折性物質2、および基板4は、複屈折レンズアレイ(光線制御素子)を構成している。
【0017】
図1に示すように、Nは両凸レンズの内側にある媒体2の屈折率で、nは片凸レンズのレンズアレイの外側の媒体3の屈折率である。片凸レンズは両凸レンズの特別な場合で、内側のレンズの曲率半径を無限大とすると得られる。片凸レンズの焦点距離fは以下の式で表される。
【数1】

【0018】
なお、本実施形態においては、レンズアレイ3の稜線方向は平面表示装置1の画素の列方向と異ならせ、ある角度傾いている。これはモアレ対策のために行われる一つの方法であるが、モアレ対策が別の方法、例えば、画素の境界であるブラックマトリックスを斜めに形成するなど、行われている場合、レンズアレイ3の稜線方向とピクセル方向が同一であってもよい。さらに、図1において、レンズの1面が観測者側に凸状態になっているが、観測者と反対側に凸状態になっている場合も焦点距離は図1の式で表わされる。焦点距離はいずれも、レンズの曲面の中央部から要素画像を表示する2次元表示装置までの距離に略一致するように作成する。
【0019】
平面表示装置1は大きく分けて2種類ある。一つは反射型、透過型を含む液晶ディスプレイ、もうひとつは液晶ディスプレイ以外の有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等である。液晶ディスプレイは最上面に階調を制御するために偏光板を有しており、偏光方向がすでにそろっている。そのため、位相差フィルム15としては、その上面に配置される一軸性の複屈折性物質2の最大主軸方向に偏光を一致させるための透明フィルムを置くと光の透過効率がよい。一般的に知られている方法として、λ/2板の長軸方向を所定の方向に一致させることにより、偏光方向を回転させることができる。次に、LCD以外のディスプレイを平面表示装置として用いる場合、最上面に偏光方向をそろえるものがないので、位相差フィルム15としては、偏光板を置き、偏光方向をその上におかれる一軸性の複屈折性物質2の最大主軸方向にそろえる必要がある。偏光板を置くと通常暗くなるため、LCD以外のディスプレイの場合は、背面ディスプレイの明るさをより明るくする必要がある。
【0020】
一軸性の複屈折性物質(例えば液晶)は長軸方向がそろっていなければ、偏光方向を長軸方向に合わせても屈折率が一定とならない。このため、レンズアレイ3、基板4に液晶を挟み込む構成を考えた場合、液晶に接する対向面にそれぞれ配向処理を行うことにより、液晶分子群を一定方向に配列させることができる。
【0021】
なお、本実施形態においては、平面表示装置1は平置きされているが、垂直に立てるように配置してもよい。この場合、本実施形態の立体画像表示装置も垂直に立てるように配置される。
【0022】
本実施形態の第1の特徴として、複屈折レンズアレイ2,3,4を形成する複屈折性物質2の長軸方向(最大主軸方向)を観測者と対面する方向に傾けることがある。その理由について図2を参照して述べる。液晶の配向膜として用いられる膜の種類によって、対向基板と液晶の最大主軸の方向の成す角度チルト角θtilt(図2参照)、を制御できることが知られている。例えば、日産化学の液晶配向膜材料サンエバーを用いると、組成を変えた配向膜を利用することにより、チルト角をある程度制御できる。設計値としては、カタログより、型格SE410、SE130などはチルト角2度程度と低い。また、SE150,SE3310などはチルト角が4度〜5度、SE−610、SE3510はチルト角が7度〜8度となる。このように、液晶配向膜の材料を調整すれば、10度以内である程度チルト角を制御できる。
【0023】
図2はレンズの稜線方向に沿った図1に示す平面ABCD内で切り取った断面図である。また、図1に示すように偏光方向(図1に示す矢印16の方向)は複屈折性物質2の最大主軸に合わせている。
【0024】
まず、図2に示すように、俯角θvertが0度から90度まで変化した時に、複屈折媒体2内の液晶分子14の長軸方向への入射角度がどのように変化するかを調べる。観測者8からの入射光線20が俯角θvertをもって、空気中から等方性屈折率nを持つレンズアレイ3に入るので、複屈折性物質2での俯角はθnとなる。スネルの法則より
sin(90−θvert)×1=sin(90−θn)×n
cosθvert= cosθn×n (2)
となり、観測者8からの俯角θvertよりレンズアレイ3を通過した後の俯角θが大きな角度となることがわかる。
θn=arccos(cosθvert/n) (3)
【0025】
次に、等方性屈折率nを持つレンズアレイ3から、一軸性複屈折性物質2の屈折率nf、俯角θvertで入射した光線において、一軸性複屈折性物質2の屈折率nfへの入射角度をθnfとすると、屈折率が異なるため、さらに光線が曲がる。
sin(90−θ)×n=sin(90−θnf)×nf
cosθnf=cosθ×n/nf
(2)式より
cosθnf= cosθvert/nf (4)
【0026】
次に、一軸性の複屈折性物質2の長軸が図2に示すように、傾き角度θtiltを持つと、実際に液晶分子14の最大主軸に対して入射する俯角θreal
θreal=θnftilt (5)
となる。一軸性の複屈折性物質2の屈折率は液晶分子14への入射角度θrealで決定されるため、屈折率が俯角依存性を持つことを実施形態では利用する。詳しく述べると、非特許文献1より、一軸性の複屈折性物質2の長軸方向の屈折率をNe、短軸方向の屈折率をNoとすると、液晶分子14の長軸となす角度をθrealとすると、複屈折性物質2の屈折率N(θreal)は、次のように表される。
【数2】

【0027】
(4)、(5)、(6)より、一軸性の複屈折性物質2の屈折率nf=N(θreal)となるので、
cosθnf=cosθvert/nf=cosθvert/N(θreal) (7)
θnf=arccos{cosθvert/N(θreal)}
θrealは90度近傍なので、N(θreal)=Nと仮定してもよい。
【0028】
例えば、複屈折性物質の最大長軸の屈折率N=1.587、短軸方向の屈折率N=1.492とした場合の(6)式のN(θreal)のθreal依存性を求めた結果を図3に示す。図3に示すように、θreal=90度の近傍ではN、θreal=0度の近傍ではNとなる。
【0029】
次に、図2に示す俯角θvertが0度から90度まで変化した時に、複屈折性物質2内で屈折率がどのように変化するかを調べる。
【0030】
レンズアレイ3の外側境界とほぼ平行に入射した光線は、液晶分子の入射する角度θvertが0度の場合は、等方性物質3の屈折率n=1.495とすると、スネルの法則よりθn=42度なる。そこで、
42<θn<90
の俯角しか複屈折性物質2では取りえない。
【0031】
(1) θtilt=0度の場合
(4)、(5)、(6)式より、観測者8の俯角θvertによるレンズアレイ3のN(θvert)を求めることができる。例えば、複屈折性物質の最大長軸の屈折率N=1.587、短軸方向の屈折率N=1.492とした場合の(6)式のN(θvert)のθvert依存性を求めた結果を図4に示す。図4からわかるように、θvertによる一軸性の複屈折性物質2の屈折率は1.548までしか低下せず、No=1.492まで低減しない。
【0032】
図3を参照して、屈折率の変化率の、入射角依存性を調べる。外側レンズアレイの等方性物質の屈折率nを略Nに等しい値とする。
n(θreal=90)=1.587 (8)
n(θreal=80)=1.585 (9)
n(θreal=70)=1.575 (10)
より、(8)式と(9)式を比較すると80度と90度の屈折率の変化率は
{n(θreal=90)−n(θreal=80)}/(N−N))=0.02
と非常に小さい。しかし、(9)式と(10)式を比較すると70度と80度の変化率は
{n(θreal=80)−n(θreal=70)}/(N−N))=0.105
となる。上記より、80度から90度までは屈折率の変化率が、70度から80度までの屈折率の変化に比べて十分小さいことがわかる。今回、この変化率の小さな部分を利用する。
【0033】
(2)θtilt=±8度の場合
図5に液晶分子をθtilt分傾けた時の屈折率について、θvert依存性を示す。図5からわかるように、チルト角θtiltを8度、観測者8側に傾けると、屈折率の変化率が2%以内の領域は、θvertが72度から92度までとなり、チルト角θtiltを8度、観測者8と反対側に傾けると屈折率の変化率が2%以内の領域は88度から108度となる。
【0034】
今回の目的としては、俯角が浅くなると、ギャップ(レンズ表面から、要素画像までの距離)が長くなるので、それに合わせて複屈折レンズの屈折率の変化を利用して、焦点距離を長くすることである。それにより、ギャップと焦点距離を一致させることを試みる。θvertによる焦点距離の増大率は図5に示す曲線の微分成分となるが、ギャップの増大率が、焦点距離の増大率より小さい場合は、チルト角を観測者側に傾ける方がよく、ギャップの増大率が焦点距離の増大率より大きい場合は、チルト角を観測者と反対側の方向に傾ける方がよいことがわかる。
【0035】
そこで、数式化し、具体的な値を代入することにより、チルト角の傾く方向の最適化について調べる。また、チルト角に関してはいくらでも傾ければよいのではなく、垂直正面からも3次元画像が正常に見えた方がよいため、チルト角の上限は10度以内にした方がよい。
【0036】
本実施形態の第1実施例について説明する。
【0037】
(第1実施例)
俯角θvertが、上限値θu(例えば、90度)と下限値θl(例えば50度)の範囲で劣化なく3次元画像表示装置を見る場合を考える。そのため、
θl<θvert<θu (11)
とする。図6を参照して説明する。スネルの法則により、観測者8と立体画像表示装置の中心を結んだ線がディスプレイ面となす角がθvert、下側レンズ面4、偏光方向を修正する位相差フィルム15、液晶表示装置のガラス基板を44、要素画像を表示する要素画素群を45とすると、それぞれの長さの割合も考慮した複屈折性物質2と要素画素群45の間の平均屈折率をnlens、透明基板4、位相差フィルム15、液晶表示装置の上側基板45の基板内でのディスプレイ面と成す角度をθlensとする。
【0038】
光路長を考慮した平均値nlensとは、図6において、透明基板4の屈折率、ギャップをそれぞれn、g4、位相差フィルム15の屈折率、ギャップをそれぞれn15、g15、液晶表示装置の上側ガラス44の屈折率、ギャップをそれぞれn44、g44と置くと、次の式が成り立つ。
lens×(g4+g15+g44)=n4×g4+n15×g15+n44×g44
図6より、
sin(90−θnf)×N(θreal)=sin(90−θlens)×nlens
cosθlens= cosθnf×N(θreal)/nlens (12)
(7)式より
cosθlens=cosθ×n/nlens=cosθvert/nlens (13)
となり、実際のθvertよりレンズ面でのθlensが大きな角度となることがわかる。(13)式より、
θlens=arccos(cosθvert/nlens) (14)
となる。また、図6より、2次元表示装置1と複屈折性物質2までの距離をgとすると
実際の光学ギャップg(θvert)は
g(θvert)=g/sinθlens=g/sin{arccos(cosθvert/nlens)} (15)
となる。そこで、図7に3次元画像表示装置におけるギャップgと視域角2θと視差数mとサブピクセルピッチsp、レンズ21の屈折率、すなわちレンズ21の表面から要素画像群45までのそれぞれの光路長も考慮した平均屈折率nlensの関係を示す。
tanθ=sp×m/2/g/nlens
g=(sp×m)/2/nlens/tanθ (16)
となる。(15)、(16)式より
次式を書き換えた。
【数3】

【0039】
また、レンズ21内の複屈折性物質2の最大主軸が観測者8と対面する方向にθtilt傾いていることを考慮すると、入射した光線が実際に複屈折性物質2をもつレンズにおいて、最大主軸に対して傾いている角度θrealを求める。
θreal=θnf +θtilt=arccos{cosθvert/N(θreal)}+θtilt
N(θreal)は未知数であり、直感的にわかりにくいので、図4より、正面から±45度の俯角方向においては、変化が小さいため、N(θreal) はNとおいてもよい。
θreal=arccos{cos(θvert/N)}+θtilt (18)
【0040】
さて、焦点距離とレンズの曲率半径は、次の(19)、(20)式のように表され、互いに関係があることがわかる。
【数4】

【0041】
すなわち、rが小さくなると焦点距離fは短くなり、rが大きくなると焦点距離fは大きくなる。また、レンズの厚みdを適当な厚みに決めると、焦点距離も決めることができる。
【0042】
立体表示装置の設計を行う時は、図11に示すように、レンズ−2次元表示装置間の距離gが視域角θを決定するのに重要な値となる。レンズの焦点距離はレンズ−2次元表示装置間の距離gと略一致するようにするため、(19)式の値が、レンズ−2次元表示装置間の距離gと一致するように、r,n,N,dの値を決めるようにする。
【0043】
そこで、(19)式のf、Neをθrealの変数であるとして変形すると
【数5】

となる。上記において、(18)式より、θvertとθrealの関係は一意に決まる。
θreal=90度の時、N(θreal)=N
となる。立体画像表示装置の正面(θvert=90度)で、焦点距離がレンズアレイと要素画像の間の距離gと一致するように、曲率rと、レンズの厚みdを決めると、立体画像表示装置をほぼ正面に見る位置で、クロストークの少ない良好な3次元画像を得ることができる。
【0044】
以下に正面での焦点距離f(90度)とレンズアレイと要素画像の間の距離g(90度)を数式化する。
【数6】

を満たすようにする。すなわち、レンズの曲率r1はディスプレイ正面の観測者が見る位置で設計する。その際、(23)式より、チルト角θtiltが0度の場合は、液晶のダイレクタ方向の偏光軸をもった光線は液晶内部では屈折率Neの媒体の中を通過する。しかし、チルト角θtiltが数度傾いていた場合は、立体画像表示装置の正面での屈折率は液晶のダイレクタ方向にθtilt だけ傾いて光線が入射するため、液晶のダイレクタ方向の偏光軸をもった光線はNより小さな値の中を通過する。そこで、レンズの曲率r、レンズの厚みdを決める時は、(6)式より、
【数7】

で、(21)式、(22)式より、レンズ曲率r1を定めるとよい。ここで、レンズの外側の屈折率nはNと同じ値に定めてもよい。一軸性物質の屈折率はN(θreal=90−θtilt)とする。
【0045】
最後に、具体的な複屈折率の物質、外側レンズアレイ、内側基板の屈折率、背面液晶ディスプレイを構成するガラス基板、偏光板の屈折率、位相差フィルムの屈折率を考慮して、g(θreal)とf(θreal)をそれぞれ求める。レンズの形状は図16に示すような両凸レンズ構造のものとする。
【0046】
両凸レンズの厚みdは図16に示すように、両凸レンズの凸面頂点間の厚みである。また、焦点距離fは図16に示すように、平行光線が入射した時において、両凸面頂点間の中心の位置から、集光点までの距離である。図16に示すように、Nは両凸レンズの内側にある媒体2の屈折率で、nは両凸レンズの外側、すなわち、観測者側のレンズアレイ側媒体3と2次元表示装置側のレンズアレイ側媒体36の屈折率である。両凸レンズに関して、外側と内側の両方のレンズに曲率半径が存在するが、両方の曲率半径の絶対値を同じとし、rで表す。両凸レンズの焦点距離fは、上述した(19)、(20)式で表される。
【0047】
図8に、チルト角θtiltが0度、すなわち液晶分子を傾けない場合、θvertを0度から90度まで変化させた時の焦点距離f(θvert)の伸び率を示す。θvertが90度の時の焦点距離で規格化する。次に、θvertを0度から90度まで変化させた時のレンズ面から背面にある液晶ディスプレイの要素画像までのギャップg(θvert)の伸び率を示す。この時、レンズアレイから要素画像までのギャップ部の屈折率の平均値として、1.2、1.53(ガラスの屈折率)、1.8を使用した。
【0048】
図8からわかるように、ギャップ部の屈折率の平均値が1.2の場合、焦点距離の伸び率とギャップの伸び率が一致する。ただし、一般的な透明物体において、屈折率1.2の素材はほとんど存在しない。例えば、空気とガラスの割合による構成により可能であるが、構造が制限されるという問題点がある。
【0049】
次に、液晶ディスプレイのチルト角θtiltを変えることにより、ある範囲内で、焦点距離の伸び率とギャップの伸び率を一致させることを試みる。この時、ギャップ部の屈折率の平均値としては、液晶ディスプレイの基板として使用されるガラス基板の一般的な屈折率である1.53を使用する。
【0050】
図9からわかるように、チルト角θtiltが3度ではギャップ伸び率より焦点距離の伸び率の方が高い。チルト角θtiltが7度から10度でギャップ伸び率と焦点距離の伸び率が一致してくる。
【0051】
図10に、焦点距離の伸び率とギャップ伸び率との比のθvert依存性を示す。θvertが50度から90度の範囲において、焦点距離の伸び率とギャップ伸び率との比が4%以内で焦点距離とギャップを一致させたい場合は、チルト角θtiltとして7度を選択するとよい。θvertが40度から90度の範囲において5%以内で焦点距離とギャップを一致させたい場合はチルト角θtiltとして10度を選択するとよい。
【0052】
比較するために、図8に等方性レンズを用いた場合、焦点距離は一定で、ギャップはθvertが小さくなるほど伸びていくので、θvert=90度の正面でギャップと焦点距離を一致させた場合、θvert=60度で5%の伸び率が違い、θvert=50度で10%伸び率が異なってくる。
【0053】
図10からわかるように、一軸性の複屈折性物質を用いて、長軸方向を観測者と相対する方向に傾けた場合の方が、等方性レンズを用いた場合よりも、垂直方向の視域角が90度からずれてもレンズの焦点距離と観測者から見た光路長におけるレンズ表面と要素画像群との距離の一致が高いことがわかった。
【0054】
今まで述べたように、一般的な複屈折材料を用いると屈折率はポリカーボネートで1.6、液晶で1.5から1.7、Δn=0.1〜0.2となる。また、レンズアレイから要素画像までのギャップを形成する物質として、ガラスを選択すると屈折率は1.53近傍となる。上記の一般的で安価な立体表示装置において、レンズの稜線方向の視域角の拡大を行うためには、立体画像を望む俯角が小さくなるに従って、ギャップの伸び率より、複屈折性による焦点距離の伸び率の方が大きいことがわかった。そのため、第1実施形態のように、複屈折性物質の最大主軸のチルト角は観測者の方を向くように傾けた方がよい。
【0055】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例を説明する。第1実施例において、数式化することにより、一般的な条件を求める。図16に示すような両凸レンズの場合について求めると
【数8】

となるようにするためには、
【数9】

を満たすようにすればよい。(16)式を代入すると、
【数10】

そこで、θvert(θ<θvert<θu)において、(27)式を満たすように、チルト角θtiltを選択すればよい。
【0056】
(第3実施例)
次に、本発明の第3実施例を説明する。第1実施例において、数式化することにより、一般的な条件を求める。図1に示すような片凸レンズの場合について求める。図1に示すように、片凸レンズの内側の媒体の屈折率をN(θreal)、外側の屈折率をnとし、片凸レンズの曲率半径をr1とする。
【数11】

(28),(17)式を用いて、焦点距離fがθrealの関数であったものを俯角θvertの関数に変形する。そして、(25)式を満たす条件を求めると
【数12】

となる。
【0057】
(第4実施例)
次に、本実施形態の第4実施例について説明する。今まで、レンズの稜線方向と平行な面での視域角の拡大について述べてきた。すなわち、立体画像表示装置の垂直方向の視域角を拡大するために、ギャップの伸び率と焦点距離の伸び率を合致させることを目的とした。一方、焦点距離が変化することにより、立体画像表示装置の水平方向の視域角も変化するため、それらの対策方法について述べる。
【0058】
例えば、図9からわかるように、θvertが90度から50度になることによって、レンズと要素画像のギャップの伸び率が1.11倍となる。図7と図11を比べると、レンズ表面から要素画像群までのギャップgが長くなると水平方向の視域角が小さくなることがわかる。
【0059】
(16)式より、図11に示すようにギャップgがk倍になった時の視域角θを求める。
tanθk/tanθ=gk/g=k (30)
(30)式より
kが1.11倍とすると、視域角2θが22度、すなわちθ=11度の時は、俯角方向55度方向からディスプレイを観測した場合、視域角2θの半分は
θ=10度、となる。
【0060】
また、kが1.11倍とすると、視域角2θが30度、すなわちθ=15度の時は、俯角方向55度方向からディスプレイを観測した場合、視域角2θの半分は
θ=13.7度
と、両者とも視域角が小さくなる。このように、θvertが90度に比べて、俯角が浅くなるとレンズ面と要素画像までのギャップがk倍になるため、視域角が狭くなることを述べた。
【0061】
そうすると図13の斜線部に示すように、視域範囲が狭くなる問題点とその解決方法について述べる。図12は、ディスプレイ正面からみたθvert=90度で、レンズの稜線方向に垂直な面での立体表示が劣化なく見える視域範囲42を斜線で示した。
【0062】
一方、図13において、視域角θがθのように狭くなると、ディスプレイから視距離Lだけ離れたラインと、ディスプレイの中心から垂線を引いたラインの交点Oにおいて、観測者から立体画像表示装置の左端のレンズ中心に向かって引いた光線の軌跡において、要素画像中心の位置はギャップが長くなった分左側にずれる。また、立体画像表示装置の右端のレンズにおいては、要素画像中心が右側にずれる。そのため、図13に立体表示が劣化なく見える視域範囲42を斜線で示すが、以前の視距離においては今までの視域範囲では両端で偽像が見えるため、いっそう視域範囲が狭くなったように見える。対策方法としては、同一要素画像では視距離を長くするか、視距離を変えたくない場合は、視域角をθkにした状態で、要素画像を再び合成しなおす必要がある。合成方法としては、要素画像ピッチの修正という方法がある。
【0063】
要素画像ピッチに以下で説明する。図12に示すように、ディスプレイから視距離Lだけ離れたラインと、ディスプレイの中心から垂線を引いたラインの交点Oにおいて、任意のひとつのレンズにおけるレンズの境界へ引いた2ラインが2次元表示装置との交点において、交点どうしの距離Pはレンズピッチを視差数に置き換えたm視差より若干広がる。この若干レンズピッチより広がった距離を視差数に置き換えたものを要素画像ピッチとする。図12で設定した要素画像ピッチは、図13で俯角を浅く見ることによりギャップがk倍広がった場合、図13における要素画像ピッチPは幅が広くなる。このPを正しい幅に修正することにより、視域角が狭くなったことによる図13のような視域範囲の縮小を阻止することができ、視域範囲を図12のように視距離で最大化できる。
【0064】
要素画像ピッチの最適設計の一例について述べる。(13)式の範囲内、すなわち、俯角がθuの場合も、θの場合も調整なしに視域角を最大化しようとするためには、平均的に視域角θkを決めるとよい。
【0065】
例えば、θuとθのそれぞれのギャップを求める。
g(θvert)=g/sin{arccos(cosθvert/Ne)} (31)
であるから、
g(θu)=g/sin{arccos(cosθu/Ne)} (32)
g(θl)=g/sin{arccos(cosθl /Ne)} (33)
k=g(θu)/g(θl)=sin{arccos(cosθl /Ne)}/sin{arccos(cosθu/Ne) }
となる。(30)式より
tanθk=tanθ×k=tanθ×sin{arccos(cosθl /Ne)}/sin{arccos(cosθu/Ne) }
となる。ここで、tanθkとtanθの中間値であるθmiddleに合わせようとすると、
tanθmiddle=tanθk/2
=tanθ×sin{arccos(cosθl /Ne)}/sin{arccos(cosθu/Ne)}/2
上記のtanθmiddleで要素画像ピッチを設定するとよい。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、複屈折レンズを用い、複屈折の最大主軸方向を観測者と相対する方向に傾けることにより、俯角によるレンズと平面表示装置との間の距離の変化に合わせてレンズの焦点距離を変えることができる。このため、レンズと平面表示装置との間隔が大きくなって、レンズの焦点距離と合致しなくなっても良好な3次元画像を見ることが可能な視域角が減少するのを防止することができる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。複屈折レンズは、最大主軸の屈折率(異常光成分)とその主軸に垂直な平面での屈折率(常光成分)が異なるという特徴がある。そこで、3次元表示モードである図14および2次元表示モードである図15に示すように、平面表示装置1の位相差フィルム15を通過した光線35の偏光方向を最大主軸、あるいは最大主軸と直角の短軸方向11に切り替えを行う装置35によって、偏光方向を制御すると、常光成分と異常光成分に分離することができる。すなわち、液晶分子の長軸方向10に水平な偏光面をもつ光が入射すると異常光成分の屈折率Neが発現するため、光が境界面で曲がって入射する。一方、液晶の長軸10と垂直な面内での偏光面をもつ光を入射すると、常光成分の屈折率Noが発現し、光は境界面で曲がらず、直進する。これより、液晶レンズによって2次元画像/3次元画像の切り替えが可能となる。
【0068】
なお、本実施形態も第1実施形態と同様に、複屈折レンズを用い、複屈折の最大主軸方向を観測者と相対する方向に傾けることにより、俯角によるレンズと平面表示装置との間の距離の変化に合わせてレンズの焦点距離を変えることができる。このため、レンズと平面表示装置との間隔が大きくなって、レンズの焦点距離と合致しなくなっても良好な3次元画像を見ることが可能な視域角が減少するのを防止することができる。
【0069】
第1および第2実施形態においては、背面にあるディスプレイとして、液晶ディスプレイを例にあげたが、有機ELディスプレイ、FED、SEDなどの平面ディスプレイも偏光板を複屈折レンズと要素画像の間のどこかに入れれば、同様の効果が得られる。
【0070】
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、複屈折レンズを用い、複屈折の最大主軸方向を観測者と相対する方向に傾けることにより、俯角によるレンズと平面表示装置との間の距離の変化に合わせてレンズの焦点距離を変えることができるため、良好な3次元画像を見ることが可能な視域角を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態による立体画像表示装置を示す斜視図。
【図2】第1実施形態の立体画像表示装置の断面図。
【図3】複屈折率の入射角依存性を示す図。
【図4】複屈折率の、液晶分子への入射角依存性を示す図。
【図5】複屈折性物質の屈折率の俯角依存性を示す図。
【図6】水平方向においた立体画像表示装置における光線軌跡を示す図。
【図7】俯角90度における水平方向の視域角と、レンズと平面表示装置とのギャップの関係を表す図。
【図8】複屈折性物質で形成されたレンズの焦点距離の伸び率とギャップの平均屈折率によるギャップ伸び率の俯角依存性を示す図。
【図9】複屈折性物質で形成されたレンズの焦点距離の、チルト角による伸び率とギャップ伸び率の俯角依存性を示す図。
【図10】焦点距離の伸び率とギャップの伸び率との俯角依存性を示す図。
【図11】俯角θvertにおける水平方向の視域角と、レンズと平面表示装置とのギャップの関係を表す図。
【図12】俯角90度での立体画像表示装置の水平方向の視域範囲を表す図。
【図13】俯角θvertが50度の時に焦点距離がk倍になった場合の立体画像表示装置の水平方向の視域範囲を表す図。
【図14】本発明の第2実施形態による立体画像表示装置の3次元画像表示の状態を示す斜視図。
【図15】第2実施形態による立体画像表示装置の2次元画像表示の状態を示す斜視図。
【図16】本発明の第1実施形態による別の立体画像表示装置を示す斜視図。
【符号の説明】
【0072】
1 平面表示装置
2 一軸性の複屈折性物質
3 観測者側のレンズアレイ
4 透明基板
5 2次元表示装置の画素
6 2次元表示装置の要素画像の中の画素から画面に垂直方向に射出される光線の軌跡
7 2次元表示装置の要素画像の中の画素から俯角45度方向に射出される光線の軌跡
8 観測者
10 複屈折性物質における屈折率が最大となる長軸方向
11 複屈折性物質における屈折率が最小となる短軸方向
14 一軸性の複屈折性物質の分子
15 位相差フィルム(偏光板)
16 光線の偏光方向
20 観測者から3次元画像表示装置を俯瞰した時の入射光線
21 等方性屈折率をもつレンズアレイ
26 レンズピッチlp
27 同一レンズ要素画像の中で中央の要素画像から射出される光線中心
28 同一レンズ要素画像の中で左端の要素画像から差出される光線中心
29 同一レンズ要素画像の中で右端の要素画像から差出される光線中心
33 光線の偏光方向を切り替えを行う装置
35 光線
36 2次元表示装置側のレンズアレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素がマトリクス状に配列された表示面を有する平面表示装置と、
前記平面表示装置の前記表示面の前面に並んで配置され内部に一軸性の複屈折性物質が挿入された複数のレンズを有し、前記画素からの光線を制御する光線制御素子と、
前記平面表示装置と前記光線制御素子との間に設けられ、光線の偏光方向を揃える偏光板と、
を備え、
前記複屈折性物質は、屈折率の最大主軸が前記複数のレンズの稜線に平行でかつ前記最大主軸方向が観測者と相対する方向に傾いていることを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項2】
前記複数のレンズの各々は、レンズ面が両面とも互いに反対方向に凸状態に相対しており、視域角を2θ、水平方向のサブピクセルピッチをsp、水平方向の視差数をm、前記両面凸レンズどうしの頂点から頂点までの長さの半分の位置から前記平面表示装置まで媒体の屈折率の平均値をnlens、前記レンズの両面の曲率半径をr、前記レンズの頂点から頂点までのレンズの厚さをd、前記レンズの内側に形成された複屈折性物質の最大主軸方向の屈折率をN、最大主軸方向に直交する短軸方向の屈折率N(<N)、前記2面の両面ともレンズの外側に形成された等方性物質の屈折率をn、前記レンズの稜線方向に対する観測者の俯角をθvert、前記最大主軸方向が観測者と相対する方向に傾いている角度をθtilt、前記複屈折性物質を通過する光線と前記最大主軸方向とのなす角度をθrealとした場合、θreal
θreal=arcos(cosθvert/N)+θtilt
で表され、前記光線が前記複屈折性物質を通った時の屈折率が
【数1】

で表された場合、前記角度θtilt
【数2】

となる条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記複数のレンズの各々は、レンズの1面が観測者側に凸状態、あるいは観測者と反対側に凸状態になっており、視域角を2θ、水平方向のサブピクセルピッチをsp、水平方向の視差数をm、前記レンズの両端に接する平面から前記平面表示装置まで媒体の屈折率の平均値をnlens、前記レンズの曲率半径をr1、前記レンズの表面から各々のレンズの両端に接する平面までにおいて前記レンズの内側に形成された複屈折性物質の最大主軸方向の屈折率をN、最大主軸方向に直交する短軸方向の屈折率N(<N)、前記レンズのレンズ側に接する等方性物質の屈折率をn、前記レンズの稜線方向に対する観測者の俯角をθvert、前記最大主軸方向が観測者と相対する方向に傾いている角度をθtilt、前記複屈折性物質を通過する光線と前記最大主軸方向とのなす角度をθrealとした場合、θreal
θreal=arcos(cosθvert/N)+θtilt
で表され、前記光線が前記複屈折性物質を通った時の屈折率が
【数3】

で表された場合、前記角度θtilt
【数4】

となる条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記複屈折性物質の分子の最大主軸方向が観測者と相対する方向に傾いている角度θtiltは、7度以上10度の範囲にあることを特徴とする請求項2または3記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
前記偏光板は前記光線の偏光方向を前記複屈折性物質の屈折率の最大主軸に一致させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の立体画像表示装置。
【請求項6】
前記最大主軸に偏光方向を合わせる3次元画像が表示され、前記最大主軸と直角方向に偏光を合わせると2次元画像が表示されるように偏光方向を変える装置を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の立体画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2008−233469(P2008−233469A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72072(P2007−72072)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】