立体配線を有する実装構造体
【課題】 本発明はSAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ、BAW(bulk acoustic wave)フィルタ、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)などの表面に空間を必要とする素子のウェハレベル小型化パッケジング技術に関する。こうした表面に空間を必要とする素子は、小型化及び設計自由度確保が不十分であった。更に、素子を小片化して組立てを行っていたため、工数が必要であった。
【解決手段】 本願発明の骨子は、次の通りである。実装用基板上に設けられた空間的可動部分を有する素子部材は、有機絶縁樹脂層が前記実装用基板との間に保持する空間部分に配置され、且つ前記有機絶縁樹脂層内に、多層配線部が少なくとも配置される。このような構造を採用することによって、空間の確保と配線部を出来るだけ小型化して配置する。
【解決手段】 本願発明の骨子は、次の通りである。実装用基板上に設けられた空間的可動部分を有する素子部材は、有機絶縁樹脂層が前記実装用基板との間に保持する空間部分に配置され、且つ前記有機絶縁樹脂層内に、多層配線部が少なくとも配置される。このような構造を採用することによって、空間の確保と配線部を出来るだけ小型化して配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子基体の表面に空間を必要とする素子及び立体配線を有する実装構造体に関するものである。こうした実装構造体の例として、例えば、SAW(surface acoustic wave)フィルタ、BAW(bulk acoustic wave)フィルタ、MEMS(micro-electro-mechanical systems)などの、素子基体の表面に空間を必要とする素子のウェハレベル小型化パッケジングを挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
メモリーやロジックなど、一般的な半導体素子の表面は、それらが使用されようとしている段階では、パッケージ材料であるSiNなどの無機膜やモールド樹脂が形成されている。つまり、半導体素子表面に実装の為のパッケージ材料が直接接している。
【0003】
一方、SAWフィルタなど部品表面の振動を利用している素子のパッケージの場合、当該素子の基体表面にパッケージ材料が直接形成されている為、その素子上に、部材の振動を可能とする為の空間が必要である。素子部品の振動を利用するフィルタの代表例として、BAWフィルタがある。BAWフィルタは、バルク弾性波と呼ぶ圧電膜自体の共振振動を利用するフィルタであり、FBAR型(film bulk acoustic resonator)やSMR(solid mounted resonator)型がある。FBAR型は共振器の下部に空洞を設けることで,圧電膜を自由に振動させ、SMR型は,共振器の下部に音響多層膜(ミラー層)を設けることで弾性波を反射させる。
【0004】
MEMSは、微細な可動部分を動かすことで、ある機能を持たせる技術であり、その特徴は、従来の電子機器と異なり、基板(シリコンウェハ)上に可動部を持つことである。
【0005】
これらの素子は、何れも振動や駆動部分があり、素子基体表面に空間を必要とする。
【0006】
従来型のパッケージとして、金属キャップを用いたパッケージがある。図17(a)にその断面図を示す。ビアホール22が形成された基板18を準備し、この上に完成した素子24(SAWフィルタでは、櫛歯電極)を上にして実装する。素子用基板1の上部にワイヤーボンド用パッド25が設けられる。そして、素子24が、ワイヤーボンド23を用いて、ワイヤーボンド用パッド25と結線されている。図17(a)において、符号19は金属キャップ、符号28は接続端子である。また、このパッケージを実装用基板に搭載する実装形態の例は、例えば、図18に例示される。モジュール用基板26に、前述のパッケージ30、31が、複数個搭載される。又、場合によっては、別の半導体素子など(図示せず)を搭載し、全体を金属キャップ19で封止している。しかし、この実装形態では、金属キャップ19が2重に形成されることになり、装置の高さを低くする、いわゆる低背化は、困難である。組立ては、ウェハ状態から素子を個片化し、個々に組み立てていたため、工程数が多いといった課題があった。
【0007】
更に、これまで、これらの課題を解決するため、金属キャップに替わり、樹脂を用いて空隙を保持しつつ、パッケージする技術が提示されている。それらは、例えば、下記特許文献1から特許文献11である。
【0008】
第1の例は、特開2002−532934号に示された構造である(特許文献1)。この例は、素子を個片に切り出した後に、例えば、第3層を形成するに当たり、小形部品を扱う必要があり煩雑な作業を要する。
【0009】
第2の例は、特開2004−514316号に示された構造である(特許文献2)。この例は、空隙部上面にアルミが形成されるなど、煩雑な作業を必要とする。又、このアルミ層がコンタクトバンプと称する、外部との接続用はんだボールと接触し、短絡の原因とも成る。
【0010】
第3の例は、特開2003−037473号に示された構造である(特許文献3)。この例では、基体上面を形成するため、エポキシ系接着剤を用いている。この系の接着剤は、接着剤の硬化時に発ガスがある。或いは、接着剤の硬化時にはガス発生が無くとも、はんだ接続時にはガス発生がある。こうしたガスの発生により、素子部に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0011】
第4の例は、特開2003−347357号に示された構造である(特許文献4)。この例は、半導体・MEMS素子の機能面をサブストレートに正対するように搭載し、サブストレートと半導体・MEMS素子を電気的に接合させてなる半導体・MEMSパッケージである。そして、半導体素子機能面とサブストレートの間に空隙を設けるために、半導体・MEMS素子上に感光性絶縁樹脂を配置し、該空隙部をフォトリソグラフィーの手法により形成する半導体パッケージの製造方法をとっている。
【0012】
第5の例は、圧電基板と、その圧電基板上に形成された櫛歯電極と、その櫛歯電極上に空隙を形成する空隙形成層と、前記櫛歯電極を封止する封止層とを備えた表面弾性波素子の例である(特許文献5)。
【0013】
第6の例は、電力を印加することで可動するMEMS素子部分と、このMEMS素子部分とシリコンウエハとの間に空隙を形成して封止する上面保護フィルムとを有するパッケージの例である(特許文献6)。
【0014】
第7の例は、感光性部材を電極が形成されている表面に貼り付ける工程と、感光性部材が完全に感光する光度よりも小さな光度で、感光部材を全面露光する工程と、感光性部材が完全に感光する光度で感光部材を、マスクを介して露光する工程と、未露光感光性部材を溶出する工程とを含むデバイスの製造法である(特許文献7)。この例の樹脂の貼り付け・露光方法は、本発明の手法は、本発明の製造方法と異なる。
【0015】
第8の例は、半導体基板とキャップ基板との間隔を均一に保ち、半導体基板とキャップ基板との間隔を、スペーサによって自由に制御した半導体パッケージの例である。(特許文献8)。本例は、キャップ基板の形成方法、材料など、本発明の構造体とは異なる。
【0016】
第9の例は、MEMSデバイスや圧電デバイスや弾性表面波デバイスが、個別に良好に封止して保護されているデバイスを提供する。その骨子は、基板上に配置されたMEMSデバイス、圧電デバイス、弾性表面波デバイスなどの基板上に、樹脂材料からなる枠部材と、この枠部材上に熱可塑性樹脂を介して蓋部材で封止したデバイス装置である(特許文献9)。
【0017】
第10の例は、SAWフィルタ素子の表面近傍に中空部を必要とする弾性表面波フィルタに関する。圧電基板の主面上に櫛歯電極及びボンディングパッド等で形成されるフィルタ機能部を配置し、このフィルタ機能部を取り囲むように樹脂を塗布して支持枠を形成する。この支持枠の開口部に蓋体を被せることでフィルタ機能部上に中空部を設けたSAWフィルタの製造方法である(特許文献10)。この蓋体の外形形成を、前記支持枠に貼り合わせた後に成形する。この方法で形成されたパッケージでは、別の基板に搭載する必要がある。この構造は、本発明と異なる。
【0018】
第11の例は、実装基板に実装したSAWチップの外面を、加熱軟化させた樹脂シートにより被覆すると共に、SAWチップに樹脂を充填させることにより、櫛歯電極の下方に気密空間を形成したSAWデバイスに関するものである(特許文献11)。この発明では、パッケージした物を別の基板に搭載し、それ全体を別シートでラミネートする構造体であり、本発明と異なる構造体である。
【0019】
【特許文献1】特表2002−532934号公報
【特許文献2】特表2004−514316号公報
【特許文献3】特開2003−037473号公報
【特許文献4】特開2003−347357号公報
【特許文献5】特願2005−145667号公報
【特許文献6】特願2005−274862号公報
【特許文献7】特開2005−12638号公報
【特許文献8】特開2006−147864号公報
【特許文献9】特開2005−285864号公報
【特許文献10】特開2004−253937号公報
【特許文献11】特開2004−363770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
これまでの技術を背景に、基板表面に空間を必要とする素子をパッケージするには、以下の課題がある。
【0021】
第1の観点は、素子動作の原理から空間を必要とする素子の実装に当たって、配線の為のスペースを、より小さなものにする実装構造体を提供するものである。基板表面に空間を必要とする素子に対して、この目的の空間を確保したパッケージを単に設けることでは、配線を配置することが直接考慮されていない。この為、別の箇所に配線を設け、又多層配線となす場合でも、例えば、配線を迂回させる必要がある。従って、こうした装置では、前述の如く設けられる空間が、装置の小型化及び設計自由度確保の妨げとなっている。
【0022】
第2の観点は、容易にウエハ・レベルでの実装を可能とする実装構造体を提供するものである。部品となる素子の小片化後、改めての装置の組み立てを必要としないことが要請されている。従来のパッケージは、次の手順を取っている。素子を小片化した後、この素子を実装用基板に搭載する。この実装基板と前記素子とをワイヤーボンディングで結線する。そして、実装基板に対して、金属キャップを用いてパッケージを行っている。この為、金属キャップ分の厚さが必要であった。また、小片化して組立てを行っていたため、工数が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本願発明の骨子は、次のような実装構造体である。即ち、実装用基板と、この上部に、空間的可動部分を有する素子部材と、多層配線部と、実装用基板との間に空間を保持する絶縁層と、を少なくとも備え、前記実装用基板上に設けられた空間的可動部分を有する素子部材は、前記絶縁層が前記実装用基板との間に空間部分を構成するように配置され、且つ前記実装用基板との間に空間を保持する絶縁層内に、前記多層配線部が配置されてなること、を特徴とする実装構造体である。
【0024】
更に、別な観点では、次のような実装構造体である。即ち、実装用基板と、その上部に形成された機械的可動部を有する機能素子と、多層配線部と、機能素子部に空間を保持する第1の有機絶縁層と、機能素子部を封止する第2の有機絶縁層と、を少なくとも備え、前記第1の有機絶縁層内に、前記多層配線部の少なくとも一部が配置してなる実装構造体である。
【0025】
ここで、空間的可動部分ないしは機械的可動部を有する素子部材とは、素子の動作上の原理から、部材の振動を利用するSAWフィルタ、BAWフィルタ或は素子部材の微細可動を利用するMEMSなどを含む電気・電子部材を意味する。
【0026】
実装用基板との間に空間を保持する絶縁層は、通例有機絶縁樹脂が極めて有用である。更には、有機絶縁樹脂は感光性であることが、製造上並びに装置の小型化の観点で実用的である。
【0027】
本願発明では、前記実装用基板との間に空間を保持する絶縁層に、多層配線部、クロス配線部を内蔵させることが肝要である。この内蔵のため、前記空間を保持する絶縁層が有機絶縁物層であることが有用である。こうして本願発明では、素子の動作原理に沿って、空間を確保する観点と、多層配線部分も含めて、より装置のディメンジョンを小さなものとする二つの要請を満足させることが可能である。
【0028】
更に、多層配線部、クロス配線部から、ビアーホールを経由して、当該絶縁層から配線を引き出すことが可能である。そして、この場合、前記多層配線、クロス配線部の上部にビアーホールを設けることが可能である。この構造は、装置のより小型化を実現する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、前記課題を解決することが出来る。即ち、
(1)空構造を有する素子のパッケージに於いて、多層配線或いはある配線を跨いで別の配線を形成出来るため配線自由度を確保することが出来る。更に、本実装構造体では、線長を短縮することが出来、高速伝送信号を効率よく通すことが出来る。
(2)有機絶縁樹脂を用いて、これらの工程をウェハ単位で形成することが可能である。本発明の採用によって、ウェハレベルCSP(Chip Size Package Chip Scale Package)、工数を削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本願発明の実施の諸形態を説明するに先立って、本発明の実用上の観点から、補足説明する。本願発明の具体的な形態を述べるならば、素子を形成する基板上に配置された圧電デバイス、弾性表面波デバイス、バルク弾性波などの振動を利用する素子又は、素子を形成する基板と前記素子を形成する基板上に形成され、電力を印加することで可動する部分を有する素子のパッケージにおいて、素子を形成する基板の上に形成された素子、配線、および必要に応じて、3次元的配線構造、空隙形成層、空隙上に形成された封止層、及び外部回路との接続用端子から成る構成部材を含む実装構造体、いわゆるパッケージ形態ということが出来る。
【0031】
多層配線構造、あるいは実用上のその代表的形態である、ある配線を跨ぐための配線(以下、クロス配線と称する)を形成するため、下層配線部分(クロス配線の場合は、クロス部分)に絶縁層を形成し、その上に配線を形成する。配線の迂回を必要とせず、短距離の配線を採用することが出来る。このことは、とりわけ、信号の遅延時間の短縮に有用である。更に、迂回配線を行った場合、絶縁層の外部への引き出しのためのビア・ホールを必要とするが、こうした配線も回避することを可能とする。多層配線による少スペースの確保、電気特性の観点からは、寄生容量を小さなものとすることができる。
【0032】
そして、更に、次のような構成を採用して、ウエハ状態での加工を可能とする。
(1)基板表面に空間を必要とする素子部分と電極以外の部分に樹脂層を形成する。
(2)少なくとも基板表面の電極を除く部分を樹脂フィルムで覆う。
(3)これらの工程をウェハ単位で形成する。
【0033】
尚、ここで基板と記したのは素子を形成する為の基板を指すことは言うまでもない。
【0034】
更に、本願発明の別な側面では、電極取り出しに関して、次の構成を採用することが、有用である。電極部分に接合金属を採用し、リフローを行うことによって、良好な電極を形成する。これは、前記空間を構成する絶縁層及びこの空間の天井層を含めて、その厚みは40μm以上、実用的には50μm〜60μmとなる。この為、基板から少なくとも深さ40μm以上の凹部から外部に接続する必要が生ずる。この場合、本例では、電極材料(具体例でははんだ材料)をリフローすることによって、電極部には凹部を有さず、この絶縁層の外部に十分な電気的接続を可能とする。この部位について、図14を用いて説明する。図14(a)は電極を構成する各層が積層された状態を示す断面図、図14(b)はリフロー後の状態を示す断面図である。基板1上に配線用のアルミニウム層2が形成されている。層12及び13は感光性絶縁樹脂層(例えば、有機絶縁樹脂層)で、櫛歯電極の為、空間を形成している層である。そして、この上部に電極層が形成される。当該電極の代表的な材料は、Ti層或いはCr層41、Cu層42、Ni層43及び、Sn層或いはSnAg層44の積層体をあげることが出来る。リフロー工程によって、前記Sn層或いはSnAg層44がリフローされ、層44’となり、電極部の凹部を埋めることが出来る。通例、Ti層或いはCr層、Cu層はスパッタ法、Ni層及び、Sn層或いはSnAg層はめっきで形成される。
【0035】
以下に本発明の実施の諸形態について図面を用いて説明する。尚、以下の各図での工程図などの参照符号は、新たに加えられる箇所について、主に付すこととする。従って、参照符号が付されない部位は、それまでの部位を意味するものである。
【0036】
<実施の形態1>
本発明は、素子上に空隙部を必要とする実装構造体或いはパッケージ全般に適用することが可能である。従って、本説明では、SAWフィルタを例として記述するが、素子上に空隙部を必要とするいずれの素子に対しても、同様な工程を適用することが可能である。素子を形成する基板1は、SAWフィルタを形成するために用いられている圧電基板(リチウムタンタレート)とした。SMRフィルタやMEMSでは、シリコンウェハ、セラミクス、有機基板、絶縁を施した金属基板など、それぞれの素子に最適な基板を用いる必要がある。SAWフィルタのウェハレベルパッケジングプロセスを図1から図6を用いて説明する。ここでは、リチウムタンタレート上に形成された1つの櫛歯電極(IDT(Inter Digital Transducer)とも記す)と2つの電極について拡大記載するが、SAWフィルタ全体は、図15として写真になる図面に示すようなパターン複数個から成り、リチウムタンタレート上には同様の形状の素子群41が複数個形成されている(図16)。
【0037】
[素子形成工程]
図1(a)より図1(g)までの工程は素子形成工程である。
(1−1)ウエハ準備工程:
基板1を準備する。ここでは、基板1は、リチウムタンタレートとした(図1(a))。
(1−2)IDT電極形成工程:
リチウムタンタレート1上に、アルミニウム膜(又は、アルミ銅合金膜、例えばAl05Cu膜)2をスパッタ法によって成膜した(図1(b))。ここで、膜厚は0.2マイクロメートルとした。
(1−3)レジスト膜形成工程:
前述のアルミニウム膜2の上に、レジスト3を塗布した(図1(c))。尚、ここで、図1(c)には、レジスト3の下部に反射防止膜4が設けるように図示されている。反射防止膜4は、必ずしも必要でないが、加工上の観点から有利で、必要に応じて設けられる。ここで用いるレジストは、図1(f)工程で用いるエッチング工程(ドライエッチング又は、ウェットエッチング)に耐性があれば、その種類について制約を設けるものではない。この例では、レジストは感光性樹脂を用いた。
(1−4)UV露光工程:
こうして準備された基板1に、フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図1(d))。
(1−5)現像・ベーク工程:
レジスト現像液を用いて、レジスト膜3を現像し、次いで、通例のベーキングを行って、所定のパターンを形成した(図1(e))。
(1−6)エッチング工程:
図1(c)に示す工程で成膜したアルニウム膜2を、図1(e)に示す工程で形成したレジスト膜3をマスクとしてエッチング除去した(図1(f))。ここでは、ドライエッチング、ウェットエッチングを用いることが可能であり、反射防止膜4もアルミニウム膜2とともに除去される。この例では、精度を必要とする理由により、エッチングガス(三塩化ホウ素、塩素、窒素の混合ガス)7によるドライエッチングを用いた。
(1−7)レジスト除去工程:
図1(d)に示す工程で形成したレジスト膜3を剥離した(図1(g))。一般的に、レジスト剥離は、有機溶剤による溶解、アルカリによる溶解、ドライプロセス工程を用いることが可能である。ここでは、電極材料にアルミニウムを用いたため、アルカリを用いることは不可であるが、有機溶剤による溶解、ドライプロセスを選択することが可能であった。ここでは、工程の簡便な理由により、有機溶剤により溶解した。用いる有機溶剤は、レジストを溶解しかつアルミニウムの腐食を防止できれば、制約を設けるものではない。ここでは、アセトンを用いた。形成された櫛歯電極9の例を図15に示す。図15は平面図で、断面図(図1(g))において、符号9として櫛歯状部分を例示するものである。ここでの櫛歯1本あたりの線幅は、1〜5マイクロメートル程度である。前記断面図、図1(g)において、符号8の部分はクロス配線部の基板側配線を示す。
【0038】
[クロス配線用絶縁膜の形成工程]
次に、図2(a)より図2(c)を用いて、クロス配線用の絶縁層の形成の工程を説明する。
(2−1)絶縁材料膜形成工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1には、クロス配線部8を跨ぐ配線を形成されている。この配線により、設計の自由度を持たせることができる。感光性絶縁樹脂(例えば、有機絶縁樹脂)10を塗布する(図2(a))。ここでは、ワニス状感光性ポリイミドを用いた。この工程での、感光性絶縁樹脂に対する要求特性として、この樹脂のパターニングに用いる薬剤によって、櫛歯電極9(材質:アルミニウム(または、アルミ銅合金))を浸食しなければ、特に制約を設けるものではない。また、本工程は、MEMSパッケージやFBARフィルタ、SMRフィルタのパッケージとして用いる事が可能である。そして、この場合も、感光性絶縁樹脂に対する要求特性として、それら各素子の構成材料を浸食しなければ、特に制約を設ける物ではない。
(2−2)UV露光工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1に対して、フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図2(b))。
(2−3)現像・ベーク工程:
現像液を用いて、前記感光性樹脂層10を所定のパターン11を形成した(図2(c))。ここでは、感光性樹脂層10は、図2(a)の工程で感光性ポリイミドを用いたため、N−メチル−2−ピロリドンを主成分とする感光性ポリイミド専用現像液を用いた。現像後は、イソプロピルアルコールでリンス処理を行い、所定のベークを行った。
【0039】
[クロス配線用配線の形成工程]
次に、図3(a)より図3(i)を用いて、クロス配線用配線の形成の工程を説明する。
(3−1)レジスト膜形成工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1上に、レジスト膜3を形成した。この層3は、後に説明するように、クロス配線20を接続するためのクロス配線電極21以外の部分を覆うためである。(図3(a))。ここで用いるレジストは、(1)図3(c)工程で用いるエッチング工程(ドライエッチングまたは、ウェットエッチング)に耐性があり、(2)図3(d)工程でのアルミニウム(または、アルミ銅合金)2成膜時の温度に対する耐性があり、(3)図3(g)工程でのレジスト剥離工程で剥離することが可能であれば、その種類について制約を設けるものではない。
(3−2)UV露光工程:
基板1上に、フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図3(b))。
(3−3)現像・ベーク工程:
レジスト現像液を用いて、前記レジスト膜3を、所定のパターンに形成した(図3(c))。
(3−4)クロス配線形成工程:
アルミニウム(又は、アルミ銅合金)2をスパッタ法により成膜した(図3(d))。このアルミニウム膜2は0.8マイクロメートルの厚みとした。この膜厚は、電気的特性をもって決定されるものである。
(3−5)レジスト膜形成工程:
この上部に、レジスト膜3’を塗布した(図3(e))。ここで用いるレジストは、図3(h)の工程で用いるエッチング工程(ドライエッチング又は、ウェットエッチング)に耐性があれば、その種類について制約を設けるものではない。
(3−6)UV露光工程:
フォトマスク6を介して、前記レジスト膜3’に対して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図3(f))。
(3−7)現像・ベーク工程:
レジスト現像液を用いて、前記レジスト膜3’を所定のパターンに形成した(図3(g))。必要に応じて、現像後にベーク工程を行う。
(3−8)クロス配線パターン・エッチング工程:
図3(d)で成膜したアルミニウム層2を、レジスト膜3’をマスクとして、エッチング除去した(図3(h))。ここでは、ドライエッチング、ウェットエッチングを用いることが可能であったが、精度を必要とする理由により、エッチングガス(三塩化ホウ素、塩素、窒素の混合ガス)によるドライエッチングを用いた。
(3−9)レジスト除去工程:
レジスト3、3’を剥離した(図3(i))。レジスト剥離は、有機溶剤による溶解、アルカリによる溶解、ドライプロセス工程を用いることが可能である。ここでは、電極材料にアルミを用いたため、アルカリを用いることは不可であるが、有機溶剤による溶解、ドライプロセスを選択することが可能であった。ここでは、工程の簡便な理由により、有機溶剤により溶解した。用いる有機溶剤は、レジストを溶解しかつアルミの腐食を防止できれば、制約を設けるものではない。
【0040】
[側壁形成工程]
次に、図4(a)より図4(g)を用いて側壁形成の工程を説明する。尚、ここで、「側壁」とは、本発明の前提となる素子が要求する空間的可動部分を確保する空間を構成する部材を指す。この側壁部材によって、前記空間が確保される。
(4−1)櫛歯電極保護レジスト膜形成工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1上に、櫛歯電極を保護するためのレジスト3’’を塗布した(図4(a))。ここで用いたレジストは、ノボラック系のポジ形レジストを用いた。ここで用いるレジストには以下の特性が必要である。
(A)図4(f)で形成するパッケージ側壁パターニング用現像液に耐性があること。
(B)図4(f)で形成するパッケージ側壁を仮硬化させる温度で、分解等の変質が起こらないこと。
(C)図4(f)で形成するパッケージ側壁を仮硬化させた後、図4(g)の保護膜除去工程で取り除くことが可能であること。
ここで用いたノボラック系レジストの塗布後ベーク温度は90℃/30分とした。
(4−2)UV露光工程:
基板1上に、フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図4(b))。
(4−3)現像・ベーク工程:
レジスト現像液を用いて、レジスト膜3’’を所定のパターンを形成した(図4(c))。必要に応じて、現像後にベーク工程を行う。ここでは、140℃/30分とした。
(4−4)第1絶縁層ラミネート工程:
感光性絶縁樹脂(フィルム形状が望ましい)12を用いて、パッケージの側壁の為の層を形成した(図4(d))。この樹脂は、ワニス状でも使用可能であるが、シート状の材料の方が、厚く形成できること、また、前工程までに形成したレジスト3を浸食しない理由により、シート状の感光性耐熱樹脂が適当と判断し、ラミネータを用いて貼り付けた。
(4−5)UV露光工程:
フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図4(e))。
(4−6)現像・ベーク工程:
前記感光性絶縁樹脂膜12の照射されない部分を溶解除去した(図4(f))。パターン形成後、140℃で仮硬化した。
(4−7)レジスト除去工程:
レジスト膜3’’を除去し、パッケージ側壁の形成および電極材料を露出した(図4(g))。ここで、パッケージ側壁の形成を形成した樹脂へのダメージを少なくするため酸素プラズマによるドライプロセスを用いた。その後、本ベークを行った。例えば、パッケージ側壁および電極を形成した感光性絶縁樹脂12の仮硬化条件を140℃とすると、レジストの剥離液(アセトン、酢酸ブチルなどの溶剤)を用いることも可能である。
【0041】
[実装構造体の天井形成工程]
次に、図5(a)よりより図5(c)を用いて天井形成の工程を説明する。尚、ここで、「天井」とは、本発明の前提となる素子が要求する空間的可動部分を確保する空間の上部を覆う部材を指す。この天井部材は、実装方法によって、外部用パッケージを兼用することも可能である。
(5−1)第2絶縁層形成工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1上に、素子を保護するための感光性絶縁樹脂(フィルム形状)13を貼り付けた(図5(a))。ここで用いる天井用材料は、前述のパッケージ側壁と必ずしも同じである必要はなく、また、厚さについても適宜変更することが出来る。ここでの天井用樹脂は、ラミネータを用いて貼り付けた。
(5−2)UV露光工程:
基板1上に、フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図5(b))。
(5−3)現像・ベーク工程:
前記感光性絶縁樹脂膜13の照射されない部分を除去した。パターン形成後、140℃で仮硬化した。その後、本ベークを行った。
【0042】
[電極形成工程]
次に、図6(a)よりより図6(h)を用いて電極形成の工程を説明する。
(6−1)給電膜形成工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1上に、電気めっきで、はんだバンプを形成するための給電膜(Ti/Cu)14をスパッタで形成した(図6(a))。ここでの給電膜用の金属膜の構成は、チタン(50ナノメートル)/銅(1マイクロメートル)とした。ここでの下層部のチタンの機能は、その下に位置する感光性樹脂材料との接着を確保することにあり、その膜厚はそれらの接着を維持する最低限でかまわない。所要膜厚は、スパッタエッチング及びスパッタの条件、チタンの膜質などによっても変動する。
(6−2)レジスト・ラミネート工程:
レジスト(光硬化型フィルム形状が望ましい)15を用いて、基板1上に、はんだバンプ形成用のレジストを貼り付けた(図6(b))。ここで用いるレジストは、図6(e)に記述する、錫めっき(はんだめっき)に対する耐性が有ればよい。しかし、図6(d)に示すとおり、基板1上に形成されるパターン形状は、深い凹部30を有する。この為、その部分にレジスト15が埋め込まれるとレジスト剥離工程で剥離残りが発生する可能性がある。本発明では、フィルム状のレジストを用い、深い凹部30に埋め込まれないようにした。
(6−3)UV露光工程:
基板1に、フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図6(c))。
(6−4)現像・ベーク工程:
レジスト現像液を用いて、前記レジスト15を、所定のパターンに形成した(図6(d))。必要に応じて、現像後にベーキングを行う。
(6−5)Snめっき工程:
基板1上に、錫または、錫を主成分とする、はんだ16をめっき手法により形成した(図6(f))。ここで図示したメタライズ構成は、給電膜(Ti/Cu)14とし、はんだ16を錫又は、錫を主成分とする、はんだとしたが、より実際的には、給電膜(Ti/Cu)14上にニッケルを形成し、その上に錫を主成分とする、はんだ16を形成することで、接合信頼性の向上を図ることができる。
(6−6)レジスト膜除去工程:
はんだめっき後に、図6(d)で形成したレジスト15を剥離す(図6(f))。レジストの剥離は液状のレジスト、フィルム状のレジスト共、アルカリ、有機溶剤を用いることが出来る。ここでは、フィルム状のレジストを用い、剥離液には水酸化ナトリウムの3%溶液を40℃に加熱して用いた。
(6−7)給電膜除去工程:
次いで、給電膜14を、所望形状に加工する(図6(g))。給電膜14は複合膜であるので、各層毎、個別に加工した。給電膜14として用いた銅をウェットエッチングの手法を用いてパターニングした。銅のエッチングには、塩化鉄、アルカリ系エッチング液等の種類があるが、本実施例では硫酸/過酸化水素水を主成分とするエッチング液を用いた。ここでのエッチングでは、10秒以上のエッチング時間がないと制御が困難となって実用的観点では不利であるが、余りに長い時間エッチングを行うと、例えば5分を越えてエッチングするような場合には、サイドエッチングが大きくなり、タクトが長くなるという問題も生じる。そのため、エッチング液及びエッチング条件は、適宜実験により求めるのがよい。その後、ウェットエッチング手法を用いて、チタン膜をエッチングした。チタンのエッチングには、過酸化水素を主成分とするエッチング液、又は、フッ化水素を含有するエッチング液があるが、いずれを用いても良い。
(6−8)フラックス塗布・リフロー工程:
錫または錫を主成分とする、はんだ16の表面にフラックスを塗布し、リフローを行うことで、球形のはんだバンプ16’を形成した。
【0043】
<実施の形態2>
実施の形態2は、実施の形態1において言及したように、レジスト膜の形成に先立って、反射防止膜を設けておく例である。工程図は、実施の形態1で用いた図と同様である。従って、反射防止膜を設けることによって、変更される工程がある場合について図示することとする。
【0044】
[素子形成工程]
(1−1)ウエハ準備工程、櫛歯電極形成工程:
実施の形態1と同様であるので、図1(a)より図1(b)に示されるように、アルミニウム膜2を形成する。
(1−2)反射防止膜/レジスト膜形成工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1に、反射防止膜4を塗布し、その上に、レジスト3を塗布した。反射防止膜4の役割は、図1(d)でのUV露光工程での、紫外線光5の反射によるレジスト3パターン変形を防止する事にある。ここで用いるレジストは、図1(f)工程で用いるエッチング工程(ドライエッチング又は、ウェットエッチング)に耐性があれば、その種類について制約を設けるものではない。
(1−3)〜(1−5)UV露光工程、現像・ベーク工程、エッチング工程:
各工程は、実施の形態1と同様である(図1(d)、(e)、(f))。
(1−6)反射防止膜及びレジストを剥離:
図1(c)で形成した反射防止膜及びレジストを剥離した(図1(g))。一般的に、レジスト剥離は、有機溶剤による溶解、アルカリによる溶解、ドライプロセス工程を用いることが可能である。ここでは、電極材料にアルミを用いたため、アルカリを用いることは不可であるが、有機溶剤による溶解、ドライプロセスを選択することが可能であった。ここでは、工程の簡便な理由により、有機溶剤により溶解した。用いる有機溶剤は、レジストを溶解しかつアルミの腐食を防止できれば、制約を設けるものではない。なお、本工程では、反射防止膜を完全に除去するため、有機溶剤による溶解を選択した場合でも、仕上げ工程としてドライプロセスを採用することが望ましい。
【0045】
[クロス配線用絶縁層の形工程]
実施の形態1での工程、図2(a)より図2(c)と同様である。
【0046】
[クロス配線用配線層の形工程]
本例では、図7(a)より図7(j)を実施する。図7(i)までの工程は、実施の形態1での工程と同様である。
【0047】
次いで、図7(j)に示すように、反射防止膜4を塗布した。反射防止膜4の役割は、図8(b)のUV露光工程での紫外線光5の反射によるレジスト3パターン変形を防止する事にある。
【0048】
[側壁形成工程]
図8(a)より図8(g)を実施する。図8(f)までの工程は、反射防止膜4を有する以外、実施の形態1での工程と同様である。
【0049】
次いで、図8(g)に示すようにレジスト3を除去した。パッケージ側壁及び電極を形成した樹脂の仮硬化条件を140℃/30分としているため、レジストの剥離液(アセトン、酢酸ブチルなどの溶剤)を用いることも可能であるが、パッケージ側壁及び電極を形成した樹脂へのダメージを少なくするため酸素プラズマによるドライプロセスを用いた。その後、本ベークを160〜200℃/60分で行った。尚、本工程では、反射防止膜を完全に除去するため、有機溶剤による溶解を選択した場合でも、仕上げ工程としてドライプロセスを採用することが望ましい。
【0050】
[実装構造体の天井形成工程]
図9(a)より図9(c)を実施する。この工程は、反射防止膜4を有する以外、実施の形態1での工程と同様である。
【0051】
[電極形成工程]
図10(a)より図10(h)を実施する。これまでの工程は、反射防止膜4を有する以外、実施の形態1での工程と同様である。
【0052】
<実施の形態3>
[素子形成工程]、[クロス配線用絶縁膜形成工程]、[クロス配線用配線形成工程]:
各工程は、実施の形態2と同様である。各々、図1、図2、図7に示される。
【0053】
[実装構造体の側壁形成工程]
本例では、図4(a)より図4(c)及び図8(a)より図8(c)で、用いていた櫛歯電極保護のためのレジストの役割を、図7(j)のクロス配線用配線の形成工程で形成した反射防止膜4に担わせることで、工程の簡略化を図る。
【0054】
クロス配線用配線形成工程の反射防止膜4の形成を終えると、図11(a)に示すように、第1絶縁層12をラミネートする。そして、UV露光工程、現像・ベ−ク工程はこれまでと同様である。
【0055】
次いで、反射防止膜4をアッシングにより除去した(図11(d))。ここでは、ドライプロセスを採用することが望ましい。
【0056】
[実装構造体の天井形成工程]
図12(a)より図12(c)に示すように、反射防止膜4を有する以外、これまでの例と同様である。
【0057】
[電極形成工程]
図13(a)より図13(h)を実施する。これまでの工程は、反射防止膜4を有する以外、これまでの工程と同様である。
【0058】
<実施の形態4>
図17及び図19、及び図20を用いて、本発明により作製したパッケージを実装基板に搭載する方法について説明する。
【0059】
図17(a)及び図17(b)に、比較のため、従来の金属キャップによるパッケージ実装と本発明によるパッケージ実装の断面図を示す。図17(a)の金属キャップを用いたパッケージでは、完成した素子24(SAWフィルタでは、櫛歯電極)を上にして、ビアホール22が形成された基板18上に形成されている。ワイヤーボンド23を用いて、素子24に設けられたワイヤーボンド用パッド25と結線されている。そして、実装装置の全体が金属キャップ19で覆われている。一方、本発明によるパッケージは、図17(b)のように、素子24(或いはクロス配線部20)部分が樹脂12及び13で覆われている。尚、図において、他の部分はこれまで説明したものと同様である、即ち、符号1は素子を形成する基板(例えば、リチウムタンタレート)、2はアルミニウム層、16ははんだである。
【0060】
これらのパッケージされた素子の実装基板26への搭載方法を図19、図20に示す。図18は従来技術による実装方法である。これについては前述した。
【0061】
図19に示したようなパッケージをモジュール用の実装基板26に複数個搭載し、場合よっては、別の半導体素子など(図示せず)を搭載し、全体を金属キャップ19で封止している。本発明によるパッケージでは、金属キャップ19で封止しているものの、そのキャップは1重であり、図18に例示する従来方法と比較して、低背化することが可能となる。また、このパッケージ以外に、図20に示すように、最外周部分の金属キャップ19を廃止することも可能となる。
【0062】
以上、本願発明を詳細に説明したが、本発明はSAWフィルタ、BAWフィルタ、MEMSなどの表面に空間を必要とする素子をウェハレベル小型化パッケジングし、外気雰囲気に直接曝した場合、湿度、酸化等の影響を受ける機構を有するものの保護に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、実施の形態1における、素子形成工程を順次示す断面図である。
【図2】図2は、実施の形態1における、クロス配線用の絶縁層を形成する工程を順次示す断面図である。
【図3】図3は、実施の形態1における、クロス配線用の配線を形成する工程を順次示す断面図である。
【図4】図4は、実施の形態1における、実装構造体の側壁を形成する工程を順次示す断面図である。
【図5】図5は、実施の形態1における、実装構造体の天井を形成する工程を順次示す断面図である。
【図6】図6は、実施の形態1における、電極を形成する工程を順次示す断面図である。
【図7】図7は、実施の形態2における、クロス配線用配線層を形成する工程を順次示す断面図である。
【図8】図8は、実施の形態2における、実装構造体の側壁を形成する工程を順次示す断面図である。
【図9】図9は、実施の形態2における、実装構造体の天井を形成する工程を順次示す断面図である。
【図10】図10は、実施の形態2における、電極を形成する工程を順次示す断面図である。
【図11】図11は、実施の形態3における、実装構造体の側壁を形成する工程を順次示す断面図である。
【図12】図12は、実施の形態3における、実装構造体の天井を形成する工程を順次示す断面図である。
【図13】図13は、実施の形態3における、電極を形成する工程を順次示す断面図である。
【図14】図14は、電極例の拡大断面図である。
【図15】図15は、櫛歯電極の拡大図である。
【図16】図16は、ウェハ全体を例示する図である。
【図17】図17は、素子部の各種実装方法を示す断面図である。
【図18】図18は、実装基板への素子の実装方法の従来例を示す断面図である。
【図19】図19は、本願発明になる実装基板への素子の実装方法の例を示す断面図である。
【図20】図20は、本願発明になる実装基板への素子の実装方法の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1…基板(代表例はリチウムタンタレート)、2…アルミニウム(又は、アルミ銅合金)膜、3…レジスト、4…反射防止膜、5…紫外線光、6…フォトマスク、7…エッチングガス(三塩化ホウ素、塩素、窒素の混合ガス)、8…クロス配線部、9…櫛歯電極、10…感光性絶縁樹脂、11…クロス配線部絶縁層、12…感光性絶縁樹脂(フィルム形状が望ましい)、13…感光性絶縁樹脂(フィルム形状)、14…給電膜(Ti/Cu)、15…レジスト(光硬化型フィルム形状が望ましい)、16…錫又は、錫を主成分とするはんだ、17…反射防止膜、18…基板、19…金属キャップ、20…クロス配線、21…クロス配線電極、22…ビアホール、23…ワイヤーボンド、24…素子、25…ワイヤーボンド用パッド、26…モジュール用の実装基板、27…接続用はんだ、28…接続端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子基体の表面に空間を必要とする素子及び立体配線を有する実装構造体に関するものである。こうした実装構造体の例として、例えば、SAW(surface acoustic wave)フィルタ、BAW(bulk acoustic wave)フィルタ、MEMS(micro-electro-mechanical systems)などの、素子基体の表面に空間を必要とする素子のウェハレベル小型化パッケジングを挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
メモリーやロジックなど、一般的な半導体素子の表面は、それらが使用されようとしている段階では、パッケージ材料であるSiNなどの無機膜やモールド樹脂が形成されている。つまり、半導体素子表面に実装の為のパッケージ材料が直接接している。
【0003】
一方、SAWフィルタなど部品表面の振動を利用している素子のパッケージの場合、当該素子の基体表面にパッケージ材料が直接形成されている為、その素子上に、部材の振動を可能とする為の空間が必要である。素子部品の振動を利用するフィルタの代表例として、BAWフィルタがある。BAWフィルタは、バルク弾性波と呼ぶ圧電膜自体の共振振動を利用するフィルタであり、FBAR型(film bulk acoustic resonator)やSMR(solid mounted resonator)型がある。FBAR型は共振器の下部に空洞を設けることで,圧電膜を自由に振動させ、SMR型は,共振器の下部に音響多層膜(ミラー層)を設けることで弾性波を反射させる。
【0004】
MEMSは、微細な可動部分を動かすことで、ある機能を持たせる技術であり、その特徴は、従来の電子機器と異なり、基板(シリコンウェハ)上に可動部を持つことである。
【0005】
これらの素子は、何れも振動や駆動部分があり、素子基体表面に空間を必要とする。
【0006】
従来型のパッケージとして、金属キャップを用いたパッケージがある。図17(a)にその断面図を示す。ビアホール22が形成された基板18を準備し、この上に完成した素子24(SAWフィルタでは、櫛歯電極)を上にして実装する。素子用基板1の上部にワイヤーボンド用パッド25が設けられる。そして、素子24が、ワイヤーボンド23を用いて、ワイヤーボンド用パッド25と結線されている。図17(a)において、符号19は金属キャップ、符号28は接続端子である。また、このパッケージを実装用基板に搭載する実装形態の例は、例えば、図18に例示される。モジュール用基板26に、前述のパッケージ30、31が、複数個搭載される。又、場合によっては、別の半導体素子など(図示せず)を搭載し、全体を金属キャップ19で封止している。しかし、この実装形態では、金属キャップ19が2重に形成されることになり、装置の高さを低くする、いわゆる低背化は、困難である。組立ては、ウェハ状態から素子を個片化し、個々に組み立てていたため、工程数が多いといった課題があった。
【0007】
更に、これまで、これらの課題を解決するため、金属キャップに替わり、樹脂を用いて空隙を保持しつつ、パッケージする技術が提示されている。それらは、例えば、下記特許文献1から特許文献11である。
【0008】
第1の例は、特開2002−532934号に示された構造である(特許文献1)。この例は、素子を個片に切り出した後に、例えば、第3層を形成するに当たり、小形部品を扱う必要があり煩雑な作業を要する。
【0009】
第2の例は、特開2004−514316号に示された構造である(特許文献2)。この例は、空隙部上面にアルミが形成されるなど、煩雑な作業を必要とする。又、このアルミ層がコンタクトバンプと称する、外部との接続用はんだボールと接触し、短絡の原因とも成る。
【0010】
第3の例は、特開2003−037473号に示された構造である(特許文献3)。この例では、基体上面を形成するため、エポキシ系接着剤を用いている。この系の接着剤は、接着剤の硬化時に発ガスがある。或いは、接着剤の硬化時にはガス発生が無くとも、はんだ接続時にはガス発生がある。こうしたガスの発生により、素子部に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0011】
第4の例は、特開2003−347357号に示された構造である(特許文献4)。この例は、半導体・MEMS素子の機能面をサブストレートに正対するように搭載し、サブストレートと半導体・MEMS素子を電気的に接合させてなる半導体・MEMSパッケージである。そして、半導体素子機能面とサブストレートの間に空隙を設けるために、半導体・MEMS素子上に感光性絶縁樹脂を配置し、該空隙部をフォトリソグラフィーの手法により形成する半導体パッケージの製造方法をとっている。
【0012】
第5の例は、圧電基板と、その圧電基板上に形成された櫛歯電極と、その櫛歯電極上に空隙を形成する空隙形成層と、前記櫛歯電極を封止する封止層とを備えた表面弾性波素子の例である(特許文献5)。
【0013】
第6の例は、電力を印加することで可動するMEMS素子部分と、このMEMS素子部分とシリコンウエハとの間に空隙を形成して封止する上面保護フィルムとを有するパッケージの例である(特許文献6)。
【0014】
第7の例は、感光性部材を電極が形成されている表面に貼り付ける工程と、感光性部材が完全に感光する光度よりも小さな光度で、感光部材を全面露光する工程と、感光性部材が完全に感光する光度で感光部材を、マスクを介して露光する工程と、未露光感光性部材を溶出する工程とを含むデバイスの製造法である(特許文献7)。この例の樹脂の貼り付け・露光方法は、本発明の手法は、本発明の製造方法と異なる。
【0015】
第8の例は、半導体基板とキャップ基板との間隔を均一に保ち、半導体基板とキャップ基板との間隔を、スペーサによって自由に制御した半導体パッケージの例である。(特許文献8)。本例は、キャップ基板の形成方法、材料など、本発明の構造体とは異なる。
【0016】
第9の例は、MEMSデバイスや圧電デバイスや弾性表面波デバイスが、個別に良好に封止して保護されているデバイスを提供する。その骨子は、基板上に配置されたMEMSデバイス、圧電デバイス、弾性表面波デバイスなどの基板上に、樹脂材料からなる枠部材と、この枠部材上に熱可塑性樹脂を介して蓋部材で封止したデバイス装置である(特許文献9)。
【0017】
第10の例は、SAWフィルタ素子の表面近傍に中空部を必要とする弾性表面波フィルタに関する。圧電基板の主面上に櫛歯電極及びボンディングパッド等で形成されるフィルタ機能部を配置し、このフィルタ機能部を取り囲むように樹脂を塗布して支持枠を形成する。この支持枠の開口部に蓋体を被せることでフィルタ機能部上に中空部を設けたSAWフィルタの製造方法である(特許文献10)。この蓋体の外形形成を、前記支持枠に貼り合わせた後に成形する。この方法で形成されたパッケージでは、別の基板に搭載する必要がある。この構造は、本発明と異なる。
【0018】
第11の例は、実装基板に実装したSAWチップの外面を、加熱軟化させた樹脂シートにより被覆すると共に、SAWチップに樹脂を充填させることにより、櫛歯電極の下方に気密空間を形成したSAWデバイスに関するものである(特許文献11)。この発明では、パッケージした物を別の基板に搭載し、それ全体を別シートでラミネートする構造体であり、本発明と異なる構造体である。
【0019】
【特許文献1】特表2002−532934号公報
【特許文献2】特表2004−514316号公報
【特許文献3】特開2003−037473号公報
【特許文献4】特開2003−347357号公報
【特許文献5】特願2005−145667号公報
【特許文献6】特願2005−274862号公報
【特許文献7】特開2005−12638号公報
【特許文献8】特開2006−147864号公報
【特許文献9】特開2005−285864号公報
【特許文献10】特開2004−253937号公報
【特許文献11】特開2004−363770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
これまでの技術を背景に、基板表面に空間を必要とする素子をパッケージするには、以下の課題がある。
【0021】
第1の観点は、素子動作の原理から空間を必要とする素子の実装に当たって、配線の為のスペースを、より小さなものにする実装構造体を提供するものである。基板表面に空間を必要とする素子に対して、この目的の空間を確保したパッケージを単に設けることでは、配線を配置することが直接考慮されていない。この為、別の箇所に配線を設け、又多層配線となす場合でも、例えば、配線を迂回させる必要がある。従って、こうした装置では、前述の如く設けられる空間が、装置の小型化及び設計自由度確保の妨げとなっている。
【0022】
第2の観点は、容易にウエハ・レベルでの実装を可能とする実装構造体を提供するものである。部品となる素子の小片化後、改めての装置の組み立てを必要としないことが要請されている。従来のパッケージは、次の手順を取っている。素子を小片化した後、この素子を実装用基板に搭載する。この実装基板と前記素子とをワイヤーボンディングで結線する。そして、実装基板に対して、金属キャップを用いてパッケージを行っている。この為、金属キャップ分の厚さが必要であった。また、小片化して組立てを行っていたため、工数が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本願発明の骨子は、次のような実装構造体である。即ち、実装用基板と、この上部に、空間的可動部分を有する素子部材と、多層配線部と、実装用基板との間に空間を保持する絶縁層と、を少なくとも備え、前記実装用基板上に設けられた空間的可動部分を有する素子部材は、前記絶縁層が前記実装用基板との間に空間部分を構成するように配置され、且つ前記実装用基板との間に空間を保持する絶縁層内に、前記多層配線部が配置されてなること、を特徴とする実装構造体である。
【0024】
更に、別な観点では、次のような実装構造体である。即ち、実装用基板と、その上部に形成された機械的可動部を有する機能素子と、多層配線部と、機能素子部に空間を保持する第1の有機絶縁層と、機能素子部を封止する第2の有機絶縁層と、を少なくとも備え、前記第1の有機絶縁層内に、前記多層配線部の少なくとも一部が配置してなる実装構造体である。
【0025】
ここで、空間的可動部分ないしは機械的可動部を有する素子部材とは、素子の動作上の原理から、部材の振動を利用するSAWフィルタ、BAWフィルタ或は素子部材の微細可動を利用するMEMSなどを含む電気・電子部材を意味する。
【0026】
実装用基板との間に空間を保持する絶縁層は、通例有機絶縁樹脂が極めて有用である。更には、有機絶縁樹脂は感光性であることが、製造上並びに装置の小型化の観点で実用的である。
【0027】
本願発明では、前記実装用基板との間に空間を保持する絶縁層に、多層配線部、クロス配線部を内蔵させることが肝要である。この内蔵のため、前記空間を保持する絶縁層が有機絶縁物層であることが有用である。こうして本願発明では、素子の動作原理に沿って、空間を確保する観点と、多層配線部分も含めて、より装置のディメンジョンを小さなものとする二つの要請を満足させることが可能である。
【0028】
更に、多層配線部、クロス配線部から、ビアーホールを経由して、当該絶縁層から配線を引き出すことが可能である。そして、この場合、前記多層配線、クロス配線部の上部にビアーホールを設けることが可能である。この構造は、装置のより小型化を実現する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、前記課題を解決することが出来る。即ち、
(1)空構造を有する素子のパッケージに於いて、多層配線或いはある配線を跨いで別の配線を形成出来るため配線自由度を確保することが出来る。更に、本実装構造体では、線長を短縮することが出来、高速伝送信号を効率よく通すことが出来る。
(2)有機絶縁樹脂を用いて、これらの工程をウェハ単位で形成することが可能である。本発明の採用によって、ウェハレベルCSP(Chip Size Package Chip Scale Package)、工数を削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本願発明の実施の諸形態を説明するに先立って、本発明の実用上の観点から、補足説明する。本願発明の具体的な形態を述べるならば、素子を形成する基板上に配置された圧電デバイス、弾性表面波デバイス、バルク弾性波などの振動を利用する素子又は、素子を形成する基板と前記素子を形成する基板上に形成され、電力を印加することで可動する部分を有する素子のパッケージにおいて、素子を形成する基板の上に形成された素子、配線、および必要に応じて、3次元的配線構造、空隙形成層、空隙上に形成された封止層、及び外部回路との接続用端子から成る構成部材を含む実装構造体、いわゆるパッケージ形態ということが出来る。
【0031】
多層配線構造、あるいは実用上のその代表的形態である、ある配線を跨ぐための配線(以下、クロス配線と称する)を形成するため、下層配線部分(クロス配線の場合は、クロス部分)に絶縁層を形成し、その上に配線を形成する。配線の迂回を必要とせず、短距離の配線を採用することが出来る。このことは、とりわけ、信号の遅延時間の短縮に有用である。更に、迂回配線を行った場合、絶縁層の外部への引き出しのためのビア・ホールを必要とするが、こうした配線も回避することを可能とする。多層配線による少スペースの確保、電気特性の観点からは、寄生容量を小さなものとすることができる。
【0032】
そして、更に、次のような構成を採用して、ウエハ状態での加工を可能とする。
(1)基板表面に空間を必要とする素子部分と電極以外の部分に樹脂層を形成する。
(2)少なくとも基板表面の電極を除く部分を樹脂フィルムで覆う。
(3)これらの工程をウェハ単位で形成する。
【0033】
尚、ここで基板と記したのは素子を形成する為の基板を指すことは言うまでもない。
【0034】
更に、本願発明の別な側面では、電極取り出しに関して、次の構成を採用することが、有用である。電極部分に接合金属を採用し、リフローを行うことによって、良好な電極を形成する。これは、前記空間を構成する絶縁層及びこの空間の天井層を含めて、その厚みは40μm以上、実用的には50μm〜60μmとなる。この為、基板から少なくとも深さ40μm以上の凹部から外部に接続する必要が生ずる。この場合、本例では、電極材料(具体例でははんだ材料)をリフローすることによって、電極部には凹部を有さず、この絶縁層の外部に十分な電気的接続を可能とする。この部位について、図14を用いて説明する。図14(a)は電極を構成する各層が積層された状態を示す断面図、図14(b)はリフロー後の状態を示す断面図である。基板1上に配線用のアルミニウム層2が形成されている。層12及び13は感光性絶縁樹脂層(例えば、有機絶縁樹脂層)で、櫛歯電極の為、空間を形成している層である。そして、この上部に電極層が形成される。当該電極の代表的な材料は、Ti層或いはCr層41、Cu層42、Ni層43及び、Sn層或いはSnAg層44の積層体をあげることが出来る。リフロー工程によって、前記Sn層或いはSnAg層44がリフローされ、層44’となり、電極部の凹部を埋めることが出来る。通例、Ti層或いはCr層、Cu層はスパッタ法、Ni層及び、Sn層或いはSnAg層はめっきで形成される。
【0035】
以下に本発明の実施の諸形態について図面を用いて説明する。尚、以下の各図での工程図などの参照符号は、新たに加えられる箇所について、主に付すこととする。従って、参照符号が付されない部位は、それまでの部位を意味するものである。
【0036】
<実施の形態1>
本発明は、素子上に空隙部を必要とする実装構造体或いはパッケージ全般に適用することが可能である。従って、本説明では、SAWフィルタを例として記述するが、素子上に空隙部を必要とするいずれの素子に対しても、同様な工程を適用することが可能である。素子を形成する基板1は、SAWフィルタを形成するために用いられている圧電基板(リチウムタンタレート)とした。SMRフィルタやMEMSでは、シリコンウェハ、セラミクス、有機基板、絶縁を施した金属基板など、それぞれの素子に最適な基板を用いる必要がある。SAWフィルタのウェハレベルパッケジングプロセスを図1から図6を用いて説明する。ここでは、リチウムタンタレート上に形成された1つの櫛歯電極(IDT(Inter Digital Transducer)とも記す)と2つの電極について拡大記載するが、SAWフィルタ全体は、図15として写真になる図面に示すようなパターン複数個から成り、リチウムタンタレート上には同様の形状の素子群41が複数個形成されている(図16)。
【0037】
[素子形成工程]
図1(a)より図1(g)までの工程は素子形成工程である。
(1−1)ウエハ準備工程:
基板1を準備する。ここでは、基板1は、リチウムタンタレートとした(図1(a))。
(1−2)IDT電極形成工程:
リチウムタンタレート1上に、アルミニウム膜(又は、アルミ銅合金膜、例えばAl05Cu膜)2をスパッタ法によって成膜した(図1(b))。ここで、膜厚は0.2マイクロメートルとした。
(1−3)レジスト膜形成工程:
前述のアルミニウム膜2の上に、レジスト3を塗布した(図1(c))。尚、ここで、図1(c)には、レジスト3の下部に反射防止膜4が設けるように図示されている。反射防止膜4は、必ずしも必要でないが、加工上の観点から有利で、必要に応じて設けられる。ここで用いるレジストは、図1(f)工程で用いるエッチング工程(ドライエッチング又は、ウェットエッチング)に耐性があれば、その種類について制約を設けるものではない。この例では、レジストは感光性樹脂を用いた。
(1−4)UV露光工程:
こうして準備された基板1に、フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図1(d))。
(1−5)現像・ベーク工程:
レジスト現像液を用いて、レジスト膜3を現像し、次いで、通例のベーキングを行って、所定のパターンを形成した(図1(e))。
(1−6)エッチング工程:
図1(c)に示す工程で成膜したアルニウム膜2を、図1(e)に示す工程で形成したレジスト膜3をマスクとしてエッチング除去した(図1(f))。ここでは、ドライエッチング、ウェットエッチングを用いることが可能であり、反射防止膜4もアルミニウム膜2とともに除去される。この例では、精度を必要とする理由により、エッチングガス(三塩化ホウ素、塩素、窒素の混合ガス)7によるドライエッチングを用いた。
(1−7)レジスト除去工程:
図1(d)に示す工程で形成したレジスト膜3を剥離した(図1(g))。一般的に、レジスト剥離は、有機溶剤による溶解、アルカリによる溶解、ドライプロセス工程を用いることが可能である。ここでは、電極材料にアルミニウムを用いたため、アルカリを用いることは不可であるが、有機溶剤による溶解、ドライプロセスを選択することが可能であった。ここでは、工程の簡便な理由により、有機溶剤により溶解した。用いる有機溶剤は、レジストを溶解しかつアルミニウムの腐食を防止できれば、制約を設けるものではない。ここでは、アセトンを用いた。形成された櫛歯電極9の例を図15に示す。図15は平面図で、断面図(図1(g))において、符号9として櫛歯状部分を例示するものである。ここでの櫛歯1本あたりの線幅は、1〜5マイクロメートル程度である。前記断面図、図1(g)において、符号8の部分はクロス配線部の基板側配線を示す。
【0038】
[クロス配線用絶縁膜の形成工程]
次に、図2(a)より図2(c)を用いて、クロス配線用の絶縁層の形成の工程を説明する。
(2−1)絶縁材料膜形成工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1には、クロス配線部8を跨ぐ配線を形成されている。この配線により、設計の自由度を持たせることができる。感光性絶縁樹脂(例えば、有機絶縁樹脂)10を塗布する(図2(a))。ここでは、ワニス状感光性ポリイミドを用いた。この工程での、感光性絶縁樹脂に対する要求特性として、この樹脂のパターニングに用いる薬剤によって、櫛歯電極9(材質:アルミニウム(または、アルミ銅合金))を浸食しなければ、特に制約を設けるものではない。また、本工程は、MEMSパッケージやFBARフィルタ、SMRフィルタのパッケージとして用いる事が可能である。そして、この場合も、感光性絶縁樹脂に対する要求特性として、それら各素子の構成材料を浸食しなければ、特に制約を設ける物ではない。
(2−2)UV露光工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1に対して、フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図2(b))。
(2−3)現像・ベーク工程:
現像液を用いて、前記感光性樹脂層10を所定のパターン11を形成した(図2(c))。ここでは、感光性樹脂層10は、図2(a)の工程で感光性ポリイミドを用いたため、N−メチル−2−ピロリドンを主成分とする感光性ポリイミド専用現像液を用いた。現像後は、イソプロピルアルコールでリンス処理を行い、所定のベークを行った。
【0039】
[クロス配線用配線の形成工程]
次に、図3(a)より図3(i)を用いて、クロス配線用配線の形成の工程を説明する。
(3−1)レジスト膜形成工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1上に、レジスト膜3を形成した。この層3は、後に説明するように、クロス配線20を接続するためのクロス配線電極21以外の部分を覆うためである。(図3(a))。ここで用いるレジストは、(1)図3(c)工程で用いるエッチング工程(ドライエッチングまたは、ウェットエッチング)に耐性があり、(2)図3(d)工程でのアルミニウム(または、アルミ銅合金)2成膜時の温度に対する耐性があり、(3)図3(g)工程でのレジスト剥離工程で剥離することが可能であれば、その種類について制約を設けるものではない。
(3−2)UV露光工程:
基板1上に、フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図3(b))。
(3−3)現像・ベーク工程:
レジスト現像液を用いて、前記レジスト膜3を、所定のパターンに形成した(図3(c))。
(3−4)クロス配線形成工程:
アルミニウム(又は、アルミ銅合金)2をスパッタ法により成膜した(図3(d))。このアルミニウム膜2は0.8マイクロメートルの厚みとした。この膜厚は、電気的特性をもって決定されるものである。
(3−5)レジスト膜形成工程:
この上部に、レジスト膜3’を塗布した(図3(e))。ここで用いるレジストは、図3(h)の工程で用いるエッチング工程(ドライエッチング又は、ウェットエッチング)に耐性があれば、その種類について制約を設けるものではない。
(3−6)UV露光工程:
フォトマスク6を介して、前記レジスト膜3’に対して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図3(f))。
(3−7)現像・ベーク工程:
レジスト現像液を用いて、前記レジスト膜3’を所定のパターンに形成した(図3(g))。必要に応じて、現像後にベーク工程を行う。
(3−8)クロス配線パターン・エッチング工程:
図3(d)で成膜したアルミニウム層2を、レジスト膜3’をマスクとして、エッチング除去した(図3(h))。ここでは、ドライエッチング、ウェットエッチングを用いることが可能であったが、精度を必要とする理由により、エッチングガス(三塩化ホウ素、塩素、窒素の混合ガス)によるドライエッチングを用いた。
(3−9)レジスト除去工程:
レジスト3、3’を剥離した(図3(i))。レジスト剥離は、有機溶剤による溶解、アルカリによる溶解、ドライプロセス工程を用いることが可能である。ここでは、電極材料にアルミを用いたため、アルカリを用いることは不可であるが、有機溶剤による溶解、ドライプロセスを選択することが可能であった。ここでは、工程の簡便な理由により、有機溶剤により溶解した。用いる有機溶剤は、レジストを溶解しかつアルミの腐食を防止できれば、制約を設けるものではない。
【0040】
[側壁形成工程]
次に、図4(a)より図4(g)を用いて側壁形成の工程を説明する。尚、ここで、「側壁」とは、本発明の前提となる素子が要求する空間的可動部分を確保する空間を構成する部材を指す。この側壁部材によって、前記空間が確保される。
(4−1)櫛歯電極保護レジスト膜形成工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1上に、櫛歯電極を保護するためのレジスト3’’を塗布した(図4(a))。ここで用いたレジストは、ノボラック系のポジ形レジストを用いた。ここで用いるレジストには以下の特性が必要である。
(A)図4(f)で形成するパッケージ側壁パターニング用現像液に耐性があること。
(B)図4(f)で形成するパッケージ側壁を仮硬化させる温度で、分解等の変質が起こらないこと。
(C)図4(f)で形成するパッケージ側壁を仮硬化させた後、図4(g)の保護膜除去工程で取り除くことが可能であること。
ここで用いたノボラック系レジストの塗布後ベーク温度は90℃/30分とした。
(4−2)UV露光工程:
基板1上に、フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図4(b))。
(4−3)現像・ベーク工程:
レジスト現像液を用いて、レジスト膜3’’を所定のパターンを形成した(図4(c))。必要に応じて、現像後にベーク工程を行う。ここでは、140℃/30分とした。
(4−4)第1絶縁層ラミネート工程:
感光性絶縁樹脂(フィルム形状が望ましい)12を用いて、パッケージの側壁の為の層を形成した(図4(d))。この樹脂は、ワニス状でも使用可能であるが、シート状の材料の方が、厚く形成できること、また、前工程までに形成したレジスト3を浸食しない理由により、シート状の感光性耐熱樹脂が適当と判断し、ラミネータを用いて貼り付けた。
(4−5)UV露光工程:
フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図4(e))。
(4−6)現像・ベーク工程:
前記感光性絶縁樹脂膜12の照射されない部分を溶解除去した(図4(f))。パターン形成後、140℃で仮硬化した。
(4−7)レジスト除去工程:
レジスト膜3’’を除去し、パッケージ側壁の形成および電極材料を露出した(図4(g))。ここで、パッケージ側壁の形成を形成した樹脂へのダメージを少なくするため酸素プラズマによるドライプロセスを用いた。その後、本ベークを行った。例えば、パッケージ側壁および電極を形成した感光性絶縁樹脂12の仮硬化条件を140℃とすると、レジストの剥離液(アセトン、酢酸ブチルなどの溶剤)を用いることも可能である。
【0041】
[実装構造体の天井形成工程]
次に、図5(a)よりより図5(c)を用いて天井形成の工程を説明する。尚、ここで、「天井」とは、本発明の前提となる素子が要求する空間的可動部分を確保する空間の上部を覆う部材を指す。この天井部材は、実装方法によって、外部用パッケージを兼用することも可能である。
(5−1)第2絶縁層形成工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1上に、素子を保護するための感光性絶縁樹脂(フィルム形状)13を貼り付けた(図5(a))。ここで用いる天井用材料は、前述のパッケージ側壁と必ずしも同じである必要はなく、また、厚さについても適宜変更することが出来る。ここでの天井用樹脂は、ラミネータを用いて貼り付けた。
(5−2)UV露光工程:
基板1上に、フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図5(b))。
(5−3)現像・ベーク工程:
前記感光性絶縁樹脂膜13の照射されない部分を除去した。パターン形成後、140℃で仮硬化した。その後、本ベークを行った。
【0042】
[電極形成工程]
次に、図6(a)よりより図6(h)を用いて電極形成の工程を説明する。
(6−1)給電膜形成工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1上に、電気めっきで、はんだバンプを形成するための給電膜(Ti/Cu)14をスパッタで形成した(図6(a))。ここでの給電膜用の金属膜の構成は、チタン(50ナノメートル)/銅(1マイクロメートル)とした。ここでの下層部のチタンの機能は、その下に位置する感光性樹脂材料との接着を確保することにあり、その膜厚はそれらの接着を維持する最低限でかまわない。所要膜厚は、スパッタエッチング及びスパッタの条件、チタンの膜質などによっても変動する。
(6−2)レジスト・ラミネート工程:
レジスト(光硬化型フィルム形状が望ましい)15を用いて、基板1上に、はんだバンプ形成用のレジストを貼り付けた(図6(b))。ここで用いるレジストは、図6(e)に記述する、錫めっき(はんだめっき)に対する耐性が有ればよい。しかし、図6(d)に示すとおり、基板1上に形成されるパターン形状は、深い凹部30を有する。この為、その部分にレジスト15が埋め込まれるとレジスト剥離工程で剥離残りが発生する可能性がある。本発明では、フィルム状のレジストを用い、深い凹部30に埋め込まれないようにした。
(6−3)UV露光工程:
基板1に、フォトマスク6を介して、所定のパターンに紫外光5を照射した(図6(c))。
(6−4)現像・ベーク工程:
レジスト現像液を用いて、前記レジスト15を、所定のパターンに形成した(図6(d))。必要に応じて、現像後にベーキングを行う。
(6−5)Snめっき工程:
基板1上に、錫または、錫を主成分とする、はんだ16をめっき手法により形成した(図6(f))。ここで図示したメタライズ構成は、給電膜(Ti/Cu)14とし、はんだ16を錫又は、錫を主成分とする、はんだとしたが、より実際的には、給電膜(Ti/Cu)14上にニッケルを形成し、その上に錫を主成分とする、はんだ16を形成することで、接合信頼性の向上を図ることができる。
(6−6)レジスト膜除去工程:
はんだめっき後に、図6(d)で形成したレジスト15を剥離す(図6(f))。レジストの剥離は液状のレジスト、フィルム状のレジスト共、アルカリ、有機溶剤を用いることが出来る。ここでは、フィルム状のレジストを用い、剥離液には水酸化ナトリウムの3%溶液を40℃に加熱して用いた。
(6−7)給電膜除去工程:
次いで、給電膜14を、所望形状に加工する(図6(g))。給電膜14は複合膜であるので、各層毎、個別に加工した。給電膜14として用いた銅をウェットエッチングの手法を用いてパターニングした。銅のエッチングには、塩化鉄、アルカリ系エッチング液等の種類があるが、本実施例では硫酸/過酸化水素水を主成分とするエッチング液を用いた。ここでのエッチングでは、10秒以上のエッチング時間がないと制御が困難となって実用的観点では不利であるが、余りに長い時間エッチングを行うと、例えば5分を越えてエッチングするような場合には、サイドエッチングが大きくなり、タクトが長くなるという問題も生じる。そのため、エッチング液及びエッチング条件は、適宜実験により求めるのがよい。その後、ウェットエッチング手法を用いて、チタン膜をエッチングした。チタンのエッチングには、過酸化水素を主成分とするエッチング液、又は、フッ化水素を含有するエッチング液があるが、いずれを用いても良い。
(6−8)フラックス塗布・リフロー工程:
錫または錫を主成分とする、はんだ16の表面にフラックスを塗布し、リフローを行うことで、球形のはんだバンプ16’を形成した。
【0043】
<実施の形態2>
実施の形態2は、実施の形態1において言及したように、レジスト膜の形成に先立って、反射防止膜を設けておく例である。工程図は、実施の形態1で用いた図と同様である。従って、反射防止膜を設けることによって、変更される工程がある場合について図示することとする。
【0044】
[素子形成工程]
(1−1)ウエハ準備工程、櫛歯電極形成工程:
実施の形態1と同様であるので、図1(a)より図1(b)に示されるように、アルミニウム膜2を形成する。
(1−2)反射防止膜/レジスト膜形成工程:
これまで準備した基板(リチウムタンタレート)1に、反射防止膜4を塗布し、その上に、レジスト3を塗布した。反射防止膜4の役割は、図1(d)でのUV露光工程での、紫外線光5の反射によるレジスト3パターン変形を防止する事にある。ここで用いるレジストは、図1(f)工程で用いるエッチング工程(ドライエッチング又は、ウェットエッチング)に耐性があれば、その種類について制約を設けるものではない。
(1−3)〜(1−5)UV露光工程、現像・ベーク工程、エッチング工程:
各工程は、実施の形態1と同様である(図1(d)、(e)、(f))。
(1−6)反射防止膜及びレジストを剥離:
図1(c)で形成した反射防止膜及びレジストを剥離した(図1(g))。一般的に、レジスト剥離は、有機溶剤による溶解、アルカリによる溶解、ドライプロセス工程を用いることが可能である。ここでは、電極材料にアルミを用いたため、アルカリを用いることは不可であるが、有機溶剤による溶解、ドライプロセスを選択することが可能であった。ここでは、工程の簡便な理由により、有機溶剤により溶解した。用いる有機溶剤は、レジストを溶解しかつアルミの腐食を防止できれば、制約を設けるものではない。なお、本工程では、反射防止膜を完全に除去するため、有機溶剤による溶解を選択した場合でも、仕上げ工程としてドライプロセスを採用することが望ましい。
【0045】
[クロス配線用絶縁層の形工程]
実施の形態1での工程、図2(a)より図2(c)と同様である。
【0046】
[クロス配線用配線層の形工程]
本例では、図7(a)より図7(j)を実施する。図7(i)までの工程は、実施の形態1での工程と同様である。
【0047】
次いで、図7(j)に示すように、反射防止膜4を塗布した。反射防止膜4の役割は、図8(b)のUV露光工程での紫外線光5の反射によるレジスト3パターン変形を防止する事にある。
【0048】
[側壁形成工程]
図8(a)より図8(g)を実施する。図8(f)までの工程は、反射防止膜4を有する以外、実施の形態1での工程と同様である。
【0049】
次いで、図8(g)に示すようにレジスト3を除去した。パッケージ側壁及び電極を形成した樹脂の仮硬化条件を140℃/30分としているため、レジストの剥離液(アセトン、酢酸ブチルなどの溶剤)を用いることも可能であるが、パッケージ側壁及び電極を形成した樹脂へのダメージを少なくするため酸素プラズマによるドライプロセスを用いた。その後、本ベークを160〜200℃/60分で行った。尚、本工程では、反射防止膜を完全に除去するため、有機溶剤による溶解を選択した場合でも、仕上げ工程としてドライプロセスを採用することが望ましい。
【0050】
[実装構造体の天井形成工程]
図9(a)より図9(c)を実施する。この工程は、反射防止膜4を有する以外、実施の形態1での工程と同様である。
【0051】
[電極形成工程]
図10(a)より図10(h)を実施する。これまでの工程は、反射防止膜4を有する以外、実施の形態1での工程と同様である。
【0052】
<実施の形態3>
[素子形成工程]、[クロス配線用絶縁膜形成工程]、[クロス配線用配線形成工程]:
各工程は、実施の形態2と同様である。各々、図1、図2、図7に示される。
【0053】
[実装構造体の側壁形成工程]
本例では、図4(a)より図4(c)及び図8(a)より図8(c)で、用いていた櫛歯電極保護のためのレジストの役割を、図7(j)のクロス配線用配線の形成工程で形成した反射防止膜4に担わせることで、工程の簡略化を図る。
【0054】
クロス配線用配線形成工程の反射防止膜4の形成を終えると、図11(a)に示すように、第1絶縁層12をラミネートする。そして、UV露光工程、現像・ベ−ク工程はこれまでと同様である。
【0055】
次いで、反射防止膜4をアッシングにより除去した(図11(d))。ここでは、ドライプロセスを採用することが望ましい。
【0056】
[実装構造体の天井形成工程]
図12(a)より図12(c)に示すように、反射防止膜4を有する以外、これまでの例と同様である。
【0057】
[電極形成工程]
図13(a)より図13(h)を実施する。これまでの工程は、反射防止膜4を有する以外、これまでの工程と同様である。
【0058】
<実施の形態4>
図17及び図19、及び図20を用いて、本発明により作製したパッケージを実装基板に搭載する方法について説明する。
【0059】
図17(a)及び図17(b)に、比較のため、従来の金属キャップによるパッケージ実装と本発明によるパッケージ実装の断面図を示す。図17(a)の金属キャップを用いたパッケージでは、完成した素子24(SAWフィルタでは、櫛歯電極)を上にして、ビアホール22が形成された基板18上に形成されている。ワイヤーボンド23を用いて、素子24に設けられたワイヤーボンド用パッド25と結線されている。そして、実装装置の全体が金属キャップ19で覆われている。一方、本発明によるパッケージは、図17(b)のように、素子24(或いはクロス配線部20)部分が樹脂12及び13で覆われている。尚、図において、他の部分はこれまで説明したものと同様である、即ち、符号1は素子を形成する基板(例えば、リチウムタンタレート)、2はアルミニウム層、16ははんだである。
【0060】
これらのパッケージされた素子の実装基板26への搭載方法を図19、図20に示す。図18は従来技術による実装方法である。これについては前述した。
【0061】
図19に示したようなパッケージをモジュール用の実装基板26に複数個搭載し、場合よっては、別の半導体素子など(図示せず)を搭載し、全体を金属キャップ19で封止している。本発明によるパッケージでは、金属キャップ19で封止しているものの、そのキャップは1重であり、図18に例示する従来方法と比較して、低背化することが可能となる。また、このパッケージ以外に、図20に示すように、最外周部分の金属キャップ19を廃止することも可能となる。
【0062】
以上、本願発明を詳細に説明したが、本発明はSAWフィルタ、BAWフィルタ、MEMSなどの表面に空間を必要とする素子をウェハレベル小型化パッケジングし、外気雰囲気に直接曝した場合、湿度、酸化等の影響を受ける機構を有するものの保護に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、実施の形態1における、素子形成工程を順次示す断面図である。
【図2】図2は、実施の形態1における、クロス配線用の絶縁層を形成する工程を順次示す断面図である。
【図3】図3は、実施の形態1における、クロス配線用の配線を形成する工程を順次示す断面図である。
【図4】図4は、実施の形態1における、実装構造体の側壁を形成する工程を順次示す断面図である。
【図5】図5は、実施の形態1における、実装構造体の天井を形成する工程を順次示す断面図である。
【図6】図6は、実施の形態1における、電極を形成する工程を順次示す断面図である。
【図7】図7は、実施の形態2における、クロス配線用配線層を形成する工程を順次示す断面図である。
【図8】図8は、実施の形態2における、実装構造体の側壁を形成する工程を順次示す断面図である。
【図9】図9は、実施の形態2における、実装構造体の天井を形成する工程を順次示す断面図である。
【図10】図10は、実施の形態2における、電極を形成する工程を順次示す断面図である。
【図11】図11は、実施の形態3における、実装構造体の側壁を形成する工程を順次示す断面図である。
【図12】図12は、実施の形態3における、実装構造体の天井を形成する工程を順次示す断面図である。
【図13】図13は、実施の形態3における、電極を形成する工程を順次示す断面図である。
【図14】図14は、電極例の拡大断面図である。
【図15】図15は、櫛歯電極の拡大図である。
【図16】図16は、ウェハ全体を例示する図である。
【図17】図17は、素子部の各種実装方法を示す断面図である。
【図18】図18は、実装基板への素子の実装方法の従来例を示す断面図である。
【図19】図19は、本願発明になる実装基板への素子の実装方法の例を示す断面図である。
【図20】図20は、本願発明になる実装基板への素子の実装方法の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1…基板(代表例はリチウムタンタレート)、2…アルミニウム(又は、アルミ銅合金)膜、3…レジスト、4…反射防止膜、5…紫外線光、6…フォトマスク、7…エッチングガス(三塩化ホウ素、塩素、窒素の混合ガス)、8…クロス配線部、9…櫛歯電極、10…感光性絶縁樹脂、11…クロス配線部絶縁層、12…感光性絶縁樹脂(フィルム形状が望ましい)、13…感光性絶縁樹脂(フィルム形状)、14…給電膜(Ti/Cu)、15…レジスト(光硬化型フィルム形状が望ましい)、16…錫又は、錫を主成分とするはんだ、17…反射防止膜、18…基板、19…金属キャップ、20…クロス配線、21…クロス配線電極、22…ビアホール、23…ワイヤーボンド、24…素子、25…ワイヤーボンド用パッド、26…モジュール用の実装基板、27…接続用はんだ、28…接続端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装用基板と、この上部に、空間的可動部分を有する素子部材と、多層配線部と、実装用基板との間に空間を保持する有機絶縁樹脂層と、を少なくとも備え、
前記実装用基板上に設けられた、空間的可動部分を有する素子部材は、実装用基板との間に空間を保持する有機絶縁樹脂層が、前記実装用基板との間に空間部分を構成するように配置され、且つ
前記実装用基板との間に空間を保持する有機絶縁樹脂層内に、前記多層配線部の少なくとも一部が配置されてなること、を特徴とする実装構造体。
【請求項2】
実装用基板と、その上部に形成された機械的可動部を有する機能素子と、多層配線部と、機能素子部に空間を保持する第1の有機絶縁層と、機能素子部を封止する第2の有機絶縁層と、を少なくとも備え、
前記第1の有機絶縁層内に、前記多層配線部の少なくとも一部が配置してなること、を特徴とする実装構造体。
【請求項1】
実装用基板と、この上部に、空間的可動部分を有する素子部材と、多層配線部と、実装用基板との間に空間を保持する有機絶縁樹脂層と、を少なくとも備え、
前記実装用基板上に設けられた、空間的可動部分を有する素子部材は、実装用基板との間に空間を保持する有機絶縁樹脂層が、前記実装用基板との間に空間部分を構成するように配置され、且つ
前記実装用基板との間に空間を保持する有機絶縁樹脂層内に、前記多層配線部の少なくとも一部が配置されてなること、を特徴とする実装構造体。
【請求項2】
実装用基板と、その上部に形成された機械的可動部を有する機能素子と、多層配線部と、機能素子部に空間を保持する第1の有機絶縁層と、機能素子部を封止する第2の有機絶縁層と、を少なくとも備え、
前記第1の有機絶縁層内に、前記多層配線部の少なくとも一部が配置してなること、を特徴とする実装構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−47955(P2008−47955A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218650(P2006−218650)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
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