立方晶窒化ホウ素膜電界電子放出体および製造方法
【課題】電子放出に適した形状の立方晶窒化ホウ素を含む膜の提供。
【解決手段】高い結晶性と充分な膜厚、密着性と、さらに表面に高密度微細突起を持つ立方晶窒化ホウ素を含む膜を用いた、電子放出に優れた膜と電界電子放出体。特にホウ素、窒素、フッ素を含む分子種から、プラズマを用い窒化ホウ素を析出させる方法を用いて作成した立方晶窒化ホウを含む膜。
【解決手段】高い結晶性と充分な膜厚、密着性と、さらに表面に高密度微細突起を持つ立方晶窒化ホウ素を含む膜を用いた、電子放出に優れた膜と電界電子放出体。特にホウ素、窒素、フッ素を含む分子種から、プラズマを用い窒化ホウ素を析出させる方法を用いて作成した立方晶窒化ホウを含む膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光表示管、液晶のバックライト、各種光源、真空ダイオード、電子銃、高周波管等に利用可能な電界電子放出体に関する。
【背景技術】
【0002】
電界電子放出材料に求められる性質は、低い放出しきい電界、大きな電流密度、耐熱耐酸化性、高い耐絶縁破壊電圧等である。特に低い放出しきい電界と大きな電流密度を得るには、材料表面に微細突起を多く形成し、電界集中効果を高める必要がある。これらを満足する物質として、(1)チップ形に機械加工されたSiやMo、(2)カーボンナノチューブ、(3)ダイヤモンドなどについての研究がなされてきた。チップ形SiやMoは、材料の性質上、性能が低いことが、カーボンナノチューブにおいては機械的強度が低いこと、放出位置制御が困難なこと、高電流密度での安定性が低いこと等が問題となっている。ダイヤモンドでは耐酸化性が低いこと、十分な性能が得られないこと等が問題となっている。
【0003】
立方晶窒化ホウ素(以下c−BN)はダイヤモンドと同様の構造と性質を示すが、耐熱耐酸化性において、ダイヤモンドやカーボンナノチューブ等の炭素系材料より優れている。機械的強度はsp2結合の窒化ホウ素やカーボンナノチューブより優れている。しかし、電子放出材料としては現在まで、よい特性が報告されていなかった。
この理由は、従来のc−BNの作成法では50 eV以上の高いイオンエネルギーのイオン照射が必須であり、これが著しい結晶性の低下をもたらし、c−BN本来の性質を発揮できなかったことが考えられる。また、高エネルギー照射のため、表面が極めて平坦な膜しか作製出来なかったために、優れた電界放出性能を得るに不可欠な電界集中効果の促進が難しかったことが原因と考えられる。さらに、残留応力が大きく剥離し易いため、厚い膜の作製が困難であることから、電子放出に適した形状に再加工することが出来なかったことも挙げられる。
【非特許文献1】K. Teii, R. Yamao, T. Yamamura, S. Matsumoto, “Synthesis of cubic boron nitride films with mean energies of a few eV ”, J. Appl. Phys. 101 (2007) 033301.
【非特許文献2】R.Z. Wang et al, J. Cryst. Growth 291 (2006) 18.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような実情に鑑み、耐熱性や良好な機械特性などを持つc−BNからなる電界電子放出体を実現することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明1は、立方晶窒化ホウ素を主成分とする膜よりなる電界電子放出体であって、前記膜の表面が、10−5〜10−1mmの高低差の微細突起を1012〜104cm−2の密度で有し、高結晶性の特徴を示すことを特徴とする。
【0006】
発明2は、発明1の電界電子放出体において、前記膜の表面に結晶粒径が10−5〜10−1mmの立方晶窒化ホウ素が露出し、その結晶稜により高低差が形成されてなることを特徴とする。
【0007】
発明3は、発明2の電界電子放出体において、膜表面に露出した立方晶窒化ホウ素が、互いに間隔をもった島状に分布していることを特徴とする。
【0008】
発明4は、発明1〜3のいずれかの電界電子放出体において、前記膜を構成する立方晶窒化ホウ素の光学的縦波モードのフォノンによるラマン散乱、光学的横波モードのフォノンによるラマン散乱のいずれか一方あるいは両方の半値幅が50 cm−1以下のピークを示すことを特徴とする。
【0009】
発明5は、発明1〜4のいずれかの電界電子放出体において、前記膜を構成する立方晶窒化ホウ素のX線回折で(111)、(200)、(220)、(311)のいずれかの反射ピークの半値幅が、それぞれ、1.5, 2.5, 2.5, 3度以下であることを特徴とする。
【0010】
発明6は、発明1から5のいずれかの電界電子放出体において、前記膜は、ホウ素源、窒素源、およびフッ素を含むガス種を含む気相からプラズマを用いて基体上に析出させた立方晶窒化ホウ素よりなることを特徴とする。
【0011】
発明7は、発明1から5のいずれかの電界電子放出体において、ホウ素源、窒素源、およびフッ素あるいはフッ素を含むガス種を含む気相をプラズマによって活性化し、反応容器壁あるいは反応容器内に設置した参照電極に対し、基体の時間平均電位を同電位あるいは正にバイアスすること、或いはフロート電位にすることにより析出させた立方晶窒化ホウ素の膜よりなることを特徴とする。
【0012】
発明8は、発明1から7のいずれかの電界電子放出体において、立方晶窒化ホウ素を主成分とする厚さ1μm以上の膜形成後に、その表面が気相中あるいは液相中でのエッチング処理により高低差が形成されてなることを特徴とする。
【0013】
発明9、発明1から8のいずれかの電界電子放出体が電子放出部材として構成されたことを特徴とする電子放出素子。
【発明の効果】
【0014】
本発明者らは以前本発明者らが開発した(非特許文献1)フッ素を含むガス系からの低イオンエネルギー照射下でc−BN膜を得る方法を明らかにしている。
当該方法並びに、それで得られたc−BNにつき、更に鋭意研究した結果、成膜時のイオンエネルギーとフラックスを制御することによって、表面にナノ〜マイクロメートルオーダーの高密度微細突起を自発的に形成し、電界集中効果を高めることが可能であることなどを発見し、従来のc−BN膜より格段によい電界放出特性を示すことを発見して、本発明をなした。
その結果、上記構成を実現し、それにより電子電流密度が2桁近く若しくはそれ以上に向上したc−BNからなる電界電子放出体を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のc−BN膜の作成法は非特許文献1に詳しく記しているが、簡単に記述すると、三フッ化硼素あるいは他のホウ素源材料により硼素を、窒素、アンモニア等により窒素を、三フッ化硼素、フッ素、フッ化水素等よりフッ素を気相中に供給し、気相をプラズマにより活性化した状態より基体上へ析出させる。反応とプラズマの制御のために水素、希ガスのうちどちらか単独をあるいは両方を加えることができる。反応容器壁あるいは反応容器内に設置した参照電極に対し、基体の時間平均電位を同電位あるいは正にバイアスすること、あるいはフロート電位にすることにより、基板に入射するイオの衝撃を下げ、c−BNの結晶性や結晶サイズを上げ、またそれらを制御することができる。プラズマの種類としては、プラズマジェット、マイクロ波プラズマ、誘導結合型プラズマ、電子サイクロトロン共鳴プラズマなどのさまざまな高密度プラズマを利用できる。10−6Paの低圧から数気圧の高い圧力までのプラズマが利用でき、熱プラズマでも非平衡低温プラズマでも可能である。基板バイアスには直流、交流、高周波、あるいはそれらの重積、あるいはそれらをパルス化した電源のいずれでも用いうる。このようにプラズマのみで作製できるうえに、各種のプラズマを用いうるので低コストで大面積の製膜が可能である。
この作成法によるc−BN膜は、低いイオン衝撃でつくるため、残留応力が小で、結晶性が良く、膜厚も大きいうえ、膜表面に自発的に微細突起を形成させ、また結晶ファセットを有することも可能であり、電界電子放出に適している。また、ガス組成、成膜時間、基板バイアス、プラズマ入力等を変化させることにより、成膜前駆体ラジカルやイオンの膜表面での挙動を制御し、表面突起形状をナノ〜マイクロメートルオーダーで制御することが可能である。その表面突起の高さは10−5〜10−1mmで、その密度は1012〜104cm−2である。
【0016】
また、さらに研究を続けた結果、本フッ素を用いるc−BN作成法では、基板バイアスが負でよりイオン衝撃が高い場合でも、c−BN膜作成中にエッチング効果が大となるよう成膜条件を制御することで、表面微小突起を作成することができ、これをもつ膜も優れた電界電子放出特性を示すことを発見し、この発明をなした。この場合の微小突起の高さも10−5〜10−1mmで、その密度は1012〜104cm−2である。
なお、以下の実施例からすれば、微小突起の高さ中心値は5×10−4mm、密度中心値は1×109cm−2に近づくほど電子放出特性が良好なものとなる傾向があり、その差は1桁を単位として変化するように認められる。
以下、実施例をもって、本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0017】
本作成法は非特許文献1において開示したフッ素を含むガス系からの高周波誘導プラズマを用いる方法である。第1図に示す13.56MHzの高周波を用いる高周波誘導プラズマ装置において、He 80sccm, N2 10sccm, H2 10sccmを流し、高周波電源9からの1.5 kWの高周波をワークコイル10に供給し、プラズマを発生させる。バルブ8’を通して10%BF3/He 18sccmを流し、直流バイアス電源11により+30 Vの直流バイアスを基板ホルダー2を通して基板1にかけ、基板温度1000℃にて、40Pa下の30分間の合成により、基板1上に窒化ホウ素膜が得られた。
【0018】
この方法により得られた窒化ホウ素の赤外吸収スペクトルを第2図に示す。図2より1100 cm−1近傍にc−BNの残留線の吸収が強く現れており、また1360〜1400 cm−1近傍と800 cm−1近傍に六方晶窒化ホウ素および乱層構造窒化ホウ素および非晶質窒化ホウ素(3者を合わせてsp2−BNと表現)による吸収が現れている。これらより、得られた窒化ホウ素膜は、c−BNとsp2−BNの混ざった窒化ホウ素膜であることがわかる。この場合、sp2−BNは基板側で、c−BNは膜の表面側に優勢に分布している。膜のSEM像、AFM像はそれぞれ第3,4図であり、図3のSEM像で、膜の表面には、多くのc−BN結晶ファセットがみられ、c−BN結晶には尖った稜がでている。図4によりこの膜には数10nm〜2ミクロン程度の高低差の高密度微細突起を有することがわかる。また、図3より結晶のサイズは0.1〜4ミクロン程度であり、突起の位置の横方向間隔は0.1〜5ミクロン程度で、突起の密度はおよそ108個/cm2程度であることがわかる。
【0019】
電界電子放出特性:この膜の電界電子放出の測定結果を第5図に示す。電界電子放出の測定は、膜をカソードとし膜と平行にアノードを配し、両極間に電圧をかけ電流を測る。アノードは棒状の電極ではなく対向する壁で、カソードとアノードはほぼ同じ面積である。従って棒状電極を使った場合のようなエッジによる電流の増大効果はない。第6図曲線(a)に、現在までに報告されている、c−BNを含む膜で最も良い電子放出特性のデータ(非特許文献2)を示すが、それと比べると本発明のc−BNによる電界電子放出は放出しきい電界8.8 eVとやや高いが、飽和領域の電子電流密度は2桁程度高いことがわかる。これはc−BNの結晶性向上と突起状に析出している効果と推定される。
【実施例2】
【0020】
アークジェットプラズマCVD装置において、Ar 20slm, N2 1.5slm, H2 5 sccm, BF3/Ar(10%) 30 sccmのガス流を用いて、50 Torrのガス圧下、アーク電力7kW、基板温度℃、バイアス電圧−85Vにて、20分間反応させ、さらにH2 =0 sccmにして、1分間反応させ、シリコン基板上にc−BNの膜を得た。そのSEM像、AFM像はそれぞれ第7,8図であり、これらより膜の表面は高さ20nm〜300nmの高密度微細突起をおよそ109個/cm2有することがわかる。この膜のラマンスペクトル、X線回折図をそれぞれ第9.10図に示す。図9より、ラマン散乱ピークの半値幅は12.9 cm−1, 19.4 cm−1である。また図10では(111)、(200)、(220)、(311)の反射ピークの半値幅が、それぞれ、0.48, 0.64, 0.67, 1.00度である。これらによりこの膜は結晶性のよいc−BN膜であることがわかる。平均膜厚はIR吸収スペクトルの干渉フリンジより、4ミクロンであった。なお、この実施例では反応圧が50Torrと高いため、バイアス電圧−85Vによる実質のイオン衝撃エネルギーはそれよりかなり低い。
【0021】
電界電子放出特性:この膜の電界電子放出の測定結果を第11図に示す。第6図(a)と比べると、放出しきい電界5.8 eVと同じ位で、飽和領域の電子電流密度は2桁程度高く、それに必要な電界も低い。この優れた特性はc−BNの高結晶性とH2 =0 sccmで合成中の優勢なエッチング効果により生成した微小突起によると考えられる。
【0022】
このように本発明によるc−BN膜の優れた電子放出特性は、c−BN結晶の結晶性の向上により、負性電子親和力や高キャリヤー移動度等のc−BN本来の特性の発現し、フッ素を利用する作成法によりイオン衝撃が減少し、結晶ファセットや稜が出現したり、結晶の島状成長が可能になったり、あるいは膜中の残留応力の低下で厚膜作成が可能になり、電子放出に適した微細突起を作成できるようになったことにより実現したものと推定される。
【0023】
さらに、本発明によるc−BN膜は良結晶性で厚い膜が形成されるので、成膜後にプラズマエッチングなどドライエッチングや、液相エッチングにより電界放射に最適な形状に再加工することも可能である。ドライエッチングには上記のc−BN作成に用いたガス種のみならず、酸素やフッ化炭素ガス等の新たなガス種を加えることもできうる。また、用いるプラズマも、膜堆積時とは異なったプラズマの種類を用いることができる。硝酸、フッ酸、塩酸、硫酸の酸類、アルカリ水溶液、過酸化水素水等の液体を組み合わせて用いることもできる。また、これらのドライおよびウエットエッチングにはレジスト膜やマスキングの使用により、c−BNの表面微小突起の生成位置、密度を制御することができる。これらにより、さらによい電界電子放出特性の向上が期待できる。
また本発明のc−BN電子放射源は、c−BNが良結晶性であることから、膜成長中に結晶方位と結晶の外形を電子放射にさらに最適になるよう揃えて成長させることが可能となると思われる。さらに、良結晶性のため、H2で表面処理して負性親和力を高めたり、表面のN離脱、アルカリ金属ドープ、Beドープ、あるいはSi,PやSドープでそれぞれp型、n型にもでき、さらに電子放出特性を高められる可能性が大である。
【0024】
さらに本発明の高結晶性c−BNは、その結晶自身による微小突起を利用するのみならず、表面微小突起を持つように作成された他の導電性物質、たとえば、シリコン、モリブデン、タングステン、ダイヤモンド等の基体上にコーティングすることによっても、その基体の微小突起と高結晶性c−BNの両方の作用により、優れた電界電子放出体とすることができると期待される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
高結晶性と高膜厚の可能なc−BN膜よりなる、高電子電流密度、高耐圧、高耐熱耐酸化性で、機械的強度にもすぐれた、電子放出源の作成が可能となり、高輝度、低消費電力、耐久性に優れた、薄型電界放出ディスプレイ等の蛍光表示管、液晶のバックライト、殺菌用紫外線発生源等の各種光源、医療用コンパクトX線発生源、真空ダイオード、電子銃、高周波管等への幅広い応用が期待され、生活の利便性の向上と省エネルギー化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の実施例1で用いた高周波誘導プラズマを使用するc−BN膜の合成装置の概略側面図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1で得られた窒化ホウ素膜の赤外吸収スペクトル図である。
【図3】図3は、本発明の実施例1で得られた窒化ホウ素膜の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、本発明の実施例1で得られた窒化ホウ素膜の原子間力顕微鏡による表面凹凸を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施例1で得られた窒化ホウ素膜の電界電子放出特性の測定結果の一例である。
【図6】図6は、立方晶窒化ホウ素膜について今まで発表されたなかで最もよい電界電子放出特性を示す図である(非特許文献2による)。
【図7】図7は、本発明の実施例2で得られた窒化ホウ素膜のラマン散乱スペクトル図である。
【図8】図8は、本発明の実施例2で得られた窒化ホウ素膜のCuKα線によるX線回折図である。
【図9】図9は、本発明の実施例2で得られた窒化ホウ素膜の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は、本発明の実施例2で得られた窒化ホウ素膜の原子間力顕微鏡による表面凹凸を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施例2で得られた窒化ホウ素膜の電界電子放出特性の測定結果の一例である。
【符号の説明】
【0027】
1 基体
2 基体ホルダー
3 反応室
4 反応官
5 真空ポンプ
6 覗き窓
7 ガス供給器
8,8’バルブ
9 高周波電源
10 ワークコイル
11 バイアス電源
12 参照電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光表示管、液晶のバックライト、各種光源、真空ダイオード、電子銃、高周波管等に利用可能な電界電子放出体に関する。
【背景技術】
【0002】
電界電子放出材料に求められる性質は、低い放出しきい電界、大きな電流密度、耐熱耐酸化性、高い耐絶縁破壊電圧等である。特に低い放出しきい電界と大きな電流密度を得るには、材料表面に微細突起を多く形成し、電界集中効果を高める必要がある。これらを満足する物質として、(1)チップ形に機械加工されたSiやMo、(2)カーボンナノチューブ、(3)ダイヤモンドなどについての研究がなされてきた。チップ形SiやMoは、材料の性質上、性能が低いことが、カーボンナノチューブにおいては機械的強度が低いこと、放出位置制御が困難なこと、高電流密度での安定性が低いこと等が問題となっている。ダイヤモンドでは耐酸化性が低いこと、十分な性能が得られないこと等が問題となっている。
【0003】
立方晶窒化ホウ素(以下c−BN)はダイヤモンドと同様の構造と性質を示すが、耐熱耐酸化性において、ダイヤモンドやカーボンナノチューブ等の炭素系材料より優れている。機械的強度はsp2結合の窒化ホウ素やカーボンナノチューブより優れている。しかし、電子放出材料としては現在まで、よい特性が報告されていなかった。
この理由は、従来のc−BNの作成法では50 eV以上の高いイオンエネルギーのイオン照射が必須であり、これが著しい結晶性の低下をもたらし、c−BN本来の性質を発揮できなかったことが考えられる。また、高エネルギー照射のため、表面が極めて平坦な膜しか作製出来なかったために、優れた電界放出性能を得るに不可欠な電界集中効果の促進が難しかったことが原因と考えられる。さらに、残留応力が大きく剥離し易いため、厚い膜の作製が困難であることから、電子放出に適した形状に再加工することが出来なかったことも挙げられる。
【非特許文献1】K. Teii, R. Yamao, T. Yamamura, S. Matsumoto, “Synthesis of cubic boron nitride films with mean energies of a few eV ”, J. Appl. Phys. 101 (2007) 033301.
【非特許文献2】R.Z. Wang et al, J. Cryst. Growth 291 (2006) 18.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような実情に鑑み、耐熱性や良好な機械特性などを持つc−BNからなる電界電子放出体を実現することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明1は、立方晶窒化ホウ素を主成分とする膜よりなる電界電子放出体であって、前記膜の表面が、10−5〜10−1mmの高低差の微細突起を1012〜104cm−2の密度で有し、高結晶性の特徴を示すことを特徴とする。
【0006】
発明2は、発明1の電界電子放出体において、前記膜の表面に結晶粒径が10−5〜10−1mmの立方晶窒化ホウ素が露出し、その結晶稜により高低差が形成されてなることを特徴とする。
【0007】
発明3は、発明2の電界電子放出体において、膜表面に露出した立方晶窒化ホウ素が、互いに間隔をもった島状に分布していることを特徴とする。
【0008】
発明4は、発明1〜3のいずれかの電界電子放出体において、前記膜を構成する立方晶窒化ホウ素の光学的縦波モードのフォノンによるラマン散乱、光学的横波モードのフォノンによるラマン散乱のいずれか一方あるいは両方の半値幅が50 cm−1以下のピークを示すことを特徴とする。
【0009】
発明5は、発明1〜4のいずれかの電界電子放出体において、前記膜を構成する立方晶窒化ホウ素のX線回折で(111)、(200)、(220)、(311)のいずれかの反射ピークの半値幅が、それぞれ、1.5, 2.5, 2.5, 3度以下であることを特徴とする。
【0010】
発明6は、発明1から5のいずれかの電界電子放出体において、前記膜は、ホウ素源、窒素源、およびフッ素を含むガス種を含む気相からプラズマを用いて基体上に析出させた立方晶窒化ホウ素よりなることを特徴とする。
【0011】
発明7は、発明1から5のいずれかの電界電子放出体において、ホウ素源、窒素源、およびフッ素あるいはフッ素を含むガス種を含む気相をプラズマによって活性化し、反応容器壁あるいは反応容器内に設置した参照電極に対し、基体の時間平均電位を同電位あるいは正にバイアスすること、或いはフロート電位にすることにより析出させた立方晶窒化ホウ素の膜よりなることを特徴とする。
【0012】
発明8は、発明1から7のいずれかの電界電子放出体において、立方晶窒化ホウ素を主成分とする厚さ1μm以上の膜形成後に、その表面が気相中あるいは液相中でのエッチング処理により高低差が形成されてなることを特徴とする。
【0013】
発明9、発明1から8のいずれかの電界電子放出体が電子放出部材として構成されたことを特徴とする電子放出素子。
【発明の効果】
【0014】
本発明者らは以前本発明者らが開発した(非特許文献1)フッ素を含むガス系からの低イオンエネルギー照射下でc−BN膜を得る方法を明らかにしている。
当該方法並びに、それで得られたc−BNにつき、更に鋭意研究した結果、成膜時のイオンエネルギーとフラックスを制御することによって、表面にナノ〜マイクロメートルオーダーの高密度微細突起を自発的に形成し、電界集中効果を高めることが可能であることなどを発見し、従来のc−BN膜より格段によい電界放出特性を示すことを発見して、本発明をなした。
その結果、上記構成を実現し、それにより電子電流密度が2桁近く若しくはそれ以上に向上したc−BNからなる電界電子放出体を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のc−BN膜の作成法は非特許文献1に詳しく記しているが、簡単に記述すると、三フッ化硼素あるいは他のホウ素源材料により硼素を、窒素、アンモニア等により窒素を、三フッ化硼素、フッ素、フッ化水素等よりフッ素を気相中に供給し、気相をプラズマにより活性化した状態より基体上へ析出させる。反応とプラズマの制御のために水素、希ガスのうちどちらか単独をあるいは両方を加えることができる。反応容器壁あるいは反応容器内に設置した参照電極に対し、基体の時間平均電位を同電位あるいは正にバイアスすること、あるいはフロート電位にすることにより、基板に入射するイオの衝撃を下げ、c−BNの結晶性や結晶サイズを上げ、またそれらを制御することができる。プラズマの種類としては、プラズマジェット、マイクロ波プラズマ、誘導結合型プラズマ、電子サイクロトロン共鳴プラズマなどのさまざまな高密度プラズマを利用できる。10−6Paの低圧から数気圧の高い圧力までのプラズマが利用でき、熱プラズマでも非平衡低温プラズマでも可能である。基板バイアスには直流、交流、高周波、あるいはそれらの重積、あるいはそれらをパルス化した電源のいずれでも用いうる。このようにプラズマのみで作製できるうえに、各種のプラズマを用いうるので低コストで大面積の製膜が可能である。
この作成法によるc−BN膜は、低いイオン衝撃でつくるため、残留応力が小で、結晶性が良く、膜厚も大きいうえ、膜表面に自発的に微細突起を形成させ、また結晶ファセットを有することも可能であり、電界電子放出に適している。また、ガス組成、成膜時間、基板バイアス、プラズマ入力等を変化させることにより、成膜前駆体ラジカルやイオンの膜表面での挙動を制御し、表面突起形状をナノ〜マイクロメートルオーダーで制御することが可能である。その表面突起の高さは10−5〜10−1mmで、その密度は1012〜104cm−2である。
【0016】
また、さらに研究を続けた結果、本フッ素を用いるc−BN作成法では、基板バイアスが負でよりイオン衝撃が高い場合でも、c−BN膜作成中にエッチング効果が大となるよう成膜条件を制御することで、表面微小突起を作成することができ、これをもつ膜も優れた電界電子放出特性を示すことを発見し、この発明をなした。この場合の微小突起の高さも10−5〜10−1mmで、その密度は1012〜104cm−2である。
なお、以下の実施例からすれば、微小突起の高さ中心値は5×10−4mm、密度中心値は1×109cm−2に近づくほど電子放出特性が良好なものとなる傾向があり、その差は1桁を単位として変化するように認められる。
以下、実施例をもって、本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0017】
本作成法は非特許文献1において開示したフッ素を含むガス系からの高周波誘導プラズマを用いる方法である。第1図に示す13.56MHzの高周波を用いる高周波誘導プラズマ装置において、He 80sccm, N2 10sccm, H2 10sccmを流し、高周波電源9からの1.5 kWの高周波をワークコイル10に供給し、プラズマを発生させる。バルブ8’を通して10%BF3/He 18sccmを流し、直流バイアス電源11により+30 Vの直流バイアスを基板ホルダー2を通して基板1にかけ、基板温度1000℃にて、40Pa下の30分間の合成により、基板1上に窒化ホウ素膜が得られた。
【0018】
この方法により得られた窒化ホウ素の赤外吸収スペクトルを第2図に示す。図2より1100 cm−1近傍にc−BNの残留線の吸収が強く現れており、また1360〜1400 cm−1近傍と800 cm−1近傍に六方晶窒化ホウ素および乱層構造窒化ホウ素および非晶質窒化ホウ素(3者を合わせてsp2−BNと表現)による吸収が現れている。これらより、得られた窒化ホウ素膜は、c−BNとsp2−BNの混ざった窒化ホウ素膜であることがわかる。この場合、sp2−BNは基板側で、c−BNは膜の表面側に優勢に分布している。膜のSEM像、AFM像はそれぞれ第3,4図であり、図3のSEM像で、膜の表面には、多くのc−BN結晶ファセットがみられ、c−BN結晶には尖った稜がでている。図4によりこの膜には数10nm〜2ミクロン程度の高低差の高密度微細突起を有することがわかる。また、図3より結晶のサイズは0.1〜4ミクロン程度であり、突起の位置の横方向間隔は0.1〜5ミクロン程度で、突起の密度はおよそ108個/cm2程度であることがわかる。
【0019】
電界電子放出特性:この膜の電界電子放出の測定結果を第5図に示す。電界電子放出の測定は、膜をカソードとし膜と平行にアノードを配し、両極間に電圧をかけ電流を測る。アノードは棒状の電極ではなく対向する壁で、カソードとアノードはほぼ同じ面積である。従って棒状電極を使った場合のようなエッジによる電流の増大効果はない。第6図曲線(a)に、現在までに報告されている、c−BNを含む膜で最も良い電子放出特性のデータ(非特許文献2)を示すが、それと比べると本発明のc−BNによる電界電子放出は放出しきい電界8.8 eVとやや高いが、飽和領域の電子電流密度は2桁程度高いことがわかる。これはc−BNの結晶性向上と突起状に析出している効果と推定される。
【実施例2】
【0020】
アークジェットプラズマCVD装置において、Ar 20slm, N2 1.5slm, H2 5 sccm, BF3/Ar(10%) 30 sccmのガス流を用いて、50 Torrのガス圧下、アーク電力7kW、基板温度℃、バイアス電圧−85Vにて、20分間反応させ、さらにH2 =0 sccmにして、1分間反応させ、シリコン基板上にc−BNの膜を得た。そのSEM像、AFM像はそれぞれ第7,8図であり、これらより膜の表面は高さ20nm〜300nmの高密度微細突起をおよそ109個/cm2有することがわかる。この膜のラマンスペクトル、X線回折図をそれぞれ第9.10図に示す。図9より、ラマン散乱ピークの半値幅は12.9 cm−1, 19.4 cm−1である。また図10では(111)、(200)、(220)、(311)の反射ピークの半値幅が、それぞれ、0.48, 0.64, 0.67, 1.00度である。これらによりこの膜は結晶性のよいc−BN膜であることがわかる。平均膜厚はIR吸収スペクトルの干渉フリンジより、4ミクロンであった。なお、この実施例では反応圧が50Torrと高いため、バイアス電圧−85Vによる実質のイオン衝撃エネルギーはそれよりかなり低い。
【0021】
電界電子放出特性:この膜の電界電子放出の測定結果を第11図に示す。第6図(a)と比べると、放出しきい電界5.8 eVと同じ位で、飽和領域の電子電流密度は2桁程度高く、それに必要な電界も低い。この優れた特性はc−BNの高結晶性とH2 =0 sccmで合成中の優勢なエッチング効果により生成した微小突起によると考えられる。
【0022】
このように本発明によるc−BN膜の優れた電子放出特性は、c−BN結晶の結晶性の向上により、負性電子親和力や高キャリヤー移動度等のc−BN本来の特性の発現し、フッ素を利用する作成法によりイオン衝撃が減少し、結晶ファセットや稜が出現したり、結晶の島状成長が可能になったり、あるいは膜中の残留応力の低下で厚膜作成が可能になり、電子放出に適した微細突起を作成できるようになったことにより実現したものと推定される。
【0023】
さらに、本発明によるc−BN膜は良結晶性で厚い膜が形成されるので、成膜後にプラズマエッチングなどドライエッチングや、液相エッチングにより電界放射に最適な形状に再加工することも可能である。ドライエッチングには上記のc−BN作成に用いたガス種のみならず、酸素やフッ化炭素ガス等の新たなガス種を加えることもできうる。また、用いるプラズマも、膜堆積時とは異なったプラズマの種類を用いることができる。硝酸、フッ酸、塩酸、硫酸の酸類、アルカリ水溶液、過酸化水素水等の液体を組み合わせて用いることもできる。また、これらのドライおよびウエットエッチングにはレジスト膜やマスキングの使用により、c−BNの表面微小突起の生成位置、密度を制御することができる。これらにより、さらによい電界電子放出特性の向上が期待できる。
また本発明のc−BN電子放射源は、c−BNが良結晶性であることから、膜成長中に結晶方位と結晶の外形を電子放射にさらに最適になるよう揃えて成長させることが可能となると思われる。さらに、良結晶性のため、H2で表面処理して負性親和力を高めたり、表面のN離脱、アルカリ金属ドープ、Beドープ、あるいはSi,PやSドープでそれぞれp型、n型にもでき、さらに電子放出特性を高められる可能性が大である。
【0024】
さらに本発明の高結晶性c−BNは、その結晶自身による微小突起を利用するのみならず、表面微小突起を持つように作成された他の導電性物質、たとえば、シリコン、モリブデン、タングステン、ダイヤモンド等の基体上にコーティングすることによっても、その基体の微小突起と高結晶性c−BNの両方の作用により、優れた電界電子放出体とすることができると期待される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
高結晶性と高膜厚の可能なc−BN膜よりなる、高電子電流密度、高耐圧、高耐熱耐酸化性で、機械的強度にもすぐれた、電子放出源の作成が可能となり、高輝度、低消費電力、耐久性に優れた、薄型電界放出ディスプレイ等の蛍光表示管、液晶のバックライト、殺菌用紫外線発生源等の各種光源、医療用コンパクトX線発生源、真空ダイオード、電子銃、高周波管等への幅広い応用が期待され、生活の利便性の向上と省エネルギー化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の実施例1で用いた高周波誘導プラズマを使用するc−BN膜の合成装置の概略側面図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1で得られた窒化ホウ素膜の赤外吸収スペクトル図である。
【図3】図3は、本発明の実施例1で得られた窒化ホウ素膜の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、本発明の実施例1で得られた窒化ホウ素膜の原子間力顕微鏡による表面凹凸を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施例1で得られた窒化ホウ素膜の電界電子放出特性の測定結果の一例である。
【図6】図6は、立方晶窒化ホウ素膜について今まで発表されたなかで最もよい電界電子放出特性を示す図である(非特許文献2による)。
【図7】図7は、本発明の実施例2で得られた窒化ホウ素膜のラマン散乱スペクトル図である。
【図8】図8は、本発明の実施例2で得られた窒化ホウ素膜のCuKα線によるX線回折図である。
【図9】図9は、本発明の実施例2で得られた窒化ホウ素膜の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は、本発明の実施例2で得られた窒化ホウ素膜の原子間力顕微鏡による表面凹凸を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施例2で得られた窒化ホウ素膜の電界電子放出特性の測定結果の一例である。
【符号の説明】
【0027】
1 基体
2 基体ホルダー
3 反応室
4 反応官
5 真空ポンプ
6 覗き窓
7 ガス供給器
8,8’バルブ
9 高周波電源
10 ワークコイル
11 バイアス電源
12 参照電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方晶窒化ホウ素を主成分とする膜よりなる電界電子放出体であって、前記膜の表面が、10−5〜10−1mmの高低差の突起を1012〜104cm−2の密度で有し、高結晶性の特徴を示すことを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に記載の電界電子放出体において、前記膜の表面に結晶粒径が10−5〜10−1mmの立方晶窒化ホウ素が露出し、その結晶稜により高低差が形成されてなることを特徴とする。
【請求項3】
請求項2に記載の電界電子放出体において、膜表面に露出した立方晶窒化ホウ素が、互いに間隔をもった島状に分布していることを特徴とする。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電界電子放出体において、前記膜を構成する立方晶窒化ホウ素の光学的縦波モードのフォノンによるラマン散乱、光学的横波モードのフォノンによるラマン散乱のいずれか一方あるいは両方の半値幅が50 cm−1以下のピークを示すことを特徴とする。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電界電子放出体において、前記膜を構成する立方晶窒化ホウ素のX線回折で(111)、(200)、(220)、(311)のいずれかの反射ピークの半値幅が、それぞれ、1.5, 2.5, 2.5, 3度以下であることを特徴とする。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の電界電子放出体において、前記膜は、ホウ素源、窒素源、およびフッ素を含むガス種を含む気相からプラズマを用いて基体上に析出させた立方晶窒化ホウ素よりなることを特徴とする。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の電界電子放出体において、前記膜は、ホウ素源、窒素源、およびフッ素あるいはフッ素を含むガス種を含む気相をプラズマによって活性化し、反応容器壁あるいは反応容器内に設置した参照電極に対し、基体の時間平均電位を同電位あるいは正にバイアスすること、或いはフロート電位にすることにより析出させた立方晶窒化ホウ素の膜よりなることを特徴とする。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の電界電子放出体において、立方晶窒化ホウ素を主成分とする厚さ1μm以上の膜形成後に、その表面が気相中あるいは液相中でのエッチング処理により高低差が形成されてなることを特徴とする。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の電界電子放出体が電子放出部材として構成されたことを特徴とする電子放出素子。
【請求項1】
立方晶窒化ホウ素を主成分とする膜よりなる電界電子放出体であって、前記膜の表面が、10−5〜10−1mmの高低差の突起を1012〜104cm−2の密度で有し、高結晶性の特徴を示すことを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に記載の電界電子放出体において、前記膜の表面に結晶粒径が10−5〜10−1mmの立方晶窒化ホウ素が露出し、その結晶稜により高低差が形成されてなることを特徴とする。
【請求項3】
請求項2に記載の電界電子放出体において、膜表面に露出した立方晶窒化ホウ素が、互いに間隔をもった島状に分布していることを特徴とする。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電界電子放出体において、前記膜を構成する立方晶窒化ホウ素の光学的縦波モードのフォノンによるラマン散乱、光学的横波モードのフォノンによるラマン散乱のいずれか一方あるいは両方の半値幅が50 cm−1以下のピークを示すことを特徴とする。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電界電子放出体において、前記膜を構成する立方晶窒化ホウ素のX線回折で(111)、(200)、(220)、(311)のいずれかの反射ピークの半値幅が、それぞれ、1.5, 2.5, 2.5, 3度以下であることを特徴とする。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の電界電子放出体において、前記膜は、ホウ素源、窒素源、およびフッ素を含むガス種を含む気相からプラズマを用いて基体上に析出させた立方晶窒化ホウ素よりなることを特徴とする。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の電界電子放出体において、前記膜は、ホウ素源、窒素源、およびフッ素あるいはフッ素を含むガス種を含む気相をプラズマによって活性化し、反応容器壁あるいは反応容器内に設置した参照電極に対し、基体の時間平均電位を同電位あるいは正にバイアスすること、或いはフロート電位にすることにより析出させた立方晶窒化ホウ素の膜よりなることを特徴とする。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の電界電子放出体において、立方晶窒化ホウ素を主成分とする厚さ1μm以上の膜形成後に、その表面が気相中あるいは液相中でのエッチング処理により高低差が形成されてなることを特徴とする。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の電界電子放出体が電子放出部材として構成されたことを特徴とする電子放出素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−158345(P2009−158345A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336428(P2007−336428)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】
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