説明

立軸回転機械の縦置および横置治具

【課題】立軸ポンプ10を傷つけずに縦置と横置状態に簡単に変更できる立軸回転機械の縦置および横置治具を提供する。
【解決手段】立軸ポンプ10に下端開口部から側壁に渡り添わせてL字状に折り曲げた帯板22と、その外側に立設固定し外縁形状がL字状の直線部分22a、22bに臨んで平行で、折り曲げ部分22cに臨んで曲線状であり直線部分22a、22bと平行な部分に連なるようにした側板24とで添設部材28を形成し、添設部材28を2つ離して横に平行にし、その間に配設した複数の連結部材30で連結固定し、側板24の側方外側に固定用部材32を複数配設して治具34を構成する。治具34を立軸ポンプ10に添わせ、荷締めバンド36で締め付け固定する。下端開口部に臨む部分を下にして縦置状態とし、側壁に臨む部分を下にして横置状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外形が略円筒状で縦長の立軸回転機械を縦置状態と横置状態に簡単に変更することができ、しかも縦置状態と横置状態を変更する際に立軸回転機械の下端開口部を損傷ならびに傷つけないようにする立軸回転機械の縦置および横置治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外形が略円筒状で縦長の立軸回転機械として、立軸ポンプや立軸電動機や立軸水中電動機および立軸水中ポンプ等がある。これらの立軸回転機械は、設置場所に横置状態で搬入され、設置するために縦置状態に変更する作業が必要である。一例として、横置状態から縦置状態に変更する従来の作業につき、図12を参照して、立軸ポンプにおいて説明する。図12は、立軸ポンプを横置状態から縦置状態に変更する従来の作業の手順を示す図である。図12において、まず横置状態の立軸ポンプ10の頂部に設けられた吊金具12にワイヤーロープ14の一端を掛け、さらにこのワイヤーロープ14の他端をクレーン(図示せず)のフック16に掛ける。そして、クレーンで立軸ポンプ10の頂部を吊り上げ、立軸ポンプ10の下端部の吸込ベル18の下端縁20を支点として図12の実線の矢印の方向に、徐々にクレーンの位置を変更しながら引き上げて立軸ポンプ10を起こし、立軸ポンプ10の重心とクレーンのフック16の位置関係を慎重に調整しながらクレーンを操作して、立軸ポンプ10を完全に立てる。
【0003】
これとは逆に、点検や補修等で排水機場のポンプ水槽等の設置場所から立軸ポンプ10を撤去する場合には、ポンプ水槽からクレーンにて立軸ポンプ10を立った状態のままで取り外した後に、クレーンを慎重に操作しながら立軸ポンプ10の吸込ベル18の下端縁20を支点として、図12の破線の矢印の方向にクレーンを移動させて、立軸ポンプ10を傾かせて徐々に倒して立軸ポンプ10を横転させる。
【0004】
なお、外形が略円筒状で縦長の立軸回転機械を立てたり転倒させる作業を、安全かつ低コストで行う技術が、実開昭60−165309号公報(特許文献1)に示されている。この特許文献1に示された技術は、立軸ポンプの下端部の吸込口を吐出ボウルから取り外し、吸込口を固定するための吐出ボウルのフランジに、接地部が曲面に形成された横転台を固定し、この横転台の曲面を接地させた状態で曲面の一部を支点として立軸ポンプを横転または立てる。
【特許文献1】実開昭60−165309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した図12に示す従来の立軸ポンプ10を横置状態と縦置状態に変更する作業にあっては、吸込ベル18の下端縁20を床上60に当接させてそれを支点として立軸ポンプ10を立てたり横転したりするために、立軸ポンプ10の重心とクレーンのフック16の位置関係が適切でないとバランスが崩れて、支点となる吸込ベル18の下端縁20が当接する床上60の位置がずれて引きずられ、立軸ポンプ10の位置が急に変わり非常に危険であるとともに、床上60を引きずられる吸込ベル18の下端縁20には立軸ポンプ10の重量が集中しており、下端縁20が損傷を受ける虞があった。そのために、作業には極めて慎重なクレーン操作が要求され、多大な時間と労力を要するという問題があった。
【0006】
さらに、立軸ポンプ10を工場から設置場所に輸送する際には、横置状態で輸送されるが、輸送中に荷崩れを起こさないようにするための梱包作業に多くの時間と労力を要し、また設置場所に搬入された後に解梱されるが、梱包に使用された木材などが廃棄物として大量に発生するという問題があった。
【0007】
なお、実開昭60−165309号公報に示される技術にあっては、横転台を取り付けるために、立軸ポンプの下端部の吸込口を吐出ボウルから取り外し、吸込口を固定するための吐出ボウルのフランジに横転台を固定するという作業が必要である。また、当然に設置場所において立軸ポンプから横転台を取り外して吸込口を取り付ける作業も必要である。さらに、輸送する際には、荷崩れを起こさないようにするための梱包作業が必要であり、また搬入された後に、梱包に使用された木材などが廃棄物として大量に発生するという問題があった。
【0008】
本発明は、上述のごとき従来の立軸回転機械を縦置状態と横置状態に変更する際の問題点に鑑みてなされたもので、立軸回転機械を縦置状態と横置状態に簡単に変更することができ、しかも縦置状態と横置状態を変更する際に立軸回転機械の下端開口部を損傷ならびに傷つけないようにした立軸回転機械の縦置および横置治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述のごとき問題点を解決するためになされたもので、本発明の立軸回転機械の縦置および横置治具は、外形が略円筒状で縦長の立軸回転機械に対して、その下端開口部から側壁に渡って添うようにL字状に折り曲げた帯板と、この帯板の外側に立設固定されその外縁形状が前記L字状の直線部分に臨んで前記帯板と平行であるとともに前記折り曲げられた部分に臨んで曲線状でしかも前記直線部分と平行な部分に連なるようにした側板とで添設部材を形成し、この添設部材を2つ横に平行にしてその間に配設した複数の連結部材で前記2つの添設部材を連結固定し、この連結固定された2つの添設部材の前記側板の外側に固定用部材を複数それぞれに配設して立軸回転機械の縦置および横置治具を構成し、前記縦置および横置治具を前記立軸回転機械の前記下端開口部から側壁に渡り添わせた状態で、前記立軸回転機械を抱えて荷締めバンドの両端をそれぞれに前記固定用部材に締め付け固定して、前記立軸回転機械に前記縦置および横置治具を固定するようにし、前記下端開口部に臨む部分を下にして縦置状態とし、前記側壁に臨む部分を下にして横置状態とするようにされている。
【0010】
そして、前記側板の外縁形状に添って第2の帯板を前記側板に立設固定し、前記帯板と側板と第2の帯板により前記添設部材の断面形状がH型またはコ字状となるように構成しても良い。
【0011】
また、前記連結部材が前記側板にボルトとナットの螺合により連結固定され、前記連結部材を長さが異なるものに交換することで、前記2つの添設部材の間隔を変更できるように構成することもできる。
【0012】
さらに、前記固定用部材を固定する固定用ボルトを挿通する縦長の長孔を前記側板に穿設し、前記添設部材に対して前記固定用部材の配設位置を縦長方向に調整できるように構成することも可能である。
【0013】
またさらに、前記側板に揺動自在に収納および前記帯板と反対側に突出可能なスタンドを設け、前記添設部材の縦置状態で前記スタンドを突出させて転倒を阻止し、前記スタンドを収納させて前記添設部材を横置状態とすることができように構成しても良い。
【0014】
また、本発明の立軸回転機械の縦置および横置治具は、外形が略円筒状で縦長の立軸回転機械に対して、その下端開口部から側壁に渡って添うようにL字状に折り曲げた帯板と、この帯板の外側に立設固定されその外縁形状が前記L字状の少なくとも前記側壁に添う前記直線部分に臨んで前記帯板と平行であるとともに前記折り曲げられた部分に臨んで曲線状でしかも前記直線部分と平行な部分に連なるようにした側板とで添設部材を形成し、この添設部材を2つ横に平行にしてその間に配設した複数の連結部材で前記2つの添設部材を連結固定し、この連結固定された2つの添設部材の前記側板の外側に固定用部材を複数それぞれに配設し、前記側板に揺動自在に収納および前記帯板と反対側に突出可能なスタンドを設けて立軸回転機械の縦置および横置治具を構成し、前記縦置および横置治具を前記立軸回転機械の前記下端開口部から側壁に渡り添わせた状態で、前記立軸回転機械を抱えて荷締めバンドの両端をそれぞれに前記固定用部材に締め付け固定して、前記立軸回転機械に前記縦置および横置治具を固定するようにし、前記スタンドを突出させて前記添設部材を前記下端開口部に臨む部分を下にして前記スタンドにより転倒を阻止て縦置状態とし、前記スタンドを収納させて前記添設部材を前記側壁に臨む部分を下にして横置状態とするようにされても良い。
【0015】
そして、外形が略円筒状で縦長の立軸回転機械に対して、その下端開口部から側壁に渡って添うようにL字状に折り曲げた帯板と、この帯板の外側に立設固定されその外縁形状が前記L字状の少なくとも前記側壁に添う前記直線部分に臨んで前記帯板と平行であるとともに前記折り曲げられた部分に臨んで曲線状でしかも前記直線部分と平行な部分に連なるようにした側板とで添設部材を形成し、この添設部材を2つ横に平行にしてその間に配設した複数の連結部材で前記2つの添設部材を連結固定し、この連結固定された2つの添設部材の前記側板の外側に固定用部材を複数それぞれに配設して立軸回転機械の縦置および横置治具を構成し、前記縦置および横置治具を前記立軸回転機械の前記下端開口部から側壁に渡り添わせた状態で、前記立軸回転機械を抱えて荷締めバンドの両端をそれぞれに前記固定用部材に締め付け固定して、前記立軸回転機械に前記縦置および横置治具を固定するようにし、前記添設部材を前記下端開口部に臨む部分を下にして縦置状態とし、前記添設部材を前記側壁に臨む部分を下にして横置状態とするようにされても良い。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の立軸回転機械の縦置および横置治具にあっては、立軸回転機械を荷締めバンドで治具に固定した状態で、添設部材の側板の外縁が床上に接地され、その側板の外縁形状が、立軸回転機械の下端開口部と平行な直線の部分と側壁に添って平行な直線の部分が曲線状で連なるので、縦置状態と横置状態に変換する際に、側板の外縁形状の曲線部が床上に当接して、立軸回転機械の傾きに応じて順次にその当接位置を変化させて、立軸回転機械を安全に縦置きと横置きに変更することができる。しかも、立軸回転機械が床上に直接当接していないので、立軸回転機械の下端開口部が損傷を受けるようなことがない。さらに、立軸回転機械に治具を取り付けた状態で、治具を梱包部材として作用させて横置状態で輸送することができ、梱包が不要であるとともに梱包部材の廃棄物が生ずることがない。なお、治具は、繰り返して使用することは勿論である。また、特許文献1記載の技術のごとく、立軸回転機械の一部を取り外すなどの作業を必要としない。
【0017】
請求項2記載の立軸回転機械の縦置および横置治具にあっては、添設部材の側板の外縁形状に添って第2の帯板を側板に立設固定し、添設部材の断面形状をH型またはコ字状とするので、添設部材自体の強度が向上するとともに、この第2の帯板が床上に接地されるので、床上に加わる単位面積当たりの荷重を小さくすることができる。
【0018】
請求項3記載の立軸回転機械の縦置および横置治具にあっては、連結部材を長さが異なるものに交換することで、2つの添設部材の間隔を変更することができる。そこで、立軸回転機械の外径寸法に応じて2つの添設部材の間隔を適正にすることができ、汎用性に優れる。
【0019】
請求項4記載の立軸回転機械の縦置および横置治具にあっては、添設部材に対して固定用部材の配設位置を長孔により縦長方向に調整できるので、立軸回転機械の形状に応じて、荷締めバンドで囲む位置を適宜に変更でき、機械を安全かつ確実に治具に固定することができる。
【0020】
請求項5記載の立軸回転機械の縦置および横置治具にあっては、縦置状態で、立軸回転機械に添接する帯板と反対側にスタンドを突出させて転倒を阻止することができるので、縦置状態を確実に保持するために、治具を支持する手段を講ずる必要がない。
【0021】
請求項6記載の立軸回転機械の縦置および横置治具にあっては、側板に揺動自在に収納および帯板と反対側に突出可能なスタンドを設けているので、スタンドを突出させて添設部材を下端開口部に臨む部分を下にしてスタンドにより転倒を阻止て縦置状態とすることができる。そこで、立軸回転機械の下端開口部の下端縁が搭載される部分に臨む側板の外縁形状の直線の部分を短くして、曲線部を大きくして、より円滑に縦置状態と横置状態を変更できるにできる。
【0022】
請求項7記載の立軸回転機械の縦置および横置治具にあっては、治具自体では縦置状態を維持できないが、側板の外縁形状の曲線部が床上に当接してその当接位置を変化させて、クレーン等の操作で立軸回転機械を安全に縦置きと横置きに変更することができる。そして、立軸回転機械に治具を取り付けた状態で、治具を梱包部材として作用させて横置状態で輸送することができ、梱包が不要であるとともに梱包部材の廃棄物が生ずることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図5を参照して説明する。図1は、本発明の立軸回転機械の縦置および横置治具の第1実施例の側面図である。図2は、図1のA矢視図である。図3は、図2のB−B断面矢視部分図である。図4は、立軸回転機械に本発明の治具を添設固定した状態の側面図である。図5は、図4の状態で立軸回転機械を横置状態と縦置状態に変換する作業を説明する図である。なお、本発明において、立軸回転機械は、外形が略円筒状で縦長のものであり、その具体的な例としては、立軸ポンプや立軸電動機や立軸水中電動機および立軸水中ポンプ等がある。しかも、立軸ポンプ等にあっては、工場で組み立てられた製品を、設置現場に搬送して設置するものであり、略円筒状の側壁内に組み込まれたポンプ軸や羽根車等は軸受けに支持されて、横置状態とされても不具合を生じることがない。
【0024】
図において、外形が略円筒状で縦長の立軸ポンプ10に対して、その吸込ベル18の下端縁20の下端開口部から側壁に渡って添うように帯板22が板厚方向にL字状に折り曲げられる。この帯板22の全長に渡ってその外側に側板24を立設固定する。側板24の外縁形状は、L字状の帯板22の側壁に添う直線部分22aに臨む部分と、L字状の下端開口部に添う直線部分22bに臨む部分とを、それぞれに帯板22に平行な直線に形成するとともに、帯板22のL字状の折り曲げられた部分22cに臨んで曲線状とし、しかも直線に形成された部分と連なるようにする。さらに、側板24の外縁に第2の帯板26を立設固定する。第2の帯板26の形状は、側板24の外縁形状に添ったものである。側板24を挟んで帯板22と第2の帯板26が、溶接やボルトにより固定しまたは一体成形などの適宜な手段で、断面H型に一体化して添設部材28が構成される。
【0025】
さらに、2つの添設部材28、28を間隔gだけ離して横に平行に配置して、その間に複数の同じ長さの鋼のパイプからなる連結部材30、30…を挟んで配設し、連結部材30、30…の両端部を側板24、24にボルト30a、30a…等によりそれぞれに連結固定し、2つの添設部材28、28と連結部材30、30…を一体化する。また、一体化された添設部材28、28の側板24、24の側方外側に、固定用部材32、32…が溶接などにより固定される。これらの2つの添設部材28、28と連結部材30、30…および固定用部材32、32…により、本発明の立軸回転機械の縦置および横置治具34が構成されている。なお、2つの添設部材28、28を配設する間隔gは、立軸ポンプ10の外径より幾分狭く構成される。また、吸込ベル18の下端縁20側に添接される添設部材28、28の直線部分22bの長さは、立軸ポンプ10の外径程度若しくはそれより長く構成される。
【0026】
上記構造の本発明の立軸回転機械の縦置および横置治具34を立てた状態で、帯板22の直線部分22bの上にクレーンで立軸ポンプ10を立った状態で搭載して、図4に示すごとく、荷締めバンド36、36で立軸ポンプ10を囲んで、こられの荷締めバンド36、36の両端部をそれぞれに固定用部材32、32…に穿設した孔32a、32a…に設けた金具32b、32b…に固定して締め付ける。必要により、立軸ポンプ10と治具34の間に隙間を調整するための角材38等を介装する。この荷締めバンド36、36による締め付けで、立軸ポンプ10とこれに添接させた治具34を一体化する。図4に示す縦置状態にあっては、立軸ポンプ10の吸込ベル18の下端縁20が搭載される治具34の直線部分22bに臨む直線の部分を床上に接地させて自立した状態にある。
【0027】
次に、縦置状態と横置状態に変更する作業につき説明する。立軸ポンプ10に治具34を添接して一体化した状態で、図5に示すように、立軸ポンプ10の頂部に設けられた吊金具12にワイヤーロープ14を掛け、このワイヤーロープ14をクレーンのフック16に掛ける。そして、縦置状態から横置状態に変更する場合には、クレーンを図5において右側に移動させるとともにフック16を徐々に下げる。すると、治具34は徐々に転倒し、床上60に曲線の部分が当接されていてその当接する部分が徐々に変化して滑らかに傾き、さらにクレーンを右側に移動させるとともにフック16を下げることで、治具34を完全に倒して、立軸ポンプ10の側壁に添接される部分の治具34の直線の部分を床上60に当接させる。もって、立軸ポンプ10を横置状態とすることができる。なお、横置状態から縦置状態に変更するには、上記作業と逆のクレーン操作を行えば良い。
【0028】
この横置状態と縦置状態を変更する際には、治具34の曲線の部分がガイドとなるので、安全にその姿勢を変更することができる。しかも、従来のごとく、吸込ベル18の下端縁20が床上を引きずられるような虞が無く、また立軸ポンプ10の重量が一点に集中するようなこともなく、下端縁20が損傷を受けるようなことがない。さらに、横置状態で搬送する際には、治具34を梱包部材として、若しくは少なくても梱包部材の一部として作用させて、輸送することができるので、梱包が不要若しくは梱包が簡単で済み、梱包部材の廃棄物が生ずることがなく若しくはその量が少なくなる。なお、治具34は、繰り返して使用することは勿論である。
【0029】
上記第1実施例にあっては、添設部材28を側板24を挟んで帯板22と第2の帯板26で溶接による固定または一体成形などの適宜な手段で断面H型に一体化して構成しているが、これに限られず、添設部材28を側板24を挟んで帯板22と第2の帯板26で断面コ字状に構成しても良い。さらには、添設部材28を、第2の帯板26を設けずに、帯板22と側板24により、断面T字状や逆L字状に構成しても良い。この第2の帯板26が設けられない添設部材28にあっては、床上60や搬送中のトラックの荷台の当接する部分に集中した大きな荷重が加わるが、床上60や荷台に適宜に鉄板を敷くなどすれば問題を生ずることがない。
【0030】
また、2つの添設部材28、28を連結する連結部材30、30…は、鋼のパイプの両端部にフランジ部を固定し、このフランジ部をボルト30a、30a…により添設部材28、28の側板24、24に固定している。そこで、立軸ポンプ10の外径寸法に応じて、連結部材30、30…の長さを適宜なものに変更することで、いかなる外径の立軸ポンプ10にも対応することができる。連結部材30、30…は、鋼のパイプによるものに限られず、H型鋼や溝型鋼やアングル鋼や角型パイプなどの適宜な長尺な型鋼を用いても良い。なお、一定の外径の立軸ポンプ10にのみ対応するものであるならば、連結部材30、30…を添設部材28、28の側板24、24に溶接などで固定しても良いことは勿論である。
【0031】
さらに、添設部材28、28の側板24、24の側方外側に固定する固定用部材32、32…は、立軸ポンプ10の形状に対応できるように配設すれば良いが、配設する数を多くするならば、使用する固定用部材32、32…を適宜に選択することができ、それだけ立軸ポンプ10の各種の形状に一層適正に対応することが可能となる。そして、固定用部材32、32…の構造は、孔32a、32a…が穿設されたものに限られず、荷締めバンド36、36の両端部が締め付け固定できる構造であれば良く、鈎状フックが設けられるなどの構造であっても良い。
【0032】
次に、本発明の第2実施例を図6および図7を参照して説明する。図6は、本発明の立軸回転機械の縦置および横置治具の第2実施例の一部側面図である。図7は、図6のC−C断面矢視拡大部分図である。図6および図7において、図1ないし図5に示す第1実施例と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0033】
第1実施例にあっては、一体化された添設部材28、28の側板24、24の側方外側に、固定用部材32、32…が溶接により固定されているが、第2実施例にあっては、側板24、24に、縦長の方向に長い長孔24a、24a…を複数穿設して、この長孔24a、24a…に固定用ボルト32c、32c…を挿通し側板24、24の反対側で固定用ナット32d、32d…に螺合させて固定用部材32、32…を固定する。長孔24a、24a…内で固定用ボルト32c、32c…の位置を変更することで、固定用部材32、32…の位置を縦長方向に調整でき、立軸ポンプ10の外形に応じて、締め付け固定する荷締めバンド36、36の位置を縦長方向により適正なものとすることができる。
【0034】
さらに、本発明の第3実施例を図8および図9を参照して説明する。図8は、本発明の立軸回転機械の縦置および横置治具の第3実施例の側面図である。図9は、図8に示されるスタンドの構造の一例を示し、(a)は正面図であり、(b)は底面図であり、(c)は(b)のD矢視図(但し、脚パイプおよび脚板は図示されていない。)である。第3実施例において、第1実施例および第2実施例と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0035】
第3実施例にあっては、スタンド40が一体化された添設部材28、28のL字状の折り曲げ部分で側板24、24の側方外側に、揺動自在に配設される。スタンド40の構造は、軸パイプ46にこれより幾分短い揺動パイプ48が揺動自在に遊嵌され、軸パイプ46の両端にサポート部材50、50を溶接などで固定し、このサポート部材50、50を側板24、24に溶接などで固定する。そして、揺動パイプ48に脚パイプ52を揺動軸に対して斜め方向に溶接などで固定し、その遊端部に脚板54を溶接などで固定する。脚パイプ52は、軸パイプ46を揺動軸として略180度揺動自在であり、揺動により脚パイプ52が側板24に添った状態となる収納状態と、側板24から帯板22と反対側に突出した突出状態に変更できる。治具34を立軸ポンプ10の吸込ベル18の下端縁20が搭載される直線の部分を床上60に当接させて自立した状態において、脚パイプ52が突出した状態で脚板54が床上60に当接する状態となるようにし、治具34が転倒するのを阻止する。スタンド40が側板24に設けられる位置に応じて、揺動パイプ48に脚パイプ52を溶接する斜めの角度や、脚パイプ52の長さを適宜に調整することは勿論である。さらに、脚パイプ52の収納状態と突出状態とで、揺動パイプ48と軸パイプ46に貫通孔を穿設し、その貫通孔と同軸上に揺動パイプ48に揺動止めナット56、56を溶接固定し、この揺動止めナット56、56に揺動止めボルト58、58を螺合させて揺動パイプ48と軸パイプ46に貫通固定させて、脚パイプ52の揺動を規制している。なお、脚パイプ52の収納状態と突出状態とが180度の揺動位置であるならば、図9のごとく、脚パイプ52の揺動を規制するために揺動パイプ48と軸パイプ46に穿設する2つの貫通孔を直径方向の同一線上に設けても良い。脚パイプ52はパイプに変えて、H型鋼などの適宜な型鋼で構成されても良いことは勿論である。
【0036】
第3実施例にあっては、治具34の縦置状態で、帯板22と反対側すなわち立軸ポンプ10と反対側にスタンド40を突出させて転倒を阻止することができるので、縦置状態を確実に保持するために、治具34を支持する手段を別途に講ずる必要がない。しかも、搬送などの横置状態では、スタンド40を側板24に添った状態に収納でき、搬送の際に邪魔となるようなこともない。
【0037】
上記の第3実施例にあっては、治具34を立軸ポンプ10の吸込ベル18の下端縁20が搭載される直線の部分を床上60に当接させて自立した状態となるようにしている。しかしながら、スタンド40を設けることで自立させることができるので、立軸ポンプ10の吸込ベル18の下端縁20が搭載される直線の部分だけで、自立しなくても良い。そこで、図10に示す第3実施例の変形例のように、側板24に揺動自在に収納および帯板22と反対側に突出可能なスタンド40を設けるとともに、立軸ポンプ10の吸込ベル18の下端縁20が搭載される直線の部分を短くして、直線の部分の先端部とスタンド40により支持して姿勢を維持させ、転倒を阻止して縦置状態とすることができるようにしても良い。この直線の部分を短くすることで曲線部をかなり大きくでき、より円滑に縦置状態と横置状態を変更できるようにしても良い。
【0038】
さらに、治具34をクレーンや他の適宜な手段で立てた状態に保持できるようにするならば、図11に示す変更例のように、立軸ポンプ10の吸込ベル18の下端縁20が搭載される直線の部分だけで自立できず、しかもスタンド40が設けられていなくても良い。側板の外縁形状の大きな曲線部が床上に当接してその当接位置を変化させて、クレーン等の操作で立軸回転機械を安全に縦置きと横置きに変更することができる。そして、立軸回転機械に治具を取り付けた状態で、治具を梱包部材として作用させて横置状態で輸送することができ、梱包が不要であるとともに梱包部材の廃棄物が生ずることがない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の立軸回転機械の縦置および横置治具の第1実施例の側面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図2のB−B断面矢視部分図である。
【図4】立軸回転機械に本発明の治具を添設固定した状態の側面図である
【図5】図4の状態で立軸回転機械を横置状態と縦置状態に変換する作業を説明する図である。
【図6】本発明の立軸回転機械の縦置および横置治具の第2実施例の一部側面図である。
【図7】図6のC−C断面矢視拡大部分図である。
【図8】本発明の立軸回転機械の縦置および横置治具の第3実施例の側面図である。
【図9】図8に示されるスタンドの構造の一例を示し、(a)は正面図であり、(b)は底面図であり、(c)は(b)のD矢視図(但し、脚パイプおよび脚板は図示されていない。)である。
【図10】側板にスタンドを設けて、スタンドにより転倒を阻止して縦置状態とすることができるようにして、曲線状の部分を大きくした、第3実施例の変形例の側面図である。
【図11】スタンドを設けずに曲線部を大きくした、変更例の側面図である。
【図12】立軸ポンプを横置状態から縦置状態に変更する従来の作業の手順を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
10 立軸ポンプ
12 吊金具
14 ワイヤーロープ
16 フック
18 吸込ベル
20 下端縁
22 帯板
22a、22b 直線部分
22c 折り曲げられた部分
24 側板
24a 長孔
26 第2の帯板
28 添設部材
30 連結部材
30a ボルト
32 固定用部材
32a 孔
32b 金具
32c 固定用ボルト
32d 固定用ナット
34 立軸回転機械の縦置および横置治具
36 荷締めバンド
38 角材
40 スタンド
46 軸パイプ
48 揺動パイプ
50 サポート部材
52 脚パイプ
54 脚板
56 揺動止めナット
58 揺動止めボルト
60 床上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形が略円筒状で縦長の立軸回転機械に対して、その下端開口部から側壁に渡って添うようにL字状に折り曲げた帯板と、この帯板の外側に立設固定されその外縁形状が前記L字状の直線部分に臨んで前記帯板と平行であるとともに前記折り曲げられた部分に臨んで曲線状でしかも前記直線部分と平行な部分に連なるようにした側板とで添設部材を形成し、この添設部材を2つ横に平行にしてその間に配設した複数の連結部材で前記2つの添設部材を連結固定し、この連結固定された2つの添設部材の前記側板の外側に固定用部材を複数それぞれに配設して立軸回転機械の縦置および横置治具を構成し、前記縦置および横置治具を前記立軸回転機械の前記下端開口部から側壁に渡り添わせた状態で、前記立軸回転機械を抱えて荷締めバンドの両端をそれぞれに前記固定用部材に締め付け固定して、前記立軸回転機械に前記縦置および横置治具を固定するようにし、前記下端開口部に臨む部分を下にして縦置状態とし、前記側壁に臨む部分を下にして横置状態とするようにしたことを特徴とする立軸回転機械の縦置および横置治具。
【請求項2】
請求項1記載の立軸回転機械の縦置および横置治具において、前記側板の外縁形状に添って第2の帯板を前記側板に立設固定し、前記帯板と側板と第2の帯板により前記添設部材の断面形状がH型またはコ字状となるように構成したことを特徴とする立軸回転機械の縦置および横置治具。
【請求項3】
請求項1または2記載の立軸回転機械の縦置および横置治具において、前記連結部材が前記側板にボルトとナットの螺合により連結固定され、前記連結部材を長さが異なるものに交換することで、前記2つの添設部材の間隔を変更できるように構成したことを特徴とする立軸回転機械の縦置および横置治具。
【請求項4】
請求項1または2記載の立軸回転機械の縦置および横置治具において、前記固定用部材を固定する固定用ボルトを挿通する縦長の長孔を前記側板に穿設し、前記添設部材に対して前記固定用部材の配設位置を縦長方向に調整できるように構成したことを特徴とする立軸回転機械の縦置および横置治具。
【請求項5】
請求項1または2記載の立軸回転機械の縦置および横置治具において、前記側板に揺動自在に収納および前記帯板と反対側に突出可能なスタンドを設け、前記添設部材の縦置状態で前記スタンドを突出させて転倒を阻止し、前記スタンドを収納させて前記添設部材を横置状態とすることができように構成したことを特徴とする立軸回転機械の縦置および横置治具。
【請求項6】
外形が略円筒状で縦長の立軸回転機械に対して、その下端開口部から側壁に渡って添うようにL字状に折り曲げた帯板と、この帯板の外側に立設固定されその外縁形状が前記L字状の少なくとも前記側壁に添う前記直線部分に臨んで前記帯板と平行であるとともに前記折り曲げられた部分に臨んで曲線状でしかも前記直線部分と平行な部分に連なるようにした側板とで添設部材を形成し、この添設部材を2つ横に平行にしてその間に配設した複数の連結部材で前記2つの添設部材を連結固定し、この連結固定された2つの添設部材の前記側板の外側に固定用部材を複数それぞれに配設し、前記側板に揺動自在に収納および前記帯板と反対側に突出可能なスタンドを設けて立軸回転機械の縦置および横置治具を構成し、前記縦置および横置治具を前記立軸回転機械の前記下端開口部から側壁に渡り添わせた状態で、前記立軸回転機械を抱えて荷締めバンドの両端をそれぞれに前記固定用部材に締め付け固定して、前記立軸回転機械に前記縦置および横置治具を固定するようにし、前記スタンドを突出させて前記添設部材を前記下端開口部に臨む部分を下にして前記スタンドにより転倒を阻止て縦置状態とし、前記スタンドを収納させて前記添設部材を前記側壁に臨む部分を下にして横置状態とするようにしたことを特徴とする立軸回転機械の縦置および横置治具。
【請求項7】
外形が略円筒状で縦長の立軸回転機械に対して、その下端開口部から側壁に渡って添うようにL字状に折り曲げた帯板と、この帯板の外側に立設固定されその外縁形状が前記L字状の少なくとも前記側壁に添う前記直線部分に臨んで前記帯板と平行であるとともに前記折り曲げられた部分に臨んで曲線状でしかも前記直線部分と平行な部分に連なるようにした側板とで添設部材を形成し、この添設部材を2つ横に平行にしてその間に配設した複数の連結部材で前記2つの添設部材を連結固定し、この連結固定された2つの添設部材の前記側板の外側に固定用部材を複数それぞれに配設して立軸回転機械の縦置および横置治具を構成し、前記縦置および横置治具を前記立軸回転機械の前記下端開口部から側壁に渡り添わせた状態で、前記立軸回転機械を抱えて荷締めバンドの両端をそれぞれに前記固定用部材に締め付け固定して、前記立軸回転機械に前記縦置および横置治具を固定するようにし、前記添設部材を前記下端開口部に臨む部分を下にして縦置状態とし、前記添設部材を前記側壁に臨む部分を下にして横置状態とするようにしたことを特徴とする立軸回転機械の縦置および横置治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−127313(P2012−127313A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281263(P2010−281263)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000151058)株式会社電業社機械製作所 (21)
【Fターム(参考)】