説明

端末情報蓄積システム及び方法、並びに、無線通信装置及び方法

【課題】無線通信システムにおいて、自端末宛以外のパケットも取得し、そのパケット情報を利用して、余分なパケットの再送信を少なくし、過剰なトラフィックを回避することができるようにする。
【解決手段】本発明の端末情報蓄積システムは、複数の無線端末を有して構成される無線通信システムで、1又は複数の他端末から受信した受信信号に基づいて各他端末に関する端末情報を蓄積する端末情報蓄積システムにおいて、近傍に存在する1又は複数の他端末から受信した全パケットについて、解析対象とする通信プロトコルの階層を特に限定することなく、各パケットのパケット情報の内容を解析するパケット情報解析手段と、パケット情報解析手段により解析された全パケットのパケット情報の内容を、所定方式に従って逐次蓄積する端末情報蓄積手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末情報蓄積システム及び方法、並びに、無線通信装置及び方法に関し、例えば、インフラストラクチャに依存しないアドホック方式を採用した無線通信システムにおける通信装置が有する、端末情報蓄積システム及び方法、並びに、無線通信装置及び方法に適用し得る。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信システムを構成する各通信端末は、自端末宛以外のパケットを受信しても、中継送信を行なう場合を除いて、当該受信パケットを廃棄している。
【0003】
図2は、従来の無線通信システムの通信端末でのパケット受信処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【0004】
図2に示すように、通信端末は、パケットを受信すると(ステップS101)、受信パケットのヘッダ情報に基づいて宛先を解析し(ステップS102)、宛先が自端末である場合には上位層に受信パケットを伝達し(ステップS103)、宛先が自端末以外である場合には、ヘッダ情報に基づいて中継する必要があるか否かを判断する(ステップS104)。
【0005】
そして、当該受信パケットが、中継する必要がない場合には、当該受信パケットを廃棄し(ステップS105)、中継する必要がある場合には、次の転送先に向けて当該パケットを中継する(ステップS106)。
【0006】
非特許文献1には、プロミスキュアスモードでは、近傍の端末から受信したパケットが自端末宛以外のパケットであっても、廃棄せずにルーティングテーブルの作成に利用する技術が開示されている。ただし、ルーティングテーブルの作成を目的とし、データの再利用という機能は所有しない。
【0007】
また、特許文献1には、キャッシュ機能を持つルータが提案されているが、無線通信環境下で、近傍の端末が通信を行なっている場合に、自端末宛以外のパケットを受信した場合に、データベースに格納する機能は有しない。
【0008】
【特許文献1】特開2000−232479号公報
【非特許文献1】インターネット標準化委員会(Internet Engineering Task Force),INTERNET−DRAFT DSR(Dynamic Source Routing)プロトコル,“draft-ietf-manet-dsr-10.txt”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、無線通信システムにおいては、通信帯域を有効に利用した効率的な通信を行なうことが強く求められており、そのために、余分なパケットの再送信をなくし、過剰なトラフィックを回避することが必要となる。
【0010】
上述した非特許文献1に記載の技術を用いて、自端末宛以外のパケットを取得し、この取得情報を再利用するという方法も考えられるが、非特許文献1の技術はルーティングテーブルを作成するための技術であるため、そのまま適用しても、再送信の回数を減らすことはできない。
【0011】
また、特許文献1に記載の技術は、例えばアドホック方式を採用した無線通信システム等の無線通信環境においてはそのまま適用することができない。
【0012】
そのため、無線通信システムにおいて、自端末宛以外のパケットも取得し、そのパケット情報を利用して、余分なパケットの再送信を少なくし、過剰なトラフィックを回避することができる端末情報蓄積システム及び方法、並びに、無線通信装置及び方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するために、第1の本発明の端末情報蓄積システムは、複数の無線端末を有して構成される無線通信システムで、1又は複数の他端末から受信した受信信号に基づいて各他端末に関する端末情報を蓄積する端末情報蓄積システムにおいて、(1)近傍に存在する1又は複数の他端末から受信した全パケットについて、解析対象とする通信プロトコルの階層を特に限定することなく、各パケットのパケット情報の内容を解析するパケット情報解析手段と、(2)パケット情報解析手段により解析された全パケットのパケット情報の内容を、所定方式に従って逐次蓄積する端末情報蓄積手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
第2の本発明の無線通信装置は、無線通信システムを構成する無線端末の無線通信装置において、(1)近傍に存在する1又は複数の他端末から受信した全パケットについて、解析対象とする通信プロトコルの階層を特に限定することなく、各パケットのパケット情報の内容を解析するパケット情報解析手段と、(2)パケット情報解析手段により解析された全パケットのパケット情報の内容を、所定方式に従って逐次蓄積する端末情報蓄積手段と、(3)端末情報蓄積手段に蓄積されている蓄積情報を用いて、所定の無線通信処理を実行する無線通信処理手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
第3の本発明の端末情報蓄積方法は、複数の無線端末を有して構成される無線通信システムで、1又は複数の他端末から受信した受信信号に基づいて各他端末に関する端末情報を蓄積する端末情報蓄積方法において、(1)パケット情報解析手段が、近傍に存在する1又は複数の他端末から受信した全パケットについて、解析対象とする通信プロトコルの階層を特に限定することなく、各パケットのパケット情報の内容を解析するパケット情報解析工程と、(2)端末情報蓄積手段が、パケット情報解析手段により解析された全パケットのパケット情報の内容を、所定方式に従って逐次蓄積する端末情報蓄積工程とを有することを特徴とする。
【0016】
第4の本発明の無線通信方法は、無線通信システムを構成する無線端末の無線通信方法において、(1)パケット情報解析手段が、近傍に存在する1又は複数の他端末から受信した全パケットについて、解析対象とする通信プロトコルの階層を特に限定することなく、各パケットのパケット情報の内容を解析するパケット情報解析工程と、(2)端末情報蓄積手段が、パケット情報解析手段により解析された全パケットのパケット情報の内容を、所定方式に従って逐次蓄積する端末情報蓄積工程と、(3)無線通信処理手段が、端末情報蓄積手段に蓄積されている蓄積情報を用いて、所定の無線通信処理を実行する無線通信処理工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の端末情報蓄積システム及び方法、並びに、無線通信装置及び方法によれば、自端末に届いたパケットが、自端末に関係のあるパケットであるか否かに拘わらず、受信したパケットは全て解析し、これらパケットから得られる端末情報をデータベースに蓄積することができる。従って、自端末が独自のデータベースを備えることができるので、他端末に問い合わせることなく、独自のデータベースから所望データを検索し、これを利用することができるから、端末間での送信回数を減らすことができる。また、データベースへの検索により自端末で要求が解決できれば、余計なパケットの送信を避けることができるため、結果として、全体のスループットを上げることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(A)第1の実施形態
以下、本発明の端末情報蓄積システム及び方法、並びに、無線通信装置及び方法の第1の実施形態を図面を参照して説明する。
【0019】
第1の実施形態は、例えば、アドホック方式を採用する無線通信システムを構成する無線端末に、本発明を適用した場合を例示して説明する。
【0020】
なお、第1の実施形態で説明するシステムにおいて、パケット情報を解析する解析対象とする階層(例えば、OSI参照モデルにおける通信プロトコルの階層)については、特に限定されるものではない。すなわち、システム運用において、必要に応じて解析対象を任意に選択し、無線端末に実装させることができる。
【0021】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態の無線端末が備えるシステムの構成を示す構成図である。図1において、第1の実施形態のシステム300は、データベース作成部301、通信プロトコル302、アプリケーション303、を少なくとも有する。
【0022】
なお、図1に示す機能構成は、例えばCPU等のハードウェアが処理プログラムを実行することにより実現することができるソフトウェア処理でなされるものである。無線端末のハードウェア構成の詳細は省略するが、既存の無線端末と同様に、例えば、無線通信手段、CPU、ROM、RAM、EEPROM等を有して構成される。
【0023】
図示しない無線通信手段は、近傍に存在する他端末からの電波信号を捕捉し、所定の復調処理等を施して受信信号を取得し、その受信信号をデータベース作成部300に与えるものである。
【0024】
データベース作成部301は、受信したパケットのパケット情報や受信信号の受信電力値(若しくは受信電界強度)を用いて、近傍に存在する他の無線端末に関する情報を取得し、後述する各種情報を情報端末データベース306に蓄積するものである。
【0025】
また、データベース作成部301は、受信したパケットのパケット情報を解析するパケット解析部304と、受信信号の受信電力値を解析する電力解析部305と、パケット解析部308及び電力解析部305による解析結果を端末情報として蓄積する端末情報データベース306と、を有する。
【0026】
なお、端末情報データベース306は、基本的には、パケット解析部308の解析結果である受信パケットのパケット情報を逐次蓄積していくものであるが、必要に応じて(例えば、時間的条件や容量的条件等の条件を満たした場合)、蓄積データを廃棄できるようにしてもよい。
【0027】
パケット解析部304は、パケット分解部307、送信元解析部308、送信先解析部309、中継元解析部310、中継先解析部311、ホップ数解析部312、位置情報解析部313、順序番号解析部314、データ解析部315、を少なくとも有する。
【0028】
なお、パケット解析部304が備える解析部308〜315は、一例であり、受信するパケットの型やヘッダに併せて変更・追加・削除することができる。
【0029】
パケット分解部307は、受信したパケットを分解するものであり、分解したパケット情報を、送信元解析部308、送信先解析部309、中継元解析部310、中継先解析部311、ホップ数解析部312、位置情報解析部313、順序番号解析部314、データ解析部315のそれぞれに与えるものである。
【0030】
送信元解析部308、送信先解析部309、中継元解析部310、中継先解析部311、ホップ数解析部312、位置情報解析部313、順序番号解析部314、及び、データ解析部315は、それぞれ、パケット分解部307から受け取ったパケット情報を解析し、送信元情報、送信先情報、中継元情報、中継先情報、ホップ数情報(他端末から自端末までのホップ数)、他端末の位置情報、送信データの順序番号情報、及び、送信データを、解析結果として端末情報データベース306に与えるものである。
【0031】
電力解析部305は、受信信号の受信電力値(若しくは受信電界強度)を測定する受信電力解析部316を有するものであり、受信電力解析部326による測定結果を端末情報データベース306に与えるものである。
【0032】
通信プロトコル302は、無線通信処理を管理する手段であり、少なくともルーティングプロトコル317及び再送処理部318を有するものである。ルーティングプロトコル317及び再送処理部318は、端末情報データベース306に格納されたデータを参照することができる(図1では破線として示す)。
【0033】
ルーティングプロトコル317は、ルーティングテーブル319を有し、このルーティングテーブル319を用いて所定のルーティング処理を行なうものである。第1の実施形態では、ルーティングプロトコル317は、少なくともルーティングテーブル319の作成機能を有する。つまり、ルーティングプロトコル317は、端末情報データベース306に格納されたデータを必要に応じて参照して、ルーティングテーブル319を作成するものである。
【0034】
このように、自端末が備える独自の端末情報データベース306を参照して、ルーティングテーブル319を作成することにより、ルーティングテーブル319の作成のための他端末との間の情報授受を少なくすることができるので、ネットワーク全体のトラフィック量を減らすことができる。
【0035】
再送処理部318は、必要に応じて、端末情報データベース306を参照し、再送すべきパケットの有無を判断したり、パケットの再送処理をしたりするものである。
【0036】
アプリケーション303は、複数のアプリケーション群320−1〜320−N(Nは正の整数)を有して構成されるものである。
【0037】
各アプリケーション320−1〜320−Nは、必要に応じて端末情報データベース306のデータを参照し、それぞれ所定のアプリケーション処理を行なうものである。なお、第1の実施形態では、各アプリケーション320−1〜320−Nの具体的な内容は特に限定されるものではなく、広く適用することができる。
【0038】
次に、パケットフォーマットの一例について図4を参照して説明する。図4は、パケットフォーマットの構成例を示す図である。
【0039】
なお、図4に示すパケットフォーマットは、概略的な構成図であり、第1の実施形態の説明で必要のない要素については省略している。また、通信プロトコル(例えば、イーサネット(登録商標)やTCP/IP等)に応じて、パケットフォーマットの構成を変更してもよい。
【0040】
図4において、パケットは、「送信元アドレス401」、「送信先アドレス402」、「中継元アドレス403」、「中継先アドレス404」、「ホップ数405」、「位置情報406」、「順序番号407」、及び、「データ408」を少なくとも有して構成される。
【0041】
「送信元アドレス401」には、パケット送信の起源となる送信元端末のアドレスが入る。汎用的なプロトコルの例として、インターネットプロトコルにおける送信元IPアドレスが入る。
【0042】
「送信先アドレス402」は、パケット送信の起源となる送信先端末が、最終的にパケットを到着させる端末のアドレスが入る。例えば、汎用的なプロトコルの例として、インターネットプロトコルにおける宛先IPアドレスが入る。
【0043】
「中継元アドレス403」は、パケットを作成した端末のアドレスが入る。パケットを中継する場合、中継を行なう端末のアドレスが入る。例えば、汎用的なプロトコルの例として、イーサネット(登録商標)の送信元MACアドレスが入る。
【0044】
「中継先アドレス404」は、次に送信する端末のアドレスが入る。例えば、汎用的なプロトコルの例として、イーサネットの送信先MACアドレスが入る。
【0045】
「ホップ数405」には、中継を繰り返した回数が入る。例えば、ホップ数の値は、「1」から始まり、中継を行なうたびに増えるようにしたり、また、ある値から中継を行なうたびに減るようにしたりする。
【0046】
「位置情報406」には、端末の位置の情報を入れる。例えば、図示しないが、端末がGPS通信手段を備えており、GPS衛星から得た緯度、経度に関する情報や、この緯度、経度に関する情報に基づいて、所定の座標軸を基とした座標情報等を入れる。
【0047】
「順序番号407」は、パケットを一意に識別するために、送信元の端末がパケットを送信した順番に番号を付加する。通常、値は1からインクリメントされていく。例えば、汎用的なプロトコルの例として、TCPの順序番号が入る。
【0048】
「データ408」は、送信元端末が送信するデータが入る。
【0049】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の一連の動作を、図3、図5、図6、図7、図8、図9及び図10を参照して説明する。
【0050】
(A−2−1)全体動作
まず、第1の実施形態に係る無線端末における受信処理の概略的なアルゴリズムを、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0051】
図3において、無線端末において、パケットを受信すると(ステップS201)、受信パケットのパケット情報を解析し、その解析したパケット情報を端末情報データベース306に格納する(ステップS202)。
【0052】
ここで、パケット情報の解析については、パケット解析部308におけるパケット情報が行なわれるが、ここでの具体的な動作については後述する。
【0053】
第1の実施形態では、各無線端末が、自端末宛のパケットだけでなく、自端末宛以外のパケットも受信して、パケット情報の解析を行なう。そして、解析結果を自端末が備える端末情報データベース306に格納する。これにより、各無線端末は、端末情報データベース306に格納されているデータを参照することで、近傍に存在する他の無線端末の通信状況を把握することができ、また他の無線端末の通信状況に応じて、所定の処理を実行させることができる。
【0054】
ステップS202において、受信パケットのパケット情報を格納すると、受信パケットのヘッダに基づいて宛先を解析し(ステップS203)、宛先が自端末である場合には上位層に受信パケットを伝達し(ステップS204)、宛先が自端末以外である場合には、ヘッダ情報に基づいて中継する必要があるか否かを判断する(ステップS205)。
【0055】
そして、当該受信パケットが、中継する必要がない場合には、当該受信パケットを廃棄し(ステップS206)、中継する必要がある場合には、次の転送先に向けて当該パケットを中継する(ステップS207)。
【0056】
(A−2−2)端末情報データベースの作成処理
続いて、第1の実施形態の無線端末における端末情報データベースの作成処理を説明する。
【0057】
図5は、無線通信システムの全体的な構成イメージとパケットの流れを示す図である。図5では、端末1(501)、端末2(502)、端末3(503)及び端末4(504)で構成される場合を示し、端末2(502)から端末4(504)宛にパケットを送信する場合の動作を示している。
【0058】
図5において、破線で示す円505は、端末2(502)の通信範囲を示である。端末2(502)から送信したパケットは、円505の内部にある端末の全てに届くものとする。パケットの宛先である端末4(504)は、円505の外部にあるため、端末2(502)と直接通信を行なうことができない。
【0059】
そこで、端末3(503)がパケットの中継を行なうことで、端末2(502)は間接的に端末4(504)と通信を行なう場合を説明する。
【0060】
また、図5では、端末2(502)が送信したパケット506及び507のパケット情報の具体的な値を示す。
【0061】
具体的には、パケット506及び507の各パケット情報の値は、「送信元アドレス401が“2”」、「送信先アドレス402が“4”」、「中継元アドレス403が“2”」、「中継先アドレス404が“3”」、「ホップ数405が“1”」、「位置情報406が(X、Y)」、「順序番号407が“250”」、「データ408が“AAABBBCCCC”」とする。
【0062】
つまり、「送信元アドレス401」には、送信元である端末2(502)のアドレスが入る。「送信先アドレス402」には、送信先である端末4(504)のアドレスが入る。「中継元アドレス403」には、該パケットを作成した端末2(502)のアドレスが入る。「中継先アドレス404」には、次に中継する端末3(503)のアドレスが入る。
【0063】
図6〜図11は、端末情報データベース306の作成手順を詳細に説明する説明図である。
【0064】
図6において、端末情報データベース306は、端末テーブル614、ホップ数テーブル615、受信電力テーブル616、位置テーブル617、データテーブル618を格納するものとする。なお、第1の実施形態では、各種テーブル614〜618として、各種情報を格納するものとするが、データの格納方法は、これに限定されることなく他の方法を用いてもよい。
【0065】
端末テーブル614は、ある端末と、その端末が通信を行なうことができる端末の関係を示すテーブルである。端末テーブル614は、項目として、「端末のアドレス619」と、その端末が通信を行なうことのできる「端末のアドレス620」とを有する。
【0066】
ホップ数テーブル615は、ある端末が自端末の何ホップ先に存在するかの関係を示すテーブルである。ホップ数テーブル615は、項目として、「端末のアドレス621」と「ホップ数622」とを有する。例えば、端末4(504)が、端末2(502)から2ホップ先に存在する場合には、「端末のアドレス621」に“4”が入力され、「ホップ数622」に“2”が入力される。
【0067】
受信電力テーブル616は、ある端末とその端末から受信した場合に受信電力の関係を示すテーブルである。受信電力テーブル616は、項目として、「端末のアドレス623」と「受信電力624」とを有する。例えば、端末4(504)からの受信信号の受信電力値が−45dBである場合、「端末のアドレス623」に“4”が入力され、「受信電力624」に“−45”が入力される。
【0068】
位置テーブル617は、ある端末の位置情報を示すテーブルである。位置テーブル617は、項目として、「端末のアドレス625」と「位置情報626」を有する。例えば、端末4(504)の位置が(X,Y)である場合、「端末のアドレス625」に“4”が入力され、「位置情報626」に(X,Y)が入力される。
【0069】
データテーブル618は、ある端末から受信したパケットに挿入されているデータを管理するテーブルである。データテーブル618は、項目として、「端末のアドレス627」と「順序番号628」と「データ629」とを有する。例えば、端末4(504)から順序番号が「250」のデータを受信した場合、「端末のアドレス627」に“4”が入力され、「順序番号628」に“250”が入力され、「データ618」に端末4から受信したデータが入力される。
【0070】
図3で説明したように、各無線端末は自端末宛以外のパケットも受信し、各無線端末において、パケット解析部304がパケット情報を解析し、かつ、電力解析部305が受信信号の受信電力値を測定する。
【0071】
そして、パケット解析部304では、パケット分解部307がパケット情報を分解し、分解した各パケット情報が各解析部309〜315に与えられ、各パケット情報の内容が端末情報テーブル306に格納される。
【0072】
図7は、端末テーブル614を作成する処理を説明する説明図である。まず、パケット分解部307によりパケット情報が分解されると、「送信元アドレス401」が送信元解析部308に与えられ、「送信先アドレス402」が送信先解析部309に与えられ、「中継元アドレス403」が中継元解析部310に与えられ、「中継先アドレス404」が中継先解析部311に与えられる。
【0073】
送信元解析部308、送信先解析部309、中継元解析部310及び中継先解析部311は、それぞれ、パケット情報の内容を解析し、その解析したパケット情報の内容を端末情報データベース306の端末テーブル614に格納する。
【0074】
例えば、端末1(501)において、図5に示す端末2(502)から端末4(504)宛のパケットを受信した場合、送信元解析部308は「2」であることを解析し、送信先解析部309は「4」であることを解析する。そうすると、送信元解析部308は、端末テーブル614の項目「端末のアドレスの欄709」に「2」を入力し、送信先解析部309は、端末テーブル614の項目「通信可能な端末のアドレスの欄710」に「4」を入力する。
【0075】
これにより、例えば、端末2(502)から送信されたパケットを受信した端末1(501)は、端末2(502)に向けてパケットを送信すれば、端末4と通信できることがわかる。
【0076】
また、同様に、例えば、端末1(501)が図5のパケットを解析する場合、中継元解析部310は「2」であることを解析し、中継先解析部311は「3」であることを解析する。そうすると、中継元解析部310は、端末テーブル614の「端末のアドレスの欄711」に「2」を入力し、中継先解析部311は、端末テーブル614の「通信可能な端末のアドレスの欄712」に「3」を入力する。
【0077】
これにより、端末1(501)は、中継元が端末2(502)で中継先が端末3(503)とすることができることがわかる。これは、端末2(502)は、端末3(503)と通信を行なえることを意味する。すなわち、端末2(502)から送信されたパケットを受信した端末1(501)は、端末2(502)を中継役として利用することで、端末3と通信を行なえることがわかる。
【0078】
次に、図8は、ホップ数テーブル615、受信電力テーブル616及び位置テーブル617を作成する処理を説明する説明図である。
【0079】
図7の場合と同様にして、送信元解析部308、ホップ数解析部312及び位置情報解析部313は、それぞれ、パケット情報の内容を解析し、その解析したパケット情報の内容を、端末情報データベース306のホップ数テーブル615、受信電力テーブル616及び位置テーブル617に格納する。
【0080】
また、受信電力部802は、受信電力解析部316が受信信号の受信電力値を測定し、その受信電力値を端末情報データベース803の受信電力テーブル616に格納する。
【0081】
例えば、端末1(501)が図5のパケットを解析する場合、送信元解析部308は「2」であることを解析して、ホップ数テーブル615の「端末のアドレスの欄810」、受信電力テーブル616の「端末のアドレスの欄813」及び位置テーブル617の「端末のアドレスの欄815」に「2」を入力する。
【0082】
また、ホップ数解析部312は「1」であることを解析し、ホップ数テーブル615の「ホップ数の欄811」に「1」を入力する。さらに、位置情報解析部313は「(X,Y)」を解析し、位置テーブル617の「位置情報の欄817」に入力する。
【0083】
さらに、受信電力解析部316は受信信号の受信電力値として「−45dB」を解析し、受信電力テーブル616の「受信電力の欄814」に「−45」を入力する。
【0084】
続いて、図9は、データテーブル618を作成する処理を説明する説明図である。
【0085】
この場合も同様にして、送信元解析部308、順序番号解析部314及びデータ解析部315は、それぞれ、パケット情報の内容を解析し、その解析したパケット情報の内容を端末情報データベース306のデータテーブル618に格納する。
【0086】
例えば、端末1(501)が図5のパケットを解析する場合、送信元解析部308は「2」であることを解析して、データテーブル618の「端末のアドレスの欄908」に「2」を入力する。
【0087】
また、順序番号解析部314は順序番号が「250」であることを解析し、データテーブル618の「順序番号の欄909」に「250」を入力する。さらに、データ解析部315はデータとして「AAABBBCCCC」を解析し、データテーブル618の「データの欄910」に「AAABBBCCCC」を入力する。
【0088】
以上のようにして、パケット解析部301の各種解析部308〜315及び受信電力解析部316の解析結果に基づいて、端末情報データベース306を作成することができる。
【0089】
(A−2−3)ルーティングテーブルの作成処理
次に、端末情報データベース306を用いて、ルーティングテーブル319を作成する処理を図10を参照して説明する。
【0090】
図10は、第1の実施形態のルーティングテーブル作成処理を説明する説明図である。
【0091】
端末情報データベース306には、上述した手順に従って、上述した各種データが格納されているものとする。
【0092】
まず、ルーティングプロトコル317は、端末情報データベース306の端末テーブル614を参照して、レコード1004より、端末2(502)と端末3(503)とが通信可能であることを認識する。そうすると、ルーティングプロトコル317は、ルーティングテーブル319に、宛先アドレスを「3」、中継アドレスを「2」とするテーブル1009を追加する。
【0093】
同様に、ルーティングプロトコル317は、レコード1005より、端末2(502)と端末4(504)とが通信可能であることを認識し、宛先アドレスを「4」、中継アドレスを「2」とするテーブル1010を追加する。
【0094】
また、ルーティングプロトコル317は、ホップ数テーブル615を参照して、レコード1007より、自端末が「端末2から1ホップ」であることを認識する。そうすると、ルーティングプロトコル317は、宛先アドレスを「2」、中継アドレスを「2」とするルーティングテーブル1008を追加する。
【0095】
以上のようにして、ルーティングテーブルプロトコル317は、端末情報データベース306を参照して、自端末においてルーティングテーブル319を作成することができる。
【0096】
なお、端末情報データベース306は、ルーティングテーブル319の作成を支援することを目的としており、端末情報データベース306の参照のみで、所望のルーティングテーブル319を全て作成することが困難なことがある。この場合、無線端末は、他の無線端末から既存の方法、例えば、AODV(Adohoc Ondemand Distance Vector)におけるフラッディング等を利用してアドレスの解決を行なってもよい。
【0097】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、自端末宛のパケットだけでなく、自端末宛以外のパケットも含めて全ての受信パケットのパケット情報を解析し、その解析結果に基づいて端末情報データベース306を自端末において作成することができる。
【0098】
また、第1の実施形態によれば、自端末が所有する端末情報データベース306を利用して、所望のルーティングテーブルを作成することができる。これにより、ルーティングテーブル作成を目的とした、端末間の情報授受が不要となるので、過剰なトラフィックを回避することができる。
【0099】
さらに、第1の実施形態によれば、自端末においてルーティングテーブルを作成することができるので、オーバーヘッドを低減させ、結果として、全体のスループットを高めることができる。
【0100】
(B)第2の実施形態
次に、本発明の端末情報蓄積システム及び方法、並びに、無線通信装置及び方法の第2の実施形態を図面を参照して説明する。
【0101】
第2の実施形態も、第1の実施形態と同様に、例えば、アドホック方式を採用した無線通信システムの無線端末に、本発明を適用した場合を例示して説明する。
【0102】
第2の実施形態は、端末情報データベースに格納されているデータを利用して、効率的な再送処理を行なうシステムについて説明する。なお、端末情報データベースの作成処理については、第1の実施形態で説明したので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0103】
第2の実施形態のシステムは、第1の実施形態のシステムの構成に対応する。そこで、第2の実施形態でも、第1の実施形態で用いた図1、図3〜図10を適宜用いて説明する。
【0104】
図11は、第2の実施形態のパケットの再送処理を説明する説明図である。図11に示すように、再送処理部318は、要求解析部1108、データベース検索部1109、中継処理部1110、を少なくとも有するものである。
【0105】
要求解析部1108は、他の端末から受信したパケットが再送要求であるか否かを判断し、再送要求である場合に、どの端末がどの端末が送信したどのパケットについて、再送を要求しているかを解析するものである。また、要求解析部1108は、再送要求に係る解析結果を、データベース検索部1109に与えるものである。
【0106】
データベース検索部1109は、要求解析部1108からの解析結果に基づいて、再送要求に対応するデータを端末情報データベース306から検索するものである。そして、再送要求に対応するデータを見つけ出すと、データベース検索部1109は、検索したデータを中継処理部1110に与えるものである。
【0107】
中継処理部1110は、データベース検索部1109から再送対象のデータを受け取ると、再送対象のデータを用いて、再送要求した端末を送信先とするパケットを作成し、送信するものである。
【0108】
続いて、第2の実施形態の再送処理の動作を、図11及び図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0109】
ここでは、図5において、端末1(501)→端末2(502)→端末3(503)の順にパケット送信される場合に、端末3(503)が、端末1(501)から送信されるパケットの再送要求を行なう状況を説明する。
【0110】
まず、端末1(501)から端末3(503)宛のパケットは、端末1(501)から端末2(502)を中継して、端末3(503)に与えられる。
【0111】
このとき、端末2(502)では、当該パケットを受信すると、第1の実施形態で説明したように、パケット分解部307が分解処理を行ない、データ解析部315がパケットに含まれるデータを解析して、データテーブル618を作成する。
【0112】
ここでは、図11に示すように、レコード1104には、「端末1からの順序番号249のデータ00112233」が格納され、レコード1105には、「端末1からの順序番号250のデータAAABBBCCCC」が格納され、レコード1106には、「端末1からの順序番号251のデータ4455」が格納され、レコード1107には、「端末3からの順序番号30のデータ666777」が格納されているものとする。
【0113】
そして、端末1(501)からの順序番号249のデータを有するパケットは端末3(503)に送信されたが、端末1(501)からの順序番号250のデータを有するパケットが、何らかの影響により、端末3(503)に与えられなかったとする。
【0114】
これに対して、端末3(503)は、端末1(501)に対して当該パケットの再送要求するが、端末3(503)からの再送要求は、端末2(502)に与えられる。
【0115】
このとき、端末2(502)では、端末3(503)からの再送要求を受信すると(ステップS1201)、再送処理部318の要求解析部1108が、再送要求の内容を解析する(ステップS1202)。
【0116】
例えば、再送処理部318は、端末3(503)から受信したパケットのヘッダ情報に基づいて、当該パケットが再送要求のパケットであると判断する。当該パケットが再送要求であると判断すると、再送処理部318は、当該パケットのパケット情報に基づいて再送要求の内容を解析する。
【0117】
ここでは、要求解析部1108は、再送要求の送信元が端末3(503)であり、送信先が端末1(501)であるから、「端末3(503)が、端末1(501)の送信した順序番号「250」のデータ」を要求していることを解析する。
【0118】
そうすると、データベース検索部1109が、要求解析部1108の解析結果に基づいて、端末情報データベース1101のデータテーブル1103から、解析結果に一致するデータが格納されているか否かを検索する(ステップS1203)。
【0119】
この例では、データベース検索部1109は、端末2のデータテーブル618のレコード1105に、再送要求対象のデータがあることを検索する。
【0120】
そして、中継処理部1110が、データベース検索部1109により検索されたデータを用いて、端末3(503)宛のパケットを作成し、端末3(503)に対して送信する(ステップS1205)。
【0121】
これにより、再送要求を、送信元である端末1(501)まで送信することなく、中継端末である端末2(502)が、自端末内で所有するデータを用いて、所望データを端末3(503)に対して再送することができるので、過剰なトラフィックを低減することができる。
【0122】
一方、端末2(502)のデータベース検索部1109による検索の結果、所望のデータがデータテーブル618に格納されていない場合には、端末2(502)は当該再送要求を端末1(501)に転送するようにする(ステップS1204)。
【0123】
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態で説明した効果に加えて、再送要求があった場合、端末情報データベース306を参照して、中継端末が再送要求に係るデータを格納しているとき、データの送信元に代わって、中継端末が、データを再送要求元に対して、返信することができる。
【0124】
その結果、従来は、再送要求及びデータの再送について、送信元と宛先端末との間で何回も中継しなければ届かないが、送信元に代って、中継端末が返信することにより、オーバーヘッドを低減させることができ、全体のスループットを高めることができる。
【0125】
(C)第3の実施形態
次に、本発明の端末情報蓄積システム及び方法、並びに、無線通信装置及び方法の第2の実施形態を図面を参照して説明する。
【0126】
第3の実施形態も、第1の実施形態と同様に、例えば、アドホック方式を採用した無線通信システムの無線端末に、本発明を適用した場合を例示して説明する。
【0127】
第3の実施形態は、端末情報データベースに格納されているデータを利用して、アプリケーションとして位置情報システムを利用する場合について説明する。なお、端末情報データベースの作成処理については、第1の実施形態で説明したので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0128】
第3の実施形態のシステムは、第1の実施形態のシステムの構成に対応する。そこで、第3の実施形態でも、第1の実施形態で用いた図1、図3〜図10を適宜用いて説明する。
【0129】
図13は、第3の実施形態の位置情報システムを説明する説明図である。図13において、地図情報アプリケーション320は、図1のアプリケーション303が有するアプリケーションに相当するものである。
【0130】
地図情報アプリケーション320は、端末情報データベース306の位置テーブル617に格納されているデータを利用して、他の端末の位置をGUI画面1307に画面表示するものである。なおGUI画面1307は、特に限定されるものではなく、例えば、PCのディスプレイ等を適用できる。
【0131】
また、地図情報アプリケーション320は、地図情報表示機能1308を有する。この地図情報表示機能1308による地図情報の表示方法としては、既存技術を適用することができるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0132】
端末情報データベース306は、第1の実施形態で説明した手順により、他の端末の位置情報(例えば、GPS衛星からの緯度、経度に関する情報等)が格納されているものとする。
【0133】
すなわち、位置テーブル617の、レコード1304には端末2の位置情報(x2,y2)が格納されており、レコード1305には端末3の位置情報(x3,y3)が格納されており、レコード1306には端末4の位置情報(x4,y4)が格納されている。
【0134】
地図情報アプリケーション1302は、近傍の他の端末の位置を表示するシステムである。地図情報アプリケーション1302は、地図情報表示機能1308を実行させて、GUI画面1307に地図情報を表示させる。
【0135】
地図情報アプリケーション1302は、端末情報データベース306に、他の端末の位置情報を問い合わせる。
【0136】
そして、端末情報データベース306の位置テーブル617を参照し、位置テーブル617に他の端末の位置情報が格納されている場合、地図情報アプリケーション1302は、位置テーブル617に格納されている端末の位置情報、すなわち、端末2、端末3、端末4の位置情報を取得し、これら端末2〜4の位置情報に基づいて、GUI画面1307に端末2(502)、端末3(503)、端末4(504)の位置を表示する。
【0137】
(C−3)第3の実施形態の効果
以上のように、第3の実施形態によれば、第1の実施形態で説明した効果に加えて、端末情報データベース306に格納されている端末の位置データを利用して、他の端末の位置を表示させることで、特別なパケットを利用して端末の位置を把握する必要がなく、端末の位置の情報を容易にアプリケーションに提供できる。
【0138】
(D)他の実施形態
(D−1)第1〜第3の実施形態は、例えば、移動無線通信システムに利用可能であり、特に、例えばアドホック方式を採用したネットワーク無線通信システムのように、無線通信手段を具備した移動端末間で無線通信を行なう移動無線通信システムに利用可能である。
【0139】
また、アドホック方式を採用した車々間通信システムや路車間通信システム等の無線通信装置に、本発明を適用することができる。
【0140】
(D−2)パケット解析部304が有する解析機能や、端末情報データベース306が保持するパケット情報の内容種類は、第1〜第3の実施形態で説明したものに限定されない。
【0141】
例えば、端末が、GPS通信手段を備え、GPS衛星からの緯度、経度情報や時刻情報等を用いて、当該端末の速度情報や進行方向情報等を得て、これら自端末の速度情報や進行方向情報等をパケットに乗せて、他端末に送信するようにする。
【0142】
この場合、上記パケットを受信した端末は、送信元端末の速度情報や進行方向情報等を解析し、端末情報データベースに格納するようにしてもよい。
【0143】
なお、上記の例では、送信元端末が、速度情報や進行方向情報等を求めることとしたが、送信先端末が他の端末の速度情報や進行方向情報等を求めるようにしてもよい。
【0144】
(D−3)アプリケーションの機能については、特に限定されることなく、端末情報データベースに格納されているデータを利用するものであれば、広く適用することができる。
【0145】
例えば、端末情報データベースが各端末の速度情報や進行方向情報を格納する場合には、アプリケーションとしての地図情報システムが、端末の移動情報や進行情報も含めて表示させるものとしてもよい。
【0146】
(D−4)第2の実施形態において、送信元端末に代わって中継端末が送信データを送信先端末(再送要求元)に送信する際、当該送信先端末(再送要求元)の近傍に存在する複数の中継端末がそれぞれ再送してしまい、この送信先端末(再送要求元)を中心とする一定領域で一時的にトラフィックが増加してしまうことがあり得る。
【0147】
そこで、再送要求の際に、送信元端末に代わって送信データを送信することができる中継端末を制限するようにしてもよい。
【0148】
例えば、再送要求元から所定ホップ数以内(例えば2ホップ以内)の中継端末が再送できることを示す情報を再送要求用のパケットに乗せる。
【0149】
そして、この再送要求を受信した中継端末の再送処理部は、端末情報データベースのホップ数テーブル及びデータテーブルを参照して、自端末が、再送要求元から所定ホップ数以内にあり、かつ、送信データの検索ができた場合に、当該送信データを再送要求元に送信するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】第1〜第3の実施形態のシステム300の機能構成図である。
【図2】従来の受信処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態の受信処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態のパケットのフォーマットを示す構成図である。
【図5】第1の実施形態の無線通信システムの構成及びパケット構成を示す図である。
【図6】第1の実施形態の端末情報データベースの作成を説明する説明図である。
【図7】第1の実施形態の端末テーブルの作成手順を説明する説明図である。
【図8】第1の実施形態のホップ数テーブル、受信電力テーブル及び位置テーブルの作成手順を説明する説明図である。
【図9】第1の実施形態のデータテーブルの作成手順を説明する説明図である。
【図10】第1の実施形態のルーティングテーブルの作成手順を説明する説明図である。
【図11】第2の実施形態の再送処理を説明する説明図である。
【図12】第2の実施形態の再送処理の動作を示すフローチャートである。
【図13】第3の実施形態の地図情報システムの処理を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0151】
300…システム、301…データベース作成部、302…通信プロトコル、303…アプリケーション、304…パケット解析部、305…電力解析部、306…端末情報データベース、307…パケット分析部、308…送信元解析部、309…送信先解析部、310…中継元解析部、311…中継先解析部、312…ホップ数解析部、313…位置情報解析部、314…順序解析部、315…データ解析部、316…受信電力解析部、317…ルーティングプロトコル、318…再送処理部、319…ルーティングテーブル、320(320−1〜320−N)…アプリケーション1〜N、501〜504…端末1〜端末4、1108…要求解析部、1109…データベース検索部、1110…中継処理部、1308…地図情報表示機能。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線端末を有して構成される無線通信システムで、1又は複数の他端末から受信した受信信号に基づいて上記各他端末に関する端末情報を蓄積する端末情報蓄積システムにおいて、
近傍に存在する1又は複数の他端末から受信した全パケットについて、解析対象とする通信プロトコルの階層を特に限定することなく、上記各パケットのパケット情報の内容を解析するパケット情報解析手段と、
上記パケット情報解析手段により解析された上記全パケットのパケット情報の内容を、所定方式に従って逐次蓄積する端末情報蓄積手段と
を備えることを特徴とする端末情報蓄積システム。
【請求項2】
近傍に存在する上記1又は複数の他端末から受信した各受信信号の受信電力値を測定する受信電力測定手段を備え、
上記端末情報蓄積手段が、上記受信電力測定手段により測定された上記各受信信号の受信電力値も、所定方式に従って逐次蓄積することを特徴とする請求項1に記載の端末情報蓄積システム。
【請求項3】
上記パケット情報解析手段が、少なくとも、送信元情報、送信先情報、中継元情報及び中継先情報のそれぞれの内容を解析するものであり、
上記端末情報蓄積手段が、少なくとも、送信元情報、送信先情報、中継元情報及び中継先情報のそれぞれの内容に基づいて、各端末間が相互に通信可能とする通信可能情報を蓄積する
ことを特徴とする請求項1に記載の端末情報蓄積システム。
【請求項4】
上記パケット情報解析手段が、さらに、上記各他端末から自端末までのホップ数情報、上記各他端末の位置情報、上記各他端末からのパケット順序情報、上記各他端末の送信データの少なくとも1つ以上の内容を解析するものであり、
上記端末情報蓄積手段が、さらに、上記各他端末から自端末までのホップ数情報、上記各他端末の位置情報、上記各他端末からのパケット順序情報、上記各他端末の送信データを蓄積する
ことを特徴とする請求項2に記載の端末情報蓄積システム。
【請求項5】
無線通信システムを構成する無線端末の無線通信装置において、
近傍に存在する1又は複数の他端末から受信した全パケットについて、解析対象とする通信プロトコルの階層を特に限定することなく、上記各パケットのパケット情報の内容を解析するパケット情報解析手段と、
上記パケット情報解析手段により解析された上記全パケットのパケット情報の内容を、所定方式に従って逐次蓄積する端末情報蓄積手段と、
上記端末情報蓄積手段に蓄積されている蓄積情報を用いて、所定の無線通信処理を実行する無線通信処理手段と
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
上記無線通信処理手段が、上記蓄積情報を用いて、ルーティングテーブルを作成するものであることを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
上記無線通信処理手段が、上記他端末から送信元端末宛の再送要求を受信した際、上記再送要求に係る送信データの有無を上記端末情報蓄積手段から検索し、上記送信データを検索できた場合に、上記送信元端末に代わって、上記送信データを上記他端末に送信することを特徴とする請求項5又は6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
上記端末情報蓄積手段に蓄積されている上記蓄積情報を用いて、1又は複数のアプリケーション処理を実行するアプリケーション実行手段を備えることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項9】
複数の無線端末を有して構成される無線通信システムで、1又は複数の他端末から受信した受信信号に基づいて上記各他端末に関する端末情報を蓄積する端末情報蓄積方法において、
パケット情報解析手段が、近傍に存在する1又は複数の他端末から受信した全パケットについて、解析対象とする通信プロトコルの階層を特に限定することなく、上記各パケットのパケット情報の内容を解析するパケット情報解析工程と、
端末情報蓄積手段が、上記パケット情報解析手段により解析された上記全パケットのパケット情報の内容を、所定方式に従って逐次蓄積する端末情報蓄積工程と
を有することを特徴とする端末情報蓄積方法。
【請求項10】
無線通信システムを構成する無線端末の無線通信方法において、
パケット情報解析手段が、近傍に存在する1又は複数の他端末から受信した全パケットについて、解析対象とする通信プロトコルの階層を特に限定することなく、上記各パケットのパケット情報の内容を解析するパケット情報解析工程と、
端末情報蓄積手段が、上記パケット情報解析手段により解析された上記全パケットのパケット情報の内容を、所定方式に従って逐次蓄積する端末情報蓄積工程と、
無線通信処理手段が、上記端末情報蓄積手段に蓄積されている蓄積情報を用いて、所定の無線通信処理を実行する無線通信処理工程と
を有することを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−311739(P2008−311739A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155313(P2007−155313)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】