説明

第1のパートナートランシーバから第2のパートナートランシーバへと送信されるデータパケットを中継する中継装置

【課題】 空間ダイバーシチ利得と前方誤り訂正の利点を活用することを可能にする、無線ネットワークにおける協調的な通信のためのより効率のよい概念を提供する。
【解決手段】 第1のパートナートランシーバから第2のパートナートランシーバへと送信されるデータパケットを中継する中継装置(100)であって、データパケットを受信して、受信確認パケットを受信する受信ユニット(110)を備える中継装置(100)である。中継装置(100)は、ヘルプインジケータを提供するヘルプ検出部(120)と、ヘルプインジケータに応じてデータパケットを送信する送信ユニット(130)とをさらに備える。ヘルプが必要とされる状況は、中継装置(100)と第2のパートナートランシーバとの間の第1の通信リンクが、第1と第2のパートナートランシーバとの間の第2の通信リンクより良好であるかどうかに基づいて検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ネットワークの分野に関する。ここで、ネットワークは、固定インフラストラクチャネットワーク、アドホックネットワークまたはマルチホップネットワーク、及びこれらの組み合わせと考えられ、無線ローカルエリアネットワーク、無線メッシュネットワークまたは無線マルチホップネットワークとしても知られている。
【背景技術】
【0002】
端末と該端末に関連付けられたアクセスポイント(AP)との間の確実で高速な通信は、あらゆる無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)内において再送信の際の電力の浪費を回避し、共用の無線チャネルにおけるトラフィック量を最小限まで減らすための重要な問題の1つである。事実、何回も再送信を行うことは、通常、端末のバッテリーにより提供される貴重なエネルギーリソースの浪費である。また、再送信は、無線リソースを非効率的に利用し、ネットワーク内のトラフィック量が比較的多い場合には、トラフィック輻輳を引き起こす可能性もある。IEEE802.11規格に基づくWLANにおける送信機は、自己の変調スキームと符号化速度を現在のチャネル状態に合わせて、スループットを最大にする。変調スキームとコードレートの組み合わせはそれぞれ、信号対雑音比(SNR)に対するデータスループットの曲線を有し、この曲線がさらに、受信機における所与のビット誤り率(BER)要件に最も適した変調スキームとコードレートの組み合わせを定める。
【0003】
データレートの自動選択を実施する手法は、ベンダーによる設計の問題であるが、基本的には、統計ベースの手法とSNRベースの手法との2つに分けることができる。一般的には、データレート選択のメカニズムに関わらず、APの近くに位置する端末が、より高次の変調とコードレートを利用することができる。したがって、APから離れたところに位置する端末よりも高いデータレートでデータの送受信を行うことができる。
【0004】
WLANシステムにおいて低いデータレートで送受信を行う端末は、ネットワーク全体のスループットを低減する傾向にあり、高いデータレートで送信する端末の通信に悪影響を与えることは周知である(非特許文献1参照)。これは、データフレームが正常に送信されるまでに要する時間が、スループット、遅延、ジッタなどのサービス品質パラメータに関して評価されるWLANシステムの性能の背後にある主な要因だからである。例えば、輻輳したIEEE802.11a/g(WLAN)ネットワークにおける6Mbpsのデータレートでの大きなデータフレームの再送信は、54Mbpsのデータレートでの同じデータフレームの再送信よりもネットワークの全般的な性能にはるかに大きな影響を及ぼす。
【0005】
無線ネットワークにおける協調的な(cooperative)通信は、近年、学会でも業界でも大いに注目を引いている新しい研究分野である(非特許文献2参照)。協調的なネットワークでは、2つ以上のノードがそれらのデータを共用し、仮想アンテナアレイとして共同で送信を行う。図14aから14cに、従来技術のいくつかの概念を示している。図14aには、単純で一般的な送信概念である、受信機1410へ直接送信を行う送信機1400が示されている。図14bには、中継局1420を介して受信機1410と通信する送信機1400が示されている。この例では、送信機1400が中継局1420へデータパケットを送信し、中継局1420が、このデータパケットを受信機1410へさらに転送する。
【0006】
図14cには、中継局1420と送信機1400と受信機1410とが関与する別の通信の概念が示されている。図14bと図14cに示す概念の違いは、図14cの受信機1410が、送信機1400から直接送信されたものと、送信信号の中継局1420から中継されたバージョンとを受信することである。図14cでは受信機1410が、同じ送信の2つのバージョン、すなわち、送信機1400から送信されたバージョンと中継局1420から送信されたバージョンとを受信するため、ダイバーシチ利得が得られる。図14cの送信機1400と中継局1420とは、仮想アンテナアレイとして働く。これは、送信機1400と中継局1420とが、個々に得られるはずのものより高いデータレートとダイバーシチを得ることを可能にする。類似の概念が、非特許文献3〜5にも記載されている。
【0007】
例えば、WLANシステムにおける協調的ネットワークの概念の実用化は、単一のアンテナを備えた端末が、他のピア端末と協働して多入力多出力(MIMO)システムと同様の時空間ダイバーシチを提供することができるため、ネットワーク全体の性能を向上させる大きな可能性を有する。従来技術から分かる伝送の概念には、モバイル環境では適切な中継局を効率よく特定することができず、そのため、仮想アンテナアレイまたはMIMO伝送の利益を活用することができないという問題がある。
【0008】
例えば、IEEE802.11ベースの機構から、従来技術の一部として、二方向と四方向のフレーム交換が知られている。二方向フレーム交換では、任意の単一データフレームの正常な復号化および受信が、受信機から送信機へ返信される受信確認(ACK:acknowledgement)制御により確認できる。送信機は、ACKフレームを受信しない場合に、分散制御用フレーム間隔(DIFS: Distributed-coordination-function inter-frame space)と、しばしばTime_Slot×[0,CW]と表される、別の時間間隔の範囲内のランダムバックオフ期間との和により定まる期間の後にそのデータフレームを再送信する。この場合、IEEE802.11プロトコルで規定されているように、Time_Slotは、物理層におけるタイムスロットの期間を表し、CWは、[CWmin,CWmax]の範囲内のコンテンションウィンドウであり、CWminは最小のコンテンションウィンドウであり、CWmaxは最大のコンテンションウィンドウである。パラメータCWは、値CWminから開始し、パケットが再送信されるたびに2倍にされ、特に複数回の再送信が必要なときには高い遅延を生じさせる。
【0009】
第2の伝送のメカニズムは、前述のものと同じデータ及び受信確認フレームの交換を使用し、さらにそれに先行して送信要求(RTS: request to send)フレームとそれに続く受信準備完了(CTS: clear to send)フレームを含む二方向フレーム交換が行われる、四方向フレーム交換である。RTSフレーム及びCTSフレームの交換は、隠れノードの問題に対処することを目的としている。これは、送信機がそのチャネル感知範囲外にある第3のノードの送信により受信機に生じる干渉をいう。
【0010】
前述のように、データフレーム送信後のACKフレームを受信しないことは、常に送信の失敗と認識され、よって、その後に同じデータフレームの再送信が行われる。ACKフレームの不受信には、以下の2つの理由がある。
・例えば、受信機における巡回冗長検査(CRC: cyclic redundancy check)の計算により検出されるデータパケットのエラーである。このエラーは、2つの理由によって引き起こされる可能性がある。第1の理由は、送信機と受信機との間の不良なチャネル状態によって生じるビット誤りである。第2の理由は、フレームを同時に送信しようとする2つ以上の端末により生じる衝突によるものである。
・例えば、元の送信機におけるCRCの計算により検出される、受信機から送られたACKフレームのエラーである。このACKフレームの受信エラーは、通常は不良なチャネル状態によって生じるビット誤りに起因するが、パケット衝突によって生じることもある。
【0011】
ACKフレームの不受信の背景にある理由に関わらず、元のデータフレームは再送信される。一般に、APから遠くに位置する端末は、より悪いチャネル状態を有する傾向があり、よって、APのより近くに位置する端末より低いデータレートで動作する。さらに、APからより離れたところに位置する端末は、同じセル内の他の端末にとって隠れノードとなる確率がより高い。これらの理由から、一般に、低いデータレートの端末による再送信は、高いデータレートの端末による再送信よりもはるかに望ましくない。従来技術の概念には、特に、低いデータレートの端末が、これらのチャネル状態が劣るためにより多くの再送信を必要とするという欠点がある。これにより、セル容量またはシステム容量の点での全体的なシステム性能またはセル性能が劣化する。
【0012】
非特許文献6において、主要な観点から見た不良な媒体アクセス制御(MAC: medium access control)の問題を軽減する新たな手法が提案されている。著者らは、ユーザ協調によって提供される空間ダイバーシチを導入することにより、既存のIEEE802.11無線ローカルエリアネットワークMACプロトコルを機能強化する、協調的MAC(CMAC)と呼ばれる新しいMACプロトコルを提案している。このスキームでは、相手の端末が、APによる受信確認を受信していない他の端末により送られたフレームを再送信する。再送信されるフレームは、IEEE802.11e規格によって定められている機構に基づき、より高いチャネルアクセス優先順位を有する特別なキューに格納される。この方法では、相手選択の方法も前方誤り訂正も考慮されていない。さらに、このスキームでは、アップリンクチャネル、すなわち、端末からアクセスポイントまでの送信についてのみ定められている。しかしながら、ダウンリンク、すなわちアクセスポイントから端末までの伝送方向には、依然として既知の欠点がある。一般には、ダウンリンクトラフィックの方がはるかに大きいため、これは大きな欠点となり得る。
【0013】
著者らは、さらに、無線チャネルでの信頼性を向上させるための前方誤り訂正(FEC=forward error correction)スキームを有するMACの修正、いわゆるFCMAC(FCMAC: FEC CMAC)も提案している。静的で適応可能なFECアルゴリズムは、無線ネットワークの性能を改善することもあり、これらのオーバーヘッドが元となるチャネル誤りに正しくマッチしない場合、特に、経路損失が大幅に変動するときには、無線ネットワークの性能を低下させることもある。提案されたスキームは、前述のような協調的通信MACに基づくものであり、協調的な前方誤り訂正のスキームを導入している。データフレームはいくつかのリードソロモン符号化データブロックに分割され、これらの符号化データブロックは、それぞれの相手が符号化データブロックの1つだけを処理するようにいくつかの相手により独立して送信される。相手選択の機構は定義されておらず、やはり、提案されたスキームは、アップリンクチャネルだけにしか適用できない。ダウンリンクチャネル、すなわち、アクセスポイントから端末までの伝送には依然として既知の欠点がある。
【0014】
非特許文献7には、例えばIEEE802.11媒体アクセス制御プロトコルの性能を改善するための無線ネットワークにおけるユーザ協調の概念が提示されている。この新しいMACプロトコルは、IEEE802.11bのマルチレート機能を利用し、アクセスポイントから遠く離れた移動局が、中間局を中継局として使って、より高速で送信することを可能にする。この新しいMACプロトコルの2つの改良の概要が説明されており、両方とも、ネットワーク全体のスループットを増大させ、平均パケット遅延を低減することができる。
【0015】
図15aと図15bに提案された方法を示している。図15aと図15bには、受信機Sdへデータパケットを送信しようとしている送信機Ssが示されている。両者の中間には中継局Shがある。中継局Shは、提案のスキームによれば送信機Ssが受信機Sdへデータパケットを送信するのを支援することができる。図15aと図15bには、さらに、チャネル競合(チャネルコンテンション)に関与する別の2つの端末STA1とSTA2とが示されている。前述の四方向フレーム交換スキームによれば、送信機SsがRTSパケットを送信し、そのRTSパケットは、受信機Sdと中継局Shが受信することになる。次いで、中継局Shは、送信機Ssへヘルプ可能(HR: help ready)パケットを送ることにより、中継局Shを介した経路が、受信機Sdへの直接の経路よりも良好なデータレートを提供することを送信機Ssに対して示すことができる。次いで、図15bによれば、送信機Ssは、まず中継局Shへデータを送信し、その直後に中継局Shが受信機Sdへそのデータを転送する。次いで、受信機SdはACKフレームを送ることにより、送信機Ssに対してデータを正常に受信したことを受信確認する。この論文に記載されている概念には、伝送経路がただ1つしかなく、受信機にダイバーシチ利得を提供できないという欠点がある。
【0016】
このスキームは、宛先に直接フレームを送るか、それとも中継ノードを使ってフレームを送るかを選択する方法を無線ネットワーク内の各局に対して提供する。最適な経路を選択する基準は宛先までの総伝送時間であり、これは、関与するノード間の相対的なチャネル状態の測定によって提供される。この論文で定められている機構は、マルチホップネットワークにおける伝送に最適な経路を選択することに焦点を当てている。この機構には、再送信の機構も、前方誤り訂正協調の使用も考慮されていないという欠点がある。さらに、提案された方法には、HRパケットを介して、ネットワーク内での追加オーバーヘッドが導入され、そのための貴重な伝送リソースが必要となるという欠点もある。
【0017】
図16は、従来のIEEE802.11規格、すなわち、従来技術の無線LANにおいて実施される従来技術の伝送を示している。図16には、アクセスポイントAPと、3つの端末S1、S2およびS3と、時間軸とが示されている。端末S1は、時刻i=1にアクセスポイントAPへデータパケットを送信しようと試みる。これは、時間軸上の時刻i=1にも示されている。端末S1からアクセスポイントAPへの第1の送信は失敗し、よって、アクセスポイントはデータパケットを受信しない。しかしながら、このパケットは、チャネルをオーバーヒアしている他の2つの端末S2およびS3が正常に受信する。受信機において、すなわち、アクセスポイントAPにおいて、フレームチェックシーケンス(FCS: frame check sequence)が考慮され、すなわち、受信パケットのチェックサムが評価される。チェックサムが、パケットが正常に受信されなかったことを示す場合、データパケットは破棄され、または削除される。時間軸においてデータパケットの第1の送信の後に示されているように、端末S1は、分散制御用フレーム間隔(DIFS: Distributed-coordination-function inter-frame space)と呼ばれる時間にわたって待機し、その後、コンテンションウィンドウ機構に従ってバックオフ期間が発生する。次の送信時刻i=2において、端末S1は、同じデータパケットの第1の再送信を行う。最初の送信の場合と同様に、データパケットは、アクセスポイントAPが正常に受信せず、その直後に端末S1は再度1つの直接フレーム間隔にわたって待機し、新しいランダムバックオフ期間を生じさせ、その場合、第2の再送信ではコンテンションウィンドウの範囲が2倍となる。端末S1が受信確認フレームを受信しないときは常に再送信が行われる。すべての再送信は、同じパケット損失の危険を有する。
【0018】
したがって、この従来技術の概念には、通信リンクが効率よく利用できないという問題がある。考察した例では、「チャネルをオーバーヒアするプロミスキャスモード」である端末S2とS3は、最初の2つの送信を正常に受信するが、これらのパケットは破棄される。
【0019】
図16に示した例では、端末S1は、時間軸に示されている第3の試行i=3においてデータパケットを正常に送信する。よって、データパケットの第3の送信の後、アクセスポイントAPから受信確認フレームを受信する。この例は、従来技術の概念が無線リソースを効率よく利用できないことを示すものである。アクセスポイントAPにおいてフレームチェックシーケンスが正常に計算できない理由は、例えば、不良なチャネル状態、すなわち、ビット誤りが生じていたり、同時に送信を行う2つ以上の端末によりパケット衝突が生じていたりするためである。別の障害点が、端末S1における受信確認のフレームチェックシーケンスの計算であり、これもまた、不良なチャネル状態とビット誤りの発生、または送信の衝突により失敗することがある。図16の例に示されているように、送信が正常に行われないときは常にコンテンションウィンドウが2倍となり、ランダムバックオフ期間が計算される。
【0020】
非特許文献8は、集中型と分散型両方の無線ネットワークにおいてダイバーシチを得る効率のよい手法として、ユーザ協調に焦点を当てている。著者らは、準静的なレイリーフェージング条件の下で符号化協調システムを検討し、相手選択の範囲または相手選択の問題を吟味している。著者らは、協調が有利となるユーザ間およびユーザ宛先間のチャネル品質の条件を見出している。著者らは、フレーム誤り率をメトリックに用いて、個々のチャネルコードが使用されるときの、直接送信に対する協調送信の相対的な性能改善を評価するユーザ協調利得(G)を定めている。
【0021】
著者らは、ユーザ宛先間の平均受信信号対雑音比(SNR)の関数である協調決定パラメータ(CDP)を導入し、協調が有用であるか否か(G>1またはG<1)が、ユーザ間のリンク品質ではなく、CDPのみに左右されることを示している。著者らは、CDPの解析を使ってユーザ協調利得を吟味し、ユーザが、協調利得を最大にするために可能な相手の中からどのようにして選択できるかについての洞察を提供している。著者らは、まず、一方の相手または両方の相手が宛先において高い平均受信SNRを有するときの漸近的性能を考察している。次いで、著者らは、協調が任意のSNRについて有利となるべき、ユーザと宛先の位置の条件を提供する。著者らは、これらの協調領域を示し、最適な相手選択のための幾何学的な条件を研究している。また、著者らは、システム協調利得を定義し、両方のユーザにとっての協調利益を示している。理論的な結果は、数値例によって検証されている。
【0022】
非特許文献9では、送信元が中継局へデータをブロードキャストし、中継局の一部または全部が協調してビーム形成してデータを宛先へ転送する、協調的な無線ネットワークを考察している。ネットワークは、全般的な障害の制約を被る。著者らは、協調的な通信のための標準的手法を、以下の2つの点において一般化している。1つ目は、これらの手法は、チャネル状態情報(CSI)を得るコストを明示的にモデル化し、考慮に入れるということである。2つ目は、これらの手法は、中継局のためのより一般的で、かつ単純な選択の規則を考慮し、中継局間で最適なものを計算する。これらの規則は、特殊な事例として、この文献で提案されているいくつかの中継選択の基準を含む。これらは、各リンクが同一の平均チャネル利得を有する均一な事例での解析的結果を提示するものである。この事例では、最適な送信スキームが、単純であって効率よく計算できることが示されている。数値結果は、CSIの訓練とフィードバックのコストは大きいが、それでもなお中継協調が有益であることを示している。
【0023】
別の関連する従来技術の文献として非特許文献10〜13がある。
【0024】
【非特許文献1】M. Heusse, F. Rousseau, G. Berger-Sabattel and A. Duda, "Performance Anomaly of IEEE 802.11b", Proc. of INFOCOM 2003
【非特許文献2】A. Nosratinia, T. E. Hunter, and A. Hedayat, "Cooperative Communication in Wireless Networks", IEEE Communications Magazine, October 2004
【非特許文献3】A. Sendonaris, E. Erkip, and B. Aazhang, "User cooperation diversity-Part I: System Description", IEEE Trans. Commun., vol.51, no.11, pp.1927-1938, November 2003
【非特許文献4】A. Sendonaris, E. Erkip, and B. Aazhang, "User cooperation diversity- Part II: Implementation aspects and performance analysis", IEEE Transaction on Communications, vol.51, no.11, pp.1939-1948, November 2003
【非特許文献5】J. N. Laneman and G. W. Wornell, "Energy-efficient antenna sharing and relaying for wireless networks", in Proc. IEEE Wireless Communications and Networking Conference (WCNC), September 2000, pp. 7-12
【非特許文献6】S. Shankar, C. Chou and M. Ghosh, "Cooperative Communi-cation MAC (CMAC)-A New MAC Protocol for Next Generation Wireless LANs", in Proc. of the IEEE International Confer-ence on Wireless Networks, Communications and Mobile Com-puting 2005
【非特許文献7】P. Liu, Z. Tao and S. Panwar, "A Cooperative MAC Protocol for Wireless Local Area Networks", in Proc. Of IEEE In-ternational Conference on Communications 2005
【非特許文献8】“Cooperative Regions and Partner Choice in Coded Coop-erative Systems", IEEE transactions on communications, vol. 54, no. 7, July 2006, Z. Lin, E. Erkip and A. Stefanov
【非特許文献9】“Energy-Efficient Cooperative Relaying over Fading Channels with Simple Relay Selection" by R. Madan, N. B. Mehta, A. F. Molisch, and J. Zhang
【非特許文献10】"Multiuser Detection for Cooperative Networks and Performance Analysis", L. Venturino, X. Wang, and M.Lops, IEEE transactions on signal processing, vol. 54, no. 9, September 2006
【非特許文献11】"A Simple Distributed Method for Relay Selection in Cooperative Diversity Wireless Networks, based on Re-ciprocity and Channel Measurements", A. Bletsas, A. Lippman, and D. P. Reed
【非特許文献12】"Grouping and Partner Selection in Cooperative Wire-less Networks" by A. Nosratinia and T. E. Hunter
【非特許文献13】“Cooperative Source and Channel Coding for Wireless Video Transmission", Y. Wang, E. Erkip and H. Y. Mok, Polytechnic University, Brooklyn, New York, http://vision.poly.edu:8080/~hoiyin/project1.htm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、空間ダイバーシチ利得と前方誤り訂正の利点を活用することを可能にする、無線ネットワークにおける協調的な(cooperative)通信のためのより効率のよい概念を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的は、請求項1に記載の中継装置と、請求項25に記載のデータパケットを中継する方法とによって達成される。
【0027】
上記目的は、第1のパートナートランシーバから第2のパートナートランシーバへ送信されるデータパケットを中継する中継装置であって、データパケットを受信し、第2のパートナートランシーバがデータパケットを正常に受信したときに第2のパートナートランシーバから第1のパートナートランシーバへ送信される受信確認パケットを受信する受信ユニットを備えた中継装置によって達成される。この中継装置は、ヘルプが必要とされる状況が検出された場合にヘルプインジケータを提供するヘルプ検出部と、ヘルプインジケータに応じてデータパケットを送信する送信ユニットとをさらに備えている。ヘルプが必要とされる状況は、中継装置(100)と第2のパートナートランシーバとの間の第1の通信リンクが、データパケットから得られる情報によって評価される、第1のパートナートランシーバと第2のパートナートランシーバとの間の第2の通信リンクよりも良好であるかどうかに基づいて検出される。
【0028】
上記目的は、第1のパートナートランシーバから第2のトランシーバへ送信されるデータパケットを中継する方法であって、データパケットを受信するステップと、第2のパートナートランシーバがデータパケットを正常に受信したときに第2のパートナートランシーバから第1のパートナートランシーバへ送信される受信確認パケットを受信するステップとを含む方法により達成される。この方法は、中継装置(100)と第2のパートナートランシーバとの間の第1の通信リンクを評価するステップと、第1のパートナートランシーバと第2のパートナートランシーバとの間の第2の通信リンクを評価するステップとをさらに含む。この方法は、ヘルプが必要とされる状況が検出されるとヘルプインジケータを提供するステップと、ヘルプインジケータに応じて、元のデータパケットまたはデータパケットを符号化したバージョンを送信するステップとをさらに含む。ヘルプが必要とされる状況は、第1の通信リンクが、データパケットから得られる情報によって評価される第2の通信リンクよりも良好であるかどうかに基づいて検出される。
【0029】
本発明は、無線ネットワークにおいて、符号化と空間ダイバーシチを活用して低いデータレートを有する端末による再送信を回避することができ、したがって、全般的なネットワーク効率またはスループットを増大させることができるという知見に基づくものである。本発明に係る装置は、パートナートランシーバまたはアクセスポイントまでのより良好なリンクを有する端末が、低いデータレートの端末により送受信される、復号化に失敗したフレームを符号化したバージョンを再送信することを可能にする。最初に低いデータレートのチャネルを通して送信された符号化データフレームを迅速に再送信すれば、平均伝送時間を低減することができ、よって、ネットワークの全般的スループットが増大し、例えばWLANシステムなどで利用されるリアルタイムアプリケーションの重要なパラメータである伝送遅延が低減される。協調スキームは、低いデータレートと不良なチャネル状態を有する端末の代わりに、元の形、またはより短い符号化バージョンとしてパケットを再送信する、高いデータレートと良好なチャネル状態を有する端末を有する。
【0030】
本発明は、IEEE802.11に基づくWLANにおいて符号化再送信を実施する方法を含む。相手の選択は、オンザフライ、例えば、端末間の信号対雑音比(SNR)、データレート、パケット損失比などの相対的なチャネル品質関連パラメータの比較を通じて同じ端末により分散スキームで行われる。または、例えば、文献「S. Mangold et al., "IEEE 802.11e Wireless LAN for Quality of Service", Proceedings of European Wireless 2002」などに記載されているIEEE802.11eによって提供されるものなどのチャネルアクセス優先順位決定によって制御することもできる。本発明の一実施形態では、符号化再送信の相手のオンザフライの自己選択は、IEEE802.11プロトコルで定義されている物理層コンバージェンス手順(PLCP: physical layer convergence procedure)ヘッダのデータレートフィールドをオーバーヒアすることにより得られる、送信元端末または第1のパートナートランシーバのデータレートに基づくものである。
【0031】
本発明の別の実施形態では、符号化再送信の相手選択を、トラフィッククラスに基づくものとすることができる。その場合、符号化再送信の相手選択は、トラフィッククラスごとに別々に、すなわち、例えば、ボイスオーバIP(VoIP: voice over internet protocol)などの遅延に弱いサービスを実行する相手間で行うこともでき、または、以前の再送信回数に応じて動的にトラフィッククラスをアップグレードすることにより、または一般に符号化再送信データフレームのための他の何らかの種類のアクセス優先順位決定の機構を組み込むことにより実行することもできる。トラフィッククラスは、IEEE802.11のサービス品質拡張に関するIEEE802.11eの規格で定義されている。IEEE802.11eトラフィッククラスと共に、新たなトラフィッククラスを、特に、符号化再送信パケットのために生成することもでき、例えば、一実施形態では、データフレームが、再送信されるたびにより高いアクセス優先順位クラスにアップグレードされる。さらに、再送信データフレームの優先順位決定のための新しい動的自動再送信要求(ARQ: automatic repeat request)機構の生成を考慮することもできる。
【0032】
本発明の実施形態は、例えば、WLANシステムなどにおいて送信されるトラフィックの量が、再送信をより確実にすることにより低減できるという利点を提供する。さらに、本発明に係る中継装置または本発明に係る方法は、例えば、WLANなどにおける総スループットを、再送信に費やされる時間量を低減することにより増大させる。これが可能となるのは、高いデータレートの局が、低いデータレートの局に代わって符号化パケットを再送信できるからである。さらに、本発明の手法は、単一のアンテナだけを備える端末のために、MIMOのような特徴を有する協調的伝送システムを作り出し、あるいは、仮想アンテナアレイを生成できる。本発明の実施形態は、さらにIEEE802.11プロトコルへの任意選択の変更により、WLANシステムの実際的な協調的再送信スキームを定義し、規定するという利点も提供する。さらに、本発明の実施形態では、前方誤り訂正符号化が容易に実施できる。本発明の実施形態は、両方の伝送方向において、アップリンク、すなわち端末からアクセスポイントへ送信するときも、ダウンリンク、すなわちアクセスポイントから端末へ送信するときにも、大きな利益と利点を提供する。本発明の手法は、ネットワークに信号交換のオーバーヘッドを導入せずにオンザフライで相手選択を可能にする。
【0033】
本発明の実施形態をについて、添付の図面を使って詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は、本発明に係る中継装置100の一実施形態のブロック図を示している。図1には、受信ユニット110と、ヘルプ検出部120と、送信ユニット130とが示されている。第1のパートナートランシーバから第2のパートナートランシーバへと送信されるデータパケットを中継する中継装置100は、データパケットを受信して、第2のパートナートランシーバがデータパケットを正常に受信したときに第2のパートナートランシーバから第1のパートナートランシーバへ送信される受信確認パケットを受信する受信ユニット110を備えている。
【0035】
以下では、本発明のいくつかの実施形態について説明する。インフラストラクチャシナリオでは、アップリンクとダウンリンクの伝送方向が区別されている。本発明に係る中継装置100は、第1のパートナートランシーバから第2のパートナートランシーバへと送信されるデータパケットを受信する。本発明の実施形態は、例えば、アップリンクにおいて、いくつかの端末または送信機が1つのアクセスポイントまたは受信機へ信号を送信するWLANシステムなどを指す。このシナリオでは、第1のパートナートランシーバは、アクセスポイントまたは第2のパートナー受信機へデータパケットを送信しようとする端末となる。本発明に係る中継装置100は、端末内またはアクセスポイント内に統合することもでき、したがって、実施形態では、すべての端末またはアクセスポイントを本発明に係る中継装置100とすることができる。ダウンリンクでは、アクセスポイントまたは送信機が、端末または受信機へデータパケットを送信し、よって、このシナリオでは、第1のパートナートランシーバはアクセスポイントであり、第2のパートナー受信機は端末である。前述の場合と同様に、本発明に係る中継装置は、任意の端末内またはアクセスポイント内に統合することもできる。
【0036】
データパケットの正常な受信は、例えば、ビット誤り率、信号対雑音比、フレームチェックシーケンスなどを評価することにより、第2のパートナートランシーバが検出できる。第2のトランシーバがデータパケットの受信に成功したか否かを検出するための様々な機構が考えられる。本発明に係る中継装置100にとって重要なのは、第2のトランシーバがデータパケットの正常な受信を確認していないことである。
【0037】
さらに、中継装置100は、ヘルプが必要とされる状況が検出された場合にヘルプインジケータを提供するヘルプ検出部120を備えている。その場合、ヘルプが必要とされる状況は、中継装置100と第2のパートナートランシーバとの間の第1の通信リンクが、データパケットから得られる情報によって評価される、第1のパートナートランシーバと第2のパートナートランシーバとの間の第2の通信リンクより良好であるかどうかに基づいて検出される。ヘルプが必要とされる状況は、第2のトランシーバが受信確認パケットにより正常な受信を確認していないことに密接に結びついている。本発明の実施形態では、このようなヘルプが必要とされる状況は、例えば、正常な受信を確認しなかった第2のトランシーバへデータパケットを送信しようとしている第1のトランシーバにより作り出され得る。一実施形態では、ヘルプ検出部120は、さらに、受信確認パケットが、データパケットの受信後ある時間内に受信しない場合に終了するタイマーを用いたタイマー終了に基づいてヘルプが必要とされる状況を検出することもできる。
【0038】
中継装置100が、第1のパートナートランシーバと第2のパートナートランシーバとに対して、第1のパートナートランシーバと第2のパートナートランシーバとの間のチャネル状態より良好なチャネル状態または通信リンクを有する場合であって、中継装置100がデータパケットを正常に受信している場合、中継装置は、第1のトランシーバのためにそのデータパケットまたはそのデータパケットを符号化したバージョンを再送信することにより貴重な伝送リソースを節約することができる。中継装置100と第1のパートナートランシーバと第2のパートナートランシーバとの間の通信チャネルの状態は、様々な評価メトリックによって決定できる。一実施形態では、データパケットから明示的に得られる、すなわちデータパケットの制御情報部分またはヘッダ部分に含まれる情報によって通信リンクを評価することができる。WLANを示す一実施形態では、データレートをパケットのヘッダから読み取ることができる。
【0039】
本発明の一実施形態では、評価メトリックが、データパケット自体から決定でき、例えばWLANネットワークシナリオでは、評価メトリックが、使用されるデータレートに対応する物理層コンバージェンス手順ヘッダから決定できる。
【0040】
別の実施形態では、データパケットサイズ、伝送期間、変調スキーム、伝送帯域幅を求めることによる通信リンク品質の推測など、データパケットから暗黙的に得られる情報によって通信リンクを評価することを利用することもできる。
【0041】
ヘルプインジケータに応じたデータパケットの転送または送信は、本発明に係る中継装置100に備えられている送信ユニット130によって実行できる。
【0042】
前述のように、中継装置100、あるいはヘルプ検出部120は、中継装置100と第1及び第2のパートナートランシーバとの間の通信リンク、または、第1のパートナートランシーバと第2のパートナートランシーバとの間の通信リンクを、データレート、信号対雑音比、信号対雑音干渉比、パケット損失比、ビット誤り率、平均再送信回数またはトラフィッククラスのうちの1つまたはこれらの組み合わせに基づいて評価することができる。この評価に基づき、本発明の別の実施形態では、パートナートランシーバが決定される。すなわち、すべての潜在的なトランシーバがパートナートランシーバであるとは限らない。潜在的なパートナートランシーバの選択は、本発明の一実施形態では、通信リンクの評価メトリックに基づくものとすることもできる。本発明の一実施形態では、ヘルプインジケータが、パートナートランシーバから受信したデータパケットについてのみ提供され、この場合、パートナートランシーバは、中継装置100と第2のパートナートランシーバとの間の第1の通信リンクが、第1のパートナートランシーバと第2のパートナートランシーバとの間の第2の通信リンクより良好であるという基準を満たす。一実施形態では、第1の通信リンクは、受信データパケットから読み取られたデータレートによって評価できる。第2の通信リンクは、中継装置100においてローカルに作成されたデータパケットの以前の送信に使用された自己のデータレートまたは自己の平均データレートによって評価することもできる。一実施形態では、ヘルプが必要とされる状況が、自己のデータレートまたは自己の平均データレートが、受信データパケットから読み取られたデータレートより高い場合にのみ検出される。別の実施形態では、ヘルプが必要とされる状況を決定するときに、第1のパートナートランシーバと中継装置との間の第3の通信リンクの評価も考慮できる。第3の通信リンクは特に、例えば、ヘルプが必要とされる状況が、ダウンリンク送信にも有効であるアップリンク送信から決定される場合に評価することができる。すなわち、一実施形態では、2つのパートナートランシーバの間で相互にヘルプが必要とされる状況を確立できる。
【0043】
本発明の別の実施形態では、本発明に係る中継装置100は、別のトランシーバから受信したものでなく、ローカルに作成されて送信が予定されている、送信できる別のデータパケットを有する場合にのみ、ヘルプインジケータを作成し、あるいは受信したデータパケットを転送する。送信ユニット130は、この実施形態では、データパケットと別のデータパケットを一緒に、例えばピギーバックスキームで送信することができる。さらに、本発明に係る中継装置100は、本発明の実施形態では、受信確認パケットを第2のパートナートランシーバから受信した場合、または第1のパートナートランシーバからデータパケットを受信した後、一定の破棄時間が経過した場合に受信データパケットを破棄することができる。別の実施形態では、本発明に係る中継装置100は、一定の再送信時間が経過した後に送信を繰り返すことができ、あるいは、送信ユニット130が、しかるべく再送信を実行することもできる。
【0044】
本発明の別の実施形態では、再送信インジケータを、例えばビットまたはフラグとして含めることができる。これらの実施形態では、転送されたデータパケットは、送信がすでに協調的な再送信であることを他のトランシーバへ指示するために、本発明に係る中継装置100によりフラグが立てられる。本発明の別の実施形態では、フラグは、おそらく本発明に係るいくつかの中継装置からなる、ある中継経路を使用可能とするためのカウンタまたは識別番号で置き換えられている。中継経路またはマルチホップ経路の長さを制限するようにカウンタを制限することもできる。さらに、本発明の別の実施形態では、本発明に係る中継装置100は、マルチ受信確認パケット(multi-acknowledgement packet)または合成受信確認パケット(combined-acknowledgement packet)を受信することができる。このとき、複数のデータパケットまたはあるデータパケットと別のデータパケットとが同時に確認され、その場合、一方のデータパケットを中継されたパケットとし、他方をローカルで作成されたパケットとすることもできる。
【0045】
本発明の別の実施形態では、本発明に係る中継装置100は、受信データパケットをトランスコードすることができる。この実施形態は、前方誤り訂正符号化を行い、ここで中継装置100は例えば、パリティビット、またはデータパケットをトランスコードしたバージョンだけを転送することもできる。一実施形態では、元のデータパケットを再送信するときにはチェイス合成法(chase combining)、または、元のデータパケットをトランスコードしたバージョンが提供されるときには増分的冗長性合成法(incremental redundancy combining)が、第2のパートナートランシーバにおいて使用可能となる。別の実施形態では、トランスコードが、中継装置100と第2のパートナートランシーバとの間のチャネル品質または通信リンクの品質に適合している。
【0046】
一実施形態は、アクセスポイントまでの良好な通信リンクを有する第1の端末が音声セッションを実行し、したがって、短い高速伝送のみを行うWLANシナリオにおけるものとすることができる。より悪い通信リンクを有する第2の端末は、ビデオコールからアクセスポイントに向けて、より長い伝送を利用してより低速でビデオパケットを送信しようと試みる。第1の端末が第2の端末からビデオパケットを正しく受信したが、アクセスポイントは失敗した場合、第1の端末は、第2の端末から受信したパケットを転送することができる。ヘルプが必要とされる状況を検出するためのリンクの条件は満たされている。その理由は、第1の端末が第2の端末より高いデータレートをサポートし、それを、第1の端末によるビデオデータパケットのパケットヘッダなどから読み取ることができるからである。実施形態は、より高いシステム容量といくつかのサービスでの適用範囲の拡張という利点を提供することが上記の例から分かり、この場合、第1の端末が本発明に係る中継装置100として機能しなければ、第2の端末はビデオコールを確立することができない。
【0047】
図2は、本発明に係る中継装置と本発明に係る方法とを詳述するシナリオ例を示している。図2には、8つの各データレート区域が、6Mbpsから54Mbpsまでに及ぶ異なるデータレートの表示を有する同心円で表された、一般的なIEEE802.11a/g WLANの一例が示されている。いくつかの端末がカバー領域全体に分散しており、以下の例では、そのうちのノード1と表されている端末とノード2と表されている端末と、中心にあるアクセスポイントAPだけを説明する。端末のデータレートは、それぞれのチャネル状態に適合するように調整されたデータレートが生じた後は、比較的安定しているものと仮定する。端末は、例えば、最後のN個の送信データフレームの所与のデータレートDにおける正常送信の割合がK%を上回る場合には、安定したデータレートDを有するものとみなされる。本発明の以下の説明では、「安定したデータレート」という用語は、任意の関与する端末における前述の要件を満たすデータレートを指すものとする。よって、この例では、アクセスポイントは第2のパートナートランシーバとして機能し、ノード1は第1のパートナートランシーバであり、ノード2は中継装置である。
【0048】
本発明に係る方法と本発明に係る中継装置とによれば、DR_thr_up以上の安定したデータレートを有するあらゆる端末は、以下の式を満たすようにより低いデータレートを有する端末の代わりにデータフレームを再送信することができる。
DR_thr_up=α・DR_tx
ここで、α>1であり、DR_txはより低いデータレートを有する端末のデータレートであり、DR_thr_up≦Max_Data_Rateである。よって、[DR_thr_up, Max_Data_Rate]の範囲内のデータレートを有するあらゆる端末は、送信に失敗した端末の潜在的な再送信機または中継装置となり得る。本発明の一実施形態では、通信リンク間の関連がデータレートのメトリックによって評価できる。例えば、IEEE802.11aまたはgの場合、パラメータMax_Data_Rateは54Mbpsに設定される。
【0049】
DR_txは、例えば、他の端末がアクセスポイントAPへ送信したデータフレームの物理層コンバージェンス手順(PLCP)ヘッダをオーバーヒアすることによって得られる。すなわち、本発明のこの実施形態では、通信リンクのメトリックに関する情報は、データパケット自体に含まれている。PLCPは常に、物理層によってサポートされる最低データレート、例えば、IEEE802.11aまたはgの場合には6Mbpsで送信される。
【0050】
わかりやすくするために、図2に示した例ではα=2が選択されており、ノード1からAPへ6Mbpsで送信されたデータフレームは、アクセスポイントAPにより正常に復号化できないものと仮定する。しかしながら、別の実施形態では、αを動的に調整することもできることに留意すべきである。αは、例えばネットワークまたはトラフィック条件に応じて動的に調整することもできる。例えば、アクセスポイントAPの巡回冗長検査(CRC)の計算が成功しない場合、アクセスポイントAPは受信確認フレームを送らず、例えばT_apと呼ばれる一定の期間(この期間は、実施上の問題であるが、基本的にはこの説明の後段で扱う許容される符号化再送信の回数Mにより定めるべきである)にわたって特別なバッファ内に復号化に失敗したデータフレームを保持し、データフレームを正常に復号化するために、ノード1からの通常の再送信、または中継ノードまたは中継装置からのフレームのFEC符号化(FEC: forward error correction)再送信を待つ。これが、正常に復号化できないパケットが受信機において直ちに削除される802.11のような従来のシステムとの大きな違いである。ノード1が送信したデータフレームをオーバーヒアした、以下の3つの条件を満たすすべての端末は、ノード1が送信したデータフレームを符号化したバージョンを作成し、中継装置として機能することができる。
・α=2とした場合、DR_thr_upが12Mbps以上の安定したデータレートを有すること。
・任意の条件として、送信されるのを待つ少なくとも1つのパケットをバッファ内に有すること。この条件は、絶対的に必要なものではない。その理由は、送信すべきパケットを有さない端末は、他の端末によって送信され正常に復号化されたパケットを自己の送信バッファに追加し、よって、802.11で定義されるチャネルコンテンションに関与することができるからである。どちらを選択するかは実施上の問題であるが、ピギーバックスキームの方が、帯域幅利用の点からみればより効率的である。
・ノード1が送信したパケットのCRCをオーバーヒアし、正常に計算していること。
【0051】
前述の条件を満たした端末の1つが、アクセスポイントAPによってノード1に送られた受信確認フレームをオーバーヒアせず、ノード1の前に、共通のCSMA/CA(CSMA/CA: Channel Sensing Multiple Access / Collision Avoidance)によってそのチャネルに偶然アクセスした場合、その端末は、ノード1によって送られたFEC符号化データフレームをアクセスポイントAPへ送信する前に自己のデータフレームにピギーバックする。上記の3つの条件は、この実施形態では、ヘルプの指示を作成する本発明に係る中継装置に備えられているヘルプ検出部の要件を定義するものであることに留意されたい。図2のノード2は、前述の3つの要件を満たし、ノード1の送信失敗後にチャネルを取得する。すなわち、アクセスポイントAPがノード1へ受信確認フレームを送らなかったものと仮定する。ノード2は、自己のデータフレームに対して、ノード1が以前に送信したFEC符号化フレームをピギーバックし、次いで、この1つで2つのデータフレームをアクセスポイントAPへ送信する。アクセスポイントAPは、このパケットを正常に復号化できた場合、2つの一連の受信確認フレーム、すなわちノード1に対するものとノード2に対するものとを送る。
【0052】
代替的に、ノード2のデータフレームとノード1のデータフレームとの両方の正常なCRC計算を確認するマルチ受信確認フレームを送ることもできる。両方、すなわちノード1とノード2の確認済みデータフレームのMACヘッダが含まれている、この新しい種類のマルチ受信確認フレームでは、IEEE802.11受信の動作の変更が必要とされるはずである。その理由は、802.11では単一のMAC宛先アドレスフィールドしか存在せず、ノードがそれ自体にアドレス指定されていないすべてのフレームを破棄するからである。ノード1とノード2とが送信したデータフレームを符号化したバージョンを以前に格納したすべての相手ノードまたはパートナートランシーバは、受信確認フレームをオーバーヒアし次第、または、例えばT_bufferなどのバッファリング時間が経過した場合、これらのデータフレームを特別なバッファから削除しなければならない。ノード1はアクセスポイントAPから受信確認フレームを受信したが、以前にノード1のデータフレームを格納したノード1の中継ノードのいくつかが受信していない場合、これらの中継ノードは、ノード1のデータフレームを符号化したバージョンを再送信しようとする。アクセスポイントAPは、ノード1への受信確認フレームを送ることにより、これらの中継ノードのそれぞれに対してノード1のデータフレームの再送信が不要であると応答する必要がある。任意の最適化として、すでに正常に送信されたノード1への受信確認フレームをオーバーヒアしていない可能性のある他の再送信の相手によって生じる受信確認フレームの重複を回避するために、対応するノード1のデータフレームのシーケンス制御フィールドを受信確認フレームが含むことができる。これら既存のIEEE802.11プロトコルへの任意の拡張を以下にまとめる。
【0053】
一般には、提案するスキームでは、パリティビットだけの送信を許容する任意の系統的な符号化を使用できる。すなわち、リードソロモン符号(例えば、文献「Bernard Sklar, "Digital Communications", Prentice Hall International, 2001」参照)、または系統的なレート可変パンクチャターボ符号(RCPT: Rate Compatible Punctured Turbo Codes)(文献「D. N. Rowitch and L. B. Milstein, "On the performance of hybrid FEC/ARQ systems using rate compatible punctured turbo (RCPT) codes", IEEE Trans. On Comm., vol. 48, pages 948-959, June 2000」参照)を使用できる。1つの可能な方法は、中継端末に対して、例えば最近のT_past_up秒間の現在の送信機に関連する総送信回数に対する正常な送信回数の比率に基づいて、特定のモードの誤り訂正機能、すなわちコードレートを選択させることである。正常な送信回数の比率は、データフレームヘッダに定義された特別なフィールドを介して送信機ノードから直接得ることもでき、送信機によって送られたデータフレームとそれらの受信確認フレームとをオーバーヒアすることができるような、送信側ノードの送信範囲内に位置する任意の端末においてローカルで計算することもできる。よって、あらゆる中継端末は、最近のT_past_up秒間にオーバーヒアしている任意の所与の送信側端末の正常な送信回数の比率に対する誤り訂正機能の表を有している。
【0054】
このような表は、事前に構成された、すなわち固定的のものでもよいし、動的なものでもよい。以下の表は、リードソロモン符号を使ってパリティビットが送信される場合の固定的で事前に構成された表の一例である。最近のT0秒間(T0≧T_past_up)に送信が検出されなかったとき、表には隣接端末からの送信が全く格納されず、あるいは、これに関連付けられたエントリが表から削除される。
【表1】

【0055】
図3、図4及び図5は、それぞれアップリンク伝送を考察する、本発明の一実施形態としての中継端末と、対応する関連のアクセスポイント(第2のパートナートランシーバ)と、送信側の第1のパートナートランシーバとに対応するフローチャートの例である。
【0056】
図3は、本発明に係る中継装置の一実施形態のフローチャートである。このフローチャートは、ステップ310から開始し、続いてステップ312で中継装置が他の端末からのアップリンクフレームをオーバーヒアする。他の端末からのアップリンクフレームをオーバーヒアするステップの後、中継装置は、例えばステップ314でCRCを評価することにより、別の端末からのアップリンクフレームが正しくオーバーヒアされたかどうかを検出する。CRCが正しくなかった場合、ステップ316でバックオフ状態の残りのタイムスロットの数を表すカウンタNが減分され、その直後にステップ318でバックオフ状態がチェックされる。バックオフ状態Nがまだ、ステップ318でN=0として示されているトリガに到達していない場合、中継装置はステップ320でチャネルがビジーであるか否かをチェックする。チャネルがビジーである場合、中継装置はステップ312でそのチャネルを使用する別の端末からのアップリンクフレームをオーバーヒアしようと試みる。チャネルがビジーでない場合、中継装置は、ステップ316にループしてカウンタを減分し、最終的にはバックオフ状態の終了に到達する。
【0057】
中継装置が首尾よく正しいCRCを有する別の端末からのアップリンクフレームをオーバーヒアした場合、ステップ322でその送信機のMACアドレスを記憶する。次いで、本発明に係る方法によれば、中継装置は、ステップ324でアクセスポイントからその特定の送信機への受信確認をオーバーヒアしようと試みる。受信確認フレームがアクセスポイントからオーバーヒアされた場合、中継装置はステップ326で送信バッファが空であるか否かをチェックする。アクセスポイントから受信確認フレームを受信しない場合、ステップ328で中継装置は対応する送信機がパートナートランシーバであるか否かを検証する。これは、中継装置のアクセスポイント方向のデータレートが、各送信機のアクセスポイントへのデータレートより高いかどうかをチェックすることによりステップ328に示されている。この要件が満たされない場合、中継装置はステップ326で送信バッファの状況を監視する。要件が満たされた場合、ステップ330で各送信機が正常な送信回数の比率に従って誤り訂正機能を設定し、その後ステップ332でのFEC符号化フレームを作成するステップと、ステップ334でのTime_to_bufferと呼ばれる一定の時間にわたって符号化フレームを記憶するステップが続く。ステップ334に続いてステップ326で送信バッファが監視される。
【0058】
ステップ326では送信バッファが監視され、中継装置は送信バッファが空である限りこの状態に留まる。送信バッファ内に利用可能なデータがある場合、ステップ326に続いてステップ318でバックオフタイマーまたはバックオフ状態Nが検証される。ステップ318でバックオフ状態の終わりに到達した後、すなわち変数Nが値0に到達した後、中継装置はステップ336で各送信機からアクセスポイントに向けて以前に再送信が実行されているかどうかをチェックする。各送信機により再送信が行われている場合、中継装置はステップ338でFEC符号化フレームが削除される。各送信機からアクセスポイントへの再送信が行われていない場合、中継装置はステップ340で他の任意のノードまたは中継装置が各送信機の代わりに以前に符号化送信をしたかどうかをチェックする。別のノードが、すでに各送信機の代わりに符号化したバージョンを送信している場合、中継装置はステップ338で各送信機のFEC符号化フレームを削除する。以前に符号化送信が行われていない場合、中継装置はステップ342で制限時間T_bufferを超過しているか否かをチェックする。すでに時間T_bufferが経過している場合、中継装置はステップ338でFEC符号化フレームを削除する。まだT_bufferが経過していない場合、中継装置はステップ344で自己のデータフレームに対して、各送信機のピギーバック符号化フレームを加えたものを送信する。中継装置は、ステップ338で偶然にFEC符号化フレームを削除している場合には、ステップ346で自己のデータフレームだけを送信し、ステップ346での送信またはステップ344での送信の後、送信バッファを監視するステップ326の状態に戻ることになる。
【0059】
図4は、アップリンク伝送時の例示的なアクセスポイント(第2のパートナートランシーバ)の動作に関連するフローチャートである。アクセスポイントは、ステップ410のデータフレーム受信から開始し、その直後にステップ412で正しいCRCを計算しようと試みることになる。アクセスポイントは、ステップ412で首尾よく正しいCRCを算出した場合、データフレームの送信機への通常の受信確認フレームの送信を含む通常の動作であるステップ414に進む。ステップ414からアクセスポイントはステップ410に戻り、次のデータフレームの受信を開始する。ステップ412でアクセスポイントが正しいCRCを計算できなかった場合、アクセスポイントはステップ416で破損したフレームを特別なバッファに格納し、その直後に状態をステップ418に変更して再送信またはピギーバック符号化再送信を待つ。再送信もピギーバック符号化再送信も検出されない間は、アクセスポイントはステップ418に留まる。再送信またはピギーバック符号化再送信が検出された場合、アクセスポイントはステップ420で破損したフレームを修復しようと試み、これに成功した場合にはステップ422に進み、そこで送信元ノードへ受信確認フレームを送り、あるいは、送信元ノードへ複数のACKフレームを送ることもできる。ステップ422から、アクセスポイントAPはステップ414に進んで通常の動作を継続する。ステップ420でアクセスポイントが首尾よく破損したフレームを修復できなかった場合、アクセスポイントはステップ418に戻り、そこで次の再送信、あるいは次のピギーバック符号化再送信を待つ。
【0060】
図5は、対応する送信機、すなわち、アップリンク伝送時の第1のパートナートランシーバのフローチャートである。送信機は、ステップ510から開始してデータフレームを送信する。ステップ510に続き、送信機はステップ512でTime_Outと呼ばれる一定の時間にわたってアクセスポイントからの受信確認フレームを待つ。対応する受信確認フレームを受信した場合、送信機はステップ514に進み、すなわち、通常の動作を続行し、ステップ514からステップ510に戻り、そこで次のデータフレームが送信される。
【0061】
受信確認フレームを受信せずにTime_Outが経過した場合、送信機はステップ516でランダムバックオフ時間が計算され、再送信が開始される。ステップ516のランダムバックオフ時間の計算後、送信機はステップ518に進み、そこでバックオフ期間の間待機し、アクセスポイントによって送られたすべての受信確認フレームをチェックして、失敗したデータフレームについての起こり得る協調的な受信確認を検出する。その理由は、潜在的に中継ノードまたは装置が失われたデータフレームを転送できるからである。協調的な受信確認フレームを受信せずにバックオフ期間が経過した場合、ステップ520で再送信が開始され、送信機はステップ514の通常の動作に進む。ステップ518でバックオフ期間の間に協調的な受信確認フレームを受信した場合、ステップ522で各フレームが送信バッファから削除され、送信機は514の通常の動作に進む。
【0062】
アクセスポイント(第2のパートナートランシーバ)から、協調的な端末、すなわち中継装置により符号化されて再送信されたデータフレームの受信確認フレームを受信しなかった場合、送信された1つで2つのデータフレームをオーバーヒアした別の中継ノードが再送信を行い、よって、最初のデータパケットを含む完全な1つで2つのフレームの符号化データパケットを提供することができる。これが可能なのは、このようなノードがコンテンションにおいてチャネルに最初にアクセスする場合と、データフレームのいわゆる再送信フラグが1に設定されていて第2の再送信が許容されている間である。任意の再送信フラグがない場合、本発明の一実施形態では符号化再送信が単一の元のパケット送信を修復するためだけに使用される。図2で、ノード1がアクセスポイントAPへのパケット送信に成功しないものと仮定された場合、ノード2はノード1の受信確認フレームがないことを認識した後、ノード1の符号化フレームを自己のデータフレームにピギーバックし、アクセスポイントAPへ1つで2つのデータフレームを送る。この送信もまた、不良なチャネル状態またはパケット衝突により成功しないと想定される場合、少なくともノード2のデータレートと同程度のデータレートを有する第3のノードであって、その送信バッファにパケットを有し、ノード2が送信した1つで2つのパケットを正常にオーバーヒアしているノードが、1つで2つのフレームの符号化データをピギーバックし、1つで3つのフレームを送信し、すでに中継されたデータパケットを中継する中継装置として動作することができる。
【0063】
このため、第3のノードは、パケットの符号化されていない部分、すなわちノード2のデータを符号化し、パケットの符号化されている部分、すなわちノード1の符号化データをそのまま保持する。第3のノードがノード1により送られた符号化パケットを再度符号化しない理由は、同じ符号化パケットの再符号化により生じる符号化の弱点によるものである。次いで、第3のノードは2つの符号化データフレームをその送信バッファ内の第1のデータフレームにピギーバックし、自己のデータと、ノード1により送られたパケットの符号化バージョンと、ノード2により送られたパケットの符号化バージョンとを含む1つで3つのデータフレームを作成する。最大M個までの確認できなかった符号化パケットを合成し、ピギーバックさせることができる。パラメータMは、最大パケットサイズの制約条件を超えないように選択する必要があり、ネットワーク管理者または製造者、あるいは動的なメカニズムでも設定できる。複数の符号化データフレームを有するパケットを他の端末から正常に受信すると、アクセスポイントAPは複数の受信確認フレーム、すなわち送信機ごとに1つずつ受信確認フレームを送らなければならず、あるいは、アクセスポイントAPは、マルチ受信確認フレームを送って、すべてのデータフレームの正常受信を確認することもできる。
【0064】
この場合もやはり、送信バッファ内にデータフレームを有するという要件は、絶対的に必要なものではない。それゆえ、失敗したFECピギーバックデータフレームを正常にオーバーヒアした、送信バッファ内にデータフレームのないノードは、その送信バッファに1つで2つのフレームを記憶し、チャネルコンテンションに関与することができる。どちらを選択するかは実施上の問題である。
【0065】
アップリンク伝送の場合は、受信機ノードが常にアクセスポイントAPであるため、ダウンリンク伝送より容易である。しかしながら、ダウンリンクチャネルの場合、送信機は常にアクセスポイントであるが、受信側ノードはアクセスポイントと関連付けられた、アクセスポイントのカバー領域内の任意の端末とすることができる。よって、他のノードに代わって再送信するノードを編成することがより難しいタスクとなるが、これもまた本発明に係る中継装置および中継方法によって解決できる。
【0066】
ダウンリンクでは、アクセスポイントが第1のパートナートランシーバであり、第2のパートナーレシーバとして働く端末へデータパケットを送信し、中間にある任意の端末がいくつかの基準を満たす場合に中継装置として動作できる。ダウンリンクチャネルの再送信では、各端末がその隣接ノードと共に小さいデータベースを保持することができる。このデータベースは、例えば最近のT_SNR_down秒間に、他の端末とその端末自体とにより共通のアクセスポイントへ送信されたフレームの受信信号対雑音比を測定することにより作成できる。SNRを測定する手法は、無線リソース測定に関してIEEE802.11kによって定められている手法とすることができる。IEEE802.11k, "802.11k makes WLANs measure up",Network World magazine,http://www.networkworld.com/news/tech/2004/0329techupdate.htmlを参照されたい。受信SNRが一定の閾値SNR_thr以上である場合、送信側端末の識別情報とそれに関連するSNRとがデータベースに格納される。このデータベースのエントリは、時間Time_Out後にデータベースから削除される。
【0067】
アクセスポイントAPにより任意の端末へ送信されたデータパケットが失敗した場合、すなわち、その端末からアクセスポイントAPへ受信確認フレームが送られなかった場合には、アクセスポイントAPにより送られた元のパケットに関するCRCの計算に成功している、対象の受信機の近傍にある他の端末の1つが、アクセスポイントAPより高いデータレートで対象の受信機へ符号化バージョンを再送信し、中継装置として動作することもできる。前述のシナリオと同様の例示的なシナリオを図6に示している。図6には、アクセスポイント(第1のパートナートランシーバ)が中心にあり、端末ノード3(第2のパートナートランシーバ)へデータフレームを送信し、端末ノード4(中継装置)がそれらの中間にあるシナリオが示されている。図6に示した例はWLANシナリオを指すものであり、この場合もやはり、異なるデータレートの領域が、個々のデータレートを示す対応するラベルを有する同心円として示されている。図6では、アクセスポイントAPがノード3へデータフレームを送信し、ノード3が正常に復号化することができないものと想定されている。ノード3は、受信したデータフレームの破損したコピーを特別なバッファに格納する。ノード3の近傍にある他の端末は、アクセスポイントAPにより送られたデータフレームを正常に復号化しており、このデータフレームの符号化バージョンを、例えばノード4を中継ノードとしてノード3へ再送信することができる。データフレームの符号化バージョンを再送信することのできる端末は、以下の3つの要件を満たすこととなる。
・最近のTd秒間におけるノード3の過去の送信を受信した際の平均SNRが、SNR_thr以上でなければならない。
・アクセスポイントAPとの間でデータフレームを正常に送信または受信するのに使用される安定したデータレートが、DR_thr_down以上でなければならない。
・任意であるが、個々の送信バッファには1つまたは複数のパケットが格納されている。
【0068】
最後の条件は絶対的に必要というわけではない。その理由は、送信すべきパケットのない端末は、アクセスポイントAPにより送られて正常に復号化されたパケットを自己の送信バッファに追加し、よって、送信すべきパケットを有する他の任意の端末の場合と同様にチャネル競合に関与することができるからである。どちらを選択するかは実施上の問題である。第3の要件を選択しない場合、すなわち、送信バッファ内のパケットを必要としない場合には、第2の要件も必要ではない。その理由は、この相手ノードは、アクセスポイントAPへ送信すべきものを有さず、主要パラメータが再送信側相手ノードから対象の受信側ノードへの伝送データレートだけになるからである。
【0069】
図6では、ノード4が前述の3つの要件を満たすものと想定されている。ノード4が、ノード3からアクセスポイントAPへの受信確認フレームがなかったことを検出した後でこのチャネルにアクセスすることができる場合、ノード4は、アップリンク伝送において説明した前述の表と同様の表に従って、アクセスポイントAPからノード3へ送られたデータフレームの符号化バージョンを作成し、それを自己のデータフレームにピギーバックすることとなる。最後に、ノード4はその1つで2つのデータフレームをアクセスポイントAPとノード3の両方へ送信する。1つで2つのデータフレームのCRC計算に成功した場合、アクセスポイントAPは、ノード4へ受信確認フレームを送る。任意でアクセスポイントAPは送信する必要のある任意のデータフレームに受信確認フレームをピギーバックすることもでき、これにより必要な伝送回数が低減される。ノード3は、まず、アクセスポイントAPからのノード4のデータフレームへの受信確認フレームを待つ必要があり、ノード4のデータフレームを正常に受信した場合には、短いフレーム間隔(SIFS: Short Inter-frame Space)期間後に自己の受信確認フレームを任意にノード3の送信バッファ内のデータフレームにピギーバックして、アクセスポイントAPへ送信する。ノード4は、ノード3からアクセスポイントAPへの受信確認フレームをオーバーヒアし次第、または例えば、T_bufferなどで参照される一定時間の後にノード3の符号化パケットを削除することができる。アクセスポイントAPからノード4への受信確認フレームをオーバーヒアしなかった場合、ノード3は、正常な受信の際には一定時間ACK_time_outの後、アクセスポイントAPへ自己の受信確認フレームを送信する。
【0070】
図7、図8および図9は、本発明のダウンリンク伝送の実施形態を示す例示的な中継装置と、例示的なアクセスポイントと、例示的な受信機とのフローチャートである。
【0071】
図7は、本発明に係る中継装置の一実施形態のフローチャートである。中継装置は、ステップ710から開始し、続いてステップ712でダウンリンクデータフレームをオーバーヒアする。ステップ712の後、中継装置はステップ714でオーバーヒアしたダウンリンクフレームの正しいCRCを計算しようと試みる。中継装置は正しいCRCを計算できない場合、ステップ716で図7の例にカウンタNで示したバックオフ期間カウンタが減分される。ステップ716でバックオフ期間カウンタが減分された後、中継装置はステップ718で前述の場合と同様にバックオフ状態の終わりに到達しているかどうかをチェックする。まだバックオフ状態の終わりに到達していない場合、中継装置はステップ720に進み、そこでチャネルがビジーであるかどうかをチェックし、使用中である場合にはステップ712に進み、そこでダウンリンクフレームをオーバーヒアしようと試みる。
【0072】
ステップ720でチャネルがビジーでないと検出された場合、受信機装置はステップ716に進み、そこでカウンタNを減分する。中継装置はステップ714で首尾よく正しいCRCを計算した場合、ステップ722に進み、そこでデータフレームの対象の受信機のMACアドレスを格納し、ステップ724に進んで対応する受信機から受信確認フレームを受信したかどうかをチェックする。受信確認フレームがオーバーヒアされた場合、中継装置はステップ726に進み、そこで利用可能なデータフレームがないか送信バッファを監視する。
【0073】
ステップ724で受信確認フレームを受信しなかった場合、中継装置はステップ728に進み、本発明のこの実施形態では、ステップ728で対象の受信機からのSNRがSNR_thrより大きいかどうかを検証する。この要件が満たされない場合、中継装置はステップ726に進み、そこで送信バッファが監視される。ステップ728で要件が満たされる場合、中継装置はステップ730で自己のアクセスポイントAPへの送信データレートがDR_thr_downより大きいかどうかをチェックし、この要件が満たされない場合にはステップ726に戻る。ステップ730で要件が満たされた場合、中継装置はステップ732に進み、そこで各受信機の正常送信の比率を検索し、ステップ734でFEC符号化フレームを作成し、ステップ736で対応するタイマーを開始して符号化フレームを格納し、ステップ726に戻って送信バッファを監視する。
【0074】
ステップ726で送信バッファが空のままの間、中継装置はこの状態に留まる。送信用データが利用可能になると、中継装置はステップ718に進み、そこでバックオフ状態が監視される。バックオフ状態の終わり、すなわちN=0に到達すると中継装置はステップ738に進み、そこでアクセスポイントAPにより各受信機への再送信がすでに実行されているかどうか検証し、実行されている場合には中継装置はステップ740に進み、そこでFEC符号化フレームを削除する。アクセスポイントAPによりまだ再送信が実行されていない場合、中継装置はステップ742で別の中継装置が各受信機のためのピギーバックフレームを送信しているかどうかをチェックする。ステップ738の一部として再送信も実行されておらず、ステップ742によるピギーバックフレームも送られていない場合、中継装置はステップ744で制限時間T_bufferが経過しているか否かをチェックする。経過していない場合、中継装置はステップ746で自己のデータフレームに各受信機のピギーバック符号化フレームを加えたものを送信する。アクセスポイントAPにより再送信が行われており、または別の中継装置がピギーバックフレームを送信しており、または制限時間T_bufferが経過している場合には、ステップ740でFEC符号化フレームが削除され、中継装置はステップ748で自己のデータフレームだけを送信する。データフレームまたはデータフレームとピギーバックフレームの送信の後、中継装置はステップ726に戻り、そこで送信バッファが監視される。
【0075】
図8は、ダウンリンク伝送時の例示的なアクセスポイント(第1のパートナートランシーバ)のフローチャートである。アクセスポイントAPは、ステップ810でデータフレームの送信を開始する。データフレームが送信された後、アクセスポイントはステップ812に進み、そこで各受信機からの受信確認を待ち、あるいはタイマーTime_Outの終了を待つ。各受信機から受信確認を受信した場合、アクセスポイントAPはステップ814に進み、そこで通常の動作を続行し、すなわちステップ810に戻って次のデータフレームを送信する。ステップ812で各受信機から受信確認を受信する前にタイマーが終了した場合、アクセスポイントAPはステップ816に進み、そこでランダムバックオフを計算し、再送信を開始する。バックオフ期間中、アクセスポイントAPはステップ818で起こり得る受信確認を検出するために、他の送信機から受信したすべてのフレームをトラッキングする。別のタイムアウトに対応するバックオフ期間内に受信確認も協調的な受信確認も受信しなかった場合、ステップ820で再送信が開始され、その直後にアクセスポイントAPはステップ814に進んで通常の動作を続行する。ステップ818で協調的な受信確認を受信した場合、ステップ822で再送信バッファから各フレームが削除され、アクセスポイントAPはステップ814に進んで通常の動作を続行する。
【0076】
図9は、例示的な受信端末(第2のパートナートランシーバ)のフローチャートである。受信端末は、ステップ910から開始し、そこでデータフレームを受信する。ステップ910でデータフレームを受信した後、受信端末は引き続きステップ912で正しいCRCを計算しようと試みる。ステップ912で正しいCRCの計算に成功した場合、受信端末はステップ914に進んで通常の動作を続行し、その後に次のデータフレームの送信を行ってステップ910に戻る。受信端末は、ステップ912で正しいCRCの計算に成功しなかった場合、ステップ916に進んで特別なバッファに破損したフレームを格納する。ステップ916で破損したフレームがバッファに格納された後、受信端末はステップ918に進み、そこで再送信またはピギーバック符号化再送信を待つ。受信端末は、再送信またはピギーバック符号化再送信を受信すると、ステップ920で破損したフレームを修復しようと試み、正しいCRCの計算に成功しない限り、ステップ920で破損したフレームが修復されるまでステップ918に戻り、破損したフレームが修復され次第、ステップ922で関連するアクセスポイントへ受信確認フレームを送る。ステップ922で受信確認フレームを送った後、受信端末はステップ914に進んで通常の動作を続行する。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態では、符号化データフレームの再送信の連鎖反応を回避するために、あらゆるデータフレームが、フラグすなわち例えばフレームが再送信されるべきか否かを示す1ビットのインジケータなどを有する。あらゆるデータフレームは、最大M回まで、確認されなかった符号化パケットを合成してピギーバックすることができるように、継続してM回にわたって再送信フラグを「再送信可能」を意味する1に設定することができる。パラメータMは、最大パケットサイズの制約条件を超えず、システム性能を低下させないように選択する必要がある。パラメータMは、例えばネットワーク管理者、製造者によって、または動的または適応的なメカニズムにより設定できる。よって、データフレームの任意のピギーバック符号化再送信により、フラグがそのフレームが次の端末により再送信され得ないことを意味する0に設定されることもある。また、適当な期間の経過後に送信バッファを空にするために、他のノードにより送られたパケットを特別なバッファ内に保持する時間の限界、例えばT_bufferなどを指定する必要もある。T_bufferの値の適切な設定は、正常に送信された受信確認フレームがすべての潜在的な協調ノードによりオーバーヒアされないときの異なる相手ノードによる同じデータフレームの複数回の再送信を回避するのに役立つ。時間T_bufferは、アクセスポイントAPまたは端末のどちらかである対象の受信機でも、任意の協調ノードでも有効である。
【0078】
本発明の実施形態は、本発明に係る中継装置または方法を十分に利用するために、IEEE802.11プロトコルを拡張することもできる。IEEE802.11プロトコルの1つの可能な拡張が、マルチ受信確認フレームの定義である。この場合、マルチ受信確認フレームは、IEEE802.11に準拠した、複数の送信機のための複数の受信確認制御フレームを搬送する単一のフレームである。送信機ごとの別々の受信確認フレームの送信を回避するのに使用されるマルチ受信確認フレームは、その送信をより効率的にする。しかしながら、デフォルトオプションは、送信機ごとに別々の受信確認フレームを送信するものである。
【0079】
別の拡張として、調整可能な受信確認タイムアウトパラメータとすることもできる。マルチ受信確認のメカニズムの利用に関係なく、本発明の手法は、システム性能を低下させないよう最大でも所与の限界までであるが、最初の送信元からの不要な再送信を回避するために受信確認タイムアウトパラメータを増加させることを提案する。
【0080】
本発明の実施形態が実行できる別の拡張は、受信確認フレームに元のデータフレームのシーケンスIDを含めることである。マルチ受信確認の実施形態の利用とは関係なく、本発明は、送信された受信確認を正常にオーバーヒアしていない他の相手端末からの複数の送信によって生じる、送信元端末における受信確認の重複を避ける(discard)ために、確認されたデータフレームのシーケンスIDを受信確認フレームに含めることを提案する。
【0081】
本発明の実施形態により提案される別の拡張は、ピギーバック符号化再送信データフレームである。送信バッファ内にデータフレームを有する端末T1は、自己のデータフレームに対して、別の端末T2によりアクセスポイントAPへ送信された正常にオーバーヒアされたデータフレームのより短い符号化バージョンをピギーバックさせることができる。結果として生じるデータフレームは、合成された1つで2つのデータフレームであり、これは、再送信側ノードT1の独自のデータフレームと、T2により送信された失敗データフレームに関連付けられたパリティビットとを有する。パリティビットは、例えば、リードソロモンエンコーダ256、224とすることのできる、T1を使用する特定の系統的なエンコーダによる与えられる。再送信側ノードT1において使用されるエンコーダの誤り訂正機能は、T2に関連する正常送信比の関数であって、誤り訂正機能は、監視されるT2のフレーム誤り率に伴って増加する。所与の正常送信比率での再送信側のエンコーダは、必ずしもすべての端末において同じである必要はない。しかしながら、この場合、アクセスポイントAPは、どのエンコーダがそれぞれの再送信機と関連付けられているか認識している必要がある。この情報は、データフレーム内で送ることもでき、アクセスポイントAPに対して事前に知られていてもよい。異なるエンコーダを使用すれば、アクセスポイントAPへの再送信における符号ダイバーシチを提供することができ、したがって、正常に復号化される再送信データフレームの比率を向上させる。
【0082】
図10は、協調的な符号化を説明するための別の例示的なシナリオを示している。図10には、4つの端末、S1、S2、S3およびS4が示されている。第1のステップ(1)で端末S1は端末S2へデータパケットを送信しようと試みる。したがって、端末S1は第1のパートナートランシーバとして動作し、端末S2は第2のパートナートランシーバとして動作する。端末S2は、そのデータパケットの正しいCRCの計算に失敗し、そのためデータパケットを正しく受信できない。しかしながら、端末S3と端末S4は、そのパケットをオーバーヒアして首尾よく正しいCRCを計算し、したがって、潜在的な中継装置である。次に、続く第2のステップ(2)で、S4がS2へデータパケットを送信し、このデータパケットは、第1のデータパケットの符号化バージョンとすることも元のバージョンとすることもできる。
【0083】
図10に示したシナリオでは、端末S4と端末S2の間の伝送チャネルが、端末S1と端末S2との間の通信チャネルより良好な通信リンクを可能にするものと想定されている。これにより、端末S4が端末S1のために再送信を行うとき、伝送リソースが節約される。本発明に係る中継装置によれば、ヘルプが必要とされる状況が検出された場合、ヘルプインジケータが作成される。図10に示したシナリオにおいて、端末S4と端末S2との間のチャネルを介した情報交換が、端末S1と端末S2との間のチャネルを介した情報交換より良好である場合、本発明の一実施形態では端末S4によりヘルプが必要とされる状況が検出される。より良好な情報の交換とは、より良好な信号対雑音比、より低いビット誤り率、より短い遅延、より良好な最大データレートまたは平均データレートなどを意味する。
【0084】
さらに、図10の端末S4に対応する本発明に係る中継装置は、誤り訂正を実行し、例えばリードソロモン符号を利用して、端末S1から受信したパケットの符号化バージョンを送信することができる。協調的な符号化の一部として説明される方法は、例えばIEEE802.11WLANシステムを使用することもできる。相手の選択は、例えば前述のパラメータのような相対的チャネル品質に関連するパラメータの比較によりオンザフライで実行できる。アップリンクとダウンリンクにおける伝送のために、データレートと信号対雑音比に基づく選択を考慮することができる。さらにIEEE802.11eベースのネットワークを利用した実施形態の一部として、協調的な相手の選択を、例えばチャネルアクセス優先順位決定により制御することもできる。これにより、WLANシステムへの下位互換性を維持することもできる。
【0085】
アップリンクにおける協調的な符号化再送信のための別のシナリオの例を図11に示している。図11の上部には、アクセスポイントAPに加えて、3つの端末S1、S2およびS3が示されている。第1の送信ステップ(1)で、端末S1(第1のパートナートランシーバ)は、アクセスポイントAP(第2のパートナートランシーバ)へデータパケットp1を送信する。アクセスポイントAPは、正しいCRCを計算することができず、そのためデータパケットp1は正しく受信できない。端末S2も端末S3もパケットp1をオーバーヒアし、CRCを正しく計算する(中継装置)。端末S1はアクセスポイントAPに対して6Mbpsチャネルを有し、端末S2と端末S3はアクセスポイントAPに対して54Mbpsチャネルを有している。端末S2は、その送信バッファ内に送信用の別のデータパケットを有し、端末S1にとってヘルプが必要な状況を検出する。したがって、その後の第2の送信ステップ(2)で端末S2は自己のデータパケットに対して正しく受信したデータパケットp1をピギーバックし、それをアクセスポイントAPに向けて送信する。アクセスポイントAPは、破損パケット受信バッファにパケットp1の破損コピーを記憶しており、次に、端末S2からの追加の受信情報を用いてデータパケットp1を正しく復号化しようと試みる。この例では、端末S2はいずれにしても自己のデータパケットのためにこの送信チャネルにアクセスするはずである。後続の送信ステップ(2’)で表される別の例では、端末S3は送信ステップ(1)から正常にオーバーヒアしたデータパケットp1を再送信する。しかしながら、端末S3は自己の送信に利用できるデータを有しておらず、そのためもっぱらデータパケットp1だけを送信する。
【0086】
図11の下部には2つの送信事例が事例a)および事例b)と示されている時間軸と共に示されている。事例a)では、第1の送信ステップi=0において、データパケットp1がアクセスポイントAPにより正しく受信されない。次いで端末S1はバックオフ期間に入り、これは、事例aの時間軸の下に、直接フレーム間隔にコンテンションウィンドウを加えたものとして示されている。端末S1のバックオフ期間が経過する前に、端末S2はデータパケットp1の誤り訂正符号化バージョンをアクセスポイントAPへ転送する。その直後、アクセスポイントAPはデータパケットp1を正しく復号化することができ、端末S1による再送信は不要となる。事例b)は、端末S3が自己の送信に利用できるデータを有さずにデータパケットp1の誤り訂正符号化バージョンを転送することを除けば、前述のものと同様である。要約すると、アクセスポイントAPは、まず、端末S1からパケットp1の破損コピーを受信し、次いでデータパケットp1の誤り訂正符号化バージョンを受信し、データパケットp1の2つのコピーを合成して、アクセスポイントAPは例えば増分的冗長性合成(incremental redundancy combining)を使用可能とすることにより、正しく復号化されたデータパケットを得ることができる。本発明の別の実施形態では、誤り訂正符号化が実行されず、データパケットはチェイス合成を可能にするデータパケットの元の符号化された状態で転送される。この場合もやはりIEEE802.11e規格を参照して、再送信パケットまたは転送パケットにより高い優先順位を与えるより具体的なメカニズムが考えられる。
【0087】
本発明の一実施形態では、端末がヘルプを必要とする状況を検出するには、3つの条件が満たされる必要がある。第1の条件は、第1のパートナートランシーバから第2のパートナートランシーバへと送信されるデータパケットをオーバーヒアし、そのフレームチェックシーケンスを正常に計算していることである。第2の要件は、第1のパートナートランシーバが第2のパートナートランシーバに対して有するデータレート以上の安定したデータレートを有することとすることができる。他の端末のデータレートは、例えば物理層コンバージェンス手順ヘッダのデータレートフィールドをオーバーヒアすることにより得られる。第3の要件は、送信バッファ内に送信可能な少なくとも1つのパケットを有することとすることができ、この要件は任意であり、ピギーバックパケットだけを可能とし、これは、いくつかのシナリオではより効率的となり得る。したがって、ヘルプが必要とされる状況は、端末がこれらの3つの条件を満たすが、第2のパートナートランシーバから第1のパートナートランシーバへと送られたどんな受信確認もオーバーヒアせず、偶然、第1のパートナートランシーバの前にこのチャネルにアクセスした場合に検出され得る。次いで、この端末は、第2のトランシーバへパケットの符号化バージョンを送信する。第2のトランシーバ自体はパケットを正常に復号化すると、転送側トランシーバと第1のトランシーバとへそれぞれ別個の受信確認フレームを送信し、または現在のWLAN規格には準拠しないはずであるが、複数の受信確認フレーム(multiple acknowledgement frame)を利用することもできる。さらに、元のパケットの符号化バージョンを有する他のトランシーバは、元のトランシーバの受信確認または複数の受信確認をオーバーヒアした後で、または元のトランシーバ自体または他のヘルプ側トランシーバからのものであるはずのいくつかの送信の試行をオーバーヒアした後で、またはまれにしか発生しない状況である受信確認の紛失を防ぐためのオプションであるタイムアウト期間が経過した後で、他のトランシーバの送信バッファからこれらのバージョンを削除する。
【0088】
図12は、協調的な符号化ダウンリンク伝送での別の例示的なシナリオを示している。図12の上部には、アクセスポイントAPに加えて、3つの端末S1、S2およびS3が示されている。図11に示すシナリオと同様に、アクセスポイントと端末S2およびS3との間の通信チャネルは54Mbpsを許容し、アクセスポイントAPと端末S1の間のチャネルは、毎秒6Mビットしか許容しないものと想定する。加えて、本発明のこの実施形態では、端末S2と端末S3は、これらの端末S1に向かうデータレートのサポートを決定する必要がある。この場合もやはり、本発明の一実施形態では、3つの条件を考慮する必要がある。第1の条件は、ある一定の期間にわたる送信元端末からの平均信号対雑音比とすることができ、この期間は、例えば最近のTd秒間などであり、例えばSNR_thrなどの閾値以上としなければならない。第2の条件は、検討するトランシーバの送信バッファ内で待機している少なくとも1つのパケットがあることとすることができ、この場合もやはりこの要件は任意である。第3の要件は、アクセスポイントAPとの間でデータフレームを正常に送信し、または受信するのに使用される安定したデータレートが、例えばT_Rate_Downlink_Thresholdなどの別の閾値以上でなければならないこととすることができる。この場合、第3の要件は第2の要件に依存する。
【0089】
これらの要件または条件を満たす端末が、該当する第2のパートナートランシーバからアクセスポイントAP(第1のパートナートランシーバ)へと送られたどんな受信確認フレームもオーバーヒアせず、偶然にアクセスポイントAPの再送信の前にこのチャネルにアクセスした場合、この端末は例えば符号化バージョンや元のパケットを宛先端末へ送信し、中継装置として動作することになる。図12を参照すると、これは、第1の送信ステップ(1)で、アクセスポイントAP(第1のパートナートランシーバ)が、端末S1(第2のパートナートランシーバ)へデータパケットp1を送信しようと試みることを意味する。端末S1は、データパケットp1のCRCを正しく計算することができず、破損受信バッファに破損パケットを格納し、受信確認フレームを送信しない。その後の第2の送信ステップ(2)で、データパケットp1を正常に受信した端末S3(中継装置)は、アクセスポイントAPが再送信を実行する前に、端末S1へデータパケットp1の誤り訂正符号化バージョンを転送する。代替的な実施形態において端末S2(中継装置)は送信ステップ(2’)で端末S1へパケットp1の誤り訂正符号化バージョンをピギーバックスキームで転送する。この例では、端末S2は送信に利用可能な自己のデータを有していたため、いずれにしてもこのチャネルにアクセスしている。
【0090】
図12の下部には、やはり2つの事例が事例a)と事例b)とを区別して時間軸に沿って示されている。第1の送信ステップ、すなわちi=0でアクセスポイントAPが端末S1へデータパケットp1を送信し、端末S1はデータパケットp1を正しく受信することができない。図11の例に示したのと同様にバックオフ期間が満了する前に事例a)では端末S2からパケットp1の誤り訂正符号化バージョンが受信され、事例b)では端末S3からパケットのピギーバック誤り訂正符号化バージョンが受信される。次いで、端末S1は、まず第1の送信ステップ(i=0)でパケットp1の破損コピーを受信し、第2の送信ステップ(i=1)でパケットp1の誤り訂正符号化バージョンを受信し、これらを合成して正しく復号化されたデータパケットp1を得ることができる。
【0091】
一実施形態では、端末S1が受信したパケットのバージョンが、両方、すなわち中継ノードのパケットのアクセスポイントと、必然的にAPの対象の宛先端末とにより別々に確認され、後者の送信が前者の送信の後に行われる。この場合もやはり、元のパケットp1の符号化バージョンを有する他のノードは、対象の宛先端末からアクセスポイントへの受信確認フレームをオーバーヒアした後、または送信元または他の端末からのいくつかの送信の試行をオーバーヒアした後、またはまれにしか発生しない状況である受信確認フレームの紛失を防ぐためのオプションである例えばT_bufferなどのタイムアウト期間が経過した後でこれらを削除する。
【0092】
本発明の別の実施形態を、アップリンク方向の協調的な符号化送信の別のシナリオである図13に示している。図13には、アクセスポイントAPに加えて3つの端末S1、S2およびS3が示されている。図11を利用して説明したのと同様に、第1の送信ステップ(1)で端末S1は6Mbpsチャネルを通してアクセスポイントへデータパケットp1を送信しようと試みる。端末S2と端末S3は、アクセスポイントに向かう毎秒54Mビットのチャネルを利用する。アクセスポイントは、第1の送信ステップ(1)の間に受信したパケットの正しいCRCを計算するのに失敗し、パケットp1の破損コピーを破損パケット受信バッファに保持する。しかしながら、端末S2も端末S3も第1の送信ステップ(1)の間にデータパケットp1を正しく受信する。本発明の手法によれば、端末S2は、第2の送信ステップ(2)でアクセスポイントAPに向けてデータパケットp1を転送する。しかしながら、図13に示したシナリオでは端末S2は送信ステップ(2)の間、ピギーバックパケットを正常に送信するのに失敗する。最後に第3の送信ステップ(3)で端末S3がデータパケットp1をアクセスポイントへピギーバックスキームで転送し、その直後、アクセスポイントはデータパケットp1の正常に復号化されたバージョンを得ることができるようになる。
【0093】
端末S3は、1つのパケットで、元のデータパケットp1と、端末S2が送信ステップ(2)で送信しようとしたデータパケットの符号化バージョンと、自己のデータパケットとを転送する。これによりアクセスポイントは、最初に送信ステップ(1)で送信された元のデータパケットp1と、端末S2が送信ステップ(2)の間に送った元のデータパケットp1がピギーバックされた追加のデータパケットと、端末S2のデータパケットと元のデータパケットp1とがピギーバックされた、端末S3によって送られた別のデータパケットとを復号化することができる。
【0094】
端末S2などの協調的な端末によって符号化され、再送信されたデータフレームに対して端末S1からアクセスポイントAPへと送られた受信確認フレームが検出されない場合、送信された1つで2つのデータフレームをオーバーヒアした別のノードが、最初のデータパケットを含む完全な1つで2つのフレームの符号化データを再送信して、提供することができる。本発明の一実施形態では、この送信が再送信であり、あるいは再度再送信され得ることを示すために、再送信フラグが1に設定されなければならない。同様にこのスキームはダウンリンクでも実行できる。
【0095】
本発明の実施形態は、再送信をより確実にすることにより、例えばWLANシステムにおいて送られるトラフィック量を低減するという利点を有する。さらに本発明の実施形態は、再送信に費やされる時間量を低減することにより、例えばWLANシステムの総スループットを増大させる。これが可能なのは、高いデータレートの局が低いデータレートの局の代わりに符号化パケットを再送信することができるからである。さらに、本発明の実施形態は、単一のアンテナを備えた端末に対して、MIMOのような特徴を有する協調的な伝送システムを作り出すという利点も提供する。さらに本発明の実施形態は、IEEE802.11プロトコルへの任意の変更だけを用いてWLANシステムのための実用的で協調的な再送信スキームを定義し、規定する。本発明の実施形態は、追加のプロトコルまたは信号交換のオーバーヘッドを導入せずにオンザフライで相手選択を実行する。
【0096】
本発明に係る方法のいくつかの実施上の要件に応じて、本発明に係る方法は、ハードウェアとしてもソフトウェアとしても実施できる。この実施は、デジタル記憶媒体、特にプログラム可能なコンピュータシステムと協働して本発明に係る方法を実行する、電子的に読み取り可能な制御信号が格納されたディスク、DVDまたはCDを使って実行できる。したがって、本発明は一般に、本発明に係る方法をコンピュータに実行させるプログラムコードが機械可読媒体上に格納されているコンピュータプログラム製品である。したがって、言い換えると、本発明に係る方法は、コンピュータ、携帯電話機、PDAまたはWLANに接続することのできる任意の携帯用機器に対して、本発明に係る方法の少なくとも1つを実行させるプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係る中継装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る方法が利用されるシナリオ例を示す説明図である。
【図3】アップリンク伝送での本発明に係る中継装置の一実施形態を示すフローチャートの例である。
【図4】アップリンク伝送でのアクセスポイントの例を示すフローチャートである。
【図5】アップリンク伝送での送信機の例を示すフローチャートである。
【図6】ダウンリンク伝送での本発明に係る方法のシナリオ例を示す説明図である。
【図7】ダウンリンク伝送での本発明に係る中継装置の例を示すフローチャートである。
【図8】ダウンリンク伝送でのアクセスポイントの例を示すフローチャートである。
【図9】ダウンリンク伝送での受信機の例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の協調的な符号化送信の一実施形態のシナリオ例を示す説明図である。
【図11】アップリンクチャネルにおける本発明の協調的な符号化再送信の一実施形態のシナリオを示す説明図である。
【図12】ダウンリンクチャネルにおける本発明の協調的符号化再送信の方法のシナリオを示す説明図である。
【図13】本発明の複数の符号化再送信の方法のシナリオを示す説明図である。
【図14a.14b.14c】従来技術の伝送概念を示す説明図である。
【図15a.15b】従来技術の通信を実行するシナリオを示す説明図である。
【図16】WLANの従来技術の通信を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のパートナートランシーバから第2のパートナートランシーバへと送信されるデータパケットを中継する中継装置(100)であって、
前記データパケットを受信し、前記第2のパートナートランシーバが前記データパケットを正常に受信したときに前記第2のパートナートランシーバから前記第1のパートナートランシーバへと送信される受信確認パケットを受信する受信ユニット(110)と、
ヘルプが必要とされる状況が検出された場合にヘルプインジケータを提供するヘルプ検出部(120)と、
前記ヘルプインジケータに応じて前記データパケットを送信する送信ユニット(130)と
を備え、
ここで前記ヘルプが必要とされる前記状況は、
前記データパケットを受信してからある時間内に前記受信確認パケットを受信しないときに生じるタイマーの終了と、
前記中継装置(100)と前記第2のパートナートランシーバとの間の第1の通信リンクが、前記第1のパートナートランシーバと前記第2のパートナートランシーバとの間の第2の通信リンクであって、前記データパケットから得られる情報により評価される第2の通信リンクよりも良好であるか否かという点と
に基づいて検出されるものである、
中継装置(100)。
【請求項2】
前記ヘルプ検出部(120)が、前記データパケットから得られる前記第2の通信リンクに関するデータレート情報と、前記データレート情報が前記第1の通信リンクでサポートされるデータレートより低いデータレートを示すか否かという点とに基づいて、前記ヘルプが必要とされる前記状況を検出するものである、請求項1に記載の中継装置(100)。
【請求項3】
前記ヘルプ検出部(120)が、前記データパケットの制御セクション部分またはヘッダ部分に明示的に含まれる情報により前記通信リンクを評価するものである、請求項1または2に記載の中継装置(100)。
【請求項4】
前記ヘルプ検出部(120)が、前記データパケットから暗黙的に得られる情報により前記通信リンクを評価するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項5】
前記データパケットから暗黙的に得られる前記情報が、データパケットサイズ、変調、伝送期間または伝送帯域幅から推測されるものである、請求項4に記載の中継装置(100)。
【請求項6】
前記ヘルプ検出部(120)が、データレートと信号対雑音比とパケット損失比とビット誤り率と平均再送信回数とのうちの1つまたはこれらの組み合わせに基づいた評価メトリックにより前記通信リンクを評価するものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項7】
前記ヘルプ検出部(120)が前記受信ユニットから前記評価メトリックを受信するものであり、前記受信ユニット(110)が前記評価メトリックを決定するものである、請求項6に記載の中継装置(100)。
【請求項8】
前記送信ユニット(130)が、前記中継装置(100)から前記第2のパートナートランシーバへの以前の送信についての自己データレートまたは自己平均データレートを決定するものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項9】
前記ヘルプ検出部(120)が、前記自己データレートまたは前記自己平均データレートと受信パケットから得られるデータレートとの比較に基づいて、前記ヘルプが必要とされる前記状況を決定し、前記自己データレートまたは前記自己平均データレートが前記受信パケットから得られるデータレートより大きい場合に前記ヘルプインジケータを提供するものである、請求項8に記載の中継装置(100)。
【請求項10】
前記ヘルプ検出部(120)が、前記中継装置(100)と前記第1のパートナートランシーバとの間の第3の通信リンクの評価メトリックに基づいて、前記ヘルプが必要とされる前記状況を決定するものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項11】
前記受信ユニット(110)が、異なる送信機または中継装置から受信したデータパケットに対する受信確認を含んだマルチ受信確認パケットを受信するものである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項12】
中継されたデータパケットを中継する請求項1〜11のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項13】
前記ヘルプ検出部(120)が、前記中継装置(100)においてローカルに作成される別のデータパケットが送信に利用できる場合にのみ前記ヘルプインジケータを提供するものである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項14】
前記送信ユニット(130)が、前記データパケットと前記別のデータパケットとを共通のデータパケットとして一緒に送信するものである、請求項13に記載の中継装置(100)。
【請求項15】
あるトランシーバによるデータパケットの送信に続いてある期間内に前記ヘルプ検出部(120)がヘルプインジケータを提供することができるか否かという点に基づいて、前記トランシーバをパートナートランシーバとして区別する請求項1〜14のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項16】
前記第2のパートナートランシーバから前記第1のパートナートランシーバへと送信される前記受信確認パケットを受信した場合、または前記データパケットを受信してから破棄時間が経過した後に前記データパケットを破棄する請求項1〜15のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項17】
前記送信ユニット(130)が、再送信時間が経過した後に送信を繰り返すものである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項18】
前記送信ユニット(130)が、あるデータパケットをパートナートランシーバから受信したかどうかを表すインジケータを送信に含めるものである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項19】
前記受信ユニット(110)は、前記データパケットに対してCRC検査を適用し、前記CRC検査が正しい場合に前記データパケットが正常に受信されたとみなすものである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項20】
前記受信ユニット(110)が、合成受信確認パケットを送信した送信機が複数のデータパケットを正常に受信したことを確認するための前記合成受信確認パケットを受信するものである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項21】
前記受信ユニット(110)または前記送信ユニット(130)が、第1の符号化スキームを用いて符号化されているデータパケットを第2の符号化スキームへトランスコードするものであり、ここで前記第2の符号化スキームはローカルに作成されたデータパケットに対して使用される符号化スキームとは異なるものである、請求項1〜20のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項22】
前記ヘルプ検出部(120)は、再送信回数もしくはあるデータパケットの再送信が実行されるべきか否かを表す、前記データパケットから得られる再送信インジケータに基づいて前記ヘルプが必要とされる前記状況を検出するか、または、最大再送信回数に基づいて前記ヘルプが必要とされる前記状況を検出するものである、請求項1〜21のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項23】
前記送信ユニット(130)が、前記中継装置(100)と前記第2のパートナートランシーバとの間の前記第1の通信リンク、または前記中継装置(100)と前記第1のパートナートランシーバとの間の前記第3の通信リンクに対して前記第2の符号化スキームを適応させるものである、請求項22に記載の中継装置(100)。
【請求項24】
前記受信ユニット(110)と前記送信ユニット(130)とが、IEEE802.11規格に基づいて通信を行うものである、請求項1〜23のいずれか一項に記載の中継装置(100)。
【請求項25】
第1のパートナートランシーバから第2のパートナートランシーバへと送信されるデータパケットを中継装置が中継する方法であって、
前記中継装置が前記データパケットを受信するステップと、
前記第2のパートナートランシーバが前記データパケットを正常に受信すると前記第2のパートナートランシーバから前記第1のパートナートランシーバへと送信される受信確認パケットを受信することにより、前記第2のパートナートランシーバが前記データパケットを受信したことを検出するステップと、
前記中継装置と前記第2のパートナートランシーバとの間の第1の通信リンクを評価するステップと、
前記第1のパートナートランシーバと前記第2のパートナートランシーバとの間の第2の通信リンクを評価するステップと、
ヘルプが必要な状況が検出されるとヘルプインジケータを提供するステップであって、前記ヘルプが必要な前記状況が、前記データパケットを受信してからある時間内に前記受信確認パケットを受信しないときに生じるタイマーの終了と、前記データパケットから得られる情報により評価される前記第2の通信リンクよりも前記第1の通信リンクが良好であるか否かという点とに基づいて検出される、ステップと
前記ヘルプインジケータに応じて元のデータパケット、または前記データパケットを符号化したバージョンを送信するステップと
を含む方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法をコンピュータに実行させるプログラムコードを含むコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a.14b.14c】
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【図15a.15b】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−131649(P2008−131649A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−300152(P2007−300152)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】