説明

第1の事象と第2の事象との間の時間差を求める方法

【課題】2つの事象間の時間差の測定を高い時間分解能で測定し、時間測定に起因する電磁障害を低減する。
【解決手段】位置測定装置の測定信号評価ユニット(3)を用いて第1の事象(A)と第2の事象(B)との間の時間差(T)を求める方法であって、単一または複数の周期信号(x1(t),x2(t))から位置値が求められ、第1の事象(A)の発生時に第1の位置値(φA)が測定信号評価ユニット(3)により求められ、第1の事象(B)の発生時に第2の位置値(φB)が測定信号評価ユニット(3)により求められ、第1および第2の位置値(φA,φB)により時間差(T)が求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置測定装置の測定信号評価ユニットを用いて第1の事象と第2の事象との間の時間差を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的システム、特に自動化技術における技術的システムにおいて、しばしばさまざまの課題のために、2つの事象の発生時点間の時間差が非常に正確に検出されなければならない。このために一般にはクロックパルス発生器によって作成された周期的な矩形パルス信号が使用される。通常のシステムの場合に、両事象間の時間差は両事象間に存在する矩形パルスの個数から求められる。
【0003】
したがって、2つの事象間の時間差の分解能は、クロックパルス発生器により作成される矩形パルスの周波数によって制限される。求められる時間差の時間分解能を高めようとするほど、矩形パルス信号の周波数は高く選定されなければならない。非常に高い分解能を得ようとするならば、矩形パルス信号の周波数を相応に高く選定しなければならない。すなわち、矩形パルスが非常に短い時間間隔で続かなければならない。しかし、高い周波数を有する矩形パルス信号は電磁障害を発生し、電磁障害は、特に近くに配置されている電気構成部分に誤動作を生じ得る。
【0004】
例えば使用される通常のクロック周波数は100MHz以上の範囲にある。これに関係して、時間分解能の向上を達成するために、幾つもの論理ゲートを介して幾つもの相互に遅延されたクロック信号を評価することが考えられ得る。しかしながら、この場合には非常に多数の遅延要素が必要である。
【0005】
更に、直線状に上昇する電圧の走査を介して、例えば電流源を介して充電されるコンデンサの電圧を走査することにより、2つの事象間の時間差を測定することができる。しかしながら、このような時間測定は比較的不正確である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、2つの事象間の時間差を高い時間分解能で測定し、時間測定に起因する電磁障害を低減することができる第1の事象と第2の事象との間の時間差を求める方法および位置測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の事象と第2の事象との間の時間差を求める方法に関する課題は、本発明によれば、位置測定装置の測定信号評価ユニットを用いて第1の事象と第2の事象との間の時間差を求める方法であって、単一または複数の周期信号から位置値が求められ、第1の事象の発生時に第1の位置値が測定信号評価ユニットにより求められ、第2の事象の発生時に第2の位置値が測定信号評価ユニットにより求められ、第1の位置値および第2の位置値により時間差が求められることによって解決される。
【0008】
位置測定システムに関する課題は、本発明によれば、第1の事象と第2の事象との間の時間差を求めるために測定信号評価ユニットを備え、単一または複数の周期信号から位置値が求められ、第1の事象の発生時に第1の位置値が測定信号評価ユニットにより求められ、第2の事象の発生時に第2の位置値が測定信号評価ユニットにより求められ、第1および第2の位置値により時間差が求められることによって解決される。
【0009】
本発明の有利な実施態様は従属請求項に記載されている。本発明による方法の有利な実施態様は位置測定システムの有利な実施態様に類似して得られ、またその逆も成り立つ。
【0010】
第1の位置値と第2の位置値との間の位置差が求められかつ位置差が比例係数により重み付けされることによって時間差が求められると有利であることが分かった。これによって、時間差の簡単な検出が補償される。
【0011】
更に、1つの周期信号が当該周期信号に割り当てられた1つの信号発生器により作成されるか、または複数の周期信号が当該周期信号に割り当てられた複数の信号発生器により作成されると有利であることが分かった。これによって、1つの周期信号または複数の周期信号が特別に簡単に作成される。
【0012】
更に、1つの周期信号または複数の周期信号が、第1の事象および第2の事象の発生時にだけ、測定信号評価ユニットのための入力値を作成するために走査されると有利であることが分かった。これによって、測定信号評価ユニットの簡単な使用が可能にされる。
【0013】
更に、そのようにして求められた時間差が磁歪式位置測定システムにおける移動可能な磁石の位置を決定するために用いられると有利であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の実施例を示すブロック図である。
【図2】図2は2つの周期信号を示す波形図である。
【図3】図3は通常の磁歪式位置測定システムを示す概略図である。
【図4】図4は求められた時間差から位置を検出するためのブロック図である。
【図5】図5は本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例を図面に示し、以下において更に詳細に説明する。
【0016】
例えばモータ回転軸のような回転運動可能な機械要素の位置を測定するための通常の位置測定装置においては、一般に2つの信号発生器が回転運動可能な実量器を走査し、実量器に配置された目盛に応じて周期信号を作成し、これらの信号から測定信号評価ユニットにより機械要素の現在位置が決定される。
【0017】
独国特許第102004038621号明細書にはこのような位置測定装置が記載されており、この位置測定装置においては2つの互いに位相のずれた正弦波状の信号から測定信号評価ユニットにより位置φCCが求められる。独国特許第102004038621号明細書の図1およびその関連説明によれば、2つの信号発生器1,2が、独国特許第102004038621号明細書の図1に示された実量器の目盛を走査し、2つの互いに位相のずれた正弦波状の測定信号x,yを出力する。引続いて両測定信号x,yは2つのアナログディジタル変換器により固定の時間基準にて走査される。そのようにしてディジタル化された両測定信号x,yから、独国特許第102004038621号明細書の図1に示されている後段に接続された測定信号評価ユニットによって位置信号φCCが求められる。この場合に、独国特許第102004038621号明細書の図1による測定信号評価ユニットは、まず入力側において測定信号x,yのアナログディジタル変換を実行し、出力側において測定信号評価ユニットによって求められた位置信号φCCを出力する。この場合に、独国特許第102004038621号明細書の図1およびその関連説明において説明されている測定信号評価ユニットは、位置測定装置の考えられ得る1つの測定信号評価ユニットであるにすぎない。通常の位置測定装置は一般に全てが測定信号評価ユニットを有し、測定信号評価ユニットが2つ又はそれ以上の測定信号から位置信号すなわち位置を求める。
【0018】
独国特許出願公開第2729697号明細書には、例えば、2つの測定信号から位置信号を決定する位置測定装置の他の測定信号評価ユニットが開示されている。この場合には、そのような通常の測定装置は、しばしばなおも精度を高めるために、例えば、測定信号のオフセット誤差、振幅誤差、位相誤差および高調波誤差を補償および/または補正して、求められた位置の精度を高める特別な方法を含んでいる。
【0019】
更に、求められた位置の精度を高めるために、例えば実量器が2つのずらされた位置のみなならず、少なくとも3つのずらされた位置において走査される方法も知られている。刊行物「“Verfahren und Vorrichtung zur Positionsmessung mit mehr als zwei Sensoren (2つよりも多いセンサによる位置測定方法および装置)”,Dr.Roland Finkler,Dr.Hans−Georg Koepken,www.priorartdatabase.com/IPCOM/000035541/」から、例えば2つよりも多い測定信号から位置信号を求める方法および装置が知られている。
【0020】
位置測定装置において従来技術から公知のこのような測定信号評価は、これが比較的低い周波数の測定信号から非常に高い精度で相応の位置、すなわち位置信号を算出するという特性を有する。
【0021】
本発明によれば、このような一般的に知られている測定信号評価ユニットが、第1の事象と第2の事象との間の時間差を求めるために使用される。
【0022】
本発明の実施例が本出願の図1に概略図の形で示されている。第1の信号発生器1が第1の周期信号x1(t)を発生し、第2の信号発生器2が第2の周期信号x2(t)を発生する。実施例において両信号x1(t),x2(t)は正弦波状であり、相互に時間的にずれている。しかし、両信号は正弦波状でない他の信号波形を持っていてもよい。両信号が同じ信号波形を有することは必ずしも必要ではない。しかし、両信号は好ましくは矩形状でない信号波形を有する方がよい。
【0023】
両信号x1(t),x2(t)は、それぞれアナログディジタル変換器11,12に入力量として供給される。第1の事象Aの発生時および第2の事象Bの発生時に、論理ORゲート13の出力に、その都度1つのクロックパルスiが発生する。クロックパルスiは、両アナログディジタル変換器11,12に、それぞれアナログ信号x1(t),x2(t)の1回の走査(サンプリング)を実行させる。第1の事象Aおよび第2の事象Bの発生は、ORゲート13に入力量としてそれぞれトリガーパルスの形で供給される。両アナログディジタル変換器11,12は、そのようにして、第1の事象Aの発生時点taで走査された信号値x1(ta),x2(ta)と、第2の事象Bの発生時点tbで走査された信号値x1(tb),x2(tb)とを発生する。次に、信号値x1(ta),x2(ta)ならびに信号値x1(tb),x2(tb)は、既に説明した測定信号評価を行なう従来技術から公知の測定信号評価ユニット3に入力値として供給される。
【0024】
測定信号評価ユニット3は、出力側において両信号値x1(ta),x2(ta)から位置値φAを求め、そして両信号値x1(tb),x2(tb)から位置値φBを求める。この測定信号評価ユニット3において行なわれる測定信号評価は、例えば、独国特許第102004038621号明細書の図1およびその関連説明において開示された測定信号評価と一致する。この場合に、本発明にしたがって、独国特許第102004038621号明細書の図1に開示された両信号発生器1,2ならびに実量器が、本出願の図1に示されている第1および第2の信号発生器1,2によって置き換えられ、かつ両アナログディジタル変換器は、固定の周期基準(例えば全て0.125ms)で信号を走査するのではなく、第1の事象Aの発生時にただ1度だけ、そして第2の事象Bの発生時にただ1度だけ信号を走査(サンプリング)するように制御される。両信号発生器は、常に一定の周期、したがって常に一定の周波数を有する周期信号を発生する。本出願の図1における位置値φA,φBは、独国特許第102004038621号明細書の図1による位置信号φCCの個別の値に相当する。代替として、測定信号評価ユニット3は独国特許出願公開第2729697号明細書に記載されている測定信号評価ユニットの形でも実現可能である。この場合に、既に述べたように原理的には、位置測定装置における従来技術から公知のあらゆる測定信号評価ユニットが本発明の実現のために使用可能である。この場合に、信号発生器は、その都度使用される測定信号評価ユニットに適合しかつその都度使用される測定信号評価ユニットが処理できる信号を発生しなければならない。
【0025】
そのようにして求められた位置値φA,φBは、図1に示されているように、次のステップにおいて入力量として位置差算出装置4に供給される。引続いて位置差算出装置4が、実施例において、
Δφ=φB−φA
なる関係にしたがって、第2の位置値φBから第1の位置値φAを減算することによって、第1の位置値φAと第2の位置値φBとの間の位置差Δφを算出する。
【0026】
位置差算出装置4は、出力側において、そのようにして求められた位置差Δφを実施例においては乗算器5に出力する。乗算器5は、この実施例においては位置差Δφに比例係数Cを乗算することによって、位置差Δφの重み付けを行なう。比例係数Cは、周期信号x1(t),x2(t)の周波数fに依存し、両信号x1(t),x2(t)が同じ周波数fを有しかつ正弦波状であって互いに時間的にずれているという前提のもとに得られ、例えば、
C=1/ω
ω=2πf
である。
【0027】
比例係数Cとの乗算の形でそのようにして行なわれる重み付けにより、求められた位置差Δφはこの位置差Δφに相当する時間差Tに換算され、乗算器5の出力端に出力される。そのようにして求められた時間差Tは、その都度の技術的な必要性に応じて任意に後続処理をすることができる。
【0028】
念のために図2においてもう一度、測定信号評価ユニット3の機能の簡単な一般的に知られた実現が模範的に示されている。両周期信号x1(t),x2(t)は、時間tに対してではなく、この実施例において、
φ=ωt
なる角度によって与えられている位置に対して描かれている。両周期信号x1(t),x2(t)は、
1(t)=Dsin(ω・t)
2(t)=Dcos(ω・t)
D:振幅
によって与えられている。
【0029】
時点tAで事象Aが発生すると、2つの信号値x1(tA),x2(tA)、すなわち、
1(tA)=Dsin(ω・tA
2(tA)=Dcos(ω・tA
が検出される。
時点tBで事象Bが発生すると、2つの信号値x1(tB),x2(tB)、すなわち、
1(tB)=Dsin(ω・tB
2(tB)=Dcos(ω・tB
が検出される。
【0030】
まず、事象Aに基づいて検出された信号値x1(tA),x2(tA)から、
φ’A=atan2(x1(tA),x2(tA))=arg(x2(tA)+jx1(tA))
が計算される。この場合に、atan2(b,a)およびarg(a+jb)は、−π≦arg(a+jb)≦πを有する複素数a+jbの偏角を意味する(すなわち、a+jb=|a+jb|ejarg(a+jb))。
【0031】
そのあとでφA=mod(φ’A,π/2)が計算される。ただし、mod()はモジュロ関数(modulo function)である。
【0032】
同様に事象Bに基づいて検出された信号値x1(tB),x2(tB)から、
φ’B=atan2(x1(tB),x2(tB))=arg(x2(tB)+jx1(tB))
が計算される。
【0033】
更に、事象Aと事象Bとの間において、信号x1(t),x2(t)の零通過の回数qが求められる。引続いて、最初の計数された零通過が、
−π≦φ'A<−π/2の場合にx1(t)の正の零通過であったならば、
−π/2≦φ'A<0の場合にx2(t)の負の零通過であったならば、
0≦φ'A<π/2の場合にx1(t)の負の零通過であったならば、もしくは
π/2≦φ'A<πの場合にx2(t)の正の零通過であったならば、
qが1だけ増加させられる。
これに対して、最初の計数された零通過が、
−π≦φ'A<−π/2の場合にx1(t)の負の零通過であったならば、
−π/2≦φ'A<0の場合にx2(t)の正の零通過であったならば、
0≦φ'A<π/2の場合にx1(t)の正の零通過であったならば、もしくは
π/2≦φ'A<πの場合にx2(t)の負の零通過であったならば、
qが1だけ減少させられる。
【0034】
引続いてもう一度、最後の計数された零通過が、
−π≦φ'B<−π/2の場合にx2(t)の負の零通過であったならば、
−π/2≦φ'B<0の場合にx1(t)の負の零通過であったならば、
0≦φ'B<π/2の場合にx2(t)の正の零通過であったならば、または
π/2≦φ'B<πの場合にx1(t)の正の零通過であったならば、
qが1だけ増加させられる。
これに対して、最初の計数された零通過が、
−π≦φ'B<−π/2の場合にx2(t)の正の零通過であったならば、
−π/2≦φ'B<0の場合にx1(t)の正の零通過であったならば、
0≦φ'B<π/2の場合にx2(t)の負の零通過であったならば、または
π/2≦φ'B<πの場合にx1(t)の負の零通過であったならば、
qが1だけ減少させられる。
【0035】
従って、q−1は事象A,B間を完全に通過する信号x1(t),x2(t)の象限の個数を示す。その際に、最初もしくは最後に計数された零通過に応じて+1または−1の補正が必要となることがある。なぜならば、測定精度に基づいて、最初に計数された零通過とφAに関して求められた象限との間でも、最後に計数された零通過とφA’に関して求められた象限との間でも、不一致が起こり得るからである。
【0036】
独国特許出願公開第2729697号明細書においては、上述のqの検出の代わりに、方向弁別器およびアップダウンカウンタが使用される。なぜならば、そこでは一定の角速度で回転するsin/cos発生器によってではなく、回転方向変化によっても算出されなければならないからである。
【0037】
そのあとで、
φB=q・π/2+mod(φ’B,π/2)
が計算される。その際に位置差Δφが、
Δφ=φB−φA
で得られ、位置差算出ユニット4の出力端に出力される。
【0038】
その後、時間差Tが、
T=C・Δφ=(φB−φA)/ω
で得られる。上記関係の変換は乗算器5において行なわれる。
【0039】
本発明は、短時間に相前後して発生する2つの事象間の時間差の正確な検出が位置の検出のために必要である例えば磁歪式位置測定システムのような位置測定のための位置測定システムにおいて、特に有利に使用することができる。
【0040】
図3には通常の磁歪式位置測定システムの原理が示されている。好ましくはリング状の永久磁石7として構成されている磁石が、永久磁石7に通されている測定棒8に沿って、移動方向Xに沿って移動させられる。センサ電子装置6が位置x(t)、すなわち永久磁石7の位置を決定する。このためにセンサ電子装置6は固定の周期基準(例えば、ミリ秒)にて開始パルス9を発生し、この開始パルス9は電流パルスとして測定棒8を通流する。永久磁石7の位置において電流パルスによって一緒に導かれる磁界が測定棒8内に機械的ねじれを生じさせ、この機械的ねじれが測定棒8内に固体伝送音波を生じ、この固体伝送音波がセンサ電子装置6に戻る。この固体伝送音波の到着がセンサ電子装置6内に記録され、停止パルス10に変換される。この場合に、開始パルス9(事象Aに相当)と付属の停止パルス10(事象Bに相当)との間の時間差が永久磁石7の位置x(t)に比例する。
【0041】
時点tvで永久磁石7の位置xを検出するために(事象Aの発生)、時間差Tが乗算器6により定数Kと乗算される。定数Kは、電気的な開始パルス9の走行時間を無視して、測定棒8内における固体伝送音波の速度から生じる。
【0042】
したがって、時点tvでの永久磁石7の位置xは、
x=K・T
によって得られる。
【0043】
特に磁歪式位置測定システムにおいて、図1および付属の説明にしたがって第1の事象Aである開始パルスと、図1にしたがって第2の事象Bである付属の停止パルス10との間の求めるべき時間差Tは非常に小さい。したがって、磁歪式位置測定システムにおける本発明の使用は十分適している。なぜならば、既に述べたように、両事象間の測定すべき時間差が非常に小さく、それゆえ通常の磁歪式位置測定システムにおける時間差の測定のためには、時間測定の高い分解能を得ようとする場合に、時間測定に高い矩形パルス信号周波数(100MHz以上)が必要であるからである。しかし、通常の磁歪式位置測定システムにおいて必要なこの高周波のクロック信号は電磁障害源であり、これは特に、例えば磁歪式位置測定システムの図3による敏感なセンサ電子装置6を妨害する。本発明により、相応の同じ時間分解能において、相対的に低い周波数(例えば0.5MHz以下)の周期信号x1(t),x2(t)が必要であり、両周期信号は、極めて低い周波数および矩形に代わる正弦波形によって、電磁障害の発生が著しく少ない。
【0044】
したがって、必要な時間測定に起因する障害を本発明によって低減することができる。
【0045】
しかしながら、もちろん本発明は、走行時間の測定に基づく位置測定システムのその他のタイプ、すなわち走行時間の測定に基づく位置測定装置のその他のタイプにおいても使用可能である。
【0046】
磁歪式位置測定システムは、例えば米国特許第5334933号明細書、米国特許第3898555号明細書および欧州特許第0442985明細書から公知である。更に、磁歪式位置測定システムは、著書「“Lineare Weg− und Abstandssensoren”,2004,ISBN 3−937889−07−8,53−66頁」から公知である。更に、磁歪式位置測定システムは、例えばインターネットページ「www.mtssensor.de/filedmin/medien/downloads/mts_messprinzip.pdf」において開示されているMTSsensor社のリーフレットフォルダ「Magnetostriktion,Physikalische Grundlagen」から知られている。
【0047】
図5には本発明の他の実施例が示されている。図5に示されている実施形態は、基本構成および動作態様に関して、図1に示した前述の実施形態にほぼ一致する。したがって、図5において、同じ要素には、図1と同じ符号が付されている。主な相違は、図5による実施形態の場合には時間差Tを求めるために第1の周期信号x1(t)のみが、したがって第1の信号発生器1のみが必要とされる点にある。図1による実施形態に比べると、図1に示された回路は、図5においては入力信号の論理OR結合を行なう他の論理ORゲート14と、時間TVだけの入力信号の時間遅延を行なう時間遅延要素15と、2つのスイッチ16,17とに関して拡張されている。
【0048】
信号x1(t)はアナログディジタル変換器11に入力量として供給される。第1の事象Aの発生時および第2の事象Bの発生時に、論理ORゲート13の出力端に、その都度1つのクロックパルスiが発生し、クロックパルスiは、ORゲート14を介して転送され、アナログディジタル変換器11にその都度アナログ信号x1(t)の1度だけの走査(サンプリング)を行わせる。その際に、第1の事象Aおよび第2の事象Bの発生がORゲート13にそれぞれのトリガパルスの形で入力量として供給される。
【0049】
アナログディジタル変換器11は、そのようにして第1の事象Aの発生時点taで走査された信号値x1(ta)および第2の事象Bの発生時点tbで走査された信号値x1(tb)を発生する。しかし、時間遅延要素15によって、アナログディジタル変換器11は、事象の各発生時に時間TVだけ時間的にずらされた他の走査を行わされかつ信号値x1(ta+TV),x1(tb+TV)を出力側に発生させられる。スイッチ16,17により、信号値x1(ta),x1(ta+TV),x1(tb),x1(tb+TV)が測定信号評価ユニット3に入力値として出力される。スイッチ16,17は、制御入力端Sに論理「1」が現れたときに入力信号を出力端に与える。
【0050】
信号値x1(ta+TV)は図1による信号値x2(ta)に相当し、信号値x1(tb+TV)は図1による信号値x2(tb)に相当する。そのほかに関しては、図5による実施形態の動作態様は図1による実施形態の動作態様に一致する。
【符号の説明】
【0051】
1 信号発生器
2 信号発生器
3 測定信号評価ユニット
4 位置差算出ユニット
5 乗算器
6 センサ電子装置
7 永久磁石
8 測定棒
9 開始パルス
10 停止パルス
11 アナログディジタル変換器
12 アナログディジタル変換器
13 論理ORゲート
14 論理ORゲート
15 時間遅延要素
16 スイッチ
17 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置測定装置の測定信号評価ユニット(3)を用いて第1の事象(A)と第2の事象(B)との間の時間差(T)を求める方法であって、単一または複数の周期信号(x1(t),x2(t))から位置値が求められ、第1の事象(A)の発生時に第1の位置値(φA)が測定信号評価ユニット(3)により求められ、第2の事象(B)の発生時に第2の位置値(φB)が測定信号評価ユニット(3)により求められ、第1および第2の位置値(φA,φB)により時間差(T)が求められることを特徴とする第1の事象と第2の事象との間の時間差を求める方法。
【請求項2】
第1の位置値(φA)と第2の位置値(φB)との間の位置差(Δφ)が求められかつ位置差(Δφ)が比例係数(C)により重み付けされることによって時間差(T)が求められることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
1つの周期信号が当該周期信号(x1(t))に割り当てられた1つの信号発生器(1)により作成されるか、または複数の周期信号(x1(t),x2(t))が当該周期信号(x1(t),x2(t))に割り当てられた複数の信号発生器(1,2)により作成されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
1つの周期信号(x1(t))または複数の周期信号(x1(t),x2(t))が、第1の事象(A)および第2の事象(B)の発生時にだけ、測定信号評価ユニット(3)のための入力値(x1(ta),x2(ta),x1(tb),x2(tb))を作成するために走査されることを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の方法。
【請求項5】
求められた時間差(T)が磁歪式位置測定システムにおける可動磁石の位置(x)を決定するために用いられることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の方法。
【請求項6】
第1の事象(A)と第2の事象(B)との間の時間差(T)を求めるために測定信号評価ユニット(3)を備え、単一または複数の周期信号(x1(t),x2(t))から位置値が求められ、第1の事象(A)の発生時に第1の位置値(φA)が測定信号評価ユニット(3)により求められ、第2の事象(B)の発生時に第2の位置値(φB)が測定信号評価ユニット(3)により求められ、第1および第2の位置値(φA,φB)により時間差(T)が求められる位置測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−288241(P2009−288241A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125610(P2009−125610)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】