説明

筋肉痛を治療するためのペプチドの新規の使用

本発明は、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節痛を治療するための多種のペプチドの試料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節痛の治療のための多種のペプチド化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
あるペプチドは、中枢神経系(CNS)活性を示すことが知られており、てんかん及び他のCNS疾患の治療に有用である。これらのペプチドは、米国特許第5,378,729号に記載されているペプチドであり、下式(Ia)を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
式中、
Rは、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール、アリール低級アルキル、ヘテロ環、ヘテロ環低級アルキル、低級アルキルへテロ環、低級シクロアルキル、又は低級シクロアルキル低級アルキルであって、Rは少なくとも1つの電子吸引基又は電子供与基で置換されているか又は非置換である;
は、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール低級アルキル、アリール、ヘテロ環低級アルキル、ヘテロ環、低級シクロアルキル、又は低級シクロアルキル低級アルキルであって、各々電子供与基若しくは電子吸引基で置換されているか又は非置換である;並びに
及びRは、独立して、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール低級アルキル、アリール、ヘテロ環、ヘテロ環低級アルキル、低級アルキルへテロ環、低級シクロアルキル、低級シクロアルキル低級アルキル、又はZ−Yであって、R及びRは電子吸引基又は電子供与基で置換されているか又は非置換であって良い;
Zは、O、S、S(O)a、NR、PR、又は化学結合である;
Yは、水素、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、ハロ、ヘテロ環、又はヘテロ環低級アルキルであって、Yは電子供与基又は電子吸引基で置換されているか又は非置換であって良いが、Yがハロである際はZは化学結合であるか、あるいは
ZYが共に、NR4NR57、NR4OR5、ONR47、OPR45、PR4OR5、SNR47、NR4SR7、SPR45若しくはPR4SR7、NR4PR56、又はPR4NR57、あるいは下式のものである。
【0005】
【化2】

【0006】
、R、及びRは、独立して、水素、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル、低級アルケニル、又は低級アルキニルであって、R、R、及びRは電子吸引基若しくは電子供与基で置換されているか又は非置換であって良い;
は、R、COOR、又はCORである;
は、水素、低級アルキル、又はアリール低級アルキルであって、前記アリール又はアルキル基は電子吸引基又は電子供与基で置換されているか又は非置換であって良い;
nは1から4であり;並びに
aは1から3である。
【0007】
米国特許第5,773,475号もCNS疾患の治療に有用な更なる化合物を開示している。これらの化合物は、下式(IIa)を有するN−ベンジル−2−アミノ−3−メトキシ−プロピオンアミドである。
【0008】
【化3】

【0009】
式中、
Arは、ハロで置換されているか又は非置換のアリールであり;Rは低級アルコキシであり;並びにRはメチルである。
【0010】
特許US5,378,729及びUS7,773,475を参照することによって本明細書に取り込む。しかしながら、これらの特許のいずれにおいても、線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群、背痛、又は変形性関節症において生じる異痛及び筋痛覚過敏のような非炎症性筋骨格疼痛の特異的な発生を治療するためのこれらの化合物の使用を開示していない。
【0011】
WO 02/074297は、式(IIa)[式中、Arが少なくとも1つのハロによって置換されていて良いフェニルであり、Rは1から3の炭素原子を含有する低級アルコキシであり、並びにRがメチルである]に係る化合物の、末梢神経痛に関連する異痛の治療に有用な医薬組成物の調製のための使用に関する。
【0012】
WO 02/074784は、急性及び慢性の疼痛の各種のタイプ及び症状、特に非神経障害性疼痛、例えば、リウマチ様大動脈炎の疼痛及び/又は二次炎症変形性関節痛を治療するための抗侵害受容特性を示す式(Ia)及び/又は式(IIa)を有する化合物の使用に関する。
【0013】
非炎症性筋骨格疼痛は、疼痛の特異的な形態である。非炎症性筋骨格疼痛は、古典的免疫応答としての組織損傷及びマクロファージ浸潤(浮腫を生じさせる)とは明確に区別される。
【0014】
非炎症性筋骨格疼痛は、特異的な構造又は炎症の原因に由来するものではなく、線維筋痛症(FMS)、顔面筋疼痛症候群(MPS)、又は背痛についての分類基準と一致する。非炎症性筋骨格痛は、末梢感作及び中枢感作から生じるものであると解されている(Staud 2002)。基礎的なメカニズムに関する知識、筋肉痛を調べる動物モデル、及び治療計画は改善される必要がある。
【0015】
線維筋痛症は、クオリティオブライフ、機能、及び実質的な経済的負担に対する重大な障害と関連する複合的な症候群である(10)。線維筋痛症は、線維筋痛症候群(FMS)とも称される。
【0016】
線維筋痛症は、身体の典型的な領域に圧痛点(正常な外観を示す組織における局所的な圧痛領域)を生じさせ、乏しい睡眠パターン及びストレスに富んだ環境と高い頻度で関連する。線維筋痛症の診断は、両側、上部、及び下部の身体、並びに背骨と規定される広範に広がった疼痛の過程、及び18の特異的な筋腱部位のうち少なくとも11の部位への圧力の適用に対する過剰な圧痛の存在に基づく。線維筋痛症は、典型的には、骨及び関節を支持及び動かす組織全体にわたる疼痛及び凝りを生じさせる慢性的な症候群である。
【0017】
線維筋痛症の治療は、従来、痛み緩和剤、NSAID、筋弛緩剤、トランキライザー、及び抗鬱剤に基づくものであり、それらのいずれも特に役立つものではない。線維筋痛症患者は、多くの場合に睡眠が乏しくなり、抗鬱剤であるアミトリプチリンを就寝時に服用することである程度の緩和が得られる可能性がある(JAMA. 2004 Nov 17; 292(19):2388-95. Management of fibromyalgia syndrome. Goldenberg DL, Burckhardt C1 Crofford L.)。線維筋痛症の治療の目標は、痛みを低減し、機能を増大することである。
【0018】
顔面筋疼痛症候群(MPS)は、慢性的な非変性非炎症性筋骨格疼痛疾患である。筋肉又はそれらの繊細な結合組織被覆(筋膜)内の離れた領域が、異常に厚くなるか又は堅く締まる。顔面筋組織が堅く締まり弾性を失った際には、脳と身体との間のメッセージを送達及び受容する働きをする神経伝達物質が損傷を受けている。症状は、筋肉の凝り、及びうづく痛み、及び鋭い痛み又は刺痛、及び発痛点から離れた領域におけるしびれを含む。不快である事から、睡眠障害、疲労、及びうつ病が生じる可能性がある。大半の一般的な発痛点は、首、背中、又は臀部である。
【0019】
顔面筋疼痛は、線維筋痛症とは異なるものであり;顔面筋疼痛症候群及び線維筋痛症は別々のものであり、各々が独自の病理を有するが、疼痛の共通の経路として筋肉を共有している。顔面筋疼痛は、発痛点圧痛と関連するより局所的又は領域性の(筋肉に沿った又は筋膜組織の周囲の)疼痛過程である。顔面筋疼痛は、ストレッチ、超音波、ストレッチと共にアイススプレー、運動、及び麻酔剤の注射を含む、各種の方法(併用の場合もある)で治療され得る。
【0020】
更なる非炎症性筋骨格疼痛症候群は、背痛、特に腰痛である。背痛は、急性であるか又は慢性のいずれかであって良い一般的な筋骨格症候群である。背痛は、腰椎に影響を与える各種の疾患及び病気によって引き起こされる可能性がある。腰痛は、多くの場合に、坐骨神経に関する疼痛であり、腰、臀部、及び大腿後部において感じられる坐骨神経痛を伴う。
【0021】
非炎症性筋骨格疼痛、例えば、線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群、及び背痛は、重要な発現として筋肉の感度の増大を伴う。筋肉の感度の増大は、正常な非侵害受容性刺激によって誘起された痛み(異痛)又は侵害受容性刺激によって誘起された痛みの強度の増大(痛覚過敏)によって特徴付けられる。
【0022】
変形性関節症は、軟骨の分解速度が再生速度を越えて、軟骨侵食、肋軟骨下骨の肥厚、及び関節損傷が生じる際に生じる、非炎症性の起源を有すると解されている獲得性筋骨格疾患である(Wieland,2005)。軟骨が薄くなるにつれて、その表面強度は失われ、裂け目が形成され、軟骨はより容易に関節の動きで侵食されやすくなる。新しい軟骨が形成されると、より線維状であってより機械的応力に対抗し得ない傾向がある。経時的には、機械適応力に対抗しにくい下層の骨が曝露され、微小破壊が生じる。局所的な骨壊死が骨の表面下で生じ、軟骨の骨の支持体を更に弱める嚢胞を生じさせる。
【0023】
変形性関節症が進行するにつれて、最終的には関節周囲の構造に影響が与えられる可能性がある。滑膜炎のような局所的な炎症が、例えば、軟骨分解の過程の間に放出される炎症伝達物質に反応して生じ得る。関節包は肥厚する傾向があり、栄養分の関節内への移動及び代謝廃棄産物の関節外への移動が制限される。最終的には、末梢筋疲労が変形性関節症の進行と共に顕著になり、関節がより低い頻度又は不適当に使用される。軟骨には神経が存在しないため、変形性関節症の疼痛は、軟骨分解自体によるものではなく、骨を含む周囲の構造に対する効果によるものであると解されている。
【0024】
肋軟骨下骨、骨膜、滑膜、靭帯、及び関節包は全て十分に神経が分布しており、侵害受容刺激の源であり得る神経末端を含む。末梢疼痛感作に加え、中枢疼痛感作が変形性関節症において生じ得る(Schaible et al., 2002)。
【0025】
Centers for Disease Control and Prevention (CDC)によれば、変形性関節症は、関節炎疾患の最も一般的な形態であり、2100万人の米国人が罹患している。http://www.cdc.gov/arthritis/data_statistics/arthritis_related_statistics.htm#2を参照のこと。
【0026】
2020年までに、6000万人の米国人が関節炎に罹患すると見積もられている。関節炎は、700万人の米国人における身体障害(歩行及び階段の昇りにおいて補助を必要とするものとして広範に定義される)及び日常の活動の制限の主な原因であり、この数は2020年までに1160万人を超えると予測されている。http://www.arthritis.org/resources/ActionPlanInterior.pdfを参照のこと。
【0027】
関節炎及びその合併症を治療するのには非常に費用が係る。1997年には、米国における関節炎及び他のリウマチ性疾患の総費用は、860億ドルであった。1997年における関節炎及び他のリウマチ性疾患の直接的な医療費は、511億であった。1997年における関節炎及び他のリウマチ性疾患の(遺失賃金による)間接的な費用は351億ドルであった。http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5318a3.htmを参照のこと。
【0028】
変形性関節症の罹患率は年齢と共に増大し、年齢が最も大きなリスクファクターである。Brandt (2001) Principles of Internal Medicine, 15th ed. (Braunwald et al., eds.), New York: McGraw-Hill, pp.1987-1994によって報告された調査によって、45歳未満の女性の2%のみが変形性関節症のX線撮影における兆候を有することが認められた。しかしながら、45から64歳の女性では、罹患率は30%であり、65歳以上の女性では68%であった。他のリスクファクターは、過剰な体重、遺伝、エストロゲン欠乏、反復的な関節の使用、及び外傷を含む。
【0029】
変形性関節症を有する典型的な患者は、中年又は高齢者であり、膝、臀部、手、又は背骨における疼痛を訴えている。手の遠位及び近位指節間関節は、変形性関節症の最も一般的な部位であるが、最も軽度に症状を示すようである。臀部及び膝は、X線撮影で影響がある事が認められる第二及び第三の一般的な関節であり、膝の疼痛はより重度に症状を示すようである。
【0030】
疼痛は変形性関節症の重要な症状である。変形性関節症の疼痛は、炎症性及び非炎症性成分の1つ又は双方を有する。抗炎症剤、例えば、NASAID(非ステロイド性抗炎症剤)及びシクロオキシゲナーゼ−2インヒビターは、炎症性成分の治療及び管理において有用であり得るが、オピオイド及び他の鎮痛剤は非炎症性成分の治療及び管理に有用であり得る。しかしながら、その様な薬剤療法は常に有効であるとは限らず、全ての患者に良好に許容され得ない副作用を有する。
【0031】
非炎症性の疼痛、特に非炎症性の筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛は、多くの場合に、腫脹及び熱感の不在、炎症性又は全身性の特徴の不在、並びに朝のこわばりが最小限であるか又は存在しないことによって特徴付けられる。
【0032】
非炎症性変形性関節症の疼痛は、特に高齢者における坐位のライフステイル、鬱病、及び睡眠障害の一因となる。その疼痛は、動きとともに増大する深い、うずくような痛みとして特徴付けられる。疼痛は通常は断続的であり、且つ、多くの場合に温和であるが、連続的で重度になり得る。通常は、捻髪音が影響を受ける関節において認められる。
【0033】
非炎症性変形性関節症の疼痛は、非炎症性筋骨格疼痛の特異的なタイプであり、典型的には変形性関節症に関連する形態学的変化、例えば、軟骨分解、感覚ニューロンに対する骨変化、及び骨再形成の血管新生の作用から生じる。それは、古典的免疫系応答と関連する組織損傷及びマクロファージ浸潤(浮腫を生じさせる)を含む軟骨及び骨における病的過程に続いて滑膜炎症から典型的に生じる炎症性変形性関節症の疼痛からは区別される。
【0034】
非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛、例えば、線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群、背痛、又は変形性関節症において生じる筋肉の痛覚過敏及び異痛の治療、特に全身治療における治療効果を有する治療を特定する必要がある。
【特許文献1】米国特許第5,773,475号
【特許文献2】US5,378,729
【特許文献3】US7,773,475
【特許文献4】WO 02/074297
【特許文献5】WO 02/074784
【非特許文献1】JAMA. 2004 Nov 17; 292(19):2388-95. Management of fibromyalgia syndrome. Goldenberg DL, Burckhardt C1 Crofford L.
【非特許文献2】http://www.cdc.gov/arthritis/data_statistics/arthritis_related_statistics.htm#2
【非特許文献3】http://www.arthritis.org/resources/ActionPlanInterior.pdf
【非特許文献4】http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5318a3.htm
【非特許文献5】Brandt (2001) Principles of Internal Medicine, 15th ed. (Braunwald et al., eds.), New York: McGraw-Hill, pp.1987-1994
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
したがって、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症、特に線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群(MPS)、又は背痛のための治療を提供することが本発明の課題である。具体的には、炎症性浮腫のような生理学的要因の不在下において侵害受容刺激によって誘起される痛みの強度の増大(痛覚過敏)又は正常な非侵害受容性刺激によって誘起される痛みの強度の増大(異痛)に特徴付けられる線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群(MPS)、又は背痛を含む、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の治療、特に全身治療を提供することが本発明の課題である。
【0036】
第二世代の抗てんかん薬の開発によって、慢性の疼痛の治療のための新規の機会が作られた。これらの薬剤は、特異的なイオンチャンネルとの相互作用によって痛みの伝達を調節する。抗てんかん薬の作用は、神経障害性及び非神経傷害性の疼痛で異なり、各々の薬物の種類に含まれる薬剤は、各種の程度の効力を有する。第一世代の抗てんかん薬(すなわち、カルバマゼピン、フェニトイン)及び第二世代の抗てんかん薬(例えば、ガバペンチン、プレガバリン)は、神経障害性の疼痛の治療において有効である。神経障害性の疼痛の治療における抗鬱剤及び抗てんかん薬の効力は似ているが、安全性及び副作用のプロフィールが異なる。三環系抗鬱剤は、最も費用効率が高い薬剤であるが、第二世代の抗てんかん薬は、高齢患者に関するより少ない安全性と関連する。三環系抗鬱剤は、線維筋痛症及び慢性的な腰痛の治療における効力(限定的ではあるが)を有する事が開示されている。
【0037】
ラコサミド(SPM 927又はハルコセリドとも称される)は、未知である範囲において新しい様式の作用を有する。式(Ib)及び(IIb)の化合物の作用の様式は、一般的な抗てんかん薬のものとは異なる。イオンチャンネルは、他の既知の抗てんかん薬と比較して、本発明の化合物によっては影響を受けず、一方でGABA誘導電流は増強されるが、任意の既知のGABA受容体サブタイプとの直接的な相互作用は認められない。グルタメート誘導電流は減衰されるが、前記化合物は任意の既知のグルタメート受容体サブタイプとは直接的に相互作用しない。
【0038】
圧力に対する痛覚過敏及びTNFに誘導される把持力の低減は、非炎症性筋骨格疼痛の動物モデルとして使用され得る。ヒトでは、低減された把持力は筋肉痛と強く関連する。実際に、主動筋におけるα及びγ運動ニューロンは、有毒性の化学的な刺激後に阻害される(6,7,8)。
【0039】
TNFに誘導される把持力の低減は、実際に、筋肉の衰弱、疲労、又は収縮器官の障害の結果というよりも一定の痛覚過敏である。ロータロッド試験は、TNF注射後に運動の障害を示さず、筋肉の組織構造は以上を示さなかった(1)。筋肉に経皮的に与えた圧力に対する引込み閾値は、大半のラットにおいてTNF注射後に顕著に低減した。この一次的な痛覚過敏は、筋肉痛、例えば、顔面筋疼痛症候群及び線維筋痛症(3)を有する患者において臨床的に観察される、臨床的及び実験的なヒトの疾患における筋肉痛の診断の一次的な判定方法である(4,5)触診に対する圧痛と似ている。
【0040】
形態学的な異常を伴わない筋肉の触診に対する疼痛は、ヒトにおける線維筋痛症候群の典型であるため(2)、TNFの筋肉内注射のモデルは、例えば、線維筋痛症に関連する筋肉痛のモデルとして使用されて良い。腫瘍壊死因子α(TNF)の筋肉内注射は、ラットにおいて機械的痛覚過敏を誘導する。これは、筋肉に対する圧力及び把持力に対する引込み閾値の測定によって定量される。TNF注射は、筋肉の形態学的な損傷を引き起こさない(1)。
【0041】
筋肉へのTNF注射のモデルを使用して、ラコサミドが、抗侵害受容動態の低減において効果的である事が認められた。驚くべきことに、腓腹筋におけるTNF誘導性筋肉痛覚過敏の完全な逆転は、30mg/kgのラコサミド及び2mg/kgのメタミゾールを使用して認められた。二頭筋痛覚過敏では、痛覚過敏の優位な逆転が、10mg/kg及び30mg/kgのラコサミドを使用して認められた。筋肉の痛覚過敏の有意な低減は、100mg/kgのプレガバリン及びガバペンチン並びに2mg/kgのメタミゾールについても認められた。
【0042】
変形性関節症の最も良く特徴付けられたラットモデルの1つは、代謝阻害剤であるモノナトリウムヨードアセテートを関節に注射して、軟骨細胞におけるグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼの活性を阻害し、糖分解障害を生じさせ、最終的に細胞死を生じさせるものである(Guzman et al.,2003;Kalbhen,1987)。軟骨細胞における進行性消失は、関節軟骨の組織学的及び形態学的変化を生じさせ、ヒトの変形性関節症患者において認められるものと非常に近似する。
【0043】
変形性関節症の疼痛のヨードアセテートラットモデルを使用すると、驚くべきことに、ラコサミドが、炎症後の期間における機械的痛覚過敏を阻害し、非炎症性変形性関節症の疼痛の治療についてのラコサミドの効果を示すことを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0044】
非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の治療のための式(Ib)及び/又は式(IIb)の化合物の使用は、これまでに報告されていない。かくして、本発明は、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛、特に非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の特異的な発現、例えば、線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群、背痛、及び/又は変形性関節症において生じる筋肉の痛覚過敏及び/又は異痛を予防、緩和、及び/又は治療するための医薬組成物の調製のための、式(Ib)及び/又は(IIb)の化合物の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明では、異痛は、筋肉の異痛及び非筋肉の異痛を含む。異痛は筋肉の異痛であることが好ましい。
【0046】
各種の病理疾患が、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛に関与する可能性がある。したがって、本発明では、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛は、病理疾患に関連するか又はそれによって引き起こされる非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛も含む。好ましくは、この疾患は、背痛又は首痛のような局所的な疼痛症候群、慢性関節リウマチ、変形性関節症、痛風、強直性脊椎炎、エリテマトーデス、線維筋痛症、結合組織炎、線維筋炎、顔面筋疼痛症候群、自己免疫疾患、リウマチ性多筋痛、多発性筋炎、皮膚筋炎、筋膿瘍、せん毛虫症、ライム病、マラリア、ロッキー山紅斑熱、ポリオ、外傷、関節損傷、外傷による関節損傷、軟骨分解、骨の構造変化、及び変形性関節症の骨再構築の領域の血管新生から選択される。
【0047】
本明細書では、用語「非炎症性変形性関節症の疼痛」は、変形性関節症と関連するか又はそれによって引き起こされる非炎症性の疼痛を示す。特に、「非炎症性変形性関節症の疼痛」は、変形性関節症と関連するか又はそれによって引き起こされる非炎症性筋骨格疼痛を示す。
【0048】
本発明の1つの実施態様では、非炎症性筋骨格疼痛は、変形性関節症と関連するか又はそれによって引き起こされる非炎症性の疼痛である。本発明の他の実施態様では、非炎症性筋骨格疼痛は、変形性関節症と関連するか又はそれによって引き起こされる筋骨格疼痛である。
【0049】
本発明では、非炎症性変形性関節症は、外傷、関節損傷、外傷による関節損傷、軟骨分解、骨の構造変化、及び変形性関節症の骨再構築の領域の血管新生から選択される病理疾患と関連するか又はそれによって引き起こされる非炎症性変形性関節症の疼痛である。骨は、連続的に再構築を行っている。再構築は、古い骨が新しい骨に置き換わって、最大の骨密度を維持する過程である。血管新生は、再構築の過程における毛細血管の増殖によって生じ、変形性関節症のような疾患において増大し得る。
【0050】
本発明では、非炎症性の疼痛、特に、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛は、腫脹及び熱感の不在、炎症及び/又は全身性の特徴の不在、並びに/あるいは朝のこわばりが本質的に存在しないことによって特徴付けられる。
【0051】
軟骨は神経を有さないため、変形性関節症は、骨及び関節包のような周囲の構造に対する軟骨分解の効果によって媒介され得る。本発明では、軟骨分解は、軟骨侵食、表面完全性の損失、裂け目の形成、及び関節の動きに伴う侵食の増大を含むが、それらに限らない。
【0052】
本発明では、骨の構造変化は、肋軟骨下骨肥厚、微小破壊、骨壊死、骨表面下骨壊死、及び軟骨の骨の支持体の弱化を含むが、それらに限らない。
【0053】
本発明では、変形性関節症の疼痛は、膝、臀部、手、及び/又は背骨における変形性関節症を含むが、それらに限らない。
【0054】
非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛は、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の治療によって治療又は少なくとも緩和される可能性がある多数の症状に関与している可能性がある。そのため、本発明では、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛は、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛と関連するか又はそれによって引き起こされる状態を更に含む。好ましくは、前記状態は、疲労、睡眠障害、過敏性腸症候群、慢性頭痛、側頭下顎関節障害症候群、多発性化学過敏症、疼痛のある月経の期間、月経困難、胸痛、朝のこわばり、認知又は記憶障害、しびれ及び刺痛の感覚、筋肉の痙攣、過敏性膀胱、肥大した足の感覚、皮膚過敏症、乾燥眼及び口、眼の投薬の頻繁な変化(frequent changes in eye prescription)、眩暈、及び協調運動障害から選択される。
【0055】
本明細書で使用する用語「非炎症性関節痛」は、関節炎及び/又は関節炎に続発する疾患と関連するか又はそれらによって引き起こされる非炎症性の疼痛を示す。特に、「非炎症性関節痛」は、変形性関節症のような関節炎及び/又は関節炎に続発する疾患と関連するか又はそれらによって引き起こされる非炎症性筋骨格疼痛を示す。
【0056】
関節炎、例えば、変形性関節症に関連する疼痛は、炎症性又は非炎症性あるいは双方であって良い。本発明の1つの実施態様では、非炎症性筋骨格疼痛は、変形性関節症のような関節炎及び/又は関節炎に続発する疾患と関連するか又はそれらによって引き起こされる非炎症性疼痛である。
【0057】
本発明の他の態様では、非炎症性筋骨格疼痛は、変形性関節症のような関節炎及び/又は関節炎に続発する疾患と関連する及び/又はそれらによって引き起こされる非炎症性筋骨格疼痛である。
【0058】
本明細書で使用する「関節症」又は「関節炎」は、対照の1つ又は複数の関節の筋骨格疾患であり、通常は疼痛を伴い、主に関節炎である必要が無い疾患と関連するか又はそれに続発する関節炎を含む。最も重要な関節症は変形性関節症であり、特発性であるか、原発性起源であるか、又は他の疾患に続発するものであって良い。
【0059】
本発明に係る化合物は、一般式(Ib)を有する。
【0060】
【化4】

【0061】
式中、
Rは、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール、アリール低級アルキル、ヘテロ環、ヘテロ環低級アルキル、低級アルキルへテロ環、低級シクロアルキル、又は低級シクロアルキル低級アルキルであって、Rは、少なくとも1つの電子吸引基及び/又は少なくとも1つの電子供与基で置換されているか又は非置換であって良い;
は、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール低級アルキル、アリール、ヘテロ環低級アルキル、低級アルキルへテロ環、ヘテロ環、低級シクロアルキル、又は低級シクロアルキル低級アルキルであって、各々少なくとも1つの電子供与基及び/又は電子吸引基で置換されているか又は非置換であって良い;並びに
及びRは、独立して、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール低級アルキル、アリール、ハロ、ヘテロ環、ヘテロ環低級アルキル、低級アルキルへテロ環、低級シクロアルキル、低級シクロアルキル低級アルキル、又はZ−Yであって、R及びRは、少なくとも1つの電子吸引基及び/又は電子供与基で置換されているか又は非置換であって良い;
Zは、O、S、S(O)、NR、NR’、PR、又は化学結合である;
Yは、水素、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、ハロ、ヘテロ環、ヘテロ環低級アルキル、又は低級アルキルへテロ環であって、Yは、少なくとも1つの電子供与基及び/又は少なくとも1つの電子吸引基で置換されているか又は非置換であって良いが、Yがハロである際は、Zは化学結合であるか、あるいは
ZYが一緒になって、NR4NR57, NR4OR5, ONR47, OPR45, PR4OR5, SNR47, NR4SR7, SPR45, PR4SR7, NR4PR56, PR4NR57、又は N+567、あるいは下式のものである。
【0062】
【化5】

【0063】
’は、水素、低級アルキル、低級アルケニル、又は低級アルキニルであって、少なくとも1つの電子吸引基及び/又は少なくとも1つの電子供与基で置換されているか又は非置換であって良い;
、R、及びRは、独立して、水素、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル、低級アルケニル、又は低級アルキニルであって、R、R、及びRは、独立して、少なくとも1つの電子吸引基及び/又は少なくとも1つの電子供与基で置換されているか又は非置換であって良い;
は、R、COOR、又はCORであって、Rは、少なくとも1つの電子吸引基及び/又は少なくとも1つの電子供与基で置換されているか又は非置換であって良い;
は、水素、低級アルキル、又はアリール低級アルキルであって、前記アリール又はアルキル基は、少なくとも1つの電子吸引基及び/又は少なくとも1つの電子供与基で置換されているか又は非置換であって良い;
nは1から4であり;並びに
aは1から3である。
【0064】
好ましくは、本発明に係る化合物は式(IIb)を有する。
【0065】
【化6】

【0066】
式中、
Arはアリール、特にフェノールであって、少なくとも1つのハロで置換されているか又は非置換であって良く;Rは−CH−Q[式中、Qは低級アルコキシ]であり:並びにRは低級アルキル、特にメチルである。
【0067】
本発明は、筋肉痛、特に病理疾患と関連し及び/又はそれによって引き起こされる筋肉痛、並びに/あるいは筋肉痛と関連し及び/又はそれによって引き起こされる疾患の予防、緩和、及び/又は治療に有用な、式(Ib)及び/又は式(IIb)の化合物を含む医薬組成物にも関する。
【0068】
単独又は他の基と組み合わせて使用される際の「低級アルキル」は、1から6の炭素原子、特に1から3の炭素原子を含有する低級アルキルであって、直鎖又は分枝鎖であって良い。これらの基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、アミル、及びヘキシルなどを含む。
【0069】
「低級アルコキシ」基は、1から6の炭素原子、特に1から3の炭素原子を含有する低級アルコキシであって、直鎖又は分枝鎖であって良い。これらの基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、及びヘキソキシなどを含む。
【0070】
「アリール低級アルキル」は、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルイソプロピル、フェニルブチル、ジフェニルメチル、1,1−ジフェニルエチル、及び1,2−ジフェニルエチル等を含む。
【0071】
用語「アリール」は、単独又は組み合わせて使用する際は、6から18の炭素原子を環に含有し、全体として25以下の炭素原子を含有する芳香族基を示し、多核芳香族を含む。これらのアリール基は、単環、二環、三環、又は多環式であって良く、融合環である。本明細書で使用する多核芳香族化合物は、10から18の炭素原子を環に含有し、全体として25以下の炭素原子を含有する二環式及び三環式融合芳香環系を意味することを包含する。アリール基は、フェニル及び多核芳香族、例えば、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、及びアズレニルなどを含む。アリール基は、フェロセニルのような基も含む。アリール基は、上述の電子吸引基及び/又は電子供与基で多置換されているか又は非置換であって良い。
【0072】
用語「モノ置換アミノ」は、単独又は他の用語との組み合わせにおいて、水素基の1つが非水素置換基に置き換わっているアミノ置換基を意味する。用語「二置換アミノ」は、単独又は他の用語との組み合わせにおいて、双方の水素原子が、同一又は異なるものであって良い非水素置換基に置き換わったアミノ置換基を意味する。モノ置換アミノ置換基の例は、N−アルキルアミノ基である。二置換アミノ置換基の例は、N−アルコキシ−N−アルキルアミノ基である。
【0073】
「低級アルケニル」は、2から6の炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を含有するアルケニル基である。これらの基は直鎖又は分枝鎖であり、Z又はE型にあって良い。その様な基は、ビニル、プロペニル、1−ブテニル、イソブテニル、2−ブテニル、1−ペンテニル、(Z)−2−ペンテニル、(E)−2−ペンテニル、(Z)−4−メチル−2−ペンテニル、(E)−4−メチル−2−ペンテニル、及びペンタジエニル、例えば、1,3又は2,4−ペンタジエニルなどであって良い。
【0074】
用語「低級アルキニル」は、2から6の炭素原子を含有し、直鎖並びに分枝鎖であって良いアルキニル基である。「低級アルキニル」は、エチニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3−メチル−1−ペンチニル、3−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、及び3−ヘキシニルなどのような基を含む。
【0075】
用語「低級シクロアルキル」は、単独又は組み合わせて使用される際に、3から18の炭素原子を環に含有し、全体で25以下の炭素原子を含有するシクロアルキル基である。前記シクロアルキル基は、単環、二環、三環、又は多環式であって良く、融合環である。前記シクロアルキルは、完全に飽和しているか又は部分的に飽和していて良い。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロオクテニル、シクロヘプテニル、デカリニル、ヒドロインダニル、インダニル、フェンチル、ピネニル(pinenyl)、及びアダマンチルなどが含まれる。シクロアルキルは、シス又はトランス型を含む。シクロアルキル基は、上述の電子吸引基及び/又は電子供与基でモノ又は多置換されているか又は非置換であって良い。さらに、前記置換基は、架橋二環式系においてエンド又はエキソ位のいずれかであって良い。
【0076】
用語「電子吸引及び電子供与」は、水素原子が分子の同じ位置を占めている場合の水素に相対的な各々電子を吸引又は供与する置換基の機能を示す。これらの用語は当業者によく知られており、Advanced Organic Chemistry by J.March,John Wiley and Sons,New York,NY,pp.16−18(1985)に開示されており、その開示は参照によって本明細書に取り込む。電子吸引基は、ブロモ、フルオロ、クロロ、及びヨードなどを含むハロ;ニトロ、カルボキシ、低級アルケニル、低級アルキニル、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、四級アンモニウム、ハロアルキル、例えば、トリフルオロメチル、アリール低級アルカノイル、及びカルボアルコキシなどを含む。電子供与基は、水素、メトキシ及びエトキシなどを含む低級アルコキシ、低級アルキル、例えば、メチル及びエチルなど;アミノ、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、アリールオキシ、例えば、フェノキシ、メルカプト、低級アルキルチオ、低級アルキルメルカプト、及びジスルフィド(低級アルキルジチオ)などのような基を含む。当業者は、上述の置換基の幾つかは、異なる化学的条件下において電子供与又は電子吸引であると解されて良いことを認めるであろう。さらに、本発明は、上述の群から選択される置換基の任意の組み合わせを企図する。
【0077】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードなどを含む。
【0078】
用語「カルボアルコキシ」は−CO−O−アルキルであって、式中のアルキルは上述の低級アルキルであって良い。
【0079】
接頭句「ハロ」は、接頭句を結合させた置換基が、ハロゲン基から独立に選択される一つ又は複数のもので置換されていることを示す。例えば、ハロアルキルは、少なくとも1つの水素基がハロゲン基で置換されているアルキル置換基を意味する。ハロアルキル置換基の例は、クロロメチル、1−ブロモエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、及び1,1,1−トリフルオロエチルなどを含む。更に例示すると、「ハロアルコキシ」は、少なくとも1つの水素基がハロゲン基によって置換されているアルコキシ置換基を意味する。ハロアルコキシ置換基は、クロロメトキシ、1−ブロモエトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ(「パーフルオロメチルオキシ」としても知られている)、及び1,1,1−トリフルオロエトキシなどを含む。置換基が2つ以上のハロゲン基で置換されている場合は、他に示さない限りにおいて、それらのハロゲン基は同一又は異なるものであって良いことを認識すべきである。
【0080】
用語「アシル」は、1から6の炭素原子を含有する低級アルカノイルを含み、直鎖又は分枝鎖であって良い。これらの基は、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、及びヘキサノイルを含む。
【0081】
本明細書で使用するヘテロ環基は、少なくとも1つの硫黄、窒素、又は酸素の環原子を含有するが、環に複数の前記原子を含んで良い。本発明によって意図されるヘテロ環原子は、ヘテロ芳香族、並びに飽和及び部分的に飽和のヘテロ環化合物を含む。これらのヘテロ環は、単環、二環、三環、又は多環式であって良く、融合環である。それらは、好ましくは、18以下の環原子を含有し、全体で17以下の炭素原子を環に含有し、全体で25以下の炭素原子を含有して良い。前記へテロ環は、いわゆるベンゾへテロ環を含むことも意図される。代表的なヘテロ環は、フリル、チエニル、ピラゾリル、ピロリル、メチルピロリル、イミダゾリル、インドリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピペリジル、ピロリニル、ピペラジニル、キノリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキノリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、モルホリニル、ベンゾキサゾリル、テトラヒドロフリル、ピラニル、インダゾリル、プリニル、インドリニル、ピラゾリンジニル、イミダゾリニル、イミダゾリンジニル、ピロリジニル、フラザニル、N−メチルインドリル、メチルフリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリジル、エポキシ、アジリジノ、オキセタニル、アゼチジニル、並びに窒素含有へテロ環のNオキシド、例えば、ピリジル、ピラジニル、及びピリミジニルのNオキシドなどを含む。ヘテロ環基は、電子吸引基及び/又は電子供与基で一置換又は多置換されているかあるいは非置換であって良い。
【0082】
好ましいヘテロ環は、チエニル、フリル、ピロリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、メチルピロリル、モルホニリニル、ピリジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、又はピリダジニルである。好ましいヘテロ環は、5又は6員のヘテロ環化合物である。特に好ましいヘテロ環は、フリル、ピリジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、又はピリダジニルである。最も好ましいヘテロ環はフリル及びピリジルである。
【0083】
好ましい化合物は、nが1であるものであるが、ジ(n=2)、トリ(n=3)、及びテトラペプチド(n=4)も本発明の範囲内であることが意図される。
【0084】
他の好ましい実施態様では、ヘテロ環は、フリル、1から3の炭素原子を含有する少なくとも1つの低級アルキル基、例えば、メチルによって置換されたフリル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、オキサゾリル、及びチアゾリル、より好ましくは、フリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、オキサゾリル、及びチアゾリル、最も好ましくはフリル、ピリジル、ピリミジニル、及びオキサゾリルから選択される。
【0085】
Rの好ましいものは、アリール低級アルキル、特にベンジルであって、特にそのフェニル環が電子供与基及び/又は電子吸引基、例えばハロ(例えば、F)で置換されているか又は非置換である。
【0086】
好ましいRは、H又は低級アルキルである。最も好ましいR基は、メチルである。
【0087】
好ましい電子供与置換基及び/又は電子吸引置換基は、ハロ、ニトロ、アルカノイル、ホルミル、アリールアルカノイル、アリーロイル、カルボキシル、カルボアルコキシ、カルボキシアミド、シアノ、スルホニル、スルホキシド、ヘテロ環、グアニジン、四級アンモニウム、低級アルケニル、低級アルキニル、スルホニウム塩、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルキル、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ(低級アルキル)アミノ、アミノ低級アルキル、メルカプト、メルカプトアルキル、アルキルチオ、及びアルキルジチオである。用語「スルフィド」は、メルカプト、メルカプトアルキル、及びアルキルチオを包含し、用語ジスルフィドはアルキルジチオを包含する。特に好ましい電子供与基及び/又は電子吸引基は、ハロ又は低級アルコキシであり、最も好ましくはフルオロ又はメトキシである。これらの好ましい置換基は、式(Ib)及び/又は(IIb)中の基のいずれか1つ、例えば、本明細書に規定のR、R、R、R、R、R、R、R’、R、R、及び/又はR50に存在して良い。
【0088】
及びRに表わされるZY基は、ヒドロキシ、アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、アリールオキシ、例えば、フェノキシ;チオアルコキシ、例えば、チオメトキシ、チオエトキシ;チオアリールオキシ、例えば、チオフェノキシ;アミノ;アルキルアミノ、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ;アリールアミノ、例えば、アニリノ;低級ジアルキルアミノ、例えば、ジメチルアミノ;トリアルキルアンモニウム塩、ヒドラジノ;アルキルヒドラジノ及びアリールヒドラジノ、例えば、N−メチルヒドラジノ、N−フェニルヒドラジノ、カルボアルコキシヒドラジノ、アラルコキシカルボニルヒドラジノ、アリールオキシカルボニルヒドラジノ、ヒドロキシルアミノ、例えば、N−ヒドロキシアミノ(−NH−OH)、低級アルコキシアミノ[(NHOR18)式中、R18は低級アルキルである]、N−低級アルキルヒドロキシルアミノ[(NR18)OH、式中、R18は低級アルキルである]、N−低級アルキル−O−低級アルキルヒドロキシアミノ、すなわち、[(NR18)OR19、式中、R18及びR19は、独立して低級アルキルである]、及びo−ヒドロキシルアミノ(−O−NH);アルキルアミド、例えば、アセトアミド;トリフルオロアセトアミド;低級アルコキシアミノ、例えば、NH(OCH);並びにヘテロ環アミノ、例えば、ピラゾイルアミノを含む。
【0089】
及びRに表わされる好ましいヘテロ環基は、下式の単環式の5又は6員のヘテロ環部分である。
【0090】
【化7】

【0091】
又は、R及びRに表わされる好ましいヘテロ環基は、nが0又は1である、上記のものと対応する部分的又は完全に飽和した形態である。
上式中、
50は、H、電子吸引基、又は電子供与基である;
A、E、L、J、及びGは、独立して、CH、又はN、O、Sからなる群から選択されるヘテロ原子であるが、nが0である場合は、Gは、CHであるか又はNH、O、及びSからなる群から選択されるヘテロ原子であり、A、E、L、J、及びGの最大で2つがヘテロ原子である。
【0092】
nが0である場合は、上記へテロ芳香族部分は5員環であり、nが1である場合は、ヘテロ環部分は6員の単環式へテロ環部分である。好ましいヘテロ環部分は、単環式の上述のヘテロ環である。
【0093】
上に示した環が窒素環原子を含有する場合は、Nオキシド形態が本発明の範囲内であることも意図される。
【0094】
又はRが上式のヘテロ環である際は、環の炭素原子によって主鎖に結合して良い。nが0である際は、R又はRは窒素環原子によって主鎖に結合しても良い。
【0095】
他の好ましいR及びR部分は、水素、アリール、例えば、フェニル、アリール、アルキル、例えば、ベンジル、及びアルキルである。
【0096】
及びRの好ましい基は、電子供与基及び/又は電子吸引基で一置換又は多置換されているか又は非置換であって良いことが理解されるべきである。R及びRが、独立して、水素、低級アルキル、電子吸引基及び/又は電子供与基で置換されているか又は非置換の低級アルキル、例えば、低級アルコキシ(例えば、メトキシ及びエトキシなど)、N−ヒドロキシアミノ、N−低級アルキルヒドロキシアミノ、N−低級アルキル−O−低級アルキル、並びにアルキルヒドロキシアミノであることが好ましい。
【0097】
及びRの1つが水素である事が好ましい。
【0098】
nが1である事が好ましい。
【0099】
n=1でありR及びRの1つが水素であることが更に好ましい。この実施態様では、Rが水素であり、Rが低級アルキルであるか又はZYであることが特に好ましく;
Zは、O、NR、又はPRであり、;Yは水素又は低級アルキルであり;ZYは、NRNR、NROR、ONR、又は下式のものである。
【0100】
【化8】

【0101】
他の特に好ましい実施態様では、n=1、Rは水素、並びにRは電子供与基又は電子吸引基で置換されているか又は非置換であって良い低級アルキル、NROR、又はONRである。
【0102】
更に他の特に好ましい実施態様では、n=1、Rは水素、並びにRはヒドロキシ又は低級アルコキシで置換されているか又は非置換であって良い低級アルキル、NROR、又はONRであって、R、R、及びRは、独立して、水素又は低級アルキルであり、Rはアリール低級アルキルであって、そのアリール基は電子吸引基で置換されているか又は非置換であって良く、Rは低級アルキルである。この実施態様では、アリールがフェニルであり、ハロで置換されているか又は非置換であることが最も好ましい。
【0103】
が水素、並びにRが、水素、少なくとも1つの電子供与基又は電子吸引基で置換されているか又は非置換のアルキル基、あるいはZYである事が好ましい。この好ましい実施態様では、Rが水素、アルキル基、例えば、メチルであって、電子供与基で置換されているか又は非置換のものであるか、あるいはNROR又はONRであって、R、R、及びRは、独立して、水素又は低級アルキルであることが更に好ましい。電子供与基は低級アルコキシ、特にメトキシ又はエトキシであることが好ましい。
【0104】
及びRが、独立して、水素、低級アルキル、又はZYであり;
Zが、O、NR、又はPRであり;
Yが、水素又は低級アルキルであるか、あるいは
ZYが、NR、NROR、ONR、又は下式のものである事が好ましい。
【0105】
【化9】

【0106】
Rがアリール低級アルキルである事も好ましい。Rについて最も好ましいアリールはフェニルである。最も好ましいR基はベンジルである。好ましい実施態様では、アリール基は、電子供与基又は電子吸引基で置換されているか又は非置換であって良い。R中のアリール環が置換されている場合は、特にアリール環上において電子吸引基で置換されていることが最も好ましい。Rについての最も好ましい電子吸引基はハロ、特にフルオロである。
【0107】
好ましいRは低級アルキル、特にメチルである。
【0108】
Rがアリール低級アルキルであり、Rが低級アルキルである事がより好ましい。
【0109】
更に好ましい化合物は、nが1であり;Rが水素であり;Rが水素、低級アルキル基、特に電子供与基又は電子吸引基によって置換されているメチル、あるいはZY基であり;Rがアリール、アリール低級アルキル、例えば、ベンジルであり、そのアリール基が電子供与基又は電子吸引基で置換されているか又は非置換であり、あるいは、Rが低級アルキルである式(Ib)の化合物である。この実施態様では、Rが水素、電子供与基、例えば低級アルコキシ(例えば、メトキシ及びエトキシなど)によって置換されて良い低級アルキル基、特にメチル、NROR、又はONR(これらの基は上述のものである)であることが更に好ましい。
【0110】
使用される最も好ましい化合物は、式(IIb)のものである。
【0111】
【化10】

【0112】
式中、
Arは、アリール、特にフェニルであって、少なくとも1つの電子供与基又は電子吸引基、特にハロで置換されているか又は非置換である;
は、低級アルキル、特に1から3の炭素原子を含有するものである;並びに
は、本明細書に規定しているものであるが、特に水素、低級アルキルであって、少なくとも1つの電子供与基又は電子吸引基によって置換されているか又は非置換のもの、あるいはZYである。この実施態様では、Rが、水素、電子供与基によって置換されているか又は非置換のアルキル基、NROR、又はONRであることが更に好ましい。Rが、CH−Q[Qが低級アルキル、特に1から3の炭素原子を含有するもの];NR又はONR[Rが水素又は1から3の炭素原子を含有するアルキルであり、Rが水素又は1から3の炭素原子を含有する水素又はアルキルであり、並びにRが水素又は1から3の炭素原子を含有するアルキルである]であることが最も好ましい。
【0113】
がCHである事が最も好ましい。最も好ましいRがCH−Qであって、Zがメトキシである事が最も好ましい。
【0114】
最も好ましいアリールはフェニルである。最も好ましいハロはフルオロである。
【0115】
更に他の好ましい実施態様は、n=1であり、Rが1から6の炭素原子、好ましくは1から3の炭素原子を含有する低級アルキル、特にメチルであり;RがHであり、及び式(Ib)中のRが、非置換又は置換ベンジル、特にハロ置換ベンジルであり、あるいは式(IIb)中のArが、非置換又は置換フェニル、特にハロ置換フェニルであることを示す。この組み合わせでは、Rは本明細書に規定したものである。
【0116】
他の態様では、本発明の化合物、特に式(Ib)の化合物は、式(III)によって表わされる。
【0117】
【化11】

【0118】
又は、式(Ib)の化合物は、式(III)によって表わされる化合物の製薬学的に許容される塩であって、
上式中、
は、水素、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、四級アンモニウム、ハロアルキル、アリールアルカノイル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルメルカプト、及びジスルフィドからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基である;
は、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アリール、N−アルコキシ−N−アルキルアミノ、及びN−アルコキシアミノからなる群から選択される;並びに
はアルキルである。
【0119】
式(III)の化合物中のアルキル、アルコキシ、アルケニル、及びアルキニル基は、低級アルキル、アルコキシ、アルケニル、及びアルキニル基であって、6以下、より典型的には3以下の炭素原子を有する。
【0120】
特定の態様では、式(III)の化合物のR置換基は、水素及びハロ(とりわけフルオロ)置換基から独立に選択される。
【0121】
特定の態様では、式(III)の化合物中のRは、アルコキシアルキル、フェニル、N−アルコキシ−N−アルキルアミノ、又はN−アルコキシアミノである。
【0122】
特定の態様では、式(III)の化合物中のRはC1−3アルキルである。
【0123】
更に特定の態様では、1つのR置換基がフルオロであり、他のものが水素であり;Rが、メトキシメチル、フェニル、N−メトキシ−N−メチルアミノ、及びN−メトキシアミノからなる群から選択され;並びにRがメチルである。
【0124】
最も好ましい化合物は、
(R)−2−アセトアミド−N−ベンジル−3−メトキシ−プロピオンアミド(ラコサミド);
(R)−2−アセトアミド−N−ベンジル−3−エトキシ−プロピオンアミド;
O−メチル−N−アセチル−D−セリン−m−フルオロベンジル−アミド;
O−メチル−N−アセチル−D−セリン−p−フルオロベンジル−アミド;
N−アセチル−D−フェニルグリシンベンジルアミド;
D−1,2−(N,O−ジメチルヒドロキシルアミノ)−2−アセトアミド酢酸ベンジルアミド;
D−1,2−(O−メチルヒドロキシルアミノ)−2−アセトアミド酢酸ベンジルアミド
を含む。
【0125】
、R、R、R、及びnのマーカッシュ群の各種の組み合わせ及び交換が、本発明の範囲内に意図されることが理解されるべきである。更に、本発明は、R、R、R、n、及びRのマーカッシュ群の1つ又は複数の要素を含有する化合物及び組成物並びにそれらの組み合わせも包含する。かくして、例えば、本発明は、Rが、nの各々の値に関して、R、R、及びRの置換基のいずれか又は全てとの組み合わせにおいて、上述の置換基の1つ又は複数であって良いことを意図する。
【0126】
本発明で使用される化合物は、1つ又は複数の不斉炭素を含有して良く、ラセミ体及び任意に活性型で存在して良い。各不斉炭素の周囲の配置は、D又はL型のいずれかであって良い。キラル炭素原子の周囲の配置が、カーン-インゴルド-プレローグ順位則においてR又はSとして記載されて良いことは当該技術分野において良く知られている。各種のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ混合物、及びエナンチオマー、ジアステレオマー、又はそれらの双方の混合物を含む、各不斉炭素の周囲の各種の配置の全てが本発明によって意図される。
【0127】
主鎖では、R及びR基が結合した炭素原子に不斉性が存在する。nが1の際は、本発明の化合物は下式のものである。
【0128】
【化12】

【0129】
式中、R、R、R、R、R、R、R、R’、R、R、R50、Z、及びYは上述のものである。
【0130】
本明細書で使用する用語「配置」は、たとえ他のキラル中心が分子内に存在しても、R及びRが結合している炭素原子の周囲の配置を示す。したがって、D又はLのような特定の配置を示す際は、R及びRが結合している炭素原子におけるD又はL立体異性体を意味すると理解されるべきである。
【0131】
しかしながら、化合物中に存在する場合は、他のキラル中心において可能性があるエナンチオマー及びジアステレオマーも含む。
【0132】
本発明の化合物は、全ての光学異性体を対象とするものであり、すなわち、本発明の化合物は、(R及びRが結合している炭素原子において)L立体異性体又はD立体異性体のいずれかである。これらの立体異性体は、L及びD立体異性体の混合物、例えば、ラセミ混合物において認められて良い。D立体異性体が好ましい。
【0133】
更に好ましくは、R配置の式(IV)の化合物、好ましくは実質的にエナンチオピュアなものであり、置換基Rは少なくとも1つのハロ基で置換されておらず、RはCH−Qであり、そのQは1から3の炭素原子を含有する低級アルコキシであり、Rはメチルである。好ましくは、Rは少なくとも1つのフルオロ基であるハロ基で置換されているベンジル又は非置換のベンジルである。
【0134】
本発明の「実質的にエナンチオピュアな」化合物は、少なくとも88%、好ましくは90%、更に好ましくは少なくとも95、96、97、98、又は99%のエナンチオマーン純度を有して良い。
【0135】
置換基に依存して、本発明の化合物は付加塩の形態であっても良い。これらの形態の全てが本発明の範囲内に意図され、立体異性型の混合物を含む。
【0136】
使用する化合物の製造方法は、参照によって双方の内容を本明細書に取り込む米国特許第5,378,729号及び第5,773,475号に開示されている。
【0137】
本発明で使用する化合物は、式(Ib)及び/又は(IIb)において示したようなものとして有用であるか、又は遊離のアミノ基の存在による塩基性の性質の観点から塩の形態で使用しても良い。かくして、式(Ib)及び/又は(IIb)の化合物は、製薬学的に許容される酸を含む広範な酸、有機酸及び無機酸との塩を形成する。治療上許容される酸との塩は、言うまでも無く、水溶解度の向上が最も有利である製剤の調製において有用なものである。
【0138】
これらの製薬学的に許容される塩は、治療上の効力も有する。これらの塩は、無機酸、例えば、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、及び硫酸の塩、並びに、有機酸、例えば、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、過塩素酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、アリール硫酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)、リン酸、及びマロン酸などの塩を含む。
【0139】
本発明は、少なくとも1つの式(Ib)及び/又は(IIb)の化合物を投与する工程を含む、ヒトを含む哺乳動物において上述の疾患又は病気を予防、緩和、及び/又は治療するための方法にも関する。
【0140】
好ましくは、本発明で使用する化合物は治療上有効量で使用される。
【0141】
医療従事者は、最も適切な本発明の治療剤の用量を決定し、選択する投与形態及び特定の化合物に伴って変えるであろう。さらに、前記用量は、治療する患者、患者の年齢、治療する疾患のタイプに伴って変化するであろう。医療従事者は、一般的に、化合物の最適用量よりも実質的に少ない用量で治療を開始し、その状況において最適な効果に達するまで少量ずつ用量を増加することを望むであろう。組成物が経口投与される際は、より大量の活性剤が、より少量で非経口的に与えたものと同じ効果を得るために必要とされる。前記化合物は、比較する治療剤と同様に有用であり、用量レベルは、他の治療剤で一般的に使用されているものと同程度である。
【0142】
好ましい実施態様では、本発明の化合物は、約1mgから約100mg/kg(体重)/日の範囲の量、更に好ましくは約1mgから約10mg/kg(体重)/日の範囲の量で投与される。この投与計画は医療従事者によって調節され、最適な治療応答が得られて良い。治療を必要とする患者は、少なくとも50mg/日、少なくとも200mg/日、更に好ましくは少なくとも300mg/日、最も好ましくは少なくとも400mg/日の本発明の化合物の用量で治療されて良い。一般的には、治療を必要とする患者は、最大で6g/日、更に好ましくは最大で1g/日、最も好ましくは最大で600mg/日の用量で治療されて良い。しかしながら、ある場合においては、より高い又は低い用量が必要とされて良い。
【0143】
他の好ましい実施態様では、日用量が、所定の日用量に達するまで増加され、更なる治療の間に亘って維持される。
【0144】
更に他の好ましい実施態様では、複数に分割した用量が一日に投与されて良い。例えば、一日に三回投与されて良く、好ましくは一日に二回投与される。一日一回投与することが更に好ましい。
【0145】
更に別の好ましい実施態様では、大量の本発明の化合物を投与して、0.1から15μg/ml(トラフ)及び5から18.5μg/ml(ピーク)の血清濃度(多数の治療した対象の平均として算出される)を生じさせて良い。
【0146】
式(Ib)及び/又は(IIb)の化合物は、簡便な様式、例えば、経口、静脈内(水溶性である場合)、筋肉内、鞘内、又は皮下の経路で投与されて良い。経口及び/又は静脈内投与が好ましい。
【0147】
本発明の医薬組成物が、上述の治療計画、特に上述の本発明の実施態様で特定した上述の血漿濃度を与える上述の用量、投与期間、及び/又は投与経路で治療するために調製されて良い。
【0148】
他の好ましい実施態様では、治療の必要があるヒトを含む哺乳動物の治療のための上述の本発明の方法は、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛、特に非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の特異的な発現、例えば、線維筋痛症、顔面筋疼痛、及び/又は変形性関節症において生じる、筋肉の痛覚過敏及び/又は異痛の予防、緩和、及び/又は治療、特に全身治療のための更に別の活性剤の投与と組み合わせて、本発明の化合物を投与する工程を含む。本発明の化合物及び更に別の活性剤が共に、すなわち単回用量形態で投与されて良く、あるいは別々に、すなわち別々の投与形態で投与されて良い。かくして、本発明の医薬組成物は、上述の本発明の化合物を含んで良く、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛、特に非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の特異的な発現、例えば、線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群、背痛、及び/又は変形性関節症において生じる筋肉の痛覚過敏及び/又は異痛の予防、緩和、及び/又は治療、特に全身治療のための更に別の薬剤も含んで良い。前記医薬組成物は単回投与形態を含んで良く、又は上述の本発明の化合物を含む第一の組成物と更に別の活性剤を含む第二の組成物とを含む別々の投与形態を含んで良い。
【0149】
更に別の好ましい実施態様では、本発明の方法は、本発明の化合物を投与する工程を、非炎症性関節痛の予防、緩和、及び/又は治療のための更に別の活性剤を投与する工程と組み合わせて含む。本発明の医薬組成物は、上述の本発明の化合物を含んで良く、変形性関節症と関連し、及び/又はそれによって引き起こされる非炎症性関節痛の予防、緩和、及び/又は治療のための更に別の活性剤を含んで良い。
【0150】
上記の組み合わせの2つ以上の活性剤は、同時に対象に投与するための1つの医薬製剤(1つの投与形態)、又は実質的に同時に又は異なる時間若しくは頻度で、例えば連続的に投与するための2つ以上の異なる製剤(別々の投与形態)に製剤されて良い。2つの異なる製剤は、同じ経路又は異なる経路で投与するために製剤されて良い。
【0151】
別々の投与形態は、任意に1つの容器又は1つの外側の容器内の多数の容器に共包装されて良く、別々の包装において一緒に提供されて良い(「共通の提供」)。共包装又は共通の提供の例としては、第一の容器に式(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物を含む、第二の容器に第二の活性剤又は少なくとも1つの抗変形性関節症剤を含むことが意図されるキットである。他の例では、式(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物及び第二の化合物若しくは抗変形性関節症剤は別々に包装され、互いに独立して販売されるが、本発明に係る使用のために共に販売又は宣伝する。別々の投与形態は、本発明の係る使用のために、別々且つ独立に対象に提供されても良い。
【0152】
同一又は異なるものであって良く、例えば、即時放出投与形態、調節放出投与形態、デポー形態であって良い投与形態に依存して、式(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物及び第二の化合物又は抗変形性関節症剤が、同じ又は異なる計画、例えば、日、週、又は月に基づいて投与されて良い。
【0153】
用語「治療上の組み合わせ」は、一緒又は別々に対象に投与される際に、前記対象に治療効果をもたらす複数の薬剤を示す。その様な投与は、「併用療法」、「共療法」、「補助療法」、又は「追加療法」と称される。例えば、1つの薬剤は他の治療効果を強化若しくは向上してよく、又は他の副作用を低減し、あるいは一つ又は複数の薬剤が単独で使用される際よりも低用量で効果的に投与されて良く、又は単独で使用される際よりも大きい治療上の利益を提供して良く、又は疾患又は病気の異なる態様、症状、若しくは病因を相補的に解決して良い。
【0154】
非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛、特に非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の特異的な発現の予防、緩和、及び/又は治療のための更に別の活性剤は、式(Ib)及び/又は(IIb)とは異なる化合物、特に、第1世代の鎮痙剤、例えば、カルバマゼピン及びフェニトイン、並びに第二世代の鎮痙剤、例えば、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリジン、及びレベチラセタムから選択される鎮痙剤であって良い。
【0155】
非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛を予防、緩和、及び/又は治療する本発明のための更に別の活性剤は、非炎症性関節痛の予防、緩和、及び/又は治療のための更に別の活性剤として使用されても良い。
【0156】
本発明の化合物は、上述の医薬組成物の調製のために使用されて良い。
【0157】
非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の予防、緩和、及び/又は治療のための更に別の活性剤は、少なくとも1つの抗変形性関節症剤であって良く、すなわち、さらに別の活性剤は、変形性関節症又はその任意の態様、症状、若しくはその基礎を成す原因の予防、緩和、及び/又は治療のために効果的なものであって良い。本発明では、少なくとも1つの抗変形性関節症剤は、式(Ib)及び/又は(IIb)の化合物以外、特に鎮痙剤以外の薬剤であって良い。
【0158】
1つの実施態様では、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の予防、緩和、及び/又は治療のための更に別の活性剤、特に抗変形性関節症剤が疼痛の治療、すなわち鎮痛に効果的である。適切な鎮痛剤は、オピオイド及び非オピオイド性鎮痛剤、並びに一定の非炎症性薬剤(下記参照)を含む。
【0159】
本明細書で示す、変形性関節症の疼痛は、非炎症性及び炎症性成分の双方を含んで良い。したがって、他の実施態様では、更に別の活性剤、特に抗変形性関節症剤は、炎症及び/又はそれに関連する疼痛を治療するために効果的なものである。適切な抗炎症剤は、ステロイド性及び非ステロイド性抗炎症剤を含む。非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)は、伝統的なNSAID及びシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)選択的インヒビターを含む。
【0160】
式(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物、例えば、ラコサミドとの併用療法又は補助療法において投与するための更に別の活性剤、特に抗変形性関節症剤として有用なオピオイド及び非オピオイド性鎮痛剤の非制限的な例は、アセトアミノフェン、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトロファノール、クロニタゼン、コデイン、シクラゾシン、デソモルフィン、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、デゾシン、ジアムプロミド、ジアモルホン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアムブテン、エチルモルフィン、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコデイン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レバロルファン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタミゾール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルフィン、ミロフィン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ノルモルフィン、ノルピパノン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェナゾシン、フェノモルファン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、トラマドール、NO−ナプロキセン、NCX−701、ALGRX−4975、並びにそれらの組み合わせを含む。
【0161】
式(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物、例えば、ラコサミドとの併用療法又は補充療法において投与するための更に別の活性剤として、特に抗変形性関節症として有用なものであり得るステロイド性抗炎症剤の非制限的な例は、アクロメタゾン、アムシノニド、ベタメタゾン、17−バレレート、クロベタゾル、クロベタゾルプロピオネート、クロコルトロン、コルチゾン、デヒドロテストステロン、デオキシコルチコステロン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン21−イソニコチネート、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、フルオロメトロン、フルランドレノリド、フルチカゾン、ハルシノニド、ハロベタゾル、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、ヒドロコルチゾンシピオネート、ヒドロコルチゾンへミスクシネート、ヒドロコルチゾン21−リジネート、ヒドロコルチゾンナトリウムスクシネート、イソフルプレドン、イソフルプレドンアセテート、メチルプレドニソロン、メチルプレドニソロンアセテート、メチルプレドニソロンナトリウムスクシネート、メチルプレドニソロンスレプタネート、モメタゾン、プレドニカルベート、プレドニソロン、プレドニソロンアセテート、プレドニソロンヘミスクシネート、プレドニソロンナトリウムホスフェート、プレドニソロンナトリウムスクシネート、プレドニソロンバレレート−アセテート、プレドニソン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、及びそれらの組み合わせを含む。
【0162】
式(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物、例えば、ラコサミドとの併用療法又は補充療法において投与するための更に別の活性剤、特に抗変形性関節症剤として有用であり得るNSAID及びCOX−2選択的インヒビターの非制限的な例は、サリチル酸誘導体(例えば、サリチル酸、アセチルサリチル酸、メチルサリチレート、ジフルニサル、オルサラジン、サルサレート、及びスルファサラジン)、インドール及びインデン酢酸(例えば、インドメタシン、エトドラク、及びスリンダク)、フェナメート(例えば、エトフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、及びトルフェナム酸)、ヘテロアリール酢酸(例えば、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナク、イソキセパク、ケトロラク、オキシピナク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシン、及びゾメピラク)、アリール酢酸及びプロピオン酸誘導体(例えば、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシ酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、及びチオキサプロフェン)、エノール酸(例えば、オキシカム誘導体であるアンピロキシカム、シンノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、ピロキシカム、スドキシカム及びテノキシカム、並びにピラゾロン誘導体であるアミノピリン、アンチピリン、アパゾン、ジピロン、オキシフェンブタゾン、及びフェニルブタゾン)、アルカノン(例えば、ナブメトン)、ニメスリド、プロキアゾン、MX−1094、リコフェロン、並びにそれらの組み合わせを含む。
【0163】
更に別の実施態様では、更に別の活性剤、特に抗変形性関節症剤は、COX−2選択的インヒビターの種類の抗炎症剤であり、例えば、セレコキシブ、デラコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−シクロペンテン−1−オン、(S)−6,8−ジクロロ−2−(トリフルオロメチル)−2H−1−ベンゾピラン−3−カルボン酸、2−(3,4−ジフルオロフェニル)−4−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブトキシ)−5−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−(2H)−ピリダジノン、4−[5−(4−フルオロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミド、4−[5−(フェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミド、PAC−10549、シミコキシブ、GW−406381、LAS−34475、CS−502、並びにそれらの組み合わせから選択される。
【0164】
他の実施態様では、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の予防、緩和、及び/又は治療のための更に別の活性剤、特に抗変形性関節症剤は少なくとも1つの抗鬱剤である。その様な併用療法又は補助療法は、ある状況においては、式(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物、例えば、ラコサミド又は抗鬱剤を単独で使用する単独療法よりも、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の治療においてより効果的であって良く並びに/あるいは低減した副作用を有して良い。
【0165】
式(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物との併用療法又は補充療法において有用であり得る抗鬱剤の非制限的な例は、二環、三環、及び四環式の抗鬱剤、ヒドラジド、ヒドラジン、フェニルオキサゾリジノン、及びピロリドンを含む。具体的な例は、アジナゾラム、アドラフィニル、アミネプチン、アミトリプチリン、アミトリプチリノキシド、アモキサピン、ベフロキサトン、ブプロピオン、ブタセチン、ブトリプチリン、カロキサゾン、シタロプラム、クロミプラミン、コチニン、デメキシプチリン、デシプラミン、ジベンゼピン、ジメタクリン、ジメタザン(dimethazan)、ジオキサドロール、ジチエピン、ドキセピン、デュロキセチン、エトペリドン、フェモキセチン、フェンカミン、フェンペンタジオール、フルアシジン、フルオキセチン、フルボキサミン、ヘマトポルフィリン、ヒペリシン、イミプラミン、イミプラミンN−オキシド、インダルピン、インデロキサジン、イプリンドール、イプロクロジド、イプロニアジド、イソカルボキサジド、レボファセトペラン、ロフェプラミン、マプロチリン、メジフォキサミン、メリトラセン、メタプラミン、メトラリンドール、ミアンセリン、ミルナシプラン、ミナプリン、ミルタザピン、モクロベミド、ネファゾドン、ネフォパム、ニアラミド、ノミフェンシン、ノルトリプチリン、ノキシプチリン、オクタモキシン、オピプラモール、オキサフロザン、オキシトリプタン、オキシペルチン、パロキセチン、フェネルジン、ピベラリン、ピゾチリン、プロリンタン、プロピゼピン、プロトリプチリン、ピリスクシデアノール(pyrisuccideanol)、キヌプラミン、レボキセチン、チタンセリン、ロキシンドール、ルビジウムクロリド、セルトラリン、スルピリド、タンドスピロン、チアゼシム、トザリノン、チアネプチン、トフェナシン、トロキサトン、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリミプラミン、トリプトファン、ベンラファキシン、ビロキサジン、ジメルジン、及びそれらの組み合わせを含む。
【0166】
他の実施態様では、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の予防、緩和、及び/又は治療のための更に別の活性剤、特に抗変形性関節症剤は、少なくとも1つのNMDA受容体アンタゴニストである。その様な併用療法及び補充療法は、ある状況では、式(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物、例えば、ラコサミド又は抗鬱剤を単独で使用する単独療法よりも、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の治療においてより効果的であって良く並びに/あるいは低減した副作用を有して良い。
【0167】
式(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物との併用療法又は補充慮包において有用であり得るNMDA受容体アンタゴニストの非制限的な例は、アプチガネル、デキサナビノール、リコスチネル、メマンチン、レマセミド、及びそれらの組み合わせを含む。
【0168】
更に別の実施態様では、更に別の活性剤、特に抗変形性関節症剤は、疾患修飾性変形性関節症剤(DMOAD)である。本明細書では、用語「DMOAD」は、上述のもの以外の変形性関節症又はその症状の治療において有用性を有する任意の薬剤を示す。しき(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物、例えば、ラコサミドとの併用療法又は補充療法における投与のための更に別の活性剤、特に抗変形成関節症剤として有用であり得るDMOADの非制限的な例は、メトトレキセート、ジアセレイン、グルコサミン、コンドロイチンスルフェート、アナキンラ、MMPインヒビター、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、ミソプロストール、プロトンポンプインヒビター、非アセチル化サリチレート、タモキシフェン、プレドニソン、メチルプレドニソロン、ポリ硫酸化グリコサミノグリカン、カルシトニン、アレンドロネート、リセドロネート、ゾレドロン酸、テリパラチド、VX−765、プラルナカサン、SB−462795、CPA−926、ONO−4817、S−3536、PG−530742、CP−544439、及びそれらの組み合わせを含む。
【0169】
更に別の実施態様では、更に別の活性剤、特に抗変形性関節症剤は、上述のもの以外の症状修飾性変形性関節症剤である。式(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物、例えば、ラコサミドとの併用療法又は補充療法において投与するための更に別の活性剤、特に抗変形性関節症剤として有用であり得るその様な薬剤の非制限的な例は、ADL−100116、AD−827、HOE−140、AD−827、HOE−140、DA−5018、及びそれらの組み合わせを含む。
【0170】
特に抗変形性関節症剤のための用量及び投与経路を含む適切な計画は、容易に得られるこれらの薬剤に関する参照情報源、例えば、Physician’sDesk Reference(PDR),60th edition,Montvale,NJ:Thomson(2006)及び当業者に既知の各種のインターネットの情報源から決定して良い。式(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物、例えば、ラコサミドとの併用療法又は補充療法において投与する際は、前記抗変形性関節症剤は十分量で使用して良いが、医療従事者は、少なくとも初期は十分量未満の抗変形性関節症剤を投与することを選択して良い。
【0171】
2つ以上の抗変形性関節症剤は、式(Ib)、(IIb)、又は(III)の化合物、例えば、ラコサミドを使用する併用療法又は補充療法において投与し得る。1つの実施態様では、2つ以上のその様な薬剤は、以下の種:
(i)オピオイド及び非オピオイド性鎮痛剤;
(ii)ステロイド性抗炎症剤
(iii)NSAID及びCOX−2選択的インヒビター;並びに
(iv)DMOAD
の2つ以上から選択される併用療法又は補充療法に含まれる。
【0172】
式(Ib)及び(IIb)の化合物は、不活性希釈剤又は吸収可能な食用の担体と共に経口投与して良く、又は硬質ゼラチンカプセル又は軟質ゼラチンカプセルに含まれて良く、又は錠剤に圧縮されて良く、又は食事のフールに直接含ませて良い。経口治療の投与については、式(Ib)及び/又は(IIb)の活性化合物が賦形剤と友皮膚組まれて良く、摂取可能な錠剤、口腔錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリクシル、懸濁剤、シロップ剤、及びウエファーなどの形態で使用される。その様な組成物及び製剤は少なくとも1%の式(Ib)及び/又は(IIb)の活性化合物を含有すべきである。組成物及び製剤の割合は、言うまでも無く、変化して良く、好都合には、単位の約5から約80質量%の間であって良い。その様な治療に有用な組成物注の式(Ib)及び/又は(IIb)の活性剤の量は、適切な容量が得られるような量である。本発明に係る好ましい組成物又は製剤は、約10mgから6gの間の式(Ib)及び/又は(IIb)の活性化合物を含有する。
【0173】
錠剤、トローチ剤、丸剤、及びカプセル剤などは、以下:バインダー、例えば、トラガカントガム、アカシア、コーンデンプン、又はゼラチン;賦形剤、例えば、リン酸にカルシウム;崩壊剤、例えば、コーンデンプン、ジャガイモデンプン、及びアルギン酸など;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム;並びに甘味剤、例えば、スクロース、ラクトース、又はサッカリン、あるいはペパーミント、冬緑油、又はチェリー味の調味料のような香味剤を含有しても良い。単位投与形態がカプセルである際は、上述の物質に加えて、液体担体を含有して良い。
【0174】
各種の他の物質がコーティングとして存在するか、又は投与単位物理的形状を修飾して良い。例えば、錠剤、丸剤、又はカプセル剤は、セラック、糖、又はそれらの双方で被覆されて良い。シロップ剤又はエリクシルは渇せ化合物、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチル及びプロピルパラベン、染料、及び香味剤、例えばチェリー又はオレンジ味の調味料を含有して良い。言うまでも無く、任意の単位投与形態を調製するために使用するいずれの物質も、製薬学的に純粋であり、且つ、使用量において実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は、持続放出型製剤及び調製物に含まれて良い。例えば、持続放出型の剤形は、活性成分が、樹脂の放出特性を改変する拡散障壁コーティングで任意に被覆されて良いイオン交換樹脂に結合する。
【0175】
活性化化合物は、非経口又は腹腔内投与しても良い。分散剤が、グリセロール、液体、ポリエチレングリコール及びそれらの混合物中、並びに油中で調製されても良い。保存及び使用の通常の条件下では、これらの製剤は、微生物の成長を妨げる保存剤を含有する。
【0176】
注射可能な使用のために適切な剤形は、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散剤、及び滅菌した注射可能な溶液又は分散剤の即時調製のための滅菌粉末剤を含む。全ての場合において、投与形態は滅菌でなくてはならず、容易に注入することが可能な程度に流動性でなくてはならない。前記投与形態は、製造及び保存の条件下で安定でなくてはならず、バクテリア及び心筋のような微生物の汚染に対して保護されるべきである。前記担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、適切なそれらの混合物、並びに植物油を含有する溶媒又は分散媒体であって良い。適切な流動性が、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散剤の場合に必要とされる粒径の維持によって、並びに界面活性剤の使用によって維持されて良い。微生物の作用からの保護は、各種の抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、及びチメロサルなどによってもたらされて良い。多数の場合において、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含む事が好ましい。注射可能な組成物の持続的な吸収は、吸収遅延剤、例えば、アルミニウムモノステアレート及びゼラチンの組成物中における使用によってもたらされる。
【0177】
滅菌した注射可能な溶液は、上述の各種の他の成分と、適当な溶媒中に必要量の活性剤を含ませ、必要であれば、フィルター滅菌することによって調製される。一般的には、分散剤は、基本的な分散媒体及び必要とされる上述の他の成分を含有する滅菌したビヒクルに各種の滅菌した活性成分を含ませることによって調製する。滅菌した注射可能な溶液の調整のための滅菌粉末剤の場合は、好ましい調製方法は、上述のフィルター滅菌した溶液の減圧乾燥凍結乾燥技術であって、任意の更なる所望の成分を加える。
【0178】
本明細書で使用する「製薬学的に許容される担体」は、当業者によく知られているような、製薬学的な活性物質のための任意及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤、並びに吸収遅延剤を含む。任意の従来の媒体又は薬剤が活性成分と非適合性である場合を除いて、その治療用組成物における使用が意図される。追加の活性成分も前記組成物に含まれて良い。
【0179】
投与の容易性及び用量の均一性のために、単位投与形態中の非経口組成物を製剤することが特に有利である。本明細書で使用する単位投与形態は、治療しようとする哺乳動物の対象への単位用量として適切な物理的に分離した単位を示し;各単位は、必要な製薬学的担体との組み合わせにおいて所望の治療効果を生じさせることが算出された所定の量を含有する。本発明の新規単位投与形態の詳細は、(a)達成しようとする特定の治療効果としての活性物質の独特な特性、及び(b)本明細書に詳細に開示したように弱められている身体の健康における疾患状態を有する生物において疾患を治療するための活性物質の配合の当該技術分野に本来的に存在する制限によって又はそれらに直接依存して示される。
【0180】
主な活性成分は、上述の単位投与形態中で、適切な製薬学的に許容される担体と共に、有効量において好都合に配合されるか又は効果的に投与される。例えば、単位投与形態は、約10mgから約6gの範囲の量で主要な活性化合物を含有して良い。割合で表わすと、活性化合物は、約1から約750mg/mlの担体で通常は存在する。追加の活性成分を含有する組成物の場合において、用量は、前記成分の通常の用量及び投与の様式を参照することによって決定される。
【0181】
本明細書で使用する「患者」又は「対象」は、温血動物、好ましくは哺乳動物、例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、マウス、ラット、及びヒトを含む霊長類を示す。好ましい患者はヒト、例えば、変形性関節症、線維筋痛症、又は顔面筋疼痛症候群と臨床的に診断された患者である。
【0182】
用語「治療」は、患者の病気又は疾患を治癒又は緩和するか、又は病気又は疾患と関連する疼痛を緩和することのいずれかを示す。
【0183】
本発明の化合物は、有効量において、上述のタイプの疾患に冒された患者に投与される。これらの量は、上述の治療上の有効量と同等である。
【0184】
以下の実施例1は、ラットにおいてTNFによって誘導される筋骨格疼痛後の機械的痛覚過敏を阻害するラコサミドの働きを示す。さらに、ラコサミドは、把持力によって測定される同一のモデルにおける機械的異痛を緩和する。前記モデルは、線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群、又は背痛において生じる筋骨格疼痛を反映する。
【0185】
以下の実施例2は、ラコサミドが、変形性関節症の疼痛のヨードアセテートラットモデルにおける炎症後の期間の間の機械的痛覚過敏を阻害し、非炎症性変形性関節症の疼痛の治療についてのラコサミドの有効性を示したことを示す。
【0186】
実施例1及び2において使用する物質は、ハルコセリド又はSPM927という別名を有するラコサミド(国際的な一般名称)であった。標準的な化学的命名法では、(R)−2−アセトアミド−N−ベンジル−3−メトキシプロピオンアミドである。
【実施例】
【0187】
(実施例1)
主要壊死因子α(TNF)の筋肉内注射を、ヒトの線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群、背痛、又は変形性関節症において生じる筋肉の機械的痛覚過敏のモデルとして使用した。
【0188】
TNFの筋肉内注射は、ラットにおいて機械的筋肉痛覚過敏を誘導する。これは、筋肉への圧力の適用に対する引込み閾値及び把持力の測定によって定量することができる。TNF注射は、筋肉に形態学的損傷を生じさせない(1)。
【0189】
形態学的な異常がない筋肉の触診時の痛みは、線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群、又は背痛の典型である(2)。かくして、TNFの筋肉内注射のモデルは、線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群、又は背痛に関連する筋肉痛のモデルとして使用して良い。このモデルでは、新しい鎮痙剤であるラコサミド(LCM)の抗侵害受容作用を試験した。対照薬剤は、非オピオイド性鎮痛剤であるメタミゾール(比較例)並びに鎮痙剤であるプレガバリン及びガバペンチンであった。
【0190】
筋肉への圧力の適用に対する機械的引込み閾値は、事前にTNFを注射した腓腹筋に対して圧力を与えて無痛覚計を使用して測定した。前足の把持力は、上腕二頭筋にTNF注射した後にデジタル把持力測定機を使用して測定した。
【0191】
動物における筋肉痛の誘導
250gから300gの体重を有する成体のSprague Dawleyラットを使用した(供給業者:Charles River Sulzfeld Germany)。動物を集団で飼育し(1つのカゴに3匹)、随意に食餌及び水が得られる状態で調節した温度(21−22℃)及び逆転した明暗サイクル(12時間/12時間)において室内で維持した。全ての実験は、バイエルン州動物実験委員会によって認可され、且つ、その規制に従って実施した。
【0192】
組換えラット腫瘍壊死因子α(本明細書ではTNFと称する)は、R&D Systems,MN,USAから得た。TNFは0.9%のNaClに溶解し、50μlにおいて1μgの濃度で使用した。注射は、腓腹筋又は上腕二頭筋に対して両側に30gの針で短期間のハロタン麻酔において実施した。全てのラットは注射の前に行動試験に使用して、基礎値を試験の3日間に亘って記録した。
【0193】
行動試験の読出し:筋肉への圧力の適用(Randall−Selitto)
筋肉への圧力の適用に対する機械的引込み閾値を、無痛覚計(Ugo Basile,Comerio,Italy)を使用して測定した。ラットをリラックスさせる槽にラットをゆっくりと進ませた。増大する圧力(最大で250g)が腓腹筋に適用され得るように後足を配置させた。引込みを誘導するために必要とされる圧力を記録した。後足についての3回の試験の平均値を算出した(30秒より大きい刺激間の間隔)。有意なTNF効果を有する動物のみを更なる試験に採用した。
【0194】
ラットには、2pmで腓腹筋にTNFを注射した。18時間後に、ラットは、薬剤の提供前及び後において、圧力に対する痛覚過敏について試験した。薬剤投与の30から60分後の圧力に対する痛覚過敏について試験した。
【0195】
行動試験の読出し:把持力
前足の把持力を、デジタル把持力測定機(DFIS series,Charillon,Greensboro,NC,USA)を試用して試験した。ラットを前足で格子を把持するように配置し、把持力を記録し得るようにゆっくりと引張った。三回の試験の平均値を算出した。TNF試験の効果を各動物を別々に算出して、有意なTNFの効果を有する動物のみを更なる分析のために採用した。
【0196】
ラットには、8amに上腕二頭筋にTNFを注射した。6時間後に、前足の把持力を、デジタル把持力測定機を使用して試験した。薬剤を適用して、把持力を30から60分後に再び試験した。
【0197】
適用プロトコル
1つの群毎10匹のラットを、腹腔内(i.p.)において3、10、又は30mg/kgのラコサミド又はビヒクルを使用して処理した。腹腔内注射の注射用量は、0.5mlであった。予備実験を実施して、1μgのTNFの腓腹筋への筋肉内注射が有意に圧力に対する痛覚過敏を誘導することを示した。
【0198】
【表1】

【0199】
【表2】

【0200】
データの提示及び統計
データは平均値及びSEMを示すグラフに示す。処理前及び後のデータを、ANOVA(分散分析)及びTukey post-hoc試験を使用して比較した。処理した群の平均値を、一元配置ANOVA及びDunnett’s post hoc試験を使用して比較した。推定される最大の効果(MPE)を全てのタイプの処理について算出した。
【0201】
結果
筋肉への圧力に対する痛覚過敏
TNF注射後に引込み閾値が有意に低減したラットのみを採用した。ラットの約13%において、TNFの効果が存在しなかった。図1は圧力に対する引込み閾値の絶対値を示す。
【0202】
筋肉の機械的痛覚過敏の完全な逆転が、30mg/kgのラコサミド及び2mg/kgのメタミゾールで認められた。
【0203】
筋肉の機械的痛覚過敏の有意な逆転が、30及び100mg/kgのプレガバリン及び100mg/kgのガバペンチンにおいても認められた。
【0204】
10及び30mg/kgのラコサミド、30及び100mg/kgのプレガバリン、並びに2mg/kgのメタミゾールについての推定される最大の効果(図2)は、ビヒクルとは有意に異なるものであった。ビヒクルには効果が無かった。
【0205】
上腕二頭筋についての把持力
TNF注射後に保持力が有意に低減したラットのみを採用した。ラットの約13%において、TNFの効果が存在しなかった。
【0206】
図3は、把持力の絶対値を示す。TNFに誘導された把持力の低減の有意な逆転が、10及び30mg/kgのラコサミドで認められた。有意な逆転は、100mg/kgのプレガバリン、100mg/kgのガバペンチン、及び2mg/kgのメタミゾールについて認められた。
【0207】
10及び30mg/kgのラコサミド、100mg/kgのプレガバリン、100mg/kgのガバペンチン、並びに2mg/kgのメタミゾールについてのMPE(図4)は、ビヒクルとは有意に異なるものであった。ビヒクルには効果が無かった。
【0208】
考察
筋肉に経皮的に適用した圧力に対する引込み閾値は、大半のラットにおいてはTNF注射後に顕著に低減した。この一次の筋肉の痛覚過敏は、顔面筋疼痛症候群、線維筋痛症、及び背痛のような筋肉痛を有する患者において臨床的に認められる触診に対する圧痛に類似している(3)。触診に対する圧痛は、臨床及び実験的なヒトの疾患における筋肉痛の診断についての一次的な判定方法である(4、5)。
【0209】
ラコサミドの用量依存的に、足への圧力試験においてTNF注射によって誘導された筋肉の痛覚過敏を改善し、30mg/kgで完全に逆転する。鎮痙剤であるプレガバリン及びガバペンチンと比較すると、ラコサミドは筋肉痛に対してより強力な効果を有する。プレガバリンもガバペンチンも筋肉の痛覚過敏の完全な逆転を生じさせない。把持力試験では、ラコサミドは、10mg/kgで既に筋肉に対するTNFの効果を逆転する。さらに、ラコサミドは、100mg/kgでのみ把持力を改善するプレガバリン及びガバペンチンよりも強力である。
【0210】
結論として、ラコサミドは、TNFを筋肉に注射することによって誘導される筋肉の痛覚過敏の低減において効果的であった。かくして、ラコサミド及び式(Ib)及び(IIb)に開示したような関連する化合物は、非炎症性筋骨格疼痛の特異的な発現、例えば、線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群、背痛、又は変形性関節症において生じる筋肉の痛覚過敏及び異痛の治療、特に全身治療における治療効果を有する。
【0211】
(実施例2)
ヨードアセテートラットモデルにおけるラコサミドの鎮痙効果の試験
動物
試験開始時に170〜200gの体重のオスのWistarラット(Janview,France)を使用した。調節した温度(21〜22℃)の室内で、逆転した暗明サイクル(12時間/12時間)において、動物を集団で飼育し(1つのカゴに3匹の動物)、食餌及び水には自由に接触させた。
【0212】
変形性関節症の誘導
変形性関節症は、50μlの3mgモノナトリウムヨードアセテート(MIA)(Sigma)の右膝の膝蓋骨靭帯を介する関節内注射によって誘導した。対照のラットは、等量の生理食塩水を用いて注射した。ヨードアセテートの注射の5日後までに、滑膜関節の実質的な炎症が当該モデルにおいて認められた。動物の一般的な健康をモニターした。苦痛の兆候は認められなかった。
【0213】
組織像
ヨードアセテート処理の3、6、及び14日後の各々において、4匹の動物を組織学的な試験のために屠殺した。膝を摘出し、10%ホルマリンで一晩固定化し、続いて10%蟻酸で72時間に亘って脱灰した後にパラフィンに埋め込んだ。10μmの厚みの切片を250μmごとに調製した。ヘマトキシリン/エオシン染色を実施して、関節及び周囲の組織の炎症浸潤の程度を評価した。Slflanin−O fast green染色を実施して、軟骨の分解を測定した。
【0214】
侵害受容に対する化合物の効果の評価
1回目の実験では、ヨードアセテート処理したラットをランダムに、疼痛評価の日(ヨードアセテート処理の3、7、及び14日後)において以下の処理(p.o.=経口;s.c.=皮下):
生理食塩水(ビヒクル)のp.o.注射;
3mg/kgのラコサミドのp.o.注射;
10mg/kgのラコサミドのp.o.注射;
30mg/kgのラコサミドのp.o.注射;
3mg/kgのモルフィンのs.c.注射;
を受ける6つの実験群(1群ごとに12匹の動物)に分けた。同じ時間、同じ条件下で、同じ実験者による別の実験において、ジクロフェナク(30mg/kg)を試験した。非ヨードアセテート処理の対照群(対照)は、疼痛評価の45分前に生理食塩水のp.o.注射を受けた。ラコサミド、ジクロフェナク、及びモルフィンを、行動試験の実施の60分前に注射した。各群は盲目試験を実施した。
【0215】
触覚異痛及び機械的痛覚過敏
触覚異痛を試験するために、ラットを金属格子の床においた。格子床を通してvon Freyフィラメント(Bioseb,France)を挿入し、後足の足底表面に適用することによって侵害受容試験を実施した。試験は、異なるvon Freyフィラメントの複数回の適用からなる(約1Hzの頻度)。von Freyフィラメントは、10gから100gのフィラメントから適用した。動物が後足を引いたら直ぐに、試験を停止し、フィラメント番号を記録して、足引込み閾値を表わした。
【0216】
機械的痛覚過敏を試験するために、侵害受容屈曲反射を、ラットの後足の背部に直線的に増大する機械力を適用するRandall−Selitto paw prssure device(Bioseb,France)を使用して定量した。足引込み閾値は、ラットが足を引込む力として規定される。カットオフ圧力は250gに設定した。
【0217】
薬剤及び試薬
ラコサミド(Schwarz BioSciences GmbH)及びモルフィンスルフェート(Francopia,France)を生理食塩水に溶解した。モノナトリウムヨードアセテート及びジクロフェナクはSigma(France)から購入した。薬剤投与は1ml/kgの用量で実施した。
【0218】
データ分析及び統計
各時点における行動データの群の比較を、ANOVAを用いて実施し、続いてpost−hoc分析(Dunnett’s試験)を実施した。
【0219】
結果
ヨードアセテートの関節内注射の3、7、及び14日後に関節の症状を評価した。3日では、実質的な初期の炎症応答が存在した。この炎症は、マクロファージ、好中球、形質細胞、及びリンパ球の浸潤と共に、フィブリン及びタンパク質様の浮腫流動体によって主に生じる滑膜の膨張によって特徴付けられる。軟骨は依然として完全な状態であった。7日では、滑膜及び周囲の組織内の炎症が広く散っていた。14日では、プロテオグリカンの損失が軟骨の深部にわたって認められた。滑膜は正常なままであり、炎症細胞を含有していなかった。
【0220】
von Freyフィラメントで試験される触覚異痛は、ヨードアセテート処理の3、7、及び14日後に評価し、対照ラットと比較した。ラコサミド(30mg/kg)及びモルフィン(3mg/kg)を用いた処理は、3(図5A)及び7(図5B)日のヨードアセテート処理ラットの触覚異痛を改善したが、14(図5C)日のラットでは改善せず、低用量のラコサミドはその様な改善の傾向を示した。ジクロフェナク(30mg/kg)は3(図6A)、7(図6B)、又は14(図6C)日で接触異痛に対する効果を有していなかった。
【0221】
対照/ビヒクル処理の動物と比較して、ヨードアセテート/ビヒクルオ処理した動物では足圧力引込み閾値において低減したことによって証明されたように、顕著な機械的痛覚過敏が存在した。3mg/kgのラコサミド、3mg/kgのモルフィン、及び30mg/kgのジクロフェナクを用いたヨードアセテート処理したラットの処理は、各々の場合において、ヨードアセテート/ビヒクル処理した動物と比較して足圧力引込み閾値における増大を3日で誘導した。7日では、試験した全ての用量(3、10、および30mg/kg)のラコサミド、モルフィン、及びジクロフェナクの各々が、機械的痛覚過敏を低減した(図7B、8B)。10mg/kgラコサミドで処理した群が統計的に有意なこうかを示さなかったのを除き、同様の結果がヨードアセテート処理の14日後に認められた(図7C、8C)。興味深いことに、ヨードアセテート処理後の14日の間に亘って異なる分子メカニズムに基づいて疼痛感作の発生が進行することを反映する変形性関節症の発生の初期の間により明白になる触覚異痛と比較して、ヨードアセテート処理した動物では、機械的痛覚過敏が3日から少なくとも14日まで続いていた。
【0222】
結果から、ラコサミドが炎症後の期間の間に機械的痛覚過敏を阻害することが示され、非炎症性変形性関節症を治療するためのラコサミドの効果を示した。
【0223】
本明細書に記載した全ての特許及び文献は、参照によって、その全体を本願に組み込む。
【0224】
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【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】図1は、TNF誘導筋肉痛後の筋肉への圧力適用後の足引込みに対する、3mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kgのラコサミドの効果を示す。
【図2】図2は、プレガバリン、ガバペンチン、及びメタミゾールと比較した、TNF誘導筋肉痛後の筋肉への圧力適用後の足引込みに対する、3mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kgのラコサミドの効果を示す。
【図3】図3は、TNF誘導筋肉痛後の把持力に対する3mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kgのラコサミドの効果を示す。
【図4】図4は、プレガバリン、ガバペンチン、及びメタミゾールと比較した、TNF誘導菌異苦痛後の把持力に対する、3mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kgのラコサミドの効果を示す。MPE:推定される最大の効果
【図5A】図5は、試験の3日の各々における触覚異痛に対するラコサミド及びモルフィンの投与後の実施例2のヨードアセテートラットモデルにおいて得られた結果を図示する。
【図5B】図5は、試験の7日の各々における触覚異痛に対するラコサミド及びモルフィンの投与後の実施例2のヨードアセテートラットモデルにおいて得られた結果を図示する。
【図5C】図5は、試験の14日の各々における触覚異痛に対するラコサミド及びモルフィンの投与後の実施例2のヨードアセテートラットモデルにおいて得られた結果を図示する。
【図6A】試験の3日の各々における触覚異痛に対するジクロフェナクの投与後の実施例2のヨードアセテートラットモデルにおいて得られた結果を図示する。
【図6B】試験の7日の各々における触覚異痛に対するジクロフェナクの投与後の実施例2のヨードアセテートラットモデルにおいて得られた結果を図示する。
【図6C】試験の14日の各々における触覚異痛に対するジクロフェナクの投与後の実施例2のヨードアセテートラットモデルにおいて得られた結果を図示する。
【図7A】試験の3日の各々における機械的痛覚過敏に対するラコサミド及びモルフィンの投与後の実施例2のヨードアセテートラットモデルにおいて得られた結果を図示する。
【図7B】試験の7日の各々における機械的痛覚過敏に対するラコサミド及びモルフィンの投与後の実施例2のヨードアセテートラットモデルにおいて得られた結果を図示する。
【図7C】試験の14日の各々における機械的痛覚過敏に対するラコサミド及びモルフィンの投与後の実施例2のヨードアセテートラットモデルにおいて得られた結果を図示する。
【図8A】試験の3日の各々における機械的痛覚過敏に対するジクロフェナクの投与後の実施例2のヨードアセテートラットモデルにおいて得られた結果を図示する。
【図8B】試験の7日の各々における機械的痛覚過敏に対するジクロフェナクの投与後の実施例2のヨードアセテートラットモデルにおいて得られた結果を図示する。
【図8C】試験の14日の各々における機械的痛覚過敏に対するジクロフェナクの投与後の実施例2のヨードアセテートラットモデルにおいて得られた結果を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ib)
【化1】

[式中、
Rは、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール、アリール低級アルキル、ヘテロ環、ヘテロ環低級アルキル、低級アルキルへテロ環、低級シクロアルキル、又は低級シクロアルキル低級アルキルであって、Rは、少なくとも1つの電子吸引基及び/又は少なくとも1つの電子供与基で置換されていているか又は非置換であって良い;
は、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール低級アルキル、アリール、ヘテロ環低級アルキル、低級アルキルへテロ環、ヘテロ環、低級シクロアルキル、又は低級シクロアルキル低級アルキルであって、各々少なくとも1つの電子供与基及び/又は電子吸引基で置換されているか又は非置換であって良い;並びに
及びRは、独立して、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール低級アルキル、アリール、ハロ、ヘテロ環、ヘテロ環低級アルキル、低級アルキルへテロ環、低級シクロアルキル、低級シクロアルキル低級アルキル、又はZ−Yであって、R及びRは、少なくとも1つの電子吸引基及び/又は電子供与基で置換されているか又は非置換であって良い;R及びR中のヘテロ環は、フリル、チエニル、ピラゾリル、ピロリル、メチルピロリル、イミダゾリル、インドリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピペリジル、ピロリニル、ピペラジニル、キノリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキノリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、モルホリニル、ベンゾキサゾリル、テトラヒドロフリル、ピラニル、インダゾリル、プリニル、インドリニル、ピラゾリンジニル、イミダゾリニル、イミダゾリンジニル、ピロリジニル、フラザニル、N−メチルインドリル、メチルフリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリジル、エポキシ、アジリジノ、オキセタニル、アゼチジニル、又はNがヘテロ間に存在する際はそれらのNオキシドである;
Zは、O、S、S(O)、NR、NR’、PR、又は化学結合である;
Yは、水素、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、ハロ、ヘテロ環、ヘテロ環低級アルキル、又は低級アルキルへテロ環であって、Yは、少なくとも1つの電子供与基及び/又は少なくとも1つの電子吸引基で置換されているか又は非置換であって良く、ヘテロ環はR及びRにおいて記載したものと同一の意味を有するが、Yがハロである際は、Zは化学結合であるか、あるいは
ZYが一緒になって、NR4NR57, NR4OR5, ONR47, OPR45, PR4OR5, SNR47, NR4SR7, SPR45, PR4SR7, NR4PR56, PR4NR57、又は N+567、あるいは下式
【化2】

のものである;
R’は、水素、低級アルキル、低級アルケニル、又は低級アルキニルであって、非置換であるか又は少なくとも1つの電子吸引基及び/又は少なくとも1つの電子供与基で置換されていて良い;
、R、及びRは、独立して、水素、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル、低級アルケニル、又は低級アルキニルであって、R、R、及びRは、独立して、少なくとも1つの電子吸引基及び/又は少なくとも1つの電子供与基で置換されているか又は非置換であって良い;
は、R、COOR、又はCORであって、Rは、少なくとも1つの電子吸引基及び/又は少なくとも1つの電子供与基で置換されているか又は非置換であって良い;
は、水素、低級アルキル、又はアリール低級アルキルであって、前記アリール又はアルキル基は、少なくとも1つの電子吸引基及び/又は少なくとも1つの電子供与基で置換されているか又は非置換であって良い;
nは1から4であり;並びに
aは1から3である]
を有する化合物又はその製薬学的に許容される塩の、線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群、背痛、及び/又は変形性関節症において生じる筋肉の痛覚過敏及び/又は異痛のような、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の予防、緩和、及び/又は治療のための医薬組成物の調製のための使用。
【請求項2】
前記非炎症性筋骨格疼痛が、背痛若しくは首痛のような局所的な疼痛症候群、慢性関節リウマチ、変形性関節症、痛風、強直性脊椎炎、エリテマトーデス、線維筋痛症、結合組織炎、線維筋炎、顔面筋疼痛症候群、自己免疫疾患、リウマチ性多筋痛、多発性筋炎、皮膚筋炎、筋膿瘍、せん毛虫症、ライム病、マラリア、ロッキー山紅斑熱、ポリオ、外傷、関節損傷、外傷による関節損傷、軟骨分解、骨の構造変化、及び変形性関節症の骨再構築の領域の血管新生から選択される病理疾患と関連し、及び/又はそれによって引き起こされる非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記非炎症性変形性関節症の疼痛が、外傷、関節損傷、外傷による関節損傷、軟骨分解、骨の構造変化、及び変形性関節症の骨再構築の領域の血管新生から選択される病理疾患と関連し、及び/又はそれによって引き起こされる非炎症性変形性関節症である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛が、腫脹又は熱感の不在、炎症及び/又は全身性の特徴の不在、及び/又は朝のこわばりが本質的に存在しないことによって特徴付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
非炎症性筋骨格疼痛及び/又は変形性関節症の疼痛が、疲労、睡眠障害、過敏性腸症候群、慢性頭痛、側頭下顎関節障害症候群、多発性化学過敏症、疼痛のある月経の期間、月経困難、胸痛、朝のこわばり、認知又は記憶障害、しびれ及び刺痛の感覚、筋肉の痙攣、過敏性膀胱、肥大した足の感覚、皮膚過敏症、乾燥眼及び口、眼の投薬の頻繁な変化、眩暈、及び協調運動障害から選択される、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛と関連し、及び/又はそれによって引き起こされる状態を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記非炎症性筋骨格疼痛が、変形性関節症と関連し及び/又はそれによって引き起こされる非炎症性疼痛、特に変形性関節症と関連し及び/又はそれによって引き起こされる非炎症性筋骨格疼痛である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記非炎症性疼痛が非炎症性変形性関節症の疼痛である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
およびRの1つが水素である、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
nが1である、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
およびRの1つが水素であり、nが1である、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
Rがアリール低級アルキルであり、Rが低級アルキルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
及びRが、独立して、水素、低級アルキル、又はZYであり;
Zが、O、NR、又はPRであり;
Yが、水素又は低級アルキルであり;あるいは
ZYが下式
【化3】

である、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
が水素であり、Rが低級アルキル又はZYであり;
ZがO、NR、又はPRであり;
Yが水素又は低級アルキルであり;
ZYが下式
【化4】

である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
が水素であり、Rが、少なくとも1つの電子供与基及び/又は少なくとも1つの電子吸引基で置換されているか又は非置換であって良い低級アルキル、NROR、又はONRである、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
が、ヒドロキシ又は低級アルコキシで置換されているか又は非置換の低級アルキル、NROR、又はONR[R、R、及びRは独立して水素又は低級アルキルである]であり、Rがアリール低級アルキル[アリール基は少なくとも1つの電子吸引基で置換されているか又は非置換であって良い]であり、Rが低級アルキルである、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
アリールがフェニルであり、ハロで置換されているか非置換である、請求項1から15いずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記化合物が、
(R)−2−アセトアミド−N−ベンジル−3−メトキシ−プロピオンアミド;
(R)−2−アセトアミド−N−ベンジル−3−エトキシ−プロピオンアミド;
O−メチル−N−アセチル−D−セリン−m−フルオロベンジルアミド;
O−メチル−N−アセチル−D−セリン−p−フルオロベンジルアミド;
N−アセチル−D−フェニルグリシンベンジルアミド;
D−1,2−(N,O−ジメチルヒドロキシルアミノ)−2−アセトアミド酢酸ベンジルアミド;又は
D−1,2−(O−メチルヒドロキシルアミノ)−2−アセトアミド酢酸ベンジルアミド
である、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記化合物が、式(IIb)
【化5】

[式中、
Arは、少なくとも1つのハロ基で置換されているか非置換のフェニルであり;
は、CH−Q{式中、Qは1から3の炭素原子を含有する低級アルコキシである}であり、Rは1から3の炭素原子を含有する低級アルキルである]
を有するか又はその製薬学的に許容される塩である、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
Arが非置換のフェニルである、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
ハロがフルオロである、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
がCH−Q[式中、Qは1から3の炭素原子を含有するアルコキシである]であり、Arが非置換のフェニルである、請求項18又は19に記載の使用。
【請求項22】
前記化合物がR配置にあり、式
【化6】

[式中、
Rは、少なくとも1つのハロ基で置換されているか又は非置換のベンジルであり;
は、CH−Q{式中、Qは1から3の炭素原子を含有するアルコキシである}であり;並びに
はメチルである]
を有するか又はその製薬学的に許容される塩である、請求項1から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記化合物が実質的にエナンチオピュアである、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
Rが非置換のベンジルである、請求項22又は23に記載の使用。
【請求項25】
ハロがフルオロである、請求項22又は23に記載の使用。
【請求項26】
がCH−Q[式中、Qは1から3の炭素原子を含有するアルコキシである]であり、Rが非置換のベンジルである、請求項22から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
前記式(Ib)の化合物が、(R)−2−アセトアミド−N−ベンジル−3−メトキシプロピオンアミドであるか又はその製薬学的に許容される塩である、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記化合物が実質的にエナンチオピュアである、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記医薬組成物が、少なくとも100mg/日、好ましくは少なくとも200mg/日、更に好ましくは少なくとも300mg/日、最も好ましくは少なくとも400mg/日の化合物の用量で治療するために調製される、請求項1から28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
前記医薬組成物が、最大で6g/日、より好ましくは最大で1g/日、最も好ましくは最大で600mg/日の化合物の用量で治療するために調製される、請求項1から29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
所定の日用量に到達するまで日用量を増大し、それを更なる治療の間に維持する治療のために、前記医薬組成物が調製される、請求項1から30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記医薬組成物が、一日に三回投与、好ましくは一日に二回投与、更に好ましくは一日に単回投与で治療するために調製される、請求項1から31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記医薬組成物が、多数の治療する対象の平均値として算出される0.1から15μg/ml(トラフ)及び5から18.5μg/ml(ピーク)の血漿濃度を生じさせる投与のために調製される、請求項1から32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記医薬組成物が経口又は静脈内投与のために調製される、請求項1から33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記医薬組成物が、線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群、背痛、及び/又は変形性関節症において生じる筋肉の痛覚過敏及び/又は異痛のような、非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の予防、緩和、及び/又は治療のための活性剤を更に含む、請求項1から34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
前記医薬組成物が、請求項1及び8から28のいずれか一項に規定の化合物を含む第一の組成物と更に別の活性剤を含む第二の組成物とを含む、1つの投与形態又は別々の投与形態を含む、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記医薬組成物が、哺乳動物における投与のために調製される、請求項1から36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記医薬組成物がヒトにおける投与のために調製される、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
(a)請求項1及び8から28のいずれか一項に規定の化合物、並びに
(b)線維筋痛症、顔面筋疼痛症候群、背痛、及び/又は変形性関節症において生じる筋肉の痛覚過敏及び/又は異痛のような非炎症性筋骨格疼痛及び/又は非炎症性変形性関節症の疼痛の予防、緩和、及び/又は治療のための更に別の活性剤、特に(a)のものとは異なる化合物
を含む、医薬組成物。
【請求項40】
前記(a)の化合物が、(R)−2−アセトアミド−N−ベンジル−3−メトキシプロピオンアミドである、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
請求項1及び8から28のいずれか一項に規定の化合物を含む第一の組成物と更に別の活性剤(b)を含む第二の組成物とを含む、1つの投与形態又は別々の投与形態を含む、請求項39又は40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記更に別の活性剤が鎮痙剤である、請求項39から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記鎮痙剤が、カルバマゼピン、フェニトイン、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリジン、及びレベチラセタムからなる群から選択される、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記更に別の活性剤が、鎮痙剤以外の少なくとも1つの抗変形性関節症剤である、請求項39から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記更に別の活性剤、特に抗変形性関節症剤が、オピオイド又は非オピオイド性鎮痛剤、ステロイド性抗炎症剤、NSAID若しくはCOX−2選択的インヒビター、又はDMOADである、請求項39から41及び44のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
(a)請求項1及び8から28のいずれか一項に規定の化合物、並びに
(b)変形性関節症と関連し、及び/又はそれによって引き起こされる疼痛のような、非炎症性関節痛の予防、緩和、及び/又は治療のための更に別の活性剤
を含む、医薬組成物。
【請求項47】
前記(a)の化合物が、(R)−2−アセトアミド−N−ベンジル−3−メトキシプロピオンアミドである、請求項46に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【公表番号】特表2009−504703(P2009−504703A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526452(P2008−526452)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008171
【国際公開番号】WO2007/020103
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(507038467)シュヴァルツ・ファーマ・アーゲー (8)
【Fターム(参考)】