説明

管継手のゴム輪位置の確認装置および確認方法

【課題】一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入され、受口の内周面と挿口の外周面との間でシール用のゴム輪が圧縮されるように構成された管継手における、ゴム輪が規定位置に設置されているかどうかの確認作業を、容易に行うことができるようにする。
【解決手段】本体部22と、本体部22に取り付けられるとともに、受口2の外側から受口2と挿口4との隙間16に挿入されることが可能であり、かつ挿入時にゴム輪10に当たることが可能な挿入片23と、本体部22から突出するとともに、挿入片23が隙間16に挿入されるときに受口2に当たることで、挿入片23の挿入量に応じた量だけ本体部22に入り込み可能な突出ロッド24と、本体部22への突出ロッド24の入り込み量に応じた信号を発生する信号発生手段54とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管継手のゴム輪位置の確認装置および確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管継手の一種として、一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入され、受口の内周面と挿口の外周面との間でシール用のゴム輪が圧縮されるように構成された管継手が知られている。このような管継手においては、一方および他方の管は、いずれもダクタイル鋳鉄管であることが通例である。
【0003】
このような管継手のうち、スリップオン管継手と称されるものがある(特許文献1)。スリップオン管継手は、あらかじめゴム輪を収容しておいた受口の中に挿口を挿入することで、受口挿口間でゴム輪を圧縮し、それによって所要のシール機能を発揮させるものである。
【0004】
管どうしの接合に際しては、挿口の挿入時にゴム輪と挿口との間に発生する摩擦抵抗を低減させるために、ゴム輪および挿口に滑剤が塗布される。摩擦抵抗が大きすぎると、挿口の挿入時にゴム輪が所定位置から受口の奥側へ離脱してしまい、そうなると所期のシール性能を発揮できなくなるため、滑剤の塗布工程は重要な工程である。
【0005】
しかし、配管施工現場では、滑剤の塗布を忘れることが皆無であるとはいえない。また降雨時には雨水によって滑剤が流れてしまうことがある。さらに、水道などの管路は掘削溝内に敷設されることで地中配管されることが通例であるが、その掘削溝内に水が溜まると、その水によって滑剤が流れてしまうことがある。
【0006】
このような問題の発生を防止するために、ゴム輪が正規の位置から離脱していないか否かを確認することが行われている。そのための公知の確認方法について説明する。
【0007】
図8は、公知の確認方法を示す図である。ここで、互いに接合される一方のダクタイル鋳鉄製の管1の端部には受口2が形成され、他方のダクタイル鋳鉄製の管3の端部には、受口2の内部に挿入される挿口4が形成されている。受口2の内周には、その開口端側から順番に、シール材収容溝5と、ロックリング収容溝6と、内周面7とが形成されている。シール材収容溝5は、深溝構造のヒール部の収容部8と、それよりも浅く形成されたバルブ部の収容部9とを有する。
【0008】
シール材収容溝5には、環状のゴム輪10が収容されている。このゴム輪10は、硬質のヒール部11と軟質のバルブ部12とが一体に形成されたものである。そしてゴム輪10は、ヒール部11が収容部8に収容されることで管軸方向に位置決めされるとともに、バルブ部12が収容部9に収容されかつ収容部9の底面と挿口4の外面との間で圧縮されることで、所要のシール機能を発揮可能である。
【0009】
ロックリング収容溝6には、環状の周方向一つ割りのロックリング13が収容されている。挿口4の先端の外周には、テーパ付きの環状突部14が一体に形成されている。
【0010】
このような構成において、管1、3どうしを接合する際には、受口2の内部にあらかじめロックリング13とゴム輪10とを収容しておき、その状態の受口2の内部に挿口4を挿入する。すると、挿口4に形成されたテーパ付きの環状突部14は、ゴム輪10を弾性的に押し広げることによってこのゴム輪10の位置を通過し、またロックリング13を弾性的に押し広げることによってこのロックリング13の位置を通過する。
【0011】
図8は、その後の接合完了状態を示す。この状態においては、挿口4の先端が受口2の奥端に当たる位置から、環状突部14がロックリング13に当たる位置までの範囲で、受口2と挿口4との伸縮が可能である。また環状突部14がロックリング13に当たることで、受口2からの挿口4の離脱が防止される。
【0012】
接合工事が終了したなら、ゴム輪10が規定の位置よりも受口2の奥側に深く入り込み過ぎていないかどうかを確認する。このために、図示のような薄板上のゲージ15を、受口2の外側から受口2と挿口4との隙間16に挿入して、その先端をゴム輪10に当てる。そして、そのときのゲージ15の入り込み量が最大許容値以下であることを、測長作業によって確認する。必要に応じて、測長結果を記録する。同様の確認作業を、管1、3の周方向に沿った複数の位置で行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−188773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このような手法では、ゲージ15の入り込み量を確認することが必要であり、煩わしい。また管路は一般に地表から形成された開削溝の底部に設置されることが多く、すると管の底側の部分では地面17と挿口4との間の狭い空間で上記の寸法確認作業を行うことが必要になり、困難を伴う。
【0015】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入され、受口の内周面と挿口の外周面との間でシール用のゴム輪が圧縮されるように構成された管継手における、ゴム輪が規定位置に設置されているかどうかの確認作業を、容易に行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するため本発明の管継手のゴム輪位置の確認装置は、一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入され、受口の内周面と挿口の外周面との間でシール用のゴム輪が圧縮されるように構成された管継手における、前記ゴム輪位置を確認するための装置であって、本体部と、前記本体部に取り付けられるとともに、受口の外側から受口と挿口との隙間に挿入されることが可能であり、かつ挿入時にゴム輪に当たることが可能な挿入片と、前記本体部から突出するとともに、前記挿入片が隙間に挿入されるときに受口に当たることで、挿入片の挿入量に応じた量だけ本体部に入り込み可能な突出ロッドと、本体部への突出ロッドの入り込み量に応じた信号を発生する信号発生手段とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明の管継手のゴム輪位置の確認装置によれば、信号発生手段は、挿入片がゴム輪に当たるときに規定量の範囲内で挿入された場合は正常確認信号を発生可能であるとともに、挿入片がゴム輪に当たるときに規定量よりも多い量だけ挿入された場合は異常確認信号を発生可能であることが好適である。
【0018】
本発明の管継手のゴム輪位置の確認装置によれば、本体部に屈曲自在体の一端部が取り付けられており、信号発生手段は前記屈曲自在体の他端部に設けられていることが好適である。
【0019】
また本発明の管継手のゴム輪位置の確認装置によれば、信号発生手段は発光手段を有し、この発光手段は、正常確認信号と異常確認信号とで異なった色彩の発光を行うことが可能であることが好適である。あるいは、発光手段は、正常確認信号と異常確認信号との一方として発光信号を発生可能であるとともに、正常確認信号と異常確認信号との他方として非発光信号を発生可能であることが好適である。
【0020】
本発明の管継手のゴム輪位置の確認方法は、上記の管継手のゴム輪位置の確認装置を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、挿入片を受口の外側から受口と挿口との隙間に差し込むだけで、ゴム輪の設置位置に応じた信号を発生することができるため、その信号を認識するだけで、ゲージの入り込み寸法の測定などを行わなくても、ゴム輪が正常位置に設置されているかどうかを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態の管継手のゴム輪位置の確認装置の使用状態を示す図である。
【図2】図1の管継手のゴム輪位置の確認装置の断面図である。
【図3】同管継手のゴム輪位置の確認装置の回路図である。
【図4】同管継手のゴム輪位置の確認装置の動作を示す図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の管継手のゴム輪位置の確認装置の概略構成を示す図である。
【図6】図5の管継手のゴム輪位置の確認装置の使用状態を示す図である。
【図7】本発明のさらに他の実施の形態の管継手のゴム輪位置の確認装置の回路構成を示す図である。
【図8】従来の管継手のゴム輪位置の確認方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態の管継手のゴム輪位置の確認装置および確認方法について、図1〜図4を参照しながら、図8に示したものと同一の部材には同一の参照番号を付して、詳細に説明する。
【0024】
図1において、21は本発明の実施の形態の管継手のゴム輪位置の確認装置を示す。この確認装置21は、円筒状の本体部22と、本体部22に片持ち状態で取り付けられた薄肉の板状の挿入片23と、本体部22から挿入片23と同方向に突出する突出ロッド24とを備えている。本体部22は、作業者が手25で握りやすい寸法で形成されている。
【0025】
図2に示すように、本体部22は、中央筒部26と、中央筒部26の後側にねじ合わされる後側キャップ27と、中央筒部26の前側にねじ合わされる有底の短筒部28と、短筒部28の前側にねじ合わされる前側キャップ29とを備えている。30は、短筒部28の底部である。これらの部材にて構成された本体部22は、金属あるいはプラスチックなどの材料にて形成されていることが好適である。
【0026】
中央筒部26の後側の部分の内部には、ベース部材31が設けられている。このベース部材31は、ねじ32によって中央筒部26に固定されている。ベース部材31と短筒部28の底部30との間における中央筒部26と短筒部28との内部には円柱状の空間33が形成されており、この空間33には円筒状のスライダ34が収容されている。本体部22の長さ方向に沿ったスライダ34の長さは空間33の長さよりも短く形成されており、したがってスライダ34は空間33の内部を本体部22の長さ方向にスライド可能である。中央筒部26の前側の内部にはブッシュ35が圧入されており、スライダ34はこのブッシュ35によってスライド自在に支持されている。中央筒部26の前端におけるこの中央筒部26の内周とスライダ34の外周との間には、環状のシールパッキン36が圧縮状態で設けられている。
【0027】
スライダ34の外面にはその長さ方向の溝部37が形成されている。43は無頭ねじで、その一端が中央筒部26にねじ込まれるとともに、その他端が溝部37にはまり込んでいる。これによってスライダ34の回り止めが施されている。スライダ34の後部とベース部材31との間には圧縮コイルばね38が設けられている。この圧縮コイルばね38は、スライダ34を本体部22の前側すなわち短筒部28の底部30に向けて押圧可能である。39は支柱で、圧縮コイルばね38に内ばめされた状態でその一端がベース部材31に取り付けられることで、圧縮コイルばね38を本体部22の中心部に位置決め可能である。
【0028】
前側キャップ29は、短筒部28の前端に被さった状態で、この短筒部28の前端にねじ合わされている。短筒部28の底部30の中心部および前側キャップ29の中心部には貫通孔40,41が形成されている。突出ロッド24は、その基端部がスライダ34に固定されるとともに、貫通孔40、41を通って、本体部22の外部に突出している。突出ロッド24の先端には、半球状の接触子42が一体に形成されている。
【0029】
挿入片23は、その基端部45が前側キャップ29に固定されている。46は、挿入片23における受口挿口間への挿入部である。挿入部46は、その先端側ほど本体部22の軸心に接近するように、この本体部22の軸心に対して傾斜した状態で設けられている。
【0030】
後側キャップ27と中央筒部26とのねじ合わせ部にはOリング47が設けられており、両者の間をシールしている。後側キャップ27の内部には、電子回路部48が設けられている。この電子回路部48において、49は回路基板で、その前端がベース部材31に取り付けられている。回路基板49には、一対のマイクロスイッチ50、51が、本体部の軸心方向に所定の距離をおいて取り付けられている。また回路基板49には電池ケース52が設けられており、この電池ケース52には乾電池53が収容されている。
【0031】
回路基板49の後端には発光ダイオード54が設けられている。後側キャップ27の底部には透明窓部55が設けられており、この透明窓部55を通して、発光ダイオード54の光が後側キャップ27の外部すなわち確認装置21の外部へ出射できるように構成されている。
【0032】
スライダ34の後端には、作動ロッド57の基端部がねじ58によって固定されている。作動ロッド57は、ベース部材31を貫通してその先端部が電子回路部48に達している。作動ロッド57の先端は、電子回路部48において折り曲げ形状に形成されており、それによってマイクロスイッチ50、51を作動させるための蹴上部59を構成している。
【0033】
すなわち、図2に示す状態から突出ロッド24の先端の接触子42が押されて突出ロッド24が本体部22に入り込むと、それによってスライダ34が圧縮コイルばね38の力に抗して確認装置21の後側に向けて移動され、それに連動して作動ロッド57も電子回路部48の後側に向けて移動される。すると、その移動量が増えるにしたがって、作動ロッド57の蹴上部59は、まず前側のマイクロスイッチ50を蹴り上げて動作させる。次いで、作動ロッド57によって前側のマイクロスイッチ50の蹴り上げ状態を維持しながら、蹴上部59が後側のマイクロスイッチ51を蹴り上げて動作させる。その後は、前側のマイクロスイッチ50と後側のマイクロスイッチ51との双方の蹴り上げ状態を維持しながら、さらに作動ロッド57の移動量を増大させることができる。
【0034】
電子回路部48の回路構成を図3に示す。マイクロスイッチ50、51は、いずれも、常閉ターミナル61と、常開ターミナル62と、共通ターミナル63とを有する。発光ダイオード54は、アース端子64と、青色発光用入力端子65と、赤色発光用入力端子66とを備えている。そして、前側のマイクロスイッチ50の共通ターミナル63がアース接続され、前側のマイクロスイッチ50の常閉ターミナル61は無接続の開放状態とされている。前側のマイクロスイッチ50の常開ターミナル62は、乾電池53と、乾電池を電源として発光ダイオード54を発光させるための昇圧回路67とを介して、後側のマイクロスイッチ51の共通ターミナル63に接続されている。昇圧回路67は、発光ダイオード54への電流を一定値以下にするための電流制限手段を備えている。後側のマイクロスイッチ51の常閉ターミナル61は発光ダイオード54の青色発光用入力端子65に結線され、また後側のマイクロスイッチ51の常開ターミナル62は発光ダイオード54の赤色発光用入力端子66に結線されている。
【0035】
このような構成において、図示のように作動ロッド57の蹴上部59がいずれのマイクロスイッチ50、51も蹴り上げていない状態では、前側のマイクロスイッチ50によって乾電池53とアースとの間が開かれているため、回路は動作せず、ダイオード54は発光しない。
【0036】
作動ロッド57の蹴上部59が前側のマイクロスイッチ50を蹴り上げると、その常開接点が閉じられて、常開ターミナル62すなわち乾電池53がアースに導通される。すると後側のマイクロスイッチ51の常閉ターミナル61を介してダイオード54の青色発光用入力端子65に電流が供給されて、ダイオード54は青色に発光する。
【0037】
この状態で作動ロッド57が移動し続けるとともに、その蹴上部59が後側のマイクロスイッチ51を蹴り上げる前に移動を停止した場合は、前側のマイクロスイッチ50は作動ロッド57によって蹴り上げられた状態に保たれ、したがってダイオード54は青色に発光し続けることになる。
【0038】
蹴上部59が後側のマイクロスイッチ51を蹴り上げるまで作動ロッド57が移動すると、前側のマイクロスイッチ50の蹴り上げによりその常開接点を閉じた状態を維持しながら、後側のマイクロスイッチ51の開閉状態が変化される。すなわち、後側のマイクロスイッチ51の蹴り上げによって、その常開接点が閉じられるとともに常閉接点が開かれる。すると、後側のマイクロスイッチ51では、それまでの常閉ターミナル61に代えて常開ターミナル62に電流が流れ、したがってダイオード54はそれまでの青色に代えて赤色に発光することになる。
【0039】
さらに作動ロッド57が移動した場合は、両方のマイクロスイッチ50、51の蹴り上げ状態が維持され、ダイオード54は、作動ロッド57がその移動限に至るまで赤色に発光し続ける。
【0040】
作動ロッド57が元の位置に向けて戻るときには、ダイオード54は、赤色から青色に発光状態が変化したうえで、その後に発光しなくなる。
【0041】
図1に示す管継手の接合作業が終了した後に、ゴム輪10の位置を確認する際には、図1に示すように作業者が確認装置21を手25に持って、その挿入片23を受口2の外側から、受口2と挿口4との隙間16に挿入する。すると、突出ロッド24の接触子42が受口2の端面に当たる。図4において、Aは受口2の端面に当たる前の接触子42の位置を示し、aはそのときの蹴上部59の位置を示す。
【0042】
突出ロッド24の接触子42が受口2の端面に当たった後にさらに挿入片23を挿入すると、それにともなって突出ロッド24が本体部22に入り込み、それに連動して作動ロッド57が移動することで、その蹴上部59が前側のマイクロスイッチ50を蹴り上げる。図4において、bはそのときの蹴上部59の位置、Bはそのときの接触子42の位置である。すなわち、挿入片23が受口2と挿口4との隙間16に挿入されると、その挿入の初期の段階、つまり挿入片23の挿入部46の先端が図1に示されるゴム輪10に到達する以前に、ダイオード54が青色に発光する。
【0043】
その後にさらに挿入片23を挿入すると、やがて挿入片23は図1に示されるようにゴム輪10に当たる。すると、それ以上の挿入はできなくなる。
【0044】
図4における接触子42の位置Cは、挿入片23の許容挿入限度を超えた位置に対応して設定されたものである。接触子42がこの位置Cに到達したときには、作動ロッド57の蹴上部59は位置cに到達し、後側のマイクロスイッチ51を蹴り上げる。これにより、ダイオード54は発光状態が青色から赤色に変化する。
【0045】
つまり、接触子42が位置Cに到達する前に挿入片23がゴム輪10に当たった場合は、ゴム輪10の位置は正常であり、許容範囲を超えて受口2の奥側に入り込んではいない状況にある。このときは、ダイオード54は青色に発光したままであり、それによってゴム輪10が正常位置に存在していることが確認される。
【0046】
反対に、ゴム輪10が規定の位置よりも受口2の奥側に深く入り込み過ぎていた場合には、それに対応して挿入片23が隙間16の奥側まで入り込み、それによって、接触子42が位置Cに到達するかまたはそれ以上の位置まで、突出ロッド24が本体部22に入り込む。これによって、ダイオード54の発光状態が青色から赤色に変化するため、ゴム輪10の位置が異常であることが確認される。
【0047】
図4における接触子42の位置Dは、本体部22への突出ロッド24の入り込み限を示す。dは、そのときの蹴上部59の位置である。
【0048】
このようなゴム輪10の位置の確認作業を、管の周方向に沿った複数の位置で実施する。各位置での確認作業が終了したときには、挿入片23を受口2と挿口4との隙間から抜き出すことで、図2に示される圧縮コイルばね38の作用によって、突出ロッド24は、接触子42が図4の位置Aに戻るように復帰される。このとき、ダイオード54は発光を停止する。
【0049】
このように、作業者が確認装置21を手25に持って、その挿入片23を受口2と挿口4との隙間16に挿入し、発光ダイオード54の発光状況を観察するだけで、管の全周にわたって、ゴム輪10の位置の良否を容易に確認することができる。たとえば、管底部で確認作業中の確認装置21のダイオード54の発光状況を、それ以外の位置で確認することができる。しかも、従来のゲージを用いた場合のような測長作業やその測長結果の記録作業などを行うことなく、ゴム輪10の位置の確認作業を実行することができる。
【0050】
また透明窓部55として広角レンズを使用すれば、発光状況の観察による確認作業を広い角度から行うことができる。たとえば、管底部で確認作業中の確認装置21のダイオード54の発光状況を管頂部にて確認することも可能である。
【0051】
なお、上述の光による確認信号に代えて、あるいはそれとともに、音などの他の確認信号を採用することもできる。
【0052】
上記構成の確認装置21であると、確認作業時に自動的に電源が入り、非使用時には自動的に電源が切れるので、電源の切り忘れによる乾電池53の消耗がないという利点がある。中央筒部26と後側キャップ27とのねじ合わせをゆるめて、この後側キャップ27を開放させれば、図2において仮想線で示すように、乾電池53の交換を行うことができる。
【0053】
後側キャップ27と中央筒部26との間がOリング47にてシールされ、中央筒部26とスライダ34との間がシールパッキン36にてシールされているため、確認装置21を雨水やその他の溜まり水の影響を受けやすい管路の敷設現場で使用する場合にも、電子回路部48への水の入り込みを確実に防止することができる。
【0054】
図5は、本発明の他の実施の形態の管継手のゴム輪位置の確認装置の概略構成を示す。この確認装置21Aでは、本体部22の後側に金属製の屈曲自在体71が連結されている。屈曲自在体71としては、たとえば一般に「スタンドチューブ」と称されているものであって、水密性を有するものを好適に用いることができる。「スタンドチューブ」とは、特殊な形状の線材をスパイラル状に巻き付けることによってチューブ状に形成したものであり、図示のような任意の湾曲形態に屈曲自在であるとともに、その屈曲状態を保持することが可能なものである。水密性を有するスタンドチューブは、たとえば瞬間湯沸器の給湯管などに用いられている。水密性を有することで、屈曲自在な構成でありながら、電子回路部48への水の入り込みを確実に防止することができる。
【0055】
屈曲自在体71は、上記のようにチューブ状に構成され、その一端部すなわち基端部が本体部22に取り付けられている。発光ダイオード54および透明窓部55は、屈曲自在体71の他端部すなわち先端部に設けられている。屈曲自在体71の内部には、発光ダイオード54への導線が通されている。なお、金属製の屈曲自在体71の外周を樹脂製のフレキシブルチューブなどで覆えば、屈曲自在体71に傷が付いたり錆が発生したりすることを防止できる。
【0056】
このような構成であると、発光ダイオード54を任意の方向に向けた状態で、管継手のゴム輪位置の確認を行うことができる。たとえば、図6に示すように地表から掘削した開削溝の底部の地面17に管路を敷設した場合において、その管1、3の底部において管継手のゴム輪位置の確認を行う際には、図示のように屈曲自在体71の先端部を上向きとすることにより、発光ダイオード54を上向きに発光させることができる。このため、管1、3の底部の近傍や、地面17の近傍の狭い空間に入り込まなくても、それよりも上方の広い位置において、管1、3の底部における管継手のゴム輪位置の確認を行うことができる。
【0057】
図7は、電子回路部および作動ロッドの別の例を示す。この図7の電子回路部48Aでは、マイクロスイッチ50は一つだけが用いられている。発光ダイオード54Aは、単色のものが用いられている。そして、マイクロスイッチ50の共通ターミナル63はアース設置され、その常開ターミナル62は、乾電池53と昇圧回路67とを介して発光ダイオード54Aへ導かれている。
【0058】
作動ロッド57Aは、その先端に蹴上部59を有するとともに、その基端側に凹状の蹴上解除部72が形成されている。蹴上部59と蹴上解除部72との間には、蹴上部59に続く蹴上状態維持部73が形成されている。
【0059】
このような構成において、作動ロッド57Aの移動前の状態においては、マイクロスイッチ50によって乾電池53とアースとの間が開かれているため、回路は動作せず、ダイオード54Aは発光しない。作動ロッドが移動してその蹴上部59がマイクロスイッチ50を蹴り上げると、その常開接点が閉じられて乾電池53がアースに導通され、それによってダイオード54Aが発光する。この点は、図2に示された電子回路部48の動作と同じである。そして、その後に作動ロッド57Aが移動し続け、蹴上解除部72がマイクロスイッチ50に到達する前に移動を停止した場合は、マイクロスイッチ50は蹴上状態維持部73によって蹴上状態に維持され、したがってダイオード54Aは発光状態に維持される。
【0060】
蹴上解除部72がマイクロスイッチ50に到達するまで作動ロッド57Aが移動すると、それによってマイクロスイッチ30の蹴上状態は解除され、ダイオード54Aは発光を停止する。
【0061】
すなわち、図7の電子回路部48Aでは、図1に示す場合と同様に確認装置の挿入片23を受口2と挿口4との隙間に挿入し、それにもとづき突出ロッド24の接触子42を受口2の端面に当てると、それにより作動ロッド57Aが移動を開始してダイオード54Aが発光する。そして、ゴム輪10の位置が適正であると、それに対応してダイオード54Aが発光状態を維持する。
【0062】
ゴム輪10が規定の位置よりも受口2の奥側に深く入り込み過ぎていた場合には、それに対応して作動ロッド57Aが大きく移動する。そして、それによって蹴上解除部72がマイクロスイッチ50の位置に到達することで、ダイオード54Aは発光を停止する。
【0063】
すなわち、図7の電子回路部48Aによれば、ゴム輪10が適正位置にある場合はダイオード54Aが発光し、ゴム輪10の位置が異常である場合には、いったん発光したダイオード54Aがその後に発光を停止するため、その異常を確認することができる。
【0064】
あるいは、上記に代えて、発光ダイオード54Aが正常時には発光せず、異常時にのみ発光するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 管
2 受口
3 管
4 挿口
10 ゴム輪
16 隙間
21 確認装置
22 本体部
23 挿入片
24 突出ロッド
54 発光ダイオード
54A 発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管の端部に形成された受口の内部に、他方の管の端部に形成された挿口が挿入され、受口の内周面と挿口の外周面との間でシール用のゴム輪が圧縮されるように構成された管継手における、前記ゴム輪位置を確認するための装置であって、
本体部と、
前記本体部に取り付けられるとともに、受口の外側から受口と挿口との隙間に挿入されることが可能であり、かつ挿入時にゴム輪に当たることが可能な挿入片と、
前記本体部から突出するとともに、前記挿入片が隙間に挿入されるときに受口に当たることで、挿入片の挿入量に応じた量だけ本体部に入り込み可能な突出ロッドと、
本体部への突出ロッドの入り込み量に応じた信号を発生する信号発生手段と、
を有することを特徴とする管継手のゴム輪位置の確認装置。
【請求項2】
信号発生手段は、挿入片がゴム輪に当たるときに規定量の範囲内で挿入された場合は正常確認信号を発生可能であるとともに、挿入片がゴム輪に当たるときに規定量よりも多い量だけ挿入された場合は異常確認信号を発生可能であることを特徴とする請求項1記載の管継手のゴム輪位置の確認装置。
【請求項3】
本体部に屈曲自在体の一端部が取り付けられており、信号発生手段は前記屈曲自在体の他端部に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の管継手のゴム輪位置の確認装置。
【請求項4】
信号発生手段は発光手段を有し、この発光手段は、正常確認信号と異常確認信号とで異なった色彩の発光を行うことが可能であることを特徴とする請求項2または3記載の管継手のゴム輪位置の確認装置。
【請求項5】
信号発生手段は発光手段を有し、この発光手段は、正常確認信号と異常確認信号との一方として発光信号を発生可能であるとともに、正常確認信号と異常確認信号との他方として非発光信号を発生可能であることを特徴とする請求項2または3記載の管継手のゴム輪位置の確認装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の管継手のゴム輪位置の確認装置を用いることを特徴とする管継手のゴム輪位置の確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−102697(P2011−102697A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256610(P2009−256610)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】