管継手
【課題】管継手に多大な熱量が作用しても、結合ボルトの締付力が低下せず、管内液体の漏れやシール性の低下を防止することが出来る様な管継手の提供。
【解決手段】締付環(g、h)とパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α)が介装され、複数本の結合ボルト(k)を包囲する断熱材(第1の断熱材A)と、断熱材(A)の外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する被覆層(第2の断熱材B)と、該被覆層(B)の外周部に配置され且つ該被覆層(第2の断熱材B)を断熱材(A)側へ押圧する板状の固定部材(C)とを有している。
【解決手段】締付環(g、h)とパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α)が介装され、複数本の結合ボルト(k)を包囲する断熱材(第1の断熱材A)と、断熱材(A)の外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する被覆層(第2の断熱材B)と、該被覆層(B)の外周部に配置され且つ該被覆層(第2の断熱材B)を断熱材(A)側へ押圧する板状の固定部材(C)とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本の管(被接続管)を接続するための管継手の改良に関し、耐火性を向上した管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
2本の管を接続するに当たって、一般的に求められる性能としては、
(1) 被接続管の内部を流れる流体が、継手部分から漏出しない程度のシール性、
(2) 被接続管の向かい合った管端部間の間隔が変動可能であること、すなわち被接続管の軸線方向について摺動可能であること、
(3) 場合によっては、接続箇所で2本の被接続管が形成する角度が多少変動可能であるような可撓性、
の3つが挙げられる。
【0003】
このような性能を有する管継手として、出願人は、締付環(g、h)とシール部材であるパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α)を介装して、火炎に曝されても、パッキング環(m、n)が劣化しない様な管継手を提案した(特許文献1参照)。
図16は、係る管継手の一部断面を含む側面を示している。
係る従来技術(特許文献1)によれば、前記断熱手段(α)によりパッキング環(m、n)への熱伝導が小さくなり、パッキング環(m、n)は耐熱性を有し、800℃の環境下に30分おかれても、劣化しない。
【0004】
しかし、発明者の実験によれば、管継手に作用する火炎の熱量が膨大であると、パッキング環(m、n)は劣化しなくても、管継手用結合ボルト(k)が熱によって塑性変形して(伸びて)しまうことが分かった。
そして、管継手用結合ボルト(k)が塑性変形する結果、ボルト(k)に作用する引っ張り力が減少し、パッキング環(m、n)に作用する締付力が低下するため、管内液体の漏れが発生して、シール性を保つことができなくなってしまうことが判明した。
【特許文献1】特開2006−112576
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、管継手に多大な熱量が作用しても、当該熱量により結合ボルトの締付力が低下せず、管内液体の漏れやシール性のそうしつ低下を防止することが出来る様な管継手の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の管継手は、(間隔Lを空けて直列に配置された2本の)被接続管(b、c)に遊嵌されたソケット管(d)が被接続管(b、c)の対向する管端(e、f)に跨って配置され、被接続管(b、c)の各々に遊嵌された締付環(g、h)がソケット管(d)の両側に配置され、締付環(g、h)は複数本の結合ボルト(k)で結合され、ソケット管(d)の両端部内面(テーパ面j、i)と被接続管(b、c)の外周面(bf、cf:管表面)との間にパッキング環(m、n)が挟装され、パッキング環(m、n)は締付環(g、h)によって被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)に圧接させられ、被接続管(b、c)が軸方向(X方向)に摺動可能にシールされる様に構成されており、締付環(g、h)とパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α)が介装されており、複数本の結合ボルト(k)を包囲する断熱材(第1の断熱材A)と、断熱材(A)の外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する材料からなる被覆層(第2の断熱材B)と、該被覆層(B)の外周部に配置され且つ該被覆層(B)を断熱材(A)側へ押圧する板状の固定部材(金属製外環C)とを有し、前記断熱材(A)は円周方向について結合ボルト(k)の数と同数の区画に分割されており、各区画の各々には結合ボルト(k)を収容する溝(Au)が形成されていることを特徴としている(請求項1)。
【0007】
本発明において、前記板状の固定部材(金属製外環C)はヒンジ部分(Ch)を有しており、ヒンジ部分(Ch)の折れ曲り角度を変化させることにより曲率半径を変化させることが出来る機能を有しており、前記板状の固定部材(金属製外環C)の円周方向の端部には固定部(Cb)が設けられており、前記板状の固定部材(金属製外環C)の円周方向両端部の固定部(Cb)同士を結合することにより前記被覆層(第2の断熱材B)を断熱材(A)側へ押圧して固定する機能を有することが好ましい(請求項2)。
【0008】
また、前記断熱材(A)を構成する結合ボルト(k)の数と同数の区画は、同一の形状をしているのが好ましい(請求項3)。
【0009】
前記板状の固定部材(C)は軸方向(X方向)両端部が前記結合ボルト(k)の軸方向(X方向)両端部より、所定距離(β:例えば50mm)以上軸方向外方(図13の左右方向、図14の左方)へ延在するように構成されていることが好ましい(請求項4)。
【0010】
また、本発明の管継手は、被接続管(b、c)に遊嵌されたソケット管(d)が被接続管(b、c)の対向する管端(e、f)に跨って配置され、被接続管(b、c)の各々に遊嵌された締付環(g、h)がソケット管(d)の両側に配置され、締付環(g、h)は複数本の結合ボルト(k)で結合され、ソケット管(d)の両端部内面(j、i)と被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)との間にパッキング環(m、n)が挟装され、パッキング環(m、n)は締付環(g、h)によって被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)に圧接させられ、被接続管(b、c)が軸方向(X)に摺動可能にシールされる様に構成されており、締付環(g、h)とパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α)が介装されており、前記締付環(g、h)の外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する材料からなる被覆層(B)と、該被覆層(B)の外周部に配置され且つ該被覆層(B)を締付環(g、h)側へ押圧する板状の固定部材(金属製外環C)とを有し、該固定部材(C)は軸方向(X方向)両端部が前記結合ボルト(k)の軸方向(X方向)両端部より、それぞれ、所定距離(β:例えば50mm)以上軸方向外方へ延在している(請求項5)。
【0011】
ここで、断熱材(B)の軸方向(X方向)長さは、断熱材(B)の軸方向(X方向)両端部が、結合ボルト(k)の両端部よりも軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)に突出する様に延長されているのが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
上述した構成を具備する本発明の管継手によれば、複数本の結合ボルト(k)を包囲する断熱材(A)と、断熱材(A)の外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する材料からなる被覆層(第2の断熱材B)と、該被覆層(B)の外周部に配置され且つ該被覆層(B)を断熱材(A)側へ押圧する板状の固定部材(金属製外環C)とを有しているので、管継手に多大な熱量が作用しても、断熱材(A)と被覆層(第2の断熱材B)と板状の固定部材(金属製外環C)により、締付ボルト(k)に伝達される熱量が極めて少なくなる。
そのため、管継手に多大な熱量が作用しても、結合ボルト(k)は塑性域には至らず、ナットとの締結により結合ボルト(k)に作用する引張力で結合ボルト(k)が伸びてしまうことはなく、結合ボルト(k)に作用する引張力すなわちパッキング環(m、n)に作用する締付力は低下することなく保持されるので、管内液体の漏れの発生を防止して、管継手のシール性を保持する事が出来る。
【0013】
ここで、締付ボルト(k)のボルトヘッド及びナットが噛み合っている箇所は、断熱材(A)と被覆層(第2の断熱材B)と板状の固定部材(金属製外環C)には被覆されておらず、露出しているので、締付ボルト(k)の締め付け力の調整(増締め等)や、管継手のメンテナンスで内部流体の漏れをチェックする際に、断熱材(A)と被覆層(第2の断熱材B)と板状の固定部材(金属製外環)を外す必要がない。
そのため、耐火性、耐熱性を向上しても、管継手としての本来の機能を損なうことは無く、メンテナンスも容易となる。
【0014】
さらに本発明によれば、複雑な、また高価な装置等を必要とすることなく、既存の管継手の耐火性、耐熱性を向上する事が出来る。
【0015】
そして、前記板状の固定部材(C)を軸方向の両端部が前記結合ボルト(k)の両端部より、それぞれ、所定距離(β:例えば50mm)以上軸方向外方へ延在するように構成すれば(請求項4)、軸方向外方へ延在した金属製外環(C)の軸方向両端部により、半径方向内方に回り込んだ火炎が結合ボルト(k)及び締付環(g、h)に到達するのが阻害される。或いは、半径方向内方に回り込んだ火炎が結合ボルト(k)及び締付環(g、h)に到達したとしても、その温度が低下(150℃〜200℃程度降温)する。
【0016】
その結果、結合ボルト(k)及び締付環(g、h)が直接火炎に曝されることが防止され、或いは、高熱が結合ボルト(k)に作用することが防止されるので、結合ボルト(k)の熱膨張による延びが抑制される。
また、結合ボルト(k)及び締付環(g、h)が直接火炎に曝されることがなくなり、或いは火炎の温度が低下するため、結合ボルト(k)及び締付環(g、h)における温度上昇が抑制され、パッキン環(m、n)に高熱が伝達されることによる悪影響を防止することができる。そして、締付環(g、h)の温度上昇が少なくなるため、パッキン環(m、n)からの流体の漏洩が防止される。
【0017】
これに加えて、断熱材(B)の軸方向長さを延長して、断熱材(B)の軸方向両端部が、各々、結合ボルト(k)の両端部よりも軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)に突出する様に構成すれば(請求項6)、半径方向内方に回り込んだ火炎が、より一層、結合ボルト(k)及び締付環(g、h)に到達し難くなる。
【0018】
また、請求項5の発明によれば、断熱材(A)を省略することが出来るので、上述した作用効果に加えて、構成部品点数を削減して、組立工数を減少することが出来るので、各種コストを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図1〜図12を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
なお、図示の実施形態において、同様の部材には同様な符号を付して、重複説明を省略する。
【0020】
図1、図2において、全体を符号100で示す伸縮可撓管継手は、間隔Lを空けて直列に配置された2本の被接続管b、cを、矢印X方向にスライド可能であり(伸縮可能であり)、且つ、矢印Mで示す様に屈曲可能に(可撓性を有する様に)接続している。
被接続管b、cの半径方向外方にソケット管dが遊嵌されており、ソケット管dは、両被接続管b、cの互いに対向する管端e、fにまたがって配置されている。
被接続管b、cの半径方向外方には、それぞれ締付環g、hが遊嵌されており、該締付環g、hはソケット管dの両端部近傍に配置されており、複数本の結合ボルトkで互いに結合されている。
【0021】
ソケット管dの両端部内面にはテーパ面j、iが形成され、テーパ面j、iと被接続管b、cの外周面bf、cfとの間には、シール部材であるゴム製のパッキング環m、nが配置されている。
複数本のボルトkを締め付けて、締付環g、h同士を互いに近接せしめると、ゴム製のパッキング環m、nは押圧されて、被接続管b、cの外周面bf、cfに圧接される。そして、ゴム製のパッキング環m、nが被接続管b、cの外周面bf、cfに圧接されることにより、各被接続管b、cは、軸方向Xに摺動可能な状態でシールされる。
【0022】
図2において、符号Sはソケット管dの移動制限用に設けられたボルトである。
被接続管b、cの外周面(管表面)bf、cfに、締付環g、hとパッキング環m、nとが配置されている領域の構造の詳細については、図3を参照して後述する。
【0023】
図示の実施形態に係る伸縮可撓管継手100では、ソケット管d及び締付環g、hが被接続管b、cに遊嵌されているので、ソケット管dと締付環g、hとの間には間隙W1が存在し、締付環g、hと被接続管b、cとの間には間隙W2が存在している。そのため、伸縮可撓管継手100で接続された被接続管b、cは、パッキング環m、nが管表面bf、cfに圧接させられている部位を支点にして、矢印M、M方向に撓曲可能である。すなわち、可撓性を有している。
【0024】
また、伸縮可撓管継手100では、パッキング環m、nが締付環g、hにより被接続管b、cの外周面bf、cfに圧接されており、被接続管b、cを軸方向Xに摺動可能な状態でシールしている。そのため、被接続管b、cは、その管端e、f間の間隔Lを変更することが出来る。すなわち管端e、fが当接するまで、間隔Lを短くすることが出来る。一方、管端e、fがパッキング環m、nの直下近傍に達するまでの範囲内であれば、シール状態を保持ししつつ、間隔Lを長くすることが出来る。
【0025】
次に図3を参照して、被接続管b、cの外周面(管表面)bf、cfにおいて、締付環g、hとパッキング環m、nとがどの様に配置されているかについて、説明する。
ここで、締付環g、hとパッキング環m、nから成る構造は、図2において、ソケット管dの左右両端近傍に存在するが、図3は、図2の左側の構造(図2の破線の円O内)のみを示す。
【0026】
図3において、締付環hとパッキング環nとソケット管dで挟まれた領域、より詳細には、締付環hの右側面hiと、締付環hのリブhtの下方側面htiと、パッキング環nの左側面noと、ソケット環dの外周dfとで包囲された領域には、耐熱性材料で構成された断熱材αが介装されている。
断熱材αは、全体が環状に構成されており、その周縁部にリブ部分αtが形成されている。そして断熱材αの半径方向内方縁部(図3では下方縁部)αeは、被接続管cの外周面(管表面)cfに接触している。
なお、図3において、符号hoは、締付環hの左側面を示す。
【0027】
断熱材αは、断熱性と、組込みに不自由が無い程度の可撓性とを併せ持つ材料であれば適用可能であり、公知の断熱材を利用して形成することが出来る。そして、石綿や、石綿代替品として開発されたガスケット材料を用いることが可能である。
断熱材αとしては、例えば、商品名「ノンアスジョイントシート」(日本バルカー工業株式会社の製品:「ノンアス」は日本バルカー工業株式会社の登録商標)なるガスケット材料が利用可能である。
【0028】
ここで、耐熱材αの厚さ寸法(図3において、リブ部分αt以外の部分におけるX方向寸法)は任意に定めることが出来て、例えば、5mm〜10mmの範囲にすることが出来る。
但し、耐熱材αの厚さ寸法が小さ過ぎると、十分な断熱性能が発揮されない恐れがある。一方、断熱材αの厚さ方向寸法が大き過ぎると、結合ボルトkで締付環g、h間の距離を短くするように締め付けた際に、当該締付力が断熱材αの厚さで吸収されてしまうため、パッキング環m、nによるシール性が悪化してしまう可能性が有る。
【0029】
換言すれば、耐熱材αの厚さ寸法は、シール性に悪影響を与えない範囲内で、且つ、必要な耐熱性を発揮できる範囲内であれば、自由に設定することが出来る。
出願人の行った実験では、耐熱材αの厚さ寸法が3mm位であれば効果が有るが、1mmでは効果は乏しかった。
【0030】
断熱材αを介装させることにより、金属製の締付環hの側面hi及び/又はリブhtの側面htiを介して伝達される熱(伝熱)は、断熱材αによって遮断されるので、パッキング環nに熱(伝熱)は作用しない。従って、パッキング環nが金属製の締付環hからの伝熱により、軟化してしまうことが防止される。
また、締付環hと被接続管cの外周面(管表面)cfとの隙間(空間W2)を経由して、矢印TFで示す高温空気がパッキング環n側に侵入しようとしても、耐熱材αの半径方向縁部(図3では下方縁部)αeが被接続管cの外周面(管表面)cfに接触しているため、高温空気TFも遮断され、パッキング環nに熱的な損傷を与えてしまうことが防止される。
【0031】
図示されていないが、パッキング環m、n(図3ではパッキング環nのみを示す)の材料として、高温でも容易に軟化しないフッ素ゴム(FPMゴム)を用いることが好ましい。フッ素ゴム(FPMゴム)は高温に曝されても容易に軟化しないので、パッキング材が軟化して流れてしまう恐れが無い。その他軟化点の高い材料が好ましい。
但し、パッキング環m、nを安価なアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)で断熱材αを構成しても、耐熱性は確保される。NBRを用いることにより、管継手の製造コストを抑えることが可能となる。
なお、フッ素ゴムは高温により硬化するが、その様な硬化は、特に技術的な問題を惹起するものでは無い。
【0032】
断熱材の構造は、図2、図3で示す断熱材αの構造に限定されるものではない。図4に示す断熱材α1の様に構成し、或いは、図5に示す断熱材βのような構成とすることも可能である。さらに図4、図6で示すように、異なる構造の断熱材を組み合わせて用いることも可能である。
【0033】
図1、図2に戻り、締付環g、hの最外周を半径とする円筒空間と、ソケット管dの外周dfとの間の領域で、且つ、締付環g、hによって挟まれた領域には、第1の断熱材Aが介装されている。
【0034】
第1の断熱材Aは、図1に示すように、円周方向において、ボルトkの本数と同数(図示の例では8個)に分割されている。断熱材Aの各ブロック(円周方向に分割された個々の区画)を環状に連結している。
断熱材Aの各ブロックの内周面には半径方向に延在する溝Auが形成され、その溝Auに結合ボルトkが収容され、以って、断熱材Aによって結合ボルトkを覆い、結合ボルトkを高熱から遮蔽する様に構成されている。
断熱材Aの1個のブロックには、周方向の端面に、それぞれ凸部Aaと凹部Abとが形成され、隣接するブロックは、この凹凸Ab、Aaが係合することで、半径方向のずれを拘束しつつ、連結されている。
【0035】
断熱材Aとしては、例えば、株式会社ITMの「ファイバーマックス」(商品名)14Rボード、ニチアス株式会社の「ファインフレックス」(商品名)モールド品T/#5420等がある。
断熱材Aの材料には、ボルトkの軸部が高温に曝されてダメージを受けない程度の断熱性を有することが要求される。
【0036】
断熱材Aの外周には、シート状の第2の断熱材Bが、断熱材Aの外周を被覆する様に巻き付けられている。
第2の断熱材Bの外周には、薄い板状の固定部材C(金属製外環C)が配置されている。金属製外環Cで締め込むことにより、断熱材Bの幅方向の端部を締付環g、hの外周面に圧着させ、浸水を防止することが出来る。
【0037】
第2の断熱材Bにおいても断熱性が要求されるが、防水性或いは遮水性を発揮する事が、第2の断熱材Bの主な目的となっている。ここで、断熱材Bはシート状であり、断熱材Aの外周に巻き付けられるので、防水或いは遮水という目的を達する事が出来るのである。
さらに、シート状の断熱材Bを金属製外環Cによって締付環g、hの外周面に圧着させることにより、防水性、遮水性がより一層、良好に発揮される。
【0038】
なお、図2、図3においては、金属製外環Cの幅方向の端部には、折返し部(フランジ)Cfが形成され、この折返し部(フランジ)Cfによって断熱材Bの左右両端面が覆われるように構成されている。このように構成することで、さらに防水性を高めている。
【0039】
第2の断熱材Bの材料として、ゴム引金線入りセラミック繊維布等が好ましく、例えば、日本バルカー工業株式会社の「バルカーテックスガスケット N314」(商品名)を用いることができる。但し、断熱材Bの材料として、これに限定されるものではない。
【0040】
金属製外環Cは、防錆性を考慮し、ステンレス製が好ましい。
図1では、金属製外環Cは、2枚のステンレス鋼板を断面が概略半円状に成形し、各ステンレス鋼板の一端にはヒンジChを形成し、他端には固定ボルトk2の係合用のブラケットCbを溶接によって取り付けている。
2枚のステンレス鋼板はヒンジChによって連結され、それぞれのステンレス鋼板がヒンジChを中心に回動可能に構成されている。
【0041】
ブラケットCbにおいて、固定ボルトk2で締め付けることにより、金属製外環Cは第2の断熱材Bを圧着するように固定される。ここで、固定ボルトk2で締め付ける際に、ステンレス鋼板が第2の断熱材Bから離隔する方向に曲げモーメントが作用する。係る曲げモーメントに対処するため、複数の補強用のリブCrを、ブラケットCbとステンレス鋼板とにまたがって溶接している。
なお、ブラケットCb及びリブCrを、「固定部」と総称する場合がある。
【0042】
図1では、金属製外環Cを2枚のステンレス鋼板で構成し、当該2枚のステンレス鋼板をヒンジChによって連結しているが、ステンレス鋼板の円弧の極率半径に比して鋼板の厚みが十分に薄い場合には、金属製外環Cを1枚のステンレス鋼板で構成し、ヒンジを設けなくともよい。図示の例では、ステンレス鋼板の板厚を1.2〜1.6mmとしている。
【0043】
また、ブラケットCbをステンレス鋼板の端部へ溶接する代わりに、ステンレス鋼板の他端を直角に折り曲げ、当該直角を成す側に補強用リブCrを溶接することも可能である。
さらに、補強用リブCrに代えて、ステンレス鋼板をプレス成形して、ビードを形成してもよい。
また、固定部を、いわゆる「ビンディング機構」で構成することも可能である。ビンディング機構については、例えば、スキー用具等で採用されている公知の機構をそのまま適用する事が出来る。
【0044】
図1において、断熱材Bの外周面であって、金属製外環Cの両端部Beを含む領域には、例えば、ステンレス鋼の薄板Dが配置されている。
ステンレス鋼の薄板Dは、金属製外環Cの端部に生じる隙間(図12の符号δ参照)を覆い、断熱材Bが直接高温に曝されることを防止している。
【0045】
次に、図7〜図12に基づいて、図2をも参照して、図示の実施形態に係る管継手の組立方法を説明する。
先ず、図7で示す工程では、被接続管c、bの各々における管端部近傍に、締付環h、g、断熱材α、パッキング環n、mをセットして、当該被接続管c、bをソケット管dの両端に挿入する。
そして、結合ボルトkを締付環h、gに挿入して、締結する。
図7においては、締付環h、gを省略した状態を図示している。図8において、ボルトkを断熱材Aで包囲する状態を図示するためである。
【0046】
図8で示す工程では、断熱材Aの各ブロックを半径方向内方へ移動して、溝Au内にボルトkを挿入する。それと同時に、断熱材Aの隣り合うブロック同士を連結する。断熱材Aのブロック同士を連結するに際しては、円周方向端面における凹部Abと凸部Aaとを係合する。以って、ボルトkを断熱材Aで包囲した状態で、断熱材Aをソケット管dの外周部dfに装着する。
図9は、断熱材Aを装着した状態を、締付環h、gを省略しないで図示しており、装着された断熱材Aは点線で示されている。
【0047】
図10で示す工程では、シート状の断熱材Bを断熱材Aの外周に巻きつける。そして、巻きつけ終えたシート状の断熱材Bにおける両端部Beを含む領域であって、断熱材Bの外周面に、ステンレス鋼の薄板Dを載置する。
なお、図10、図11においても、図7、図8と同様に、締付環h、gを省略して表現している。
図11で示す工程では、金属製外環Cを取り付けている。図11において、金属製外環CのヒンジChを、ステンレス鋼の薄板Dを載置した位置と反対側の位置(図11において、断熱材Bの曲率中心と点対称な位置)に配置する。そして、対向する金属製外環CのブラケットCb同士を接近させつつ(矢印Y方向に移動しつつ)、金属製外環Cをシート状の断熱材Bの外周面に圧着する。
【0048】
図12で示す工程では、金属製外環Cの対向するブラケットCbに固定ボルトk2を挿通し、ナットNによって締め付けている。以って、管継手100の組み立てが完了する。
金属製外環Cの両端は、適正締め付けトルクで締め付けられていても、隙間δが形成される。しかし、ステンレス鋼の薄板Dが当該隙間δを覆っているため、断熱材B、Aを外気から遮断した状態が確保できる。
【0049】
図示の第1実施形態に係る管継手100によれば、複数本の結合ボルトkを包囲する断熱材Aと、断熱材Aの外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する材料からなる断熱材Bと、断熱材Bの外周部に配置され、且つ断熱材Bを断熱材A側へ押圧する金属製外環Cとを有しているので、管継手に多大な熱量が作用しても、断熱材Aと断熱材Bと金属製外環Cにより、締付ボルトkに伝達される熱量が極めて少なくなる。
そのため、管継手に多大な熱量が作用しても、結合ボルトkは塑性域には至らず、ナットで締結した際に作用する引張力により、当該結合ボルトkが塑性変形(塑性伸び)をしてしまうことが防止される。
したがって、結合ボルトkに作用する引張力すなわちパッキング環m、nに作用する締付力は低下せず、被接続管b、c内を流れる流体の漏洩が防止され、管継手のシール性を保持する事が出来る。
【0050】
ここで、締付ボルトkのボルトヘッド及びナットが噛み合っている箇所は、断熱材A、断熱材B、金属製外環Cには被覆されておらず、露出しているので、締付ボルトkの締め付け力の調整(増締め等)や、管継手のメンテナンスで内部流体の漏れをチェックする際に、断熱材Aと断熱材Bと板状の金属製外環Cを外す必要がない。
そのため、耐火性、耐熱性を向上しても、管継手としての本来の機能を損なうことは無く、メンテナンスも容易となる。
【0051】
さらに管継手100によれば、複雑な装置や、高価な装置等を必要とすることなく、既存の管継手における耐火性、耐熱性を向上する事が出来る。
【0052】
次に、図13、図14を参照して第2実施形態を説明する。
図1〜図12の第1実施形態に係る管継手100は、金属製外環C及び断熱材Bは、その軸方向(X方向)長さが、対向する締付環g、hの外周及び断熱材Aを覆うのに必要最低限の長さである。
これに対して、図13、図14で示す第2実施形態に係る管継手102においては、金属製外環Cの軸方向(X方向)長さが、第1実施形態よりも長くなっている。
【0053】
より具体的には、図13、図14で示す様に、金属製外環Cの軸方向両端部が、結合ボルトkの軸方向両端部より、所定量β以上、軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)へ延在している。ここで、所定量βは、例えば50mm以上の数値である。
また、図13、図14の第2実施形態は、第1実施形態に比較して、断熱材Bの軸方向(X方向)長さも延長されており、結合ボルトkの両端部よりも軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)に突出している。
【0054】
図1〜図12の第1実施形態では、軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)から管継手100に向かう火炎が、断熱材B、金属製外環Cの半径方向内方に回り込み、結合ボルトk及び締付環g、hが直接火炎に曝されてしまう場合が存在する。
そして、結合ボルトk及び締付環g、hが直接火炎に曝されてしまうと、結合ボルトkの熱膨張による延びが大きくなってしまう。そして、結合ボルトk及び締付環g、hが大幅に温度が上昇し、係る高温がパッキン環m、nに高熱が伝達されると流体の漏洩等の悪影響が生じてしまう。
【0055】
これに対して、図13、図14で示す第2実施形態の管継手102によれば、金属製外環Cの軸方向両端部が、結合ボルトkの軸方向両端部より、それぞれ所定距離β(例えば50mm)以上、軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)へ延在しており、軸方向外方へ延在した金属製外環Cの軸方向両端部により、半径方向内方に回り込もうとする火炎が結合ボルトk及び締付環g、hに到達することが阻害される。或いは、半径方向内方に回り込んだ火炎が結合ボルトk及び締付環g、hに到達したとしても、その温度が150℃〜200℃低下する。
その結果、結合ボルトk及び締付環g、hが直接火炎に曝されることが防止され、或いは、高熱が結合ボルトkに作用することが防止されるので、結合ボルトkの熱膨張による延びが抑制される。
【0056】
また、結合ボルトk及び締付環g、hが直接火炎に曝されることがなくなり、或いは火炎の温度が低下するため、結合ボルトk及び締付環g、hにおける温度上昇が抑制され、パッキン環m、nに高熱が伝達されることによる悪影響を防止することができる。そして、締付環g、hの温度上昇が少なくなるため、パッキン環m、nからの流体の漏洩が防止される。
これに加えて、図13、図14の第2実施形態では、断熱材Bも、その軸方向長さが延長されており、断熱材Bの軸方向両端部が、各々、結合ボルトkの両端部よりも軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)に突出しているので、金属製外環Cの軸方向両端部と共に、半径方向内方に回り込もうとする火炎が、結合ボルトk及び締付環g、hに到達し難くなる様に作用している。
図13、図14の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図12の第1実施形態と同様である。
【0057】
図15は、本発明の第3実施形態に係る管継手103を示している。
図15の第3実施形態は、図13、図14の第2実施形態から、断熱材Aを省略した構成となっている。
図13、図14の第2実施形態において説明したように、金属製外環Cの軸方向両端部を、結合ボルトkの軸方向両端部より、それぞれ所定距離β(例えば50mm)以上、軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)へ延在し、且つ、断熱材Bの軸方向両端部を、結合ボルトkの両端部よりも軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)に突出すれば、半径方向内方に回り込んだ火炎は結合ボルトk及び締付環g、hに到達することが阻害され、或いは、火炎の温度が低下する。
【0058】
発明者の研究によれば、図13、図14の第2実施形態の場合の様に、半径方向内方に回り込んだ火炎は結合ボルトk及び締付環g、hに到達することが阻害され、或いは、火炎の温度が低下するのであれば、断熱材Aを省略したとしても、管継手の内部への影響は小さい。
図15の第3実施形態は、係る知見に基づいている。
【0059】
図15の第3実施形態に係る管継手103によれば、断熱材Aを省略しており、そのため、構成部品が削減され、断熱材Aを組み込む工程が不要となるので組立工数が削減させる。その結果、製造コストの低減を図ることが出来る。
図15の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図13、図14の第2実施形態と同様である。
【0060】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を説明する正面図。
【図2】図1に対応し、図1のZ−Z断面を含む一部断面側面図。
【図3】図2の要部拡大図。
【図4】図3とは異なる断熱材の配置を示した図。
【図5】図3、図4とは異なる断熱材の配置を示した図。
【図6】図3と図5を組み合わせた断熱材の配置を示した図。
【図7】実施形態に係る管継手を組み立てる工程図。
【図8】図7に連続する工程を示す図。
【図9】図8の工程が完了した状態を示す図。
【図10】図7〜図9に連続する工程を示す図。
【図11】図7〜図10に連続する工程を示す図。
【図12】図7〜図11に連続する工程を示す図。
【図13】本発明の第2実施形態の構成を説明する側面図。
【図14】図13の部分拡大図。
【図15】本発明の第3実施形態の構成を説明する部分側断面図。
【図16】従来技術に関する管継手の断面図。
【符号の説明】
【0062】
A・・・第1の断熱材
B・・・第2の断熱材
C・・・金属製外環
D・・・薄板
b、c・・・被接続管
d・・・ソケット管
g、h・・・締付環
k・・・結合ボルト
m、n・・・パッキング環
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本の管(被接続管)を接続するための管継手の改良に関し、耐火性を向上した管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
2本の管を接続するに当たって、一般的に求められる性能としては、
(1) 被接続管の内部を流れる流体が、継手部分から漏出しない程度のシール性、
(2) 被接続管の向かい合った管端部間の間隔が変動可能であること、すなわち被接続管の軸線方向について摺動可能であること、
(3) 場合によっては、接続箇所で2本の被接続管が形成する角度が多少変動可能であるような可撓性、
の3つが挙げられる。
【0003】
このような性能を有する管継手として、出願人は、締付環(g、h)とシール部材であるパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α)を介装して、火炎に曝されても、パッキング環(m、n)が劣化しない様な管継手を提案した(特許文献1参照)。
図16は、係る管継手の一部断面を含む側面を示している。
係る従来技術(特許文献1)によれば、前記断熱手段(α)によりパッキング環(m、n)への熱伝導が小さくなり、パッキング環(m、n)は耐熱性を有し、800℃の環境下に30分おかれても、劣化しない。
【0004】
しかし、発明者の実験によれば、管継手に作用する火炎の熱量が膨大であると、パッキング環(m、n)は劣化しなくても、管継手用結合ボルト(k)が熱によって塑性変形して(伸びて)しまうことが分かった。
そして、管継手用結合ボルト(k)が塑性変形する結果、ボルト(k)に作用する引っ張り力が減少し、パッキング環(m、n)に作用する締付力が低下するため、管内液体の漏れが発生して、シール性を保つことができなくなってしまうことが判明した。
【特許文献1】特開2006−112576
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、管継手に多大な熱量が作用しても、当該熱量により結合ボルトの締付力が低下せず、管内液体の漏れやシール性のそうしつ低下を防止することが出来る様な管継手の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の管継手は、(間隔Lを空けて直列に配置された2本の)被接続管(b、c)に遊嵌されたソケット管(d)が被接続管(b、c)の対向する管端(e、f)に跨って配置され、被接続管(b、c)の各々に遊嵌された締付環(g、h)がソケット管(d)の両側に配置され、締付環(g、h)は複数本の結合ボルト(k)で結合され、ソケット管(d)の両端部内面(テーパ面j、i)と被接続管(b、c)の外周面(bf、cf:管表面)との間にパッキング環(m、n)が挟装され、パッキング環(m、n)は締付環(g、h)によって被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)に圧接させられ、被接続管(b、c)が軸方向(X方向)に摺動可能にシールされる様に構成されており、締付環(g、h)とパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α)が介装されており、複数本の結合ボルト(k)を包囲する断熱材(第1の断熱材A)と、断熱材(A)の外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する材料からなる被覆層(第2の断熱材B)と、該被覆層(B)の外周部に配置され且つ該被覆層(B)を断熱材(A)側へ押圧する板状の固定部材(金属製外環C)とを有し、前記断熱材(A)は円周方向について結合ボルト(k)の数と同数の区画に分割されており、各区画の各々には結合ボルト(k)を収容する溝(Au)が形成されていることを特徴としている(請求項1)。
【0007】
本発明において、前記板状の固定部材(金属製外環C)はヒンジ部分(Ch)を有しており、ヒンジ部分(Ch)の折れ曲り角度を変化させることにより曲率半径を変化させることが出来る機能を有しており、前記板状の固定部材(金属製外環C)の円周方向の端部には固定部(Cb)が設けられており、前記板状の固定部材(金属製外環C)の円周方向両端部の固定部(Cb)同士を結合することにより前記被覆層(第2の断熱材B)を断熱材(A)側へ押圧して固定する機能を有することが好ましい(請求項2)。
【0008】
また、前記断熱材(A)を構成する結合ボルト(k)の数と同数の区画は、同一の形状をしているのが好ましい(請求項3)。
【0009】
前記板状の固定部材(C)は軸方向(X方向)両端部が前記結合ボルト(k)の軸方向(X方向)両端部より、所定距離(β:例えば50mm)以上軸方向外方(図13の左右方向、図14の左方)へ延在するように構成されていることが好ましい(請求項4)。
【0010】
また、本発明の管継手は、被接続管(b、c)に遊嵌されたソケット管(d)が被接続管(b、c)の対向する管端(e、f)に跨って配置され、被接続管(b、c)の各々に遊嵌された締付環(g、h)がソケット管(d)の両側に配置され、締付環(g、h)は複数本の結合ボルト(k)で結合され、ソケット管(d)の両端部内面(j、i)と被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)との間にパッキング環(m、n)が挟装され、パッキング環(m、n)は締付環(g、h)によって被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)に圧接させられ、被接続管(b、c)が軸方向(X)に摺動可能にシールされる様に構成されており、締付環(g、h)とパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α)が介装されており、前記締付環(g、h)の外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する材料からなる被覆層(B)と、該被覆層(B)の外周部に配置され且つ該被覆層(B)を締付環(g、h)側へ押圧する板状の固定部材(金属製外環C)とを有し、該固定部材(C)は軸方向(X方向)両端部が前記結合ボルト(k)の軸方向(X方向)両端部より、それぞれ、所定距離(β:例えば50mm)以上軸方向外方へ延在している(請求項5)。
【0011】
ここで、断熱材(B)の軸方向(X方向)長さは、断熱材(B)の軸方向(X方向)両端部が、結合ボルト(k)の両端部よりも軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)に突出する様に延長されているのが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
上述した構成を具備する本発明の管継手によれば、複数本の結合ボルト(k)を包囲する断熱材(A)と、断熱材(A)の外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する材料からなる被覆層(第2の断熱材B)と、該被覆層(B)の外周部に配置され且つ該被覆層(B)を断熱材(A)側へ押圧する板状の固定部材(金属製外環C)とを有しているので、管継手に多大な熱量が作用しても、断熱材(A)と被覆層(第2の断熱材B)と板状の固定部材(金属製外環C)により、締付ボルト(k)に伝達される熱量が極めて少なくなる。
そのため、管継手に多大な熱量が作用しても、結合ボルト(k)は塑性域には至らず、ナットとの締結により結合ボルト(k)に作用する引張力で結合ボルト(k)が伸びてしまうことはなく、結合ボルト(k)に作用する引張力すなわちパッキング環(m、n)に作用する締付力は低下することなく保持されるので、管内液体の漏れの発生を防止して、管継手のシール性を保持する事が出来る。
【0013】
ここで、締付ボルト(k)のボルトヘッド及びナットが噛み合っている箇所は、断熱材(A)と被覆層(第2の断熱材B)と板状の固定部材(金属製外環C)には被覆されておらず、露出しているので、締付ボルト(k)の締め付け力の調整(増締め等)や、管継手のメンテナンスで内部流体の漏れをチェックする際に、断熱材(A)と被覆層(第2の断熱材B)と板状の固定部材(金属製外環)を外す必要がない。
そのため、耐火性、耐熱性を向上しても、管継手としての本来の機能を損なうことは無く、メンテナンスも容易となる。
【0014】
さらに本発明によれば、複雑な、また高価な装置等を必要とすることなく、既存の管継手の耐火性、耐熱性を向上する事が出来る。
【0015】
そして、前記板状の固定部材(C)を軸方向の両端部が前記結合ボルト(k)の両端部より、それぞれ、所定距離(β:例えば50mm)以上軸方向外方へ延在するように構成すれば(請求項4)、軸方向外方へ延在した金属製外環(C)の軸方向両端部により、半径方向内方に回り込んだ火炎が結合ボルト(k)及び締付環(g、h)に到達するのが阻害される。或いは、半径方向内方に回り込んだ火炎が結合ボルト(k)及び締付環(g、h)に到達したとしても、その温度が低下(150℃〜200℃程度降温)する。
【0016】
その結果、結合ボルト(k)及び締付環(g、h)が直接火炎に曝されることが防止され、或いは、高熱が結合ボルト(k)に作用することが防止されるので、結合ボルト(k)の熱膨張による延びが抑制される。
また、結合ボルト(k)及び締付環(g、h)が直接火炎に曝されることがなくなり、或いは火炎の温度が低下するため、結合ボルト(k)及び締付環(g、h)における温度上昇が抑制され、パッキン環(m、n)に高熱が伝達されることによる悪影響を防止することができる。そして、締付環(g、h)の温度上昇が少なくなるため、パッキン環(m、n)からの流体の漏洩が防止される。
【0017】
これに加えて、断熱材(B)の軸方向長さを延長して、断熱材(B)の軸方向両端部が、各々、結合ボルト(k)の両端部よりも軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)に突出する様に構成すれば(請求項6)、半径方向内方に回り込んだ火炎が、より一層、結合ボルト(k)及び締付環(g、h)に到達し難くなる。
【0018】
また、請求項5の発明によれば、断熱材(A)を省略することが出来るので、上述した作用効果に加えて、構成部品点数を削減して、組立工数を減少することが出来るので、各種コストを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図1〜図12を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
なお、図示の実施形態において、同様の部材には同様な符号を付して、重複説明を省略する。
【0020】
図1、図2において、全体を符号100で示す伸縮可撓管継手は、間隔Lを空けて直列に配置された2本の被接続管b、cを、矢印X方向にスライド可能であり(伸縮可能であり)、且つ、矢印Mで示す様に屈曲可能に(可撓性を有する様に)接続している。
被接続管b、cの半径方向外方にソケット管dが遊嵌されており、ソケット管dは、両被接続管b、cの互いに対向する管端e、fにまたがって配置されている。
被接続管b、cの半径方向外方には、それぞれ締付環g、hが遊嵌されており、該締付環g、hはソケット管dの両端部近傍に配置されており、複数本の結合ボルトkで互いに結合されている。
【0021】
ソケット管dの両端部内面にはテーパ面j、iが形成され、テーパ面j、iと被接続管b、cの外周面bf、cfとの間には、シール部材であるゴム製のパッキング環m、nが配置されている。
複数本のボルトkを締め付けて、締付環g、h同士を互いに近接せしめると、ゴム製のパッキング環m、nは押圧されて、被接続管b、cの外周面bf、cfに圧接される。そして、ゴム製のパッキング環m、nが被接続管b、cの外周面bf、cfに圧接されることにより、各被接続管b、cは、軸方向Xに摺動可能な状態でシールされる。
【0022】
図2において、符号Sはソケット管dの移動制限用に設けられたボルトである。
被接続管b、cの外周面(管表面)bf、cfに、締付環g、hとパッキング環m、nとが配置されている領域の構造の詳細については、図3を参照して後述する。
【0023】
図示の実施形態に係る伸縮可撓管継手100では、ソケット管d及び締付環g、hが被接続管b、cに遊嵌されているので、ソケット管dと締付環g、hとの間には間隙W1が存在し、締付環g、hと被接続管b、cとの間には間隙W2が存在している。そのため、伸縮可撓管継手100で接続された被接続管b、cは、パッキング環m、nが管表面bf、cfに圧接させられている部位を支点にして、矢印M、M方向に撓曲可能である。すなわち、可撓性を有している。
【0024】
また、伸縮可撓管継手100では、パッキング環m、nが締付環g、hにより被接続管b、cの外周面bf、cfに圧接されており、被接続管b、cを軸方向Xに摺動可能な状態でシールしている。そのため、被接続管b、cは、その管端e、f間の間隔Lを変更することが出来る。すなわち管端e、fが当接するまで、間隔Lを短くすることが出来る。一方、管端e、fがパッキング環m、nの直下近傍に達するまでの範囲内であれば、シール状態を保持ししつつ、間隔Lを長くすることが出来る。
【0025】
次に図3を参照して、被接続管b、cの外周面(管表面)bf、cfにおいて、締付環g、hとパッキング環m、nとがどの様に配置されているかについて、説明する。
ここで、締付環g、hとパッキング環m、nから成る構造は、図2において、ソケット管dの左右両端近傍に存在するが、図3は、図2の左側の構造(図2の破線の円O内)のみを示す。
【0026】
図3において、締付環hとパッキング環nとソケット管dで挟まれた領域、より詳細には、締付環hの右側面hiと、締付環hのリブhtの下方側面htiと、パッキング環nの左側面noと、ソケット環dの外周dfとで包囲された領域には、耐熱性材料で構成された断熱材αが介装されている。
断熱材αは、全体が環状に構成されており、その周縁部にリブ部分αtが形成されている。そして断熱材αの半径方向内方縁部(図3では下方縁部)αeは、被接続管cの外周面(管表面)cfに接触している。
なお、図3において、符号hoは、締付環hの左側面を示す。
【0027】
断熱材αは、断熱性と、組込みに不自由が無い程度の可撓性とを併せ持つ材料であれば適用可能であり、公知の断熱材を利用して形成することが出来る。そして、石綿や、石綿代替品として開発されたガスケット材料を用いることが可能である。
断熱材αとしては、例えば、商品名「ノンアスジョイントシート」(日本バルカー工業株式会社の製品:「ノンアス」は日本バルカー工業株式会社の登録商標)なるガスケット材料が利用可能である。
【0028】
ここで、耐熱材αの厚さ寸法(図3において、リブ部分αt以外の部分におけるX方向寸法)は任意に定めることが出来て、例えば、5mm〜10mmの範囲にすることが出来る。
但し、耐熱材αの厚さ寸法が小さ過ぎると、十分な断熱性能が発揮されない恐れがある。一方、断熱材αの厚さ方向寸法が大き過ぎると、結合ボルトkで締付環g、h間の距離を短くするように締め付けた際に、当該締付力が断熱材αの厚さで吸収されてしまうため、パッキング環m、nによるシール性が悪化してしまう可能性が有る。
【0029】
換言すれば、耐熱材αの厚さ寸法は、シール性に悪影響を与えない範囲内で、且つ、必要な耐熱性を発揮できる範囲内であれば、自由に設定することが出来る。
出願人の行った実験では、耐熱材αの厚さ寸法が3mm位であれば効果が有るが、1mmでは効果は乏しかった。
【0030】
断熱材αを介装させることにより、金属製の締付環hの側面hi及び/又はリブhtの側面htiを介して伝達される熱(伝熱)は、断熱材αによって遮断されるので、パッキング環nに熱(伝熱)は作用しない。従って、パッキング環nが金属製の締付環hからの伝熱により、軟化してしまうことが防止される。
また、締付環hと被接続管cの外周面(管表面)cfとの隙間(空間W2)を経由して、矢印TFで示す高温空気がパッキング環n側に侵入しようとしても、耐熱材αの半径方向縁部(図3では下方縁部)αeが被接続管cの外周面(管表面)cfに接触しているため、高温空気TFも遮断され、パッキング環nに熱的な損傷を与えてしまうことが防止される。
【0031】
図示されていないが、パッキング環m、n(図3ではパッキング環nのみを示す)の材料として、高温でも容易に軟化しないフッ素ゴム(FPMゴム)を用いることが好ましい。フッ素ゴム(FPMゴム)は高温に曝されても容易に軟化しないので、パッキング材が軟化して流れてしまう恐れが無い。その他軟化点の高い材料が好ましい。
但し、パッキング環m、nを安価なアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)で断熱材αを構成しても、耐熱性は確保される。NBRを用いることにより、管継手の製造コストを抑えることが可能となる。
なお、フッ素ゴムは高温により硬化するが、その様な硬化は、特に技術的な問題を惹起するものでは無い。
【0032】
断熱材の構造は、図2、図3で示す断熱材αの構造に限定されるものではない。図4に示す断熱材α1の様に構成し、或いは、図5に示す断熱材βのような構成とすることも可能である。さらに図4、図6で示すように、異なる構造の断熱材を組み合わせて用いることも可能である。
【0033】
図1、図2に戻り、締付環g、hの最外周を半径とする円筒空間と、ソケット管dの外周dfとの間の領域で、且つ、締付環g、hによって挟まれた領域には、第1の断熱材Aが介装されている。
【0034】
第1の断熱材Aは、図1に示すように、円周方向において、ボルトkの本数と同数(図示の例では8個)に分割されている。断熱材Aの各ブロック(円周方向に分割された個々の区画)を環状に連結している。
断熱材Aの各ブロックの内周面には半径方向に延在する溝Auが形成され、その溝Auに結合ボルトkが収容され、以って、断熱材Aによって結合ボルトkを覆い、結合ボルトkを高熱から遮蔽する様に構成されている。
断熱材Aの1個のブロックには、周方向の端面に、それぞれ凸部Aaと凹部Abとが形成され、隣接するブロックは、この凹凸Ab、Aaが係合することで、半径方向のずれを拘束しつつ、連結されている。
【0035】
断熱材Aとしては、例えば、株式会社ITMの「ファイバーマックス」(商品名)14Rボード、ニチアス株式会社の「ファインフレックス」(商品名)モールド品T/#5420等がある。
断熱材Aの材料には、ボルトkの軸部が高温に曝されてダメージを受けない程度の断熱性を有することが要求される。
【0036】
断熱材Aの外周には、シート状の第2の断熱材Bが、断熱材Aの外周を被覆する様に巻き付けられている。
第2の断熱材Bの外周には、薄い板状の固定部材C(金属製外環C)が配置されている。金属製外環Cで締め込むことにより、断熱材Bの幅方向の端部を締付環g、hの外周面に圧着させ、浸水を防止することが出来る。
【0037】
第2の断熱材Bにおいても断熱性が要求されるが、防水性或いは遮水性を発揮する事が、第2の断熱材Bの主な目的となっている。ここで、断熱材Bはシート状であり、断熱材Aの外周に巻き付けられるので、防水或いは遮水という目的を達する事が出来るのである。
さらに、シート状の断熱材Bを金属製外環Cによって締付環g、hの外周面に圧着させることにより、防水性、遮水性がより一層、良好に発揮される。
【0038】
なお、図2、図3においては、金属製外環Cの幅方向の端部には、折返し部(フランジ)Cfが形成され、この折返し部(フランジ)Cfによって断熱材Bの左右両端面が覆われるように構成されている。このように構成することで、さらに防水性を高めている。
【0039】
第2の断熱材Bの材料として、ゴム引金線入りセラミック繊維布等が好ましく、例えば、日本バルカー工業株式会社の「バルカーテックスガスケット N314」(商品名)を用いることができる。但し、断熱材Bの材料として、これに限定されるものではない。
【0040】
金属製外環Cは、防錆性を考慮し、ステンレス製が好ましい。
図1では、金属製外環Cは、2枚のステンレス鋼板を断面が概略半円状に成形し、各ステンレス鋼板の一端にはヒンジChを形成し、他端には固定ボルトk2の係合用のブラケットCbを溶接によって取り付けている。
2枚のステンレス鋼板はヒンジChによって連結され、それぞれのステンレス鋼板がヒンジChを中心に回動可能に構成されている。
【0041】
ブラケットCbにおいて、固定ボルトk2で締め付けることにより、金属製外環Cは第2の断熱材Bを圧着するように固定される。ここで、固定ボルトk2で締め付ける際に、ステンレス鋼板が第2の断熱材Bから離隔する方向に曲げモーメントが作用する。係る曲げモーメントに対処するため、複数の補強用のリブCrを、ブラケットCbとステンレス鋼板とにまたがって溶接している。
なお、ブラケットCb及びリブCrを、「固定部」と総称する場合がある。
【0042】
図1では、金属製外環Cを2枚のステンレス鋼板で構成し、当該2枚のステンレス鋼板をヒンジChによって連結しているが、ステンレス鋼板の円弧の極率半径に比して鋼板の厚みが十分に薄い場合には、金属製外環Cを1枚のステンレス鋼板で構成し、ヒンジを設けなくともよい。図示の例では、ステンレス鋼板の板厚を1.2〜1.6mmとしている。
【0043】
また、ブラケットCbをステンレス鋼板の端部へ溶接する代わりに、ステンレス鋼板の他端を直角に折り曲げ、当該直角を成す側に補強用リブCrを溶接することも可能である。
さらに、補強用リブCrに代えて、ステンレス鋼板をプレス成形して、ビードを形成してもよい。
また、固定部を、いわゆる「ビンディング機構」で構成することも可能である。ビンディング機構については、例えば、スキー用具等で採用されている公知の機構をそのまま適用する事が出来る。
【0044】
図1において、断熱材Bの外周面であって、金属製外環Cの両端部Beを含む領域には、例えば、ステンレス鋼の薄板Dが配置されている。
ステンレス鋼の薄板Dは、金属製外環Cの端部に生じる隙間(図12の符号δ参照)を覆い、断熱材Bが直接高温に曝されることを防止している。
【0045】
次に、図7〜図12に基づいて、図2をも参照して、図示の実施形態に係る管継手の組立方法を説明する。
先ず、図7で示す工程では、被接続管c、bの各々における管端部近傍に、締付環h、g、断熱材α、パッキング環n、mをセットして、当該被接続管c、bをソケット管dの両端に挿入する。
そして、結合ボルトkを締付環h、gに挿入して、締結する。
図7においては、締付環h、gを省略した状態を図示している。図8において、ボルトkを断熱材Aで包囲する状態を図示するためである。
【0046】
図8で示す工程では、断熱材Aの各ブロックを半径方向内方へ移動して、溝Au内にボルトkを挿入する。それと同時に、断熱材Aの隣り合うブロック同士を連結する。断熱材Aのブロック同士を連結するに際しては、円周方向端面における凹部Abと凸部Aaとを係合する。以って、ボルトkを断熱材Aで包囲した状態で、断熱材Aをソケット管dの外周部dfに装着する。
図9は、断熱材Aを装着した状態を、締付環h、gを省略しないで図示しており、装着された断熱材Aは点線で示されている。
【0047】
図10で示す工程では、シート状の断熱材Bを断熱材Aの外周に巻きつける。そして、巻きつけ終えたシート状の断熱材Bにおける両端部Beを含む領域であって、断熱材Bの外周面に、ステンレス鋼の薄板Dを載置する。
なお、図10、図11においても、図7、図8と同様に、締付環h、gを省略して表現している。
図11で示す工程では、金属製外環Cを取り付けている。図11において、金属製外環CのヒンジChを、ステンレス鋼の薄板Dを載置した位置と反対側の位置(図11において、断熱材Bの曲率中心と点対称な位置)に配置する。そして、対向する金属製外環CのブラケットCb同士を接近させつつ(矢印Y方向に移動しつつ)、金属製外環Cをシート状の断熱材Bの外周面に圧着する。
【0048】
図12で示す工程では、金属製外環Cの対向するブラケットCbに固定ボルトk2を挿通し、ナットNによって締め付けている。以って、管継手100の組み立てが完了する。
金属製外環Cの両端は、適正締め付けトルクで締め付けられていても、隙間δが形成される。しかし、ステンレス鋼の薄板Dが当該隙間δを覆っているため、断熱材B、Aを外気から遮断した状態が確保できる。
【0049】
図示の第1実施形態に係る管継手100によれば、複数本の結合ボルトkを包囲する断熱材Aと、断熱材Aの外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する材料からなる断熱材Bと、断熱材Bの外周部に配置され、且つ断熱材Bを断熱材A側へ押圧する金属製外環Cとを有しているので、管継手に多大な熱量が作用しても、断熱材Aと断熱材Bと金属製外環Cにより、締付ボルトkに伝達される熱量が極めて少なくなる。
そのため、管継手に多大な熱量が作用しても、結合ボルトkは塑性域には至らず、ナットで締結した際に作用する引張力により、当該結合ボルトkが塑性変形(塑性伸び)をしてしまうことが防止される。
したがって、結合ボルトkに作用する引張力すなわちパッキング環m、nに作用する締付力は低下せず、被接続管b、c内を流れる流体の漏洩が防止され、管継手のシール性を保持する事が出来る。
【0050】
ここで、締付ボルトkのボルトヘッド及びナットが噛み合っている箇所は、断熱材A、断熱材B、金属製外環Cには被覆されておらず、露出しているので、締付ボルトkの締め付け力の調整(増締め等)や、管継手のメンテナンスで内部流体の漏れをチェックする際に、断熱材Aと断熱材Bと板状の金属製外環Cを外す必要がない。
そのため、耐火性、耐熱性を向上しても、管継手としての本来の機能を損なうことは無く、メンテナンスも容易となる。
【0051】
さらに管継手100によれば、複雑な装置や、高価な装置等を必要とすることなく、既存の管継手における耐火性、耐熱性を向上する事が出来る。
【0052】
次に、図13、図14を参照して第2実施形態を説明する。
図1〜図12の第1実施形態に係る管継手100は、金属製外環C及び断熱材Bは、その軸方向(X方向)長さが、対向する締付環g、hの外周及び断熱材Aを覆うのに必要最低限の長さである。
これに対して、図13、図14で示す第2実施形態に係る管継手102においては、金属製外環Cの軸方向(X方向)長さが、第1実施形態よりも長くなっている。
【0053】
より具体的には、図13、図14で示す様に、金属製外環Cの軸方向両端部が、結合ボルトkの軸方向両端部より、所定量β以上、軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)へ延在している。ここで、所定量βは、例えば50mm以上の数値である。
また、図13、図14の第2実施形態は、第1実施形態に比較して、断熱材Bの軸方向(X方向)長さも延長されており、結合ボルトkの両端部よりも軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)に突出している。
【0054】
図1〜図12の第1実施形態では、軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)から管継手100に向かう火炎が、断熱材B、金属製外環Cの半径方向内方に回り込み、結合ボルトk及び締付環g、hが直接火炎に曝されてしまう場合が存在する。
そして、結合ボルトk及び締付環g、hが直接火炎に曝されてしまうと、結合ボルトkの熱膨張による延びが大きくなってしまう。そして、結合ボルトk及び締付環g、hが大幅に温度が上昇し、係る高温がパッキン環m、nに高熱が伝達されると流体の漏洩等の悪影響が生じてしまう。
【0055】
これに対して、図13、図14で示す第2実施形態の管継手102によれば、金属製外環Cの軸方向両端部が、結合ボルトkの軸方向両端部より、それぞれ所定距離β(例えば50mm)以上、軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)へ延在しており、軸方向外方へ延在した金属製外環Cの軸方向両端部により、半径方向内方に回り込もうとする火炎が結合ボルトk及び締付環g、hに到達することが阻害される。或いは、半径方向内方に回り込んだ火炎が結合ボルトk及び締付環g、hに到達したとしても、その温度が150℃〜200℃低下する。
その結果、結合ボルトk及び締付環g、hが直接火炎に曝されることが防止され、或いは、高熱が結合ボルトkに作用することが防止されるので、結合ボルトkの熱膨張による延びが抑制される。
【0056】
また、結合ボルトk及び締付環g、hが直接火炎に曝されることがなくなり、或いは火炎の温度が低下するため、結合ボルトk及び締付環g、hにおける温度上昇が抑制され、パッキン環m、nに高熱が伝達されることによる悪影響を防止することができる。そして、締付環g、hの温度上昇が少なくなるため、パッキン環m、nからの流体の漏洩が防止される。
これに加えて、図13、図14の第2実施形態では、断熱材Bも、その軸方向長さが延長されており、断熱材Bの軸方向両端部が、各々、結合ボルトkの両端部よりも軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)に突出しているので、金属製外環Cの軸方向両端部と共に、半径方向内方に回り込もうとする火炎が、結合ボルトk及び締付環g、hに到達し難くなる様に作用している。
図13、図14の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図12の第1実施形態と同様である。
【0057】
図15は、本発明の第3実施形態に係る管継手103を示している。
図15の第3実施形態は、図13、図14の第2実施形態から、断熱材Aを省略した構成となっている。
図13、図14の第2実施形態において説明したように、金属製外環Cの軸方向両端部を、結合ボルトkの軸方向両端部より、それぞれ所定距離β(例えば50mm)以上、軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)へ延在し、且つ、断熱材Bの軸方向両端部を、結合ボルトkの両端部よりも軸方向外方(図13では左右方向、図14では左方)に突出すれば、半径方向内方に回り込んだ火炎は結合ボルトk及び締付環g、hに到達することが阻害され、或いは、火炎の温度が低下する。
【0058】
発明者の研究によれば、図13、図14の第2実施形態の場合の様に、半径方向内方に回り込んだ火炎は結合ボルトk及び締付環g、hに到達することが阻害され、或いは、火炎の温度が低下するのであれば、断熱材Aを省略したとしても、管継手の内部への影響は小さい。
図15の第3実施形態は、係る知見に基づいている。
【0059】
図15の第3実施形態に係る管継手103によれば、断熱材Aを省略しており、そのため、構成部品が削減され、断熱材Aを組み込む工程が不要となるので組立工数が削減させる。その結果、製造コストの低減を図ることが出来る。
図15の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図13、図14の第2実施形態と同様である。
【0060】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を説明する正面図。
【図2】図1に対応し、図1のZ−Z断面を含む一部断面側面図。
【図3】図2の要部拡大図。
【図4】図3とは異なる断熱材の配置を示した図。
【図5】図3、図4とは異なる断熱材の配置を示した図。
【図6】図3と図5を組み合わせた断熱材の配置を示した図。
【図7】実施形態に係る管継手を組み立てる工程図。
【図8】図7に連続する工程を示す図。
【図9】図8の工程が完了した状態を示す図。
【図10】図7〜図9に連続する工程を示す図。
【図11】図7〜図10に連続する工程を示す図。
【図12】図7〜図11に連続する工程を示す図。
【図13】本発明の第2実施形態の構成を説明する側面図。
【図14】図13の部分拡大図。
【図15】本発明の第3実施形態の構成を説明する部分側断面図。
【図16】従来技術に関する管継手の断面図。
【符号の説明】
【0062】
A・・・第1の断熱材
B・・・第2の断熱材
C・・・金属製外環
D・・・薄板
b、c・・・被接続管
d・・・ソケット管
g、h・・・締付環
k・・・結合ボルト
m、n・・・パッキング環
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接続管(b、c)に遊嵌されたソケット管(d)が被接続管(b、c)の対向する管端(e、f)に跨って配置され、被接続管(b、c)の各々に遊嵌された締付環(g、h)がソケット管(d)の両側に配置され、締付環(g、h)は複数本の結合ボルト(k)で結合され、ソケット管(d)の両端部内面(j、i)と被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)との間にパッキング環(m、n)が挟装され、パッキング環(m、n)は締付環(g、h)によって被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)に圧接させられ、被接続管(b、c)が軸方向(X)に摺動可能にシールされる様に構成されており、締付環(g、h)とパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α)が介装されており、複数本の結合ボルト(k)を包囲する断熱材(A)と、断熱材(A)の外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する材料からなる被覆層(B)と、該被覆層(B)の外周部に配置され且つ該被覆層(B)を断熱材(A)側へ押圧する板状の固定部材(金属製外環C)とを有し、前記断熱材(A)は円周方向について結合ボルト(k)の数と同数の区画に分割されており、各区画の各々には結合ボルト(k)を収容する溝(Au)が形成されていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記板状の固定部材(C)はヒンジ部分(Ch)を有しており、ヒンジ部分(Ch)の折れ曲り角度を変化させることにより曲率半径を変化させることが出来る機能を有しており、前記板状の固定部材(C)の円周方向の端部には固定部(Cb)が設けられており、前記板状の固定部材(C)の円周方向両端部の固定部(Cb)同士を結合することにより前記被覆層(B)を断熱材(A)側へ押圧して固定する機能を有する請求項1の管継手。
【請求項3】
前記断熱材(A)を構成する結合ボルト(k)の数と同数の区画は、同一の形状をしている請求項1又は請求項2の管継手。
【請求項4】
前記板状の固定部材(C)は軸方向両端部が前記結合ボルト(k)の軸方向両端部より、それぞれ所定距離(β)以上軸方向外方へ延在する請求項1又は請求項2の管継手。
【請求項5】
被接続管(b、c)に遊嵌されたソケット管(d)が被接続管(b、c)の対向する管端(e、f)に跨って配置され、被接続管(b、c)の各々に遊嵌された締付環(g、h)がソケット管(d)の両側に配置され、締付環(g、h)は複数本の結合ボルト(k)で結合され、ソケット管(d)の両端部内面(j、i)と被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)との間にパッキング環(m、n)が挟装され、パッキング環(m、n)は締付環(g、h)によって被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)に圧接させられ、被接続管(b、c)が軸方向(X)に摺動可能にシールされる様に構成されており、締付環(g、h)とパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α)が介装されており、前記締付環(g、h)の外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する材料からなる被覆層(B)と、該被覆層(B)の外周部に配置され且つ該被覆層(B)を締付環(g、h)側へ押圧する板状の固定部材(C)とを有し、該固定部材(C)は軸方向両端部が前記結合ボルト(k)の軸方向両端部より、所定距離(β)以上軸方向外方へ延在していることを特徴とする管継手。
【請求項6】
断熱材(B)の軸方向長さは、断熱材の軸方向両端部が、結合ボルト(k)の両端部よりも軸方向外方に突出する様に延長されている請求項4又は請求項5のの管継手。
【請求項1】
被接続管(b、c)に遊嵌されたソケット管(d)が被接続管(b、c)の対向する管端(e、f)に跨って配置され、被接続管(b、c)の各々に遊嵌された締付環(g、h)がソケット管(d)の両側に配置され、締付環(g、h)は複数本の結合ボルト(k)で結合され、ソケット管(d)の両端部内面(j、i)と被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)との間にパッキング環(m、n)が挟装され、パッキング環(m、n)は締付環(g、h)によって被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)に圧接させられ、被接続管(b、c)が軸方向(X)に摺動可能にシールされる様に構成されており、締付環(g、h)とパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α)が介装されており、複数本の結合ボルト(k)を包囲する断熱材(A)と、断熱材(A)の外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する材料からなる被覆層(B)と、該被覆層(B)の外周部に配置され且つ該被覆層(B)を断熱材(A)側へ押圧する板状の固定部材(金属製外環C)とを有し、前記断熱材(A)は円周方向について結合ボルト(k)の数と同数の区画に分割されており、各区画の各々には結合ボルト(k)を収容する溝(Au)が形成されていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記板状の固定部材(C)はヒンジ部分(Ch)を有しており、ヒンジ部分(Ch)の折れ曲り角度を変化させることにより曲率半径を変化させることが出来る機能を有しており、前記板状の固定部材(C)の円周方向の端部には固定部(Cb)が設けられており、前記板状の固定部材(C)の円周方向両端部の固定部(Cb)同士を結合することにより前記被覆層(B)を断熱材(A)側へ押圧して固定する機能を有する請求項1の管継手。
【請求項3】
前記断熱材(A)を構成する結合ボルト(k)の数と同数の区画は、同一の形状をしている請求項1又は請求項2の管継手。
【請求項4】
前記板状の固定部材(C)は軸方向両端部が前記結合ボルト(k)の軸方向両端部より、それぞれ所定距離(β)以上軸方向外方へ延在する請求項1又は請求項2の管継手。
【請求項5】
被接続管(b、c)に遊嵌されたソケット管(d)が被接続管(b、c)の対向する管端(e、f)に跨って配置され、被接続管(b、c)の各々に遊嵌された締付環(g、h)がソケット管(d)の両側に配置され、締付環(g、h)は複数本の結合ボルト(k)で結合され、ソケット管(d)の両端部内面(j、i)と被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)との間にパッキング環(m、n)が挟装され、パッキング環(m、n)は締付環(g、h)によって被接続管(b、c)の外周面(bf、cf)に圧接させられ、被接続管(b、c)が軸方向(X)に摺動可能にシールされる様に構成されており、締付環(g、h)とパッキング環(m、n)との間の領域に断熱手段(α)が介装されており、前記締付環(g、h)の外周面に配置された遮水性及び断熱性を有する材料からなる被覆層(B)と、該被覆層(B)の外周部に配置され且つ該被覆層(B)を締付環(g、h)側へ押圧する板状の固定部材(C)とを有し、該固定部材(C)は軸方向両端部が前記結合ボルト(k)の軸方向両端部より、所定距離(β)以上軸方向外方へ延在していることを特徴とする管継手。
【請求項6】
断熱材(B)の軸方向長さは、断熱材の軸方向両端部が、結合ボルト(k)の両端部よりも軸方向外方に突出する様に延長されている請求項4又は請求項5のの管継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−138921(P2009−138921A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47229(P2008−47229)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(593130980)理研工機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(593130980)理研工機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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