説明

管路の空気抜き装置

【課題】水道管などの管路における空気抜きを効率的に行い、且つ洗浄体圧送による洗浄作業に支障が生じない管路の空気抜き装置を提供する。
【解決手段】管路構成管の管径より大径に膨出した膨出室部1と、膨出室部の上方に連通して設けた立上管部2と、立上管部内に装着したフロート弁機構部3と、左右に配置される管路構成管A1,A2との連結部42a,42bを備えると共に、管路構成管の管径と一致して膨出室部の左右に連通して設けた連結管41a,41bからなる連結管部4a,4bと、左右の連結管間に内径を縮小せずに架設した複数のガイド杆51で形成されるガイド部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却水供給管、及び原料(液体)供給管等の各種プラントの管路、その他水道本管等の管路の途中に介装される空気抜き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体の流通路である管路内に存在する空気は、液体の流れを阻害する大きな要因となるので、管路中高所に配管された部分には、一般的にフロート弁機構を利用した空気抜き装置が介装配置されている(特許文献1)。
【0003】
この空気抜き装置は、管路の途中に立ち上がり管を備えた管部材を介装し、当該立ち上がり管部分に、広口の取出口に固定される外筺と、該外筺内に回動可能に密嵌されて内部にフロートを配置する内筺と、弁口を有する内筺の蓋体とを備え、上記外筺と内筺の夫々に対応する複数の透孔を穿設し、内筺の回動により自身の透孔と外筺の透孔との位置関係を変化させて、管内との連通及び遮断状態を得るように構成したフロート弁機構を装着しているものである。
【0004】
また管路に突出する仕切り板を設けて、配管内の流体がフロート弁機構に近接して流れるようにして、フロート弁機構設置箇所の凍結を防止することも提案されている(特許文献2)。
【0005】
更にフロート弁機構の外筒部を流路断面に突出させて、配管中の流れの一部をフロート弁機構側に導き入れる手段も知られている(特許文献3)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−337540号公報。
【特許文献2】実開昭62−190193号公報。
【特許文献3】特開平10−299928号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液体の流通路である管路内に存在する空気の排除として、前記した空気抜き装置が採用されている。配管中を流れる液体に含まれる空気(気泡)は、その浮力でフロート弁機構に入っていくが、管内流体の流れが速いと、スムーズにフロート弁機構に導かれない。
【0008】
また特許文献2,3に記載された導入部を備えると、空気(気泡)は管内液体の流れに乗ってフロート弁機構に導かれるが、流路断面内に導入部が突出することになる。
【0009】
然し管路洗浄に、洗浄体(ブラシ体)を管路内で圧送する手段を採用した場合に、前記導入部に衝突してしまう。特許文献3記載のようにフロート弁機構の清掃のために導入部を流路断面から後退させると可能であるが、管路洗浄作業と同時にフロート弁機構の操作が必要となり、フロート弁機構の操作(導入部の後退)後に洗浄を行い、更に洗浄作業後に再度フロート弁機構の操作(導入部の突出)を行なう必要があり、管路洗浄作業が煩瑣となる。
【0010】
そこで本発明は、管路洗浄作業とフロート弁機構の操作とを各々独立して出来るとともに、配管中を流れる液体に含まれる空気(気泡)の管路外排出がスムーズになされる新規な空気抜き装置を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(請求項1)に係る管路の空気抜き装置は、管路構成管の管径より大径に膨出した膨出室部と、膨出室部の上方に連通して設けた立上管部と、立上管部内に装着したフロート弁機構部と、左右に配置される管路構成管との連結部を備えると共に、管路構成管の管径と一致して膨出室部の左右に連通して設けた連結管からなる連結管部と、左右の連結管間に内径を縮小せずに架設した複数のガイド杆で形成されるガイド部とを備えてなることを特徴とするものである。
【0012】
而して前記空気抜き装置を管路途中に介装するもので、管路中を流れる液体は、膨出室部に至ると流路断面が大きくなり、流速が遅くなると共に、膨出室部内の外周部分に滞留している液体を巻き込むことによって流れが乱れ、液体中の気泡が、自己の浮力によって立上管部に浮上し易くなり、効率的に空気抜きが実施されることになる。
【0013】
また本発明(請求項2)は、前記空気抜き装置において、特にガイド部に、ガイド杆外周に周設して、中央側を開拡傾斜面とした整流板を左右対面して設けてなるもので、連結管部から膨出室部に流れ込んだ液体は、整流板によって膨出室部内の外周側に流れ、更に出口側の整流板によって出口側連結管に導かれるものである。
【0014】
特に水道管路のようにループ配管を採用していると、水道水の使用状況によって流れ方向が変わる場合があり、流れ方向が変化はしても整流機能を損なうことがない。
【0015】
また本発明(請求項3)は、前記空気抜き装置において、膨出室部の下方に連通して設けた沈泥室と、沈泥室入口に管路の流れ方向に対面させた邪魔板と、沈泥室の下端に連結した排泥バルブとを備えた排泥機構を付設してなるもので、膨出室部内を流れる液体に含まれる泥は、邪魔板に衝突して沈泥室に入り沈殿し、排泥バルブの開放によって管路外に排出される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成は上記の通りで、管路途中に流路断面が大きくなる膨出室部を設けて管路内の液体の流速を遅くすると共に、攪拌流を起させて、空気(気泡)の立上管部へ浮上を容易にして効率的な空気抜きが実現すると共に、管路内を圧送する洗浄体による洗浄に際しても、ガイド杆によって移動方向が規制され、何ら支障なく圧送することができ、フロート弁機構の操作と関り無く管路洗浄作業を実施できたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施の形態について説明する。実施形態に示した空気抜き装置は、膨出室部1と、立上管部2と、フロート弁機構3と、連結管部4と、ガイド部5と、排泥機構6とで構成されている。
【0018】
膨出室部1は、管路を構成する管(管路構成管)の管径より大径に膨出して流路断面を大きくし、中間に適宜なフロート弁機構3を装着できる管長を備えたもので、後述する立上管部2の立上管21と、連結管部4a,4bの連結管41a,41bと、排泥機構6の沈泥室61を連通状態で付設してなるものである。
【0019】
立上管部2は、前記膨出室部1の上方に連通して設けた立上管21と、立上管21の上端開口部のフランジ部22で構成される。
【0020】
フロート弁機構3は従前公知のもので、流路部分との連通及び遮断をなす内外筺を備え筺体内に弁口と当接するフロートを配置したもので、連通状態で筺体内に侵入した気泡をフロートの弁口開閉で外部に放出するようにしたもので、フランジ部22に装着し、本体全体を立上管21内に位置せしめたものである。
【0021】
尚ガイド部の外周であれば、一部が膨出室部1に突出させても良い。また内外筺の連通遮断構造は、特開2000−337540号公報に開示されているように内筺の回動で行なうようにしたり、特開平10−299928号公報に示されているように外筒を上下作動で行うようにしても良い。
【0022】
連結管部は、入口側連結管部4aと出口側連結管部4bを備え、両連結管部4a,4bは、管路構成管の管径と一致し、且つ前記膨出室部1に連通して設けた連結管41a,41bと、連結管41a,41bの各々の外端部に設けたフランジ部(連結部)42a,42bで構成されるもので、特に連結管41a,41bの内端部は、膨出室部1内に突出させてなる。
【0023】
ガイド部5は、連結管41a,41bの内端部の外周面間に複数のガイド杆51を架設して、全体を籠筒状で、連結管41a,41bの内径と略一致するガイド通路を形成すると共に、前記ガイド通路の外周に整流板52a,52bを設けたものである。
【0024】
この整流板52a,52bは、ガイド杆51の外周に周設して、中央側を開拡傾斜面としたもので、入口側と出口側に左右対面して設けてなるものである。
【0025】
排泥機構6は、膨出室部1の下方に連通して設けた沈泥室61と、沈泥室61の入口に管路の流れ方向に対面させた邪魔板62と、沈泥室61の下端に連結した排泥バルブ63とを備えてなる。
【0026】
而して前記空気抜き装置は、入口側管路構成管A1及び出口側管路構成管A2の各端部に設けられたフランジ部(連結部)と、連結管部4a,4bの各フランジ部(連結部)42a,42bと対接して連結して、管路中に介装するものである。
【0027】
この管路に液体(例えば水道水)が流れると、流体Bは、入口側管路構成管A1から入口側連結管部4aを通って膨出室部1に流れ込み、出口側連結管部4bから出口側管路構成管A2に流れ出るもので、この流路途中の膨出室部1において、所定の空気抜きが効率的になされるものである。
【0028】
即ち管路中を流れる液体(流体)Bは、膨出室部1に至ると、流路断面が大きくなり流速が遅くなる。同時に膨出室部1内の外周部分に滞留している液体を流れに巻き込むことになり、流れが乱れる。
【0029】
この流速低下と乱流によって液体内の空気(気泡)Cは、膨出室部1内の上方に浮いて移動しやすくなる。
【0030】
更に入口側整流板52aによって連結管41aからの流れが拡散され、出口側整流板52bによって流れが収束されて連結管41bに流れ込むので、流路中心部分の液体も確実に流速が落され、気泡Cの浮上がより確実になされ、且つ出口側において、スムーズな流出が実現して、管路全体の流れを阻害しないようにしているものである。
【0031】
特に入口側整流板52aと出口側整流板52bとを対面(好ましくは対象に)して設けているので、水道管路のようにループ配管を採用し、水道水の使用状況によって流れ方向が変わる場合に対しても、入口側整流板52aと出口側整流板52bの作用が逆になって対応することができるものである。
【0032】
更に流体Bに泥などが含まれている場合には、気泡Cと逆に沈下するものであるから、流速が落ちる膨出室部1内において沈下し易く、特に邪魔板62に衝突した流れは、沈泥室61の下方に導かれ、邪魔板62の背後への上昇流となるので、泥等は沈泥室61の下方に沈殿堆積することになり、排泥バルブ63の開放によって管路外に排出されることになる。
【0033】
また管路内を洗浄体の圧送で洗浄を行う場合に、洗浄体の空気抜き装置内通過時に際しては、洗浄体がガイド杆で構成されるガイド通路を通過することになるので、何ら支障なく洗浄が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態の断面図。
【図2】同使用状態を示す一部切断した正面図。
【図3】同切断平面図。
【図4】同流体の状態の説明図。
【符号の説明】
【0035】
1 膨出室部
2 立上管部
21 立上管
22 フランジ部
3 フロート弁機構
4a,4b 連結管部
41a,41b 連結管
42a,42b フランジ部(連結部)
5 ガイド部
51 ガイド杆
52a,52b 整流板
6 排泥機構
61 沈泥室
62 邪魔板
63 排泥バルブ
A1,A2 管路構成管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路を構成する管の管径より大径に膨出してなる膨出室部と、膨出室部の上方に連通して設けた立上管部と、立上管部内に装着したフロート弁機構部と、左右に配置される管路構成管との連結部を備えると共に、管路構成管の管径と一致して膨出室部の左右に連通して設けた連結管からなる連結管部と、左右の連結管間に内径を縮小せずに架設した複数のガイド杆で形成されるガイド部とを備えてなることを特徴とする管路の空気抜き装置。
【請求項2】
ガイド部に、ガイド杆外周に周設して、中央側を開拡傾斜面とした整流板を左右対面して設けてなる請求項1記載の管路の空気抜き装置。
【請求項3】
膨出室部の下方に連通して設けた沈泥室と、沈泥室入口に管路の流れ方向に対面させた邪魔板と、沈泥室の下端に連結した排泥バルブとを備えた排泥機構を付設してなる請求項1又は2記載の管路の空気抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−256158(P2008−256158A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101438(P2007−101438)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(591197633)明和工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】